高圧ガスボンベの処分|くず化・返却の流れ、費用相場と業者選定

事業で使用した高圧ガスボンベ(酸素、窒素、アルゴン、炭酸ガス、アセチレン、LPガスなど)は、他の設備や什器と同じようには処分できません。容器の廃棄は高圧ガス保安法に基づく「くず化」が前提となり、この処理を経て初めて産業廃棄物として排出できる状態になります。

さらに、国内で流通する容器の多くは充填事業者や販売店の所有物であるため、そもそも廃棄ではなく返却が正解になるケースも少なくありません。 本記事では、高圧ガスボンベの法的な位置づけ、所有形態・状態別の対応の分かれ方、くず化までの手順、処分費用の内訳と相場を左右する要素、業者選定の確認ポイントを整理します。

五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、くず化が完了した鋼製容器を鉄スクラップとして回収し、国内製鉄所等へ還流させる資源循環を支援します。設備更新や拠点閉鎖に伴って発生する鉄系の廃棄物を対象に、適正処理と有価物としての回収を組み合わせ、処分費用の抑制と再資源化の両立を図ります。ボンベを含む金属資源の回収ルートを検討している場合は、お気軽にご相談ください。

目次

1.高圧ガスボンベは産業廃棄物になるか

高圧ガスボンベは、廃棄物処理法だけで判断できる対象ではありません。ここでは、適用される法令の関係、くず化という手続きの位置づけ、所有形態による前提の違い、再検査期限とガス種別による扱いの差を整理します。

(1)容器の廃棄は高圧ガス保安法の規制を受ける

高圧ガスボンベの廃棄は、まず高圧ガス保安法(経済産業省所管)の規制対象として扱う必要があります。

一般的な産業廃棄物であれば、廃棄物処理法上の品目区分を判断し、許可を持つ業者に委託すれば手続きが完結します。しかし高圧ガス容器は、製造時の容器検査から使用中の容器再検査、そして用途廃止に至るまで一貫して高圧ガス保安法の管理下に置かれており、廃棄段階についても同法に定めがあるためです。

このため、鋼製のボンベを「金属くずだからスクラップに出せる」と判断して、そのまま回収業者に引き渡すことはできません。内部に圧力やガスが残った容器を切断・圧縮すれば、破裂や噴出、引火の危険が生じます。廃棄物処理法上の区分判断は、高圧ガス保安法上の処理を終えた後の話になると理解しておく必要があります。

なお、高圧ガスそのものの廃棄についても、一般高圧ガス保安規則第62条、液化石油ガス保安規則第60条、冷凍保安規則第34条に技術上の基準が定められています。容器の処理とガスの処理は別々の規定であり、どちらも満たす必要があります。

参考:https://www.pref.tochigi.lg.jp/f02/work/kyoka/shigoto/hoan1.html

(2)「くず化」を経なければ廃棄物として排出できない

高圧ガス保安法第56条第6項では、容器または附属品を廃棄する者は、これをくず化し、その他容器または附属品として使用することができないように処分しなければならないと定められています。

この規定は、圧力容器が再び容器として流通することを防ぐためのものです。強度や気密性が確認されていない容器にガスが充填されれば、重大な事故につながります。そのため、廃棄の意思決定と同時に、二度と容器として使えない状態にすることが義務づけられています。

くず化の実務は、容器の外観確認、充填されていたガス種の確認(不明な場合は分析による特定)、残ガスの処理、キャップや容器弁といった附属品の取り外し、容器本体の切断という工程で進みます。条文が「容器又は附属品」と定めているとおり、バルブなどの附属品もくず化の対象に含まれる点は見落とされやすい部分です。

行政の解釈では、くず化とは容器を二つに切断するなど、後から加工しても一度くず化された容器であることが容易に確認できる処置を指すとされています。小さな穴を開けただけで埋め戻せてしまうような処置は、くず化には含まれません。液化石油ガス容器については、刻印箇所と底部に直径5mm以上の穴をそれぞれ3箇所ずつ開ける方法や、機械的に押しつぶす方法も認められていますが、可燃性ガスの容器では内部のガスを完全に放出してから実施することが前提です。

