グリーンウォッシュ対策とは?国内外の規制・該当パターン・具体策を解説

グリーンウォッシュへの対応は、企業のサステナビリティ推進において不可欠なテーマとなっています。環境配慮の訴求が評価される一方で、その表現や根拠が不適切である場合、規制対応やレピュテーションに影響が及ぶ可能性があるためです。
本記事では、グリーンウォッシュ対策について、国内外の規制動向を起点に、該当パターンや企業への影響を整理したうえで、実務における防止策まで体系的に解説します。

五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、社外へ公表する環境価値の科学的根拠を担保し、守りを固めながら攻めの環境経営へと繋げる構造変革を支援します。環境ブランディングを市場から圧倒的な信頼を勝ち取る真の強みにしたい場合には、ぜひご相談ください。

目次

1.グリーンウォッシュ対策とは?具体策と事例

グリーンウォッシュとは、企業や団体が環境に配慮しているかのように見せかける一方で、その実態や根拠が伴っていない、または誤認を招く形で環境配慮を訴求する行為を指します。

その防止策にあたるグリーンウォッシュ対策とは、環境配慮に関する表示や主張について、実態と整合した情報開示を行い、誤認を招く表現を回避するための取り組みを指します。

ここではグリーンウォッシュ対策の主要な手法と、事例を紹介します。

(1)社内ガイドラインの整備

まずは、環境に関する表現や開示内容について統一された基準を定め、部門ごとに異なる判断が生じないようにすることが前提となります。

従業員教育・社内浸透の実施では、策定したガイドラインを実務で適切に運用するために、関係部門に対する研修や周知を行います。環境表示に関する判断基準やリスク認識を共有することで、個別判断による表現のばらつきを抑制し、組織として一貫した対応を実現します。

【事例】花王の環境表示適正化への取り組み
花王は「環境コミュニケーションガイドライン」を独自に策定し 製品の環境優位性を訴求する際の社内基準を厳格に運用しています。 広告やパッケージで「環境にやさしい」といった曖昧な表現を避け、具体的な削減数値や裏付けデータを併記することを義務付けています。 さらに法務やサステナビリティ担当部署による多段階の審査を経て 組織全体で誤認を招く表示を未然に防ぐチェック体制を構築しており、従業員教育を通じてエビデンスを重視する誠実な情報開示を徹底しています。
参考:徹底した透明性|花王

(2)根拠データの収集・検証体制の構築

環境に関する主張を裏付ける定量・定性データを体系的に管理し、表現との整合性を担保するには、製品やサービスに関する環境負荷データ、原材料や調達に関する情報、エネルギー使用量や排出量などを整理し、トレーサビリティを確保できる形で蓄積します。

あわせて、収集したデータの正確性や最新性を検証するプロセスを整備し、内部監査や第三者による確認を通じて信頼性を担保します。特に、広告や開示資料に用いる数値や表現については、算定方法や前提条件を明確にし、再現性のある形で説明できる状態にすることが求められます。

参考:カーボンフットプリント ガイドライン|環境省

【事例】TOTOによる環境データの検証と透明性の確保
TOTOは主要製品において第三者検証を経た環境ラベルを積極的に取得し 算定方法の透明性とデータの信頼性を極めて高い水準で維持しています。 原材料調達から廃棄までのライフサイクル全体で環境負荷を定量化し 国際的な基準に基づいた厳格な内部監査と外部検証を組み合わせており 計算ミスや古いデータの使用を排除する高度な管理体制を運用しています。 この客観的な証拠に基づいた情報開示により顧客への信頼を醸成し 科学的根拠を伴うサステナビリティ発信のモデルケースとなっています。
参考:腰掛便器や混合水栓などで環境製品宣言(EPD)を取得|TOTO

(3)第三者認証・基準の適切な活用

認証の取得や基準への適合を対外的に示す際には、対象範囲や前提条件を明確にし、認証内容を過度に拡張して表現しないことが求められます。

信頼性のある認証制度や国際的な基準を選定し、その要件に基づいて運用するには、認証の対象範囲評価基準を正確に理解したうえで、自社の製品・サービスや事業活動に適合する制度を採用します。

