OA機器のリサイクル方法|データ消去の基準・回収制度の使い分け・売却と廃棄の比較

パソコンや複合機、プリンター、ビジネスフォンなどのOA機器は、業務で扱った情報を内部に保持し、電子基板には金属資源を含む機器です。そのため、OA機器のリサイクルでは、情報を復元できない形で消去することと、電子機器としての資源を適切な制度で回収することの両立が求められます。消去の基準と回収制度の違いを押さえたうえで、売却・資源循環・廃棄の費用と経営上の効果を同じ前提で比較することが、適切な判断につながります。

五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、鉄を主原料とする製品・設備の廃棄や資源循環を起点に、サーキュラーエコノミーへの移行を支援するサービスです。廃棄物を国内製鉄所等へ還流させるクローズドループの構築など、カーボンニュートラルや循環型社会の実現に向けた取り組みを、コスト削減と両立する形で支援します。OA機器の入れ替えやオフィスの再編に伴う資源循環を検討する場合にはぜひご相談ください。

目次

1.OA機器のリサイクル前に確認する範囲と法的区分

OA機器のリサイクルでは、対象となる機器の範囲と所有者を確定させたうえで、機器ごとに利用できるリサイクル制度を確認します。OA機器は品目によってメーカーの回収の仕組みや小型家電リサイクル法の対象かどうかが異なり、同じ手続きを一律に当てはめることはできません。処理ルートを検討する前に、機器単位で所有区分と法的区分を確定させることが実務の起点です。

(1)OA機器の範囲と所有区分の確認

OA機器は、事務作業の効率化に用いる情報機器や通信機器の総称で、パソコンやディスプレイ、複合機、プリンター、ファクシミリ、ビジネスフォン、プロジェクター、外付けの記憶装置などが含まれます。これらはリースやレンタルの契約で導入されている場合があり、リース契約の機器は所有権がリース会社にあるため、利用企業が売却やリサイクルを判断することはできません。

公益社団法人リース事業協会の整理では、利用企業は自らの責任と負担で物件を原状回復して返還することがリース契約で規定されているとされ、記憶媒体を持つ物件のデータ消去も利用企業側で対応する前提で手続きが組まれています。リース品であっても、情報の消去については利用企業が責任を負う点に注意が必要です。

実務では、IT資産台帳、固定資産台帳、リース契約書をもとに、OA機器を機器単位で自社所有品とリース・レンタル品に区分します。

参考:https://www.leasing.or.jp/studies/docs/20200327.pdf

(2)産業廃棄物としての扱いと有価物の区分

事業活動で使用したOA機器を廃棄する場合は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)に基づき、産業廃棄物として許可業者に処理を委託するのが基本です。OA機器は金属、樹脂、ガラス、電子基板などで構成され、金属くずや廃プラスチック類など複数の品目にまたがります。無許可の回収業者に引き渡すと、不適正な処理が行われた場合に排出者が責任を問われる場合があります。

中古品や資源として有償で取引されるOA機器は、有価物として廃棄物処理法の規制を受けません。ただし、廃棄物か有価物かは物の性状や取引価値の有無などを総合的に勘案して判断され、排出事業者が負担する運搬費が売却代金を上回る場合は、収集運搬の段階で廃棄物処理法が適用されます。

見積もりの段階で、機器ごとの買取額と撤去費・運搬費を分けて提示を受け、差引後の収支を確認します。損失が生じる機器は、許可を持つ収集運搬業者への委託と委託契約書の締結、マニフェストの交付を前提に手配を進めます。

参考:https://www.city.toyota.aichi.jp/kurashi/gomi/gomi/1059300.html
参考:https://www.pref.osaka.lg.jp/o120060/jigyoshoshido/report/faq_2.html

(3)OA機器に関係するリサイクル制度

OA機器には、廃棄物処理法に加えて、品目ごとにリサイクルの制度が設けられています。資源の有効な利用の促進に関する法律(資源有効利用促進法)では、パソコンについてメーカーによる自主回収と再資源化が求められており、事業系パソコンは一般社団法人パソコン3R推進協会などを通じてメーカーに回収を依頼できます。複写機は同法の指定再利用促進製品に指定されており、複数のメーカーが広域認定制度に基づく回収サービスを提供しています。

