鉄鋼スラグのリサイクル|種類別の用途、製造工程とJISの品質基準

鉄鋼スラグは、鉄鉱石や副原料に由来する成分が製鉄・製鋼の工程で分離されたものです。年間の発生量は3,000万トン規模にのぼりますが、その大半は廃棄物ではなく、JIS規格に適合した資材として市場に供給されています。セメント、道路の路盤材、コンクリート用骨材、地盤改良材、肥料と、用途は多岐にわたります。

利用率の高さから、鉄鋼スラグは資源循環の先行事例として扱われることの多い分野です。一方で、需要の中心が土木・建設分野にあること、そしてカーボンニュートラルに向けた電炉化の進展によって発生するスラグの構成が変わることから、今後の用途開発が課題として残されています。

五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、返品や使用済み製品など、事業の中で定期的に発生するモノの資源循環を一括で支援するサービスです。回収したモノは状態に応じて再販・リユースを優先し、新たな製品の製造や廃棄に伴う排出を抑えます。鉄を含む製品・設備については、国内製鉄所へ還流させるクローズドループの構築まで対応し、鉄スクラップを原料として生かすことで脱炭素にもつなげます。自社から発生する鉄系材の回収ルートを検討されている場合は、ぜひご相談ください。

目次

1.鉄鋼スラグとは何か

鉄鋼スラグは、発生する工程によって性質も用途も異なります。この章では、種類と成り立ちを整理します。

(1)鉄1トンの製造に対して約600kgの副産物が発生する

鉄鋼業では、製品と並行して相当量の副産物が生じます。

鉄を1トンつくる過程では、スラグ、ダスト、スラッジ、使用済みの耐火れんがなどを合わせて約600kgの副産物が発生します。このうち大部分を占めるのがスラグで、鉄鋼業の副産物全体の8割程度にあたります。

これらは避けられない生成物であり、量も安定しています。そのため鉄鋼業では早い段階から利用先の開発が進められ、現在ではほぼ全量が有効利用される状態になっています。

参考:https://j4ce.env.go.jp/casestudy/024/

図では、生成量が1980年度の約4,000万tから2024年度の約2,900万tへ減る一方、埋設等は約530万tから約20万tまで縮小しています。2024年度の埋設等は生成量の1%未満であり、ほぼ全量が利用されているという本節の説明を裏付けます。企業が鉄鋼スラグを処分対象ではなく規格資材として捉える背景にもなるデータです。ただし、棒の値は図から読み取る一般的な目安で、生成量は鉄鋼生産や炉の稼働状況により変動します。「埋設等」は廃棄物量と完全に同義ではありません。

参考:https://www.slg.jp/data/collection/

(2)高炉スラグは銑鉄1トンあたり約300kg発生する

高炉スラグは、製銑工程で生じるスラグです。

高炉で鉄鉱石を溶融・還元する際、鉄以外の成分と、副原料の石灰石やコークスの灰分が一体となって分離されます。これが高炉スラグで、銑鉄1トンあたり約300kgが生成します。

取り出された時点では約1,500℃の溶融状態にあり、この後の冷却方法によって性質の異なる製品に分かれます。主成分はカルシウム、けい素、アルミニウムの酸化物で、セメントと近い組成を持つ点が用途を決める要因になっています。

参考:https://www.slg.jp/slag/type/

(3)製鋼スラグは転炉系と電気炉系に分かれる

製鋼スラグは、鋼をつくる精錬工程で生じるスラグです。

銑鉄から不純物を除いて鋼にする過程で、けい素、りん、硫黄などを取り除くために添加される副原料と、除去された成分が結びついて生成します。発生量は溶鋼1トンあたり約100〜150kgです。

製鋼スラグは、高炉から得た銑鉄を転炉で精錬する際に生じる転炉系スラグと、鉄スクラップを電気炉で溶解する際に生じる電気炉系スラグに分かれます。高炉スラグと比べて酸化鉄やマンガン、りんを含む点が異なり、この成分の違いが用途の違いにつながります。

(4)冷却方法によって水砕スラグと徐冷スラグに分かれる

高炉スラグは、冷却の仕方で二つの製品になります。

溶融状態のスラグに大量の加圧水を吹き付けて急冷すると、ガラス質で粒状の水砕スラグになります。一方、冷却ヤードに流し込んでゆっくり冷やすと、結晶質で岩石に近い徐冷スラグになります。

水砕スラグは、微粉砕することで強い潜在水硬性を示します。アルカリ性の環境下で水と反応して硬化する性質があり、これがセメント用途の根拠です。徐冷スラグは天然の砕石に近い性状を持つため、路盤材やコンクリート用の粗骨材に向いています。

