施設や管理物件の給湯器を交換・撤去する場合、取り外した機器は事業活動や建設工事に伴う産業廃棄物として扱われるため、リサイクルにあたっては排出事業者が誰になるかを確認し、機器の種類に応じた撤去前の準備を済ませたうえで、売却・資源循環・廃棄のいずれかのルートへ引き渡す必要があります。給湯器はガス、石油、電気、ヒートポンプと熱源によって構造が異なり、残油や残水、冷媒など撤去時に処理すべきものも変わります。排出事業者と種類別の準備を整理したうえで、処理方法ごとの費用と経営上の効果を同じ前提で比較することが、適切な判断につながります。
五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、鉄を主原料とする製品・設備の廃棄や資源循環を起点に、サーキュラーエコノミーへの移行を支援するサービスです。廃棄物を国内製鉄所等へ還流させるクローズドループの構築など、カーボンニュートラルや循環型社会の実現に向けた取り組みを、コスト削減と両立する形で支援します。施設の設備更新や管理物件の給湯器交換に伴う資源循環を検討する場合にはぜひご相談ください。
1.給湯器のリサイクル前に確認する排出事業者と法的区分

給湯器のリサイクルでは、撤去が建設工事に該当するかによって、処理の責任を負う排出事業者が施設の所有者になるか工事の元請業者になるかが変わります。あわせて、業務用のヒートポンプ給湯機では冷媒の種類によってフロン排出抑制法の手続きが必要になり、石油給湯機には製品安全の制度が関係します。処理ルートを検討する前に、排出事業者と機器ごとの法的区分を確定させることが実務の起点です。
(1)交換工事で出る給湯器の排出事業者
廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)第21条の3では、建設工事に伴って生じる廃棄物について、注文者から直接建設工事を請け負った元請業者を排出事業者とすると定めています。大阪府の解説では、設備のメンテナンスが同条に規定する建設工事に該当する場合は工事の元請業者が排出事業者となり、建設工事に該当しない場合は、メンテナンス業者や設備を管理する所有者などが排出事業者になるとされています。
配管の切り離しや接続を伴う給湯器の交換工事は、建設工事として扱われる場合があり、その場合は旧給湯器の処理責任を元請業者が負います。元請業者は、自ら処理するか、許可業者に運搬や処分を委託する必要があり、下請負人が運搬できるのは請負代金額500万円以下の維持修繕工事で1回の運搬容積が1立方メートル以下であることなど、一定の要件を満たす場合に限られます。
施設の所有者や管理会社は給湯器の交換を発注する際に、撤去した機器の処理を工事の範囲に含めるか、自社で別途処理するかを契約書で明確にします。建設工事に該当するかの判断は工事の内容によって異なるため、判断に迷う場合は工事の所在地を所管する自治体に確認し、排出事業者を書面で取り決めておきます。
参考:https://www.pref.osaka.lg.jp/o120060/jigyoshoshido/report/faq_1.html
参考:https://www.pref.osaka.lg.jp/o120060/sangyohaiki/houritu/kensetsu_faq.html
参考:https://www.e-reverse.com/blog/law005/
図では、建設工事の発注者から工事を直接請け負う元請業者を「排出事業者」と位置づけ、元請業者が自ら処理するか、廃棄物処理業者へ運搬・処分を委託する流れを示しています。給湯器交換が建設工事に該当する場合、撤去後の処理責任を工事契約で元請業者に紐づける必要があることを裏付けます。ただし、建設工事に該当しないメンテナンスは別判断となるため、工事内容と所在地を所管する自治体の見解を事前に確認する必要があります。
参考:https://www.env.go.jp/recycle/waste_law/kaisei2010/attach/diagram_revise.pdf#page=8
(2)家電リサイクル法の対象外と産業廃棄物の扱い
