グリーン水素の製造コストはなぜ高い?グレー・ブルー水素との比較と将来性

脱炭素経営への取り組みが加速するなか、グリーン水素は、カーボンニュートラル実現の切り札として国内外で注目されています。本記事では、グリーン水素の製造コストが現在どの水準にあるのか、なぜ高いのか、グレー水素やブルー水素と比べてどれほど差があるのかなどを整理します。

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目次

1.グリーン水素の製造コストは現在どれくらいか

グリーン水素のコストを正確に把握するには、世界と日本の水準を比較したうえで、業界で用いられる単位の読み方を理解しておく必要があります。まずは現状の数字と、コストの読み解き方を確認します。

(1)現在のグリーン水素製造コストの水準|世界と日本の現状

世界全体で見ると、グリーン水素の製造コストはおおむね3〜8ドル/kg程度(地域や条件によっては3〜5ドル/kg程度)とされています。再生可能エネルギーが極めて安価に調達できる中東やオーストラリア、南米などの好適地では、すでに低コストでの製造ポテンシャルが顕在化しつつありますが、日本の現状はこれとは大きく異なります

現在、日本国内でグリーン水素を製造する場合のコストは、約100円〜160円/Nm³(キログラム換算で約1,100円〜1,800円/kg)と非常に高い水準にあります。

この日米欧や諸外国との差の背景には、日本の構造的な課題があります。

水素製造コストの約5〜7割を占める再エネ電力単価が海外に比べて高止まりしていることに加え、国内の水電解装置(設備)の導入コストが海外の2〜3倍近くかかっている点が大きな制約です。

参考:https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/green_innovation/energy_structure/pdf/029_06_00.pdf
参考:「再エネ等由来の電力を活用した水電解による水素製造」 プロジェクトに関する研究開発・社会実装計画|資源エネルギー庁

(2)そもそも水素のコストはどうやって計算する?

水素のコストを扱う資料や報道では「円/kg」「円/Nm³(ノルマルリューベ)」という2つの単位が混在しています。

Nm³(ノルマル立方メートル)は、0℃・1気圧の標準状態における気体の体積を示す単位です。
水素1kgはおよそ11.2Nm³に相当します。したがって、政府目標などで示される「30円/Nm³」は、キログラム換算ではおおむね336円/kgに読み換えることができます。

業界文書や政策資料では「円/Nm³」が使われることが多い一方、国際比較では「ドル/kg」が標準的です。本記事では以降、両単位を適宜併記しますので、それぞれの数字が示す実態を正確に読み取るようにしてください。

参考:日本の水素戦略の再検討 「水素社会」の幻想を超えて|自然エネルギー財団

2.なぜグリーン水素の製造コストは高いのか

グリーン水素のコストが高い理由は、電力費・設備費・輸送インフラの3つのコスト要因が重なっており、それぞれが独立した課題として存在しています。

(1)【最大のコスト要因】再生可能エネルギーの電力コスト

日本国内における再生可能エネルギーの発電コストは、依然として割高な水準にあります。
経済産業省の「発電コスト検証ワーキンググループ(2024年)」の試算によると、国内の事業用太陽光の発電コスト(2023年時点)は1kWhあたり約9.1〜13.2円。2030年に向けても約8円台後半〜12円台後半/kWhにとどまると見込まれており、海外の「数円/kWh」という圧倒的な安さと比較すると高止まりが続いています。

諸外国、特に日照条件や広大な土地に恵まれた中東やオーストラリアなどでは、太陽光発電のコストが極めて安価であり、これがグリーン水素の低価格化を牽引しています。

脱炭素を推進する企業にとっては、国内での自社製造・地産地消にこだわるのか、それとも安価な電力が確保できる海外からの輸入調達を主軸に据えるのか、コスト構造を踏まえた戦略的な選択が強く求められます。

参考:2024年発電コスト検証の 前提条件に関する問題|自然エネルギー財団

(2)電解槽の設備コストと技術課題

水を電気分解してグリーン水素を取り出す装置が「電解槽(水電解装置)」です。
現在主流の方式には、すでに大型化の実績があり比較的安価な「アルカリ水電解(ALK)」と、再生可能エネルギーの急激な出力変動に対する追従性に優れるものの高価な「PEM(固体高分子膜)型」の2種類があり、それぞれ技術特性価格帯が異なります。

いずれの方式も初期投資が大きく、現状ではこの設備コストがグリーン水素の製造コスト全体の約2〜3割を占めるとされています。さらに日本国内においては、関連部材の多さやシステム統合にかかるエンジニアリング費用の高さなどが災いし、水電解装置の導入コストが海外に比べて2〜3倍も高止まりしているのが現状です。