同じ高炉スラグでありながら用途が分かれるのは、この冷却工程の違いによるものです。

(5)製品として流通しているため廃棄物にはあたらない

鉄鋼スラグの位置づけとして押さえておきたいのが、廃棄物処理法上の扱いです。

鉄鋼スラグは製鉄所で加工・品質管理され、資材として有償で販売されています。有価物として取引されるものは廃棄物処理法の適用を受けないため、一般に流通している鉄鋼スラグ製品は産業廃棄物ではありません。

一方で、製品化できずに埋立処分される分もわずかに残ります。この部分は産業廃棄物の「鉱さい」として、廃棄物処理法に基づいて処分されます。同じ工程から出るものでも、製品として使われるか処分されるかで扱いが分かれる構造です。

2.鉄鋼スラグがリサイクルされる仕組み

発生したスラグがどのように資材になるかを整理します。工程を把握すると、用途ごとの品質差が理解しやすくなります。

(1)高炉スラグは冷却方法によって製品を作り分ける

高炉スラグの加工は、冷却の段階から始まります。

溶融スラグを加圧水で急冷して水砕スラグとし、成分を分析したうえで塩基度ごとに分類します。徐冷する場合は冷却ヤードで固化させ、掘り起こして破砕・粒度調整を行います。

つまり、後工程で製品を選ぶのではなく、冷却の方法を選んだ時点で用途がほぼ決まります。製鉄所ごとに、周辺の需要構成に応じて水砕と徐冷の比率が調整されています。

図は、高炉スラグが徐冷・水砕の冷却方法によって分かれ、製鋼スラグが破砕・スクリーン・エージングを経て道路用・骨材・セメント原料等になる流れを示しています。発生原単位は、高炉スラグ300kg/t、転炉系130kg/t、電気炉酸化70kg/t、同還元40kg/tです。工程ごとに用途が分岐するため、スラグの名称だけでなく、発生炉・冷却法・エージングの有無を確認することが資材の品質差を理解する根拠になります。数値は一般的な生成量で、原料や操業条件により変動します。

参考:https://www.slg.jp/cms/wp-content/themes/original/pdf/booklet-slag_2025_overview01.pdf#page=3

(2)水砕スラグを微粉砕して高炉スラグ微粉末にする

セメント用途の中核となるのが、微粉砕の工程です。

水砕スラグをミルで微粉砕すると、高炉スラグ微粉末になります。この際、塩基度の高い品と低い品を混合して粉砕することで、一定の品質に調整されます。

高炉スラグ微粉末を普通ポルトランドセメントと混合したものが高炉セメントです。セメントクリンカの焼成工程を一部省略できるため、製造時のエネルギー消費とCO2排出を抑えられます。

(3)製鋼スラグは磁力選別で鉄分を回収する

製鋼スラグの処理では、まず鉄分の回収が行われます。

製鋼スラグには金属鉄の粒が含まれており、破砕したうえで磁力選別にかけると分離できます。回収された鉄分は製鋼工程の原料として再投入されます。

用途別の統計で製鋼スラグの2割程度が「再使用」に分類されるのは、この社内循環を指します。スラグとして外部に販売される前に、鉄鋼プロセスの内部で戻される部分があるということです。

(4)エージングによって膨張性を安定化させる

製鋼スラグを資材として使ううえで欠かせないのが、エージング処理です。

製鋼スラグには未反応の石灰分が残っており、そのまま使用すると水と反応して膨張し、舗装のひび割れや盛土の変形につながります。これを防ぐため、あらかじめ水と反応させて安定化させる処理が行われます。

代表的なのは大気エージングで、屋外に一定期間放置して十分に水和反応を進める方法です。広い敷地と時間を要するため、温水を散布して反応を促進する温水エージングも用いられます。

この工程の有無と管理状態が、製鋼スラグ製品の品質を左右します。適正なエージング期間を把握して管理することが前提になります。

参考:https://www.pwrc.or.jp/s-pdf/1511-P052-055.pdf

(5)粒度調整を経てJIS規格品として出荷される

最終工程は、用途に応じた製品化です。

破砕と粒度調整を行い、用途ごとの規格に適合させます。道路用であればJIS A 5015、コンクリート用骨材であればJIS A 5011に基づく品質が求められ、これらに適合したものが規格品として出荷されます。