なお、この条項は令和6年5月24日施行の改正により、従来の第5項から第6項へ繰り上がっています。社内規程や作業手順書で条番号を引用している場合は、記載の確認が必要です。

参考:https://www.khk.or.jp/Portals/0/khk/info/journal/2018/201804-08.pdf
参考:https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/hipregas/files/20240508_hg_1.pdf

(3)容器の多くは販売店等の所有物であり返却が前提になる

処分方法を検討する前に確認すべきなのが、その容器が自社の資産かどうかです。

産業用・医療用の高圧ガス取引では、販売されているのは中身のガスであり、容器そのものは充填事業者や販売店から貸与されている形が一般的です。所有権が自社にない容器を独自に廃棄することはできず、この場合の「処分」は販売元への返却を意味します。

判断材料になるのは、購入時の契約内容と容器本体の刻印です。産業用の高圧ガス容器では、肩部に「アルファベット1文字+3桁の数字」の容器所有者登録記号番号が刻印されており、日本産業・医療ガス協会が公開する容器所有者登録記号番号簿を照合すれば所有者を特定できます。LPガス容器には所有者刻印がなく、通常は胴部に所有者の名称・住所・電話番号が塗装されています。

実務上は、不要になった時点で速やかに供給元へ引き取りを依頼するのが基本です。使用予定のない容器を敷地内に滞留させると、腐食の進行、所有者情報の判読不能、担当者の異動による経緯の不明化といった形で、後の対応が難しくなります。

参考:https://www.jimga.or.jp/business/youki/

(4)容器再検査に合格しない容器・期限を過ぎた容器の扱い

高圧ガス容器は、一定期間ごとに容器再検査を受けなければガスの再充填ができません

再検査期間は容器の種類と製造からの経過年数によって定められています。溶接容器・超低温容器・ろう付け容器は製造後20年未満で5年、20年以上で2年、一般継目なし容器は5年、一般複合容器(FRP)は3年が基本です。ただし1989年3月31日以前に容器検査に合格した容器などには経過措置により短い期間が適用される場合があり、液化石油ガス容器は容積・重量区分ごとに別の期間が設定されています。

期限が到来した容器は、再検査に合格すれば継続使用できますが、腐食・へこみ・ねじ部の損傷などで不合格となった容器は再充填できず、くず化の対象になります。また一般複合容器のように、製造後一定年数を超えると再検査自体が受けられず、くず化処分となる種類もあります。

自社所有の容器を保有している事業場では、刻印の再検査年月と容器種別を一覧化しておくと、更新すべき容器と廃棄すべき容器の切り分けが容易になります。期限が読み取れないほど刻印が腐食している容器は、判断を自社で行わず、高圧ガス販売店や容器検査所に確認を依頼してください。

(5)充填されていたガスの種類によって危険度と処理条件が変わる

同じ高圧ガスボンベでも、充填されていたガスの性質によって残ガス処理の難易度と必要な体制が大きく異なります

高圧ガス保安法では、ガスを可燃性ガス、毒性ガス、不活性ガス、支燃性ガスといった性質で区分しており、放置容器の回収を担う各地の団体でも、この性質に基づいて取り扱い区分を分けています。窒素・アルゴン・ヘリウム・炭酸ガスなどの不活性ガスは比較的取り扱いが容易である一方、水素・メタン・アセチレンなどの可燃性ガス、塩素・アンモニアなどの毒性ガスは、放出方法や中和処理を含めて専門的な設備と技術を要します。

酸素は不燃性ですが、支燃性ガスとして他の物質の燃焼を著しく促進するため、油分との接触や可燃性ガス容器との混在保管が事故要因になります。またフロンやハロンのように、大気放出そのものが別の法令上の問題になるガスもあります。

見積もりや相談の段階では、容器ごとに充填ガス名を申告することが前提になります。刻印や塗色から特定できない容器は「ガス名不明容器」として扱われ、内容物の分析が必要になるため、対応できる事業者と費用条件が変わります。