経済産業省の方針では、2030年までに電解槽のシステムコストを「アルカリ型:5万円/kW」「PEM型:6.5万円/kW」以下に引き下げる野心的な目標を掲げていますが、現時点では、国内外の需要規模が電解槽メーカーの大規模な設備投資や完全な自動量産化ラインの構築を強力に後押しするまでには至っておらず、コストの下落ペースは緩やかにとどまっています。

参考:水素産業で日本が存在感を示すための方策~水電解槽を題材に~|みずほ銀行

(3)インフラ・輸送・貯蔵コスト

水素は常温・常圧では非常に体積が大きく、エネルギー密度が低い気体です。
そのため、大量輸送や貯蔵を行うには何らかの形で体積を圧縮または変換(キャリア化)する必要があり、これが追加のコスト要因となります。

代表的な手法として、マイナス253℃まで冷却して体積を800分の1にする「液化水素」、常温での長距離輸送に適した「アンモニア」、常温・常圧の液体として既存の石油インフラを活用できる「MCH(メチルシクロヘキサン)」などの水素キャリアに変換して運搬・貯蔵する方法があります。しかし、これらはいずれも専用の大型プラントや特殊な運搬船の整備が必要なほか、変換・再変換のプロセスで多大なエネルギーロスを伴います。

経済産業省の「水素政策小委員会(2024年)」のサプライチェーンコスト試算によれば、海外で安価に水素を製造できたとしても、国内の需要家に届くまでには「液化・変換費用」「海上輸送費用」「国内受入・復調費用」が重くのしかかることが示されています。例えば、海外の製造原価そのものは比較的安く抑えられても、そこから日本国内の供給拠点(セカンダリーターミナル)に届くまでのサプライチェーンコスト(輸送・受入インフラ費用)だけで、水素1Nm³あたり数十円規模のコストが上乗せされる構造になっています。

参考:https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/suiso_seisaku/pdf/016_01_00.pdf
参考:川崎重工業の水素事業の取り組み

3.グリーン水素・ブルー水素・グレー水素の違い

水素は製造方法によって「グレー」「ブルー」「グリーン」の三種類に分類されます。それぞれコストとCO2排出量のバランスが異なり、脱炭素戦略においてどれを選択するかは企業の経営判断に直結します。以下では3者の特性を整理します。

グレーブルーグリーン
製造コスト
CO2排出ほぼゼロ
技術成熟度発展途上
将来リスク

(1)グレー水素:現在主流だが、化石燃料由来で脱炭素の逆風に

グレー水素は、天然ガスを高温で改質する「水蒸気改質(SMR)」によって製造されます。現在世界で流通している水素の大部分がこの方式で作られており、製造コストは三者のなかで最も低い水準にあります。

しかし、製造過程でCO2を大量に排出するという本質的な課題を抱えています。炭素税の強化カーボンニュートラル規制の拡大が進むなかで、グレー水素を使い続けることのリスクは年々高まっています。コストの安さを優先してグレー水素を選択することは、短期的な経営合理性と中長期的な規制リスクのトレードオフを抱えることを意味します。

参考:水素政策小委員会/アンモニア等脱炭素燃料 政策小委員会 合同会議 中間整理|経済産業省

(2)ブルー水素:CO2を回収するが、埋め立て地やコストに課題

ブルー水素は、グレー水素と同じく天然ガス改質で製造しますが、発生するCO2をCCS(二酸化炭素回収・貯留)技術によって回収・地下貯留することで排出量を削減したものです。製造コストはグレー水素より高くなりますが、グリーン水素よりは低い水準に位置します。

課題は、CCSの貯留場所の確保回収コストの上乗せです。地下貯留に適した地層が必要なため、地理的な制約があります。また、CO2の回収率は100%ではなく、残留排出が生じる点も完全なゼロエミッションとはいえません。グリーン水素への橋渡しとして位置づける議論がある一方、インフラコストと長期的な貯留リスクを慎重に評価する必要があります。

参考:日本でも事業化へ動き出した「CCS」技術(前編)〜世界中で加速するCCS事業への取り組み|資源エネルギー庁

(3)グリーン水素:唯一のゼロエミッションだが、自給率と価格が課題

グリーン水素は、太陽光や風力などの再生可能エネルギーで発電した電力を使って水を電気分解し、水素を取り出す方法で製造されます。製造過程でCO2を排出しない唯一の手段であり、脱炭素の文脈では最も評価が高い選択肢です。

一方で、前述のとおり製造コストは現状で三者のなかで最も高く、調達の安定性サプライチェーンの未成熟さという課題も残ります。また、「グリーン水素」として認められるためには、使用する電力が再生可能エネルギー由来であることの証明が必要であり、認証・トレーサビリティへの対応も求められます。

参考:【公開用】令和6年度エネルギー需給構造高度化対策調査等事業 (クリーン水素の評価・認証体制の検討に関する調査)|経済産業省

4.グリーン水素のコストは将来的に下がるのか?

