工作機械の廃棄方法と費用|買取・スクラップ・産業廃棄物処理の判断

工作機械の処分方法は、中古機械としての買取、金属スクラップとしての回収、産業廃棄物としての処理の3つに大別されます。どの方法に該当するかによって、費用負担の有無、依頼先、必要な手続きが大きく変わります。
本記事では、処分方法の判断基準、産業廃棄物として処分する場合の法的手続き、費用の内訳、複数台をまとめて処分する際の進め方までを整理します。あわせて、廃棄ではなく売却や資源循環を選択することで得られる経営上のメリットについても解説します。

五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、工作機械や付帯設備の廃棄・資源循環を起点に、中古売却、金属スクラップとしての回収、産業廃棄物処理を整理し、処分費用の削減と鉄資源の有効活用を支援します。複数台の工作機械をまとめて処分したい場合や、回収した鉄スクラップを国内製鉄所等へ還流させるクローズドループの構築を検討している場合は、お気軽にご相談ください。

目次

1.工作機械廃棄の判断基準

まずは、買取・スクラップ・産業廃棄物処理の切り分け方、処分範囲の整理方法、古い機械や大型機械で確認すべきポイントを解説します。

(1)買取・スクラップ・産業廃棄物処理のどれになるか

工作機械の処分方法は、再販可能な機械は中古機械としての買取、再販は難しいが金属資源として価値があるものはスクラップ回収、いずれも難しいものは産業廃棄物処理の3種類になります。

処分方法を分ける主な判断材料は、年式、メーカー、型式、稼働状況、故障の有無、中古市場での需要です。同じ機種でも、稼働可能かどうか、メンテナンス履歴が残っているかどうかで、買取対象になるかスクラップ扱いになるかが変わります。

処分方法によって、費用を受け取る側になるか支払う側になるかが逆転するだけでなく、依頼先の業種や必要な契約・手続きも異なります。
買取であれば中古機械買取業者、スクラップであれば金属スクラップ業者、産業廃棄物処理であれば許可を持つ収集運搬業者・処分業者への委託が必要です。

対象機械の情報を整理したうえで、どの処分方法が現実的かを最初に判断し、その方向性に沿って見積もり取得や業者選定を進める必要があります。

参考:https://www.env.go.jp/recycle/yugai/conf/conf27-03/H280107_06.pdf

(2)本体と付帯設備の処分範囲を整理する

工作機械の処分では、本体以外にも付帯設備を含めた処分範囲を見積もり前に確定させる必要があります。処分対象には、制御盤、周辺装置、架台、配線、配管、集塵設備のほか、機内に残る廃油や切削液が含まれる場合があります。

処分範囲が曖昧なまま業者に依頼すると、現地作業の段階で作業範囲の認識違いが生じ、追加費用の発生工程の遅延につながります。特に、基礎やアンカーボルトの撤去、床面補修、配線・配管の切り離しをどちらが行うかは、見積もり金額に影響する項目です。

廃油や切削液は工作機械本体とは別区分の廃棄物として扱われる場合があるため、残量や抜き取り作業の要否もあわせて確認しておく必要があります。

参考:https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/law/information/pdf/manage_h18fy/manage1.pdf

(3)古い機械・故障機・大型機械で確認すべきポイント

古い機械や故障機は、中古市場での売却が難しく、スクラップ回収または産業廃棄物処理になる可能性が高いため、処分前の状態確認が重要になります。製造年、故障箇所、腐食の程度、部品の欠損状況を確認し、買取業者への打診が現実的かどうかを見極める必要があります。

大型工作機械では、重量と寸法に加えて、設置場所と搬出経路の確認が不可欠です。搬出口の幅、天井高、床の耐荷重、通路の状況によって、機械の分解・解体の要否や、クレーン・フォークリフトなどの重機作業の要否が変わり、費用にも直結します。

長期間稼働していない機械や据付設備の場合は、機内の残油や切削液の残存量、周辺設備の残置状況まで含めて確認が必要です。液体類が残ったままでは搬出できない場合があるため、抜き取り作業を誰が行うかを事前に決めておくことが求められます。

