包装廃棄物規則とは?規制物質・適合宣言書から企業の具体的対策まで

包装廃棄物規則を理解することで、EU市場で求められる包装規制の内容や企業に必要な対応を整理できます。
この記事では、包装廃棄物規則の概要をはじめ、従来の包装廃棄物指令との違い規制物質適合宣言書の要件医薬品包装の扱い企業が行うべき実務対応までをわかりやすく整理します。

五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は規制に準拠した素材選定やトレーサビリティの確保、さらには構造的な企業変革を一貫して支援します。包装廃棄物規則でお悩みの場合には、ぜひご相談ください。

目次

1.包装廃棄物規則とは?背景と目的を整理

まずは、包装廃棄物規則の制度概要制定の背景従来制度との違い、そしてEUが包装規制を強化する目的について整理します。

(1)包装廃棄物規則(PPWR)の背景と目的

包装廃棄物規則は、EU域内で増加している包装廃棄物への対応を目的として整備された制度です。

EUではオンラインショッピングや宅配、テイクアウトなどの普及により包装廃棄物が増加しており、都市の固形廃棄物の約3分の1を占めています。2021年には包装廃棄物の総量が約8,400万トンに達し、2010年と比べて約24%増加しました。

このままの状況が続いた場合、2030年には包装廃棄物がさらに19%増加する見込みとされています。

また、包装廃棄物の発生量はリサイクル率の向上を上回るペースで増加しており、加盟国が設定されたリサイクル目標を達成できない要因の一つとして、リサイクルが困難な包装材の存在が指摘されています。包装材は紙使用量の約50%、プラスチック使用量の約40%を占め、海洋ごみの約半分が包装に由来するとされています。

このような状況を背景として、包装の設計から廃棄までを対象に資源循環を促進する制度として包装廃棄物規則が提案されました。

参考:https://www.eu.emb-japan.go.jp/files/100788023.pdf
参考:PPWR(EU包装・包装廃棄物規則)解説書の ご紹介|みずほリサーチ&テクノロジーズ

(2)従来の包装廃棄物指令(PPWD)との違い

従来のEUの包装規制は、包装廃棄物指令(PPWD)に基づいて運用されていました。これは、加盟国が国内法として制度を整備して運用する仕組みであり、各国の制度や運用に差が生じる可能性がありました。

これに対し、包装廃棄物規則(PPWR)はEU全体で統一的に適用される規則として整備されており、包装の設計から廃棄までのライフサイクル全体に対して共通の要件を定めています。包装の環境持続可能性やラベル表示、リサイクル可能性などに関する要件が統一され、EU域内の市場において包装に関する規制の調和を図ることが目的とされています。

また、包装廃棄物規則の導入に伴い、従来の包装廃棄物指令は廃止されることが規定されています。

参考:https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/e2a3dada17af22e3/20240023_02.pdf
参考:欧州発・包装資材の大転換!EUプラスチック規制(PPWR他)への企業対応と代替素材の最前線|TOPPAN

(3)包装廃棄物規則の施行時期

包装廃棄物規則は2025年2月11日に発効しました。規則の要件はすべて同時に適用されるわけではなく、2026年8月以降に段階的に適用される予定です。

また、リサイクル関連の要件など一部の主要な規定については、2030年頃から適用される予定とされています。これにより、企業は段階的に包装設計や材料、リサイクル対応などの見直しを進めることが求められます。

出典:https://www.eu.emb-japan.go.jp/files/100788023.pdf

2.包装廃棄物規則の適用対象となる包装と対象外の特例

包装廃棄物規則は、包装の種類や用途によって適用範囲が整理されており、一部の包装については特例や除外規定が設けられています。
ここでは、規則の対象となる包装の種類と対象分野、そして適用除外や特例の扱いについて整理します。

(1)対象となる3つの包装区分

包装廃棄物規則による主な区分は、商品を消費者に販売する際に使用される包装複数の商品をまとめるための包装輸送時に商品を保護するための包装の3つです。

包装区分定義具体例
販売包装販売時点で最終消費者や利用者が手にする最小単位の包装飲料ボトル、シャンプー容器、食品トレイ、医薬品ブリスターパック
グループ包装複数の販売単位をまとめるための包装取り除いても製品の特性に影響を与えない包装飲料缶6本のシュリンクラップ、小箱をまとめる外装箱
輸送包装商品の輸送や取り扱いを容易にし、損傷を防ぐための包装パレット、ストレッチフィルム、段ボールケース

