電炉ダストのリサイクル|亜鉛回収の仕組み、特別管理産業廃棄物としての扱い

電気炉で鉄スクラップを溶解すると、煙灰であるダストが発生します。このダストには亜鉛が20〜30%含まれており、亜鉛需要の大半を輸入鉱石に依存する日本にとって、国内で確保できる数少ない二次原料にあたります。

一方で、電炉ダストは有害物質を含むため特別管理産業廃棄物として扱われ、処理には相応の費用と管理体制が必要です。資源としての価値と、廃棄物としての管理義務が同時に存在する点が、この材料の特徴になっています。

五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、返品や使用済み製品など、事業の中で定期的に発生するモノの資源循環を一括で支援するサービスです。回収したモノは状態に応じて再販・リユースを優先し、新たな製品の製造や廃棄に伴う排出を抑えます。鉄を含む製品・設備については、国内製鉄所へ還流させるクローズドループの構築まで対応し、鉄スクラップを原料として生かすことで脱炭素にもつなげます。自社から発生する鉄系材の回収ルートを検討されている場合は、ぜひご相談ください。

目次

1.電炉ダストとは何か

電炉ダストは、鉄スクラップの成り立ちを反映した副産物です。この章では、発生の仕組みと性状を整理します。

(1)電気炉で鉄スクラップを溶解する際に発生する

電炉ダストは、製鋼工程で生じる煙灰です。

電気炉で鉄スクラップを溶解すると、高温によって一部の成分が蒸発し、微粒子となって排ガスに混じります。これを環境対策としてバグフィルターなどの集塵設備で回収したものが電炉ダストです。

排ガス処理の副産物であるため、集塵設備を持つ事業者であれば必然的に発生します。溶解する原料の構成によって成分が変わる点が、鉄鉱石を原料とする工程との違いです。

(2)発生量は粗鋼1トンあたり16〜17kg

発生量は、生産量に比例します。

電気炉で製造する粗鋼1トンあたり16〜17kg程度のダストが発生し、国内では年間で40万〜50万トン規模になります。電気炉鋼の生産量の1.5〜2%程度という見方もあります。

項目目安
発生原単位粗鋼1トンあたり16〜17kg
国内の年間発生量40万〜50万トン規模
亜鉛の含有率20〜30%程度
鉄の含有率30%程度

数値は生産量と原料構成によって変動しますが、量そのものは安定的に発生します。

参考:https://www.eng.nipponsteel.com/files_publish/page/78/gv2_giron04.pdf

(3)亜鉛の由来は鉄スクラップ表面のめっき

電炉ダストに亜鉛が含まれるのは、原料である鉄スクラップの構成によるものです。

自動車用鋼板や建材には、錆止めとして亜鉛めっきが施されています。これらが使用済みとなって鉄スクラップに戻り、電気炉で溶解される際、亜鉛は鉄より沸点が低いために先に蒸発します。蒸発した亜鉛は排ガス中で酸化され、酸化亜鉛としてダストに濃縮されます。

つまり電炉ダストの亜鉛は、かつて鋼材の防食のために使われた亜鉛が形を変えたものです。溶融亜鉛めっき鋼板の使用が増えるにつれて、鉄スクラップ中の亜鉛含有率も上昇してきました。

参考:https://jlzda.gr.jp/zinc/recycle

(4)亜鉛と鉄のほかに有害成分も含む

成分としては、有価物と有害物が混在しています。

主要な成分は亜鉛と鉄の酸化物ですが、これに加えて塩素やふっ素といったハロゲン、鉛やカドミウムといった有害元素も含まれます。塗装やめっき、被覆材が付着したスクラップが混入すれば、これらの成分は増えます。

この混在が、電炉ダストの扱いを難しくしている要因です。亜鉛を回収する価値がある一方で、そのまま亜鉛製錬の原料にはできず、有害物質の管理も必要になります。

(5)廃棄物処理法上は特別管理産業廃棄物にあたる

法令上の扱いとして押さえるべきは、特別管理産業廃棄物への該当性です。

集塵設備で回収されたダストは、産業廃棄物の品目としては「ばいじん」に区分されます。このうち、大気汚染防止法の特定施設から生じたもので、有害物質が判定基準を超えて溶出するものは、特定有害産業廃棄物として特別管理産業廃棄物に該当します。

電炉ダストは金属精製溶解炉から発生し、鉛やカドミウムを含むため、一般に特別管理産業廃棄物として扱われます。委託先には特別管理産業廃棄物の許可が必要となり、排出事業者側にも管理責任者の設置義務が生じます。

