欧米の先進企業を中心にリジェネレーションの事業への組み込みが進んでおり、規制強化や投資家の視点からも、対応を迫られる場面が増えています。この記事では、リジェネレーションの意味・定義やサーキュラーエコノミー・サステナビリティとの違い、国内外の具体的な導入事例について解説します。
五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、現場の廃棄物分析を起点に、単なる処理を超越した地域や生態系への貢献を収益化する循環モデルへの構造変革を強固に支援します。サステナビリティのその先、社会から真に求められる再生型経営を実現したい場合には、ぜひご相談ください。
1.リジェネレーションとは?語源・英語の意味からわかりやすく

まずは、語源・英語表記という言葉の成り立ちから丁寧に読み解き、リジェネレーションが本質的に何を意味するのかを明らかにします。
(1)リジェネレーションの意味と定義
リジェネレーションとは、自然・社会・経済における失われた機能や資源を、元の状態に戻すだけでなく、より良い状態へと積極的に再生・回復させることを指します。
日本語では再生と訳されることが多いですが、現状維持や悪化の抑制をゴールとするのではなく、系全体の機能・活力を能動的に高めていくという点が特徴です。
この概念はもともと生物学の領域で使われており、トカゲが尻尾を再生するような現象を指す言葉として発展してきた背景があります。その後、この「自己回復・自己増殖する力」という本質的な意味が転用される形で、農業・都市開発・ビジネス・金融など幅広い分野へと広がっていきました。
参考:Regeneration Japan|一般社団法人リジェネレーション・ジャパン
(2)リジェネレーションの英語表記について
リジェネレーションは英語で “Regeneration” と表記します。語源はラテン語の”regenerare” で、”re-“(再び)と “generare”(生む・創造する)に分解できます。
日本語では「リジェネレーション」と「リジェネラティブ」が混在して使われていますが、英語としては同じ概念を指しており、文脈によって品詞が変わるだけです。
参考:企業はリジェネラティブな未来をどう描けるか。「三井化学フォーラム」で見た脱プラの“先”
(3)ビジネス・環境文脈における使われ方
リジェネレーションという言葉は、ビジネスや環境の文脈では「自然・社会・経済のいずれかを積極的に再生・回復させる取り組み」を指す言葉として使われています。ただし分野によってその対象と意味合いが異なるため、文脈を押さえて理解することが重要です。
| 分野 | リジェネレーションの対象 | 従来アプローチとの違い |
|---|---|---|
| 農業・食糧 | 土壌・生物多様性・生態系機能 | 農薬・化学肥料の削減にとどまらず、農地が生態系として自律回復することを目指す |
| 都市・建設 | 地域インフラ・自然環境・コミュニティ | 単なる再開発ではなく、人と自然が相互に作用しながら活力を生み出す都市を設計する |
| ビジネス・経営 | 事業構造・自然資本・社会資本 | サーキュラーエコノミーを包含しつつ、自然・社会資本の回復まで射程に入れた事業転換を目指す |
このように、リジェネレーションは特定の業界や手法に限定された言葉ではなく、自然・社会・経済を一体として捉え直すための思想的な枠組みとして機能しています。
参考:リジェネラティブな社会への変革加速に向けた声明「Regenerative Cities Manifesto」を発表|東京建物
2.リジェネレーションが注目される背景

リジェネレーションが注目される背景には、従来のサステナビリティやサーキュラーエコノミーの取り組みだけでは対応しきれない課題が顕在化してきたという現実があります。ここでは、リジェネレーションが注目される背景について解説します。
(1)既存のサステナビリティの限界
CO2排出量の削減、再生可能エネルギーへの移行、廃棄物の削減といったサステナビリティの取り組みは、2000年代以降、企業経営における重要テーマとして定着してきました。しかし、一方で地球規模の環境指標は改善どころか悪化を続けています。
たとえば、WWFの「生きている地球レポート2022」によると、1970年から2018年の間に野生動物の個体数が平均69%減少したことが報告されています。

