リチウムイオン電池のリサイクル|産業廃棄物としての扱い、回収ルートと処理工程

事業所や設備で使用したリチウムイオン電池は、家庭から出る電池とは処理の枠組みが異なります。事業活動に伴って排出された電池は産業廃棄物にあたり、自治体の回収も店頭の回収ボックスも原則として利用できません。許可を持つ処理業者に委託し、マニフェストを交付する手続きが必要です。

もうひとつの論点が火災です。リチウムイオン電池が他の廃棄物に混入したまま搬出されると、破砕や圧縮の工程で発火します。廃棄物処理施設での火災事故は増加傾向にあり、排出事業者にとっては、委託基準違反のリスクと事故を起こした場合の責任の両方が生じます。

五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、返品や使用済み製品など、事業の中で定期的に発生するモノの資源循環を一括で支援するサービスです。回収したモノは状態に応じて再販・リユースを優先し、新たな製品の製造や廃棄に伴う排出を抑えます。鉄を含む製品・設備については、国内製鉄所へ還流させるクローズドループの構築まで対応し、鉄スクラップを原料として生かすことで脱炭素にもつなげます。現場から出る発生材全体の回収ルートを整理したい場合は、ぜひご相談ください。

目次

1.リチウムイオン電池は産業廃棄物になるか

処理の検討は、廃棄物処理法上の扱いを確定させることから始まります。この章では、事業所から排出する電池がどの枠組みに乗るのかを整理します。

(1)事業活動で使用した電池は産業廃棄物にあたる

事業所や設備で使用したリチウムイオン電池は、産業廃棄物として処理する必要があります。

廃棄物処理法上、事業活動に伴って生じた廃棄物は排出事業者の責任で適正に処理しなければならないためです。家庭から出る電池は自治体の回収や店頭の回収ボックスの対象になりますが、事業系の電池はこれらのルートに乗せられません。

対象となるのは、業務用の電動工具、コードレス機器、ノートパソコンやタブレット、業務用のモバイルバッテリー、AGVや搬送ロボットの動力用電池、非常用照明や誘導灯の内蔵電池、定置用の蓄電システムなどです。機器に組み込まれたまま廃棄する場合も、電池を含む製品として扱いが変わります。

処理を委託する場合は、産業廃棄物収集運搬業と処分業の許可を持つ事業者を選定し、書面で委託契約を締結したうえでマニフェストを交付します。

参考:https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/resource/recycle/battery/sanpai

(2)品目としては金属くずと廃プラスチック類の混合物になる

リチウムイオン電池を産業廃棄物として委託する場合、単一品目ではなく混合物として扱われます。

構成部材ごとに区分が分かれるためです。正極・負極の集電体や外装缶の金属は金属くず、セパレータや外装のフィルム、樹脂ケースは廃プラスチック類に該当します。機器一体型の製品では、これに基板やガラスくずが加わることもあります。

構成部材産業廃棄物としての区分
外装缶・集電体(アルミ・銅・鉄)金属くず
セパレータ・ラミネート外装・樹脂ケース廃プラスチック類
電解液(有機溶媒)廃油等(処理事業者の工程で扱われる)
機器一体型に含まれる基板・筐体金属くず・廃プラスチック類ほか

鉛蓄電池と異なり、リチウムイオン電池そのものは特別管理産業廃棄物に指定されていません。ただし指定がないことと、安全に扱えることは別の問題です。内部に可燃性の電解液を含み、短絡すれば発熱・発火に至るため、受け入れ体制のある事業者でなければ処理できません。

(3)他の廃棄物に混入させると委託基準違反になる

処理上の最大の論点は、電池を他の廃棄物と分けられているかです。

リチウムイオン電池の処理を委託していないにもかかわらず、引き渡した廃棄物のなかに電池が混入していた場合、委託基準違反として処罰の対象になります。加えて、収集運搬車両や処理施設の破損、作業員の安全にも直結します。