使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律(小型家電リサイクル法)では、政令で28の分類が制度対象品目として定められています。この中には、電話機やファクシミリ装置、パーソナルコンピュータ、磁気ディスク装置などの記憶装置、プリンター、ディスプレイ、電子式卓上計算機などの事務用電気機械器具が含まれます。対象品目は消費者が通常家庭で使用する種類の機器として定められているため、業務用の大型機器は該当しない場合があります。

担当者は、機器ごとにメーカー回収の対象か、小型家電リサイクル法の対象品目に該当するかを確認し、利用できる回収ルートを一覧に記載します。

参考:https://www.pc3r.jp/office/
参考:https://kanto.env.go.jp/content/900158719.pdf

2.OA機器のデータ消去と情報漏えい対策

OA機器のリサイクルで最も大きなリスクは、機器とともに情報が社外に流出することです。消去の不備は、処理を委託した後であっても、情報を保有していた企業の管理責任として問われます。データ消去は処理ルートの選択より前に方針を定め、消去から搬出までの管理を記録として残す工程として位置付けます。

(1)情報を保持するOA機器と消去の対象

パソコンやタブレットは、内蔵するHDDやSSDに業務ファイル、メール、ブラウザの保存情報、業務システムへの接続情報を保持しています。複合機やファクシミリは、印刷やスキャン、送受信の処理データやアドレス帳を、ビジネスフォンの主装置は電話帳や通話履歴、機種によっては通話録音のデータを保持している場合があります。外付けHDDやUSBメモリ、ネットワーク接続型のストレージも消去の対象です。

これらの情報には、取引先や従業員の個人情報、契約書や図面などの営業上の秘密が含まれる可能性があります。本体の処分だけに目が向くと、周辺機器や外部記憶媒体の消去が漏れやすくなるため、情報を保持する機器を品目横断で洗い出す必要があります。

実務では、排出予定のOA機器を記憶装置の有無と種類で区分し、HDD、SSD、機器内蔵メモリ、外部記憶媒体ごとに消去の方法を定めます。SSDはHDDと記録の仕組みが異なるため、メーカーが提供する消去機能や専用のソフトウェア、物理破壊など、記憶装置の種類に応じた方法を情報システム部門と協議して選びます。

(2)個人情報保護委員会の指針が示す削除・廃棄の記録

個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)に基づき、個人データを取り扱う企業は安全管理措置を講じる義務を負います。個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)では、個人データを削除し、または個人データが記録された機器や電子媒体等を廃棄する場合は、復元不可能な手段で行うことが示されています。

マイナンバーを含む特定個人情報について、個人情報保護委員会の事業者向けガイドラインは、より具体的な手法を示しています。機器や電子媒体等を廃棄する場合は専用のデータ削除ソフトウェアの利用や物理的な破壊などの復元不可能な手段を採用すること、削除や廃棄を行った場合はその記録を保存すること、作業を委託する場合は委託先が確実に削除または廃棄したことを証明書等により確認することが示されています。

給与や社会保険の事務に使用したパソコンは、特定個人情報を扱っていた可能性があります。担当者は、この指針をOA機器全体の消去基準として社内規程に取り入れ、消去の方法、実施日、作業者、対象機器の製造番号を記録するとともに、委託した場合は証明書の記載内容と機器一覧を照合して保存します。

参考:https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/
参考:https://www.ppc.go.jp/legal/policy/my_number_guideline_jigyosha/

(3)委託先で起きた情報流出事案から見る管理のポイント

2019年12月、神奈川県がリース契約の満了に伴って返却したサーバーのハードディスクが、インターネットオークションで転売されていたことが判明しました。報道によると、リース会社からデータ消去と廃棄を委託された事業者の社員が、消去作業の前にハードディスク18個を持ち出して出品しており、県は返却時に初期化のみを行い、完全な消去はリース会社側に委ねる手順をとっていました。

この事案は、消去を委託したことだけでは情報の管理責任を果たしたことにならないことを示しています。機器が自社を離れてから消去が完了するまでの間は、情報が残った状態の記憶装置が委託先の管理下に置かれるため、その間の保管と作業の管理体制が問われます。