参考:https://ryuhokyo.com/pdf/youkisyori.pdf

2.所有形態・状態別の高圧ガスボンベ処分の判断

高圧ガスボンベの対応方針は、所有形態と残ガスの有無で分かれます。ここでは、実務で発生しやすい5つのパターンごとに判断の考え方を整理します。

(1)レンタル・貸与容器は販売元への返却が原則になる

充填事業者や販売店から貸与を受けている容器は、処分ではなく返却の対象です。

所有権が自社にない以上、くず化を含む廃棄の判断権限も自社にはありません。容器の廃棄をする者に義務を課す高圧ガス保安法第56条第6項の規定は所有者側に及ぶものであり、使用者が独断で切断や引き渡しを行うことは、契約上も保安上も適切ではありません。

手順としては、購入先の販売店に連絡し、空容器の引き取りを依頼します。設備更新や拠点閉鎖でまとまった本数が発生する場合は、本数、ガス種、保管場所、搬出経路をあらかじめ整理して伝えると、引き取り日程の調整が進めやすくなります。

返却時に手数料が発生する場合もあるため、費用負担の有無は事前に確認してください。長期間使用していない容器では、容器管理料や返却条件が契約時と変わっていることもあります。

(2)自己所有容器はくず化に対応できる事業者への依頼が必要になる

自社で購入した容器や、所有権が自社に移っている容器については、くず化に対応できる事業者へ依頼することになります。

残ガスの放出、附属品の取り外し、容器の切断はいずれも危険を伴う作業であり、無資格・無設備での実施は事故に直結します。高圧ガスの廃棄は保安規則上の技術基準に従う必要があり、切断作業も内部に可燃性ガスが残存していないことを確認したうえで行うべき工程です。

依頼先としては、高圧ガス販売業者、充填事業者、容器検査所、これらと連携する処理事業者が候補になります。まずは取引のあるガス販売店に相談し、自社所有容器のくず化に対応できるか、対応できない場合の紹介先があるかを確認するのが実務上の近道です。

なお、くず化を経た後の容器は鋼材の塊であり、この段階からは金属くずとしての産業廃棄物処理、または鉄スクラップとしての有価回収の対象になります。くず化までを担う事業者と、その後の資源化を担う事業者が異なる場合は、引き渡しの区切りをどこに置くかを事前に決めておく必要があります。

(3)残ガスがある容器は種類と量の申告が前提になる

内部にガスが残っている容器は、残ガスの種類と量を申告したうえで対応を依頼します。

残ガスの性質によって処理方法、必要な設備、作業時間が変わり、見積もり条件そのものが変わるためです。申告のない容器が持ち込まれた場合、受け入れを断られるか、現地での確認作業が追加費用として発生します。

判断が難しいのは、バルブを開けても出てこないため空だと考えられている容器です。バルブの固着や配管の詰まりで放出できないだけのケースがあり、外観からは残圧の有無を確定できません。自社で無理にバルブを操作したり、穴を開けたりする対応は避けてください。

充填ガスが特定できない容器については、内容物の分析が必要になります。分析の要否と費用負担、分析結果によって処理条件が変わる可能性については、見積もり段階で確認しておく項目に含めます。

日本産業・医療ガス協会の2018年度特別回収結果では、不明容器は569本で、アセチレン容器が最も多く、酸素容器と合わせて全体の60%を占めました。内容物や所有者が分からない容器が一定数回収されていることは、ガス種を自己判断せず、刻印・表示の確認と必要に応じた内容物分析を見積もり条件に含める必要性を裏付けます。ただし、同協会の会員企業等が1か月間に回収した容器の集計であり、全国の年間発生数や現在の構成比を示すものではありません。

(4)販売元が不明・廃業している容器の相談先

購入経緯が不明な容器や、供給元が廃業している容器についても、相談できる窓口があります

まず確認するのは容器の刻印です。前述の容器所有者登録記号番号から所有者が判明すれば、その所有者へ引き取りを依頼できます。LPガス容器であれば胴部の塗装表示が手掛かりになります。

