飲食店や施設で使用した券売機は、事業活動に伴って排出される機器として産業廃棄物の扱いを受けるため、リサイクルにあたっては所有者の確認と撤去前の準備を済ませたうえで、本体を売却・資源循環・廃棄のいずれかのルートへ引き渡す必要があります。券売機は現金や売上データを扱う機器であり、内部の現金や情報の管理を誤ると、処理そのものとは別の損失や情報流出につながります。撤去前の確認手順を固めたうえで、処理方法ごとの費用と経営上の効果を同じ前提で比較することが、適切な判断につながります。
五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、返品や使用済み製品など、事業の中で定期的に発生するモノの資源循環を一括で支援するサービスです。回収したモノは状態に応じて再販・リユースを優先し、新たな製品の製造や廃棄に伴う排出を抑えます。鉄を含む製品・設備については、国内製鉄所へ還流させるクローズドループの構築まで対応し、鉄スクラップを原料として生かすことで脱炭素にもつなげます。店舗の閉店や改装、券売機の入れ替えに伴う資源循環を検討する場合は、ぜひご相談ください。

1.券売機のリサイクル前に確認する所有区分と法的区分

券売機のリサイクルでは、機器の所有者が誰か、排出する物が法令上どう扱われるかによって、処理を決められる主体と依頼先が変わります。券売機はリース契約で導入されている場合があり、店舗の判断だけで処分を進めると契約違反になります。処理方法を検討する前に、機器単位で所有区分と法的区分を確定させることが実務の起点です。
(1)リース契約か自社所有かの確認
リース契約で導入した券売機は所有権がリース会社にあるため、利用企業が売却やリサイクルを判断することはできません。リース期間が終了した場合は、リース契約の定めに従って物件をリース会社に返還し、リース期間満了後に再リースへ移行している場合も所有権は利用企業に移転しません。
公益社団法人リース事業協会の整理では、利用企業は自らの責任と負担で物件を原状回復してリース会社に返還することがリース契約で規定されているとされています。閉店に伴って契約期間の途中で使用をやめる場合は、リース契約は原則として中途解約ができず、解約する場合は残リース料相当額の支払いが必要になるため、閉店の計画段階で契約内容を確認しておく必要があります。
実務では、機器本体に貼付されたリース会社の表示、固定資産台帳、リース契約書、保守契約書をもとに、機器ごとの所有区分と契約期間を確認します。リース品は満了日と返還手続きの期限を、自社所有の機器は取得時期と保守契約の状況を一覧に記載し、以降の手続きを分けて進めます。
参考:https://www.leasing.or.jp/information/finance.html
参考:https://www.leasing.or.jp/studies/docs/20200327.pdf

(2)産業廃棄物としての扱いと許可業者への委託
事業活動で使用した券売機を廃棄する場合、本体は廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)上の産業廃棄物として扱われます。券売機は家庭用のエアコン・テレビ・冷蔵庫・洗濯機を対象とする特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)の対象品目に含まれず、自治体の粗大ごみとして排出することもできません。
事業所から排出される廃棄物の収集運搬を委託する場合は、産業廃棄物収集運搬業の許可を持つ業者に依頼する必要があります。自治体は、無許可の回収業者による不適正な事案が発生した場合に、排出者が罪に問われたり、廃棄物の撤去費用を請求されたりする場合があると注意を呼びかけています。インターネット広告で店舗機器の回収をうたう事業者の中には、古物商の許可のみを持ち、廃棄物の収集運搬の許可を持たない事業者も含まれます。
担当者は依頼先を選ぶ前に、産業廃棄物収集運搬業と処分業の許可証の写しを取得し、許可品目と許可地域、有効期限が委託内容に合致しているかを確認します。売却を前提とする業者であっても、買取が成立しなかった機器を廃棄物として引き取る場合は許可が必要になるため、許可の有無を事前に確認しておきます。
参考:https://www.city.toyota.aichi.jp/kurashi/gomi/gomi/1059300.html
参考:https://www.town.shime.lg.jp/soshiki/8/gomimukyokakaishu.html
(3)有価物として売却する場合の注意点
中古機や金属資源として有償で取引される券売機は、有価物として廃棄物処理法の規制を受けません。ただし、廃棄物か有価物かは、物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無、占有者の意思を総合的に勘案して判断され、売買契約の形式をとっていることだけで有価物と判断されるわけではありません。
実務上の論点になるのは運搬費の扱いです。排出事業者が運搬費を負担し、その額が売却代金を上回る場合は、引渡しに係る事業全体で排出事業者側に経済的損失が生じているため、収集運搬の段階では廃棄物処理法が適用されます。券売機は重量のある機器であり、設置場所や搬出経路によっては撤去・運搬の費用が買取額を上回る場合があります。
見積もりの段階で買取額と撤去費・運搬費を分けて提示を受け、差引後の収支を確認します。収支がマイナスになる場合は、許可を持つ収集運搬業者への委託と委託契約書の締結、マニフェストの交付を前提に手配を進めます。
参考:https://www.pref.osaka.lg.jp/o120060/jigyoshoshido/report/faq_2.html
2.券売機の撤去前に行う現金・データ・付帯機器の確認

