ダクトの廃棄方法|アスベスト事前調査の要否、費用相場と手順

事業用のダクトを廃棄する際は、本体を産業廃棄物(金属くず)として処理するだけでは手続きが完結しません。保温材が巻かれたダクトや、一定年代以前に施工されたダクトでは、撤去工事に着手する前に石綿(アスベスト)の事前調査を行う義務があり、調査を実施できる人の資格要件も法令で定められています。しかもこの資格要件は、同じダクトでも建屋内にあるか屋外のプラント設備かによって変わります。

本記事では、ダクトの廃棄物区分、アスベスト事前調査の要否と必要な資格、石綿が確認された場合の処理、撤去・処分の手順、費用の内訳と相場、業者選定の確認ポイントを整理します。

五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、ダクトを含む鉄・非鉄金属設備の廃棄から、金属くずとしての資源化、国内製鉄所等への還流までを支援します。産業廃棄物としての適正処理と有価物としての回収を組み合わせ、処分費用の抑制と資源循環の両立を図ります。設備更新や拠点閉鎖に伴う金属設備の処分ルートを検討している場合は、お気軽にご相談ください。

目次

1.事業用ダクトを廃棄する際の法的位置づけ

ダクトの廃棄では、本体と付随する材料で扱いが分かれます。ここでは、廃棄物区分と排出事業者の義務を整理します。

(1)ダクト本体は産業廃棄物(金属くず)に該当する

事業活動に伴って排出されたダクト本体は、廃棄物処理法施行令第2条第2号に定める産業廃棄物の「金属くず」に該当します。

空調ダクト、換気ダクト、厨房排気ダクトなどに使われる材質は、亜鉛メッキ鋼板(ガルバリウム鋼板を含む)が中心です。厨房や薬品を扱う環境ではステンレス製、軽量化が求められる箇所ではアルミ製やスパイラルダクトが使われることもありますが、いずれも金属くずとしての区分になります。

金属くずは排出する業種が指定されていないため、工場、オフィスビル、店舗、医療機関のいずれから排出された場合も同じ扱いです。自治体の粗大ごみとして処分することはできません。

なお、ダクト本体は金属である以上、状態によっては有価物として売却できる可能性があります。買取価格が運搬費などを上回れば有価物として扱われ、下回る逆有償の状態であれば産業廃棄物として処理します。

参考:https://www.city.toyonaka.osaka.jp/kurashi/gomi_risaikuru_bika/sangyohaikibutsu/index.files/sanpai.pdf

(2)保温材が付随する場合は区分を分けて扱う

ダクトの廃棄で判断が必要になるのが、本体と保温材を分けて廃棄物区分を判断するという点です。

空調ダクトや排気ダクトには、結露防止や断熱を目的として保温材が巻かれていることが一般的です。この保温材は本体とは別の廃棄物であり、材質によって区分が変わるためです。

グラスウールやロックウールを主体とする保温材は、材質と形状によってガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くず、または廃プラスチック類などに区分されます。表面材にビニルやアルミクラフト紙が使われている場合は、その部分の扱いも確認が必要です。委託先が本体と保温材の両方の品目について許可を持っているかを、見積もり段階で照合してください。

さらに重要なのが、この保温材に石綿が含まれている可能性です。石綿を含む保温材は通常の産業廃棄物とは全く異なる扱いになるため、次章で詳しく整理します。ダクトの廃棄において、保温材の有無は最初に確認すべき項目です。

(3)排出事業者責任とマニフェストの要否

処理を外部に委託しても、処理責任は排出事業者に残ります

廃棄物処理法では、事業者は事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理する義務を負うと定められており、この責任は委託によって業者側へ移転しません。委託先の許可確認、書面による委託契約の締結、マニフェストによる処分完了の確認までが排出事業者の対応範囲です。

ダクトの撤去では、本体、保温材、場合によっては石綿含有廃棄物と、複数の区分が同時に発生します。区分ごとにマニフェストを交付し、それぞれの処理完了を確認する必要があります。撤去工事を工事業者に、処分を産業廃棄物処理業者に依頼するなど委託先が分かれる場合も、管理責任は排出事業者側で一元的に負います。

一方、ダクト本体を有価物として直接売却できる場合は、マニフェストの交付は不要です。ただし、運搬途中までは産業廃棄物として扱い、到着後に有価物として買い取る形態では収集運搬の段階でマニフェストが必要になります。