給湯器は、エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機の品目を対象とする特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)の対象外です。施設や建設工事から排出される給湯器は産業廃棄物として扱われ、外装の鋼板やステンレス、熱交換器の銅、樹脂部品、電子基板などで構成されるため、金属くずや廃プラスチック類など複数の品目にまたがります。
自治体は、無許可の回収業者による不適正な事案が発生した場合に、排出者が罪に問われたり、廃棄物の撤去費用を請求されたりする場合があると注意を呼びかけています。中古品や金属資源として有償で取引される給湯器は有価物として扱われますが、廃棄物か有価物かは物の性状や取引価値の有無などを総合的に勘案して判断され、排出事業者が負担する運搬費が売却代金を上回る場合は、収集運搬の段階で廃棄物処理法が適用されます。
見積もりの段階で、機器ごとの買取額や資源価値と、撤去費・運搬費を分けて提示を受け、差引後の収支を確認します。損失が生じる場合は、許可を持つ収集運搬業者への委託と委託契約書の締結、マニフェストの交付を前提に手配を進めます。
参考:https://www.city.toyota.aichi.jp/kurashi/gomi/gomi/1059300.html
参考:https://www.pref.osaka.lg.jp/o120060/jigyoshoshido/report/faq_2.html
一覧では、家電リサイクル法の対象をエアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機の4品目に分け、対象・対象外の具体例を示しています。エアコン欄では、ヒートポンプ給湯機のヒートポンプユニットを「エアコンではありません」と明記し、同時回収できないものに分類しています。この整理は、給湯器を家電4品目の回収ルートへ出さず、産業廃棄物または有価物として処理方法を判定する必要性を裏付けます。なお、対象判定は設置場所ではなく家庭用・業務用の製品区分でも変わります。
参考:https://www.rkc.aeha.or.jp/files/4item_list.pdf#page=1
(3)業務用ヒートポンプ給湯機とフロン排出抑制法
フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(フロン排出抑制法)の第一種特定製品は、業務用の空調機器と冷凍冷蔵機器のうち、冷媒にフロン類を使用しているものを指します。メーカーの案内では、冷凍機応用製品としてヒートポンプ給湯機が業務用の冷凍・冷蔵機器の例に挙げられており、HFCなどのフロン類を冷媒に使う業務用ヒートポンプ給湯機を廃棄等する場合は、フロン類の回収が必要です。
一方、環境省と経済産業省の解説資料では、CO2などフロン類以外を冷媒とする機器はフロン排出抑制法の対象外とされています。業務用エコキュートのようにCO2冷媒を採用した機種は同法のフロン回収の手続きは発生しません。業務用のヒートポンプ給湯機には、CO2冷媒の機種とHFC冷媒の機種が併存しているため、機種ごとに冷媒を確認する必要があります。
担当者は、ヒートポンプ給湯機の銘板や仕様書で冷媒の種類を確認し、フロン類を使用する機種は都道府県知事の登録を受けた第一種フロン類充塡回収業者への回収依頼と、引取証明書の受領・保存を撤去の工程に組み込みます。
参考:https://www.mitsubishielectric.co.jp/ldg/ja/air/guide/support/law/furon/index.html
参考:https://www.env.go.jp/earth/furon/files/outline_02.pdf
(4)石油給湯機と長期使用製品安全点検制度
消費生活用製品安全法に基づく長期使用製品安全点検制度では、経年劣化による重大事故のおそれが高い製品を特定保守製品として指定し、製造事業者による点検の通知や所有者による点検の実施を求めています。2021年8月1日の施行令改正で対象品目が見直され、現在は石油給湯機と石油ふろがまの2品目が特定保守製品に指定されています。
