理容室や美容室で使用した理容椅子、美容椅子、シャンプー台、スチーマーなどの理美容器具は、事業活動に伴って排出される設備として産業廃棄物の扱いを受けるため、リサイクルにあたっては所有者を確認し、器具の種類に応じた撤去前の準備を済ませたうえで、売却・資源循環・廃棄のいずれかのルートへ引き渡す必要があります。理美容器具は、床に固定された重量のある椅子や、給排水の配管に接続されたシャンプー台など、撤去に工事や専門的な作業を伴う品目を含みます。品目ごとの準備と処理のルールを整理したうえで、処理方法ごとの費用と経営上の効果を同じ前提で比較することが、適切な判断につながります。
五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、返品や使用済み製品など、事業の中で定期的に発生するモノの資源循環を一括で支援するサービスです。回収したモノは状態に応じて再販・リユースを優先し、新たな製品の製造や廃棄に伴う排出を抑えます。鉄を含む製品・設備については、国内製鉄所へ還流させるクローズドループの構築まで対応し、鉄スクラップを原料として生かすことで脱炭素にもつなげます。サロンの閉店や改装、理美容器具の入れ替えに伴う資源循環を検討する場合は、ぜひご相談ください。

1.理美容器具のリサイクル前に確認する所有区分と法的区分

理美容器具のリサイクルでは、器具の所有者が誰か、器具が法令上どう扱われるかによって、処理を決められる主体と依頼先が変わります。サロンの設備はリース契約で導入されている場合があり、撤去が内装工事とあわせて行われる場合は、処理の責任を負う者が工事の契約によって変わります。処理方法を検討する前に、器具単位で所有区分と法的区分を確定させることが実務の起点です。
(1)リース契約と所有区分の確認
理容椅子や美容椅子、シャンプー台などの理美容器具は、開業時や改装時にリース契約で導入されている場合があります。リース契約の器具は所有権がリース会社にあるため、サロンの運営企業が売却やリサイクルを判断することはできず、リース期間が終了した場合は契約の定めに従ってリース会社に返還します。
閉店や移転に伴って契約期間の途中で使用をやめる場合は、リース契約は原則として中途解約ができず、解約する場合は残リース料相当額の支払いが必要になります。リース品を返還せずに撤去業者へ引き渡すと契約違反につながるため、閉店や改装の計画段階で契約内容を確認しておく必要があります。
実務では、固定資産台帳、リース契約書、器具に貼付されたリース会社の表示をもとに、器具ごとの所有区分と契約期間を確認します。リース品は返還の期限と方法を、自社所有品は取得時期と処理方法の候補を一覧に記載し、以降の手続きを分けて進めます。
参考:https://www.leasing.or.jp/information/finance.html

