ゼロエミッションとは、事業活動から出る廃棄物を資源として活用し、埋め立てや単純焼却に回る廃棄物をゼロに近づける取り組みです。処理費用の削減や資源の有効活用につながることから、多くの企業が工場や施工現場で達成を目指してきました。
本記事では、ゼロエミッションに取り組む日本企業9社の事例を業種別に紹介したうえで、事例から見える共通点や基本的な考え方、メリット、進め方、課題と対策について解説します。
五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、返品や使用済み製品など、事業の中で定期的に発生するモノの資源循環を一括で支援するサービスです。回収したモノは状態に応じて再販・リユースを優先し、残ったものも再資源化や適正な処分まで1つのスキームで対応します。鉄を含む製品・設備については、国内製鉄所へ還流させるクローズドループの構築まで対応しています。ゼロエミッションに向けて、処分に回る廃棄物を減らしたい場合は、ぜひご相談ください。

1.ゼロエミッションに取り組む日本企業9社
ゼロエミッションの考え方は、1994年に国連大学が提唱して以降、製造業を中心に広がりました。ここでは、各社が公表している資料をもとに、自社でのゼロエミッションの定義や達成までの施策がわかる9社を業種別に紹介します。
(1)電機・電子部品
電機・電子部品の工場では、汚泥や廃液、廃プラスチックなど多様な廃棄物が発生します。品目ごとに再資源化先を確保し、工程内での再利用や有価物化を組み合わせて、再資源化率を高めている企業が多く見られます。
パナソニック インダストリー株式会社
引用:https://www.panasonic.com/jp/industry/csr/environment/resourcecirculation.html
パナソニック インダストリー株式会社は、工場廃棄物リサイクル率99%以上を自社のゼロエミッションと定義しています。廃棄物の削減に向けて、プロセス設備の生産性向上や歩留まりの向上、薬液・樹脂の再利用、有価物化の推進をグローバルで進めており、廃棄物や有価物に関する研修会も開いています。
国内事業場からは、年間4,000トン余りの廃プラスチックが発生します。2020年度は、世界的な廃棄物の輸入禁止措置の影響で国内の最終処分量が増え、リサイクル率が97.2%と目標を下回りました。2021年度以降は再資源化や有価物取引への切り替えを進め、2024年度もリサイクル率99.8%で目標を達成しています。
三菱電機株式会社
引用:https://www.giho.mitsubishielectric.co.jp/giho/pdf/2009/0910114.pdf
三菱電機株式会社は、2007年に策定した「環境ビジョン2021」で、3R(発生抑制・再使用・再資源化)の推進を環境経営の柱の1つに掲げています。同社の技術報告では、ある事業所が2006年度以降、溶融処理や無害化処理を活用して埋め立て処分をなくし、すべての廃棄物の再資源化を達成した事例が紹介されています。
この事業所では、熱回収(サーマルリサイクル)からマテリアルリサイクルへの変更など、リサイクルの質の改善にも取り組みました。地元と北九州・山口地区の処分業者を仲介して地域の再資源化ルートを開拓し、回収便の他用途での活用やロットの大型化によって廃棄物の物流も見直しています。こうした活動により、年間約1,300万円の処理費用を削減(2002〜2006年度平均)しました。
TDK株式会社
引用:https://www.tdk.com/system/files/_csr_report_rep2001_rep00116.pdf
TDK株式会社は、100%の再資源化をゼロエミッションの達成とし、その状態が6か月以上継続したことをもって達成と認定する基準を設けました。2004年3月を最終目標に、連結会社を含む事業所で取り組みを進めました。
製造方法の改善や工程内リサイクルによって廃棄物を極力出さないことを基本とし、汚泥と廃プラスチックを重点テーマとして取り組みました。フェライトの汚泥を回収する仕組みや、めっき液を長寿命化する工程を導入するなど、廃棄物を出さないクローズドなシステムづくりを目指しています。
双葉電子工業株式会社
引用:https://www.lrqa.com/ja-jp/case-studies/futaba-14921-iso-14001/
蛍光表示管や金型用部品などを手がける双葉電子工業株式会社は、再資源化率99%をゼロエミッションと定義しています。1999年にISO 14001の認証を取得した当時のリサイクル率は75%程度でしたが、廃棄物の削減とリサイクル率の向上を目標に取り組みを進め、数年後には90%を超えました。