所有者が特定できない場合は、都道府県の高圧ガス担当課、または各地の地方高圧ガス容器管理委員会・高圧ガス保安協会(各都道府県団体)が相談先になります。これらの団体は、路上や工事現場などで見つかった放置容器の回収・処理の仕組みを持っており、所有者不明容器についての相談に応じています。

ただし、回収と処理にかかる費用は原則として依頼者の負担となり、団体側で処理可能と判断された場合に回収が成立する運用です。自社敷地内で長年所在不明のまま保管されている容器がある場合は、放置期間が長引くほど腐食による危険度と対応コストが増すため、早い段階で相談してください。

参考:https://www.jimga.or.jp/business/houchi_youki/
参考:https://www.pref.yamanashi.jp/shobo/hoan/kouatugas/documents/tyuuikanki.html

高圧ガス保安協会の資料によると、全国で回収された一般ガスの放置容器は、2012年度1,926本、2013年度2,046本、2014年度1,814本、2015年度2,146本、2016年度3,269本でした。各年度に相当数が回収されていることは、販売元や所有者が分からない容器が実務上発生し、専門窓口による回収・処理が必要になることを示します。ただし、2016年度までの一般ガス容器のみの集計で、現在の発生件数やLPガス容器を含む全体像を示すものではありません。

(5)くず化後の容器本体は金属資源として評価され得る

くず化を終えた鋼製容器は、鉄スクラップとして評価される可能性があります。

高圧ガス容器は高い内圧に耐える設計のため肉厚の鋼材が使われており、40〜50L級の容器でも単体で数十kgの重量があります。異物や付着物が少なく、まとまった本数が確保できる場合は、廃棄物としての処分費を支払うのではなく、有価物としての引き渡しが成立する余地があります。

一方で、成立条件は一律ではありません。切断形状、材質(鋼製かアルミ製か、複合容器か)、塗装や断熱材の有無、残存する附属品、回収拠点までの距離、その時点の市況によって受け入れ可否と単価が変わります。アルミ容器や複合容器は鋼製とは別ルートでの取り扱いになります。

産業環境管理協会の集計では、2023年度の国内老廃スクラップ購入量は1,760万トン、国内加工スクラップ購入量は710万トン、輸出量は690万トンです。老廃スクラップ購入量は2007年度の3,040万トンをピークに増減しており、使用済み製品由来の鉄を受け入れる市場が存在する一方、需給が一定ではないことも示しています。くず化後の鋼製容器も金属資源として評価され得ますが、実際の売却可否と単価は、重量、材質構成、附属品や塗装の残存状況、地域相場、運搬費によって変わる点に留意が必要です。

3.高圧ガスボンベを処分する手順

ここでは、容器情報の整理から書類の保管まで、実務の流れを順に整理します。

(1)容器情報とガス種・所有形態を洗い出す

処分の検討は、保有している容器の全数把握から始めます。

高圧ガスボンベは、対応方針が容器ごとに分かれる資産です。まとめて1社に依頼すれば済むとは限らず、返却対象と自己所有分、不活性ガスと可燃性・毒性ガス、空容器と残ガスありが混在していれば、それぞれ別の手配が必要になります。

洗い出す項目は、ガス種、容器の刻印内容(所有者登録記号番号、製造年月、再検査年月、内容積)、材質、本数、残ガスの有無、保管場所です。刻印は肩部に集約されているため、腐食で読み取れない場合は写真を撮り、判読を依頼する対象として記録しておきます。

この段階で、返却できるもの、くず化が必要なもの、所有者が特定できないものに仕分けておくと、以降の相談先の切り分けが明確になります。屋外に長期保管されていた容器は、腐食の程度も併せて記録してください。

(2)販売元・充填事業者・処理事業者へ確認し見積もりを取得する

仕分けができたら、区分ごとに相談先へ連絡と見積もり依頼を行います。

貸与容器は販売元へ引き取りを依頼し、自己所有容器はくず化に対応できる事業者へ相談します。所有者不明の容器は、都道府県担当課または地方の高圧ガス容器管理委員会・保安協会が窓口になります。