(2)産業廃棄物としての扱いと有価物の区分
サロンで使用した理美容器具を廃棄する場合は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)に基づき、産業廃棄物として許可業者に処理を委託します。理容椅子や美容椅子は金属製の土台や支柱、昇降のための機構、樹脂や合成皮革の座面、ウレタンのクッション材などで構成され、シャンプー台には陶器や樹脂のシャンプーボウルが使われているため、金属くず、廃プラスチック類、陶磁器くずなど複数の品目にまたがります。
自治体は、無許可の回収業者による不適正な事案が発生した場合に、排出者が罪に問われたり、廃棄物の撤去費用を請求されたりする場合があると注意を呼びかけています。中古品や金属資源として有償で取引される理美容器具は有価物として扱われますが、廃棄物か有価物かは物の性状や取引価値の有無などを総合的に勘案して判断され、排出事業者が負担する運搬費が売却代金を上回る場合は、収集運搬の段階で廃棄物処理法が適用されます。
見積もりの段階で、器具ごとの買取額や資源価値と、撤去費・運搬費を分けて提示を受け、差引後の収支を確認します。損失が生じる場合は、許可を持つ収集運搬業者への委託と委託契約書の締結、マニフェストの交付を前提に手配を進めます。
参考:https://www.city.toyota.aichi.jp/kurashi/gomi/gomi/1059300.html
参考:https://www.pref.osaka.lg.jp/o120060/jigyoshoshido/report/faq_2.html
図表では、2023年度の産業廃棄物のうち、金属くずの再生利用率は95.4%、廃プラスチック類は63.0%です。金属くずの再生利用量は662万4,000トンに達しており、素材により処理結果に差があることが分かります。理美容椅子やシャンプー台を一括で扱わず、金属、樹脂、陶磁器など構成材ごとに処理区分と受入条件を確認する必要性を裏付けるデータです。ただし、全国の産業廃棄物全体の集計であり、理美容器具単独の実績ではありません。
参考:https://www.cjc.or.jp/data/pdf/book2026.pdf#page=38
(3)ドライヤーなど小型の理美容家電と小型家電リサイクル法
使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律(小型家電リサイクル法)では、政令で28の分類が制度対象品目として定められており、その中に「ヘアドライヤー、電気かみそりその他の理容用電気機械器具」が含まれています。対象品目は、家庭から排出されるものだけでなく、企業の事業活動に伴って排出されるものも対象に含まれます。
小型家電リサイクル法の対象品目は、消費者が通常家庭で使用する種類の電気機械器具として定められています。サロンで使用するドライヤーやヘアアイロンなど家庭でも使われる種類の器具は該当する場合がありますが、スタンド型のスチーマーや促進器など業務用の大型機器は該当しない場合があるため、器具ごとに確認が必要です。
対象品目に該当する器具は、国の認定を受けた認定事業者に引き渡すことで、廃棄物処理業の許可を持たない認定事業者でも回収と再資源化を行えます。事業者の引渡しは努力義務とされているため、認定事業者の回収条件と、許可業者に委託する場合の費用や報告の内容を比較して選びます。
参考:https://www.pref.gunma.jp/page/7010.html
参考:https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/48/s-recycle.html
市町村による小型電気電子機器の回収量は、2018年度の6万1,380トンから2024年度は5万4,333トンとなっています。2024年度はピックアップ回収が1万8,342トンで最も多く、回収方法によって実績に差があります。ドライヤー等の処理ルートが一様でないことを示す参考になります。ただし、本図は市町村回収の実績であり、事業所から出る理美容家電を市町村回収へ出せることを示すものではありません。認定事業者や許可業者の受入条件を器具ごとに確認する必要があります。
参考:https://www.cjc.or.jp/data/pdf/book2026.pdf#page=142
(4)閉店・移転時の保健所への届出
理容師法と美容師法に基づき、理容所や美容所を開設した者は、施設を廃止した場合に保健所へ届け出る必要があります。届出の期限は自治体の規則で定められており、横浜市の美容師法施行細則では、廃止した日から10日以内に保健所長に届け出なければならないとしています。
自治体の案内では、理容所や美容所を移転する場合は、既存の施設の廃止届と移転先の施設の開設届が必要とされています。改装の規模によっても、既存施設の廃止と新たな開設の届出が必要になる場合があるため、改装に伴って器具を入れ替える場合は、事前に保健所に相談しておきます。
担当者は、閉店や移転の計画を立てる段階で、廃止届の提出期限と、器具の撤去、店舗の明け渡しの日程を一つの工程表にまとめます。届出には開設時に交付された検査確認済証などの添付を求める自治体があるため、必要書類を事前に確認しておくと、撤去の作業と届出の手続きを並行して進められます。
参考:https://cgi.city.yokohama.lg.jp/somu/reiki/reiki_honbun/g202RG00000756.html
参考:https://www.city.matsumoto.nagano.jp/soshiki/231/1579.html
2.理美容器具の品目別に行う撤去前の準備

