改修工事や設備更新で撤去した電線は、他の産業廃棄物と同じ手順では扱えません。導体である銅やアルミは有価物として取引される一方、被覆の樹脂は廃棄物として残るため、同じ一本のケーブルの中に、売却できる部分と処分費が発生する部分が同居している状態になります。どちらの手続きに乗るかは、品目区分だけでなく取引条件によって決まります。
さらに2026年6月には金属盗対策法の買受業規制が施行され、銅を主体とする金属くずの売却時には、買い受ける側だけでなく売却する事業者側にも本人確認への対応が求められるようになりました。廃電線の処理は、資源としての評価と法令対応の両方を押さえたうえで判断する必要があります。
五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、返品や使用済み製品など、事業の中で定期的に発生するモノの資源循環を一括で支援するサービスです。回収したモノは状態に応じて再販・リユースを優先し、新たな製品の製造や廃棄に伴う排出を抑えます。鉄を含む製品・設備については、国内製鉄所へ還流させるクローズドループの構築まで対応し、鉄スクラップを原料として生かすことで脱炭素にもつなげます。現場から出る発生材全体の回収ルートを整理したい場合は、ぜひご相談ください。

1.廃電線は産業廃棄物になるか、有価物になるか

廃電線の扱いは、廃棄物処理法上の品目区分と、実際の取引条件の2軸で決まります。この章では、自社から出る廃電線がどちらの手続きに乗るのかを判断するための前提を整理します。
(1)廃電線は金属くずと廃プラスチック類の混合物にあたる
廃電線を産業廃棄物として処理する場合、単一の品目ではなく混合物として扱われます。
導体である銅やアルミは金属くず、被覆に使われている塩化ビニルやポリエチレンは廃プラスチック類に区分されるためです。ケーブルの構造によっては、介在物の紙や繊維、外装の鋼帯が含まれることもあり、その場合は該当する品目がさらに増えます。
この区分は、委託先の選定に直接影響します。処理を委託するには、収集運搬業と処分業のいずれについても、許可品目に金属くずと廃プラスチック類の両方が含まれている必要があります。金属くずのみの許可を持つ業者に被覆付きの電線をそのまま引き渡すことはできません。
なお、被覆を剥がして裸銅線と樹脂に分けた後であれば、それぞれ別の品目として扱えます。分別の有無が手続きの前提を変える点は、後述する評価の話とも共通しています。