さらに認証取得後も継続的な運用と更新を行い、基準の改定や事業内容の変化に応じて適合状況を見直す体制を整備します。これにより、第三者基準と実態の整合性を維持し、外部開示における信頼性を担保します。

参考:環境ラベル等データベース|環境省

【事例】キリンによる認証の厳密な管理と透明性の確保
キリンはFSC認証などの第三者認証を導入する際に対象範囲を明確化し 全製品が認証済みであるかのような誤認を招かない表示を徹底しています。 認証原材料の調達状況を定量的に管理し、その進捗を毎年公開することで 取得して終わりではない継続的な運用の実効性を社内外に示しています。 さらに環境報告書において第三者機関による独立した保証を受けることで データの信頼性と透明性を高め、根拠のある情報発信を継続しており 認証制度の適切な活用を通じてグローバルな期待に応える体制を構築しています。
参考:「キリングループ持続可能な生物資源利用行動計画」改訂

(4)コンプライアンスチェック体制の確立

環境に関する表示や開示内容について、事前に適法性や妥当性を確認するプロセスを承認フローに組み込みます。
特に広告・広報・IRなどの各部門が作成する表現について、法務・コンプライアンス部門によるレビューを必須とし、承認要件を明確化します。

あわせて、チェック項目や判断基準を標準化し、表現の妥当性根拠の有無規制との整合性を一貫して確認できる体制を構築します。また、サプライチェーン全体での情報把握と管理では、自社だけでなく、原材料の調達先や委託先を含めた情報を収集し、環境に関する主張の裏付けを確保することが求められます。

取引先からのデータ提供や報告体制を整備し、環境負荷や認証状況などの情報を継続的に把握することで、製品やサービスに関する環境表示がサプライチェーン全体の実態と整合したものとなるよう管理します。

参考:不実証広告規制|消費者庁

【事例】セブン&アイによるサプライチェーンを通じた証跡管理
セブン&アイ・ホールディングスは膨大なPB商品の信頼性を守るため 独自のサステナブル行動指針を策定し取引先との連携を強化しています。 環境負荷データの提供や第三者認証の維持をサプライヤーに義務付け、定期的なCSR監査を通じて環境主張の裏付けを直接確認するとともに 不備が発見された場合には迅速な是正を求める厳格な運用を行っています。 こうしたサプライチェーン全体での透明性の確保とデータ管理の徹底により 自社のみならず製造工程まで遡った誠実な環境表示体制を構築しています。
参考:お取引先様とともに築く持続的発展可能なサプライチェーンの構築|セブン&アイホールディングス

2.グリーンウォッシュに関する国内外の主要な規制動向

環境表示に関するルールは国や地域ごとに異なるものの、いずれも根拠の明示誤認防止を重視する方向で整理されています。日本においても例外ではなく、表示規制や消費者保護の観点から、環境に関する表現の適正化が求められており、企業の開示内容はより厳格に見られる傾向にあります。

ここでは、グリーンウォッシュ対策の前提となる国内外の主要な規制動向について整理します。

(1)日本国内のグリーンウォッシュに関する動向

①環境表示ガイドラインの改訂

環境省の環境表示ガイドライン改訂では、グリーンウォッシュへの対応強化を背景に、環境主張の妥当性や透明性を担保するための要件が整理されています。以下に主な要件を整理します。

曖昧表現の排除「環境にやさしい」などの抽象的な表現は、具体的な内容を伴わない限り使用を避ける
主張内容の具体化環境配慮の対象や範囲、どのような改善が行われているかを明確に示す
ライフサイクルの考慮製品・サービスの一部ではなく、全体(原材料調達~廃棄まで)を踏まえて評価する
部分的訴求の明示特定の要素のみを強調する場合は、その範囲を限定して誤認を防止する
根拠データの提示環境主張に対して、裏付けとなるデータや算定方法を明示する
検証可能性の確保第三者が確認可能な形で情報を整理し、再現性を担保する
比較表現の適正化他製品等との比較は、条件や基準を明示し、定量的根拠に基づいて行う
透明性の確保表示内容の前提条件や制約事項を明示し、誤解を招かない情報開示を行う

