事業活動で発生した使用済みタイヤは、産業廃棄物として処理する必要があります。ここで多くの事業者がつまずくのが、「これまで取引のあるタイヤ販売店に引き取ってもらえばよいのではないか」という点です。2011年3月をもって従来の制度が廃止されており、産業廃棄物収集運搬業の許可を持たないタイヤ販売店は、他の事業者の廃タイヤを引き取ることができません。
一方で、廃タイヤは再資源化が高い水準で進んでいる廃棄物でもあります。JATMA(日本自動車タイヤ協会)の集計では、2024年の有効利用率は99.6%に達しています。
本記事では、廃タイヤの廃棄物区分、販売店に引き取ってもらえる条件、リサイクルの仕組み、処分の手順、費用の内訳と相場、業者選定のポイントを整理します。
五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、鉄を主原料とする製品・設備の廃棄や資源循環を起点に、サーキュラーエコノミーへの移行を支援するサービスです。 廃棄物を国内製鉄所等へ還流させるクローズドループの構築など、カーボンニュートラルや循環型社会の実現に向けた取り組みを、コスト削減と両立する形で支援します。運送業や整備工場で車両・設備の更新に伴って発生する鉄系廃棄物についても、あわせてご相談ください。
1.タイヤは産業廃棄物になるか

廃タイヤは、排出者と品目区分の両面で整理が必要な廃棄物です。
(1)事業者が排出したタイヤは「廃プラスチック類」に区分される
事業活動に伴って排出された使用済みタイヤは、産業廃棄物の「廃プラスチック類」に該当します。
廃プラスチック類は業種指定のない品目であり、運送業、整備工場、建設業、農業など、あらゆる事業活動から排出されたものが産業廃棄物になります。委託契約書やマニフェストに記載する品目も廃プラスチック類となるため、「ゴムくず」と記載しないよう注意してください。
なお、タイヤにはスチールコードや繊維も含まれますが、これらは中間処理の工程で分離され、それぞれの資源ルートに乗ります。
(2)タイヤ販売店に引き取ってもらえるとは限らない
実務で最も注意が必要なのが、引き取り先の適格性です。
つまり、新しいタイヤへの交換と同時であれば販売店ルートが使える一方、保管していた廃タイヤをまとめて処分したい場合は、許可を持つ産業廃棄物処理業者に委託することになります。この切り分けを誤ると、引き取りを断られたり、不適正処理につながったりします。
参考:https://www.jatma.or.jp/environment_recycle/aboutscraptyres.php
(3)排出事業者責任とマニフェスト
処理を外部に委託しても、処理責任は排出事業者に残ります。
金属くずをはじめとする産業廃棄物全般の委託手続きの考え方については、「産業廃棄物の鉄くずとは?マニフェストや買取時の注意点、リサイクル」で解説しています。

2.廃タイヤのリサイクルの仕組み

廃タイヤは、産業廃棄物のなかでも再資源化が進んでいる品目です。
JATMA(日本自動車タイヤ協会)の集計では、国内における2025年の廃タイヤ発生量は、タイヤ取替時と廃車時の合計で9,000万本でした。内訳はタイヤ取替時が7,900万本、廃車時が1,100万本です。2024年の有効利用量は69万2千トンで、有効利用率は99.6%と前年から0.4ポイント増加しています。発生した廃タイヤのほとんどが、何らかの形で有効利用されていることを示しています。なお、有効利用率は有効利用量を有効利用量と非有効利用最終処分量の合計で除した値であり、個別の排出事業者における再資源化率を示すものではありません。実際の処理内容は、タイヤの種類、状態、委託先の設備によって変わります。
(1)中間処理(切断・破砕)と素材の分離
収集運搬業者が引き取った廃タイヤの多くは、中間処理業者による切断・破砕加工を経て次の工程へ進みます。
なお、中古タイヤとして輸出されるものや、原形のまま利用されるものの一部は、切断・破砕の工程を経ずに有効利用されます。
図19では、タイヤ原材料の48%がゴムで、内訳は天然ゴム29%、合成ゴム19%です。これに補強剤22%、タイヤコード14%(スチール11%、テキスタイル3%)、ビードワイヤー4%、配合剤12%が続きます。ゴム以外にも鉄や繊維を含むため、破砕後に素材別の選別ルートが必要になることを裏付けています。素材構成を前提に、委託先の選別・再資源化工程を確認する必要があります。構成比はタイヤの品種で異なり、ビードワイヤーと配合剤は推計値です。
(2)熱利用(サーマルリサイクル)
有効利用のなかで最も比重が大きいのが、燃料としての熱利用です。
JATMAの公表資料では、製紙工場における燃料利用が拡大し、全有効利用量の約6割を占めた年もあります。近年は廃タイヤの熱分解による油化・カーボン回収への新規参入も続いていますが、有効利用量全体に占める割合はまだ限定的とされています。
(3)材料としての利用(マテリアルリサイクル)
素材としてゴムを再利用するルートもあります。
(4)更生タイヤ(リトレッド)としての再利用
処分の前段階として押さえておきたいのが、更生タイヤ(リトレッド)という選択肢です。
図2では、国内のトラック・バス用タイヤ販売に占めるリトレッド率が、2018年18.0%、2020年18.4%、2023年20.0%、2025年19.4%で推移しています。直近3年はおおむね2割前後であり、廃棄前の再使用が一定規模で実施されていることを示します。更生可否を先に確認するという本文の実務判断に接続するデータです。率は新品とリトレッドの国内販売本数から算出した市場値で、個々の台タイヤが更生可能かどうかは損傷や使用履歴によって異なります。
図3では、リトレッドタイヤの普及による国内市場の資源削減量が、2018・2019年の4.6万トンから2020年に4.2万トンへ低下した後、2023年に4.9万トン、2024・2025年に4.8万トンとなっています。台タイヤを再使用することが、新規原材料の投入削減につながる点を数量で裏付けています。数値は全販売タイヤを新品とした場合との比較試算であり、販売本数や代表サイズ等の算定条件に左右されます。
3.廃タイヤを処分する手順