理美容器具は、床に固定された椅子、給排水に接続されたシャンプー台、壁に固定されたセット面、電源を使う美容機器など、品目によって撤去前に必要な準備が異なります。準備が不十分なまま撤去すると、搬出時の漏水や油の漏れ、鏡やガラスの破損につながり、処理の工程全体に影響します。品目別の準備を撤去日から逆算して進め、引渡し先に伝える情報を整理しておくことが求められます。
主な品目と撤去前の準備は次のとおりです。
| 品目 | 主な構成 | 撤去前の主な準備 | 引渡し時の確認事項 |
|---|---|---|---|
| 理容椅子・美容椅子(セット椅子) | 金属製の土台と支柱、油圧式または電動の昇降機構、座面・クッション材 | 床への固定の取り外し、昇降機構の油漏れの確認、電動式は電源の切り離し | 重量と搬出経路、油漏れの有無 |
| シャンプー台・シャンプー椅子 | 陶器または樹脂のボウル、給排水・給湯配管、電動の椅子 | 給排水・給湯配管の切り離しと止水処理、残水の排出 | ボウルの材質、残水の有無 |
| セット面(鏡台) | 鏡、木材や金属のフレーム、照明、コンセント | 壁や床への固定の取り外し、電気配線の切り離し | 鏡の割れ防止の養生 |
| スチーマー・促進器・ドライヤーなど | ヒーター、水タンク、電子基板、電源コード | 水タンクの排水、電源の切り離し | 小型家電リサイクル法の対象品目への該当性 |
| ワゴン・ラック・カラー剤棚など | 金属や樹脂のフレーム | 薬剤や消耗品の撤去 | 収納物が残っていないこと |

(1)理美容椅子の固定の取り外しと昇降機構の確認
理容椅子や美容椅子は、施術中に安定させるために床にボルトなどで固定され、足踏みのポンプで昇降させる油圧式の機種や、モーターで昇降させる電動式の機種があります。撤去の前に、床への固定の方法と取り外しに必要な作業を確認し、床材の補修を含めて誰が作業を行うかを決めておきます。
油圧式の機種は、昇降機構の内部に作動油が封入されている場合があります。搬出時に椅子を傾けたり横倒しにしたりすると、劣化した部分から油が漏れて床や車両を汚損するおそれがあるため、撤去前に土台や支柱の周囲に油のにじみがないかを確認し、漏れがある場合は引渡し先に伝えて梱包の方法を相談します。電動式の機種は、電源を切り離したうえで、電源コードや制御部の扱いを確認します。
理美容椅子は土台や支柱に金属が使われているため重量があり、搬出には複数人の作業や台車などの機材が必要になる場合があります。見積もりの段階で、台数、機種、設置階、エレベーターの有無と寸法、搬出経路の幅、段差の有無を伝え、分解して搬出するか組み立てた状態で搬出するかを確認しておきます。
(2)シャンプー台の給排水配管と排出事業者
シャンプー台は、給水と給湯、排水の配管に接続して使用するため、撤去の前に止水したうえで配管を切り離し、配管の末端を止水処理する必要があります。配管が床下や壁の内部を通っている場合は、切り離しに内装や設備の工事を伴うため、設備工事業者や内装工事業者に作業を依頼し、作業の範囲を事前に決めておきます。
配管や内装の工事を伴う撤去は、廃棄物処理法第21条の3に規定する建設工事に該当する場合があり、その場合は注文者から直接工事を請け負った元請業者が排出事業者として、撤去した器具の処理責任を負います。大阪府の解説では、設備のメンテナンスが建設工事に該当しない場合は、メンテナンス業者や設備を管理する所有者などが排出事業者になるとされています。
サロンの運営企業は、改装や閉店の工事を発注する際に、撤去したシャンプー台などの処理を工事の範囲に含めるか、自社で売却や資源化を行うかを契約書で明確にします。
参考:https://www.pref.osaka.lg.jp/o120060/jigyoshoshido/report/faq_1.html
参考:https://www.pref.osaka.lg.jp/o120060/sangyohaiki/houritu/kensetsu_faq.html
(3)薬剤・消耗品の撤去と清掃
理美容器具の撤去前には、ワゴンや棚、器具の収納部に残ったパーマ液やカラー剤、シャンプーなどの薬剤と、タオルやクロスなどの消耗品をすべて取り出します。使い残しの薬剤は器具とは別の廃棄物として扱う必要があるため、製品の表示や販売元の案内に従って処理方法を確認し、器具と一緒に引き渡さないようにします。
スチーマーなど水を使う美容機器は、水タンクの水を排出し、内部を乾かしてから引き渡します。シャンプーボウルや椅子の座面には、薬剤や皮脂の汚れが残りやすいため、清掃を行ってから搬出すると売却する場合の査定や、資源化・廃棄の引渡し先での取扱いが円滑に進みます。
担当者は、薬剤の撤去、水抜き、清掃の実施を器具ごとの一覧に記録し、撤去当日の搬出前に確認する項目としてチェックリストに加えておきます。複数のサロンで同時に器具を入れ替える場合は、チェックリストを店舗に配布しておくと、担当者が異なる店舗でも同じ水準で準備を進められます。