特定保守製品には設計上の標準使用期間が設定されており、所有者登録を行うと点検期間の前に製造事業者から点検の通知が届く仕組みです。賃貸住宅や社宅などで家庭用の石油給湯機を所有する事業者は、所有者として登録している場合があり、機器を撤去した後も登録情報が残ったままになる可能性があります。
管理物件の石油給湯機を撤去する場合は、所有者登録の有無を確認し撤去した機器の製造番号とあわせて記録します。製造事業者から点検の通知を受けていた場合は、撤去した旨を連絡しておくと所有者情報の管理と点検通知の整理につながります。
参考:https://www.meti.go.jp/product_safety/producer/shouan/07_tyouki.html
参考:https://www.jgka.or.jp/gasusekiyu_riyou/tenken_maintenance/tenkenseido/index.html
NITEが把握した経年劣化による石油給湯機・石油ふろがまの事故は、2016~2020年の5年間で43件です。年別では2016年7件、2017年10件、2018年10件、2019年8件、2020年8件で、内訳は石油給湯機17件、石油ふろがま26件でした。いずれも火災に類する事故であり、撤去時に製造番号や所有者登録、点検履歴を確認する実務の必要性を裏付けます。ただし、事故情報は当該5年間に収集されたもので、現在の年間事故件数を示すデータではありません。
参考:https://www.nite.go.jp/data/000129031.pdf#page=2
2.給湯器の種類別に行う撤去前の準備

給湯器の撤去では、熱源の種類によって、止めるべき供給設備と抜き取るべき残留物が異なります。準備が不十分なまま取り外すと、ガスや灯油の漏えい、搬出時の漏水、冷媒の放出につながり、処理の工程全体に影響します。種類別の準備を撤去日から逆算して進め、引渡し先に伝える情報を整理しておくことが求められます。
給湯器の種類ごとの主な準備は次のとおりです。
| 種類 | 撤去前の主な準備 | 引渡し時の確認事項 |
|---|---|---|
| ガス給湯器 | ガス栓の閉止、ガス配管の切り離しと閉栓処理、給水・給湯配管の切り離し | 機器内の残水の排出 |
| 石油給湯機 | 灯油の供給停止、送油管の切り離し、機器内の灯油の抜き取り | 残油がないこと、所有者登録の有無 |
| 電気温水器 | 電源の遮断、貯湯タンクの排水、配管の切り離し | 排水の完了、搬出経路と重量 |
| 業務用ヒートポンプ給湯機 | 冷媒の種類の確認、フロン類使用機はフロン回収、貯湯タンクの排水 | 引取証明書の写し(フロン類使用機) |
(1)ガス給湯器の取り外しと残水の処理
ガス給湯器の撤去では、最初にガス栓を閉じ、ガス配管を機器から切り離したうえで、配管の末端を閉栓処理します。ガス配管に関わる作業は、都市ガスか液化石油ガスかによって関係する法令や求められる資格が異なるため、ガス事業者や資格を持つ設備工事業者に依頼し、作業の範囲と実施者を事前に決めておきます。
給水・給湯配管を切り離した後は、機器内に残った水を排出します。給湯器の熱交換器や配管には水が残っており、そのまま搬出すると運搬中に漏水して車両や建物を汚損するおそれがあります。寒冷地では、残水の凍結によって配管部が破損している場合もあるため、取り外し時に状態を確認します。
集合住宅や施設で複数台を同時に交換する場合は、ガスの供給停止の時間帯を入居者や利用者に周知し、交換の順序を決めておきます。撤去した機器には設置場所と製造番号を表示し、処理ルートごとに区分して保管すると、引渡し時の照合が円滑に進みます。
(2)石油給湯機の残油と電気温水器の貯湯タンク
石油給湯機は、燃料の灯油をタンクから送油管で供給して使用するため、撤去の前に灯油の供給を止め、送油管を切り離したうえで、機器内に残った灯油を抜き取ります。灯油は消防法上の危険物に該当するため、残油がある状態で引き渡すと、運搬中の漏えいや解体時の引火のおそれがあります。抜き取った灯油と使わなくなった灯油タンクの扱いも、あわせて決めておきます。