排出事業者責任の具体的な条文と罰則、マニフェストのA票からE票までの運用、保管期間については、「スチール棚・オフィスラックの廃棄処分|産業廃棄物の要件、実務フロー」で詳しく解説しています。

2.ダクト廃棄で最優先の確認事項|アスベスト(石綿)事前調査

ダクトの撤去工事では、着手前に石綿の事前調査を行うことが法令で義務づけられています。ここでは、調査が必要な理由から、資格要件、報告義務までを整理します。

(1)なぜダクトで石綿の調査が必要になるのか

ダクトは、石綿含有建材が使われてきた可能性が高い設備のひとつです。

石綿は耐熱性・断熱性・耐久性に優れることから、高温になる箇所や結露を防ぐ箇所の材料として広く使われてきました。ダクトの場合、保温材・断熱材、接続部のパッキンやガスケット、シール材などが該当します。特に、ボイラー室や機械室まわりの配管・ダクト、厨房排気ダクトなど、熱を伴う系統は注意が必要です。

石綿を含む製品の製造・使用は、2006年9月1日以降、重量の0.1%を超えて含有するものが全面的に禁止されています。裏を返せば、それ以前に施工されたダクトや、施工年が特定できないダクトについては、石綿含有の可能性を前提に確認する必要があります。

老朽化した設備の更新や拠点閉鎖に伴う撤去では、施工から数十年が経過しているケースが多くなります。保温材が巻かれた古いダクトは、調査の対象になる可能性が高いと考えて計画を立ててください。

財務省(旧大蔵省)の輸入統計を基にした図では、石綿輸入量は1930年代の数万トン規模から増え、1970年代前半に約35万トンまで達した後、1990年代以降に急減し、2000年代半ばにほぼゼロとなっています。この長期使用実績は、2006年9月以前に施工されたダクトの保温材・パッキン等を事前調査の対象として扱う必要性を裏付けます。ただし、輸入量は個別建材の含有有無を示すものではなく、施工年、図面、現地確認、必要に応じた分析で判定する必要があります。

(2)事前調査の義務と、必要な資格

建築物・工作物の解体・改修工事では、工事の規模や請負金額にかかわらず、着手前に石綿の事前調査を行う義務があります。

そのうえで、調査を実施できる者の資格要件が段階的に定められてきました。2023年10月1日以降、建築物の事前調査は建築物石綿含有建材調査者等の有資格者が行うこととされ、2026年1月1日以降は、一定の工作物について工作物石綿事前調査者による調査が義務づけられています。いずれもすでに施行済みの制度です。

ダクトで注意すべきなのは、どちらの資格が必要になるかが、ダクトの所在によって変わる点です。

ダクトの区分該当する扱い必要な資格
建屋内の空調・換気・排煙ダクト建築物の一部(建築設備)建築物石綿含有建材調査者等
建築設備に当たらないプラント配管・屋外の排気設備等特定工作物(配管設備等)工作物石綿事前調査者
建築設備に当たらない独立煙突特定工作物(煙突)工作物石綿事前調査者または建築物石綿含有建材調査者等

特定工作物として告示に定められた「配管設備」からは、建築物に設ける給水設備、排水設備、換気設備、暖房設備、冷房設備、排煙設備等の建築設備が明文で除外されています。つまり、オフィスビルや工場の建屋内にある空調ダクト・換気ダクトは工作物ではなく、建築物の一部として扱われるということです。

一方、工場敷地内のプラント設備に付属する配管や、建築設備に該当しない屋外の排気設備は、特定工作物として工作物石綿事前調査者の領域になります。建築物と工作物が混在する敷地では、どの範囲がどちらに当たるかの切り分けが、そのまま必要な資格の判断につながります。自己判断せず、調査を依頼する段階で対象範囲を明示してください。

参考:https://www.ishiwata.mhlw.go.jp/investigator-structures/

図は、2026年1月1日以降着工の工事について、反応槽、加熱炉、ボイラー・圧力容器、建築設備を除く配管設備等では工作物石綿事前調査者資格が必要と整理しています。次の分岐では、煙突などは同資格者に加え、一定の建築物調査資格でも対応できる範囲を示します。ダクトが建築設備かプラント設備かで資格が変わるという本文の要点を、公的な判断手順で裏付ける図です。ただし、建築物に設ける換気・冷暖房・排煙等の建築設備は脚注で除外されるため、設備の所在と用途を先に確定する必要があります。

(3)調査の方法(書面調査・目視調査・分析調査)