見積もり依頼時に伝える情報は、ガス種、本数、容器サイズ、残ガスの有無と推定量、所有形態、保管場所と搬出経路です。ガス名不明容器が含まれる場合は、その旨と本数を明示します。情報が不足すると、現地確認後の再見積もりや当日の受け入れ拒否につながります。

見積書では、残ガス処理費、くず化作業費、収集運搬費、処分費または買い取り額が項目ごとに分かれているかを確認します。「一式」表記のみで内訳が示されない場合は、内訳の提示を依頼したうえで比較してください。

(3)残ガスの処理と附属品の取り外しを行う

くず化の前段として、残ガスの処理と附属品の取り外しが必要になります。

容器内に圧力が残ったまま切断すれば破裂や噴出につながり、可燃性ガスが残っていれば切断時の火花で引火します。この工程は、ガスの性質に応じた放出・回収・中和の設備と、それを扱う技術を持つ事業者が担う領域です。

排出事業者側で行うべきなのは、無理な自己処理を行わないことと、状態を正確に伝えることです。バルブが固着している、キャップが紛失している、塗色や刻印から内容物が判別できないといった情報は、作業計画に直接影響します。

なお、取り外された容器弁などの附属品も、法令上はくず化の対象です。真鍮製のバルブ類は非鉄金属として別途評価される場合があるため、本体と附属品をどう扱うかは、あらかじめ事業者に確認しておきます。

(4)容器の切断・くず化を実施する

残ガス処理が済んだ容器は、切断によるくず化を行います。

前述のとおり、くず化は容器を二つに切断するなど、一度くず化された容器であることが後から容易に確認できる処置である必要があります。埋め戻せる程度の小さな穴を開けるだけでは、規定を満たしません。

作業自体は事業者側が実施しますが、排出事業者としては、対象とした容器が漏れなく処理されたかを本数ベースで確認します。事前に作成した容器一覧と照合し、返却分・くず化分・保留分の内訳を記録に残してください。

くず化の完了をもって、その鋼材は容器ではなくなります。この時点から、金属くずとしての産業廃棄物処理、または鉄スクラップとしての有価取引という、廃棄物処理法および取引上の判断に移行します。

(5)処理内容の証明とマニフェスト等の書類を確認・保管する

処理の完了は、書類による確認をもって判断します。

くず化については、実施内容を証明する書類の発行可否と記載内容を事業者に確認します。容器の所有者として保安上の対応を行った記録は、後日の照会や社内の資産除却手続きの裏づけになります。

くず化後の鋼材を産業廃棄物として委託する場合は、廃棄物処理法上の手続きが適用されます。収集運搬・処分それぞれについて書面での委託契約を締結し、産業廃棄物管理票(マニフェスト)を交付して、運搬終了・処分終了・最終処分終了の各段階の返送を確認します。紙マニフェストの返送期限は交付日から90日以内(特別管理産業廃棄物は60日以内)、最終処分終了については180日以内で、保存期間は5年間です。委託契約書も契約終了後5年間の保存が必要になります。

一方、有価物として売却する場合は、廃棄物処理法上の委託手続きではなく取引として扱われるため、計量伝票や売買記録が確認資料になります。同じ案件で処分と売却が混在する場合は、どの容器がどちらのルートに乗ったかを対応づけて記録しておくと、社内報告や後日の照会に対応しやすくなります。

参考:https://www.env.go.jp/content/900479496.pdf

4.高圧ガスボンベの処分費用の内訳と相場

高圧ガスボンベの処分費用は、主に以下の項目で構成されます。

費用項目内容
収集運搬費保管場所から処理拠点までの運搬
残ガス処理費残留ガスの放出・回収・中和処理
分析費ガス名不明容器の内容物特定
くず化費附属品の取り外し、容器の切断作業
処分費/買い取りくず化後の鋼材の処分費、または有価売却額