電気温水器は、夜間の電力で沸かしたお湯を貯湯タンクにためて使用するため、撤去の前に電源を遮断し、貯湯タンクの水を排出する必要があります。貯湯タンクは容量が大きく、排水に時間がかかるため、撤去日の前日までに排水を始めるなど、作業時間を見込んで計画します。
貯湯タンクを持つ電気温水器やヒートポンプ給湯機は、排水後も本体の重量があり、設置場所によっては搬出に複数人の作業や機材が必要になります。見積もりの段階で、設置場所、搬出経路、階段や段差の有無、車両の駐車位置を伝え、搬出方法をあわせて確認しておきます。
(3)ヒートポンプ給湯機の冷媒確認とフロン回収
業務用ヒートポンプ給湯機の撤去では、ヒートポンプユニットの銘板で冷媒の種類を確認し、フロン類を使用する機種とCO2冷媒の機種を区分します。フロン類を使用する機種は、本体を資源化や廃棄に回す前に、第一種フロン類充塡回収業者にフロン類の回収を依頼します。
回収業者へ直接依頼する場合は回収依頼書を、設備工事業者などを介して依頼する場合は委託確認書を交付し、その写しを3年間保存します。回収が完了すると引取証明書が交付されるため、原本を3年間保存し、本体を引き渡す際は引取証明書の写しを機器と一緒に交付します。フロン類の回収を行わずに機器を廃棄した場合は、直接罰の対象となります。
CO2冷媒の機種はフロン回収の手続きは不要ですが、貯湯タンクの排水と電源の遮断は必要です。ヒートポンプユニットと貯湯ユニットが分かれている機種は、ユニットごとに搬出の方法と処理ルートを確認し、冷媒配管の切り離しを誰が行うかを工事の範囲として明記しておきます。
参考:https://www.env.go.jp/earth/furon/files/r03_kanrisya_rev.pdf
参考:https://www.pref.mie.lg.jp/eco/earth/86811000001.htm
図は、第一種特定製品の管理者がフロン類の回収を充塡回収業者へ直接依頼する経路と、設備業者・建物解体業者・産業廃棄物処理業者などへ委託する経路を示しています。経路に応じて回収依頼書または委託確認書を交付し、回収後に引取証明書を受け取る流れです。フロン類を使う業務用ヒートポンプ給湯機では、この書類管理を撤去工程に組み込む必要性を裏付けます。なお、CO2などフロン類以外を冷媒とする機器は同法の回収手続きの対象外です。
参考:https://www.env.go.jp/earth/furon/files/outline_02.pdf#page=20
3.給湯器のリサイクル方法の比較|売却・資源循環・廃棄

給湯器の処理方法は、機器の製造年や状態だけでなく、熱源の種類、業務用か家庭用か、交換工事との関係、撤去台数によって適否が変わります。給湯器は設置工事を前提とする機器であり、再使用の需要が限られる一方で、銅やステンレスなどの金属を含むため、資源としての価値を踏まえた比較が求められます。費用は撤去工事と種類別の準備を含めた総額で評価することで、自社に合った処理方法を判断できます。
| 比較項目 | 売却(中古品) | 資源循環(金属資源) | 廃棄(産業廃棄物) |
|---|---|---|---|
| 対象となる機器 | 製造から年数が浅く再設置が見込める業務用機など | 再使用が難しく金属の回収が見込める機器 | 再使用・資源化が難しい機器や部材 |
| 撤去前の準備 | 残水・残油の処理、付属品と取扱説明書の確認 | 残水・残油の処理、フロン類使用機はフロン回収 | 残水・残油の処理、フロン類使用機はフロン回収 |
| 主な書類 | 売買契約書、取引記録 | 売買記録、フロン類使用機は行程管理票と引取証明書の写し(逆有償時は委託契約書・マニフェスト) | 委託契約書、マニフェスト、フロン類使用機は行程管理票と引取証明書の写し |
| 費用構造 | 買取額から撤去費・運搬費を差し引いた収支 | 資源価値と撤去費・運搬費・フロン回収費の相殺 | 撤去費・運搬費・フロン回収費・処分費の合計 |