(2)有価物か産業廃棄物かは総合判断説で決まる
品目区分と並んで確認が必要なのが、その廃電線が廃棄物に当たるかどうかです。
廃棄物処理法上、廃棄物に該当するかは、物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無、占有者の意思といった要素を勘案して総合的に判断されます。買い手が付いて有償で引き取られるものは有価物であり、廃棄物処理法の適用を受けません。
実務上の目安となるのは、売却代金と運搬費を相殺したうえで、排出する側に収入が残るかどうかです。同じ電線でも、まとまった数量が確保できて運搬効率が良ければ有価物として成立し、少量が散発的に発生する場合は成立しないという差が生まれます。
つまり、廃電線が産業廃棄物になるかどうかは、物の種類だけで固定的に決まるものではありません。数量、分別状態、保管場所からの距離といった条件によって、同じ事業所の中でも扱いが分かれます。
参考:https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/inquiry/faq/resource/faq_02
(3)逆有償・到着時有価では手続きが変わる
有価物と産業廃棄物の中間には、運搬費の負担によって扱いが変わる領域があります。
代表的なのが逆有償と到着時有価です。買取額よりも運搬費が上回れば、排出側に支出が生じるため産業廃棄物として扱われます。また、運搬費を排出側が負担し、到着後の検収で有価取引が成立する形の場合は、運搬区間のみが産業廃棄物として扱われます。
| 取引の形 | 買取額と運搬費の関係 | 排出事業者の収支 | 扱い | 必要な手続き |
|---|---|---|---|---|
| 通常の買取 | 買取額が運搬費を上回る | 収入 | 有価物 | 売買契約・計量伝票 |
| 逆有償 | 運搬費が買取額を上回る | 支出 | 産業廃棄物 | 委託契約・マニフェスト |
| 到着時有価 | 運搬費は排出側負担、到着後に有価 | 運搬費相当の支出 | 運搬中のみ産業廃棄物 | 運搬区間の委託契約・マニフェスト |
見積もりを比較する際は、買取単価だけでなく運搬費の負担区分をあわせて確認する必要があります。単価が高くても運搬費が自社負担であれば、収支が反転して産業廃棄物としての手続きが発生する場合があるためです。
(4)2026年6月から銅系スクラップの売却に本人確認が必要になった
廃電線の売却では、取引時の本人確認が前提になります。
太陽光発電施設からの金属ケーブル窃盗をはじめとする金属盗の増加を受け、令和7年6月に「盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律」(金属盗対策法)が成立・公布されました。犯行用具規制などは令和7年9月1日から、特定金属くず買受業に係る措置は令和8年6月1日から施行されています。
参考:https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/scrap/report.pdf#page=4
警察庁の令和5年集計では、金属盗の被害品目は金属ケーブルが8,916件・54.8%、材質は銅が8,437件・51.8%を占めています。いずれも認知件数ベースで過半となっており、銅線ケーブル盗の増加を受けて、銅系スクラップの買受けに本人確認等が課された背景を裏付けます。図表は令和5年の単年値です。品目別と材質別は別集計であり、すべての金属ケーブルが銅製、または銅の被害がすべて電線であることを示すものではありません。
規制の対象となる特定金属くずは、現時点では主として銅により構成されている金属くずです。銅を導体とする電線は、この定義に該当します。買い受ける事業者には、営業所ごとの都道府県公安委員会への届出、買受けの相手方の本人確認、本人確認記録と取引記録の作成、記録の3年間保存が義務づけられました。
| 施行内容 | 施行日 | 概要 |
|---|---|---|
| 犯行用具規制・盗難防止情報の周知 | 令和7年9月1日 | 指定金属切断工具の隠匿携帯の禁止など |
| 特定金属くず買受業に係る措置 | 令和8年6月1日 | 届出、本人確認、記録の作成・3年間保存 |
| 既存事業者の届出経過措置 | 令和8年8月31日まで | 施行時点で営業していた事業者の届出期限 |
売却する側にも実務上の影響があります。買受けの相手方は売買契約の名義となっている法人または自然人であり、確認には顔写真付きの本人確認書類が必要です。現場担当者が持ち込む運用を続けている場合は、誰の名義で取引しているのか、確認書類を提示できる体制になっているかを事前に整理しておく必要があります。
なお、大阪府をはじめ金属くず営業に関する条例を持つ自治体では、条例が銅以外の金属も対象としており、法律より広い範囲に規制がかかります。取引先の所在地によって求められる手続きが異なる点にも留意してください。
参考:https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/scrap/scrap.html
(5)被覆材の処理責任は買い受けた事業者に移る
被覆付きのまま有価で売却した場合、その後に発生する樹脂の処理責任は買い受けた側にあります。
被覆電線を購入した者が銅を回収する過程で生じるプラスチック等は、有価物にならない限り、その者が排出した産業廃棄物として廃棄物処理法の適用を受けるためです。排出事業者が被覆分の処理費まで負担する構図にはなりません。
ただし、これは有価取引が成立していることが前提です。逆有償で引き渡す場合は、混合物としての産業廃棄物処理となり、被覆分を含めた処分費が排出事業者側の負担になります。
同じ「業者に引き渡す」という行為でも、有価か逆有償かで責任の所在と費用の流れが変わります。見積書の形式だけで判断せず、収支がどちらに振れているかを確認してください。
参考:https://www.pref.osaka.lg.jp/o120060/jigyoshoshido/report/faq_2.html