現状では高コストなグリーン水素ですが、技術革新・政策支援・国際サプライチェーンの整備が複合的に作用することで、コストは段階的に低下していく見通しです。
ここでは、日本政府の目標値とコスト低下を牽引する要因を整理します。

(1)日本政府が掲げる水素コスト目標

日本政府は「水素基本戦略」において、水素コストの低減目標を明確に示しています。
2030年に30円/Nm³(約336円/kg)、2050年に20円/Nm³(約224円/kg)を目指すとしており、現在の国内製造コストと比較すると、それぞれおよそ3分の1以下の水準を目標としています。

これは決して保守的な目標ではありません。実現のためには、再エネコストの低下・電解槽の量産化・海外調達の本格化が同時並行で進む必要があります。裏を返せば、これらの条件が揃いつつあるという政府の認識があるからこそ、この目標値が設定されているともいえます。

参考:https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/suiso_seisaku/pdf/20230606_2.pdf

(2)コスト低下を牽引する3つのドライバー

①太陽光・風力など再エネの発電コスト低下

世界規模で太陽光発電のコストは急激に低下しており、過去10年で80%以上のコスト削減が実現されています。

日本でも洋上風力の本格開発や、次世代太陽電池として注目されるペロブスカイト太陽電池の実用化が進めば、国内での再エネ電力コスト低下につながります。電力費がグリーン水素コストの6〜7割を占める以上、ここでの改善が最も直接的な効果をもたらします。

【事例】積水化学工業のペロブスカイト太陽電池
積水化学工業はペロブスカイト太陽電池の実用化を牽引する企業です。 独自の製造技術を開発し、軽量で柔軟なフィルム型を低コストで生産します。 2025年度中の事業開始、2027年の量産化に向け開発を加速させています。 大阪・関西万博のバスターミナルなど、大規模な導入実証も本格化しています。 ビル壁面や耐荷重の低い屋根へ設置し、都市型再エネの普及に貢献します。 大量生産体制の確立により、将来的な発電コストの大幅な低下を狙います。
参考:ペロブスカイト太陽電池に関するお知らせ|積水化学工業

② 水電解装置の量産化と技術革新

電解槽の製造コストは、生産規模の拡大によって大幅に低下する余地があります。欧州や中国では電解槽の「ギガファクトリー」化が始まっており、スケールメリットによるコスト削減が現実味を帯びてきています。
日本国内でも装置メーカーへの投資が拡大しており、2030年代に向けた量産体制の整備が進んでいます。

【事例】旭化成の水電解装置量産化への取り組み
旭化成は独自の食塩電解技術を応用した水電解システムを開発しています。 神奈川県川崎市に新たな製造拠点を建設し、本格的な量産体制を整えます。 2028年度の稼働時には既存設備と合わせて年間3GW超の生産能力を目指します。 これにより、手作業に近い工程が多かった装置の劇的なコスト削減を図ります。 世界規模で拡大する「ギガファクトリー」化の波に対抗する強力な一手です。 大型化しやすいアルカリ型水電解で国内トップランナーの地位を築きます。 大量生産によるスケールメリットで将来的な国産水素の低価格化に貢献します。
参考:旭化成、クリーン水素製造用アルカリ水電解システムの生産能力を拡大

③国際的なサプライチェーンの構築

日本が国内だけでグリーン水素を自給することには、再エネポテンシャルの面から限界があります。そのため、安価な再エネが豊富に存在するオーストラリアや中東、南米などでグリーン水素を製造し、液化水素やアンモニアなどの形で日本へ輸送する国際サプライチェーンの構築が並行して進められています。
輸送コストの低減と航路の確立が進めば、国内製造コストに依存しない調達ルートが現実のものとなります。