企業が実務対応を進める際は、自社製品や物流で使用している包装がどの区分に該当するかを整理することが重要になります。

参考:https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sanki/soumu/attach/pdf/bunkakai_kako-115.pdf
参考:Packaging types and obligations – at a glance(英語)|Verpackungsregister.org(ドイツの包装登録機関)

(2)対象となる製品分野

包装廃棄物規則は、EU市場で流通する幅広い製品の包装を対象であり、食品・飲料、日用品、化粧品、医薬品、電子機器など、多くの製品分野で使用される包装が規制の対象となります。

また、EU域内で製造された製品だけでなく、EU域外から輸入される製品の包装も規制の対象に含まれます。EUへ輸出される包装製品(食品を含む)は、規則で定められた要件を満たさない場合、EU市場で販売できなくなる可能性があります。

このため、EU向けに製品を輸出する企業は、自社製品の包装材料や包装設計が包装廃棄物規則の要件に適合しているかを確認する必要があります。

特に、包装のリサイクル可能性や材料構成などの要件は、多くの製品分野に共通して適用されるため、製品カテゴリーごとに包装の仕様を整理することが実務対応の前提となります。

参考:PPWRとは?EUの新しい包装・包装廃棄物規則をわかりやすく解説|三井化学

(3)適用除外と特例規定

包装廃棄物規則はEU市場で流通する幅広い包装を対象としていますが、製品の用途や安全性への配慮が必要な分野において適用除外や特例規定が設けられています。
以下では、規則の適用から除外されるケースや、特定の製品分野に設けられている例外的な取り扱いについて整理します。

参考:https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2025/40/oj/eng

①医薬品・医療機器包装

包装廃棄物規則では、人用および動物用医薬品の包装について、製品の品質や安全性を確保するために特定の包装要件が必要となる場合、その外装包装などに関して例外的な取り扱いが認められる可能性があるとされています。

また、医療機器や医薬品に直接接触する包装など、製品の無菌性品質を維持するために必要な包装については、一般の包装と同じ要件をそのまま適用すると製品安全に影響を与える可能性があるため、特定の環境要件や設計要件が適用除外となるケースがあります。

ただし、これらの例外はすべての医薬品・医療機器包装に適用されるわけではありません。
輸送用の段ボールや外装箱など、製品品質に直接影響しない包装については、通常の包装と同様にリサイクル性や表示などの要件が適用される場合があります。

【事例】中外製薬の環境配慮型包装への取り組み
中外製薬は、医薬品の品質と安全性を最優先に守りながら 環境負荷を低減するため、包装資材の刷新に注力しています。 具体的には、使用量が多い固形剤のボトルやPTPシートにおいて PETボトルの再生樹脂を配合した素材を積極的に導入しています。 さらに、リサイクル適性を高めるために、従来の複合素材から 単一素材(モノマテリアル)への切り替えや技術開発も推進しており PPWRが求める循環型経済への適合を戦略的に進めています。 こうした先進的な取り組みは、業界全体の指針となっています。
参考:中外製薬公式サイト|循環型資源利用(製品包装資材の導入)

②堆肥化可能包装

包装廃棄物規則では、廃棄物管理や資源循環の観点から、特定の包装用途では堆肥化処理が環境上の利点を持つと整理されています。

具体的には、ティーバッグやコーヒーバッグ、コーヒーポッド、果物・野菜に貼付するラベル、極めて軽量なプラスチック袋などの包装について、一定の時期以降に工業的堆肥化基準への適合が求められるとされています。

これらの包装は、生ごみなどのバイオ廃棄物と一緒に処理されることが想定されるため、リサイクルよりも堆肥化による処理が適切なケースがあると位置付けられています。

【事例】三菱ケミカルグループの堆肥化可能包装への取り組み
三菱ケミカルグループは、微生物の力で水と二酸化炭素に分解される 生分解性樹脂「BioPBS™」の開発と普及をグローバルに展開しています。 この素材は紙コップやパッケージのコーティング剤として活用され、 使用後は生ごみと一緒に工業用コンポストで処理することが可能です。 特にJリーグのスタジアム等では、使用済みのカップを回収して 地元の農地で野菜作りのための堆肥に変える循環モデルを確立しました。 PPWRが求める高度な資源循環を実現する有力なソリューションとして、 欧州市場を含め、多様な包装分野での代替素材化を加速させています。
参考:三菱ケミカルグループ公式サイト:BioPBS™(生分解性樹脂)