2.廃電線がリサイクルされる仕組み

廃電線のリサイクルは、導体と被覆をどこまで分離できるかで結果が変わります。工程を把握しておくと、分別の手間がなぜ評価に反映されるのかを理解しやすくなります。
(1)回収後に種類・太さ・状態で選別される
リサイクルの最初の工程は、電線の種類ごとの選別です。
CVケーブル、IV線、VVFケーブル、キャブタイヤケーブル、通信ケーブル、ワイヤーハーネスでは、導体の太さも被覆の材質も銅の含有割合も異なります。同じ処理ラインに流せないため、太さ・種類・状態によって仕分けたうえで、それぞれ適した工程に振り分けられます。
この工程は、排出側の分別状態に左右されます。種類の異なる電線を混載したまま搬入すると、選別の手間が加算されるだけでなく、検収上は低い区分に合わせて評価される場合があります。
現場で完全に分ける必要はありませんが、太物と細物、被覆付きと裸線、アルミ導体を分けておくだけでも条件は変わります。分別の程度をどこまで求めるかは、依頼先によって異なるため事前に確認してください。
(2)太物は剥線機で導体と被覆に分離される
一定以上の太さがある電線は、剥線機にかけて被覆を剥ぎ取ります。
導体をそのままの形で取り出せるため、粉砕を経る場合に比べて銅の純度が高く保たれるためです。取り出された裸銅線は、電線メーカーや伸銅メーカーの原料として納入されます。
対象となるのは、動力ケーブルや高圧ケーブルのように導体が太く、被覆をまとめて剥がせる形状のものです。剥線後の銅線は、後述するピカ線として最上位の区分で評価される可能性があります。
参考:https://www.meiwa-eco.jp/services/electric-wires/
(3)細物・混合物は破砕してナゲットに加工される
剥線が難しい電線は、被覆が付いたまま破砕・粉砕する工程に進みます。
細い線や複数の材質が組み合わされたケーブルは、被覆を機械的に剥がすことが難しく、一本ずつ処理すると採算が合わないためです。粗く破砕したうえでさらに粉砕し、比重差や静電気を利用して銅粒と樹脂片に分離します。
この工程で得られた銅粒はナゲットと呼ばれ、粒状の原料として取引されます。剥線による裸銅線とは形状も評価区分も異なりますが、細物や混合物から銅を回収する現実的な方法として確立しています。

国内には、切断から破砕・粉砕・分離までを自動化した大規模な解体システムを持つ事業者も存在します。処理能力の目安として月間1,500トン規模の設備が公表されており、まとまった量の撤去電線を継続的に受け入れる体制が整っている領域といえます。
参考:https://www.fetec.co.jp/about/recycling.html