こうしたデータは、現行のサステナビリティアプローチが悪化の速度を緩めることはできても、失われた機能を回復させるには至っていないことを示しています。こうした認識が広がる中で、リジェネレーションは次のフェーズの概念として位置づけられるようになっています。
(2)欧州規制と国際基準への適応
欧州を中心とした規制の動きは、日本企業のサプライチェーンにも直接影響を及ぼすレベルに達しています。
例えば、CSRDは、EUにおけるサステナビリティ情報開示を大幅に強化する制度であり、対象企業の範囲拡大と開示内容の高度化が特徴です。従来の非財務情報開示指令(NFRD)と比較して、より詳細かつ体系的な情報開示が求められます。
この情報開示は欧州持続可能性報告基準(ESRS)に基づいて行われ、環境・社会・ガバナンスに関する幅広い項目について、定量・定性の両面から報告することが必要とされています。また、ダブルマテリアリティの考え方に基づき、企業が環境・社会に与える影響と、これらが企業財務に与える影響の双方を評価・開示することも求められます。
この結果、欧州規制は単独企業の対応にとどまらず、サプライチェーン全体での情報収集・管理体制の構築を前提とした対応が求められる枠組みへと拡張されています。
(3)資源枯渇リスクに向けた自衛
企業が自衛の観点からリジェネレーションに向き合わざるを得ない状況も生まれています。
世界経済フォーラムの「グローバルリスク報告書2024」では、今後10年間における主要リスクとして、異常気象や生物多様性の損失と並び、天然資源の不足が上位に位置付けられています。

このような構造のもとでは、資源の再生・循環を前提とした取り組みが事業継続や供給安定性に直結する取り組みとして位置付けられ、自社の供給基盤そのものを維持・強化する必要性に直面しています。
参考:https://www3.weforum.org/docs/WEF_The_Global_Risks_Report_JP_2024.pdf
(4)長期的企業価値に関する定義の変化
環境に関する取り組みは、企業価値の評価において考慮される対象にもなっています。
気候変動や自然資本の劣化といった環境要因は、企業の将来収益や投資リターンに影響を与える要素として位置づけられており、企業価値はこれらを含めて評価される考え方へと変化しています。
実際にGPIFは、長期的な収益を確保するためには、財務情報に加えてESG(環境・社会・ガバナンス)といった非財務要素を考慮することが必要であると位置づけています。
また、持続可能な経済社会の実現は、市場全体の成長を通じて長期的な投資リターンの向上につながると整理されています。
参考:https://www.gpif.go.jp/esg-stw/project_report/esg_factors.html
3.リジェネレーションとサーキュラーエコノミー等との違い

リジェネレーションを理解する上で避けて通れないのが、サーキュラーエコノミーやサステナビリティとの関係性です。
(1)リジェネレーションとサーキュラーエコノミーの違い
リジェネレーションとサーキュラーエコノミーは、どちらも従来の線形経済モデルからの脱却を目指す概念として語られることが多く、混同されやすい関係にあります。しかし両者の目的と射程には明確な違いがあります。
| リジェネレーション | サーキュラーエコノミー | |
|---|---|---|
| 目的 | 自然・社会・経済の積極的な再生 | 資源の循環・廃棄ゼロ |
| アプローチ | 失われた機能を回復・強化し、系全体を健全な状態へ向かわせる | 資源を循環させ、廃棄を出さない仕組みをつくる |
| 対象範囲 | 自然資本・社会資本・経済資本を包括 | 主にモノ・資源・製品の流れ |
| ゴールの水準 | 現状を超えて、より良い状態を能動的につくり出す | 現状の悪化を止め、資源を無駄にしない |
| 自然資本への関与 | 直接的(生態系の回復・強化を目的に含む) | 間接的(廃棄削減による負荷軽減) |
資源を循環させるサーキュラーエコノミーは、自然と社会を再生させるリジェネレーションを実現するための重要な手段のひとつに位置づけられます。
(2)リジェネレーションとサステナビリティの違い
リジェネレーションとサステナビリティの両者の関係は、サステナビリティがリジェネレーションの前提条件として機能するという形で整理できます。
| リジェネレーション | サステナビリティ | |
|---|---|---|
| 目的 | 失われた機能・資源を積極的に再生・回復させる | 現在の状態を維持し、将来世代への影響を最小化する |
| アプローチ | 系全体の機能・活力を能動的に高めていく | 環境負荷を減らし、現状の悪化を抑制する |
| ゴールの水準 | 現状を超えた、より良い状態を目指す | 現状維持・悪化の抑制 |
| 自然資本への関与 | 生態系の回復・強化を直接の目的とする | 生態系への悪影響を減らすことを目的とする |
| 時間軸 | 回復・再生のプロセスを積極的に設計する | 長期的な持続可能性を前提に現在の行動を最適化する |
サステナビリティは「現在の世代のニーズを満たしつつ、将来の世代がそのニーズを満たす能力を損なわない発展」という定義を起点に広く普及してきました。しかしその本質は「現状を維持する」ことにあり、すでに損なわれた自然・社会機能の回復までは射程に入っていません。
(3)リジェネレーションとリジェネラティブとの違い
リジェネラティブは別の概念ではなく、同じ考え方を文脈に応じて使い分けているにすぎません。
リジェネレーションが概念全体を指す名詞として使われるのに対し、リジェネラティブはその考え方を体現した農業・都市・ビジネスモデルなどを形容する際に使われます。
| リジェネレーション | リジェネラティブ | |
|---|---|---|
| 英語表記 | Regeneration | Regenerative |
| 品詞 | 名詞 | 形容詞 |
| 使われ方 | 概念・現象そのものを指す | 特定の対象を修飾する際に使う |
| 使用例 | 「リジェネレーションを推進する」 | 「リジェネラティブ農業」「リジェネラティブ・ビジネス」 |
リジェネレーションとリジェネラティブは、日本語の文脈で混在して使われることが多いですが、いずれも指している方向性は同じです。
4.リジェネレーションの主な領域と日本国内の事例