これらの情報を写真や図面とあわせて整理し、業者への見積もり依頼時に提示できる状態にしておくと、見積もり精度が高まります。

2.工作機械の処分方法

工作機械の処分方法には、中古機械としての売却、金属スクラップとしての回収、産業廃棄物としての撤去・処分の3つがあります。ここでは、それぞれの方法が適用されるケースと、依頼先や費用負担の違いを解説します。

(1)中古工作機械として売却できるケース

正常に稼働し、中古市場で需要のあるメーカー・型式・年式の工作機械は、廃棄ではなく中古機械として売却できる可能性があります。

売却の可否は、稼働状況、故障履歴、製造年、型式、付属品の有無、メンテナンス状況などを総合して判断されます。取扱説明書や検査成績書、メンテナンス記録が残っている機械は、状態の証明がしやすく、査定の判断材料になります。

主な売却先には、工作機械買取業者への売却、設備更新時の販売店による下取り、工場閉鎖や移転に伴う設備一括売却があります。担当者は、機種名、型式、製造年、稼働状況をまとめた設備リストを作成し、複数の買取業者に査定を依頼して条件を比較することが実務上の進め方になります。査定額に加えて、搬出作業費を誰が負担するか、引き渡し時期を操業スケジュールと調整できるかも確認が必要です。

(2)金属スクラップとして回収してもらうケース

中古機械としての再販が難しい工作機械でも、鉄や非鉄金属を含む設備として金属スクラップ回収の対象になる場合があります。工作機械は鋳物や鋼材を多く含むため、老朽化や故障で中古価値がつかない機械でも、材質、重量、分別状況によっては有価物として売却できる可能性があります。

スクラップとしての手取り額は、金属相場に加えて、解体の要否、モーターや制御盤などの分別状況、残置物の有無、搬出方法によって変動します。解体や搬出に重機作業が必要な場合は、その作業費がスクラップ価値から差し引かれるため、費用負担が発生する場合もあります。

担当者は、スクラップ業者に現地確認を依頼し、有価買取になるのか、費用相殺になるのか、処分費の支払いが必要になるのかを見積もりで明確にする必要があります。廃油や切削液、プラスチック部材などスクラップにならない部分の処理費用が別途発生するかどうかも、あわせて確認しておくことが求められます。

参考:https://www.hyogo-sanpai.or.jp/library/5e7c44bfa364866e4a5c6a19/63d722978db7306638ca5f31.pdf

(3)産業廃棄物として撤去・処分

中古売却もスクラップ回収も難しい工作機械は、産業廃棄物として撤去、収集運搬、処分を委託する流れになります。著しい故障や腐食、部品の欠損がある機械、複雑な解体作業が必要な据付機械では、処分費を支払って廃棄する対応が中心になります。

事業活動に伴って生じた工作機械は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)における産業廃棄物に該当し、排出事業者が処理責任を負います。処理を委託する場合でも、排出事業者としての責任は業者に引き渡した時点で終わるものではなく、最終処分の完了までの管理が求められます。

処理対象は工作機械本体にとどまらず、機内の廃油や切削液は廃油・廃酸・廃アルカリなど本体とは別の産業廃棄物区分に該当する場合があり、付帯設備、配線・配管なども処理対象に含まれる可能性があります。本体と液体類、付帯設備をそれぞれどの区分で処理するのかを業者と確認し、委託契約とマニフェスト管理を区分ごとに適切に行う必要があります。

参考:https://www.town.tsubata.lg.jp/uploaded/attachment/2549.pdf

3.工作機械を産業廃棄物として処分する際の手続き

工作機械を産業廃棄物として処分する場合、排出事業者には廃棄物処理法に基づく手続きが求められます。本章では、委託契約の締結、マニフェストの交付・管理、委託先業者の許可確認という3つの手続きを解説します。

(1)委託契約を締結する

廃棄物処理法では、産業廃棄物の処理委託にあたり、収集運搬と処分のそれぞれについて委託契約書の作成が義務付けられています。これには、契約書には委託する産業廃棄物の種類・数量、運搬の最終目的地、処分の場所・方法・処理能力などの法定記載事項を盛り込む必要があります。

契約時に確認すべき事項は、処理対象となる工作機械付帯物の範囲廃油・切削液など別区分の廃棄物の扱い、運搬先・処分先の施設、排出事業者と業者の役割分担です。撤去工事を伴う場合は、解体・搬出作業の範囲廃棄物処理の範囲がどこで分かれるのかも明確にしておく必要があります。