担当者は、可能な範囲で自社内での消去を搬出前に実施し、委託する場合は、消去前の記憶装置の保管方法と入退室管理、作業の立会いや映像記録の可否、製造番号単位での消去証明の発行を契約前に確認します。記憶装置を本体から取り外して物理破壊する場合は、自社の立会いのもとで作業を行う方法も選択肢になります。

個人情報保護委員会が令和6年度に処理した民間事業者等の漏えい等報告は14,198件で、前年度の7,075件を上回りました。行政機関等の報告も1,951件で、前年度は1,159件です。民間の件数には、一つのランサムウェア事案に関する2,745件が含まれるため、単純な発生件数の比較ではない点に留意が必要です。それでも、情報を保有する企業には委託後を含む管理状況の説明が求められます。OA機器の搬出では、消去方法、製造番号、作業者、完了証明を連続した記録として残す必要性を裏付けるデータです。

参考:https://www.ppc.go.jp/files/pdf/070610_annual_report_gaiyou.pdf#page=3

3.OA機器のリサイクル方法の比較|売却・資源循環・廃棄

OA機器の処理方法は、機器の製造年や状態だけでなく、保持していた情報の重要度、利用できる回収制度、社内で求められる消去証跡の水準によって適否が変わります。費用はデータ消去から搬出、引渡しまでを含めた総額で評価する必要があり、買取額や処分費だけを比べても判断はできません。情報管理の確実性と経営上の効果もあわせて比較することで、自社に合った処理方法を判断できます。

比較項目売却(中古品)資源循環(メーカー回収・認定事業者)廃棄(産業廃棄物)
対象となる機器製造から年数が浅く再使用が見込める自社所有品再使用が難しい自社所有品再使用・資源化が難しい機器や部材
データ消去記憶装置を残すためソフトウェア等による消去と消去証明が前提消去の責任の所在を回収ルートごとに確認、物理破壊も選択可消去の実施に加え物理破壊も選択可
主な書類売買契約書、取引記録、消去証明書申込書・報告書(ルートにより異なる)、消去記録委託契約書、マニフェスト、消去記録
費用構造買取額から消去費・撤去費・運搬費を差し引いた収支品目・台数に応じた回収料金、または資源価値との相殺消去費・撤去費・運搬費・処分費の合計
経営上の効果処理費の抑制、機器の再使用有用金属の再資源化の実績許可業者による適正処理の記録

(1)中古OA機器として売却する

製造から年数が浅く稼働状態の良いパソコンや複合機、プリンターなどは、中古OA機器の買取業者に売却する選択肢があります。中古品として有償で取引され、取引に経済的合理性がある場合は有価物として扱われ、産業廃棄物の委託契約やマニフェストの手続きは発生しません。

買取の可否と金額は、品目、メーカー、型式、製造年、稼働状態、付属品の有無、台数によって変動します。パソコンは記憶装置を含めて再使用されることを前提に査定されるため、物理破壊を選ぶと買取の対象外になる場合があります。情報の重要度が高い機器は売却の対象から外すなど、売却益と情報管理のどちらを優先するかを機器ごとに判断します。

売却先の選定では、古物営業法に基づく古物商の許可を受けているかを確認し、データ消去の方法、消去を行う場所、消去証明の発行単位を契約前に取り決めます。買取業者に消去を任せる場合は、前項で整理した委託先の管理体制の確認を、売却の場合にも同じ基準で行います。

(2)メーカー回収や認定事業者を通じて資源循環に回す

再使用が難しいOA機器は、メーカー回収や小型家電リサイクル法の認定事業者を通じて資源循環に回せます。パソコンでは、パソコン3R推進協会が約30社のパソコンメーカーに代わって事業系パソコンを回収する小口回収の仕組みを運営しています。同協会は環境省の産業廃棄物広域認定を受けているため、この仕組みではマニフェストが不要とされ、回収した機器は物理的に破壊したうえで金属やプラスチックなどの資源に再生されます。なお、同協会の手順ではデータ消去は利用者自身が行います。

小型家電リサイクル法の認定事業者は、国に再資源化事業計画を提出して主務大臣の認定を受けた事業者で、廃棄物処理業の許可が不要となる特例が適用されます。対象品目に該当する電話機やプリンター、ディスプレイなどは、認定事業者に引き渡すことで、電子基板に含まれる金属を含めて再資源化できます。事業者の引渡しは努力義務とされているため、許可業者への委託と費用や報告の内容を比較して選べます。