券売機は、紙幣や硬貨を収納し、販売の記録を保持し、決済端末などの周辺機器と接続して使われる機器です。どの処理ルートを選ぶ場合でも、本体が社外に出る前に、内部に残る現金と情報、接続された機器の扱いを整理しておく必要があります。撤去前の確認は、処理方法の手配と並行して進める工程として位置付けます。
(1)内部の現金と金庫・鍵の管理
券売機の内部には、紙幣や硬貨を収納する金庫部分や釣銭用の硬貨が残っている場合があります。撤去の前に、紙幣収納部と硬貨収納部、釣銭補充部を開けて現金をすべて回収し、回収額を売上の締め処理と照合して記録します。
金庫部分の鍵や扉の暗証番号は、機器の引渡しとあわせて管理方法を決めておく必要があります。売却する場合は、鍵の引渡しの有無や暗証番号の初期化を買取業者と取り決めます。廃棄や資源化に回す場合は、施錠されたまま引き渡すと解体作業で扉の破壊が必要になるため、開錠した状態で引き渡すか、鍵を同梱するかを依頼先と調整します。
複数店舗で同時に撤去する場合は、現金回収の担当者、回収日時、回収額を店舗ごとに記録し、撤去当日に現金が残っていないことを搬出前に確認する手順を定めておきます。現金の確認記録は、機器一覧と紐づけて保存します。

(2)売上データと設定情報の消去
券売機には、商品別の販売数や時間帯別の売上などの販売データ、商品名や価格の設定情報が保存されています。機種によっては、POSシステムや本部のサーバーとの接続設定、管理用のパスワードも保存されており、第三者に渡ると営業上の情報の流出や、社内システムへの不正な接続につながるおそれがあります。
会員機能やポイント機能などで顧客の情報を扱っている場合は、個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)に基づく安全管理措置の対象になります。個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)では、個人データを削除し、または個人データが記録された機器を廃棄する場合は、復元不可能な手段で行うことが示されています。
担当者は、販売データを本部のシステムや外部媒体に保存したうえで、機器の初期化や設定情報の消去を行います。消去の方法は機種ごとに異なるため、保守契約を結んでいる販売店やメーカーに手順を確認し、自社で実施できない場合は消去作業を依頼して、実施日と方法を記録します。本部サーバーとの接続を使っていた場合は、サーバー側でも当該機器のアカウントや接続設定を無効にしておきます。
参考:https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/
(3)キャッシュレス決済端末と周辺機器の契約確認
券売機にクレジットカードや電子マネー、QRコード決済の端末が組み込まれている場合、端末は決済事業者や決済代行事業者から貸与されている場合があります。貸与品の端末は券売機本体とは所有者が異なるため、本体と一緒に売却や廃棄をすることはできません。
決済端末の扱いは、決済サービスの契約内容によって決まります。撤去の前に契約書や利用規約で端末の所有者と返却の要否を確認し、返却が必要な場合は、決済サービスの解約手続きと端末の返却方法を事業者に問い合わせます。解約の手続きを行わないまま機器を撤去すると、月額費用の請求が続く場合があるため、撤去日と解約日をあわせて計画します。
券売機と接続して使っていた呼出モニターや発券プリンター、専用の設置台などの周辺機器も、本体とは別に所有区分と処理ルートを確認します。周辺機器を含めて一覧化しておくと、撤去範囲の見積もり条件をそろえやすくなり、撤去当日の引渡し漏れも防げます。
図表では、キャッシュレス決済件数が2018年の162.05億件から2023年の342.50億件へ約2.1倍に増え、2023年はクレジットカード178.66億件、コード決済93.61億件、電子マネー61.56億件、デビットカード8.67億件となっています。決済手段の多様化は、券売機本体と決済端末の所有者・契約先が分かれる場面が増えることを示し、撤去前の返却要否確認を裏付けます。件数は国内全体の値であり、券売機経由に限らず、店舗業態や契約形態によって端末構成は異なります。
参考:https://paymentsjapan.or.jp/wp-content/uploads/2024/12/roadmap2024.pdf#page=7
3.券売機のリサイクル方法の比較|売却・資源循環・廃棄