リジェネレーションは特定の業界に限定された概念ではなく、農業・素材・都市・金融など幅広い領域で実践されています。ここでは、主要な領域ごとの特徴と、日本国内における具体的な取り組み事例を整理します。
(1)農業・食糧:環境を修復する環境再生型農業
農業はリジェネレーションの考え方が特に浸透しています。
例えば環境再生型農業という概念で、土壌の有機物・微生物・生物多様性を回復させながら食料を生産するアプローチがあります。
リジェネラティブ農業では、不耕起栽培・カバークロップ(緑肥作物)・輪作・堆肥活用といった手法を組み合わせることで、土壌の炭素貯留能力を高め、生態系全体の回復を促し、生産性の維持と環境再生を同時に実現できます。
(2)バイオ・素材:化石資源に頼らないバイオエコノミーの拡大
素材・化学品の領域では、石油や石炭といった化石資源を原料とする従来のモデルから脱却し、植物・微生物・廃棄物といった生物由来の資源を活用するバイオエコノミーへの転換が進んでいます。この動きはリジェネレーションの観点から見ると、自然の生産能力を活用しながら資源循環を実現するアプローチとして位置づけられます。
微生物の発酵プロセスを活用することで、化石資源への依存を減らしながら高付加価値素材を生産する技術を確立するなど、素材メーカーを中心に廃棄されていたバイオマスを原料とした生分解性プラスチックや繊維素材の開発も加速しています。
(3)都市・建設:自然と共生するリジェネラティブ・アーバニズム
都市・建設領域におけるリジェネレーションは、リジェネラティブ・アーバニズムという概念のもとで議論されています。単なる省エネ建築や緑化にとどまらず、都市そのものが生態系の一部として機能し、自然と人間活動が相互に回復・強化し合う状態を目指すアプローチです。
リジェネラティブ・アーバニズムでは、グリーンインフラ(緑地・湿地・水辺の保全・創出)や、建物・街区レベルでの生態系機能の組み込みを通じて、都市が自然資本を回復させる場として機能することを目指します。
(4)ビジネス・金融:価値を再定義するリジェネラティブ・モデル
ビジネス・金融領域におけるリジェネレーションは、事業活動を通じて自然・社会資本を回復させることを前提に、ビジネスモデルや投資の仕組みそのものを再設計するアプローチです。
環境への悪影響を減らすCSRや、資源を循環させるサーキュラーエコノミーをさらに発展させ、事業活動が自然・社会にとってプラスの価値を生み出す状態を目指します。
5.リジェネレーションの海外事例
(1)ゼネラル・ミルズ

ゼネラル・ミルズは、サプライチェーンにおける原材料調達の中心である農業分野において、環境負荷低減と資源再生を目的とした取り組みとして、2030年までに100万エーカーの農地で環境再生型農業(リジェネラティブ農業)を推進する目標を掲げています。
耕起の最小化、作物の多様化、土壌被覆の維持、通年での植物根の保持、家畜との統合といった複数の原則に基づく農業手法を導入しており、原材料供給に関わる農家と連携し、実践状況を把握するための評価ツールを導入しています。
参考:https://www.nri.com/content/900034274.pdf
(2)シュナイダーエレクトリック

シュナイダーエレクトリックは、エコデザイン、廃棄物の資源化、製品の再生・再販を含むエンドツーエンドの循環戦略として展開されており、製品ライフサイクル全体で資源循環を実現しています。これにより、使用済み製品を分解・診断・再製品化して市場に再投入する仕組みが確立されています。
また、サプライチェーン全体にも循環モデルを組み込むプログラムを推進し、設計・調達・製造・回収までを統合した運用を行っています。この結果、製造拠点の多くで廃棄物の大部分が再資源化されるなど、資源効率の向上が図られています。
(3)シンガポールの都市開発