担当者は、機器ごとにメーカー回収、認定事業者、許可業者のいずれを利用するかを振り分け、ルートごとにデータ消去の責任を誰が負うかを確認します。回収ルートが複数に分かれる場合は、申込みから引取りまでの期間を撤去の日程と照合しておきます。

参考:https://www.pc3r.jp/office/
参考:https://www.pc3r.jp/office/industrial_waste.html
参考:https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/48/s-recycle.html

2025年度に法人から回収された使用済みパソコンは15,985台、80.5トンで、再資源化処理量70.1トンのうち47.7トンが資源として再利用されています。資源再利用率はデスクトップ型76.7%、ノート型55.3%、CRTディスプレイ76.0%、液晶ディスプレイ67.2%です。メーカー等の回収ルートが、機器を回収するだけでなく素材利用までつなげていることを示します。なお、回収台数には製品リユース向けを含み、データ消去は排出企業側で別途実施する必要があります。

参考:https://www.pc3r.jp/association/recycle_result.html

制度対象品目を認定事業者へ引き渡す取引では、逆有償の割合が平成25年度の0.3%から令和6年度は54.9%へ上昇しています。特定対象品目でも、令和6年度は逆有償が21.1%、0円が22.5%です。資源価値がある機器でも、選別や電池対策、運搬などの条件によって処理費を支払う取引になり得ることを示します。数値は認定事業者調査に基づく取引単価別の割合で、OA機器だけの価格ではなく、運賃の扱いや品目構成も混在します。したがって、資源循環ルートの比較では買取額だけでなく撤去・運搬・処理費を含む総額確認が必要です。

参考:https://www.env.go.jp/council/content/03recycle03/000427985.pdf#page=14

(3)産業廃棄物として処理を委託する

損傷が大きい機器や、メーカー回収や認定事業者で受け入れられない機器・部材は、産業廃棄物として許可業者に処理を委託します。排出事業者は収集運搬業者・処分業者とそれぞれ書面で委託契約を締結し、産業廃棄物管理票(マニフェスト)を交付します。委託契約書は契約終了日から5年間、処分業者から返送されたマニフェストの写しは5年間保存します。

費用はデータ消去費、撤去費、収集運搬費、処分費で構成され、品目と台数、設置階、搬出経路、作業時間帯、地域によって変動するため、一律の相場で判断することはできません。見積もりを比較する際は、消去作業の範囲と証明書の発行の有無、ノートパソコンなどリチウムイオン電池を内蔵する機器の受入れ条件をそろえて確認します。

処分業者を選ぶ際は、許可の内容に加えて、電子基板などの有用金属を回収する工程があるか、処理後の部材がどのように再資源化されるかを確認します。廃棄を選ぶ場合でも、再資源化の工程を持つ業者に委託することで、処分量を抑え、資源循環の実績として記録できる場合があります。

参考:https://www.env.go.jp/content/900479496.pdf
参考:https://lithium.env.go.jp/recycle/waste/lithium_1/torikumi.pdf

認定事業者で確認された「出火あり」の件数は、2020年度の50件から2021年度60件、2022年度87件、2023年度181件、2024年度312件へ増加しています。2024年度の内訳では、自力で消火したものが304件、消防隊が消火したものが8件です。リチウム蓄電池を内蔵するノートパソコンなどは、破損や選別工程で発火する可能性があり、受入条件や分別方法が処理費と安全管理の双方に影響します。年度ごとに回答企業数が46~51社と異なるアンケート結果であるため、発生率ではなく確認件数の推移として見る必要があります。

参考:https://www.env.go.jp/council/content/03recycle03/000427985.pdf#page=13

4.OA機器のリサイクルを進める実務手順

OA機器のリサイクルでは、情報システム部門、総務部門、経理部門が関わり、機器の確定から消去、搬出、処理結果の確認までの工程が長くなります。消去前の機器が社内に滞留する期間も管理の対象になるため、撤去日から逆算した段取りを部門間で共有しておくことが重要です。

(1)IT資産台帳との照合と対象機器の確定

最初に行うのは、排出予定のOA機器をIT資産台帳や固定資産台帳と照合し、機器単位で確定させる作業です。一覧には、品目、メーカー、型式、製造番号、資産番号、使用部署、所有区分、記憶装置の有無と種類、特定個人情報を扱っていたかどうか、内蔵電池の有無を記載します。