高圧ガスボンベの処分費には、業界共通の公表相場がありません。ガス種と残ガスの状態によって工程が変わるうえ、対応できる事業者が限られるためです。目安としては、残ガスがない不活性ガス容器であれば1本あたり数千円程度からの設定が見られる一方、残ガスのある可燃性・毒性ガス容器や内容物不明の容器では、これを大きく上回ることがあります。実際の金額は、以下の要素によって変動します。

(1)ガスの種類と残ガスの有無

費用構成に最も大きく影響するのが、ガスの種類と残ガスの有無です。

不活性ガスの空容器であれば、確認と切断が中心の比較的単純な工程で完了します。一方、可燃性ガスや毒性ガスが残っている容器は、放出・回収・中和にそれぞれ専用の設備と手順が必要になり、作業単価と所要時間が上がります。

内容物が特定できない容器は、分析工程が加わるためさらに条件が変わります。ガス名不明容器を含む場合は、分析費の負担者と、分析結果によって見積もりが変動する範囲を事前に取り決めておく必要があります。

見積もり比較の際は、総額ではなくガス種別・状態別の単価で比較してください。前提とした残ガスの想定が事業者間で異なると、総額は比較の材料になりません。

(2)容器のサイズと本数

容器サイズと本数は、運搬条件と作業量の両方に影響します。

同じ処理でも、7L程度の小型容器と47L級の大型容器、さらに大型のカードル(複数本を集合させた形態)では、重量も取り回しも異なります。運搬車両の種類、積載可能本数、荷役に必要な人員が変わるため、1本あたりの費用も変わります。

一方で、本数がまとまるほど1本あたりの収集運搬費は下がる傾向があります。拠点ごとに少量ずつ依頼するより、社内で発生分を集約してから一括で相談したほうが、単価条件は改善しやすくなります。

ただし、集約のために長期保管を選ぶと腐食が進み、有価性の低下や取り扱い条件の悪化を招きます。保管環境と依頼タイミングは、費用面だけで判断しないことが重要です。

(3)所有形態と契約条件

所有形態は、費用が発生するかどうかの分岐点になります。

貸与容器の返却であれば、原則として通常の取引の一環として処理され、くず化費用を自社で負担する構図にはなりません。ただし返却時の手数料や、長期未返却分の容器管理料が設定されている場合があります。

自己所有容器は、残ガス処理からくず化までの費用を自社で負担することになります。同じ本数でも、貸与容器中心の事業場と自己所有容器中心の事業場では、総額が大きく変わります。

所有形態が判然としない容器がある場合、この確認を先に行うだけで見積もり条件が変わる可能性があります。刻印照会は費用のかからない確認作業であり、依頼前に済ませておく価値があります。

(4)保管場所と搬出条件

保管場所の条件は、作業費に直接反映されます。

車両を横付けできる屋外の平地に整然と保管されている場合は、積み込み作業を短時間で終えられます。一方、屋内の奥まった場所、地下、段差や狭い通路を経由する経路では、人力での運び出しや台車・養生の準備が必要になります。

倒れた状態で放置されている容器、他の資材に埋もれている容器、雨水がたまった環境で腐食が進んだ容器は、安全確認と養生に追加の手間がかかります。腐食が著しい容器は、運搬中の破損リスクを踏まえた扱いが必要になる場合があります。

見積もり依頼の際は、保管状況がわかる写真を添えてください。現地の条件が事前に共有されていれば、作業当日の追加請求や回収不可の判断を避けられます。

5.高圧ガスボンベのくず化・回収業者の選び方

高圧ガスボンベの処分は、対応できる事業者が限られます。ここでは、依頼先を選定する際の確認ポイントを整理します。

(1)高圧ガス保安法上の対応体制を確認する

依頼先の選定では、高圧ガス保安法上の対応体制が第一の確認事項になります。

残ガスの放出・回収・中和と容器の切断は、保安規則上の技術基準を満たす設備と手順のもとで実施されるべき作業です。一般的な不用品回収や金属スクラップ回収の体制だけでは、この工程を担うことはできません。