3.理美容器具のリサイクル方法の比較|売却・資源循環・廃棄

理美容器具の処理方法は、器具の製造年や状態だけでなく、品目、メーカー、撤去に伴う工事の有無、閉店か改装かといった撤去の事情によって適否が変わります。理美容器具には中古品の流通市場がある一方で、状態によっては再使用が難しく、金属を含む器具は資源としての価値を持ちます。費用は撤去工事と品目別の準備を含めた総額で評価することで、自社に合った処理方法を判断できます。
| 比較項目 | 売却(中古品) | 資源循環(金属資源・認定事業者) | 廃棄(産業廃棄物) |
|---|---|---|---|
| 対象となる器具 | 製造から年数が浅く動作や外観に問題のない器具 | 再使用が難しく金属の回収が見込める器具、対象品目の小型家電 | 再使用・資源化が難しい器具や部材 |
| 撤去前の準備 | 固定の取り外し、配管の切り離し、清掃、付属品の確認 | 固定の取り外し、配管の切り離し、油漏れの確認 | 固定の取り外し、配管の切り離し、油漏れの確認 |
| 主な書類 | 売買契約書、取引記録 | 売買記録または認定事業者の受領記録(逆有償時は委託契約書・マニフェスト) | 委託契約書、マニフェスト |
| 費用構造 | 買取額から撤去費・運搬費を差し引いた収支 | 資源価値と撤去費・運搬費の相殺 | 撤去費・運搬費・処分費の合計 |
| 経営上の効果 | 処理費の抑制、器具の再使用 | 処理費の抑制、国内資源循環・CO2削減の説明材料 | 許可業者による適正処理の記録 |
(1)中古の理美容器具として売却する
製造から年数が浅く、動作や外観に問題のない自社所有の理美容器具は、中古の理美容機器を扱う買取業者に売却する選択肢があります。理容椅子や美容椅子、シャンプー椅子などには中古品の流通市場があり、中古品の専門店では、分解・清掃・整備やレザーの張替えを行ったうえで販売している事例があります。中古品として有償で取引され、取引に経済的合理性がある場合は有価物として扱われ、産業廃棄物の委託契約やマニフェストの手続きは発生しません。
買取の可否と金額は、品目、メーカー、機種、製造年、昇降やリクライニングの動作状態、座面の傷みや汚れ、付属品の有無、台数、搬出条件によって変動します。床の固定の取り外しや配管の切り離しの費用が別途計上されると収支がマイナスになる場合があるため、買取額と撤去費・運搬費を分けて提示を受け、差引後の金額で他の方法と比較します。
売却先の選定では、中古品の買取を業として行う事業者が古物営業法に基づく古物商の許可を受けているかを確認します。買取不可となった器具を同じ事業者に引き渡す場合は、廃棄物として扱うための許可の有無を確認し、閉店の案件では、店舗の明け渡し日までに引取りが完了するかもあわせて確認します。
参考:https://bgreuse.com/?cbid=2530543&csid=0&mode=cate
(2)金属資源や認定事業者を通じて資源循環に回す
再使用が難しい理美容器具でも、理容椅子や美容椅子の土台と支柱、昇降機構、ワゴンやラックのフレームなどに使われる金属は、金属資源として再資源化できる可能性があります。油圧式の椅子は作動油の扱いを引渡し先と取り決め、座面やクッション材、樹脂部品など資源化の工程が異なる部分と分けて処理します。
費用面では、金属の資源価値が撤去費や運搬費と相殺される構造になります。資源価値は金属の種類と重量、市況によって変わり、座面やクッション材、陶器のシャンプーボウル、鏡など資源化の工程が異なる部分の処理費も発生するため、処分費の単価だけでは比較できません。見積もり依頼時は、品目ごとの台数、機種、概算重量をそろえて提示し、資源化分と処理分の内訳を確認します。
ドライヤーなど小型家電リサイクル法の対象品目に該当する器具は、認定事業者に引き渡すことで、電子基板に含まれる金属を含めて再資源化できます。運搬費が売却代金を上回る場合は、収集運搬の段階で廃棄物処理法が適用されるため、許可を持つ収集運搬業者への委託とマニフェストの交付が必要です。
参考:https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/48/s-recycle.html
図表によると、2024年度の国内老廃スクラップ購入量は1,660万トン、国内加工スクラップ購入量と輸出量はいずれも680万トンです。国内老廃スクラップ購入量は2007年度の3,040万トンから長期的に変動しており、流通量が年度で変わることが分かります。理美容器具の見積もりで資源価値を固定額とせず、重量、市況、運搬条件を分けて確認する必要性を補足します。国内購入量は推計値で、2004・2008・2014年度の調査見直しにより時系列は不連続です。
参考:https://www.cjc.or.jp/data/pdf/book2026.pdf#page=67