台帳に登録されていない外付けHDDやUSBメモリ、部署で個別に購入したプリンターなどは、照合の過程で見落とされやすい機器です。各部署に不要機器の申告を依頼し、台帳にない機器も一覧に加えたうえで、処分の対象として管理します。

一覧をもとに、機器ごとに売却・資源循環・廃棄のいずれを第一候補とするかを仮決定します。情報の重要度が高い機器は物理破壊を前提とした資源循環や廃棄、再使用が見込める機器は消去証明を前提とした売却というように、情報の重要度を判断基準に組み込んでおくと、部署ごとの判断のばらつきを防げます。

(2)消去前の保管から搬出までの管理

回収した機器は、消去が完了するまで施錠できる場所に保管し、保管場所への入室者と機器の出し入れを記録します。使用部署から回収した時点で製造番号を一覧と照合し、保管中に台数が変わっていないかを搬出まで確認できる状態にしておきます。

消去を自社で行う場合は、消去の方法、実施日、作業者、対象機器の製造番号を記録し、消去が完了した機器には識別用のラベルを貼って、未消去の機器と保管場所を分けます。事業者に委託する場合は、搬出時の台数と製造番号を事業者と相互に確認し、受領書を受け取ります。

搬出の直前には、一覧上で消去の完了、電池の扱いの取り決め、引渡し先の区分がそろっていることを確認します。確認項目をチェックリストとして定めておくと、担当者が異なる拠点でも同じ水準で搬出を進められます。

(3)ルート別の引渡しと処理結果の確認

引渡し当日は、機器を売却分、メーカー回収分、認定事業者分、廃棄分、リース返還分に区分して引き渡します。書類は、売買契約書、メーカー回収の申込書と報告書、認定事業者の受領書、委託契約書、マニフェストの写し、消去証明書、リース会社への返還記録など、ルートごとに種類が異なります。

引渡し後は、報告書やマニフェストの写しで処理の完了を確認し、消去証明書とあわせて機器一覧の製造番号と紐づけて保存します。証明書に記載された製造番号と一覧が一致しない場合は、委託先に照会して差異の理由を記録します。

撤去完了後は、品目別、ルート別の台数と重量、売却額と費用を集計します。集計結果と消去の記録を次回の機器更新の計画に反映させることで、処理ルートと消去方法の見直しを継続的に行えるようになります。

参考:https://www.ppc.go.jp/legal/policy/my_number_guideline_jigyosha/

5.OA機器を資源循環に回す経営上のメリット

OA機器の資源循環は、適正処理の義務を果たす手段にとどまらず、資源の確保や脱炭素、情報開示への対応を進める材料になります。OA機器はリース期間や更新計画に合わせて定期的に入れ替えが発生するため、単発の処理ではなく継続的な仕組みとして設計することで、経営上の効果を積み上げられます。

(1)電子基板の有用金属と鉄スクラップの資源価値

OA機器の電子基板には、金や銀、銅などの有用金属が含まれています。環境省は、1年間で使用済みとなって廃棄等が行われる小型電子機器等を65.1万トンと推計し、そのうち有用金属は27.9万トン、金額に換算すると844億円になるとしています。こうした資源は都市鉱山とも呼ばれ、再資源化によって新たな鉱山開発に頼らない資源の確保につながります。

複合機やプリンターのフレーム、パソコンの筐体の一部、サーバーラックなどには鋼板が使われており、解体・選別を経て鉄スクラップとして回収できます。回収された鉄スクラップは電炉製鋼の原料として再び鋼材に生まれ変わり、輸入に頼る鉄鉱石や石炭の使用を抑える点で、資源安全保障の観点からも意味を持ちます。

なかでも鉄は、カーボンニュートラルの潮流のなかで電炉化が加速し、質の高い鉄スクラップの国内循環が戦略資源として注目されています。鉄のサーキュラーエコノミーへの具体的な取り組みについては、以下の記事で解説しています。

参考:https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/zu/h24/html/hj12010403.html