その後、開発部門と生産部門が一体となり、課題だったカドミウムや酸・アルカリ廃液などの特別管理産業廃棄物の削減・リサイクルを徹底しました。ゼロエミッションを実現するとともに、廃棄物処理コストも当初と比べて大きく削減しています。
(2)機械・部品
機械・部品メーカーでは、金属くずや廃油、汚泥などが多く発生します。金属くずは有価物として売却しやすい一方で、油分を含む汚泥などは再資源化先の確保が課題になります。
日本精工株式会社(NSK)
ベアリング大手の日本精工株式会社は、2003年に、社内工場と分社化した工場を含む全工場でゼロエミッションを達成したと発表しています。
同社は、埋め立て処分量が総排出量の1%以下であることをゼロエミッションと定義しています。廃棄物処理法の埋立基準を満たすための中間処理(脱水・破砕・圧縮など)後の埋め立ても含めて算定し、対象には金属くずなどの副産物、廃油・汚泥などの産業廃棄物に加えて、紙くず・木くずなどの事業系一般廃棄物も含めています。対象範囲を広く設定している点が特徴です。
(3)住宅・建設
住宅・建設業では、廃棄物が工場だけでなく、各地に点在する施工現場からも発生します。少量で多品目の廃棄物を効率よく回収・分別できるかどうかが、ゼロエミッションを達成するための条件になります。
積水ハウス株式会社
引用:https://sekisuihouse.co.jp/company/topics/library/2024/20241128_1/20241128_1.pdf
積水ハウス株式会社は、産業廃棄物の単純焼却と埋め立て処分をゼロにすることをゼロエミッションの内容としています。2002年に生産工場で達成した後、2005年に新築施工現場、2006年にアフターメンテナンス、2007年にリフォーム施工現場と、対象範囲を段階的に広げてきました。
施工現場の廃棄物は、廃棄物処理法の広域認定制度に基づいて全国21か所の自社施設「資源循環センター」に回収し、分別したうえで100%リサイクルしています。新築現場の廃棄物を分別するためのガイドの策定や作業員への環境教育、回収した廃棄物の種類・量・流れを一元管理するシステムの開発も、達成を支えた取り組みです。
2024年には、株式会社ブリヂストンと共同で、新築施工時に出る給水給湯樹脂配管の端材を同じ製品の原料に戻す水平リサイクルを開始しました。熱エネルギーとしての再資源化が中心だった素材を、マテリアルリサイクルに切り替える取り組みです。
出典:公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター「JWセンター情報」2024年7月号(https://jwnet.or.jp/info/kikansi/assets/files/kikansi_202407_p38_40.pdf)
出典:国土交通省(https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/region/recycle/d04publicity/d0402/link/21hapyousouridaijin.pdf)
(4)食品・飲料
食品・飲料メーカーでは、製造工程から原料由来の副産物が大量に発生します。副産物を飼料や肥料として活用できるかどうかが、再資源化率を左右します。
アサヒビール株式会社
引用:https://www.pref.kanagawa.jp/documents/12389/35.pdf
アサヒビール株式会社は、全国8工場で副産物・廃棄物の再資源化100%を達成しています。2002年に竣工した神奈川工場は、竣工と同時に再資源化100%を達成し、その後も継続しています。アサヒグループ全体でも、2011年度までに全国34拠点で再資源化100%を達成しました。
ビールの仕込み工程で出る麦芽の殻皮「モルトフィード」は、副産物・廃棄物の約80%以上を占め、家畜の飼料などに再利用されています。汚泥は有機肥料やたい肥に、アルミくずはアルミ缶や電気製品に生まれ変わります。神奈川工場の2012年度の実績では、約1万6,000トンの副産物・廃棄物のうち産業廃棄物は約2,700トンで、残りは副産物として売却しています。
出典:農林水産省北海道農政事務所(https://www.maff.go.jp/hokkaido/midori/attach/pdf/jirei-2.pdf)
(5)生活用品・化粧品
生活用品や化粧品のメーカーでは、プラスチックの成形不良品や容器・包装材、製造工程の廃液などが発生します。工場単位で再資源化先を調べ、処理ルートを1つずつ切り替えていく取り組みが中心です。
アイリスオーヤマ株式会社
引用:https://www.irisohyama.co.jp/news/2006/0714.html