シンガポールは、国土制約の中で高密度な都市開発を進めながらも、自然環境を都市構造に統合する「City in Nature」構想を推進しています。
これで自然保護区・都市公園・近隣公園といった階層的な緑地ネットワークを整備し、さらに道路や建築物にも緑化を重ねることで、都市全体に連続したグリーンインフラを形成しており、都市化が進行する中でも緑被率を拡大させる構造が確立されています。
参考:https://www.clair.org.sg/j/wp-content/uploads/2021/02/3_2_Toshi.pdf
6.リジェネレーションをビジネスに組み込む視点
ここでは、リジェネレーションを事業活動に組み込む上で押さえておきたい4つの視点を整理します。
(1)サプライチェーンの透明化とデータ化
自社のサプライチェーンが自然資本・社会資本にどのような影響を与えているかを把握することで、現実的な出発点が明らかになります。
原材料の調達先における土地利用・水資源の使用量・生物多様性への影響といった情報を、サプライヤーと連携しながら収集・管理する体制の構築が求められます。まずは影響度の大きい調達品目や地域を優先的に特定し、段階的にデータの範囲を広げていくアプローチが現実的です。
こうしたデータの蓄積は、TNFDやCSRDへの対応という開示目的にとどまらず、調達リスクの早期察知や、再生に向けたサプライヤーとの協働プログラムの設計にも活用できます。
(2)循環型サービス(PaaS)への転換
PaaS(Product as a Service)への転換は、リジェネレーションを事業構造に組み込む上で有効なアプローチのひとつです。所有権をメーカー側が持ち続けることで、製品の長期使用・修理・素材回収までを一貫して管理できるため、資源の循環と自然資本への負荷低減が構造的に実現しやすくなります。
例えば、照明設備をリースで提供し使用量に応じて課金するライティング・アズ・ア・サービスや、タイヤの走行距離に応じて課金するモデルなど、製造業を中心にPaaSの導入事例が蓄積されています。
このようなPaaSへの転換は、顧客との長期的な関係構築・安定収益の確保・廃棄物の削減を同時に実現できる点で、リジェネラティブなビジネス設計と親和性が高いアプローチです。
(3)共創エコシステムの構築
リジェネレーションの実現において自然資本の回復や社会機能の再生は、サプライチェーンを超えた複数のステークホルダーが連携してはじめて成立するプロセスであるため、業界横断的な共創エコシステムの構築が重要な視点となります。
同業他社・サプライヤー・自治体・研究機関・NGOといった異なるセクターが共通の目標を設定し、データ・技術・資金・知見を持ち寄る形での協働が求められます。
競合他社とも連携するコーペティションの考え方が、特に自然資本の回復という業界全体に関わる課題においては現実的な選択肢となっています。
共創エコシステムの構築にあたっては、参加者間の利害調整や成果の測定・配分の仕組みを設計することが実務上の課題となります。まず自社が影響を与えている地域・産地・流域を特定し、そこに関わるステークホルダーとの対話から始めることが現実的な出発点です。
(4)新指標の導入
売上・利益といった財務指標は、自然資本や社会資本の回復という成果を可視化する手段としては不十分であり、新たな指標の導入が実践の精度を高める上で重要になります。
自然資本の評価指標としては、土壌有機物量・生物多様性指数・水資源の回復量といった定量指標が活用され始めています。また、企業活動が自然資本に与えるポジティブ・ネガティブ両面の影響を金銭価値に換算する「自然資本会計」の手法も、TNFDの普及とともに実務への導入が進んでいます。
新指標の導入は一度に全領域を対象にする必要はありません。まず自社のビジネスモデルと最も関連度の高い自然資本・社会資本の領域を特定し、測定可能な指標から段階的に導入していくことが現実的なアプローチです。
7.まとめ
リジェネレーションとは、自然・社会・経済における失われた機能を、現状維持にとどまらず積極的に再生・回復させるという考え方です。サステナビリティが「悪化を抑制する」、サーキュラーエコノミーが「資源を循環させる」のに対し、リジェネレーションは「系全体をより良い状態へ向かわせる」という点で、これらの概念をさらに発展させたものとして位置づけられます。
五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、こうしたリジェネレーションの思想を現状の資源フローの精密な分析に基づき、実効性のある資源循環スキームやサプライチェーンの再構築へと落とし込み、企業の長期的なレジリエンスへと昇華させます。サステナビリティのその先にある再生型経営を実現したい場合には、ぜひご相談ください。