3.包装廃棄物規則における規制物質と持続可能性要件

包装廃棄物規則では、包装材料に含まれる規制物質の制限に加え、リサイクル可能性や再生材の利用など、環境負荷の低減を目的とした要件が設定されています。
ここでは、包装材料に関する規制物質と、包装の設計や材料選択に関わる持続可能性要件について整理します。

出典:https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2025/40/oj/eng

(1)有害物質の制限

包装廃棄物規則では、特に、鉛、カドミウム、水銀、六価クロムなどの重金属については、包装または包装部材に含まれる濃度の合計が一定の基準値を超えてはならないと規定されています。

さらに、包装に含まれる化学物質については、EUの化学物質規制(REACH規則など)との整合性を前提に管理され、人体や環境への影響を抑えることが求められています。特に食品接触用途などでは、安全性の確保と環境負荷の低減の両面から化学物質管理が求められます。

【事例】DICグループの規制物質制限への取り組み
世界最大級のインキメーカーであるDICグループは、PPWRが求める 重金属制限やREACH規則に適合した安全な包装用材料を提供しています。 包装印刷に欠かせないインキにおいて、鉛や六価クロム等の有害な 重金属を含まない顔料への転換をグローバルな基準で進めてきました。 特に食品包装分野では、成分が内容物へ移行しない高安全な設計を施し、 人体や環境への影響を最小限に抑える高度な化学物質管理を実現しています。 こうした独自の技術は、パッケージの安全性とリサイクル性の両立を支え、 サプライチェーン全体の規制適合を強力にバックアップする役割を担います。
参考:DIC株式会社|パッケージングソリューション(サステナブルな貢献)

(2)リサイクル性

包装廃棄物規則では、包装の設計段階からリサイクルを前提として設計される必要があり、使用後に回収・選別・再処理できる構造であることが求められます。
包装のリサイクル性はEUで定められる基準に基づいて評価され、リサイクルの実現可能性や回収体制なども考慮して判断されます。

将来的には、EU市場に投入される包装はリサイクル可能であることが前提となる仕組みが検討されています。

【事例】ヘンケルのリサイクル設計への取り組み
ヘンケルは、2025年までに全製品の包装をリサイクル設計にする という野心的な目標を掲げ、構造の抜本的見直しを行っています。 特にリサイクルが困難だった多層フィルムのパウチ袋において、 独自の技術でポリエチレンのみの単一素材化に成功しました。 この「モノマテリアル化」により、特別な設備を必要とせずに 既存のリサイクル工程で高品質な資源として回収が可能となります。 PPWRの施行を見据え、工場の機械設備にも巨額の投資を行い、 機能性と持続可能性を高度に両立させた包装への転換を急いでいます。
参考:ヘンケル公式サイト|サステナブルパッケージング(英語)

(3)再生材の使用義務

包装廃棄物規則では、EU市場に投入されるプラスチック包装について、一定割合以上の再生材を使用することが求められます。

この要件は段階的に適用される仕組みとなっており、2030年以降は包装の種類ごとに最低使用割合が設定され、2040年にはさらに高い割合が求められる予定です。対象となる割合は、食品接触包装や非食品包装、使い捨てプラスチック包装などの区分によって異なります。

【事例】サントリーのリサイクルプラスチックへの取り組み
サントリーは、PPWRの基準を凌駕する「2030年までにペットボトルの サステナブル素材100%化」を掲げ、強力な資源循環を推進しています。 独自の「ボトル to ボトル」水平リサイクル技術をいち早く商用化し、 国内では既に再生PET樹脂の使用率が半数を超える実績を残しました。 現在は植物由来原料の活用や、自治体・他企業と連携した独自の回収網を 国内外で構築し、高品質な再生材を安定確保する体制を固めています。 この先駆的なモデルは、規制適合を超えた業界の標準となっています。
参考:資源循環|サントリー