| 経営上の効果 | 処理費の抑制、機器の再使用 | 処理費の抑制、国内資源循環・CO2削減の説明材料 | 許可業者による適正処理の記録 |
(1)中古給湯器として売却する
製造から年数が浅く稼働状態の良い業務用の給湯器は、設備機器の買取業者などに売却できる場合があります。中古品として有償で取引され、取引に経済的合理性がある場合は有価物として扱われ、産業廃棄物の委託契約やマニフェストの手続きは発生しません。
給湯器は設置先の配管やガスの種類、電源の条件に合わせて据え付ける機器であるため、中古品として再使用できる範囲は限られます。買取の可否と金額は、メーカー、機種、熱源、製造年、稼働状態、付属品や取扱説明書の有無、台数によって変動し、撤去や搬出の費用が別途計上されると収支がマイナスになる場合があります。見積もりでは買取額と撤去費・運搬費を分けて提示を受け、差引後の金額で他の方法と比較します。
売却先の選定では、中古品の買取を業として行う事業者が古物営業法に基づく古物商の許可を受けているかを確認します。燃焼機器は経年劣化による事故のおそれがあるため、売却後の点検整備の方法と、再設置の際に有資格者による施工が行われるかを確認し、安全性に不安がある機器は再使用に回さない判断を社内で定めておきます。
(2)金属資源として資源循環ルートに回す
再使用が難しい給湯器でも、外装の鋼板やステンレス、熱交換器や配管の銅、電気温水器や貯湯ユニットのステンレス製タンクなどは、金属資源として再資源化できる可能性があります。フロン類を使用する業務用ヒートポンプ給湯機は、本体の引渡し前にフロン類の回収を完了させ、引取証明書の写しを機器とともに交付します。
費用面では、金属の資源価値が撤去費や運搬費と相殺される構造になります。資源価値は金属の種類と重量、市況によって変わり、樹脂部品や電子基板、断熱材など資源化の工程が異なる部分の処理費も発生するため、処分費の単価だけでは比較できません。見積もり依頼時は、台数、種類、機種、概算重量、残水や残油の処理状況をそろえて提示し、資源化分と処理分の内訳を確認します。
運搬費が売却代金を上回る場合は、収集運搬の段階で廃棄物処理法が適用されるため、許可を持つ収集運搬業者への委託とマニフェストの交付が必要です。交換工事に伴う撤去では、元請業者が排出事業者として資源化の引渡し先と契約するため、施設側は資源化の実績を報告として受け取れるよう、工事契約の段階で取り決めておきます。
(3)産業廃棄物として処理を委託する
損傷が大きい機器や資源化ルートで受け入れられない部材は、産業廃棄物として許可業者に処理を委託します。排出事業者は収集運搬業者・処分業者とそれぞれ書面で委託契約を締結し、産業廃棄物管理票(マニフェスト)を交付します。委託契約書は契約終了日から5年間、処分業者から返送されたマニフェストの写しは5年間保存します。
費用は、撤去費、収集運搬費、処分費に、機種によってはフロン回収費が加わって構成されます。金額は機器の種類と重量、台数、設置場所、搬出経路、作業時間帯、地域によって変動するため、一律の相場で判断することはできません。見積もりを比較する際は、各費目の含有範囲と、灯油タンクやリモコンなどの付属品を回収対象に含むかをそろえて確認します。
廃棄を選ぶ場合でも、機器全体を一括で処分するのではなく、金属部分を資源化ルートへ分けることで処分量を抑えられる場合があります。集合住宅の一斉交換や施設の設備更新で台数がまとまる案件では、廃棄一括の見積もりと資源化を組み合わせた見積もりを並行して取得し、総額で比較することで判断の精度が高まります。
参考:https://www.env.go.jp/content/900479496.pdf
4.給湯器のリサイクルを進める実務手順

給湯器の交換は、利用者がお湯を使えない時間を伴うため、撤去と新しい機器の設置を一連の工程として計画する必要があります。発注者、元請業者、ガス事業者、フロン回収業者、処理業者と関係者が分かれやすいため、撤去日から逆算した段取りと責任の分担を事前に共有しておくことが重要です。
(1)交換・撤去の対象機器の一覧化