参考:https://www.env.go.jp/recycle/waste/sp_contr/

2.電炉ダストがリサイクルされる仕組み

電炉ダストの再資源化は、亜鉛を濃縮して製錬原料にすることを軸に組み立てられています。ここでは工程を整理します。

(1)そのままでは亜鉛製錬の原料にならない

前提として押さえるべきは、濃度の問題です。

電炉ダストに含まれる亜鉛は20〜30%程度で、亜鉛精錬の原料として直接使うには濃度が低く、コスト面で成り立ちません。加えて、鉄やハロゲン、鉛といった不純物を多く含みます。

そのため、電炉ダストはいったん専用の設備で処理され、亜鉛を濃縮した中間製品にしたうえで製錬所に送られます。この二段階の構造が、電炉ダスト処理の基本形です。

(2)ロータリーキルンで亜鉛を揮発させる

濃縮工程の主流が、ウェルツ法と呼ばれるロータリーキルンによる処理です。

ダストにコークスなどの還元材を加え、ロータリーキルンで高温処理します。炉内で亜鉛化合物は還元されて金属亜鉛となり、沸点が低いため揮発します。揮発した亜鉛は気相中で再び酸化され、酸化亜鉛として排ガスとともに炉外へ運ばれます。

この酸化亜鉛を集塵装置で回収したものが粗酸化亜鉛です。亜鉛の含有率は50〜60%程度まで高まり、亜鉛製錬所で受け入れられる水準になります。

図1は、電炉ダストをウェルツ法で処理し、粗酸化亜鉛(二次ダスト)を得た後、乾式製錬または硫酸塩水溶液を経る湿式製錬で金属亜鉛に戻す流れを示しています。処理残渣はセメント原料または廃棄・埋立へ分岐し、未処理ダストにも化学処理・埋立の経路があります。これは、亜鉛回収が単独工程ではなく、残渣管理まで含む処理体系であることを裏付けます。ただし、実際の受入条件や残渣用途は設備・成分・委託先によって異なります。

参考:https://www.eng.tohoku.ac.jp/news/detail-,-id,112.html

(3)粗酸化亜鉛は亜鉛地金の原料になる

濃縮された亜鉛は、製錬工程を経て地金に戻ります。

粗酸化亜鉛は亜鉛製錬所に送られ、精製を経て亜鉛地金になります。地金は再びめっきや合金の材料として使われ、その一部はまた鋼材の防食に用いられます。

鉄スクラップに付着していた亜鉛が、ダストを経て地金に戻り、再び鋼材のめっきに使われるという循環が成立している構造です。

(4)残渣のクリンカーはセメント原料や埋立に回る

亜鉛を抜いた後には、残渣が生じます。

ロータリーキルンで亜鉛を揮発させた後に残る固形分はクリンカーと呼ばれ、鉄分を多く含みます。ただしこの鉄分は回収が難しく、セメント原料などに転用される分を除けば、固化処理を経て埋立処分に回ってきました。

ウェルツ法の課題として指摘されてきたのが、この点です。エネルギー消費が大きいことに加え、亜鉛以外の資源を活かしきれない構造が残っています。

(5)鉄分も回収する方式が実用化されている

この課題に対して、別方式の処理も導入されています。

回転炉床炉を用いる方式では、ダストを還元材とともにペレットやブリケットに成形して炉内で加熱します。亜鉛は揮発して二次ダストとして回収される一方、還元されて金属鉄を多く含む状態になった製品は、電気炉でスクラップとともに再溶解できます。

このほか、ダストをバーナーの高温火炎中に直接吹き込んで溶融処理し、亜鉛を濃縮した二次ダストと、骨材として利用できる溶融スラグに分ける方式もあります。処理方式によって、回収できる資源の範囲と残渣の量が変わります。