券売機の処理方法は、機器の製造年や状態だけでなく、新紙幣への対応状況、設置場所の搬出条件、閉店に伴う他の設備の撤去の有無によって適否が変わります。費用は撤去から引渡しまでを含めた総額で評価する必要があり、買取額や処分費だけを比べても判断はできません。手続きの負担と経営上の効果もあわせて比較することで、自社に合った処理方法を判断できます。
| 比較項目 | 売却(中古機) | 資源循環(金属資源) | 廃棄(産業廃棄物) |
|---|---|---|---|
| 対象となる機器 | 製造から年数が浅く需要が見込める自社所有機 | 再使用が難しく金属の回収が見込める自社所有機 | 再使用・資源化が難しい機器や部材 |
| 撤去前の準備 | 現金回収、データ消去、鍵・暗証番号の取り決め | 現金回収、データ消去、開錠または鍵の同梱 | 現金回収、データ消去、開錠または鍵の同梱 |
| 主な書類 | 売買契約書、取引記録、消去記録 | 売買記録、消去記録(逆有償時は委託契約書・マニフェスト) | 委託契約書、マニフェスト、消去記録 |
| 費用構造 | 買取額から撤去費・運搬費を差し引いた収支 | 資源価値と撤去費・運搬費・処理費の相殺 | 撤去費・運搬費・処分費の合計 |
| 経営上の効果 | 処理費の抑制、機器の再使用 | 処理費の抑制、国内資源循環・CO2削減の説明材料 | 許可業者による適正処理の記録 |
(1)中古券売機として売却する
製造から年数が浅く稼働状態の良い自社所有の券売機は、店舗機器の買取業者などに売却する選択肢があります。中古品として有償で取引され、取引に経済的合理性がある場合は有価物として扱われ、産業廃棄物の委託契約やマニフェストの手続きは発生しません。
買取の可否と金額は、メーカー、機種、製造年、稼働状態、紙幣や硬貨の識別部の状態、搬出条件によって変動します。2024年7月3日に新しい日本銀行券の発行が始まったことを受け、現金を扱う機器では新紙幣に対応するための改修や入れ替えが行われてきました。新紙幣に対応していない機種は、改修の可否や費用によって中古機としての需要が変わるため、対応状況を査定前に確認して買取業者に伝えます。
売却先の選定では、中古品の買取を業として行う事業者が古物営業法に基づく古物商の許可を受けているかを確認します。あわせて、データ消去の実施者と方法、鍵や暗証番号の引渡し条件を契約前に取り決め、買取額と撤去費・運搬費を分けた見積もりで差引後の収支を確認します。
参考:https://www.boj.or.jp/note_tfjgs/note/valid/issue.htm

