オフィスの移転や拠点の統廃合では、複合機、パソコン、電話機、シュレッダー、スチール家具など、性質の異なる事務機器がまとめて排出されます。事務機器は品目によって関係する法律やメーカーの回収の仕組み、撤去前に必要な情報管理が異なり、一括で同じ業者に引き渡すと、手続きの漏れや資源として活用できる機器の見落としにつながります。品目ごとの処理ルートを整理したうえで、売却・資源循環・廃棄の費用と経営上の効果を同じ前提で比較することが、適切な判断につながります。
五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、鉄を主原料とする製品・設備の廃棄や資源循環を起点に、サーキュラーエコノミーへの移行を支援するサービスです。廃棄物を国内製鉄所等へ還流させるクローズドループの構築など、カーボンニュートラルや循環型社会の実現に向けた取り組みを、コスト削減と両立する形で支援します。オフィス移転や拠点の統廃合に伴う事務機器の資源循環を検討する場合にはぜひご相談ください。
1.事務機器のリサイクル前に確認する所有区分と法的区分

事務機器のリサイクルでは、機器の所有者が誰か、品目ごとにどの法律や回収の仕組みが関係するかによって、処理を決められる主体と依頼先が変わります。オフィスには購入した機器とリース契約の機器が混在しており、品目ごとに利用できるメーカー回収の有無も異なります。処理ルートを検討する前に、機器単位で所有区分と法的区分を確定させることが実務の起点です。
(1)リース・レンタル品と自社所有品の区分
複合機やパソコン、ビジネスフォンなどの事務機器は、リースやレンタルの契約で導入されている場合があります。リース契約で導入した機器は所有権がリース会社にあるため、利用企業が売却やリサイクルを判断することはできず、リース期間が終了した場合はリース契約の定めに従ってリース会社に返還します。
公益社団法人リース事業協会の整理では、利用企業は自らの責任と負担で物件を原状回復して返還することがリース契約で規定されているとされ、記憶媒体を持つ物件のデータ消去も利用企業側で対応する前提で手続きが組まれています。移転に合わせて契約期間の途中で機器を入れ替える場合は、中途解約の可否と残リース料の扱いを契約書で確認する必要があります。
実務では、固定資産台帳、リース契約書、機器に貼付されたリース会社の表示をもとに、事務機器を機器単位で自社所有品とリース・レンタル品に区分します。リース・レンタル品は返還期限と返還方法を、自社所有品は品目ごとの処理ルートを一覧で管理し手続きを分けて進めます。複合機のリース返却とデータ消去の詳細は、コピー機のリサイクルを解説した記事で整理しています。
参考:https://www.leasing.or.jp/studies/docs/20200327.pdf
図は、利用企業が機器を選定し、リース会社がサプライヤーから機器を購入して所有したうえで、利用企業が占有・使用する取引構造を示しています。契約終了時は、利用企業が再リースか返還を選び、返還時のデータ消去と原状回復を利用企業の責任・負担で行う整理です。したがって、リース品を自社判断で売却・破壊せず、所有区分、返還条件、データ消去方法を契約書で先に確認する必要があります。個別契約では消去作業者や費用負担が異なる場合があります。
参考:https://www.leasing.or.jp/studies/docs/20200327.pdf#page=2
(2)品目ごとに関係する法律と回収の仕組み
事業活動で使用した事務機器を廃棄する場合は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)に基づき、産業廃棄物として許可業者に処理を委託するのが基本です。そのうえで、品目によっては、資源の有効な利用の促進に関する法律(資源有効利用促進法)に基づくメーカーの回収や、使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律(小型家電リサイクル法)に基づく認定事業者への引渡しを選べます。
主な品目と関係する制度の概要は次のとおりです。