混入が起きやすいのは、機器に内蔵された電池です。コードレス掃除機、電動工具、ワイヤレスイヤホン、加熱式たばこ、モバイルバッテリーは、外観から電池の有無を判断しにくく、通常の事務所ごみや粗大品に紛れ込みます。

オフィスの移転や拠点の統廃合では、この種の機器がまとめて排出されます。撤去作業の前に、電池を含む機器を抜き出す手順を決めておいてください。

環境省資料では、令和3年度の火災被害総額を約96億~108億円と推計しています。棒グラフの内訳は、災害共済金支払い額35.2億円、自治体補填額38.54億円、施設停止中の処理委託費27.51億円です。資料注記の実績値は令和4年度約14億円、令和5年度約26億円で、年度差も大きくなっています。事故は設備修繕だけでなく代替処理費も生じさせるため、電池の混入防止は委託基準の順守と損失回避の双方に関わります。なお、一般廃棄物処理施設等のデータで、産業廃棄物処理施設の実績ではありません。

参考:https://lithium.env.go.jp/recycle/waste/lithium_1/pdf/20260514_genjyo_01.pdf#page=4

(4)JBRCなどの回収ルートには利用条件がある

事業者が利用できる回収の仕組みもありますが、対象範囲は限定されています。

小形充電式電池については、一般社団法人JBRCが回収・再資源化の仕組みを運営しています。事業者も排出者登録を行えば利用できますが、対象となるのはJBRC会員企業が製造・販売した電池に限られ、会員企業以外の製品やメーカー不明品は対象外です。

対象外となる条件はほかにもあります。大型の産業用蓄電池、定置用蓄電装置、電気自動車用のバッテリー、破損・膨張・液漏れのある電池、外装が破れたラミネートタイプは受け入れられません。これらは産業廃棄物として処理業者に委託するか、メーカーの個別窓口に相談することになります。

自社の電池がどちらに該当するかは、リサイクルマークの有無とメーカー名から確認します。判断がつかない場合は、産業廃棄物としての委託を前提に検討したほうが確実です。

参考:https://www.jbrc.com/recovery_base/disposal_method/

(5)2026年4月の法改正で回収の枠組みが広がった

制度面では、回収を義務づける範囲が拡大しています。

2026年4月に施行された改正資源有効利用促進法により、モバイルバッテリー、携帯電話、加熱式たばこ機器が指定再資源化製品に追加されました。一定規模以上の製造事業者・輸入販売事業者に、回収と再資源化が義務づけられています。廃棄物処理施設での火災が全国で相次いだことが背景にあります。

義務を負うのはメーカーや輸入販売事業者であり、排出事業者に直接の義務が生じるものではありません。ただし、回収窓口が整備されることで、これまで引き取り先が見つかりにくかった製品の選択肢が広がります。

制度は段階的に対象を広げる方向で検討が進んでいます。自社で扱う機器が対象に含まれるかは、購入元やメーカーの回収窓口とあわせて定期的に確認してください。

2.製品区分ごとに分かれる回収ルート

リチウムイオン電池は、製品の区分によって相談先が変わります。自社の電池がどこに該当するかで、費用も手続きも変わります。

(1)小形充電式電池はJBRCの回収が選択肢になる

電動工具や事務機器に使われる小形の充電式電池は、JBRCの回収を利用できる場合があります。

対象となるのは、JBRC会員企業製で、電池の種類が明確に表示されており、破損や膨張のないものです。排出者登録を行うと回収拠点としての取り扱いが可能になり、種類ごとに分けてペール缶に収納する方法で排出します。

このルートを利用する場合、マニフェストの交付は不要です。ただし、対象外の電池が混じっていると受け入れられないため、種類とメーカーの選別が前提になります。

JBRCの回収量は、2020年の1,986トンから2024年には1,392トンとなり、このうちリチウムイオン電池は730トンから510トンへ変化しています。実際に相当量が専用ルートで回収されていることは、小形充電式電池を区分してJBRCの利用可否を確認する意義を裏付けます。ただし、2020~2022年の総量にはリコール品がそれぞれ184トン、63トン、10トン含まれます。また、JBRC会員企業製の対象電池に限る実績で、破損・膨張品や会員外品は含みません。