確認すべきは、高圧ガスの販売や充填に関する事業者としての届出・許可の状況、対応可能なガス種の範囲、内容物不明容器の分析体制です。可燃性ガスや毒性ガスは対応可否が分かれやすいため、自社が保有する容器のガス種を提示したうえで確認します。

取引のあるガス販売店が対応できない場合でも、対応可能な事業者を紹介できることがあります。まずは供給ルートの関係者に相談し、そこから選定範囲を広げるのが確実です。

(2)残ガス処理からくず化、廃棄物処理まで一括対応できるか確認する

高圧ガスボンベの処分では、残ガス処理、くず化、その後の資源化または廃棄物処理という複数の工程が発生します。

これらを一括で対応できる事業者に委託する場合と、工程ごとに依頼先が分かれる場合とでは、排出事業者側の手配負担と管理負担が変わります。一括対応であれば窓口が一本化され、工程間の責任分界が不明確になるリスクを抑えられます。

工程が分かれる場合は、どこまでを誰が担うのか、引き渡しの区切りをどこに置くのかを書面で確認します。くず化後の鋼材を産業廃棄物として委託する部分については、収集運搬業・処分業の許可品目に金属くずが含まれているかの確認が必要です。廃棄物処理法上、委託した処理の再委託は原則禁止されており、排出事業者が各処理業者と直接契約する形が基本になります。

あわせて、自社側で事前に対応すべき作業の有無も確認してください。保管場所の整理、搬出経路の確保、容器一覧の作成といった準備の範囲が明確になっていれば、当日の作業が滞りません。

参考:https://www.env.go.jp/content/900521116.pdf

(3)くず化後の資源化まで提案できるか確認する

くず化後の鋼材をどう扱うかは、総額に影響する要素です。

処分のみを行う事業者に依頼した場合、くず化後の鋼材も処分費の対象として見積もられます。一方、金属資源としての回収に対応できる事業者であれば、有価物として引き取れる分を切り分けたうえでの見積もりが可能になります。

確認するのは、処分対象と有価回収対象が分けて記載されているか、有価回収が成立する場合の単価や費用相殺の条件が示されているか、材質別(鋼製・アルミ製・複合容器・真鍮製附属品)の取り扱いがどうなるかです。

まとまった本数が発生する設備更新や拠点閉鎖の案件では、この切り分けの有無が総額の差として表れます。仕分けの基準が示されないまま総額だけが提示される場合は、何本をどの区分で見積もったのかを個別に確認したうえで比較してください。

6.高圧ガスボンベを廃棄せず資源循環に回すメリット

ここでは、くず化後の鋼材を資源循環ルートに乗せた場合のメリットを、処分費用、資源価値、環境負荷の3つの観点から整理します。

(1)処分費用を抑えられる可能性がある

くず化後の鋼材を有価物として引き渡せる場合、処分費用の一部を相殺できる可能性があります。

産業廃棄物として処理すれば、処分費と収集運搬費が発生します。これに対し、有価物として成立すれば処分費が発生しないだけでなく、売却額を残ガス処理費やくず化費用に充当できる余地が生まれるためです。

成立しやすいのは、まとまった本数があり、材質が揃っており、附属品や塗装以外の異物が少ない場合です。逆に、少量が散発的に発生するケースや、材質が混在しているケースでは、運搬費が上回って有価性が失われることがあります。

そのため、拠点内に滞留している容器は、発生の都度個別に判断するより、一定量をまとめて相談したほうが条件は改善しやすくなります。ただし、屋外での長期保管は腐食を招くため、保管環境の管理と併せて検討してください。

(2)鋼製容器を鉄資源として再利用できる

高圧ガス容器は、高い内圧に耐えるために肉厚の鋼材が使われた製品です。

くず化によって容器としての機能は失われますが、素材としての鉄の価値は残ります。鉄はリサイクルによる品質劣化が小さく、繰り返し資源として循環させられる素材であり、鉄スクラップは国内で調達できる資源としての価値を持ちます。