(4)回収された銅は電線・伸銅品の原料に戻る
分離された導体は、再び電線や伸銅品の原料として使われます。
銅やアルミは有価物であるため、電線業界ではこれらをほぼ全量回収するシステムが構築されています。回収された銅は、銅箔や電線として再び製品になり、素材としての用途が失われることはありません。
この循環が成立している背景には、銅が再生を繰り返しても電気伝導性などの特性を大きく損なわない性質があります。使用済みの電線から取り出した銅も、精製の工程を経れば新しい銅と同等の原料として扱えます。
参考:https://www.jcma2.jp/gijyutu/kankyo/rt/index.html
参考:https://journal.jogmec.go.jp/content/300798248.pdf#page=18
JOGMECの2023年銅マテリアルフローでは、国内で電気銅1,494千tが生産され、電線需要は618千tです。電気機械・電気電子、輸送、通信・電力、建設などの使用段階から「くず」へ戻るリサイクル経路も示され、回収銅が再び素材・製品へ循環する流れを確認できます。これは、回収された銅が電線や伸銅品の原料に戻るという本項の説明を補強します。なお、数値は銅純分換算であり、廃電線だけの回収量ではありません。
(5)被覆材はマテリアルリサイクルとサーマルリサイクルに分かれる
導体に対して、被覆材の再資源化は方法が分かれます。
分離された樹脂は、再生ペレットに加工してケーブル被覆や成形品に戻すマテリアルリサイクルと、燃料として熱回収するサーマルリサイクルのいずれかに進みます。どちらになるかは、材質の均一性と分別の精度によって決まります。
課題として残っているのが、混合被覆材の分別です。塩化ビニルとポリエチレンが混在した状態ではマテリアルリサイクルが難しく、電線メーカー系の回収ルート以外では産業廃棄物として処理されているのが実情です。日本電線工業会でも、混合被覆材の分別技術や材料判別技術の開発が課題として挙げられています。
依頼先を選ぶ際に、銅だけを回収して樹脂を埋立に回すのか、被覆材の再資源化まで対応するのかを確認する意味はここにあります。再資源化率を取引先から問われる立場にある場合は、この点が説明材料になります。
参考:https://www.pwmi.or.jp/pdf/panf2.pdf#page=5
プラスチック循環利用協会の2024年推計では、廃プラスチック911万tのうち、マテリアルリサイクルは180万t、ケミカルリサイクルは23万t、サーマルリサイクルは608万tで、有効利用率は89%です。熱回収が材料再生を大きく上回る構成は、廃電線の被覆材について処理先の再資源化方法まで確認する必要性を示します。なお、これは国内の廃プラスチック全体の推計値で、廃電線被覆材のみの実績ではなく、有効利用には熱回収も含まれます。
3.廃電線の評価を左右する種類と状態

同じ廃電線でも、銅の含有割合と表面の状態によって評価は大きく変わります。この章では、検収でどこを見られるのかを整理します。
(1)評価の基準は銅率になる
被覆が付いたままの電線は、含まれる銅の割合をもとに評価されます。
被覆や介在物は銅として回収できないため、重量あたりでどれだけ銅が取れるかが取引の基準になるためです。この割合は銅率や歩留まりと呼ばれ、電線の種類によって差があります。
一本線のように導体が太く被覆が薄い電線では銅率が8割前後に達する一方、家電製品の内部配線のような細い線では大きく下回ります。同じ重量を持ち込んでも、種類が違えば評価は変わります。
注意が必要なのは、銅率の異なる電線を混ぜて搬入した場合です。全体が低いほうの区分に引きずられるため、銅率の高い電線を混載すると、本来得られる評価を下げることになります。