参考:https://lithium.env.go.jp/recycle/waste/lithium_1/pdf/07_setsumeikai_file.pdf#page=11

(2)定置用蓄電システム・ポータブル電源は販売者やメーカーに相談する

事業所に設置した蓄電システムやポータブル電源は、JBRCの対象外です。

これらは電池単体ではなく機器として設置されているため、取り外しに電気工事を伴うことも多く、販売者または電池メーカーへの相談が基本になります。設置工事を担当した事業者に、撤去と処分まで含めて依頼できる場合があります。

機器本体と電池で処理ルートが分かれる点にも注意してください。電池はメーカーが引き取り、筐体や制御部は排出事業者側で産業廃棄物として処理する形になるケースがあります。

参考:https://www.baj.or.jp/battery/recycle/disposal.html

(3)産業用・大型の蓄電池は処理業者への委託が中心になる

AGVや搬送機器、産業機械に搭載された大型の電池は、産業廃棄物としての委託が中心です。

容量が大きく、パック単位で構成されているため、放電と解体に専用の設備が必要になります。対応できる処理業者は限られており、リチウムイオン電池を明示的に取り扱っている事業者を選ぶ必要があります。

機器メーカーが回収に対応している場合もあります。導入時の契約に廃棄時の対応が含まれているかを確認すると、手配の手間を減らせます。

(4)車載用の電池は自動車リサイクルの枠組みで扱われる

電動車に搭載された電池は、別の制度の対象です。

自動車として廃車される場合は自動車リサイクル法の枠組みに乗り、電池も車両とともに処理されます。一方、車両から取り外した状態で排出する場合は、電池単体としての取り扱いになります。

社用車やフォークリフトの入替では、車両ごと引き渡すのか電池だけを排出するのかで手続きが変わります。取り外しを伴う場合は、引き取り先を先に確保してください。

環境省委託報告書の予測では、EVの新車台数は2020年の数百万台規模から2050年には約1億2,000万台へ、廃車台数も同時期にほぼゼロの水準から約5,000万台へ増える形で示されています。車載電池の排出増加が見込まれるため、社用EVの更新時には、車両ごと引き渡すか、取り外した電池として扱うかを事前に決める必要があります。なお、各種公開資料から作成した将来予測であり、日本国内の実績値ではありません。市場普及や車両寿命により結果は変動します。

参考:https://www.env.go.jp/content/000211463.pdf#page=10

(5)区分ごとにルートと費用が変わる

同じリチウムイオン電池でも、製品区分によって結果が変わります。

製品区分主な相談先手続き
小形充電式電池(会員企業製・正常品)JBRC排出者登録・マニフェスト不要
小形充電式電池(対象外品・破損品)産業廃棄物処理業者委託契約・マニフェスト
定置用蓄電システム・ポータブル電源販売者・電池メーカーメーカー所定の申込
産業用・大型蓄電池処理業者またはメーカー委託契約・マニフェスト
車載用(車両ごと)自動車リサイクルの枠組み引取業者への引渡し

現場では複数の区分が同時に発生します。まとめて1社に依頼するより、区分ごとにルートを分けたほうが総額を抑えられる場合があります。

3.リチウムイオン電池がリサイクルされる仕組み

回収された電池がどのように再資源化されるかを把握しておくと、委託先に確認すべき点が明確になります。

(1)処理の起点は放電になる

工程の最初に行われるのが、電池を放電させる作業です。

使用済みの電池にも電気エネルギーが残っており、そのまま破砕すれば短絡による発火に直結します。放電によって残存エネルギーを抜くことが、以降のすべての工程の前提になります。

この工程があるため、リチウムイオン電池は金属くずとして一般的なスクラップのラインに投入できません。専用の設備と手順を持つ事業者でなければ受け入れられない理由は、ここにあります。