(4)包装の最小化

包装廃棄物規則では、製品の保護や衛生、安全性などの機能を確保するために必要な範囲を超えて包装を使用してはならないとされており、商品のサイズに対して過度に大きい外装箱や不要な緩衝材などは、包装の最小化の観点から見直しの対象となります。

【事例】Amazonの包装最小化への取り組み
Amazonは「フラストレーション・フリー・パッケージング」を通じて、 開封のしやすさと資材の極小化を両立する独自基準を確立しています。 メーカーと協力し、配送用の追加段ボールを一切使わずに製品箱のまま 発送できる仕組みを広め、これまでに100万トン以上の資材を削減しました。 またAIを活用し、数億件のデータから各注文に最適な梱包サイズを算出。 隙間を埋める緩衝材を最小限に抑え、配送トラックの積載効率も向上させる ことで、梱包から物流に至るサプライチェーン全体の無駄を排除しています。 この取り組みは、PPWRの空きスペース制限に対する有力なモデルです。
参考:Amazon公式サイト|サステナビリティ(梱包の革新)(英語)

4.包装廃棄物規則の対応上での情報提供

包装廃棄物規則では、包装材料やリサイクル性などに関する情報を整理し、規制当局や取引先に提示できる状態にしておく必要があります。
ここでは、規則に基づき企業が整備すべき情報提供の内容について整理します。

参考:https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2025/40/oj/eng

(1)QRコードとデジタル・製品パスポート

包装廃棄物規則では、包装に関する情報を提供する方法として、QRコードなどのデジタルデータキャリアを用いて電子的に情報へアクセスできる仕組みを活用することが想定されています。

例えば、包装のリサイクル方法や材料構成などの情報は、QRコードなどを通じてウェブサイトにアクセスできる形で提供することが可能とされています。また、包装には製造者の名称、商標、連絡先などの情報を表示する必要があり、これらの情報もQRコードなどのデジタル手段で提供できる場合があります。

さらに、再利用可能な包装については、回収・再利用システムや回収拠点などの情報をQRコードなどのデジタルデータキャリアを通じて提供する仕組みが想定されています。こうした仕組みにより、包装の追跡や再利用回数の管理などを行うことが可能になります。

【事例】P&Gのデジタル識別によるリサイクル推進
P&Gは、PPWRの高度なリサイクル要件に対応するため、 デジタル水透かし技術「HolyGrail 2.0」を主導しています。 パッケージ表面に目に見えない特殊なコードを埋め込むことで、 リサイクル工場のスキャナーが素材をSKU単位で瞬時に識別。 これにより、従来の技術では困難だった食品用と非食品用の プラスチック選別を自動化し、再生材の純度を飛躍的に高めました。 デジタルデータを通じたこの革新は、物理的なラベルを超えた 次世代の製品パスポートとして、欧州市場で標準化されつつあります。
参考:P&Gのデジタル・ウォーターマークへの貢献(AIM:欧州ブランド協会)

(2)包装のラベル表示義務

包装廃棄物規則では、包装や廃棄物容器に対して統一されたラベル制度を導入し、利用者が包装の材料や廃棄方法を理解できるようにすることが目的とされています。

包装への表示は印刷や刻印などの方法で行うことが基本ですが、包装の性質やサイズによって表示が困難な場合には、ラベルやQRコードなどの標準化されたデジタルデータキャリアを包装やグループ包装に付ける方法も認められています。

このようなラベル制度は、EU域内での分別回収やリサイクルの効率化を目的としており、将来的にはEU全体で統一された表示形式が整備される予定です。企業は、自社製品の包装にどのような表示が必要かを確認し、規則に基づくラベル表示の要件に対応する必要があります。

【事例】ロレアルの環境ラベル表示への取り組み
ロレアルは、PPWRの先駆けともいえるフランスの厳格な環境規制に 完全適合した、透明性の高いパッケージ表示を世界規模で展開しています。 製品の本体や外箱のすべてに、分別方法を直感的に示す「トリマンマーク」を 配置し、消費者が迷わずリサイクルに参加できる仕組みを構築しました。 また、物理的な表示スペースが限られる小型の製品については、 QRコードを活用したデジタル表示を併用することで規制要件をクリアし、 デザイン性と法的義務の両立を「デジタル・パスポート」の先取りで実現しています。 こうした全社的な取り組みは、欧州市場での信頼構築の要となっています。
参考:L’Oréal公式サイト|パッケージにおける環境表示と持続可能性(英語)