【事例】岩谷産業の国際的な水素サプライチェーン構築
岩谷産業は日本国内の産業用水素でトップシェアを誇るリーディングカンパニーです。 安価で豊富な再エネを持つオーストラリアでの大規模なグリーン水素製造を目指します。 現地の州政府系エネルギー企業などと共同で「CQ-H2プロジェクト」を推進しています。 太陽光や風力による電力で水電解を行い、製造した水素を現地で液化して日本へ運びます。 すでに事業化に向けた基本設計を実施しており、将来の大量調達へ現実的に動いています。 日本の国内事情に左右されない、低コストで安定的な海外からの調達ルートを構築します。 輸送技術の確立とともに、日本のクリーンエネルギー社会の実現へ大きく貢献します。
参考:豪州クイーンズランド州 CQ-H2 プロジェクト 大規模なグリーン水素サプライチェーン構築に向けた基本設計作業の開始について ~日本、豪州、シンガポール 5 社で契約を締結~|岩谷産業

(3)低コスト化に有利な製造方法・地域

再エネポテンシャルの観点では、日照時間が長く広大な土地を持つ中東・オーストラリア・チリなどが、グリーン水素の低コスト製造に有利な地域とされています。これらの地域では、再エネ電力単価が日本の数分の一に達するケースもあり、製造コストそのものの優位性が大きくなります。

日本の現実的な戦略としては、国内製造と海外からの輸入を組み合わせるハイブリッド型の調達体制が見込まれています。特定のサプライヤーや産地への依存を避けつつ、コストと安定供給のバランスをとる調達設計が、今後の企業戦略における重要な検討課題となります。

【事例】住友商事のマルチソース水素調達戦略
住友商事は地政学的リスクを分散した水素供給網の構築を進めています。 世界最高水準の再エネ資源を持つチリの大手発電会社と共同開発に合意しました。 現地の圧倒的な太陽光や風力を生かして格安なグリーン水素やアンモニアを作ります。 さらにオーストラリアやマレーシアなど世界各地で多角的に事業を展開しています。 特定の国や地域に過度に依存しない「マルチソース調達」の実現を目指します。 海外の安価なエネルギーを確保し日本の安定供給とコスト低減を両立させます。 グローバルなネットワークを駆使しハイブリッド型の脱炭素社会をリードします。
参考:チリにおけるグリーン水素・アンモニア製造に関する覚書締結について ~日本・チリにおける脱炭素社会の実現に向けた取り組みを推進~|住友商事

5.グリーン水素の商用化・普及は現実的か

コストが高いことを理由に「まだ時期尚早」と判断するだけでは、変化するエネルギー市場の動向に乗り遅れるリスクがあります。政府の支援制度の整備と、特定セクターでの先行的な需要拡大を踏まえると、商用化の現実性は着実に高まっています。

(1)普及を後押しする政府の値差支援制度とは

2024年に成立した水素社会推進法に基づき、グリーン水素などのクリーン水素の普及を促進する「値差支援制度」が本格始動しています。この制度は、グレー水素などを基準とした参照価格クリーン水素の総コストの差額を、原則15年間にわたって国が補填するものです。

これにより、企業がグリーン水素を「コストが高くて採用できない」と判断せざるを得なかった状況が緩和されます。

参考:https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/advanced_systems/hydrogen_society/carbon_neutral/

【事例】豊田通商の低炭素水素製造・供給プロジェクト
豊田通商は水素社会推進法に基づく国の値差支援の初認定を受けました。 岩谷産業やユーラスエナジーと共同で低炭素水素の供給事業を展開します。 愛知製鋼の知多工場敷地内に水電解装置を設置するオンサイト型モデルです。 風力発電の電力を活用し2030年を目途に年間1,600トンの水素を製造します。 これまでコスト面が障壁だった特殊鋼加熱炉の燃料を都市ガスから転換します。 国による15年間の価格差補填により多排出産業の脱炭素化を後押しします。 再エネと製造業を直結させる国内初の本格的な社会実装として注目されます。
参考:豊田通商、ユーラスエナジー、岩谷産業が愛知製鋼にてオンサイト型低炭素水素製造供給事業開始を検討

(2)コスト競争力が早期に成立する鉄鋼の水素還元などについて

グリーン水素のコスト競争力が特に早期に成立しやすいとされているのが、電化(電気への転換)が技術的に困難な「ハード・トゥ・アベート」と呼ばれる産業分野です。

代表的なのが鉄鋼業における「水素還元製鉄」です。従来、製鉄プロセスでは鉄鉱石の還元にコークス(石炭由来)を使用していましたが、これを水素に置き換えることでCO2排出量を大幅に削減できます。電炉に置き換えるだけでは対応が難しい高炉プロセスにとって、水素は不可欠な脱炭素手段です。同様に、化学産業における原料転換や、大型トラック・外航船舶などの長距離輸送分野でも、電化よりも水素が優位とされる場面が多くあります。