事前調査は、書面調査、目視調査、分析調査の順に進みます。

まず設計図書や施工記録などの書面から、使用されている材料と施工年を確認します。ここで2006年9月1日以降に工事に着手したことが確認できれば、石綿は使用されていないものとして扱えるため、以降の調査を省略できる場合があります。

書面で確認できない場合は、現地での目視調査に進みます。ダクトでは、保温材の材質と施工範囲、接続部のパッキンやガスケットの有無、既存の補修跡などが確認対象です。天井裏や機械室に敷設されたダクトは目視自体が難しいことがあり、点検口の確保や部分的な開口が必要になる場合もあります。

目視でも判断できない材料については、試料を採取して分析調査を行います。石綿の有無を判定する定性分析が基本で、材料の種類ごとに検体を採取するため、系統や施工年代が異なるダクトが混在していると検体数が増える点に注意が必要です。

なお、分析を行わずに石綿含有とみなして必要な措置を講じる方法もあります。分析費用は不要になりますが、後述する石綿含有建材としての作業基準と処理費用が発生するため、数量によってどちらが有利かは変わります。

(4)石綿が確認された場合の処理

石綿が確認された場合、飛散性の程度によって作業と廃棄物の扱いが大きく変わります

石綿含有建材は、建設業労働災害防止協会の区分により作業レベル1から3に分類され、飛散性が高いほど厳重な措置が求められます。

レベル主な建材廃棄物処理法上の区分
レベル1吹付け石綿、石綿含有吹付けロックウール廃石綿等(特別管理産業廃棄物)
レベル2石綿含有保温材、断熱材、耐火被覆材廃石綿等(特別管理産業廃棄物)
レベル3成形板、スレート、Pタイル等石綿含有産業廃棄物(通常の産業廃棄物)

ダクトの保温材が石綿を含む場合、多くはレベル2に該当します。除去された石綿含有保温材は「廃石綿等」として特別管理産業廃棄物に区分され、通常の産業廃棄物とは別の基準が適用されます。

具体的には、委託先に特別管理産業廃棄物収集運搬業・処分業の許可が必要になり、事業場には特別管理産業廃棄物管理責任者を置く義務が生じます。運搬時は他の廃棄物と混載せず、二重梱包などの飛散防止措置を講じたうえで、溶融処理または無害化処理を経て埋立処分されます。マニフェストの返送期限も通常の産業廃棄物より短く設定されています。

作業面でも、レベル2の除去は作業場所の隔離、負圧集じん・排気装置の設置、作業員の保護具着用などが必要になり、通常のダクト撤去とは工事の性格そのものが変わります。石綿が確認された時点で、工程と費用の前提を組み直す必要があると考えてください。

参考:https://www.env.go.jp/recycle/waste/asbestos/index.html

(5)事前調査結果の報告義務

一定規模以上の工事では、事前調査の結果を行政に報告する義務があります。

報告の対象となるのは、以下のいずれかに該当する工事です。

  • 建築物の解体工事で、解体作業の対象となる床面積の合計が80㎡以上のもの
  • 建築物の改修工事で、請負代金の合計額が100万円以上(税込)のもの
  • 工作物の解体・改修工事で、請負代金の合計額が100万円以上(税込)のもの

ダクトの撤去は多くの場合、建築物の改修工事または工作物の改修・解体工事に当たります。請負代金100万円以上であれば、石綿の有無にかかわらず報告が必要です。報告は原則として石綿事前調査結果報告システムによる電子申請で行い、労働基準監督署と自治体への報告を同時に行えます。

報告義務を負うのは元請事業者または自主施工者です。排出事業者である発注者側が直接手続きするわけではありませんが、報告が適切に行われたかを確認し、控えを受け取っておくことが実務上の対応になります。

なお、報告義務の対象外となる小規模な工事であっても、事前調査そのものは必要です。「規模が小さいから調査不要」ではない点に注意してください。

参考:https://www.env.go.jp/press/110648.html

3.ダクトの処理ルートの選択肢

事前調査の結果を踏まえたうえで、ダクト本体の処理ルートを検討します。

(1)廃棄:産業廃棄物処理業者への委託

産業廃棄物として処分する場合は、産業廃棄物収集運搬業許可と処分業許可を持つ業者に委託します。

ダクト本体は金属くず、保温材は材質に応じた区分として、それぞれ委託契約書とマニフェストに明記します。石綿含有廃棄物が発生する場合は、廃石綿等または石綿含有産業廃棄物として、対応する許可を持つ業者への委託が別途必要です。