| 品目 | 関係する主な法律・制度 | 主な回収ルート | 撤去前の確認事項 |
|---|---|---|---|
| 複写機・複合機 | 資源有効利用促進法(指定再利用促進製品)、広域認定制度 | メーカー回収、売却、産業廃棄物処理 | リース契約、記憶装置のデータ消去 |
| パソコン・ディスプレイ | 資源有効利用促進法(事業系パソコンのメーカー回収)、広域認定制度 | パソコン3R推進協会などのメーカー回収、売却、小型家電リサイクル法の認定事業者 | 記憶装置のデータ消去、内蔵電池 |
| 小型家電リサイクル法の対象品目に該当する小型の電子機器 | 小型家電リサイクル法 | 認定事業者、産業廃棄物処理 | 対象品目への該当性、内蔵電池 |
| その他の電動事務機器(シュレッダーなど) | 廃棄物処理法 | 売却、資源循環、産業廃棄物処理 | 内部の紙くずの除去、所有区分 |
| スチール家具(デスク・キャビネット等) | 資源有効利用促進法(金属製家具は指定再利用促進製品) | 売却、資源循環、産業廃棄物処理 | 収納物・鍵の確認、固定金具の取り外し |
担当者は、この区分をもとに排出予定の機器を品目別に振り分け、メーカー回収や認定事業者を利用できる品目と、許可業者への委託や売却で処理する品目を分けて手配します。
参考:https://www.env.go.jp/recycle/recycling/recyclable/gaiyo.html
参考:https://www.pc3r.jp/office/
参考:https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/48/s-recycle.html
(3)小型家電リサイクル法と認定事業者の位置付け
小型家電リサイクル法は、パソコンや携帯電話など28の類型に分類された電気機械器具を対象とし、家庭から排出されるものだけでなく、企業の事業活動に伴って排出されるものも対象に含みます。事業者は、使用済みの対象機器を分別して排出し、国の認定を受けた認定事業者など、再資源化を適正に実施できる者に引き渡すよう努めることとされています。
認定事業者は、国に再資源化事業計画を提出して主務大臣の認定を受けた事業者で、廃棄物処理業の許可が不要となる特例が適用されます。認定事業者から委託を受けて再資源化を行う事業者にも、この特例が適用されます。一方で、同法は再資源化を促進する制度であり、事業者の引渡しは努力義務とされているため、産業廃棄物として許可業者に処理を委託することも可能です。
実務では、排出予定の小型の電子機器が対象品目に該当するかを確認し、認定事業者の回収品目や引取条件と、許可業者に委託する場合の費用を比較します。認定事業者を利用する場合は、国の認定を受けていることを事業者の公表情報で確認し、回収後の再資源化の方法と報告の有無を契約前に確認します。
参考:https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/48/s-recycle.html
参考:https://www.pref.kanagawa.jp/docs/p3k/cnt/f537765/index2.html

広島市の一覧では、小型家電リサイクル法の対象を28品目に整理し、1枚目には電話機、パソコン、記憶装置、プリンター、ディスプレイ、事務用電気機械器具など1~15番の品目例が示されています。事務機器は複数の区分にまたがるため、社内一覧を品目名だけでなく対象区分まで付して整理する必要があることを裏付けます。ただし、このPDFは法令上の対象品目例であり、広島市の回収ボックスは家庭向けです。企業排出分は、認定事業者の受入条件と廃棄物処理法上の扱いを別途確認する必要があります。
参考:https://www.city.hiroshima.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/235/136076.pdf#page=1
(4)許可業者への委託と有価物の区分