口頭やメールのみでの依頼は法令上認められず、委託内容を契約書で明確にしないまま処理を進めると、排出事業者側が委託基準違反を問われるおそれがあります。契約書は契約終了後5年間の保存が必要です。担当者は、契約書の記載内容が実際の処理内容と一致しているかを締結前に確認することが求められます。

参考:https://www.env.go.jp/council/35hairyo-keiyaku/y359-03/900437210.pdf

(2)マニフェストを交付・管理する

工作機械を産業廃棄物として引き渡す際は、排出事業者が産業廃棄物管理票(マニフェスト)を交付し、収集運搬から処分完了までの処理状況を管理する義務があります。マニフェスト制度は廃棄物処理法に基づくもので、紙マニフェストと電子マニフェストのいずれかで運用します。

工作機械本体を金属くずなどとして処理する場合でも、廃油や切削液が廃油などの別区分に該当する場合は、廃棄物の種類ごとにマニフェストの記載・管理が必要になる場合があります。1回の引き渡しで複数区分の廃棄物を委託する際は、区分ごとの数量と処理ルートを整理したうえで交付する必要があります。

交付後は、収集運搬終了、処分終了、最終処分終了の各段階でマニフェストの写しの返送を確認し、法定期限内に返送がない場合は処理状況を確認したうえで都道府県等への報告が必要になります。
紙マニフェストの場合、返送された写しは5年間の保存義務があります。担当者は、交付から返送確認、保存までの管理フローを社内で定め、処分完了を確認できる記録を残すことが求められます。

参考:https://www.env.go.jp/content/900479496.pdf

引用:https://www.jwnet.or.jp/jwnet/about/assets/files/nendobetsutourokukennsuu_graph1998_2025.png

公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センターの年度別グラフでは、電子マニフェストの登録件数が2016年度の2,374万8千件から2025年度の4,751万3千件へ増え、約2倍になっています。紙と電子のいずれでも法定管理は必要ですが、電子運用が広がっていることを示すデータです。工作機械本体と廃油・切削液を別区分で委託する場合は、区分ごとの数量・処理ルートを整理し、登録後も運搬・処分終了を確認する必要があります。件数は全国の全排出事業者における工作機械処分だけを示すものではありません。

(3)収集運搬業者・処分業者の許可を確認する

産業廃棄物の処理を委託する場合、収集運搬業者には産業廃棄物収集運搬業許可、処分業者には産業廃棄物処分業許可が必要です。無許可業者への委託は、委託した排出事業者側も廃棄物処理法違反に問われるため、契約前の許可確認は排出事業者が行うべき必須の手続きです。

確認するのは許可の有無以外にも、許可証に記載された取扱品目に金属くず、廃プラスチック類、廃油など、処分する工作機械や付帯物に該当する品目が含まれているか、許可の対象地域が排出場所と運搬先の両方をカバーしているか許可の有効期限が処理予定日を過ぎていないかを確認する必要があります。

運搬と処分を別の業者が担う場合は、担当者は、許可証の写しを取り寄せて品目・地域・期限を照合し、契約書類とともに保管しておくことが実務上の対応になります。自治体の公表情報や業界団体の名簿で許可状況を照会できる場合もあるため、許可証の記載と突き合わせて確認する方法も有効です。

参考:https://www.sanpainet.or.jp/service/doc/haisyutsu-pamphlet2.pdf

4.工作機械の廃棄費用相場

工作機械の廃棄費用は、本体の処分費だけでなく、撤去作業費、運搬費、付帯物の処理費などで構成されます。本章では費用の内訳と変動要因を整理し、スクラップ売却や一括処分による費用抑制の可能性を解説します。なお、費用は機械のサイズ、重量、設置条件、搬出経路、地域によって大きく変動するため、実際の金額は現地確認を含む見積もりで確認する必要があります。

(1)撤去費用の内訳

工作機械の廃棄費用には、本体の処分費とは別に、撤去作業費が発生します。撤去作業費には、機械の解体、基礎からの取り外し、設置場所からの搬出、車両への積み込みまでの作業が含まれます。

撤去費用を左右する主な要因は、機械の重量とサイズ、設置場所の階層や位置、搬出経路の広さ、クレーンやフォークリフトなどの重機使用の有無です。数トン規模の機械を分解せずに搬出できる場合と、現地で解体してから搬出する場合とでは、作業日数も費用も変わります。