アイリスオーヤマ株式会社は、工場から出る産業廃棄物の再資源化率99%以上をゼロエミッションと定義しています。以前から製品生産時に出るプラスチックの成形不良品をリサイクルしていましたが、2002年6月からは全工場で埋め立て・焼却に回る産業廃棄物の削減を目指し、各工場の廃棄物の再資源化用途と再資源化先の調査を始めました。
取り組みは、製造部門の責任者である常務取締役を長とし、全工場長と製造部門の各責任者が参加する月1回の会議で進捗を確認しながら進めました。2006年には、全工場でのゼロエミッション達成を目指す方針を発表しています。
株式会社マンダム
引用:https://prd.mandom.co.jp/release/pdf/2004041903.pdf
株式会社マンダムは、廃棄物の再資源化率99%以上(埋め立て処分1%未満)の維持をゼロエミッションと定義しています。福崎工場(物流センターを含む)では、2000年のISO 14001認証取得を契機に、単純焼却・埋め立て処分していた廃棄物の再資源化を進め、2003年10月以降、再資源化率99%以上を維持しています。
達成後も、発生元での排出抑制に加えて、新たな種類の廃棄物に対応したリサイクルルートの確保と、再資源化の質の向上を目標に掲げています。

2.事例から見るゼロエミッション達成企業の共通点
9社の事例を比べると、業種は異なっても、ゼロエミッションを達成するまでの進め方には共通点があります。自社で取り組む際は、次の観点から現状を見直すと、取り組むべき課題を絞り込めます。
(1)分別を徹底して有価物化・再資源化の対象を増やしている
再資源化率を高めるうえで、出発点になるのは分別です。複数の素材が混ざった廃棄物は再資源化しにくく、焼却や埋め立てに回りやすくなります。パナソニック インダストリーの有価物化の推進や、積水ハウスの施工現場での分別ガイドの策定のように、排出の段階で品目ごとに分ける仕組みを整えることが、再資源化と売却の対象を増やす前提になっています。
国土交通省の図では、解体・木造工事の建設混合廃棄物の排出原単位は、2000年度の64.1kg/㎡から2018年度の17.6kg/㎡に減っています。解体・非木造工事も24.6kg/㎡から9.8kg/㎡に低下しており、資料では分別解体の効果として示されています。排出段階で素材を分け、混合廃棄物を減らすという本節の取り組みを補足するデータです。ただし、建設工事を対象とした過去の実績であり、工事の種類や建物の構造も影響するため、他業種の削減率や売却益を直接示すものではありません。
(2)処理業者と連携して再資源化ルートを開拓している
自社だけで再資源化先を確保するのは困難です。三菱電機の事業所では処分業者どうしを仲介して地域の再資源化ルートを開拓し、アイリスオーヤマでは工場ごとに再資源化先を調べました。どの品目をどの業者がどう再資源化できるかを把握し、ルートを1つずつ切り替えていく作業が、達成までの取り組みの中心になっています。
(3)単純焼却を減らしてリサイクルの質まで管理している
再資源化率が高くても、委託先での中間処理が単純焼却であれば、資源として活用されているとはいえません。三菱電機の技術報告では、ゼロエミッションをうたっていても、実際には中間処理が単純焼却だったり、中間処理後に焼却や埋め立てが行われていたりするケースがあることが指摘されています。
積水ハウスが単純焼却をゼロエミッションの対象外としていることや、マンダムが再資源化の質の向上を掲げていることからもわかるように、達成企業は委託先での処理方法まで確認し、マテリアルリサイクルへの切り替えを進めています。
同協会の推計では、2023年の廃プラスチック総排出量は769万トンで、有効利用率は89%です。ただし、マテリアルリサイクルは22%、ケミカルリサイクルは3%で、有効利用には発電焼却31%や固形燃料・セメント原・燃料25%などのエネルギー回収も含まれます。ゼロエミッションの成果を確認する際は、有効利用率の高さに加えて、素材として戻る量と熱として使う量を分けて把握することが重要です。これは国内全体の推計であり、自社の処理構成は樹脂の種類、汚れや混合状態、委託先の処理設備によって異なります。
(4)工場から施工現場・物流へと対象範囲を広げている
ゼロエミッションは、1つの工場で達成して終わりではありません。積水ハウスは生産工場から施工現場、アフターメンテナンス、リフォームへと対象を広げ、アサヒグループは製造拠点から始めてグループの34拠点へと達成の範囲を広げてきました。拠点や事業が増えるほど、廃棄物の種類と委託先も増えるため、全社で管理する仕組みが欠かせません。

3.ゼロエミッションとは?企業が押さえておきたい基本
ゼロエミッションという言葉は、使われる場面によって意味が異なります。事例を正しく読み取り、自社の目標を設定するためにも、基本的な考え方を押さえておくことが大切です。