鉄鋼スラグ製品の大半はJIS相当品またはグリーン購入法の特定調達品目として市場に供給されており、天然材料と同じ土俵で使われる資材になっています。

3.鉄鋼スラグの用途

用途は種類によって大きく異なります。ここでは実際の利用構成を確認します。

(1)高炉スラグの8割はセメント用に使われる

高炉スラグの用途は、セメントに集中しています。

鐵鋼スラグ協会の2024年度実績では、高炉スラグ19,239千トンのうち81.0%がセメント用で、次いで道路用が12.0%、コンクリート骨材が3.9%です。製鋼スラグ11,916千トンでは道路用が50.7%と最も多く、再使用20.4%、土木用14.0%が続きます。用途構成が種類によって明確に分かれていることが分かります。なお、この数値は年度ごとの需要動向によって変動します。

高炉スラグがセメントに向かうのは、水砕スラグの潜在水硬性という性質によるものです。単なる増量材ではなく、硬化に寄与する材料として使われています。

(2)製鋼スラグの半分は道路用に使われる

製鋼スラグの主用途は、道路の路盤材です。

製鋼スラグや高炉徐冷スラグは、天然の砕石や砂に近い外観と性状を持ちます。高炉徐冷スラグは水と反応して固まる水硬性を持つため、時間とともに強度が向上し、大きな支持力が期待できます。

このため、道路の路盤材として天然砕石の代替に使われてきました。日本各地の道路、港湾、空港のインフラを支える建設資材として定着している用途です。

(3)コンクリート用骨材としても使われる

骨材用途にも、一定の実績があります。

高炉徐冷スラグは、アルカリ骨材反応を起こすおそれがなく、粘土や有機不純物を含まないため、コンクリート用の粗骨材として利用できます。高炉水砕スラグは細骨材、いわゆる砂の代替として使われます。

コンクリート用スラグ骨材はJIS A 5011として規格化されており、高炉スラグ骨材のほか電気炉酸化スラグ骨材も規格の対象です。天然骨材の採取が制約を受けるなかで、代替材としての位置づけを持っています。

(4)地盤改良材・土木用資材として使われる

土木分野でも、性質を活かした用途があります。

製鋼スラグは水と反応して固まる性質があるため、軟弱地盤の改良材として使われます。浚渫土と混合して固化させる用途もあり、港湾工事での埋戻し材や、浅場・干潟の造成材に利用されています。

これらは天然材料では対応しにくい条件下で使われることが多く、代替というより性能面で選ばれている用途です。

(5)肥料や海域環境の改善にも利用されている

用途の広がりとして、農業分野や海域での利用もあります。

製鋼スラグはけい酸とカルシウムを含むため、けい酸質肥料や土壌改良材として使われます。水稲の生育に必要なけい酸を供給する用途が代表的です。

海域では、製鋼スラグを原料としたカルシア改質材と浚渫土を混合したものが、海底の深掘れの埋戻しや浅場の造成に使われています。また製鋼スラグと廃木材由来の腐植物質を混合した資材は、海藻の生育に必要な鉄分を供給し、藻場の再生に用いられています。

量としては全体の数%にとどまりますが、鉄鋼スラグの成分特性が直接活きる用途です。

4.品質と環境安全性はどう担保されているか

副産物由来の資材である以上、品質と環境安全性の裏づけが利用の前提になります。ここではその枠組みを整理します。

(1)JIS規格に環境安全品質が織り込まれている

鉄鋼スラグ製品の安全性は、JIS規格によって担保されています。

道路用鉄鋼スラグ(JIS A 5015)およびコンクリート用スラグ骨材(JIS A 5011)には、2013年の改正で環境安全品質に関する基準と検査方法が規定されました。それ以前は個別の指針類に基づいていましたが、規格として統合されています。

これにより、鉄鋼スラグ製品は品質面だけでなく環境面についても、規格で定められた基準への適合を確認したうえで出荷される仕組みになりました。

参考:https://www.slg.jp/slag/environmental/

(2)溶出量と含有量の両面で基準が定められている

基準は、二つの指標で構成されます。

溶出量は、水に溶け出す量を測る指標で、土壌の汚染に係る環境基準と同等の値が設定されています。含有量は、材料そのものに含まれる量を測る指標で、土壌汚染対策法の含有量基準と同等の値です。

項目溶出量(mg/L)含有量(mg/kg)
カドミウム0.01以下150以下
鉛0.01以下150以下
六価クロム0.05以下250以下
ひ素0.01以下150以下
水銀0.0005以下15以下
セレン0.01以下150以下

港湾用途については、海水による希釈が見込まれることから別の基準が設定されています。用途ごとに求められる水準が異なる点は、資材を選定する際の確認事項になります。

(3)形式検査と受渡検査の二段階で確認される

検査の仕組みも、規格で定められています。

形式検査は、利用が終了して解体・再利用や最終処分に至るまでのライフサイクルを想定した試料を用いて、環境安全品質基準への適合を確認するものです。受渡検査は、形式検査に合格したものと同じ製造条件で作られた製品について、出荷時に品質を保証するために行われます。