これらの要件により、環境表示は単なる訴求ではなく、根拠に基づく情報開示として管理されることが求められています。

参考:https://www.env.go.jp/content/000390026.pdf
参考:景品表示法関係ガイドライン等|消費者庁

②景品表示法による取り締まり

景品表示法は、商品やサービスの品質・内容について、実際よりも著しく優良であると誤認させる表示(優良誤認表示)を禁止しており、環境に関する表示もこの規制対象に含まれます。環境配慮を訴求する表現であっても、その内容が実態と乖離している場合には、不当表示として取り締まりの対象となります。

環境表示に関しては「不実証広告規制」の考え方が適用され、事業者は表示内容の裏付けとなる合理的な根拠資料を保有していることが前提となります。消費者庁は必要に応じて資料提出を求めることができ、提出がない場合や、根拠として不十分と判断された場合には、不当表示とみなされる仕組みとなっています。

また、表示内容については、事後的に根拠を確認できる状態で管理することが求められており、企業はデータや算定方法を適切に保存・整理しておく必要があります。

参考:https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_160801_0001.pdf
参考:https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/CFP_siryou_20241025_4.pdf
参考:国民生活センター:生分解性を標榜するプラスチック製容器包装等の表示に関する実態調査

(2)国外のグリーンウォッシュに関する主要な動向

①EU:グリーン移行に向けた消費者エンパワーメント指令

EUの「グリーン移行に向けた消費者エンパワーメント指令」は、環境や持続可能性に関する表示について、消費者に誤認を与える行為を防止し、適切な意思決定を支援することを目的とした制度です。本指令では、環境主張も商品・サービスの重要な特性として位置づけられ、虚偽または誤解を招く表示は不公正な取引慣行として規制対象となります。

一般的・抽象的な環境主張について、客観的に裏付けられない場合には表示が禁止されるほか、第三者認証を受けていないにもかかわらず認証を示唆する表示も禁止されています。また、将来の環境目標に関する表示については、明確で検証可能なコミットメントや実行計画が伴わない場合、消費者を誤認させる表示とみなされます。

さらに、本指令では製品の耐久性や修理可能性に関する情報提供の強化も図られており、消費者が環境性能を適切に比較できるような情報開示が求められています。これにより、環境表示は客観的根拠と透明性を前提とした情報として管理されることが制度上明確化されています。

参考:https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/international_affairs/assets/consumer_research_cms209_241028_01.pdf
参考:​​令和4年度海外主要国における 消費者政策体制等に係る調査業務 報告書|消費者庁

②英国:グリーン・クレーム・コード

英国の「グリーン・クレーム・コード」は、企業が環境配慮を訴求する際に、消費者に誤認を与えないようにすることを目的として、競争・市場庁が2021年に公表したガイドラインです。企業の環境主張が正確で比較可能かつ検証可能であることを前提とし、表示の適正化を求める枠組みとして位置づけられています。

本コードでは、環境表示の妥当性を判断するための基準として、複数の観点が提示されています。主な内容は以下の通りです。

正確性環境主張は事実に基づき、真実かつ正確であること
明確性曖昧な表現を避け、消費者が誤解しない形で伝えること
情報開示重要な情報を省略せず、判断に必要な内容を提示すること
比較の適正性比較は同一条件・同一目的の範囲で行うこと
ライフサイクル考慮製品・サービスの全体的な環境影響を踏まえること
根拠の裏付け主張は科学的根拠に基づき、検証可能であること

「エコ」「環境に優しい」「持続可能」といった一般的・抽象的な表現は、誤解を招く可能性が高い用語として扱われており、使用条件が定められるほか、カーボンオフセットやリサイクルなどに関する主張についても、科学的根拠第三者による検証を前提とし、消費者に対して適切に情報を開示することが求められています。

参考:https://www.env.go.jp/content/000311924.pdf
参考:GOV.UK: Green Claims Code Checklist (公式)(英語)

③米国カリフォルニア州:環境包装・ラベル規制

米国カリフォルニア州では、環境配慮や安全性に関する表示について、包装・ラベル規制を通じて厳格な管理が行われています。連邦法に加えて州独自の規制が重層的に適用される構造となっており、企業は販売地域ごとに異なる要件への対応が求められます。