ここでは、確認から書類の保管までの流れを整理します。
(1)種類・本数・状態を確認する
最初に行うのが、処分対象の把握です。
ホイール付きのまま排出する場合は、取り外し費用が別途発生するか、金属くずとしての扱いになるかを事前に確認してください。
(2)許可を持つ業者に見積もりを依頼する
処分対象が固まったら、産業廃棄物収集運搬業の許可を持つ業者に見積もりを依頼します。
提示する情報は、種類別の本数、ホイールの有無、保管場所と搬出経路です。大量に保管している場合は、その旨と本数を正確に伝えてください。
(3)マニフェストを交付し、処理完了を確認する
引き渡し時には、マニフェストを交付します。
品目は廃プラスチック類として記載し、運搬終了・処分終了・最終処分終了の各段階の返送を確認します。紙マニフェストの返送期限は交付日から90日以内、最終処分終了については180日以内で、保存期間は5年間です。委託契約書は契約終了後5年間の保存が必要になります。
図1では、電子マニフェストの加入者数と年間登録件数が2008年度から2023年度まで継続的に増加しています。同ページ本文では、2025年度末に加入者33.7万者、年間登録4,530万件を見込んでいます。廃タイヤの委託処理でも、交付後の運搬・処分終了を追跡する手段が広く利用されていることを補足できます。紙・電子の別にかかわらず、処理完了を確認するというH3の主旨は共通です。ただし、全産業廃棄物を対象とする集計であり、2025年度値は実績ではなく見込みです。
4.廃タイヤの処分費用の内訳と相場

廃タイヤの処分費用は、タイヤの種類とサイズによって大きく変わります。
| タイヤの種類 | 1本あたりの費用の目安 |
|---|---|
| 乗用車用 | 300〜600円程度 |
| トラック用 | 800〜1,500円程度 |
| 大型建設機械用 | 2,000円以上 |
(1)種類・サイズによる費用差
費用差の主因は、タイヤの重量と処理の手間です。
(2)本数・搬出条件による費用差
本数がまとまるほど、1本あたりの収集運搬費は下がる傾向があります。
5.廃タイヤ処理業者の選び方

廃タイヤの委託先選定では、許可の確認と処理ルートの確認が要点になります。
(1)許可の内容を確認する
委託先の選定では、産業廃棄物収集運搬業許可と処分業許可の内容確認が前提になります。
(2)処理ルートと定期発生への対応を確認する
あわせて確認したいのが、引き取った廃タイヤがどう処理されるかです。
6.廃タイヤを資源循環に回す意義

廃タイヤの適正処理は、法令遵守にとどまらない意味を持ちます。
(1)複数の素材が資源として再利用される
廃タイヤは、ゴム、鉄、繊維という複数の素材が組み合わされた製品です。
タイヤから回収されるスチールワイヤーを含め、鉄が繰り返し資源として循環できる仕組みについては、以下の「鉄のサーキュラーエコノミー|事例や鉄鋼製品一覧、リサイクル性も」の記事で解説しています。

(2)不適正処理を防ぐことが排出事業者の責任になる
廃タイヤは、不法投棄・不適正保管の事案が発生しやすい廃棄物として知られています。
処理実績を記録し、再資源化の内容まで把握しておくと、環境報告や取引先への説明材料としても活用できます。
環境省の図では、産業廃棄物の不法投棄の新規判明件数が平成10年度の1,197件から令和6年度の106件へ、投棄量が42.4万トンから1.4万トンへ減少しています。一方、直近年度も100件を超えており、委託先の許可確認や処理完了確認が不要になったわけではありません。本図は、適正な委託管理が現在も必要であることを示します。対象は廃タイヤに限らず、原則として1件10トン以上の事案です。投棄量は大規模事案の有無で年度ごとに大きく変動します。
7.まとめ
事業活動で発生した使用済みタイヤは、産業廃棄物の廃プラスチック類として処理します。ゴム製品でありながら「ゴムくず」ではない点は、委託契約書やマニフェストの記載に直結するため、正確に押さえておく必要があります。
実務上の注意点は引き取り先です。2011年3月に従来の制度が廃止されており、産業廃棄物収集運搬業の許可を持たないタイヤ販売店は、他の事業者の廃タイヤを扱えません。タイヤ交換や販売に伴う引き取りは可能ですが、保管分をまとめて処分する場合は許可業者への委託が必要になります。
一方、廃タイヤは再資源化が高い水準で進んでいる廃棄物でもあります。JATMAの集計では2024年の有効利用率は99.6%で、切断・破砕を経て、スチールコードは鉄資源に、ゴム分は熱利用や材料利用へと振り分けられています。処分の前に更生タイヤとしての再利用可否を確認することも、大型タイヤを扱う事業者にとっては有効な選択肢です。
サーキュラーエコノミーへの移行を進める上では、自社の資源循環の実態を把握し、具体的なスキームを設計することが重要です。車両や設備の更新に伴って発生する鉄を主原料とする製品・設備の廃棄や資源循環にお困りの場合は、五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」にご相談ください。