つまり、製品単体の出荷時点だけでなく、使われた後の状態まで想定して安全性が確認される設計になっています。資材として採用する側は、この検査成績表を確認することになります。

(4)製鋼スラグでは膨張性の管理が要件になる

環境面とは別に、物性面の管理項目があります。

製鋼スラグを用いた路盤材では、水浸膨張比という指標で膨張性が評価されます。エージング処理によって膨張性を安定させたうえで、規定値以下であることを確認します。

過去には、エージングが不十分な製鋼スラグの使用によって舗装が変形した事例も知られています。品質管理された規格品を、規格が想定する用途で使うことが前提になります。用途外の使用や、規格に適合しない材料の流用は避けるべき領域です。

図では、転炉系・電気炉系スラグについて、原料・溶解・冷却、加工、出荷の各段階で管理する項目を整理しています。加工段階では破砕・分級、磁力選別、エージングを行い、出荷段階では環境安全品質や用途別規格、水浸膨張試験などを検査します。これは、製鋼スラグの膨張性を最終検査だけでなく製造工程全体で抑える必要があることを裏付けます。管理項目は製品用途や発生炉、需要家との仕様によって異なるため、実務では検査成績表とエージング条件の双方を確認する必要があります。

参考:https://www.slg.jp/cms/wp-content/themes/original/pdf/booklet-slag_2025_overview06.pdf#page=5

5.鉄鋼スラグが環境面で評価される理由

鉄鋼スラグの利用は、廃棄物削減にとどまらない効果を持ちます。ここでは環境面の位置づけを整理します。

(1)天然資源の採取を減らせる

第一の効果は、天然材料の代替です。

路盤材や骨材として使われる分は、本来であれば山を削って採取される砕石や砂の代わりになります。採取に伴う環境への影響と、採掘・輸送に要するエネルギーを減らせます。

骨材資源は地域によって偏在しており、良質な天然骨材の確保が難しくなっている地域もあります。安定的に発生し、品質が管理された代替材の存在は、資材供給の面でも意味を持ちます。

(2)高炉セメントは製造時のCO2排出を抑えられる

第二の効果は、セメント製造に伴うCO2の削減です。

高炉スラグ微粉末を混合した高炉セメントは、セメントクリンカの焼成工程を大幅に削減できます。焼成に必要な燃料と電力の消費が減るため、製造時のCO2排出量を4割程度削減できるとされ、長期強度にも優れることからエコマーク商品にも登録されています。

セメントは製造時のCO2排出量が大きい素材であり、その一部を代替できる効果は小さくありません。鉄鋼スラグの用途のうち最大の比率を占めるのがセメント用であることを踏まえると、削減効果の規模も相応になります。

参考:https://j4ce.env.go.jp/casestudy/024/

図では、セメント1t当たりのCO₂排出量を、ポルトランドセメント759kg、高炉セメントB種440kgと示しており、削減量は319kg、削減率は42%です。内訳は石灰石由来が476kgから270kgへ、電力・エネルギー由来が283kgから170kgへ減少しています。これは、水砕スラグの利用によりクリンカ焼成を一部省略でき、製造時排出を抑えられるという本節の主旨を定量的に裏付けます。数値はセメント協会の2022年公表データに基づく製造段階の比較で、配合率や工場条件、輸送は別途考慮が必要です。

参考:https://www.slg.jp/cms/wp-content/themes/original/pdf/booklet-slag_2025_overview05.pdf#page=2

(3)公共調達の枠組みに位置づけられている

制度面でも、利用を後押しする仕組みがあります。

鉄鋼スラグ製品は、天然砕石の採掘削減とセメント製造時の省エネルギー効果により、グリーン購入法の特定調達品目に指定されています。各自治体のリサイクル認定を受けている製品もあります。

公共工事における採用の根拠が制度として整理されていることが、用途の安定につながっています。

(4)海域環境の改善にも寄与している

素材特性を活かした用途として、環境改善そのものに使われる例もあります。

製鋼スラグを原料としたカルシア改質材は、浚渫土と混合することで海底の深掘れ埋戻しや浅場・干潟の造成に利用され、海域環境の改善に用いられています。鉄分を供給して藻場の再生に用いる資材もあります。