特に、同州の代表的な規制であるプロポジション65では、発がん性や生殖毒性などのリスクがあるとされる化学物質を含む製品について、消費者への警告表示が義務付けられています。
対象となる物質は多数に及び、一定のリスク水準を超える場合には、製品パッケージや販売時に明確な警告を表示する必要があります。

また、食品包装分野においては、有害物質の使用制限や禁止が段階的に強化されており、PFASなど特定化学物質を含む包装材の流通禁止や、重金属の含有上限規制などが導入されています。さらに、発泡スチロール製容器の使用制限など、廃棄・リサイクルを含めた環境負荷低減を目的とした規制も進められています。

参考:https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2026/141b201eb492a7c0.html
参考:カリフォルニア州プロポジション65の概要と対策|ビューローベリタスジャパン

3.グリーンウォッシュのよくある該当パターン

環境配慮の訴求が多様化する中で、どのような表現が該当するのかを整理することがグリーンウォッシュ対策の前提となります。ここでは、環境表示においてグリーンウォッシュと判断されやすい代表的な該当パターンを整理します。

(1)根拠の不明確な環境配慮表現

根拠の不明確な環境配慮表現は「エコ」「環境にやさしい」「サステナブル」「グリーン」といった一般的・抽象的な表現を、具体的な根拠や定量データを伴わないまま使用するパターンが該当します。
これらの表現は消費者に対して環境上の優位性があると誤認させるリスクがある一方、具体的な改善内容対象範囲が明示されていないため、表示内容の裏付けを第三者が検証することができません

環境省の環境表示ガイドラインでは、こうした一般的・抽象的な表現について、対象範囲や改善内容を具体的に示すことなく単独で使用することを問題視しており、使用する場合は表示内容の根拠を明確にすることが求められています。

参考:https://www.env.go.jp/content/000390026.pdf

(2)一部の環境性能のみを強調する表現

一部の環境性能のみを強調する表現は、製品やサービスの特定側面における環境配慮のみを強調する一方で、全体的な環境負荷を開示しないパターンが該当します。

これはトレードオフの隠蔽とも呼ばれており、例えば製品の特定原材料にリサイクル素材を使用していることを前面に打ち出しながら、製造工程や輸送過程で多量のエネルギーを消費している場合などが該当します。

環境省の環境表示ガイドラインにおいても、ライフサイクル全体(原材料調達から廃棄まで)を踏まえた評価を求めており、特定側面のみに焦点を当てた訴求は誤認を招くリスクがあるとされています。製品全体の環境性能との整合性を確認したうえで、訴求内容の範囲を明確に限定することが必要です。

参考:https://www.env.go.jp/content/000390026.pdf

(3)第三者認証・基準の誤認を招く表示

実在しない認証マークを使用したり、取得条件や認証の対象範囲を正確に伝えないまま認証取得をアピールするパターンが、第三者認証・基準の誤認を招く表示に該当します。認証の対象が製品の一部の原材料のみであるにもかかわらず製品全体が認証に適合しているかのように表示する場合や、第三者の審査を経ていない自社独自のマーク・表現で認証を示唆する場合が含まれます。

EUの「グリーン移行に向けた消費者エンパワーメント指令」では、第三者認証を受けていないにもかかわらず認証を示唆する表示を明示的に禁止しており、認証の内容・対象範囲・前提条件を正確に伝えることが義務付けられています。

認証を表示に活用する際は、認証の対象範囲を限定的に示し、過度に拡張した表現を避けることが求められます。

参考:https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/international_affairs/assets/consumer_research_cms209_241028_01.pdf

(4)比較条件が不明確な優位性の主張

「従来品比○○%のCO2削減」「業界最高水準の環境性能」などの比較表現において、比較対象・基準値・評価方法・算定条件が異なれば、同じ数値でも実質的な意味が大きく異なります。根拠が不明確なまま優位性を主張することは、消費者に誤った印象を与えるリスクがあります。