(3)産業廃棄物として処理を委託する
損傷が大きい器具や資源化ルートで受け入れられない部材は、産業廃棄物として許可業者に処理を委託します。排出事業者は収集運搬業者・処分業者とそれぞれ書面で委託契約を締結し、産業廃棄物管理票(マニフェスト)を交付します。委託契約書は契約終了日から5年間、処分業者から返送されたマニフェストの写しは5年間保存します。
費用は撤去費、収集運搬費、処分費で構成され、品目と台数、器具の重量、設置階、エレベーターの有無、搬出経路、作業時間帯、地域によって変動するため、一律の相場で判断することはできません。見積もりを比較する際は、床の固定の取り外しや配管の切り離しが含まれているか、鏡や陶器のシャンプーボウルを回収対象に含むかをそろえて確認します。
廃棄を選ぶ場合でも、器具全体を一括で処分するのではなく、金属部分を資源化ルートへ分けることで処分量と費用を抑えられる場合があります。閉店で店舗内の器具と内装をまとめて撤去する案件では、廃棄一括の見積もりと、売却や資源化を組み合わせた見積もりを並行して取得し、総額で比較することで判断の精度が高まります。
参考:https://www.env.go.jp/content/900479496.pdf
4.理美容器具のリサイクルを進める実務手順

理美容器具の撤去は、閉店であれば明け渡しの期限、改装であれば営業の再開日という期限の中で進める必要があります。リース会社、買取業者、設備工事業者、内装工事業者、処理業者と関係者が分かれやすく、保健所への届出も関係するため、撤去日から逆算した段取りと責任の分担を関係者で共有しておくことが重要です。
(1)器具と契約の一覧化
最初に行うのは、撤去予定の理美容器具を器具単位で一覧化する作業です。一覧には、設置店舗、品目、メーカー、機種、製造番号、製造年、所有区分、リース会社と満了日、床や壁への固定の有無、配管接続の有無、昇降機構の方式、動作状態、概算重量を記載します。
一覧をもとに、器具ごとに売却・資源循環・廃棄のいずれを第一候補とするかを仮決定します。製造年が新しく動作や外観に問題のない器具は売却、再使用が難しい金属製の器具は資源化、小型家電リサイクル法の対象品目に該当する器具は認定事業者、損傷が大きい器具は廃棄というように判断基準を社内で定めておくと、店舗ごとの判断のばらつきを防げます。
仮決定の段階で、固定の取り外しが必要な器具、配管の切り離しが必要な器具、リース会社に返還する器具を一覧上で区分します。区分ごとに作業の担当者と所要時間が異なるため、担当者と作業の期限をあわせて記載します。
(2)閉店・改装の工程に合わせた撤去の段取り
閉店の場合は、最終営業日、器具の撤去、内装の原状回復工事、店舗の明け渡し、保健所への廃止届の提出を一つの工程表にまとめます。売却する器具は原状回復工事の前に搬出し、資源化や廃棄に回す器具は、内装工事で発生する廃材と区分して引き渡せるよう、搬出の順序を工事業者と調整します。
改装の場合は、営業を休止する期間の中で、既存の器具の撤去、配管や内装の工事、新しい器具の設置を順に行います。撤去した器具を工事の範囲で処理するか自社で処理するかを工事契約で取り決め、改装の規模によって保健所への届出が必要になるかを事前に相談しておきます。
見積もりは、撤去範囲と搬出条件をそろえたうえで取得します。設置階、エレベーターの有無と寸法、搬出経路の幅、車両の駐車位置、商業施設やビルの搬出時間の規則を整理し、見積もり項目は、固定の取り外し費、配管の切り離し費、撤去費、運搬費、処分費、買取額または資源価値の区分で提示を受け、差引後の総額で比較します。

