モータースクラップは、同じ「モーター」でも1kgあたりの単価が数倍変わる金属くずです。価格の中心にあるのは内部の銅コイルであり、外装の鉄やアルミの比率が増えるほど平均単価は下がります。買取の現場では、外装材質や用途によって「モーターA」「モーターB」「黒モーター」「モーターコア」などの品目に細かく分類され、それぞれ別単価が設定されています。
一方で、モーターの売却には先に済ませておくべき法令上の手続きがあります。特に、エアコンや冷蔵設備に使われる圧縮機は、冷媒フロンの回収を終えていなければ、そもそもスクラップとして引き取ってもらえません。
本記事では、モータースクラップの定義と分類、価格を左右する要因、解体するかどうかの判断、発生源、そして売却前に確認すべき法規制を整理します。
五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、鉄を主原料とする製品・設備の廃棄や資源循環を起点に、サーキュラーエコノミーへの移行を支援するサービスです。 廃棄物を国内製鉄所等へ還流させるクローズドループの構築など、カーボンニュートラルや循環型社会の実現に向けた取り組みを、コスト削減と両立する形で支援します。設備更新や拠点整理に伴って発生する金属スクラップの回収・再資源化スキームを検討したい場合にはぜひご相談ください。
1.モータースクラップとは|金属くずとしての位置づけ

モータースクラップは、単一素材ではなく複数の金属が組み合わされたスクラップです。
(1)モータースクラップの定義
モータースクラップとは、使用を終えた電動機(モーター)を金属資源として扱う際の呼称です。
金属くずとスクラップという呼称の使い分けや、金属くずの基本的な位置づけについては、「鉄のサーキュラーエコノミー|事例や鉄鋼製品一覧、リサイクル性も」で整理しています。

(2)銅が価格の中心であり、鉄・アルミが増えるほど単価が下がる
モータースクラップの価格構造を理解する鍵は、銅の含有比率にあります。
つまり、「モーターだから高い」のではなく「銅が多いから高い」というのが正確な理解です。この原理が、次章で見る細かい品目分類の根拠になっています。
銅をはじめとする非鉄金属が循環利用される仕組みについては、「金属のサーキュラーエコノミー|具体的な事例、リサイクルとの違いも」で解説しています。

(3)有価物として売却できる場合と産業廃棄物として処理する場合
モーターは、取引の実態によって有価物と産業廃棄物のどちらにもなり得ます。
2.モーターの種類と分類|価格差が生まれる理由

買取の現場では、モーターは外装材質と用途によって細かく品目分けされています。
(1)外装材質による分類
もっとも基本的な分類軸が、外装に使われている材質です。
これに対し、工業機械に使われるモーターは外装に厚みのある鉄が使用されていることが多く、全体重量に占める鉄の割合が高くなります。このタイプは「モーターB」といった下位の品目に分類されるのが一般的です。
(2)用途・機器別の分類
外装材質に加えて、どの機器に使われていたかによっても品目が分かれます。
| 呼称 | 内容 |
|---|---|
| 黒モーター | 冷蔵庫やエアコン室外機に使われる黒い外装の圧縮機(コンプレッサー) |
| ステーター | モーターや発電機の内部にあるコイルの固定部分 |
| ダイナモ | 自動車の発電用部品(オルタネーター) |
| セルモーター | 自動車のエンジン始動用モーター(スターター) |
| コンプレッサー | 自動車用エアコンに用いられる圧縮機 |
(3)モーターコアの価値
分類のなかで最も高い評価を受けやすいのが、モーターコアです。
参考として、2026年前半から夏にかけて買取事業者が公表していた単価の水準を並べると、分類による差が確認できます。
| 品目 | 単価の目安 |
|---|---|
| 鉄スクラップ | 50円/kg前後 |
| モーター(アルミ混在・残留鉄が多いもの) | 60〜100円/kg |
| モーター(未解体・大型) | 120円/kg前後 |
| モーターコア(外装を除去しコイルのみ) | 150〜230円/kg |
| 銅スクラップ(込銅・並銅) | 2,000円/kg超 |
(4)産業設備で使われるモーターの特徴
工場設備に使われるモーターには、いくつか共通した傾向があります。
工作機械やロボットに使われるサーボモーターは、エンコーダなどの制御部品を伴います。制御基板や配線が付いたままだと異物として扱われるため、分離の可否が査定に影響します。
3.モータースクラップの発生源・具体例