参考:https://www.daido.co.jp/products/machinery/lineup/eco/dsm.html

3.なぜ亜鉛の回収が重視されるのか

電炉ダストの処理が資源政策の観点から語られるのは、亜鉛という素材の調達構造によるものです。

(1)亜鉛需要の大半を輸入鉱石に依存している

背景にあるのは、原料の調達構造です。

日本の亜鉛需要は、その約8割を輸入鉱石に依存しています。国内に大規模な亜鉛鉱山がないため、地金の生産は輸入された精鉱に頼る構造が続いています。

このなかで、電炉ダストは国内で安定的に発生し、亜鉛を高い濃度で含む数少ない二次原料です。ダストからの回収量が増えれば、その分だけ輸入鉱石への依存を減らせます。

JOGMECの2024年マテリアルフローでは、亜鉛鉱石の輸入量は純分302千t、地金の国内生産量は465.7千t、輸入量は11.7千t、輸出量は114.1千tです。鉄鋼ダスト・その他も輸入・輸出が各1.5千tで地金工程につながっています。輸入鉱石に依存する一方、電炉ダストが国内循環を補う二次原料であることを示す図です。ただし、鉄鋼ダスト等の国内発生量は「-」で、生産・需要量不明または記載なしの項目を含むため、図から国内回収量の比率は算出できません。

参考:https://journal.jogmec.go.jp/content/300802123.pdf#page=16

(2)亜鉛は鉄の防食に不可欠な素材である

用途の面でも、代替が難しい素材です。

亜鉛めっきは、鋼材の腐食を防ぐ手段として広く使われています。自動車用鋼板、建材、鋼構造物、ガードレールや送電鉄塔といった屋外構造物まで、鉄を長く使うための前提になっている技術です。

つまり亜鉛の安定調達は、鉄鋼製品の耐久性そのものに関わります。鉄の循環を考えるうえで、亜鉛の循環は切り離せない要素です。

(3)電炉化の進展で発生量は増える見通しにある

今後の変化として想定されるのが、電気炉の比率の上昇です。

鉄スクラップを原料とする電気炉は、鉄鉱石とコークスを使う高炉に比べて製造時のCO2排出量が大幅に少なくなります。カーボンニュートラルに向けて電炉化が進めば、電気炉での鋼材生産量が増え、それに伴って電炉ダストの発生量も増加します。

亜鉛のリサイクル量が増える一方で、処理しなければならないダストの量も増えます。処理能力の確保と、処理コストの水準が論点になります。

引用:https://www.fudenkou.jp/about/post_2.html

2025年の電炉鋼比率は、日本25.8%、世界計29.1%、EU45.8%、米国71.8%です。日本の電炉比率は世界平均を下回る一方、米国では粗鋼の7割超を電炉が占めています。この差は、今後国内で電炉化が進む余地と、それに伴い電炉ダスト処理能力の確保が課題になる可能性を補足します。ただし、本図は2025年の生産実績を示す比較表であり、将来の増加率を予測したものではありません。国・地域ごとの製品構成や原料事情でも比率は変わります。

参考:https://www.fudenkou.jp/about/post_2.html

(4)処理費用が発生する廃棄物でもある

資源としての価値がある一方、現実には処理費用を伴います。

電炉ダストは特別管理産業廃棄物として扱われ、亜鉛回収業者への委託には費用がかかります。埋立処分を選ぶ場合も、適正な処理を経る必要があり、費用は低くありません。

亜鉛を含んでいれば無条件に有価物になるわけではなく、亜鉛の相場、ダストの成分、処理業者の受け入れ条件によって収支は変わります。この点は、他の金属含有廃棄物と同じ構造です。

4.排出事業者に求められる管理

電気炉や溶解炉を保有する事業者にとって、電炉ダストの管理は日常的な実務になります。ここでは押さえるべき要件を整理します。

(1)特別管理産業廃棄物としての該当性を確認する

出発点は、自社のダストが該当するかの確認です。

ばいじんがすべて特別管理産業廃棄物になるわけではありません。特定施設から発生し、有害物質が判定基準を超えて溶出する場合に該当します。判断には成分分析が必要です。

項目溶出量の判定基準(mg/L)
カドミウム又はその化合物0.09
鉛又はその化合物0.3
六価クロム化合物1.5
水銀又はその化合物0.005
ひ素又はその化合物0.3
セレン又はその化合物0.3

原料構成が変われば成分も変わります。スクラップの調達先や配合を変更した場合は、分析結果の見直しが必要になる場合があります。

(2)特別管理産業廃棄物管理責任者を設置する

該当する場合、社内の体制整備が求められます。

特別管理産業廃棄物を生ずる事業場ごとに、管理責任者を置く義務があります。処理計画の作成、委託先の確認、マニフェストの管理といった業務を担う役割です。

委託先についても要件が上がります。収集運搬業・処分業のいずれについても、特別管理産業廃棄物の許可を持つ事業者でなければ委託できません。

(3)飛散を防ぐ保管を行う

保管の段階では、飛散性への対応が中心になります。

電炉ダストは微粒子であり、そのままでは風で容易に飛散します。フレキシブルコンテナや専用のサイロで保管する、加湿や造粒によって飛散を抑えるといった対応が取られます。