事務機器を廃棄物として委託する場合は、産業廃棄物収集運搬業と処分業の許可を持つ業者に依頼する必要があります。自治体は、無許可の回収業者による不適正な事案が発生した場合に、排出者が罪に問われたり、廃棄物の撤去費用を請求されたりする場合があると注意を呼びかけており、古物商の許可だけでは廃棄物の回収はできません。
中古品や金属資源として有償で取引される事務機器は、有価物として廃棄物処理法の規制を受けません。ただし、廃棄物か有価物かは物の性状や取引価値の有無などを総合的に勘案して判断され、排出事業者が負担する運搬費が売却代金を上回る場合は、収集運搬の段階で廃棄物処理法が適用されます。
オフィス移転では、買取額が付く機器と処分費がかかる機器が同じ業者に一括で引き渡されることがあります。担当者は、見積もりで品目ごとの買取額と処分費、運搬費を分けて提示を受け、有価物として扱う機器と廃棄物として委託する機器を区分して、委託契約書とマニフェストの対象を明確にしておきます。
参考:https://www.city.toyota.aichi.jp/kurashi/gomi/gomi/1059300.html
参考:https://www.pref.osaka.lg.jp/o120060/jigyoshoshido/report/faq_2.html
2.事務機器の撤去前に行う情報管理と安全対策

事務機器の中には、業務で扱った情報を内部に保存している機器と、発火のおそれがある電池を内蔵している機器が含まれます。どの処理ルートを選ぶ場合でも、機器が社外に出る前に情報を消去し、電池の扱いを引渡し先と取り決めておくことが排出企業の責任です。これらの確認は、品目別の処理ルートの手配と並行して進める工程として位置付けます。
(1)記憶装置を持つ機器の洗い出しと消去の基準
オフィスで使用する事務機器のうち、パソコンやサーバー、複合機、ビジネスフォンの主装置、ファクシミリ、ネットワーク接続型のストレージなどは、内部の記憶装置に業務上の情報を保存している場合があります。これらの機器には、取引先や従業員の情報、契約書や図面などが含まれる可能性があり、消去しないまま機器が第三者に渡ると情報流出につながるおそれがあります。
個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)に基づき、個人データを取り扱う企業は安全管理措置を講じる義務を負います。個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)では、個人データを削除し、または個人データが記録された機器や電子媒体等を廃棄する場合は、復元不可能な手段で行うことが示されています。
実務では、排出予定の事務機器を記憶装置の有無で区分し、記憶装置を持つ機器については、情報システム部門と連携して消去の方法と実施者を決めます。パソコン3R推進協会の事業系パソコンの回収では、データ消去を利用者自身が行う手順になっているため、回収ルートごとに消去の責任を誰が負うかも確認しておきます。
参考:https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/
参考:https://www.pc3r.jp/office/
(2)データ消去の実施と記録の管理
データ消去の方法には、機器に搭載された消去機能やソフトウェアによる消去、メーカーや専門事業者による消去サービスの利用、記憶装置を取り外したうえでの物理的な破壊などがあります。機器を中古品として売却する場合は記憶装置を残したまま再使用されるため、消去の実施と結果を確認できる消去証明が前提になり、資源化や廃棄に回す場合は物理破壊を組み合わせることで復元の可能性をさらに低くできます。
リース品やレンタル品は所有権がリース会社などにあるため、記憶装置の取り外しや破壊を利用企業の判断で行うことはできません。返還前にリース会社と消去の方法を協議し、費用の負担区分と消去証明書の発行有無を確認します。
消去を自社で行う場合は、実施日、方法、作業者、対象機器の製造番号を記録します。事業者に委託する場合は、作業報告書や消去証明書に対象機器の製造番号と消去方法が記載されているかを確認し、機器一覧と照合して保存します。オフィス移転では台数がまとまるため、消去の完了を確認した機器にラベルを貼るなど、未消去の機器が搬出されない運用を定めておきます。