モーターは特定の機器に限らず、幅広い設備の駆動部として発生します。
(1)工場の生産設備・工作機械
製造現場は、モータースクラップの主要な発生源です。
これらは出力・型式が記録として残っていることが多く、事前の数量把握がしやすい部類です。設備台帳と突き合わせて整理しておくと、見積もり依頼が円滑になります。
(2)ポンプ・送風機などの設備モーター
建物設備や用水設備にも、多数のモーターが使われています。
(3)空調・冷凍冷蔵設備由来のモーター
エアコン室外機や冷凍冷蔵設備からは、圧縮機とファンモーターが発生します。
この系統のモーターは、他の設備由来のものとは別扱いで計画してください。
(4)自動車部品由来のモーター
自動車からは、オルタネーター(ダイナモ)、セルモーター、パワーウィンドウモーター、エアコン用コンプレッサーなどが発生します。
4.モータースクラップの買取・価格相場

モータースクラップの価格は、素材構成、状態、そして市況によって決まります。
(1)価格を左右する要素
買取価格は、主に以下の要素の組み合わせで決まります。
- 銅と鉄・アルミの比率:銅の比率が高いほど単価が上がる
- プラスチック・樹脂部品の量:ダストとして減額対象になる
- 油・水の残留:ギヤオイル、切削油、水分の付着は減額要因
- 付属物の有無:土台の鉄、ブラケット、配線、布フィルター等の異物
- 数量:まとまるほど条件が整いやすい
- 銅の国際相場と為替:単価の水準そのものを動かす
市況面では、銅建値と為替の影響を受けます。2026年8月上旬の国内産銅建値は1kgあたり2,300円台で推移していましたが、この水準は日々変動します。
JOGMECの図では、銅のLME月平均価格が2012年初めの約8,000USドル/tから2016年初めごろに約4,500USドル/tまで下がり、その後2021年春ごろには10,000USドル/tを超えています。銅を多く含むモーターほど市況変動の影響を受けやすいことから、査定価格を固定的な相場表だけで判断できない点を裏付けます。ただし、図は国際価格であり、国内建値や実際の買取単価は為替、銅品位、異物、数量、運搬条件によって変動します。
(2)解体の有無による評価差
判断が分かれるのが、解体してから売却するかどうかです。
前章の単価表のとおり、未解体のモーターとモーターコアとでは単価に差があります。外装を除去して銅コイルだけにすれば、より高い品目として評価されます。
(3)買取価格の確認方法
モータースクラップには、一律の公表相場がありません。
品目分類そのものが事業者ごとに設定されており、同じモーターでも受入区分が異なることがあります。そのうえ銅相場に連動して単価が動くため、参考値をそのまま前提にすることはできません。
5.モータースクラップの処理・売却時の注意点