(2)金属資源として資源循環ルートに回す
再使用が難しい券売機でも、筐体や金庫部分に使われる鋼板は金属資源として再資源化できる可能性があります。券売機は、現金を保管するための堅牢な筐体と金庫構造を持ち、紙幣や硬貨の処理ユニット、電子基板、表示装置などで構成されるため、解体・選別の工程で素材ごとに分けて資源化します。
費用面では、金属の資源価値が撤去費や運搬費と相殺される構造になります。資源価値は金属の種類と重量、市況によって変わり、樹脂部品や表示装置など資源化の工程が異なる部分の処理費も発生するため、処分費の単価だけでは比較できません。見積もり依頼時は、台数、機種、概算重量、周辺機器の範囲をそろえて提示し、資源化分と処理分の内訳を確認します。
運搬費が売却代金を上回る場合は、収集運搬の段階で廃棄物処理法が適用されるため、許可を持つ収集運搬業者への委託とマニフェストの交付が必要です。資源化の引渡し先を選ぶ際は、回収した金属がどの工程を経て再利用されるかを確認しておくと、後述する環境報告や取引先への説明に活用できます。
(3)産業廃棄物として処理を委託する
損傷が大きい機器や資源化ルートで受け入れられない部材は、産業廃棄物として許可業者に処理を委託します。排出事業者は収集運搬業者・処分業者とそれぞれ書面で委託契約を締結し、産業廃棄物管理票(マニフェスト)を交付します。委託契約書は契約終了日から5年間、処分業者から返送されたマニフェストの写しは5年間保存します。
費用は撤去費、収集運搬費、処分費で構成され、機器の大きさと重量、台数、設置場所、搬出経路、作業時間帯、地域によって変動するため、一律の相場で判断することはできません。見積もりを比較する際は、各費目の含有範囲と、周辺機器や設置台を回収対象に含むかをそろえて確認します。
廃棄を選ぶ場合でも、機器全体を一括で処分するのではなく、金属部分を資源化ルートへ分けることで処分量を抑えられる場合があります。閉店に伴って厨房機器や店舗什器もあわせて撤去する案件では、廃棄一括の見積もりと、売却や資源化を組み合わせた見積もりを並行して取得し、総額で比較することで判断の精度が高まります。
参考:https://www.env.go.jp/content/900479496.pdf
環境省の令和4年度実績では、産業廃棄物3億7,406.9万トンのうち、再生利用は2億268.5万トン(54.2%)、減量化は1億6,236.3万トン(43.4%)、最終処分は902.1万トン(2.4%)です。処理は、直接再生利用・中間処理・直接最終処分に分かれ、中間処理後にも再生利用と最終処分へ分岐します。券売機を一括廃棄せず、金属部分を選別して資源化する意義を示す図です。ただし全国の全産業廃棄物の集計であり、券売機固有の歩留まりや処理費を示すものではありません。
参考:https://www.env.go.jp/content/000397757.pdf#page=37
4.券売機のリサイクルを進める実務手順

券売機のリサイクルでは、契約の確認、現金とデータの処理、周辺機器の返却を撤去日までに完了させる必要があります。閉店や改装では営業終了から明け渡しまでの期間が限られるため、撤去日から逆算した段取りを本部と店舗で共有しておくことが重要です。
(1)対象機器と契約状況の一覧化
最初に行うのは、処理対象となる券売機と周辺機器を機器単位で一覧化する作業です。一覧には、設置店舗、メーカー、機種、製造番号、所有区分、リース会社とリース満了日、保守契約の有無と契約先、決済端末の有無と契約先、新紙幣への対応状況、概算重量を記載します。
リース品は満了日から逆算して返還の申出期限を確認し、閉店に伴う中途解約の場合は残リース料の扱いを確認します。保守契約や決済サービスの契約は、撤去日にあわせて解約できるよう解約の申出期限を一覧に記載しておきます。
自社所有の機器は、一覧をもとに売却・資源循環・廃棄のいずれを第一候補とするかを仮決定します。製造年が新しく新紙幣に対応している機器は売却、再使用が難しい機器は資源化、損傷が大きい機器は廃棄というように判断基準を社内で定めておくと、店舗ごとの判断のばらつきを防げます。
参考:https://www.leasing.or.jp/information/finance.html