最初に行うのは、交換や撤去の対象となる給湯器を機器単位で一覧化する作業です。一覧には、設置場所、種類、メーカー、機種、製造番号、製造年、業務用か家庭用か、冷媒の種類、所有者登録の有無、稼働状態、概算重量を記載します。
一覧をもとに、機器ごとに売却・資源循環・廃棄のいずれを第一候補とするかを仮決定します。製造年が新しく再設置の需要が見込める業務用機は売却、再使用が難しい機器は資源循環、損傷が大きい機器は廃棄というように判断基準を社内で定めておくと、施設や物件ごとの判断のばらつきを防げます。
仮決定の段階で、フロン回収が必要な機器、灯油の抜き取りが必要な機器、貯湯タンクの排水が必要な機器を一覧上で区分します。作業の担当者と所要時間が機器の種類によって異なるため、区分をもとに工事の工程と作業日を組み立てます。
(2)工事契約での排出事業者と処理ルートの明確化
交換工事を発注する場合は、撤去した給湯器の処理を工事の範囲に含めるかを最初に決めます。工事の範囲に含める場合は、建設工事に該当するときは元請業者が排出事業者となるため、元請業者が委託する処理業者、資源化の有無、処理結果の報告方法を契約書や見積書に記載してもらいます。
施設側で売却や資源化を行いたい機器がある場合は、工事の範囲から撤去後の処理を除き、取り外した機器の引渡し方法と排出事業者を書面で取り決めます。取り決めがないまま工事を進めると、処理の責任が不明確になり、資源化の実績を記録として残せなくなります。
見積もりは、撤去範囲と搬出条件をそろえたうえで複数の処理方法について取得します。撤去費、配管の切り離しと閉栓処理の費用、フロン回収費、運搬費、処分費、買取額または資源価値の区分で提示を受け、差引後の総額で比較します。
参考:https://www.pref.osaka.lg.jp/o120060/sangyohaiki/houritu/kensetsu_faq.html
(3)撤去当日の区分引渡しと記録の保存
撤去当日は、ガスや灯油、電源の供給を止め、残水と残油の処理を完了させてから機器を取り外します。フロン類を使用する業務用ヒートポンプ給湯機は、回収作業と引取証明書の受領を先に完了させたうえで、本体を引き渡します。
取り外した機器は、一覧の製造番号と照合し、売却分、資源循環分、廃棄分に区分して引き渡します。書類は、売買契約書と取引記録、行程管理票と引取証明書、委託契約書、マニフェストの写し、元請業者からの処理報告など、ルートと排出事業者によって種類が異なるため、機器単位で紐づけて保管します。
撤去完了後は、機器一覧に処理方法、引渡し日、書類の保存場所を追記し、資源化分と廃棄分の台数と重量を集計します。集計結果を次回の設備更新の計画に反映させることで、処理ルートと工事契約の取り決めを継続的に見直せるようになります。
5.給湯器を資源循環に回す経営上のメリット

給湯器の資源循環は、処理費用を抑える手段にとどまらず、脱炭素や情報開示への対応を進める材料になります。給湯器は標準使用期間や設備更新の計画に合わせて交換が発生し、複数の施設や管理物件を持つ事業者では排出が継続的に発生するため、単発の処理ではなく継続的な仕組みとして設計することで経営上の効果を積み上げられます。
(1)銅・ステンレス・鉄の資源価値
給湯器には、熱を効率よく伝えるための銅製の熱交換器や配管、耐食性の高いステンレス製の部材や貯湯タンク、外装や内部の構造に使われる鋼板など、資源価値の高い金属が含まれています。再使用が難しい機器も、解体・選別を経て金属ごとに回収できます。
回収された鉄スクラップは電炉製鋼の原料として再び鋼材に生まれ変わり、ステンレスは鉄を主成分とする合金としてステンレス鋼などの原料に利用されます。鉄スクラップは国内で調達できる製鋼原料であり、輸入に頼る鉄鉱石や石炭の使用を抑える点で資源安全保障の観点からも意味を持ちます。
なかでも鉄は、カーボンニュートラルの潮流のなかで電炉化が加速し、質の高い鉄スクラップの国内循環が戦略資源として注目されています。鉄のサーキュラーエコノミーへの具体的な取り組みについては、以下の記事で解説しています。

参考:https://www.tokyo-np.co.jp/article/399662