参考:https://www.leasing.or.jp/studies/docs/20200327.pdf
(3)リチウムイオン電池を内蔵する機器の扱い
ノートパソコンや無停電電源装置、充電式の周辺機器など、リチウムイオン電池を内蔵する事務機器は、廃棄物の処理工程で破砕や圧縮による衝撃が加わると発火するおそれがあります。環境省の資料では、令和5年度に全国の市町村の廃棄物処理でリチウムイオン電池に起因すると疑われる火災事故等が8,543件、発煙・発火を含めると21,751件発生したとされています。
この数値は家庭ごみを扱う市町村の処理に関するものですが、事業者から排出される機器でも、電池を内蔵したまま破砕工程に入れば同じ危険が生じます。電池の取り外しが可能な機器は、メーカーの取扱説明書に従って取り外し、電池は電池として回収ルートを分けます。取り外しができない機器は、電池を内蔵していることを引渡し先に伝え、受入れの可否と処理方法を確認します。
担当者は、排出予定の機器一覧に内蔵電池の有無を記載する列を設け、見積もり依頼の段階で引渡し先と電池の扱いを取り決めます。電池を無理に取り外そうとすると、変形や短絡によって発煙するおそれがあるため、社内で分解を行わず、メーカーや引渡し先の指示に従うことを作業ルールとして定めておきます。
参考:https://lithium.env.go.jp/recycle/waste/lithium_1/torikumi.pdf
環境省資料では、発煙・発火を含む発生件数は令和元年度の9,732件から令和5年度の21,751件へ増加しています。職員または消防隊による消火を要した件数も、令和4年度の4,260件から令和5年度は8,543件へ倍増しました。事務機器でも、内蔵電池のまま破砕工程に入れば同様の危険があるため、機器一覧に電池の有無を記録し、引渡し前に受入条件を確認する必要があります。数値は市町村の一般廃棄物処理の実績であり、事業系廃棄物の発生件数を直接示すものではありません。
参考:https://www.jcpra.or.jp/Portals/0/resource/00oshirase/pdf/pla/li-msh20260226-5.pdf#page=2
3.事務機器のリサイクル方法の比較|売却・資源循環・廃棄

事務機器の処理方法は、機器の製造年や状態だけでなく、品目ごとに利用できる回収の仕組み、情報管理の要件、移転のスケジュールによって適否が変わります。費用はデータ消去から搬出、引渡しまでを含めた総額で評価する必要があり、品目ごとの買取額や処分費だけを比べても判断はできません。手続きの負担と経営上の効果もあわせて比較することで、自社に合った処理方法を判断できます。
| 比較項目 | 売却(中古品) | 資源循環(メーカー回収・認定事業者・金属資源化) | 廃棄(産業廃棄物) |
|---|---|---|---|
| 対象となる機器 | 製造から年数が浅く再使用が見込める自社所有品 | 再使用が難しい自社所有品 | 再使用・資源化が難しい機器や部材 |
| 情報管理 | 消去の実施と消去証明の取得が前提 | 消去の実施に加え物理破壊も選択可(回収ルートごとに消去の責任を確認) | 消去の実施に加え物理破壊も選択可 |
| 主な書類 | 売買契約書、取引記録、消去証明書 | メーカー回収は申込書・報告書、金属資源化は売買記録(逆有償時は委託契約書・マニフェスト) | 委託契約書、マニフェスト、消去記録 |
| 費用構造 | 買取額から撤去費・運搬費を差し引いた収支 | メーカー回収は品目・台数に応じた料金、金属資源化は資源価値と撤去費・運搬費の相殺 | 撤去費・運搬費・処分費の合計 |
| 経営上の効果 | 処理費の抑制、機器の再使用 | 再資源化の実績、国内資源循環の説明材料 | 許可業者による適正処理の記録 |
(1)中古品として売却する