比較表現についても同一条件・定量的根拠に基づいて行うことが求められており、比較の対象・評価期間・算定方法を明示することが必要とされています。また、英国のグリーン・クレーム・コードでも比較の適正性が要件として明記されており、同一の使用目的・対象の範囲での比較が前提とされています。

参考:広告の倫理と自主規制|日本広告審査機構

(5)法令遵守を付加価値のように表現する訴求

法令遵守を付加価値のように表現する訴求は、法規制上すでに義務付けられている対応を、独自の環境配慮の取り組みであるかのように訴求するパターンが該当します。
特定の有害物質の使用禁止がすでに法令上定められているにもかかわらず「○○不使用」「○○フリー」を独自の環境取り組みとして強調する場合や、業界全体で一般的に遵守が求められている基準を自社の差別化ポイントとして訴求する場合などです。

このような表現は、法令要件や業界標準を満たしているだけであるにもかかわらず、付加的な環境価値があると消費者に誤認させるリスクがあります。

参考:事例でわかる景品表示法|消費者庁

(6)実態と乖離した将来目標・ビジョンの提示

「2050年カーボンニュートラル達成」などの将来的な環境目標を掲げながら、具体的な達成計画・中間目標・実施施策が示されていないパターンです。目標の根拠となる算定方法や達成シナリオ、モニタリング体制が開示されていない場合、表示内容の実現可能性を消費者や投資家が評価することができません。

EUの消費者エンパワーメント指令では、将来の環境目標に関する表示について「明確で検証可能なコミットメントや実行計画が伴わない場合、消費者を誤認させる表示とみなす」ことが明確化されています。目標設定にあたっては、SBTiなどの国際的な科学的根拠に基づく枠組みを活用し、中間マイルストーンと定期的な進捗開示を組み合わせることが、規制リスクの低減につながります。

参考:https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/international_affairs/assets/consumer_research_cms209_241028_01.pdf

4.グリーンウォッシュが企業に与える影響

(1)企業価値・ブランド信頼の毀損

グリーンウォッシュが発覚し、SNSやメディアを通じた批判が急速に拡散した場合、企業ブランドへの深刻なダメージにつながります。環境意識の高まりとともに、消費者や投資家のサステナビリティ情報に対する関心が増しており、表示内容の信頼性への要求水準も高まっています。

一度失った信頼の回復には長期間を要することが多く、特に環境・社会に関する訴求を自社ブランドの中核に位置づけている企業にとっては、ブランド価値の毀損が競争優位の喪失に直結するリスクがあります。

(2)売上・顧客離脱への影響

グリーンウォッシュに対する批判が高まると、当該製品・サービスに対するボイコットや購買回避につながる場合があります。特に、環境・社会に配慮した選択を重視するいわゆるエシカル消費者層の離脱は、長期的な顧客基盤の喪失を招くリスクがあります。

消費者庁が実施した「環境配慮・エシカル消費に関する意識調査」では、「環境への取り組みが不誠実な企業の製品は購入しない」と回答した消費者の割合が一定程度存在しており、グリーンウォッシュ対策は顧客維持の観点からも重要性が高い取り組みと位置付けられます。企業は短期的な訴求効果を追求するのではなく、信頼性の高い情報開示を通じて顧客との長期的な関係構築を図ることが求められます。

参考:https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_education/public_awareness/ethical/investigation

(3)ESG評価の低下

ESG評価の低下は株価形成や資本調達コストにも影響し、長期的な企業価値に関わる問題となります。

特に、CDP(旧称:カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)MSCI ESGレーティングなどでは環境開示の正確性・透明性が評価項目に含まれており、機関投資家の運用方針としてESG要素を重視する傾向が強まる中、環境表示の信頼性確保はIR・財務戦略上の重要課題ともなっています。

【事例】科学的根拠でリードするソニーの透明性戦略
ソニーグループは曖昧な表現を排し、国際的な科学的根拠に基づく目標を 掲げることで、ESG評価機関や投資家から極めて高い信頼を獲得しています。 長期環境計画「Road to Zero」の進捗をScope 3まで含めて詳細に数値化し、 第三者検証を経たデータを公開し続ける姿勢が評価の基盤となっています。 CDPの「Aリスト」に継続して選出されるなど、客観的な指標をIR戦略の 中核に据えることで、グリーンウォッシュの懸念を一切寄せ付けません。 独自の訴求に留まらず、財務情報と非財務情報を高度に融合させた開示は、 持続的な企業価値の向上と資本市場での優位性を強固なものにしています。
参考:ソニー、CDPが主催する気候変動の調査において、5年連続10回目の最高評価を獲得