(2)被覆を除去した銅線はピカ線・2号銅線・込銅に分かれる
被覆を取り除いた裸銅線は、状態によって区分が分かれます。
最上位に位置するのがピカ線で、1号銅線や特一号銅線とも呼ばれます。断面の直径が1.3mm以上あり、酸化や変色がなく、メッキや塗装、油や紙などの付着物がない状態のものが該当します。
これらの条件を満たさない場合は、区分が下がります。断面が細いもの、くすみや黒ずみが出ているもの、錫メッキが施されているものは2号銅線として扱われ、端子などの異物が混じるものは込銅の区分になります。
| 区分 | 状態の目安 | 評価の傾向 |
|---|---|---|
| ピカ線(1号銅線) | 断面直径1.3mm以上、被覆を完全除去、酸化・メッキ・付着物なし | 銅スクラップの最上位 |
| 2号銅線 | 細物、くすみ・酸化あり、メッキあり | ピカ線から下がる |
| 込銅 | 端子などの付き物や他金属の混入あり | さらに下がる |
| 雑線 | 被覆が付いたままの電線 | 銅率に応じた評価 |
区分の呼称や境界は、事業者や地域によって表現が異なります。数値の基準を含めて、依頼先の検収区分を確認したうえで比較してください。
(3)被覆付きの電線は雑線として銅率区分で評価される
被覆を剥がさずに引き渡す電線は、雑線として銅率の区分で評価されます。
事業者によって雑線A・雑線B・雑線Cといった区分や、六割線・八割線のように銅率を名称に含めた区分が使われます。いずれも銅の含有割合を基準としており、区分ごとに単価が設定されています。
自社で被覆を剥いだほうが有利に見えますが、判断は慎重に行う必要があります。剥線の作業には人手と時間がかかり、剥き方が不十分で被覆が残ったり、銅線に傷が付いたりすると区分が下がるためです。
まとまった量が継続的に発生する事業所を除けば、被覆付きのまま種類別に分けて引き渡し、検収で銅率を評価してもらう形が現実的です。剥線の可否と、剥いた場合の評価差については、依頼先に確認したうえで判断してください。
(4)端子・メッキ・エナメル線は減額の対象になる
銅であっても、不純物とみなされる要素があれば評価は下がります。
代表的なのが、コネクタや圧着端子などの付き物、錫メッキ、エナメル被覆、油や紙の付着です。これらは銅として回収する際に除去工程が必要になるため、その分が評価に反映されます。
モーターやトランスから外したエナメル線は、外観が銅線でも別区分になります。同様に、錫メッキが施された電線もピカ線には該当しません。外観だけで区分を判断せず、電線の用途と仕様から確認してください。
保管状態も影響します。屋外に置いたままの銅線は酸化して黒ずみ、緑青が発生すると区分が下がります。撤去してから搬出するまでの期間が長いほど条件は悪化するため、発生後は早めに搬出するのが基本です。
(5)アルミ導体・光ケーブルは別ルートになる
すべての電線が銅として評価されるわけではありません。導体の材質によって受け入れ条件が変わります。
アルミ導体の電線、光ファイバケーブル、鉛被ケーブルは、銅線とは異なる処理ルートで扱われます。受け入れの可否も単価も別の基準になるため、銅線と混載すると全体の評価に影響します。
判別が難しいのは、外観が似ているアルミ導体の電線です。仕様書や電線の表示から材質を確認し、不明なものは分けて申告してください。
見積もりを依頼する段階で、種類ごとの概算重量とあわせて、アルミ導体や光ケーブルが含まれるかどうかを伝えておくと、当日の受け入れ拒否や再見積もりを避けられます。

4.廃電線を売却・処分する手順

ここでは、発生量の把握から書類の保管まで、排出事業者側の実務を順に整理します。
(1)発生元・種類・数量を洗い出す
処理の検討は、発生する電線の全体像の把握から始まります。
改修工事での撤去分、設備更新に伴う動力ケーブルや制御盤配線、拠点閉鎖時の一括撤去では、発生する電線の種類も量も異なります。工事ごとに個別対応していると、まとめれば有価で成立する量が、少量ずつの処分委託に分散してしまいます。
洗い出す項目は、電線の種類、導体の材質、太さの区分、概算重量、被覆の有無、保管場所と搬出経路です。工事に伴って発生するものは、施工業者から撤去材の内訳を受け取れる場合があります。
この段階で、売却を狙える分と処分委託になる分の見当を付けておくと、以降の相談先を切り分けやすくなります。
(2)種類別に分別して保管する
洗い出しと並行して、発生した電線を種類別に保管する運用を整えます。
分別されていない混載品は、選別の手間が評価に反映されるうえ、銅率の低い区分に合わせて査定される可能性があるためです。太物と細物、被覆付きと裸線、アルミ導体を分けるだけでも条件は変わります。
保管場所は屋内または雨のかからない場所を確保してください。屋外での長期保管は酸化を招き、区分の低下につながります。
あわせて、保管中の盗難対策も必要です。銅を含む金属は窃盗の対象になりやすく、撤去材を屋外に置いたままにする運用は避けるべきです。