このルートは、材質が混在する場合や汚染がある場合でも処分を完結できる点が利点です。厨房排気ダクトのように油分の付着が著しいもの、腐食が進んで解体時に破断するものは、有価売却の条件を満たしにくく、産業廃棄物処理が現実的な選択肢になります。

(2)資源循環:金属スクラップとしての売却

ダクト本体は、状態によっては金属スクラップとして有価売却できる可能性があります。

亜鉛メッキ鋼板は鉄スクラップとして、ステンレス製ダクトはステンレススクラップとして、アルミ製ダクトはアルミスクラップとして、それぞれ評価の対象になります。ステンレスやアルミは鉄より単価が高いため、材質の切り分けが総額に影響します。

成立条件を左右するのは分別の状態です。保温材が巻かれたままのダクトは、金属くずとして受け入れられません。保温材を剥がし、フランジやボルト類などの付属品を整理したうえで、材質別にまとめる必要があります。油分の付着、断熱材の残存、他材料との一体化は減額または受け入れ不可の要因になります。

ダクトから回収した鉄を再び鋼材の原料として循環させる仕組みや、鉄が繰り返し再生利用に適している理由については、以下の「鉄のサーキュラーエコノミー|事例や鉄鋼製品一覧、リサイクル性も」記事で解説しています。

(3)設備更新工事側での既存撤去対応

空調設備の更新に伴うダクト撤去では、新設工事の請負範囲に既存撤去を含める方法があります。

工事業者が撤去から搬出、処分委託までを一括で担うため、発注側の手配負担が軽くなる点が利点です。既存設備と新設設備の取り合いを同じ業者が把握しているため、工程調整もしやすくなります。

ただし、確認すべき点が2つあります。ひとつは、撤去した廃棄物の処理をどのような形で行うかです。工事に伴って生じた廃棄物の排出事業者は原則として元請業者になりますが、委託先の許可やマニフェストの運用状況は確認しておくべき項目です。

もうひとつは、有価物として売却できる材まで処分費の対象に含まれていないかという点です。撤去一式として見積もられると、材質別の資源価値が反映されません。ステンレス製ダクトなど単価の高い材が含まれる場合は、売却分を切り分けた条件を提示できるかを確認してください。

4.ダクトを撤去・処分する手順

ここでは、事前調査から書類の保管までの流れを順に整理します。

(1)現地調査と石綿事前調査を実施する

最初に行うのが、現地の状況確認と石綿事前調査です。

対象となるダクトの系統、経路、延長、材質、保温材の有無、施工年を確認します。あわせて、設計図書や竣工図、過去の改修記録を集め、書面調査の材料を揃えます。図面が残っていない設備では現地調査の比重が大きくなるため、この段階で資料の有無を把握しておくと計画が立てやすくなります。

石綿事前調査は、前章のとおり有資格者が実施します。対象が建築設備なのか特定工作物なのかによって必要な資格が変わるため、調査を依頼する際は対象範囲を図面や写真で明示してください。調査結果は次工程以降の前提条件になるため、撤去工事の発注前に完了させておく必要があります。

(2)撤去範囲と処分対象を確定する

調査結果を踏まえて、撤去範囲と処分対象を確定します。

ダクトの撤去では、本体のほかに保温材、フランジ、吊りボルトや支持金物、ダンパー、チャンバー、吹出口・吸込口などの付属品が発生します。どこまでを撤去対象に含めるかによって、作業量も廃棄物の区分も変わります。

判断が必要になるのが、天井裏に敷設されたダクトを全量撤去するか、一部を残置するかです。全量撤去には天井の解体が伴うため作業範囲が広がりますが、残置すれば将来の改修時に同じ調査と工事が再度必要になります。中長期の使用計画を踏まえて判断してください。

(3)見積もりを依頼し、契約内容と許可を確認する

撤去範囲が固まったら、見積もりを取得します。

確認すべきは、撤去、収集運搬、処分の各工程を誰が担うのか、そして委託先が必要な許可を保有しているかです。産業廃棄物収集運搬業・処分業の許可について、有効期限、許可区域、許可品目に金属くずと保温材の該当区分が含まれているかを照合します。石綿含有廃棄物が発生する場合は、特別管理産業廃棄物の許可の有無が追加の確認項目になります。

見積書では、事前調査費、撤去費、搬出費、収集運搬費、処分費、石綿対策費が項目ごとに分かれているかを確認してください。「一式」表記で内訳が示されない見積もりは、範囲外作業の追加請求リスクがあります。