(2)高効率給湯器への更新と資源循環によるCO2削減
給湯器の交換は、高効率な機器への更新によって使用時のエネルギー消費を抑える機会でもあります。撤去する旧機器を資源化に回すことで、使用段階の省エネと、素材の再利用による製造段階の排出削減を一つの更新計画の中で組み合わせられます。
鉄スクラップを原料とする電炉法は、鉄鉱石を還元する工程を経ないため、高炉法と比べて鋼材製造時のCO2排出を大きく抑えられます。みずほ銀行産業調査部の分析では、直近の排出原単位について、高炉メーカーが粗鋼1トンあたり約2トンのCO2を排出するのに対し、電炉メーカーは約0.3トンに抑えられていると整理されています。
自社の排出量算定では、事業から出る廃棄物の処理に伴う排出はScope3のカテゴリ5に区分されます。交換工事ごとに、フロン類の回収量、資源化分と廃棄分の重量を記録し、年度単位で集計できる形にしておくと、設備更新による省エネと資源循環の両面から、カーボンニュートラルに向けた中期目標の進捗を説明できます。
参考:https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/industry/sangyou/pdf/mif_246.pdf
電気ヒートポンプ式給湯器の普及率は、2017年度の13.4%から2023年度の16.8%へ上昇しています。2019年度の14.8%から2021年度の14.5%へ一時的に低下した後、2022年度15.3%、2023年度16.8%と伸びました。高効率給湯器への更新が進むなか、撤去される旧機器の資源化量も継続的に把握する必要があることを補足できます。ただし、家庭部門の世帯普及率であり、業務用機器の導入率や1台当たりのCO2削減量を示すものではありません。
参考:https://www.env.go.jp/council/content/i_05/000397368.pdf#page=16
(3)ESG情報開示とサーキュラーエコノミーへの対応
給湯器の資源化の実績は、ESG情報開示における資源循環の取り組みとして活用できます。統合報告書やサステナビリティレポートで廃棄物の削減や再資源化の状況を示す場合、機器単位の処理記録と重量データが開示内容の根拠になります。
交換工事に伴う撤去では、元請業者が排出事業者となるため、処理の記録が工事を発注した施設側に残らない場合があります。工事契約の段階で処理結果の報告を求め、フロン類の回収記録や資源化の実績を施設側でも保管しておくことで、自社の設備に関する資源循環の取り組みとして一貫した説明が可能になります。
サーキュラーエコノミーの観点では、製品を使用後に廃棄するのではなく、再使用や再資源化によって資源を経済活動の中で循環させることが求められます。複数の施設や管理物件を持つ事業者では、給湯器の交換について、排出事業者の取り決め、処理ルートの判断基準、記録の様式を社内規程として統一しておくことが、循環型の設備管理へ移行する実務上の要点です。
6.まとめ
給湯器のリサイクルでは、撤去が建設工事に該当するかによって排出事業者が変わるため、交換工事の契約で処理の範囲と責任を明確にすることが出発点になります。給湯器は家電リサイクル法の対象外で産業廃棄物として扱われ、フロン類を冷媒に使う業務用ヒートポンプ給湯機はフロン排出抑制法の手続きが、石油給湯機には長期使用製品安全点検制度が関係します。
撤去前には、ガスや灯油、電源の供給を止め、残水や残油、冷媒を種類に応じて処理します。そのうえで、売却・資源循環・廃棄を総額で比較し、銅やステンレス、鉄などの金属を資源化に回すとともに、処理結果を施設側でも記録として保管することで、処理費用の抑制とカーボンニュートラルやESGへの対応を両立させる判断が可能になります。
サーキュラーエコノミーへの移行を進める上では、自社の資源循環の実態を把握し、具体的なスキームを設計することが重要です。特に鉄を主原料とする製品・設備の廃棄や資源循環にお困りの場合は、五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」にご相談ください。