(3)売却か処分委託かを判断する
分別ができた段階で、売却と処分委託のどちらに進むかを判断します。
判断の軸は、数量、銅率、分別状態、運搬距離の4つです。数量がまとまり銅率が高く、分別されていれば有価取引が成立しやすく、少量・低銅率・混合物では運搬費が上回り、産業廃棄物としての委託が現実的になります。
同じ案件の中で両方が併存することもあります。動力ケーブルは売却、劣化した細物と付着物の多い電線は処分委託という切り分けは、実務上よくある形です。
拠点ごとに少量ずつ発生する場合は、社内で集約してから相談することで条件が改善する可能性があります。ただし、集約のために長期保管を選べば酸化が進むため、保管環境と搬出時期のバランスで判断してください。
(4)検収条件込みで見積もりを取得する
依頼先が絞れたら、検収条件を含めた見積もりを取得します。
単価だけを比較しても意味を持ちません。どの区分で検収されるか、付き物や酸化をどう扱うか、計量方法と立ち会いの可否、運搬費の負担区分、提示価格の有効期限といった条件が異なれば、同じ単価でも手取りは変わるためです。
銅の建値は日々変動するため、見積もりの有効期限と、価格改定のタイミングは必ず確認してください。搬出日が先の場合は、当日の建値で確定する形になるのが一般的です。
産業廃棄物として委託する分については、収集運搬費と処分費が項目ごとに分かれているかを確認します。一式表記のみで内訳が示されない場合は、提示を依頼したうえで比較してください。
参考:https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/scrap/report.pdf#page=7
警察庁資料では、銅スクラップの年平均価格は2007年以降大きく変動し、令和5年平均は1kg当たり約1,131円です。同年のアルミニウム約185円、鉄約47円を大幅に上回り、銅率の高い廃電線が有価物になりやすい一方、見積価格の有効期間が重要であることを裏付けます。この価格差も銅線が取引対象になりやすい要因です。なお、図の数値は年平均の指標価格であり、個別の買取単価は銅率、付着物、運搬費、検収日などによって変動します。
(5)計量伝票・マニフェスト・本人確認記録を保管する
処理の完了は、書類による確認をもって判断します。
有価売却の場合は、廃棄物処理法上の委託手続きではなく取引として扱われるため、計量伝票と売買記録が確認資料になります。産業廃棄物として委託する場合は、収集運搬と処分それぞれについて書面での委託契約を締結し、産業廃棄物管理票(マニフェスト)を交付して各段階の返送を確認します。紙マニフェストの保存期間は5年間で、委託契約書も契約終了後5年間の保存が必要です。
これに加えて、金属盗対策法に基づく本人確認への対応記録も残しておきます。誰の名義で取引したのか、どの書類を提示したのかを社内で把握できる状態にしておけば、後日の照会に対応できます。
同じ案件で売却分と処分分が混在する場合は、どの電線がどちらのルートに乗ったかを対応づけて記録してください。社内報告や監査対応の場面で、重量ベースの内訳を求められることがあります。
参考:https://www.env.go.jp/content/900479496.pdf
5.廃電線のリサイクル業者の選び方