(1)国連大学が提唱した「廃棄物ゼロ」を目指す考え方
ゼロエミッションは、1994年に国連大学が「ゼロエミッション研究構想(ZERI)」として提唱した考え方です。ある産業から出た廃棄物や副産物を別の産業の資源として活用し、社会全体として廃棄物を出さない資源循環型の産業社会を目指すものとされています。
企業の取り組みとしては、この考え方をもとに、事業所から出る廃棄物を再使用・再資源化し、埋め立てや単純焼却に回る量をゼロに近づけることを指すのが一般的です。本記事で紹介した9社の事例も、この意味でのゼロエミッションです。
出典:東洋大学「経営力創成研究」Vol.4 No.1(2008年)(https://www.toyo.ac.jp/assets/research/958.pdf)
(2)CO₂排出ゼロの意味で使われる場合もある
ゼロエミッションという言葉は、温室効果ガスの排出をゼロにする意味で使われることもあります。たとえば東京都は、2050年までに世界のCO₂排出実質ゼロに貢献する「ゼロエミッション東京」の実現を掲げ、再生可能エネルギーの導入拡大などに取り組んでいます。走行時に排出ガスを出さない電気自動車や燃料電池自動車を「ゼロエミッション車」と呼ぶのも、この意味での使い方です。
廃棄物のゼロエミッションとCO₂のゼロエミッションは、目標も指標も異なります。社内外で目標を共有する際は、どちらの意味で使っているかを明確にしておくと、認識のずれを防げます。
出典:東京都環境局・東京都環境公社(https://tokyo-co2down.jp/press/20240953839.html)
(3)達成基準は企業ごとに定義されている
廃棄物のゼロエミッションには、法令などで定められた統一の基準がありません。そのため、各企業が再資源化率や埋め立て処分量の割合を使って独自に達成基準を定めているのが実情です。本記事で紹介した企業の基準を比べると、次のようになります。
| 企業 | ゼロエミッションの基準 |
|---|---|
| パナソニック インダストリー | 工場廃棄物リサイクル率99%以上 |
| 双葉電子工業 | 再資源化率99% |
| アイリスオーヤマ | 工場から出る産業廃棄物の再資源化率99%以上 |
| マンダム | 再資源化率99%以上(埋め立て処分1%未満)の維持 |
| 日本精工 | 埋め立て処分量が総排出量の1%以下 |
| 積水ハウス | 産業廃棄物の単純焼却と埋め立て処分ゼロ |
| アサヒビール | 副産物・廃棄物の再資源化100% |
| TDK | 100%の再資源化を6か月以上継続 |
同じ「99%以上」でも、分母に事業系一般廃棄物や有価物を含めるか、熱回収を再資源化に数えるかによって、数値の意味は変わります。他社と比較したり社外に公表したりする際は、定義と対象範囲をあわせて確認することが欠かせません。
(4)カーボンニュートラル・サーキュラーエコノミーとの違い
カーボンニュートラルは、温室効果ガスの排出量から吸収量や除去量を差し引いて、合計を実質ゼロにする考え方です。対象は温室効果ガスで、廃棄物のゼロエミッションとは目標とする指標が異なります。ただし、廃棄物の焼却や埋め立ても温室効果ガスの排出源になるため、両者は無関係ではありません。
サーキュラーエコノミーは、製品の設計段階から資源を循環させ、製品や素材の価値をできるだけ保ちながら使い続ける経済の仕組みです。ゼロエミッションが主に事業所から出る廃棄物の行き先に着目するのに対し、サーキュラーエコノミーは設計・製造・使用・回収までの資源の流れ全体を対象にします。ゼロエミッションは、サーキュラーエコノミーを実現するための取り組みの1つと位置づけられます。
図が示す2022年度の日本の総物質投入量は13億8,800万トンで、そのうち循環利用量は2億2,600万トンです。資源の輸入や国内採取から、製品の蓄積、廃棄物の発生、再投入までが一続きで描かれています。廃棄物の処理先を見直すゼロエミッションに対し、サーキュラーエコノミーでは、原料の調達や再生資源の利用まで視野を広げる必要があることを理解できます。ただし、これは日本全体の物質収支を表す図であり、個別企業の再資源化率や、温室効果ガスの削減量を示すものではありません。
カーボンニュートラルに取り組む企業の事例は、以下の記事で解説しています。


4.企業がゼロエミッションに取り組むメリット
ゼロエミッションは環境への配慮にとどまらず、コストやリスクの面でも企業に利点があります。
(1)廃棄物の処理コストを削減できる