(2)解体・破砕してブラックマスを取り出す

放電後の電池は、破砕と選別によって中間原料に加工されます。

パックやモジュールを解体し、セルを破砕したうえで選別すると、正極材と負極材の粉末が濃縮された物質が得られます。これがブラックマスと呼ばれるもので、コバルト、ニッケル、リチウムなどを含みます。

処理方式は事業者によって異なります。熱処理を経てから破砕する方式のほか、不活性雰囲気下で破砕して低温真空乾燥で電解液を回収する方式など、熱処理に頼らない前処理技術の開発も進んでいます。

(3)ブラックマスから金属を回収する

ブラックマスは、製錬工程を経て金属に戻ります。

湿式では、硫酸で浸出したうえで溶媒抽出によりコバルトとニッケルを分離し、電池材料として使える硫酸塩の形まで精製します。乾式では、溶融還元によって銅・ニッケル・コバルトを含む合金とリチウムを含むスラグに分離し、合金を溶解して回収します。

国内では非鉄製錬各社がこの領域に取り組んでおり、コバルト・ニッケルに加えてリチウムの回収技術も実用化が進んでいます。リチウムを乾式スラグから高純度の化合物として回収する技術も確立されています。

参考:https://mric.jogmec.go.jp/reports/current/20230904/178929/

(4)筐体側の金属も同時に回収される

回収されるのは、電池材料の金属だけではありません。

集電体のアルミと銅、外装缶の鉄やアルミ、パックのケースや冷却部材の金属も、選別工程で分離されて再資源化の対象になります。パック単位で見ると、重量に占める金属の割合は小さくありません。

産業用の大型電池では、電池そのものより収納ラックや架台のほうが重量が大きい場合もあります。処理の見積もりを取る際は、電池単体と付随する金属をどう区分するかを確認してください。

(5)電池から電池へ戻す水平リサイクルが実用化されている

回収された金属は、再び電池材料として使われます。

国内では、使用済み電池から回収したニッケルを正極材に加工し、電池材料として供給する水平リサイクルが実現しています。品質を落とさずに同じ用途へ戻せるため、資源循環としての完成度が高い形です。

一方で、この循環は原料が国内に留まることが前提になります。使用済み電池やブラックマスが国外に流出すれば、国内の再資源化サプライチェーンには戻りません。この点は後述します。

4.リチウムイオン電池を処分する手順

ここでは、電池の特定から書類の保管まで、排出事業者側の実務を順に整理します。

(1)電池の種類・数量・状態を特定する

処理の検討は、対象となる電池の把握から始まります。

区分によって相談先が変わるため、種類が確定しなければルートも決まりません。電池単体か機器一体型か、小形か産業用か、メーカーとリサイクルマークの表示があるかを確認します。

あわせて記録するのは、個数、容量、保管場所、外観の状態です。膨張、変形、液漏れ、水濡れ、外装の破れがある電池は、受け入れ条件と運搬方法が変わるため、正常品と分けて管理します。

機器に内蔵されたままの電池は、取り外しの可否も確認事項です。取り外せない構造の機器は、機器ごと引き取れる委託先を探すことになります。

(2)端子の絶縁と保管方法を整える

回収までの間、発火させない保管が必要です。

使用済みでも電気エネルギーは残っています。端子どうしや金属との接触による短絡が発火の主な原因になるため、端子部をテープで絶縁したうえで保管します。金属製の容器にそのまま投入する運用は避けてください。

保管場所は、直射日光と高温を避け、可燃物から離れた場所を選びます。膨張した電池はすでに内部で異常が進行しているため、他の電池と分け、密閉しない状態で個別に保管します。

保管量と保管期間も管理対象です。まとめてから搬出したい場合でも、大量の電池を長期間保管すれば、事故が起きたときの被害が大きくなります。回収の頻度を先に決めておいてください。

環境省資料の圧壊試験では、円筒型Aの最大温度がSOC(充電状態)50%付近で約700℃、100%付近で約770℃まで上昇し、SOCが高いほど衝撃時の発火リスクが高まる傾向を示しています。使用済み電池にも残存エネルギーがあるため、端子の絶縁、金属との接触防止、破損品との分離が保管時の要点になります。ただし、これは特定種類の電池を圧壊した試験結果で、通常保管時の温度を示すものではありません。電池を無理に放電させず、メーカーや処理業者の指示に従う必要があります。