保管場所には、他の廃棄物と混合しないよう区分し、掲示板を設けるなどの基準が適用されます。飛散・流出・地下浸透を防ぐ措置も求められます。

(4)マニフェストの期限管理を行う

書類の管理でも、通常の産業廃棄物とは期限が異なります。

特別管理産業廃棄物では、マニフェストの返送期限が交付日から60日以内となります。最終処分終了については180日以内で、保存期間は5年間です。委託契約書も契約終了後5年間の保存が必要になります。

亜鉛回収業者に委託する場合も、有価取引が成立していない限りは廃棄物処理法上の委託にあたります。契約とマニフェストの手続きは同様に必要です。

参考:https://www.env.go.jp/content/900479496.pdf

図は、排出事業者・収集運搬業者・処分業者の3者間で、紙マニフェストが返送される経路と、電子マニフェスト情報が情報処理センターを介して送受信される経路を示しています。特別管理産業廃棄物では運搬・処分終了を60日以内、最終処分終了を180日以内に確認するため、どの報告を誰から受けるかを整理する必要があります。電炉ダストの委託管理では、この流れと期限を一体で管理することを裏付けます。ただし、図は制度全体の模式図で、個別契約の責任分担を代替するものではありません。

参考:https://www.jwnet.or.jp/jwnet/about/system/purpose/

(5)処理先と処理方式を把握しておく

委託先の選定では、どの方式で処理されるかを確認します。

亜鉛回収に回るのか、固化処理を経て埋立処分になるのかで、再資源化の内容が変わります。亜鉛回収の場合でも、鉄分まで回収する方式か、亜鉛のみを抜く方式かによって、残渣の行き先が異なります。

再資源化率を社内や取引先に報告する必要がある事業者では、この違いがそのまま説明内容の違いになります。委託先に処理フローを確認し、記録として残しておいてください。

5.課題と技術動向

電炉ダストの処理には、長く指摘されてきた構造的な課題があります。ここでは論点と技術の方向性を整理します。

(1)ウェルツ法はエネルギー消費が大きい

第一の課題は、処理に要するエネルギーです。

ウェルツ法では、亜鉛をいったん還元して揮発させ、炉外で再び酸化させて回収します。さらに製錬所では、その酸化亜鉛を再度還元して地金にします。還元と酸化を繰り返す構造のため、エネルギー効率の面で無駄が生じます。

処理そのものがCO2を排出するため、脱炭素を目的とした電炉化が進むほど、この工程の負荷が相対的に目立つことになります。

(2)鉄分が回収されずに残る

第二の課題は、資源の取りこぼしです。

電炉ダストには鉄が30%程度含まれていますが、ウェルツ法ではこの鉄分がクリンカーに残り、回収されません。亜鉛は資源化される一方で、量的にはより多い鉄が活かされない構造になっています。

回転炉床炉方式のように鉄分を還元して電気炉に戻す方式は、この課題への対応にあたります。処理方式の選択が、資源回収の範囲を決めます。

(3)ハロゲンや鉛の存在が処理を難しくする

第三の課題は、不純物の管理です。

電炉ダストには塩素やふっ素、鉛が含まれます。これらは設備の腐食や排ガス処理の負荷につながるほか、回収される粗酸化亜鉛の品位にも影響します。

原料である鉄スクラップに塗装、樹脂、非鉄金属が多く混じるほど、これらの成分は増えます。上流の品質が、下流の処理条件を左右する関係にあります。

(4)新しい回収プロセスの開発が進んでいる

技術面では、代替プロセスの研究が続いています。

アルカリ浸出と電解を組み合わせて亜鉛を回収する方法、選択塩化と溶融塩電解による方法、石灰添加によって亜鉛と鉄を同時に回収する方法など、還元と酸化の繰り返しを避けてエネルギー消費を抑える技術の開発が進められています。

いずれも実用化の段階はさまざまですが、電炉化に伴って処理量が増えることを見据えた取り組みという点で共通しています。

参考:https://www.eng.tohoku.ac.jp/news/detail-,-id,112.html

図2は、電炉ダストを選択塩化して粗塩化亜鉛を分離し、ZnCl2–NaCl電解浴の浄液と溶融塩電解を経て金属亜鉛を得る流れを示しています。鉄はFe2O3等の酸化物として分け、鉄源として電炉へ戻す構成です。亜鉛だけでなく鉄分も回収することで、従来法の残渣問題に対応する技術の方向性を裏付けます。ただし、図は2014年に公表された研究成果の工程概念であり、商用設備の処理量・コスト・長期操業実績を示すものではありません。