焼却や埋め立てに回る廃棄物を減らし、再資源化しやすい形で排出できるようになると、処分費を抑えられます。三菱電機の事業所では年間約1,300万円の処理費用を削減し、双葉電子工業でも廃棄物処理コストを当初より大きく削減しました。分別の徹底や回収物流の見直しは、ゼロエミッションとコスト削減を同時に進める取り組みです。
処理コストを下げる具体的な方法は、以下の記事で解説しています。

(2)有価物化によって売却益を得られる
分別して品目ごとに排出すると、これまで処理費用を払っていた廃棄物の一部を有価物として売却できるようになります。アサヒビールの神奈川工場では、排出する副産物・廃棄物の大半を副産物として売却しています。費用だったものが収入に変わる点は、ゼロエミッションの大きな利点です。
(3)不適正処理のリスクを減らせる
産業廃棄物の処理を委託した場合でも、排出事業者は処理が適正に行われるよう責任を負います。委託先で不適正な処理が行われ、委託先だけでは支障の除去が難しい場合などには、排出事業者も措置命令の対象になることがあります。
ゼロエミッションに取り組む過程で、委託先の処理方法や再資源化の実態を確認するようになるため、不適正処理に巻き込まれるリスクを下げることにもつながります。
出典:e-Gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」第3条・第12条第7項・第19条の6(https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000137)
(4)取引先や投資家への環境情報の開示につながる
再資源化率や埋め立て処分量は、取り組みの成果を数値で示せる指標です。統合報告書やサステナビリティ報告での開示や、取引先から求められる環境調査への回答に活用でき、資源循環に取り組む企業としての評価にもつながります。

5.企業がゼロエミッションを進める5ステップ
ゼロエミッションは、一度に全社での達成を目指すのではなく、現状の把握から段階的に進めることが大切です。
(1)廃棄物の種類・排出量・処理方法を把握する
まず、事業所ごとに排出している廃棄物の種類と量、委託先と処理方法を一覧にまとめます。マニフェストや委託契約書、処理業者からの報告をもとに、次の項目を整理します。
- 廃棄物の種類(品目)と排出量
- 排出拠点と排出工程
- 委託先の業者名
- 中間処理と最終処分の方法
- 再資源化・焼却・埋め立ての内訳
一覧にすると、どの品目が焼却や埋め立てに回っているかが見えてきます。前年度の産業廃棄物の発生量が1,000トン以上の事業場を持つ多量排出事業者は、処理計画の作成・提出が義務づけられているため、計画で整理したデータを出発点にできます。
出典:e-Gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」第12条第9項(https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000137)
2022年度の産業廃棄物は、再生利用54.2%、中間処理による減量化43.4%、最終処分2.4%に分かれています。再生利用や最終処分には、直接行うものと、中間処理後の残さを経由するものがあることも読み取れます。自社の現状を把握する際も、最初の引渡先だけでなく、その後の処理と最終的な行き先まで整理することが、改善対象を特定する土台になります。ただし、減量化は資源としての再利用と同じではありません。また、全国集計の割合を自社の達成基準として使うことはできません。
(2)自社のゼロエミッションの定義と対象範囲を決める
次に、何をもってゼロエミッションとするかを決めます。紹介した事例のように、再資源化率99%以上とするのか、埋め立て処分量を総排出量の1%以下とするのか、単純焼却も対象外とするのかによって、必要な取り組みは変わります。
あわせて、対象とする範囲も決めておきます。工場だけか、物流センターや営業拠点も含めるか、産業廃棄物だけでなく事業系一般廃棄物も含めるかを明確にすると、社内の目標がぶれにくくなります。最初は特定の工場から始め、達成後に範囲を広げる進め方も有効です。
(3)分別と再資源化ルートを整える
焼却や埋め立てに回っている品目ごとに、分別の方法と再資源化先を検討します。排出場所に品目ごとの容器を置き、分別の基準を表示するとともに、再資源化できる処理業者を探します。
まだ使える設備や什器は、リユースや売却を優先し、再資源化できないものだけを処分に回す順番で考えると、処分量を最小限に抑えられます。
(4)従業員・処理業者と運用ルールを共有する
分別のルールは、現場の従業員が守らなければ定着しません。積水ハウスが施工現場向けの分別ガイドを作り、作業員への教育を行ったように、現場で迷わず分別できる手順を示すことが重要です。