参考:https://lithium.env.go.jp/recycle/waste/lithium_1/pdf/20260514_genjyo_01.pdf#page=6

(3)製品区分に応じて回収ルートを選ぶ

種類が確定したら、どのルートに乗せるかを決めます。

JBRCの対象となる電池、メーカーの回収窓口がある機器、産業廃棄物として委託する電池を仕分けます。破損・膨張品は対象外になることが多いため、この段階で別扱いにしておきます。

同じ案件のなかで複数のルートが併存するのが通常の形です。区分ごとの個数を整理したうえで、それぞれの引き渡し時期を計画してください。

(4)許可と処理体制を確認して契約と見積もりを取得する

産業廃棄物として委託する場合は、許可と実際の処理体制の両方を確認します。

確認するのは、収集運搬業と処分業の許可の有無、許可品目に金属くずと廃プラスチック類が含まれているか、そしてリチウムイオン電池を実際に処理できる施設があるかです。許可を持っていても、電池の処理設備がなければ受け入れられません。

見積もりでは、単価の設定方法(個数単位か重量単位か)、機器一体型の扱い、破損品の追加費用、収集運搬費の内訳を確認します。搬出作業の範囲もあわせて決めておきます。

契約は、収集運搬と処分のそれぞれについて書面で締結します。委託した処理の再委託は原則として禁止されているため、各処理業者と直接契約する形が基本です。

(5)マニフェストを交付して保管する

処理の完了は、書類の確認をもって判断します。

産業廃棄物として委託した場合は、マニフェストを交付し、運搬終了・処分終了・最終処分終了の各段階の返送を確認します。紙マニフェストの返送期限は交付日から90日以内、最終処分終了については180日以内で、保存期間は5年間です。委託契約書も契約終了後5年間の保存が必要になります。

JBRCの回収を利用した場合はマニフェストの交付が不要ですが、排出の記録は残しておいてください。区分ごとにどのルートで何個を処理したかを台帳で管理しておけば、後日の照会に対応できます。

参考:https://www.env.go.jp/content/900479496.pdf

5.処理費用を左右する要素

リチウムイオン電池の処理費用は、電池の種類と状態、そして選ぶルートで変わります。ここでは主な変動要因を整理します。

(1)回収ルートの選択

費用に最も大きく影響するのが、どのルートに乗せるかです。

JBRCの対象となる電池であれば、回収に費用は発生しません。メーカーの回収窓口を利用できる機器も、条件を満たせば負担は限定的です。これらに該当しない電池を産業廃棄物として委託する場合に、処分費と収集運搬費が発生します。

対象になる電池まで一括で産廃委託しているケースは実務上よくあります。区分ごとの個数を把握するだけで、負担が変わる可能性があります。

(2)電池の種類と容量

産業廃棄物として委託する場合、電池の種類と容量で単価が変わります。

小形の電池と産業用の大型パックでは、放電と解体にかかる工数が大きく異なります。パック単位で構成された電池は、モジュールへの分解工程が加わるため、重量あたりの単価も上がります。

機器一体型の製品は、電池の取り出し工程が加わるかどうかで扱いが変わります。取り外し済みの電池と機器のままの製品では、見積もりが別になるのが通常です。

(3)電池の状態

外観の状態は、費用と受け入れ可否の双方に影響します。

膨張、変形、液漏れ、水濡れのある電池は、輸送中の発火リスクが高いため、個別梱包や専用容器での搬出が必要になります。受け入れ自体を断られる場合もあるため、状態は事前に写真で共有してください。

正常品と異常品を混ぜて排出すると、全体が異常品の条件で扱われることがあります。保管の段階から分けておくことが、結果として費用を抑えます。

(4)数量と搬出条件

まとまった数量と搬出のしやすさも、単価に反映されます。

数量がまとまるほど1個あたりの収集運搬費は下がる傾向があります。ただし、リチウムイオン電池では長期保管そのものがリスクになるため、他の廃棄物のように「溜めてから出す」判断がそのままは通用しません。