モーターの売却には、着手前に確認すべき法令上の手続きがあります。
(1)空調・冷凍冷蔵設備由来はフロン類の回収が前提になる
エアコンや冷凍冷蔵設備から発生する圧縮機については、冷媒フロンの回収を終えていることが売却の前提になります。
2020年4月に施行された改正法では規制が強化され、機器を廃棄する際にフロン類を回収しない場合、行政の指導・勧告・命令を経ることなく直接罰の対象となります。書面の未交付・未保存についても同様です。
家庭用として製造されたエアコンや冷蔵庫については、事業所から排出される場合でも家電リサイクル法の対象となります。この場合は解体してモーターを取り出すのではなく、製造業者等の引取義務ルートに乗せることになります。
参考:https://www.env.go.jp/earth/furon/
令和5年度に製造業者等が回収した冷媒フロンは、家庭用エアコンが2,492t、冷蔵庫・冷凍庫が111t、洗濯機・衣類乾燥機が40tで、冷蔵庫・冷凍庫の断熱材フロンは192tです。エアコンの1台当たり回収量は676gであり、圧縮機を含む機器を金属スクラップとして扱う前に冷媒処理が必要であることを数量面から補足します。ただし、これは家電リサイクル法ルートの実績で、業務用機器の回収量ではありません。回収量は小数点以下切り捨てで、機種構成によっても変動します。
(2)解体作業に伴う安全上の注意
自社で解体を行う場合は、作業の安全確保が前提になります。
外装の切断や圧入部品の取り外しには工具と力が必要で、無理な作業は破損やけがにつながります。特に水中ポンプのような密閉構造の機器では、一般的な工具では分解できないことも珍しくありません。
(3)許可の確認と有害使用済機器の規制
産業廃棄物として処理を委託する場合は、委託先の許可確認が前提になります。
加えて押さえておきたいのが、有害使用済機器の規制です。平成30年4月施行の改正廃棄物処理法により、家電リサイクル法対象4品目と小型家電リサイクル法対象28品目の計32品目については、有価物として取引される場合であっても規制の対象となりました。これらの保管・処分を業として行う者には、都道府県知事への届出義務が課されています(廃棄物処理法第17条の2)。
参考:https://www.env.go.jp/recycle/waste/used/index.html
(4)異物混入による減額・受入不可
以下に該当する場合、減額または受け入れ不可となります。
- 土台の鉄、ブラケット、配線などが付いたまま
- 布フィルターや樹脂カバーなど、ダストとなる部品の残存
- 油や汚泥、水分の残留
- 他の金属や樹脂と一体化して分離が困難なもの
- 銅率が著しく低く、モーターとして評価できないもの
これらの多くは、排出時の仕分けと付属物の除去で改善できる項目です。品目別に分けて保管する運用を定着させると、継続的に条件を維持できます。
6.モーターを廃棄せず資源循環に回すメリット

モータースクラップを適切に資源循環へ回すことには、費用面と環境面の双方でメリットがあります。
(1)処分費用を抑えられる、または収益化できる
モーターは、廃棄物ではなく資源として扱える可能性が高い部材です。
(2)銅・アルミ・鉄を資源として再利用できる
モーターは、複数の金属資源が一体になった部材です。
環境省の令和5年度実績では、産業廃棄物の再生利用率は金属くずが95.4%と、産業廃棄物全体のなかでも高い水準にあります。モーターは金属くずとしての再資源化可能性が高い一方、樹脂部品や油が混在したまま排出されると、この水準を活かしにくくなることを示しています。なお、この数値は全国の金属くず全体の実績であり、モーター単体の再生率を示すものではありません。実際の受入可否は、銅比率、付属物の状態、分離の程度、受入業者の条件によって変わります。
品目別の売却量と処分量を記録しておくと、社内報告や取引先からの環境関連の照会にも対応しやすくなります。
7.まとめ
モータースクラップの価格は、内部に含まれる銅の比率で決まります。外装の鉄やアルミの割合が増えるほど平均単価は下がり、逆に外装を除去して銅コイルだけにしたモーターコアは、分類のなかで最も高い評価を受けやすい形態です。買取の現場では、外装材質や用途によって細かく品目が分かれており、一括で引き渡すと低いグレードに含まれてしまう点に注意が必要です。
解体してから売却するかどうかは、単価差と作業コストの比較で判断します。数量がまとまる案件ほど解体の効果が出やすく、少数であれば未解体のまま引き渡すほうが有利になることもあります。未解体と解体依頼の双方の条件を取得したうえで比較してください。
売却前に確認すべき法令上の手続きもあります。エアコンや冷凍冷蔵設備由来の圧縮機は、フロン類の回収を済ませていなければ引き取ってもらえず、回収を怠れば直接罰の対象にもなります。家電由来のモーターについては、家電リサイクル法や有害使用済機器の規制も関わります。素材としての価値を判断する前に、その機器がどの法令の対象かを確認することが、モータースクラップを扱ううえでの出発点です。
サーキュラーエコノミーへの移行を進める上では、自社の資源循環の実態を把握し、具体的なスキームを設計することが重要です。設備更新や拠点整理に伴って発生する金属スクラップの回収・再資源化を通じて、コスト最適化と資源循環の両立を検討したい場合は、五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」にご相談ください。