5.包装廃棄物規則の適合宣言書と技術文書の作成

包装廃棄物規則では、包装の適合性を示す適合宣言書の作成と、それを裏付ける技術文書の整備が求められます。
ここでは、企業が作成すべき適合宣言書の概要と、適合性を証明するために整理しておく技術文書の内容について整理します。

出典:https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2025/40/oj/eng

(1)適合性評価の手続き

包装廃棄物規則では、製造者が規則で定められた手続きに基づいて適合性評価を行うか、または第三者にその実施を委任し、評価結果を裏付ける技術文書を作成することが求められています。

この適合性評価では、包装が規則で定められた環境持続可能性要件表示要件などに適合しているかを確認します。評価の結果に基づき、企業は包装が規則の要件を満たしていることを示すための適合宣言書を作成します。

また、サプライチェーンに関わる事業者は、それぞれの役割に応じて規則への適合を確保するための措置を講じることが求められており、これによってEU域内市場で流通する包装が規則に適合した状態で提供される仕組みが整備されています。

【事例】テュフズードの適合性評価支援への取り組み
テュフズードは、2026年8月から義務化されるPPWRの適合性評価に対し 企業の技術文書作成やリスク評価を多角的に支援する体制を整えています。 リサイクル可能性の等級判定や有害物質のスクリーニング検査を通じて、 包装がEUの厳しい環境基準を満たしていることを客観的に証明します。 こうした第三者機関による技術レポートは、企業が作成する適合宣言書の 強力な裏付けとなり、市場監視当局による監査への即応性を高めます。 また、最新の規制動向を反映したホワイトペーパーやセミナーを提供し、 日本企業のEU市場へのスムーズな参入とコンプライアンス維持を支えます。
参考:テュフズード公式サイト|その包装、EUで販売できますか?(PPWR解説)

(2)適合宣言書の記載事項

適合宣言書は、包装が包装廃棄物規則で定められた環境持続可能性要件などに適合していることを示す公式文書として位置付けられています。主な記載事項は次の通りです。

記載項目記載内容
包装の識別情報適合宣言の対象となる包装または包装タイプを特定できる情報(名称、型式、識別番号など)
製造者の識別情報製造者の名称、登録商号または登録商標、連絡先住所
適合宣言当該包装が包装廃棄物規則の要求事項に適合している旨の宣言
適用法令の情報当該包装に適用されるEU法令の名称
適合性評価の根拠適合性評価を実施したことを示す情報および関連する技術文書への参照
追加の適用法令(該当する場合)他のEU法令が適用される場合、それらの法令への適合を含めた単一宣言である旨
発行責任者宣言書の作成責任者の氏名および役職
発行情報宣言書の発行日および発行場所
署名製造者または正式な代理人の署名

企業は適合性評価の結果を踏まえてこれらの情報を整理し、適合宣言書として文書化する必要があります。適合宣言書は包装が包装廃棄物規則に適合していることを示す重要な証明文書として扱われます。
なお、同一の包装について複数のEU法令が適用される場合には、それらの法令への適合をまとめた単一のEU適合宣言書として作成することも認められています。

参考:2024年版 概要スライド EU循環型経済関連法の最新概要|JETRO

(3)技術文書の保管義務

包装廃棄物規則では、製造者は包装が規則の要件に適合していることを証明するため、適合宣言書を裏付ける技術文書を作成し、保管する義務があります。
技術文書は、適合性評価の結果や包装の設計・材料に関する情報などを整理した文書であり、規則の要件に適合していることを示す根拠として位置付けられています。

これらの文書は、包装がEU市場に投入された後も一定期間保管し、市場監視当局から求められた場合には提示できる状態にしておく必要があります。
これにより、包装が包装廃棄物規則の要件に適合していることを客観的に説明できるようになります。

参考:EU 循環型経済関連法の最新概要|JETRO

6.包装廃棄物規則に関連する取り決め

引用:https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/e_process/k_packaging.html