【事例】水素製鉄コンソーシアム(GREINS)の取り組み
水素製鉄コンソーシアムは国内大手鉄鋼3社などが結成した組織です。 石炭の代わりに水素を用いて鉄鉱石を還元する究極の製鉄技術に挑みます。 低品位の鉄鉱石を水素で直接還元し大型電炉で高級鋼を一貫製造します。 2030年までに製鉄プロセスでの排出量を半分以上減らすことが目標です。 電化が極めて困難な鉄鋼業における切り札として世界に先駆けて開発します。 高炉並みの品質確保と製造コストの最適化を両立する新プロセスの確立を狙います。 大量のクリーン水素を必要とするため将来の水素普及の強力な牽引役となります。
参考:鉄鋼業におけるCO2削減のチャレンジ|GREINS

(3)日本企業におけるクリーン水素調達・活用の事例

グリーン水素の活用は大手企業だけの取り組みではありません。値差支援制度の活用をはじめ、再エネ電力との連携によるオンサイト製造、海外プロジェクトへの出資を通じた長期調達契約など、企業規模や業種に応じた多様なアプローチが模索されています。

【事例】やまなしハイドロジェンカンパニーのP2Gモデル
やまなしハイドロジェンカンパニーは国内初のP2G専業企業です。 山梨県と東京電力HD、東レが共同で設立し脱炭素を強力に推進します。 再エネ電力を水素に変換して貯蔵する独自のシステムを確立しました。 調達したグリーン水素をサントリーの白州工場へパイプラインで送ります。 ウイスキー蒸留所のボイラー燃料として活用する先駆的な地産地消です。 パッケージ化された装置を他地域や他企業の工場へも広く展開しています。 大企業に頼らない中規模分散型のクリーン水素調達モデルとして注目です。
参考:やまなしハイドロジェンカンパニー

【事例】エア・ウォーターの家畜ふん尿由来水素ビジネス
産業ガス大手のエア・ウォーターは独自の地域循環型モデルを推進します。 北海道の酪農地域で家畜ふん尿から発生するバイオガスを回収します。 このガスを独自の技術で改質し低炭素なクリーン水素を製造・調達します。 海外からの輸入や大規模再エネに依存しない国内の新たな供給源です。 製造した水素は近隣工場の熱源や燃料電池トラックの燃料に活用されます。 地域の廃棄物をエネルギーに変えコストと安定供給の課題を解決します。 地方の特性を最大活用した分散型サプライチェーンとして注目されています。
参考:国内唯一、カーボンニュートラルな家畜ふん尿由来の水素サプライ事業を北海道鹿追町で開始 ~道内初の定置式水素ステーションでの供給体制を整備~|エア・ウォーター

【事例】住友ゴム工業の水素によるタイヤ製造
住友ゴム工業は白河工場を舞台に先進的な熱源の水素転換を進めています。 タイヤの製造時に不可欠な加硫工程の熱源を天然ガスから水素へ切り替えます。 山梨県などが開発したP2Gシステムを導入し工場内での水素調達に挑みます。 さらに近隣の水素研究フィールドから届くクリーン水素も活用するモデルです。 専用の水素専焼ボイラーを稼働させ製造工程の脱炭素化を現実のものとしました。 電化が困難な「ハード・トゥ・アベート」産業における有力な成功事例です。CO2を出さない次世代のタイヤ製造方法として世界から注目されています。
参考:タイヤ製造のカーボンニュートラルを目指して|住友ゴム工業

6.まとめ

グリーン水素の製造コストが高い理由は、再生可能エネルギーの電力コスト・電解槽の設備コスト・輸送インフラコストという三つの構造的な要因が重なっているためです。現状では国内製造コストが特に高く、グレー水素との価格差は依然として大きいですが、その差は技術革新と政策支援によって着実に縮まりつつあります。

五十鈴株式会社が提供する「icサーキュラーソリューション」は、強力なパートナーシップと独自の再販プラットフォームを駆使し、経済合理性のある資源循環を実現します。リペアやリユース、マテリアルリサイクルなど最適なルートをワンストップで選択することで、環境負荷軽減とコスト削減を同時達成をめざします。エネルギー転換と並行した、サスティナブル経営基盤づくりにお悩みの場合にはぜひご相談ください。

監修

早稲田大学法学部卒業後、金融機関での法人営業を経て、中小企業向け専門紙の編集記者として神奈川県内の企業・大学・研究機関を取材。
2013年から2020年にかけては、企業のサステナビリティレポートの企画・編集・ライティングを担当。2025年4月よりフリーランスとして独立。
企業活動と社会課題の接点に関する実務経験が豊富で、サステナビリティ分野での実践的な視点に基づく発信を強みとしている。