(3)区分引渡しと記録の保存
引渡し当日は、一覧の製造番号と実際に搬出する器具を照合し、薬剤の撤去、水抜き、清掃、油漏れの確認が完了していることを確かめたうえで、売却分、資源循環分、認定事業者分、廃棄分、リース返還分に区分して引き渡します。
書類は、売買契約書と取引記録、認定事業者の受領記録、委託契約書、マニフェストの写し、リース会社への返還記録、工事の元請業者からの処理報告など、ルートと排出事業者によって種類が異なります。これらを器具単位で紐づけ、保健所への廃止届の控えとあわせて保管しておくと、閉店後に経緯を確認する必要が生じた場合にも説明できます。
撤去完了後は、ルート別の台数と重量、売却額と費用を集計します。複数のサロンを運営する企業では、集計結果を次の出店や改装の計画に反映させることで、処理ルートの見直しと費用の比較を継続的に行えるようになります。
5.理美容器具を資源循環に回す経営上のメリット

理美容器具の資源循環は、処理費用を抑える手段にとどまらず、脱炭素や情報開示への対応を進める材料になります。サロンの器具は改装や出退店に合わせて入れ替えが発生し、複数の店舗を運営する企業では排出が継続的に発生するため、単発の処理ではなく継続的な仕組みとして設計することで、経営上の効果を積み上げられます。
(1)椅子の土台や支柱に使われる鉄の資源価値
理容椅子や美容椅子は、施術中の利用者の体重と昇降の動作を支えるため、土台や支柱、昇降機構に金属が使われており、重量のある器具です。再使用が難しい椅子も、座面やクッション材を分けたうえで解体・選別を経て、金属部分を鉄スクラップなどとして回収できます。回収された鉄スクラップは電炉製鋼の原料として再び鋼材に生まれ変わります。
鉄スクラップは国内で調達できる製鋼原料であり、輸入に頼る鉄鉱石や石炭の使用を抑える点で、資源安全保障の観点からも意味を持ちます。閉店や改装では、椅子に加えて、ワゴンやラック、セット面のフレーム、バックヤードの棚など金属を含む器具がまとめて撤去されるため、撤去物全体を資源循環の対象として設計することで、店舗単位での資源化の効果が大きくなります。
なかでも鉄は、カーボンニュートラルの潮流のなかで電炉化が加速し、質の高い鉄スクラップの国内循環が戦略資源として注目されています。鉄のサーキュラーエコノミーへの具体的な取り組みについては、以下の記事で解説しています。

参考:https://www.tokyo-np.co.jp/article/399662
2023年度の鉄鋼循環では、老廃スクラップ購入量は1,760万7,000トン、スクラップ輸出量は685万1,000トンです。鉄鉱石1億90万3,000トンと原料炭5,031万トンが投入される一方、使用済み製品由来の鉄も回収され、再び粗鋼・鋼材へ戻る循環が示されています。理美容椅子の土台や支柱を分別回収することが、国内の製鋼原料の一部になる流れを裏付けます。数値は国内鉄鋼全体で、理美容器具由来量を示すものではなく、図中の鉄鋼蓄積量は他項目と縮尺が異なります。
参考:https://www.cjc.or.jp/data/pdf/book2026.pdf#page=66