包装廃棄物規則に関連する主要な取り決めと、その概要を以下に整理しています。

規則・取り決め概要
欧州グリーンディール2050年までに炭素中立を目指す、包装廃棄物規則の最上位となる成長戦略
循環経済アクションプラン製品の設計から廃棄までを使い捨てから循環へ変える行動計画
エコデザイン規則製品の耐久性や修理可能性を定める枠組み
使い捨てプラスチック指令特定のプラスチック製品(カトラリー等)の禁止
REACH規則 / CLP規則化学物質の登録・評価規則
食品接触材料規則食品に触れる包装の安全性基準
廃棄物枠組み指令廃棄物処理の優先順位を定義
拡大生産者責任製造者が廃棄コストを負担する仕組み

例えば、食品包装であれば食品接触材料規則の安全基準を満たしながら、包装廃棄物規則のリサイクル義務を果たすという、多角的な視点が必要になります。
そのため、企業が包装廃棄物規則への対応を進める際には、包装材料の化学物質管理、廃棄物管理、リサイクル制度など、関連する制度との関係も整理しておく必要があります。

参考:包装材料を取り巻く環境問題の最新動向|日本包装技術協会

7.包装廃棄物規則に対応するために企業が行うべき実務対応

最後に、企業が実務上整理しておくべき主な対応事項について整理します。

(1)自社製品の包装が規則対象か確認する

企業は自社製品に使用している包装の種類や用途を整理し、どの包装区分に該当するのかを確認することが対応の出発点となります。また、EU域内で製造された製品だけでなく、EU向けに輸出される製品の包装も対象となるため、輸出製品の包装についても同様に確認しましょう。

自社の製品ラインや物流で使用している包装を一覧化し、規則の適用対象となる包装を把握することで、その後の材料確認や設計見直しなどの対応を進めやすくなります。

【事例】GS1による包装データ標準化の取り組み
国際標準化団体のGS1は、PPWRの複雑な包装区分を効率的に管理するため デジタルデータを用いた情報の共通言語化を強力に推進しています。 QRコード等に紐付いた「GS1デジタルリンク」を活用することで、 販売、グループ、輸送の各包装区分をサプライチェーン上で自動判別し、 素材構成や再利用回数などの膨大な情報を一元的に可視化します。 この仕組みは、企業が自社包装のインベントリを正確に把握する助けとなり、 報告義務の省力化とリサイクル工程での選別精度向上を同時に実現します。 データの標準化こそが、循環型経済への移行を支えるデジタル基盤となります。
参考:GS1 Europe公式サイト:PPWRとGS1標準に関するポジションペーパー(英語)

(2)包装材料と規制物質の含有状況を把握する

次に、包装に使用している樹脂、紙、金属、インク、接着剤、コーティングなどの材料を整理し、サプライヤーから提供される材料情報や仕様書をもとに、規制対象物質が含まれていないかを確認します。

包装材料の情報を管理しておくことで、リサイクル性や再生材の使用割合の確認にもつながるため、サプライチェーン全体で体系的に材料情報を整理し、把握できる状態にしておくことが実務対応の基盤となります。

【事例】リコーによる材料情報管理の取り組み
リコーは、包装材を含む全製品部材に対し、chemSHERPAを活用した 高度な製品含有化学物質管理システムをグローバルに展開しています。 樹脂やインク、接着剤などの詳細な成分情報をサプライヤーから データ形式で収集し、規制対象物質の不含有をデジタル上で自動検認。 この一元管理体制により、PPWRが求める有害物質の制限遵守だけでなく、 再生材の使用割合やリサイクル適性の正確な算出も可能にしました。 サプライチェーン全体での透明な情報管理が、法的適合の土台となります。 こうしたデータ基盤は、当局への適合証明を迅速に行う鍵となります。
参考:汚染予防の取り組み|リコー

(3)リサイクル可能な包装設計へ見直す

複数素材を組み合わせた包装構造や分離が困難な材料の使用など、リサイクル工程で課題となる設計がないかを確認します。その結果によっては、材料構成を見直し、リサイクル工程で処理しやすい素材へ変更することも検討されます。