(4)行政指導・法的リスクの発生

国内では景品表示法に基づく不当表示(優良誤認表示)として措置命令や課徴金の対象となる可能性があります。消費者庁は環境配慮に関する表示についても不実証広告規制を適用しており、表示の裏付けとなる合理的な根拠資料を提出できない場合、不当表示とみなされるリスクがあります。

EUや英国では消費者保護法制に基づく制裁・罰則が科せられる場合があり、特に越境販売を行う企業には各国・地域の規制要件への対応が求められます。規制強化の動向を踏まえると、環境表示に関するコンプライアンスリスクは今後さらに高まることが見込まれており、予防的な体制整備が不可欠です。

【事例】日本コカ・コーラの業界をリードする透明なパッケージ戦略
日本コカ・コーラは「容器の2030年ビジョン」を掲げ、環境表示の 信頼性を高めるために業界全体のルール作りを主導しています。 個別の製品訴求に留まらず、ボトルからボトルへのリサイクル率や 算定手法を共通化することで、行政が求める客観的な根拠を確立。 「100%リサイクルペットボトル」の導入においても、消費者へ 正しく伝わるよう透明性の高いコミュニケーションを徹底しています。 法的リスクを未然に防ぐ厳格な自社基準と、他社と連携した業界の 標準化を両立させ、持続可能な社会への貢献を確かなものにしました。
参考: 日本コカ・コーラ:容器・持続可能なパッケージ

(5)従業員エンゲージメント・採用への影響

環境・社会への貢献を重視する価値観を持つ従業員や求職者にとって、グリーンウォッシュの発覚は企業への信頼低下につながります。近年、特に若い世代を中心に、企業のサステナビリティへの姿勢が就職先の選択に影響する傾向が強まっており、グリーンウォッシュによって企業の信頼性が損なわれると、優秀な人材の採用・定着に悪影響を及ぼすリスクがあります。

組織内部においても、発信している環境訴求の内容と実態の乖離が従業員のモチベーション低下や組織への不信感を招く場合があります。サステナビリティへの取り組みが企業文化として根付くためには、外部への発信内容と内部の実態が一致していることが前提となります。

【事例】共に未来を創る:セールスフォースの革新的な貢献モデル
セールスフォースは創業以来、利益の追求と社会への貢献を両立させる 独自の「1-1-1モデル」を核に、社員一人ひとりの情熱を支援しています。 全社員が就業時間の1%を環境活動等のボランティアに充てられるため、 自社の発信が単なる宣伝ではないことを、現場の体験を通じて確信できます。 透明性の高いデータ管理ツールを自社でも活用し、環境負荷を可視化する 誠実な姿勢が、社会貢献を志す優秀な人材を惹きつける源泉となりました。 誇りを持って働ける組織文化が、企業の持続的な成長を力強く支えています。
参考:より公平でサステナブルな社会の実現に向けて|セールスフォース

5.まとめ

サステナビリティに関する企業の開示内容が外部から厳しく見られる今日において、根拠に基づく情報管理と透明性の確保こそが、長期的なブランド信頼と企業価値の維持につながります。

五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、現場の精密な資源・廃棄物データの可視化を共通言語に国際基準に適合した情報開示と経済合理性を両立させる構造変革を強固に支援します。環境経営を揺るぎない企業の強みへと昇華させたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。

監修

早稲田大学法学部卒業後、金融機関での法人営業を経て、中小企業向け専門紙の編集記者として神奈川県内の企業・大学・研究機関を取材。
2013年から2020年にかけては、企業のサステナビリティレポートの企画・編集・ライティングを担当。2025年4月よりフリーランスとして独立。
企業活動と社会課題の接点に関する実務経験が豊富で、サステナビリティ分野での実践的な視点に基づく発信を強みとしている。