定置用の蓄電システムや産業機械に組み込まれた電池では、取り外しと搬出の作業が費用の大きな部分を占めます。電気工事の要否と、作業範囲の分担を見積もり段階で確認してください。

6.委託先を選ぶ際の確認事項

リチウムイオン電池を実際に処理できる事業者は限られます。ここでは選定時の確認項目を整理します。

(1)許可品目と処理施設を確認する

第一の確認事項は、許可と設備が揃っているかです。

収集運搬業・処分業の許可品目に金属くずと廃プラスチック類が含まれていること、そしてリチウムイオン電池を受け入れる施設を実際に持っていることの両方を確認します。許可の有無だけでは判断できません。

確認の際は、自社の電池の種類、容量、個数、状態を具体的に伝えてください。小形電池には対応できても、産業用の大型パックは受け入れられないという事業者もあります。

(2)放電・解体の工程を持つか確認する

処理の入口として、放電と解体をどこで行うかを確認します。

これらの工程を自社で持つ事業者と、収集運搬のみを担い他社へ引き渡す事業者では、処理の流れが異なります。中間処理の後にどこへ引き渡されるのかを把握しておくと、全体像を確認できます。

膨張品や破損品への対応可否も、この段階で確認します。異常品の受け入れ体制があるかどうかは、事業者によって差が大きい部分です。

(3)ブラックマス以降の再資源化先を確認する

処理の出口として、回収した資源がどこへ行くかを確認します。

ブラックマスの状態で国外へ販売されるのか、国内の製錬事業者で金属まで戻されるのかで、資源循環としての意味が変わります。取引先や親会社から再資源化の実績を問われる立場にある場合は、この違いが説明材料になります。

各国が電池スクラップの確保を強化していることもあり、処理先の所在は今後さらに確認事項として重みを増す領域です。

(4)他の発生材とあわせて相談できるか確認する

最後に確認したいのが、電池以外への対応範囲です。

機器の入替や設備更新では、電池だけでなく、収納ラック、盤の筐体、架台、配線といった金属が同時に発生します。品目ごとに窓口を分けると、その都度の手配と運搬が生じ、全体の効率が下がります。

電池は法令上も安全上も専用のルートが必要ですが、同時に発生する鉄系の発生材まで含めて相談できる体制があれば、運搬の集約によって案件全体の条件が整いやすくなります。

7.リチウムイオン電池を資源循環に回すメリット

ここでは、適正なルートで再資源化した場合の効果を、資源、安全、報告の3つの観点から整理します。

(1)重要鉱物を国内に留められる

リチウムイオン電池は、資源政策の観点から扱いが変わりつつある製品です。

コバルト、ニッケル、リチウムはいずれも供給が特定地域に偏る重要鉱物であり、使用済み電池は国内で確保できる貴重な供給源になります。一方で、環境省の資料では、国内で回収されたリチウムの海外流出が課題として指摘されており、その実態を把握できていないことも示されています。

参考:https://lithium.env.go.jp/recycle/waste/lithium_1/pdf/02_setsumeikai_file.pdf

国外でも同様の動きがあります。米国商務省産業安全保障局は2026年8月27日から、ブラックマスとタングステンくずについて、事実上の輸出制限にあたる措置を施行しました。各国が電池スクラップを国内に囲い込む方向に動いており、国内で処理を完結させる意義は高まっています。

参考:https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/08/eed51697da2bf229.html
参考:https://journal.jogmec.go.jp/content/300600373.pdf#page=3

JOGMEC資料では、世界のリチウム埋蔵量2,600万トンのうち、チリ36%、豪州24%、アルゼンチン10%、中国8%で、上位4か国が計78%を占めます。資源が特定国に偏ることは、使用済み電池を国内の適正処理ルートに乗せ、回収後の再資源化先まで確認する意義を裏付けます。ただし、これはUSGSの2023年版に基づく「埋蔵量」の構成であり、採掘量や精製量のシェアではありません。探鉱の進展や経済性の変化によって埋蔵量評価は更新されます。