【事例】DNPによるモノマテリアルパッケージの取り組み
大日本印刷(DNP)は、PPWRが求めるリサイクル設計への対応として、 単一素材で構成される「モノマテリアルパッケージ」を幅広く展開しています。 従来のリサイクルが困難な多層フィルムの課題に対し、独自の蒸着技術で 酸素や水分を防ぐバリア機能を保持したまま、単一樹脂への統合を実現しました。 これにより、既存のリサイクル工程での選別と再資源化が飛躍的に容易になり、 欧州の厳しいリサイクル性能評価(RecyClass等)への適合も支援しています。 食品から日用品まで多様な用途に応じた素材ラインアップを提供することで、 日本企業のEU市場進出におけるパッケージ戦略を強力にサポートしています。 こうした革新的な設計は、資源循環型社会を支える不可欠な技術となります。
参考:モノマテリアルパッケージ:開発・販売推進の現場から ~DNPインドネシア インタビュー

(4)適合宣言書と技術文書を作成する

適合宣言書には、包装の識別情報、製造者情報、適用法令、適合宣言などの情報を記載します。
技術文書には包装の設計仕様、材料情報、適合性評価の結果などを整理し、規則の要件に適合していることを説明できる内容を記録します。

【事例】osapiensの適合文書デジタル管理への取り組み
osapiensは、PPWRが求める適合宣言書と技術文書の膨大な管理業務を 自動化する、クラウドベースのデジタルプラットフォームを提供しています。 包装に使用される全素材の構成情報やサプライヤーからの証明書を 一元管理し、規則第39条に基づいた適合宣言書を効率的に発行します。 さらに、単回使用包装は5年、再利用可能包装は10年という長期の 文書保管義務に対しても、デジタルアーカイブによって確実に応対。 市場監視当局からの提示要請に即座に応えられる体制を構築することで、 企業のコンプライアンス維持と法的リスクの最小化を強力に支援します。
参考:osapiens公式サイト|PPWR技術要件とDoCの解説(英語)

(5)サプライヤーと連携した包装情報の管理体制を整備する

包装廃棄物規則への対応では、サプライチェーン全体で包装情報を把握する体制を整備する必要があります。包装材料や化学物質、再生材の使用割合などの情報は、材料メーカーや包装資材メーカーから提供される情報に依存する部分が多いためです。

また、規制対応のために必要な情報を継続的に更新できるよう、情報提供のルールや確認手順をサプライヤーと共有しておくことも重要です。

【事例】Appleの包装情報管理とサプライヤー連携の取り組み
Appleは、2025年までに全包装からプラスチックを排除する目標を掲げ サプライヤーに対して業界最高水準の情報開示と準拠を求めています。 「規制物質仕様書(RSS)」を通じて、重金属やPFAS等の含有状況を 厳格に管理し、全ての材料構成をデジタルデータとして精査しています。 さらに、100%繊維ベースの包装移行に向け、森林認証(FSC)を受けた 資材の調達や再生材比率をサプライヤー単位でリアルタイムに追跡。 こうした透明性の高いデータ収集体制は、PPWRの技術文書作成において 強力なエビデンスとなり、法的適合と環境目標を高度に両立させています。 徹底したサプライヤー監査が、循環型包装の信頼性を支える基盤です。
参考:Apple公式サイト|2025年環境進捗報告書(英語)

8.まとめ

包装廃棄物規則は、包装へのラベル表示やデジタル情報提供、適合宣言書や技術文書の作成など、企業が対応すべき情報管理や適合手続きも規定されています。
EU市場に製品を投入する企業は、自社製品の包装区分や材料構成を整理したうえで、規制物質の確認、包装設計の見直し、適合文書の整備などを進めましょう。

五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、現場の資源データと最新の欧州規制を照らし合わせ、規制対応と経済合理性を両立させる構造変革を強固に支援します。包装規制を市場をリードする機会へと転換したい場合には、ぜひお気軽にご相談ください。

監修

早稲田大学法学部卒業後、金融機関での法人営業を経て、中小企業向け専門紙の編集記者として神奈川県内の企業・大学・研究機関を取材。
2013年から2020年にかけては、企業のサステナビリティレポートの企画・編集・ライティングを担当。2025年4月よりフリーランスとして独立。
企業活動と社会課題の接点に関する実務経験が豊富で、サステナビリティ分野での実践的な視点に基づく発信を強みとしている。