製造から年数が浅く稼働状態の良い複合機、パソコン、スチール家具などは、事務機器やオフィス家具の買取業者に売却する選択肢があります。中古品として有償で取引され、取引に経済的合理性がある場合は有価物として扱われ、産業廃棄物の委託契約やマニフェストの手続きは発生しません。
買取の可否と金額は、品目、メーカー、製造年、稼働状態、外観、台数、搬出条件によって変動します。オフィス移転では、買取額が付く品目と処分費がかかる品目を同じ業者にまとめて依頼すると、差引後の金額だけが提示され品目ごとの評価が見えにくくなります。見積もりでは品目ごとに買取額と撤去費・運搬費を分けて提示を受け、差引後の収支を品目単位で確認します。
売却先の選定では、中古品の買取を業として行う事業者が古物営業法に基づく古物商の許可を受けているかを確認します。記憶装置を持つ機器は、消去の方法と消去証明の発行について契約前に取り決め、買取不可となった機器を同じ事業者に廃棄物として引き渡す場合に必要な許可の有無もあわせて確認します。
(2)メーカー回収・認定事業者・金属資源化で資源循環に回す
再使用が難しい事務機器は、品目に応じたメーカー回収、小型家電リサイクル法の認定事業者、金属資源として再資源化する事業者を通じて資源循環に回せます。パソコンでは、一般社団法人パソコン3R推進協会が約30社のパソコンメーカーに代わって事業系パソコンを回収する小口回収の仕組みを運営しており、同協会は環境省の産業廃棄物広域認定を受けているため、この仕組みではマニフェストが不要とされています。複合機でも、複数のメーカーが広域認定制度に基づく回収サービスを提供しています。
メーカー回収は対象が自社ブランドや参加メーカーの製品に限られ、料金や申込み方法が品目やメーカーごとに異なります。メーカーの回収対象外となる機器や、スチール家具のように金属の比率が高い品目は、金属資源として再資源化する事業者に引き渡すことで、資源価値と撤去費・運搬費を相殺できる場合があります。
担当者は、品目別の一覧をもとに、メーカー回収、認定事業者、金属資源化のいずれを利用するかを振り分けます。回収ルートが複数に分かれるほど引取りの日程調整が増えるため、移転のスケジュールと各ルートの引取りに要する期間を照合し、運搬費が売却代金を上回る品目については、許可を持つ収集運搬業者への委託を前提に手配します。
参考:https://www.pc3r.jp/office/
参考:https://www.pc3r.jp/office/industrial_waste.html
(3)産業廃棄物として処理を委託する
損傷が大きい機器や、メーカー回収や資源化ルートで受け入れられない機器・部材は、産業廃棄物として許可業者に処理を委託します。排出事業者は収集運搬業者・処分業者とそれぞれ書面で委託契約を締結し、産業廃棄物管理票(マニフェスト)を交付します。委託契約書は契約終了日から5年間、処分業者から返送されたマニフェストの写しは5年間保存します。
費用は撤去費、収集運搬費、処分費で構成され、品目と数量、設置階、エレベーターの有無、搬出経路、作業時間帯、地域によって変動するため、一律の相場で判断することはできません。見積もりを比較する際は、品目ごとの費目の含有範囲と、電池を内蔵する機器の受入れ条件をそろえて確認します。
廃棄を選ぶ場合でも、すべての機器を一括で処分するのではなく、金属部分や再資源化できる品目を分けることで処分量を抑えられる場合があります。オフィス移転や拠点の統廃合で排出量がまとまる案件では、廃棄一括の見積もりと、売却やメーカー回収、資源化を組み合わせた見積もりを並行して取得し、総額で比較することで判断の精度が高まります。
参考:https://www.env.go.jp/content/900479496.pdf
4.事務機器のリサイクルを進める実務手順

事務機器のリサイクルでは、品目ごとに依頼先が分かれるうえ、移転先での業務開始に支障が出ないよう撤去の時期を調整する必要があります。総務部門、情報システム部門、経理部門が関わるため、撤去日から逆算した段取りを部門間で共有しておくことが重要です。
(1)品目別の機器一覧の作成