代替材としての利用とは異なり、スラグでなければ果たせない機能が評価されている領域です。

6.今後の論点と鉄の資源循環における位置づけ

利用率が高い分野であるからこそ、次の課題は需要側と発生側の変化にあります。

(1)土木・建設需要の縮小が構造的な課題になる

最大の論点は、需要の先行きです。

鉄鋼スラグの用途はセメントと道路用に集中しており、いずれも土木・建設分野の需要に依存しています。公共工事の規模が長期的に縮小すれば、現在の高い利用率を維持できなくなる可能性があります。

鉄鋼各社が新用途の開発を続けているのは、この構造への対応です。利用率がすでに高い水準にあるため、新たな用途の開拓が課題として残り続けます。

(2)電炉化の進展で発生するスラグの構成が変わる

発生側でも、変化が見込まれています。

カーボンニュートラルに向けて高炉から電気炉への転換が進めば、鉄鉱石を還元する工程が減り、高炉スラグの発生量は減少します。一方で、鉄スクラップを溶解する電気炉から出る電気炉系スラグは増加します。

高炉スラグの主用途であるセメント向けは、水砕スラグの潜在水硬性に依存しています。電気炉系スラグは性質が異なり、同じ用途に振り向けられるわけではありません。発生する種類の構成が変わることは、用途構成の再設計を伴います。

2025年の電炉鋼比率は、日本25.8%、EU45.8%、米国71.8%、韓国27.7%、中国10.6%、世界29.1%と示されています。日本は粗鋼の約4分の1を電炉が担う段階ですが、米国やEUでは比率がより高く、製鋼ルートの構成が国ごとに大きく異なります。この比較は、国内で電炉化が進めば高炉・転炉系スラグが減り、電気炉系スラグが増えるという本節の論点を補強します。なお、図は2025年の実績比較で将来予測ではなく、各国の品種構成やスクラップ供給、電力事情に左右されます。

参考:https://www.fudenkou.jp/about/post_2.html

(3)新しい利用技術の開発が進んでいる

技術面では、用途を広げる取り組みが続いています。

製鋼スラグを海域環境の改善材として使う技術や、けい酸質肥料としての用途拡大、CO2を固定する材料としての活用など、土木・建設以外の領域での研究開発が進められています。

これらは現時点で量的な比率は小さいものの、需要構造の変化に備える選択肢として位置づけられています。

(4)鉄の循環にはもう一方の軸がある

視点を広げると、鉄鋼スラグは鉄の資源循環の一方の側面にあたります。

鉄鋼スラグの利用は、鉄をつくる過程で生じる副産物を資材として活かす循環です。これに対して、使い終えた製品や設備を鉄スクラップとして製鉄工程に戻すことは、使用後の段階での循環にあたります。電炉化が進むほど、後者の重要性は増していきます。

なかでも鉄は、カーボンニュートラルの潮流のなかで電炉化が加速し、質の高い鉄スクラップの国内循環が戦略資源として注目されています。鉄のサーキュラーエコノミーへの具体的な取り組みについては、以下の記事で解説しています。

7.まとめ

鉄鋼スラグは、製鉄・製鋼の工程で必然的に生じる副産物です。高炉スラグは銑鉄1トンあたり約300kg、製鋼スラグは溶鋼1トンあたり約100〜150kg発生し、合わせて年間3,000万トン規模になります。有価物として販売される製品が大半で、埋立処分に回るのはごく一部です。

用途は種類によって明確に分かれます。高炉水砕スラグは潜在水硬性を活かして高炉セメントの原料となり、高炉徐冷スラグと製鋼スラグは天然砕石に近い性状を活かして路盤材や骨材に使われます。地盤改良材、けい酸質肥料、海域環境の改善材としての利用もあります。

品質と環境安全性は、JIS A 5015およびJIS A 5011に織り込まれた環境安全品質基準によって担保されています。製鋼スラグではエージングによる膨張性の安定化が要件となり、規格が想定する用途で使うことが前提になります。

鉄鋼スラグのリサイクルを効率よく進めるには、定期的に発生している返品や使用済み製品の量や状態、その行き先を把握し、廃棄以外の出口も含めた具体的なスキームを設計することが重要です。保管スペースの不足や、廃棄か再販かの判断、複数の処分業者の管理に負担を感じている場合は、五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」にご相談ください。

監修

早稲田大学法学部卒業後、金融機関での法人営業を経て、中小企業向け専門紙の編集記者として神奈川県内の企業・大学・研究機関を取材。
2013年から2020年にかけては、企業のサステナビリティレポートの企画・編集・ライティングを担当。2025年4月よりフリーランスとして独立。
企業活動と社会課題の接点に関する実務経験が豊富で、サステナビリティ分野での実践的な視点に基づく発信を強みとしている。