このほか、基礎アンカーの撤去や床面の処理、操業への影響を避けるための夜間・休日作業、搬出経路の養生作業などが追加費用として計上される場合があります。

見積書に撤去作業の範囲と作業条件が明記されているかを確認し、追加費用が発生する条件を事前に把握しておく必要があります。設置状況や搬出経路の写真を事前に業者へ提供すると、見積もりと実費の乖離を抑えやすくなります。

(2)運搬費・産業廃棄物処理費の内訳

撤去後の工作機械を処分先へ運ぶための運搬費は、運搬距離、機械の重量、必要な車両の種類によって変動します。大型機械ではトレーラーやユニック車などの特殊車両が必要になる場合があり、車両の手配条件が費用に反映されます。

産業廃棄物として処分する場合は、本体の処理費に加えて、廃油、切削液、付帯設備、配線・配管など、区分の異なる廃棄物の処理費が別途発生する場合があります。液体類は本体の金属くずとは処理ルートが異なるため、費用も個別に計上されるのが通常の見積もり形態です。

見積書を確認する際は、撤去費、運搬費、処分費が一式表記でまとめられていないか内訳ごとに金額が示されているかを確認する必要があります。内訳が明示されていれば、複数業者の見積もり比較が可能になり、追加費用が発生した場合にもどの項目が変動したのかを検証できます。

参考:https://www.sanpainet.or.jp/service/doc/s06_6_2.pdf

(3)スクラップ売却や一括処分で費用を抑えられるか

工作機械に金属資源としての価値がある場合、スクラップ売却によって処分費の一部または全部を相殺できる可能性があります。鋳物や鋼材の重量が大きい機械では、金属相場と分別状況によって、撤去費・運搬費を差し引いても手取りが残る場合があります。

工場閉鎖や設備更新で複数台をまとめて処分する場合は、重機や車両の手配、搬出作業を1回の工事に集約することで、台数あたりの費用を抑えられる場合があります。個別に処分するよりも、対象設備を一覧化して一括で見積もりを取るほうが、費用面の比較検討を進めやすくなります。

一方で、費用削減の効果には限界もあります。大型機械や解体難易度の高い機械では撤去作業費がスクラップ価値を上回る場合があり、付帯設備の撤去や液体類の処理が多い案件では、削減効果が限定される場合があります。スクラップ控除額と撤去・処分費用を分けて記載した見積もりを取得し、正味の費用負担がいくらになるのかを確認したうえで判断する必要があります。

引用:https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/sokeizai/pdf/document5-05.pdf#page=83

経済産業省資料では、鉄スクラップ(H2)の炉前価格は2013~2022年度の10年間で約1.6倍へ上昇する一方、年度ごとの上下も確認できます。再販できない工作機械でも鉄スクラップとして価値を持ち得ますが、査定額が固定ではないことを裏付けるデータです。価格は国内外の需給、輸出環境、鋼材需要などで変動するため、見積比較では相場の基準日をそろえ、解体・搬出・運搬費を控除した正味額で判断する必要があります。

5.工場の工作機械をまとめて処分する流れ

工場閉鎖、移転、生産ライン再編などでは、複数台の工作機械をまとめて処分する場面が生じます。本章では、対象設備のリスト化、撤去工事と廃棄処理の発注方法の判断、複数台処分における見積もり確認項目を解説します。

(1)処分対象の工作機械をリスト化する

複数台の処分を進める場合、最初に処分対象となる工作機械の機種名、型式、台数、設置場所、稼働状況を整理し、設備一覧を作成する必要があります。

一覧化にあたっては、工作機械本体だけでなく、周辺装置、制御盤、架台、配線、配管の有無、廃油や切削液の残存状況もあわせて記録します。付帯設備の情報が抜けていると、見積もり後に処理範囲の追加が発生し、費用と工程の見直しが必要になります。

作成した一覧は、買取候補、スクラップ候補、産業廃棄物処理候補の3つに分類しておくと、その後の進行が円滑になります。稼働可能で年式の新しい機械は買取査定へ、再販が難しいが金属量の多い機械はスクラップ業者へ、それ以外は産業廃棄物処理へと、依頼先を分けて見積もりを取得できます。担当者は、分類の根拠となる稼働状況やメンテナンス記録も覧に紐付けて管理することが求められます。