最初に行うのは、排出予定の事務機器を機器単位で一覧化する作業です。一覧には、設置場所、品目、メーカー、型式、製造番号、製造年、所有区分、リース会社と満了日、記憶装置の有無、内蔵電池の有無、稼働状態、概算重量を記載します。固定資産として計上している機器は、除却や売却の会計処理に必要な資産番号もあわせて記載します。
一覧をもとに、品目ごとに売却・資源循環・廃棄のいずれを第一候補とするかを仮決定します。製造年が新しく稼働状態の良い機器は売却、メーカー回収の対象となる品目はメーカー回収、金属の比率が高い品目は金属資源化、損傷が大きい機器は廃棄というように判断基準を社内で定めておくと、部署ごとの判断のばらつきを防げます。
仮決定の段階で、データ消去が必要な機器、電池の扱いを取り決める必要がある機器、リース会社に返還する機器を一覧上で明示します。情報システム部門と経理部門に一覧を共有し、消去の実施計画と会計処理の準備を並行して進めます。
(2)移転スケジュールに合わせた段階的な撤去
オフィス移転では、移転前日まで使用する機器と、早い段階で不要になる機器が混在します。書庫のキャビネットや使用頻度の低い機器は先行して撤去し、複合機やパソコンなど業務に必要な機器は、移転先の機器が稼働してから撤去するというように撤去を段階に分けて計画します。
メーカー回収は申込みから回収までに一定の期間を要する場合があり、パソコン3R推進協会の仕組みでは見積もりと契約をインターネットで行ったうえで、利用者が梱包して宅配便で引き渡す手順になっています。利用する回収ルートごとに、申込みから引取りまでの期間と、梱包や搬出を誰が行うかを確認し、撤去の段階に割り当てます。
見積もりは、搬出条件をそろえたうえで取得します。設置階、エレベーターの有無と寸法、搬出経路の幅、車両の駐車位置、作業可能な時間帯を整理し、建物の管理規約で定められた搬出時間や養生の条件も見積もり依頼書に記載します。
参考:https://www.pc3r.jp/office/
(3)引渡し記録の一元管理
引渡し当日は、一覧の製造番号と実際に搬出する機器を照合し、データ消去の完了と電池の扱いを確認したうえで、売却分、メーカー回収分、資源化分、廃棄分、リース返還分に区分して引き渡します。
書類は、売買契約書、メーカー回収の申込書と報告書、認定事業者の受領書、委託契約書、マニフェストの写し、消去証明書、リース会社への返還記録など、ルートごとに種類が異なります。これらを機器一覧の製造番号と紐づけて一元管理しておくと、監査や問い合わせの際に機器ごとの処理経緯を説明できます。
撤去完了後は、品目別、ルート別の台数と重量、売却額と費用を集計します。集計結果を次回の移転や機器更新の計画に反映させることで、処理ルートの見直しと費用の比較を継続的に行えるようになります。
5.事務機器を資源循環に回す経営上のメリット

事務機器の資源循環は、処理費用を抑える手段にとどまらず、脱炭素や情報開示への対応を進める材料になります。事務機器はリース期間や更新計画、オフィス移転に合わせて入れ替えが発生するため、単発の処理ではなく継続的な仕組みとして設計することで、経営上の効果を積み上げられます。
(1)スチール家具と鉄スクラップの資源価値
オフィスから排出される事務機器のうち、スチール製のデスク、キャビネット、ロッカー、書庫などは、重量の大半を鋼板が占める品目です。複合機のフレームなど機器の構造部材にも鋼板が使われており、再使用できない品目も、解体・選別を経て鉄スクラップとして回収できます。回収された鉄スクラップは電炉製鋼の原料として再び鋼材に生まれ変わります。
鉄スクラップは国内で調達できる製鋼原料であり、輸入に頼る鉄鉱石や石炭の使用を抑える点で、資源安全保障の観点からも意味を持ちます。オフィス移転ではスチール家具が一度にまとまって排出されるため、品目ごとに資源化のルートを設計することで拠点単位での資源化の効果が大きくなります。
なかでも鉄は、カーボンニュートラルの潮流のなかで電炉化が加速し、質の高い鉄スクラップの国内循環が戦略資源として注目されています。鉄のサーキュラーエコノミーへの具体的な取り組みについては、以下の記事で解説しています。