なお、本文の「亜鉛需要の約8割を輸入鉱石に依存」は、今回の最新JOGMEC図からは直接算定できません。図表との厳密な整合を優先する場合は、「亜鉛鉱石を輸入に依存している」への修正が適切です。

参考:https://www.eng.tohoku.ac.jp/news/detail-,-id,112.html

6.鉄スクラップの質が処理条件を左右する

電炉ダストの成分は、電気炉に投入された鉄スクラップの構成を反映します。この関係が、資源循環の上流側の意味を示しています。

(1)ダストの成分は原料の構成で決まる

電炉ダストの性状は、投入されたスクラップ次第です。

亜鉛めっき鋼板の比率が高ければ亜鉛の含有率は上がり、塗装材や樹脂、非鉄金属が混じればハロゲンや鉛が増えます。同じ電気炉でも、原料の構成が変われば出てくるダストの成分は変わります。

亜鉛は製品由来のものであり、避けられません。一方で、異物由来の成分は上流での分別によって変わり得ます。

(2)異物の混入は処理負荷を増やす

品質の影響は、処理コストにも及びます。

不純物が多いダストは、亜鉛回収時の設備負荷が増え、回収される粗酸化亜鉛の品位も下がります。受け入れ条件が厳しくなり、処理費用に反映されることになります。

鉄スクラップの品質が問われるのは、溶けたときの鋼材の品質だけではありません。副産物の処理条件まで含めて、上流の分別が影響します。

(3)電炉化が進むほど上流の分別が効く

この関係は、今後さらに重みを増します。

電気炉での生産比率が高まれば、市中から回収される鉄スクラップが鋼材の主原料になります。同時に、そこから生じるダストの量も増えます。

排出事業者の側で異物を減らし、材質を揃えて出すことは、鋼材の品質を保つだけでなく、副産物の処理負荷を抑えることにもつながります。

(4)鉄の循環全体で捉える

電炉ダストは、鉄の循環の一部として位置づけられます。

使用済みの製品や設備が鉄スクラップとして電気炉に戻り、鋼材として再生される。その過程で生じるダストからは亜鉛が回収され、再びめっきの材料になる。この二つの循環は、上流の分別を起点として連動しています。

なかでも鉄は、カーボンニュートラルの潮流のなかで電炉化が加速し、質の高い鉄スクラップの国内循環が戦略資源として注目されています。鉄のサーキュラーエコノミーへの具体的な取り組みについては、以下の記事で解説しています。

7.まとめ

電炉ダストは、電気炉で鉄スクラップを溶解する際に発生するばいじんです。発生量は粗鋼1トンあたり16〜17kg、国内では年間40万〜50万トン規模になります。亜鉛を20〜30%、鉄を30%程度含み、亜鉛の由来は鉄スクラップ表面に施されていためっきです。

法令上は特別管理産業廃棄物として扱われます。委託先には特別管理産業廃棄物の許可が必要で、管理責任者の設置、飛散を防ぐ保管、60日以内のマニフェスト返送確認といった要件が伴います。

再資源化の中心は亜鉛の回収です。ロータリーキルンで亜鉛を揮発・再酸化させて粗酸化亜鉛に濃縮し、亜鉛製錬所で地金に戻します。日本は亜鉛需要の約8割を輸入鉱石に依存しており、電炉ダストは国内で確保できる貴重な二次原料にあたります。一方で、エネルギー消費の大きさと鉄分が回収されない構造が課題として残り、鉄分まで回収する方式や新しいプロセスの開発が進められています。

電炉ダストのリサイクルを効率よく進めるには、定期的に発生している返品や使用済み製品の量や状態、その行き先を把握し、廃棄以外の出口も含めた具体的なスキームを設計することが重要です。保管スペースの不足や、廃棄か再販かの判断、複数の処分業者の管理に負担を感じている場合は、五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」にご相談ください。

監修

早稲田大学法学部卒業後、金融機関での法人営業を経て、中小企業向け専門紙の編集記者として神奈川県内の企業・大学・研究機関を取材。
2013年から2020年にかけては、企業のサステナビリティレポートの企画・編集・ライティングを担当。2025年4月よりフリーランスとして独立。
企業活動と社会課題の接点に関する実務経験が豊富で、サステナビリティ分野での実践的な視点に基づく発信を強みとしている。