(2)撤去前の現金・データ・付帯機器の処理
撤去日の前までに、現金の回収、販売データの保存、データ消去、決済端末の返却準備を完了させます。作業の順序は、最終営業日の締め処理で売上と現金を確定させ、販売データを保存したうえで、現金の回収とデータ消去を行う流れにすると、記録の照合がしやすくなります。
データ消去を自社で行う場合は、実施日、方法、作業者、対象機器の製造番号を記録します。販売店やメーカーに依頼する場合は、作業報告書に対象機器と作業内容が記載されているかを確認し、機器一覧と照合して保存します。決済端末は、事業者の指示に従って取り外しと返却を行い、返却の記録を残します。
撤去当日は、搬出前に現金が残っていないこと、金庫部分の開錠状態または鍵の同梱、データ消去の完了を確認します。確認項目をチェックリストとして店舗に配布しておくと、担当者が異なる複数店舗でも同じ水準で撤去を進められます。
(3)搬出条件をそろえた見積もりと引渡し
見積もりは、搬出条件をそろえたうえで複数の処理方法について取得します。搬出条件としては、設置場所、床への固定の有無、搬出経路の幅、段差や階段の有無、車両の駐車位置、作業可能な時間帯を整理し、設置台や周辺機器を含めるかも明記します。
見積もり項目は、撤去費、運搬費、処分費、買取額または資源価値の区分で提示を受け、差引後の総額で比較します。閉店で他の設備も撤去する場合は、券売機を単独で依頼する見積もりと、店舗設備とまとめて依頼する見積もりを比較し、各見積もりに含まれる工程を一覧にまとめて社内承認に使える形にしておきます。
引渡し当日は、確認項目を満たした機器から搬出し、売却分、資源循環分、廃棄分に区分して引き渡します。撤去完了後は機器一覧に処理方法、引渡し日、書類の保存場所を追記し、売買記録、消去記録、委託契約書、マニフェストの写しなどを機器単位で紐づけて保管します。
5.券売機を資源循環に回す経営上のメリット

券売機の資源循環は、処理費用の抑制にとどまらず、脱炭素や情報開示への対応を進める材料になります。券売機は機器の更新や新紙幣への対応、店舗の閉店や改装に合わせて入れ替えが発生するため、単発の処理ではなく継続的な仕組みとして設計することで、経営上の効果を積み上げられます。
(1)鉄スクラップの資源価値と国内資源循環
券売機は、現金を保管するための筐体や金庫部分に鋼板が使われており、再使用できない機器も、解体・選別を経て鉄スクラップとして回収できます。回収された鉄スクラップは電炉製鋼の原料として再び鋼材に生まれ変わるため、店舗機器の入れ替えを国内の資源循環につなげられます。
鉄スクラップは国内で調達できる製鋼原料であり、輸入に頼る鉄鉱石や石炭の使用を抑える点で、資源安全保障の観点からも意味を持ちます。閉店や改装では、券売機とあわせて厨房機器や店舗什器など鉄を含む設備が一度に撤去されるため、撤去物全体を資源循環の対象として設計することで店舗単位での資源化の効果が大きくなります。
なかでも鉄は、カーボンニュートラルの潮流のなかで電炉化が加速し、質の高い鉄スクラップの国内循環が戦略資源として注目されています。鉄のサーキュラーエコノミーへの具体的な取り組みについては、以下の記事で解説しています。