買取単価だけで依頼先を決めると、検収時の減額や法令面のリスクが残ります。この章では、選定時に確認すべき項目を整理します。

(1)許可と届出の状況を確認する
依頼先の選定では、法令上の資格の確認が第一の項目になります。
産業廃棄物として委託する可能性がある場合は、収集運搬業と処分業の許可品目に金属くずと廃プラスチック類の両方が含まれているかを確認します。混合物である廃電線は、いずれかが欠けていると委託できません。
有価売却の場合は、金属盗対策法に基づく特定金属くず買受業の届出状況を確認します。無届で営業した場合は罰則の対象であり、届出のない事業者との取引は自社のコンプライアンス上のリスクになります。
自治体によっては、金属くず営業に関する条例が別途適用されます。銅以外の金属も対象になるため、取引先の所在地に応じた対応状況もあわせて確認してください。
参考:https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/scrap/01_gaiyoupontie_japan.pdf#page=1
警察庁の概要資料は、令和6年の金属盗認知件数が令和2年の約4倍、被害額が約140億円に達したことを背景に、特定金属くず買受業の届出、相手方の本人確認、本人確認・取引記録の作成と保存、盗品の疑いがある場合の申告を示しています。リサイクル業者の選定では、買取単価だけでなく、届出や確認・記録体制の有無を確認する必要があります。なお、規制対象は銅および政令で定める金属を主体とする金属くずです。
(2)検収基準が開示されているかを確認する
見積もりの前提として、検収基準の開示を求めます。
区分の定義、減額となる条件、計量の方法と立ち会いの可否が事前に示されていれば、搬入後に想定外の区分で査定される事態を避けられるためです。
特に確認したいのは、付き物や酸化の扱いと、混載品をどう評価するかです。基準が明示されない事業者では、同じ電線でも回によって評価が変わる可能性があります。
継続的に発生する事業所では、区分ごとの単価表と検収基準を書面で受け取り、社内の分別ルールに反映しておくと、担当者が変わっても運用が安定します。
(3)被覆材まで含めた処理の道筋を確認する
銅の回収だけでなく、被覆材がどこへ行くのかを確認します。
導体を回収した後の樹脂を埋立処分に回すのか、再生ペレット化や熱回収まで対応するのかで、案件全体の再資源化率が変わるためです。取引先や親会社から廃棄物の削減実績を問われる立場にある場合、この違いが説明材料になります。
確認する項目は、被覆材の処理方法、再資源化率の実績、処理を再委託する場合の委託先です。廃棄物処理法上、委託した処理の再委託は原則として禁止されているため、産業廃棄物として委託する部分については各処理業者と直接契約する形が基本になります。
(4)混合物・少量発生への対応を確認する
現場の実態に合うかどうかも、選定の判断材料になります。
分別しきれない混載分をどう扱うか、拠点ごとに少量ずつ発生する場合に回収に来てもらえるか、最低ロットや回収頻度の条件はどうかを確認します。理想的な分別ができる現場ばかりではありません。
複数拠点を持つ事業者では、拠点ごとに別の業者と取引しているケースが少なくありません。窓口を集約できるかどうかは、単価だけでなく管理工数にも影響します。

(5)他の金属くずと一括で相談できるかを確認する
最後に確認したいのが、電線以外の発生材への対応範囲です。
設備更新や拠点閉鎖の現場では、電線と同時に制御盤の筐体、ケーブルラック、架台、配管、什器といった金属が発生します。品目ごとに窓口を分けると、その都度の手配と運搬が発生し、全体の効率が下がります。
鉄系と非鉄をまとめて相談できる体制があれば、運搬の集約によって条件が改善する余地があります。見積もりを依頼する段階で、電線以外に何が同時に発生するのかをあわせて伝えてください。
6.廃電線を資源循環に回すメリット