環境省の令和5年度実績では、産業廃棄物の再生利用率は金属くずが95.4%であり、廃プラスチック類の63.0%、廃油の46.1%などと比べて高い水準にあります。くず化を経た鋼製容器は金属くずとして高い再資源化可能性を持つ一方、残ガスが処理されていない段階では容器としての取り扱いが優先されることを示しています。なお、この数値は全国の金属くず全体の実績であり、高圧ガス容器単体の再生率ではありません。実際の受け入れ可否は、材質、切断状態、附属品や付着物の有無、受入業者の条件によって変わります。

くず化した鋼材を鉄スクラップとして回収し、国内製鉄所などで再び鋼材の原料に戻す流れは、使用済みの鉄を廃棄せず循環利用するサーキュラーエコノミーの一例です。鉄が循環利用に適している理由や、鉄スクラップを製造工程へ還流させる仕組みについては、「鉄のサーキュラーエコノミー|事例や鉄鋼製品一覧、リサイクル性も」で詳しく解説しています。

産業環境管理協会の図20では、2022年度の金属くずの再生利用率は95.7%で、がれき類96.0%に次ぐ水準です。廃プラスチック類62.3%、廃油44.8%と比べても高く、再生利用量は639万トン、最終処分量は15.2万トンです。これは、くず化済み鋼製容器を鉄資源として循環させる意義を裏付けます。ただし、全国の金属くず全体の集計で、高圧ガス容器単体の率ではなく、受入可否は切断状態、付着物、材質で変わります。

(3)環境負荷の低減につながる

くず化後の鋼材を再資源化ルートに回すことは、環境負荷の低減にもつながります。

最終処分される廃棄物量を減らせるだけでなく、鉄スクラップを原料とする電炉での製鋼は、鉄鉱石と石炭から製造する高炉プロセスと比べてCO2排出量を抑えられるとされているためです。

資源エネルギー庁掲載のIEAシナリオでは、世界の鉄投入量を2022年、2030年、2050年で比較すると、総量の棒はおおむね同程度で推移する一方、鉄スクラップ由来の区画は段階的に拡大し、2050年には全体のおよそ半分を占めます。これは、くず化後の鋼製容器を再生原料へ回すことが、今後の鉄資源循環に接続する点を裏付けます。ただし、世界全体のネットゼロシナリオであり、個別案件のCO2削減量は電力構成、輸送距離、スクラップ品質で変動します。

7.まとめ

高圧ガスボンベの処分は、一般的な産業廃棄物とは出発点が異なります。容器の廃棄は高圧ガス保安法第56条第6項に基づくくず化が前提であり、外観確認、ガス種の特定、残ガス処理、附属品の取り外し、容器の切断を経て、はじめて金属くずまたは鉄スクラップとしての判断に移ります。切断や穴あけを自社で行うことはできません。

まず確認すべきは所有形態です。国内で流通する容器の多くは販売店等からの貸与品であり、この場合は返却が原則になります。自己所有容器はくず化に対応できる事業者への依頼が必要で、所有者が不明な容器は都道府県担当課や地方の高圧ガス容器管理委員会・保安協会が相談先になります。費用は、ガス種と残ガスの有無、容器サイズと本数、所有形態、保管場所と搬出条件によって変動するため、容器一覧と保管状況の写真を揃えたうえで、内訳付きの見積もりを取得してください。

五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、くず化を終えた鋼製容器を含む鉄系製品の回収から、国内製鉄所等への還流によるクローズドループの構築までを支援します。設備更新や拠点閉鎖に伴う金属資源の再資源化と、処分費用の最適化をご検討の際は、ぜひご相談ください。

監修

早稲田大学法学部卒業後、金融機関での法人営業を経て、中小企業向け専門紙の編集記者として神奈川県内の企業・大学・研究機関を取材。
2013年から2020年にかけては、企業のサステナビリティレポートの企画・編集・ライティングを担当。2025年4月よりフリーランスとして独立。
企業活動と社会課題の接点に関する実務経験が豊富で、サステナビリティ分野での実践的な視点に基づく発信を強みとしている。