処理業者とも、受け入れられる廃棄物の状態や回収の頻度、再資源化の方法を共有しておきます。アイリスオーヤマのように定期的な会議で進捗を確認する場を設けると、課題に早く気づけます。
(5)再資源化率を測定して改善を続ける
取り組みを始めたら、再資源化率や埋め立て処分量を定期的に測定し、目標との差を確認します。電子マニフェストを利用すると、委託した廃棄物の種類や量のデータを集計しやすくなります。
達成後も、新しい製品や工程の追加によって、再資源化先のない廃棄物が出てくることがあります。マンダムのように新たな種類の廃棄物に対応したルートの確保を目標に掲げ、継続して見直すことが大切です。

6.ゼロエミッションを進める際の課題と対策
ゼロエミッションの達成を目指す過程では、技術面だけでなく管理面の課題も生じます。代表的な課題と対策を紹介します。
(1)再資源化先が見つからない廃棄物が残る
取り組みが進むと、残るのは複合素材の製品や汚れの付いた廃棄物など、再資源化しにくいものが中心になります。この段階では、1つの処理業者だけでは受け入れ先が見つからないことがあります。
対策としては、リユース、リペア、マテリアルリサイクル、熱回収など複数の処理方法を持つ業者に相談することが有効です。製品のまま再販できるもの、部品を取り出せるもの、素材として再生できるものに分けて検討すると、処分に回る量を減らせます。
(2)品目・拠点ごとに委託先が分散して管理が煩雑になる
品目ごとに再資源化先を探していくと、委託先の数が増え、契約書やマニフェスト、許可証の確認などの管理業務が膨らみます。拠点が多い企業では、拠点ごとに委託先や管理方法が異なり、全社の再資源化率を把握するだけでも手間がかかります。
対策としては、委託先をできるだけ集約し、全社のデータを一元的に管理することが挙げられます。リユースから再資源化、処分までをまとめて任せられる委託先を選べば、管理の手間を減らしながら再資源化率を高められます。
(3)分別の手間が現場の負担になる
分別の品目を細かくするほど、現場の作業は増えます。負担が大きすぎるとルールが守られなくなり、結果として混合廃棄物が増えることにもなりかねません。
対策としては、再資源化や売却の効果が大きい品目から優先して分別を始め、現場の意見を聞きながら容器の配置や表示を見直すことが有効です。分別によって削減できた処理費用や得られた売却益を現場に共有すると、取り組みの意義が伝わりやすくなります。
外食事業者49者への調査では、食品リサイクルが進まない理由として「分別が難しい」が最も多く、処理費の増加や、広域に分散する店舗からの回収の難しさも挙がっています。再資源化を進めるには、分別品目を増やすだけでなく、現場の作業量や回収方法まで含めて運用を設計する必要があることを補足する結果です。ただし、2017年1月の外食産業を対象とする調査であり、現在の全企業に共通する割合とはいえません。自社の対策は、排出する廃棄物の性状、保管場所、担当者の負担を確認して検討することが必要です。
(4)委託先での処理の実態を把握しにくい
廃棄物を委託した後の処理は、排出事業者からは見えにくくなります。委託先の中間処理が単純焼却であったり、中間処理後に埋め立てられていたりしても、マニフェストの情報だけでは気づきにくいことがあります。
対策としては、許可証や委託契約書で処分方法を確認するとともに、処理施設を実際に訪れて処理工程を確認することが有効です。廃棄物処理法でも、排出事業者は委託先の処理状況を確認し、適正な処理が行われるよう努めることとされています。
出典:e-Gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」第12条第7項(https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000137)
7.まとめ
ゼロエミッションは、事業活動から出る廃棄物を資源として活用し、埋め立てや単純焼却に回る量をゼロに近づける取り組みです。紹介した9社の事例からは、分別の徹底、処理業者との連携、リサイクルの質の管理、対象範囲の段階的な拡大という共通点が見えてきます。
達成基準は企業ごとに異なるため、まずは自社の廃棄物の現状を把握し、定義と対象範囲を決めたうえで、再資源化ルートを1つずつ整えていくことが大切です。
icサーキュラーソリューションでは、五十鈴とサイクラーズの連携により、不要になった設備や製品のリユース・リペア・リサイクル・処分を1つのスキームで提案しています。捨てるか、直すか、売るかの判断から処理までをまとめて相談できるため、処分に回る量を減らしながら、委託先の管理にかかる手間の軽減にもつながります。ゼロエミッションに向けて、再資源化先の見つからない廃棄物や委託先の分散にお悩みの企業様は、お気軽にご相談ください。