(2)カーボンニュートラルとScope3への対応
鉄スクラップを原料とする電炉法は、鉄鉱石を還元する工程を経ないため、高炉法と比べて鋼材製造時のCO2排出を大きく抑えられます。みずほ銀行産業調査部の分析では、直近の排出原単位について、高炉メーカーが粗鋼1トンあたり約2トンのCO2を排出するのに対し、電炉メーカーは約0.3トンに抑えられていると整理されています。
自社の排出量算定においても、処理方法の記録は重要な意味を持ちます。サプライチェーン排出量のうち、事業から出る廃棄物の処理に伴う排出はScope3のカテゴリ5に区分されます。理美容器具の排出量を処理方法ごとに把握しておくことで算定の根拠を示しやすくなり、再使用や資源化への切り替えによる取り組みを社内外に説明できます。
実務では、改装や閉店の案件ごとに売却分、資源化分、廃棄分の台数と重量を記録し、年度単位で集計できる形にしておきます。出店や改装の計画段階から資源循環ルートを組み込んでおくと、カーボンニュートラルに向けた中期目標の進捗管理にも活用できます。
参考:https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/industry/sangyou/pdf/mif_246.pdf
図表では、日本の粗鋼に占める電炉比率は2020年に約25%で、鉄鋼業のCO₂排出量は約1億3,700万トンと推計されています。排出量の大半は従来型高炉・転炉法が占め、スクラップベース電炉法の構成は限定的です。理美容器具から回収した鉄を電炉原料へつなぐことが、製造工程の脱炭素化とScope3の説明材料になるという主旨を補強します。ただし、図は国全体の工程別推計であり、個別器具の削減量を直接示すものではありません。電力構成や操業条件でも排出量は変動します。
参考:https://journal.jogmec.go.jp/content/300379416.pdf#page=6
(3)店舗運営企業の情報開示とサーキュラーエコノミーへの対応
理美容器具の再使用や資源化の実績は、ESG情報開示における資源循環の取り組みとして活用できます。複数のサロンを運営する企業が、統合報告書やサステナビリティレポート、採用や取引先向けの情報発信で廃棄物の削減や再資源化の状況を示す場合、器具単位の処理記録と重量データが開示内容の根拠になります。
理美容器具は中古品の流通市場があるため、状態の良い器具を売却して再使用につなげ、再使用が難しい器具を資源化するという組合せを取りやすい品目です。売却と資源化の実績を分けて記録しておくと、再使用による資源の有効利用と、素材の循環による環境負荷の低減をそれぞれの根拠で説明できます。
サーキュラーエコノミーの観点では、製品を使用後に廃棄するのではなく、再使用や再資源化によって資源を経済活動の中で循環させることが求められます。複数の店舗を運営する企業では、理美容器具の処理について、品目別の判断基準と記録の様式を社内規程として統一しておくことが、循環型の設備管理へ移行する実務上の要点です。
6.まとめ
理美容器具のリサイクルでは、リース品と自社所有品を最初に区分し、リース品はリース会社への返還、自社所有品は売却・資源循環・廃棄のいずれかで処理します。サロンで使用した器具は産業廃棄物として許可業者に委託する必要があり、ドライヤーなど小型家電リサイクル法の対象品目に該当する器具は認定事業者に引き渡せる場合があります。閉店や移転の際は、保健所への廃止届の期限も工程に組み込みます。
撤去前には、椅子の床固定の取り外しと油漏れの確認、シャンプー台の配管の切り離しと残水の処理、薬剤の撤去と清掃を品目ごとに済ませます。そのうえで、配管工事を伴う撤去では排出事業者を工事契約で取り決め、売却・資源循環・廃棄を総額で比較し、処理記録を器具単位で管理することで、処理費用の抑制とカーボンニュートラルやESGへの対応を両立させる判断が可能になります。
理美容器具のリサイクルを効率よく進めるには、定期的に発生している返品や使用済み製品の量や状態、その行き先を把握し、廃棄以外の出口も含めた具体的なスキームを設計することが重要です。保管スペースの不足や、廃棄か再販かの判断、複数の処分業者の管理に負担を感じている場合は、五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」にご相談ください。