参考:https://www.tokyo-np.co.jp/article/399662
図は、動脈産業・産業活動や社会活動から出た廃棄物のうち、鉄スクラップが収集・運搬、選別、解体、切断・圧縮・破砕、溶解などの工程を経て、リサイクル資源として産業側へ戻る流れを示しています。スチール家具や複合機の金属フレームも、再使用が難しくても鉄資源として循環させられることを裏付けます。ただし、木材・樹脂・電池などの付着物や搬出条件によって受入可否や費用は変わるため、見積もりでは素材構成と分別条件を品目別に確認する必要があります。
参考:https://www.jisri.or.jp/recycle.html
(2)カーボンニュートラルとScope3への対応
鉄スクラップを原料とする電炉法は、鉄鉱石を還元する工程を経ないため、高炉法と比べて鋼材製造時のCO2排出を大きく抑えられます。みずほ銀行産業調査部の分析では、直近の排出原単位について、高炉メーカーが粗鋼1トンあたり約2トンのCO2を排出するのに対し、電炉メーカーは約0.3トンに抑えられていると整理されています。
自社の排出量算定においても、処理方法の記録は重要な意味を持ちます。サプライチェーン排出量のうち、事業から出る廃棄物の処理に伴う排出はScope3のカテゴリ5に区分されます。オフィス移転や機器更新で排出される事務機器の重量を品目別・処理方法別に把握しておくことで算定の根拠を示しやすくなり、再使用や資源化の取り組みを社内外に説明できます。
実務では、撤去案件ごとに売却分、メーカー回収分、資源化分、廃棄分の重量を記録し、年度単位で集計できる形にしておきます。移転や拠点統廃合の計画段階から資源循環ルートを組み込んでおくと、カーボンニュートラルに向けた中期目標の進捗管理にも活用できます。
参考:https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/industry/sangyou/pdf/mif_246.pdf
(3)ESG情報開示とサーキュラーエコノミーへの対応
事務機器の再使用や資源化の実績は、ESG情報開示における資源循環の取り組みとして活用できます。統合報告書やサステナビリティレポートで廃棄物の削減や再資源化の状況を示す場合、品目別の処理記録と重量データが開示内容の根拠になります。
事務機器の処理では、データ消去の記録と資源化の記録を機器単位で一体的に管理できます。ESGのうちガバナンスの観点では情報管理体制が環境の観点では資源循環の実績が問われるため、両方の記録を同じ台帳で運用することで取引先や金融機関から取り組み状況を確認される場面でも一貫した説明が可能になります。
サーキュラーエコノミーの観点では、製品を使用後に廃棄するのではなく、再使用や再資源化によって資源を経済活動の中で循環させることが求められます。複数拠点を持つ企業では、事務機器の処理について品目別の判断基準と記録の様式を社内規程として統一しておくことが、循環型の設備管理へ移行する実務上の要点です。
6.まとめ
事務機器のリサイクルでは、リース・レンタル品と自社所有品を最初に区分し、自社所有品は品目ごとに関係する法律と回収の仕組みを確認します。複合機やパソコンにはメーカーの回収の仕組みがあり、小型の電子機器は小型家電リサイクル法の認定事業者に引き渡せる場合があるため、一括で同じ業者に引き渡す前に品目別の処理ルートを整理する必要があります。
撤去前には、記憶装置を持つ機器のデータ消去と、リチウムイオン電池を内蔵する機器の扱いを引渡し先と取り決めます。そのうえで、品目ごとの買取額や資源価値、処分費を分けた見積もりにより総額で比較し、消去記録と資源化実績を機器単位で一体管理することで、処理費用の抑制とカーボンニュートラルやESGへの対応を両立させる判断が可能になります。
サーキュラーエコノミーへの移行を進める上では、自社の資源循環の実態を把握し、具体的なスキームを設計することが重要です。特に鉄を主原料とする製品・設備の廃棄や資源循環にお困りの場合は、五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」にご相談ください。