引用:https://www.env.go.jp/council/content/03recycle03/000427985.pdf#page=10

認定事業者が回収した金属等のうち、再資源化された金属は令和6年度に43,760トンでした。令和2年度の52,222トンをピークに減少し、令和5年度は42,927トン、令和6年度は前年度比で833トン増えています。同年度には再資源化されたプラスチック11,954トンも計上されています。小型家電の回収が、金属や樹脂を二次資源として戻す実績につながっていることを示します。ただし、数値は小型家電全体に関する認定事業者の実績であり、OA機器だけの回収量や個別金属の量を示すものではありません。

参考:https://www.env.go.jp/council/content/03recycle03/000427985.pdf#page=10

(2)カーボンニュートラルとScope3への対応

鉄スクラップを原料とする電炉法は、鉄鉱石を還元する工程を経ないため、高炉法と比べて鋼材製造時のCO2排出を大きく抑えられます。みずほ銀行産業調査部の分析では、直近の排出原単位について、高炉メーカーが粗鋼1トンあたり約2トンのCO2を排出するのに対し、電炉メーカーは約0.3トンに抑えられていると整理されています。

自社の排出量算定においても、処理方法の記録は重要な意味を持ちます。サプライチェーン排出量のうち、事業から出る廃棄物の処理に伴う排出はScope3のカテゴリ5に区分されます。OA機器の排出量を品目別・処理方法別に把握しておくことで算定の根拠を示しやすくなり、再使用や再資源化への切り替えによる取り組みを社内外に説明できます。

実務では、機器更新のたびに売却分、メーカー回収分、認定事業者分、廃棄分の台数と重量を記録し、年度単位で集計できる形にしておきます。IT機器の更新計画の段階から資源循環ルートを組み込んでおくと、カーボンニュートラルに向けた中期目標の進捗管理にも活用できます。

参考:https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/industry/sangyou/pdf/mif_246.pdf

(3)情報セキュリティと資源循環の一体的な情報開示

OA機器の処理では、データ消去の証跡と再資源化の実績を機器単位で一体的に管理できます。ESGのうちガバナンスの観点では情報セキュリティの管理体制が、環境の観点では資源循環の実績が問われるため、同じ台帳で両方の記録を運用することで、統合報告書やサステナビリティレポートでの説明に一貫性を持たせられます。

取引先の監査や入札の審査で情報管理体制を確認される場面でも、製造番号単位の消去証明書と処理結果の報告書をそろえて示せる体制は、取り組みの実効性を説明する材料になります。委託先で起きた情報流出事案を踏まえると、処理を委託した後の管理まで記録で示せることの重要性は高まっています。

サーキュラーエコノミーの観点では、製品を使用後に廃棄するのではなく、再使用や再資源化によって資源を経済活動の中で循環させることが求められます。OA機器について、情報の重要度に応じた処理ルートの判断基準と、消去と再資源化の記録の様式を社内規程として統一しておくことが、循環型のIT資産管理へ移行する実務上の要点です。

6.まとめ

OA機器のリサイクルでは、リース・レンタル品と自社所有品を区分したうえで、パソコンのメーカー回収、複写機の広域認定による回収、小型家電リサイクル法の認定事業者など、品目ごとに利用できる制度を確認します。いずれのルートでも、情報を保持する機器は復元不可能な方法で消去し、その記録を保存することが企業の責任になります。

消去を委託する場合は、証明書による確認に加えて、機器が自社を離れてから消去が完了するまでの管理体制を確認します。そのうえで、情報の重要度に応じて売却・資源循環・廃棄を総額で比較し、消去の証跡と再資源化の実績を機器単位で一体管理することで、処理費用の抑制とカーボンニュートラルやESGへの対応を両立させる判断が可能になります。

サーキュラーエコノミーへの移行を進める上では、自社の資源循環の実態を把握し、具体的なスキームを設計することが重要です。特に鉄を主原料とする製品・設備の廃棄や資源循環にお困りの場合は、五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」にご相談ください。

監修

早稲田大学法学部卒業後、金融機関での法人営業を経て、中小企業向け専門紙の編集記者として神奈川県内の企業・大学・研究機関を取材。
2013年から2020年にかけては、企業のサステナビリティレポートの企画・編集・ライティングを担当。2025年4月よりフリーランスとして独立。
企業活動と社会課題の接点に関する実務経験が豊富で、サステナビリティ分野での実践的な視点に基づく発信を強みとしている。