(4)撤去・搬出・収集運搬・処分を実施する

実作業は、養生、切断・取り外し、搬出、積み込み、運搬、処分の順に進みます。

石綿含有建材がある場合は、除去作業が先行します。レベル2に該当する保温材の除去では、作業場所の隔離と負圧集じん装置の設置が必要になり、周辺の立ち入り制限や営業時間の調整が発生します。稼働中の施設では、この工程が全体工期を左右します。

排出事業者側の役割は、作業に立ち会い、見積もりどおりの範囲で処理が実施されているかを確認することです。特に、保温材が確実に分離されているか、材質別の仕分けが行われているかは、資源化ルートに乗せる場合の条件に直結します。

(5)マニフェストと石綿関連書類を確認して保管する

処理の完了は、書類の確認をもって判断します。

マニフェストは区分ごとに交付し、運搬終了・処分終了・最終処分終了の各段階の返送を確認します。紙マニフェストの返送期限は交付日から90日以内、特別管理産業廃棄物は60日以内、最終処分終了については180日以内です。保存期間は5年間、委託契約書は契約終了後5年間となります。

石綿関連では、事前調査結果の記録が3年間の保存対象とされています。あわせて、事前調査結果報告の控え、石綿含有建材の除去作業に関する記録、作業完了確認の記録を保管してください。

これらの書類は、将来同じ建物で改修や解体を行う際の調査資料としても機能します。設備台帳と紐づけて保管しておくと、次回の調査範囲を絞り込めます。

5.ダクトの処分費用の内訳と相場

ダクトの撤去・処分費用は、主に以下の項目で構成されます。

費用項目内容
事前調査費書面調査・目視調査・分析調査(該当する場合)
撤去・解体費天井裏・機械室・屋上等からの取り外し、切断
石綿対策費隔離養生、負圧集じん装置、保護具(石綿が確認された場合)
搬出費養生、搬出経路の確保、高所作業
収集運搬費処分場までの運搬
処分費本体(金属くず)・保温材・石綿含有廃棄物の処理
買い取り金属スクラップとしての売却による相殺分

費用の幅が大きくなる要因は、石綿の有無が総額を大きく動かす点にあります。以下、変動要因ごとに整理します。

(1)ダクトの規模・延長・設置場所

ダクトの費用は、延長と断面サイズを基準に積算されるのが一般的です。

同じ延長でも、大断面の主ダクトと細径のスパイラルダクトでは、重量も切断の手間も異なります。系統数が多い場合は、系統ごとに切り離しと取り外しの作業が発生するため、単純な延長比例にはなりません。

見積もり依頼時には、系統図または平面図に撤去範囲を記入し、延長、断面サイズ、材質、保温材の有無を整理して提示してください。図面がない場合は現地調査を前提とすることになり、精度の高い見積もりを得るまでに時間がかかります。

(2)保温材の有無と石綿の該当性

費用に最も大きく影響するのが、石綿の該当性です。

石綿が確認されなければ、保温材は通常の産業廃棄物として処理でき、撤去も一般的な解体作業として進められます。一方、石綿含有と判定された場合は、除去作業に隔離養生と負圧集じん装置が必要になり、廃棄物も特別管理産業廃棄物として処理することになります。

事業者が公表する目安では、飛散性の高いレベル1の除去は1㎡あたり数万円規模、飛散性が比較的低いレベル3では1㎡あたり数千円規模とされ、レベル間で一桁近い差が生じます。ダクトの保温材が該当するレベル2はこの中間に位置しますが、工法、数量、施工条件によって幅があります。

調査段階の費用についても目安があります。書面調査・現地調査を含む事前調査は1現場あたり数万円から、分析調査は1検体あたり1万円台からとされ、検体数が増えるほど積み上がる構造です。系統や施工年代が異なるダクトが混在する現場では、この点が費用に効いてきます。

いずれも一時点の目安であり、実際の金額は現場条件で変わります。複数社から内訳付きの見積もりを取得したうえで比較してください。

(3)搬出条件と作業環境

搬出条件は、作業費に直接反映される要素です。

ダクトは天井裏、機械室、シャフト内、屋上など、作業性の悪い場所に敷設されていることが大半です。天井裏のダクトを撤去するには天井材の一部解体と復旧が必要になり、高所であれば足場や高所作業車の手配が加わります。屋上の排気ダクトではクレーンによる荷下ろしが必要になる場合もあります。