(2)撤去工事と廃棄処理を一括依頼するか判断する

工作機械の処分では、解体・取り外し・搬出を含む撤去工事と、その後の運搬・処分を、1社に一括で依頼する方法と、別々の業者に分けて依頼する方法があります。どちらを選ぶかによって、窓口の数、契約の形態、費用の比較のしやすさが変わります。

発注方法主な特徴留意点
一括依頼窓口が一本化され、工程調整や責任範囲の管理がしやすい内訳が一式表記になりやすく、項目別の費用比較がしにくい場合がある
分離発注撤去工事費と処分費を個別に比較でき、費用の妥当性を検証しやすい業者間の工程調整や責任範囲の整理を自社で行う必要がある

判断の基準になるのは、処分台数、搬出条件の複雑さ、社内で管理したい範囲です。台数が多く工程管理の負荷が大きい案件では一括依頼の管理面の利点が働きやすく、費用の内訳を精査したい案件や既存の取引業者を活用できる案件では分離発注が選択肢になります。
いずれの場合も、産業廃棄物処理にかかる委託契約とマニフェストの義務は排出事業者に残るため、発注形態にかかわらず許可確認と契約手続きは自社で行う必要があります。

(3)複数台処分の見積もり確認項目

複数台をまとめて処分する場合の見積もりでは、機械ごとの処分方法、撤去範囲、付帯設備の扱いが見積書にどう反映されているかを確認する必要があります。

金額面では、買取額、スクラップ控除額、撤去費、搬出費、運搬費、処分費が項目ごとに分けて記載されているかを確認します。控除額と費用が相殺された正味金額のみの提示では、複数業者の比較が難しくなるため、内訳の提示を依頼することが実務上の対応になります。

また、搬出日程が操業停止期間や引き渡し期限と整合しているか、残置物や液体類の処理範囲がどこまで含まれているか、原状回復の範囲が契約に含まれるかを確認します。担当者は、これらの確認項目を一覧にして各社の見積もりを同じ基準で比較し、金額と条件の両面から委託先を選定することが求められます。

6.工作機械を廃棄せず資源循環に回すメリット

工作機械の処分では、すべてを産業廃棄物として廃棄するのではなく、中古売却や金属スクラップとしての資源化を組み合わせる選択肢があります。本章では、費用面のメリット、金属資源としての再利用価値、環境負荷低減と経営上の意義を解説します。

(1)中古売却・スクラップ回収で処分費を抑えられる可能性がある

工作機械が中古設備として売却できる場合や、金属スクラップとして有価回収できる場合は、廃棄費用を抑えられる可能性があります。処分対象のすべてを産業廃棄物として扱うと、撤去費・運搬費・処分費の全額が支出になりますが、売却・資源化できる部分を切り分ければ、その分の費用負担を軽減できる場合があります。

売却額やスクラップ価値は、機械の状態、材質、重量、解体の要否、金属相場によって変動します。同じ機械でも、分別の程度搬出条件によって有価になるか費用負担になるかが分かれるため、事前の査定と見積もりによる確認が前提になります。

担当者が取るべき対応は、処分対象の一覧をもとに、買取査定、スクラップ査定、産業廃棄物処理の見積もりをそれぞれ取得し、正味の費用負担を比較することです。設備の除却損や売却益は会計処理にも関わるため、経理部門と処分方法ごとの処理を事前に確認しておくことも求められます。

(2)鉄・非鉄金属を資源として再利用できる

工作機械には鉄をはじめ、銅やアルミニウムなどの非鉄金属が含まれており、スクラップとして回収することで金属資源として再利用できる可能性があります。鉄スクラップは電炉での鉄鋼生産の原料などで国内流通しており、機械としての価値を失った設備でも、素材としての価値は残ります

中古市場で再販できない機械であっても、解体・分別を経て素材ごとに回収すれば、資源循環のルートに乗せることができます。鉄スクラップを原料とする電炉鋼の生産は、鉄鉱石から製造する場合と比べてCO2排出量を抑えられるとされており、スクラップの供給は国内の資源循環とカーボンニュートラルの取り組みを支える要素になっています。