ここでは、廃電線を廃棄物ではなく資源として扱った場合の効果を、費用、資源、環境負荷の3つの観点から整理します。
(1)処分費用を売却収入に転換できる
有価取引が成立すれば、費用構造そのものが変わります。
産業廃棄物として処理する場合は、収集運搬費と処分費が発生します。これに対して有価物として引き渡せる場合は、処分費が発生しないだけでなく、売却額が収入として計上されます。同じ電線でも、扱い方によって支出と収入のどちらにもなり得ます。
成立しやすいのは、数量がまとまり、銅率が高く、種類別に分別されている場合です。逆に、少量が散発的に発生し、付着物や異物が多い場合は、運搬費が上回って成立しません。
そのため、拠点内に滞留している撤去材は、発生の都度個別に判断するより、一定量をまとめて相談したほうが条件は改善しやすくなります。ただし、保管環境の管理と併せて検討してください。
(2)銅は品質を落とさず循環できる資源である
廃電線から回収される銅は、繰り返し使える素材です。
銅は再生を経ても電気伝導性などの特性が大きく損なわれないため、使用済みの電線から取り出した銅も、精製工程を経れば新しい原料と同等に扱えます。電化の進展にともなって需要は拡大しており、国内で回収できる銅の価値は高まっています。
みずほ銀行の産業調査資料によると、2024年の銅スクラップは、国内での活用量が773千トンであるのに対し、輸出量は340千トン、輸出率は39%です。鉄スクラップの輸出率16%と比べると、銅は国外へ流出する割合が高く、国内で循環させる余地が残っていることを示しています。ただし、これは銅スクラップ全体の集計であり、廃電線由来の数量を切り出したものではありません。
日本銅センターの調査でも、回収された銅のリサイクル率は8割以上とされており、有価金属として継続的に循環するルートが確立しています。廃電線を適切な区分で引き渡すことは、この循環に乗せることを意味します。
参考:https://www.jcda.or.jp/learning/environment/index03.html

(3)被覆材まで再資源化すれば最終処分量を減らせる
資源循環の効果を高めるうえで論点になるのが、導体以外の部分の扱いです。
環境省の令和5年度実績では、産業廃棄物の再生利用率は金属くずが95.4%である一方、廃プラスチック類は63.0%にとどまります。廃電線の導体側はすでに高い水準で循環している一方、被覆材側には改善の余地が残っていることを示す数値です。なお、これは全国の品目別集計であり、廃電線単体の実績ではありません。
被覆材まで再資源化ルートに乗せられれば、最終処分量を減らし、廃棄物削減の実績として示せます。処理実績を売却重量と処分重量に分けて記録しておけば、社内報告や取引先からの照会にも対応しやすくなります。
(4)鉄系設備とまとめて回収すれば条件が改善する
廃電線の処理を単独で考えるより、現場から出る金属全体で捉えたほうが有利になる場合があります。
改修や拠点閉鎖の現場では、電線とともに制御盤の筐体、ケーブルラック、架台、配管といった鉄系の発生材が同時に生じます。重量で見れば鉄系のほうが大きく、これらをまとめて回収できれば運搬が集約され、案件全体の条件が整いやすくなるためです。
なかでも鉄は、カーボンニュートラルの潮流のなかで電炉化が加速し、質の高い鉄スクラップの国内循環が戦略資源として注目されています。鉄のサーキュラーエコノミーへの具体的な取り組みについては、以下の記事で解説しています。

7.まとめ
廃電線は、導体の金属くずと被覆の廃プラスチック類が一体になった混合物です。有価物になるか産業廃棄物になるかは品目で固定されるものではなく、数量、銅率、分別状態、運搬距離を含めた収支で決まります。運搬費が買取額を上回れば産業廃棄物として委託契約とマニフェストが必要になり、到着時有価の場合は運搬区間のみが対象になります。
評価を左右するのは銅率と表面の状態です。被覆を除去した裸銅線はピカ線から込銅まで区分が分かれ、被覆付きの電線は雑線として銅率で評価されます。端子やメッキ、酸化は減額の対象になるため、種類別の分別と早期の搬出が条件を左右します。
加えて、2026年6月に施行された金属盗対策法により、銅を主体とする金属くずの取引には本人確認と記録の作成が伴うようになりました。売却側も、取引名義と確認書類の提示体制を整えておく必要があります。
廃電線のリサイクルを効率よく進めるには、定期的に発生している返品や使用済み製品の量や状態、その行き先を把握し、廃棄以外の出口も含めた具体的なスキームを設計することが重要です。保管スペースの不足や、廃棄か再販かの判断、複数の処分業者の管理に負担を感じている場合は、五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」にご相談ください。