加えて、稼働中の施設では作業時間帯の制約が生じます。営業終了後の夜間作業や、休館日に限定した施工となれば、同じ作業量でも人件費の条件が変わります。工場では生産ラインの停止期間に合わせた工程調整が必要です。

見積もり依頼の際は、設置場所、階数、搬出経路、作業可能時間帯、周辺設備の状況を伝えてください。現地調査を省略した一式見積もりは、当日の追加費用が発生するリスクがあります。

6.ダクト撤去・処分業者の選び方

ダクトの撤去では、石綿への対応力と廃棄物処理の許可の両面を確認する必要があります。

(1)石綿事前調査に対応できる有資格者がいるか

まず確認すべきは、必要な資格を持つ調査者を確保できるかです。

前述のとおり、建屋内の空調・換気ダクトであれば建築物石綿含有建材調査者等、建築設備に当たらないプラント配管や屋外設備であれば工作物石綿事前調査者が必要になります。自社で有資格者を擁しているのか、外部の調査会社と連携するのかを確認してください。

あわせて、石綿が確認された場合の除去工事に対応できるか、対応できない場合の連携先があるかも確認項目です。調査と除去、撤去、処分で事業者が分かれる場合は、工程間の責任分界と全体の工程管理を誰が担うのかを事前に決めておく必要があります。

(2)産業廃棄物処理の許可を確認する

処分の委託先については、許可証の写しを取得して内容を照合します。

確認するのは、産業廃棄物収集運搬業許可と処分業許可の有無、有効期限、許可区域、そして許可品目です。ダクト本体は金属くず、保温材は材質に応じた区分が含まれている必要があります。

石綿含有廃棄物が発生する場合は、特別管理産業廃棄物の収集運搬業・処分業の許可が別途必要です。通常の産業廃棄物の許可では廃石綿等を扱えないため、この確認を省くと委託基準違反になります。石綿含有産業廃棄物(レベル3相当)についても、受け入れ条件を確認してください。

(3)撤去工事と処分委託を一括対応できるか

ダクトの撤去では、調査、除去、撤去、運搬、処分という複数の工程が発生します。

これらを一括で対応できる事業者に委託する場合と、工程ごとに依頼先が分かれる場合とでは、発注側の手配負担と管理負担が変わります。一括対応であれば窓口が一本化され、工程間の調整や責任分界が不明確になるリスクを抑えられます。

工程が分かれる場合は、各工程の担当と引き渡しの区切りを書面で確認してください。廃棄物処理法上、委託した処理の再委託は原則禁止されており、契約関係の整理が必要になります。

あわせて確認したいのが、金属スクラップとしての回収に対応できるかです。処分のみを行う事業者に依頼すると、有価売却できる材も処分費の対象として見積もられます。材質別に切り分けた条件を提示できる事業者であれば、総額を抑えられる可能性があります。

7.まとめ

事業用ダクトの廃棄では、本体を産業廃棄物(金属くず)として処理することに加え、保温材の区分と石綿の該当性を確認する必要があります。特に石綿については、工事の規模にかかわらず事前調査が義務であり、調査を実施できる者の資格要件も定められています。

資格要件で注意すべきなのは、同じダクトでも扱いが分かれる点です。建屋内の空調・換気ダクトは建築物の一部(建築設備)として建築物石綿含有建材調査者等の領域となり、建築設備に当たらないプラント配管や屋外設備は特定工作物として工作物石綿事前調査者の領域になります。石綿含有保温材が確認された場合は、廃石綿等として特別管理産業廃棄物の基準が適用され、工程も費用も前提が変わります。

費用は、規模と延長、石綿の該当性、搬出条件によって大きく変動します。まずは施工年と図面の有無を確認し、事前調査を撤去工事の発注前に完了させたうえで、内訳付きの見積もりを取得してください。

五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、ダクトを含む鉄系設備・製品の廃棄から、国内製鉄所等への還流によるクローズドループの構築までを支援します。設備更新や拠点閉鎖に伴う金属設備の適正処分と、鉄をはじめとする素材の資源化をご検討の際は、ぜひご相談ください。

監修

早稲田大学法学部卒業後、金融機関での法人営業を経て、中小企業向け専門紙の編集記者として神奈川県内の企業・大学・研究機関を取材。
2013年から2020年にかけては、企業のサステナビリティレポートの企画・編集・ライティングを担当。2025年4月よりフリーランスとして独立。
企業活動と社会課題の接点に関する実務経験が豊富で、サステナビリティ分野での実践的な視点に基づく発信を強みとしている。