資源化を選ぶ際は、架台、配管、モーター、制御盤内の金属部材も含めて回収対象を整理する必要があります。分別の精度が高いほど素材としての価値を評価されやすくなるため、担当者は、解体後の分別方法と回収範囲を業者と事前にすり合わせておくことが求められます。

引用:https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/green_steel/pdf/001_04_00.pdf#page=14

経済産業省資料では、鋼材1トン当たりのCO2発生量は、高炉法が約2.0トン、スクラップを原料とする電炉法が約0.5トンと示され、製造段階では電炉法が約75%低い水準です。工作機械を鉄スクラップとして回収することが、電炉による資源循環と製造時の排出削減を支えるという本文の説明を補強します。ただし、電力の排出係数で数値は変動し、資料注記のとおりスクラップ製造時の排出まで含むScope3では製法差が生じない点に留意が必要です。

鉄を主原料とする工作機械では、廃棄後に回収した鉄スクラップを国内製鉄所へ還流させ、新たな鉄鋼製品の原料として循環させる仕組みを構築できます。工作機械の処分を単なるスクラップ回収で終わらせず、回収した鉄を再びものづくりに活用する考え方が鉄のサーキュラーエコノミーです。

鉄が資源循環に適している理由や、鉄鋼製品の事例、鉄スクラップを国内製鉄所へ還流させる仕組みについては、以下の記事で詳しく解説しています。

(3)廃棄物削減や環境負荷低減につながる

工作機械を再使用や資源化に回すことで、産業廃棄物として処理する量を削減できる可能性があります。廃棄物の発生抑制と再資源化は、循環型社会形成推進基本法が掲げる基本原則でもあり、排出事業者にとっては法制度の方向性に沿った対応になります。

金属資源の再利用を進めることは、新たな資源投入の抑制につながり、サーキュラーエコノミーの推進に資する取り組みとして位置付けられます。近年は、廃棄物処理やリサイクルの状況がESGの評価項目やサプライチェーン全体の環境対応の中で問われる場面もあり、設備廃棄の方法は調達・経営層にも関わる論点になっています。

どこまで資源化できるかは、機械の状態、油分や付着物の有無、解体後の分別状況によって変わるため、資源化した数量や処理実績を記録として残し、廃棄物削減の取り組みとして社内報告やESG関連の開示に活用できる形で管理しておくことが、実務面での対応になります。

引用:https://www.env.go.jp/content/000301060.pdf#page=8

環境省の令和5年度実績では、産業廃棄物全体の再生利用率が54.7%であるのに対し、金属くずは95.4%で、最終処分率は3.0%です。一方、工作機械に残る可能性がある廃油の再生利用率は46.1%にとどまります。これは、機械本体を金属資源として分別回収することが廃棄物削減につながる一方、油類は別区分で適正処理すべきことを裏付けます。割合は産業廃棄物全体の種類別集計であり、個別の工作機械案件の資源化率を保証するものではありません。

7.まとめ

工作機械の処分は、中古機械としての売却、金属スクラップとしての回収、産業廃棄物としての処理の3つの選択肢を比較することから始まります。年式、稼働状況、金属としての価値をもとに処分方法を切り分け、本体と付帯設備、廃油・切削液を含めた処分範囲を事前に整理することが、費用と手続きの両面で適切な処分につながります。

産業廃棄物として処分する場合は、廃棄物処理法に基づき、排出事業者が委託契約の締結、マニフェストの交付・管理、委託先の許可確認を行う責任を負います。費用は撤去費、運搬費、処分費で構成され、機械のサイズや搬出条件によって変動するため、内訳の明示された見積もりを複数取得して比較することが求められます。

五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、工作機械や付帯設備を含む鉄系設備・製品の廃棄から、鉄スクラップの回収、国内製鉄所等への資源循環まで、一貫したクローズドループの構築を支援します。複数台の工作機械の処分や、廃棄費用の削減と鉄資源の有効活用をご検討の際は、ぜひご相談ください。

監修

早稲田大学法学部卒業後、金融機関での法人営業を経て、中小企業向け専門紙の編集記者として神奈川県内の企業・大学・研究機関を取材。
2013年から2020年にかけては、企業のサステナビリティレポートの企画・編集・ライティングを担当。2025年4月よりフリーランスとして独立。
企業活動と社会課題の接点に関する実務経験が豊富で、サステナビリティ分野での実践的な視点に基づく発信を強みとしている。