(2)排出段階で火災リスクを断てる

適正なルートに乗せることは、事故の防止に直結します。

環境省の資料によると、廃棄物処理時にリチウムイオン電池に起因すると疑われる火災事故等は、令和6年度で9,923件、発煙・発火を含む件数では23,068件にのぼります。発生場所としては、破砕・選別・圧縮などを行う再資源化施設が最も多くなっています。なお、これは一般廃棄物処理実態調査に基づく数値であり、産業廃棄物処理施設での発生件数を示すものではありません。

排出事業者にとって重要なのは、この火災の多くが分別の段階で防げるという点です。混入させないこと、端子を絶縁すること、異常のある電池を分けることは、いずれも排出側でしか実行できません。

(3)処理実績が環境報告の材料になる

処理の記録は、社外への説明資料として使えます。

産業廃棄物として委託した場合はマニフェストの返送記録から、JBRCの回収を利用した場合は排出の記録から、区分ごとの実績を集計できます。

重要鉱物を含む廃棄物を適正に処理し、国内で再資源化した記録は、取引先の監査や環境報告での確認事項になります。電池の区分ごとに、どのルートで何個を処理したかを台帳で管理しておけば、照会にそのまま対応できます。

(4)設備更新時の鉄系発生材とまとめて回収すれば条件が改善する

電池の処理は、現場から出る金属全体で捉えたほうが有利になる場合があります。

機器の入替や設備更新では、電池とともに収納ラック、盤の筐体、架台、ケーブルラックといった鉄系の発生材が同時に生じます。重量で見れば鉄系のほうが大きく、これらをまとめて回収できれば運搬が集約され、案件全体の条件が整いやすくなるためです。

なかでも鉄は、カーボンニュートラルの潮流のなかで電炉化が加速し、質の高い鉄スクラップの国内循環が戦略資源として注目されています。鉄のサーキュラーエコノミーへの具体的な取り組みについては、以下の記事で解説しています。

8.まとめ

事業活動で使用したリチウムイオン電池は産業廃棄物であり、自治体の回収や店頭の回収ボックスは利用できません。品目としては金属くずと廃プラスチック類の混合物として扱われ、特別管理産業廃棄物には指定されていませんが、内部に可燃性の電解液を含むため、受け入れ体制のある事業者でなければ処理できません。委託していない廃棄物に電池が混入していた場合は、委託基準違反として処罰の対象になります。

処理の負担を左右するのは、製品区分に応じたルートの選択です。会員企業製の小形充電式電池はJBRCの回収を利用でき、定置用蓄電システムやポータブル電源は販売者・メーカーへの相談が基本、産業用の大型電池と破損品は産業廃棄物としての委託が中心になります。すべてを一括委託せず、区分ごとに分けることで費用構造は変わります。

保管段階の管理も欠かせません。端子の絶縁、高温と可燃物からの隔離、膨張品の個別管理は、いずれも排出側でしか実行できない対策です。廃棄物処理施設での火災の多くは、分別と絶縁の段階で防げます。

リチウムイオン電池のリサイクルを効率よく進めるには、定期的に発生している返品や使用済み製品の量や状態、その行き先を把握し、廃棄以外の出口も含めた具体的なスキームを設計することが重要です。保管スペースの不足や、廃棄か再販かの判断、複数の処分業者の管理に負担を感じている場合は、五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」にご相談ください。

監修

早稲田大学法学部卒業後、金融機関での法人営業を経て、中小企業向け専門紙の編集記者として神奈川県内の企業・大学・研究機関を取材。
2013年から2020年にかけては、企業のサステナビリティレポートの企画・編集・ライティングを担当。2025年4月よりフリーランスとして独立。
企業活動と社会課題の接点に関する実務経験が豊富で、サステナビリティ分野での実践的な視点に基づく発信を強みとしている。