参考:https://www.tokyo-np.co.jp/article/399662
令和4年度の産業廃棄物全体の再生利用率は54.2%ですが、金属くずは95.7%で、がれき類の96.0%に次ぐ高い水準です。鋼板を含む券売機について、再使用できない場合でも解体・選別により金属資源へ回す余地が大きいことを裏付けます。ただし、この95.7%は全国の「金属くず」全体の値であり、券売機単体のリサイクル率ではありません。樹脂、基板、表示装置の混在、汚れ、受入条件、解体精度によって実際の資源化率は変動します。
参考:https://www.env.go.jp/content/000397757.pdf#page=40
右側の電炉粗鋼生産量を見ると、日本は1995年の3,230万トンから2025年の2,080万トンへ減少した一方、中国は2016年の5,070万トンから2025年の1億180万トンへ拡大しています。世界的な電炉鋼の広がりと、日本でも粗鋼の約4分の1を電炉鋼が占める現状は、鉄スクラップが既に主要な製鋼原料であることを示します。ただし生産量は鋼材需要、設備構成、電力価格などにも左右され、券売機の回収量だけで増減するものではありません。
参考:https://www.fudenkou.jp/about/post_2.html

(2)カーボンニュートラルとScope3への対応
鉄スクラップを原料とする電炉法は、鉄鉱石を還元する工程を経ないため、高炉法と比べて鋼材製造時のCO2排出を大きく抑えられます。みずほ銀行産業調査部の分析では、直近の排出原単位について、高炉メーカーが粗鋼1トンあたり約2トンのCO2を排出するのに対し、電炉メーカーは約0.3トンに抑えられていると整理されています。
自社の排出量算定においても、処理方法の記録は重要な意味を持ちます。サプライチェーン排出量のうち、事業から出る廃棄物の処理に伴う排出はScope3のカテゴリ5に区分されます。券売機や店舗設備の排出量を処理方法ごとに把握しておくことで算定の根拠を示しやすくなり、再使用や資源化への切り替えによる取り組みを社内外に説明できます。
実務では、撤去案件ごとに売却分、資源化分、廃棄分の台数と重量を記録し、年度単位で集計できる形にしておきます。店舗の出退店計画や設備更新の計画段階から資源循環ルートを組み込んでおくと、カーボンニュートラルに向けた中期目標の進捗管理にも活用できます。
参考:https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/industry/sangyou/pdf/mif_246.pdf
(3)ESG情報開示とサーキュラーエコノミーへの対応
券売機の再使用や資源化の実績は、ESG情報開示における資源循環の取り組みとして活用できます。統合報告書やサステナビリティレポートで廃棄物の削減や再資源化の状況を示す場合、機器単位の処理記録と重量データが開示内容の根拠になります。
券売機の処理では、現金とデータの管理記録と、資源化の記録を機器単位で一体的に管理できます。ガバナンスの観点では撤去時の情報管理と許可業者への適正な委託が環境の観点では資源循環の実績が問われるため、両方の記録を同じ台帳で運用することで、取引先や金融機関から取り組み状況を確認される場面でも一貫した説明が可能になります。
サーキュラーエコノミーの観点では、製品を使用後に廃棄するのではなく、再使用や再資源化によって資源を経済活動の中で循環させることが求められます。多店舗展開する事業者では、券売機を含む店舗設備の処理について判断基準と記録の様式を社内規程として統一しておくことが、循環型の設備管理へ移行する実務上の要点です。
6.まとめ
券売機のリサイクルでは、リース契約か自社所有かを最初に確認し、リース品はリース会社への返還、自社所有品は売却・資源循環・廃棄のいずれかで処理します。廃棄物として排出する場合は産業廃棄物の許可業者に委託する必要があり、許可を持たない回収業者に引き渡すと排出者の責任が問われる場合があります。
撤去前には、内部の現金の回収、販売データの保存と消去、決済端末など貸与品の返却を完了させます。そのうえで、搬出条件をそろえた見積もりにより処理方法を総額で比較し、現金とデータの管理記録と資源化実績を機器単位で一体管理することで、処理費用の抑制とカーボンニュートラルやESGへの対応を両立させる判断が可能になります。
券売機のリサイクルを効率よく進めるには、定期的に発生している返品や使用済み製品の量や状態、その行き先を把握し、廃棄以外の出口も含めた具体的なスキームを設計することが重要です。保管スペースの不足や、廃棄か再販かの判断、複数の処分業者の管理に負担を感じている場合は、五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」にご相談ください。







