オフィス家具の処分でつまずきやすいのが、「産業廃棄物なのか、事業系一般廃棄物なのか」という点です。解説によって説明が食い違うため、判断に迷った経験のある担当者は少なくないはずです。
この食い違いには理由があります。産業廃棄物の20品目には、業種指定のある品目とない品目があり、オフィス家具に使われる材質はその両方にまたがっているためです。スチールや樹脂は業種を問わず産業廃棄物になる一方、木材やファブリックは一般的なオフィスから排出される場合、事業系一般廃棄物として扱われます。
さらにオフィス家具は、1点のなかに複数の材質が組み合わされています。デスクはスチール脚に木製天板、チェアはスチール・樹脂・ファブリック・ウレタンの複合物です。この判断をどうするかが、委託先の選定にも費用にも影響します。
本記事では、区分が分かれる理由、品目別・材質別の区分整理、複合素材の判断、品目ごとの処分の要点、移転・退去に伴う大量処分の進め方、費用相場を整理します。
五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、オフィス家具を含む鉄系什器の廃棄から、金属スクラップとしての回収、国内製鉄所等への還流までを支援します。産業廃棄物としての適正処理と有価物としての回収を組み合わせ、処分費用の抑制と資源循環の両立を図ります。移転や拠点統廃合に伴う什器の処分ルートを検討している場合は、お気軽にご相談ください。
1.オフィス家具の廃棄物区分

区分の判断は、材質と業種指定の有無という2つの軸で整理できます。
(1)区分が分かれる理由は「業種指定」にある
オフィス家具の区分が一律に決まらない理由は、産業廃棄物の品目には業種指定のあるものとないものがあるためです。
一方、木くず、紙くず、繊維くずには業種の指定があります。木くずであれば建設業、木材・木製品製造業、パルプ製造業、輸入木材卸売業、物品賃貸業などが対象で、一般的なオフィスを構える業種はこれに含まれません。指定業種以外から排出された木くずは、事業系一般廃棄物として扱われます。
なお、いずれの場合も自治体の粗大ごみとしては排出できません。事業活動に伴って生じた廃棄物である以上、排出事業者の責任で処理する必要があります。
環境省の図は、廃棄物を「市町村の処理責任」である一般廃棄物と、「事業者の処理責任」である産業廃棄物に分け、一般廃棄物の中にも「事業系ごみ」があることを示しています。産業廃棄物は、事業活動に伴う廃棄物のうち法令で定める20種類です。この構造は、オフィスから出た家具でも一律に産業廃棄物とはならず、材質と排出業種の確認が必要という本文の主旨を裏付けます。なお、実際の区分は製品の材質構成と自治体の運用を確認する必要があります。
(2)品目別・材質別の区分マトリクス
主なオフィス家具の材質構成と、想定される区分を整理すると以下のようになります。
| 品目 | 主な材質構成 | 想定される区分 |
|---|---|---|
| スチールデスク | スチール(天板が木質の場合あり) | 金属くず(天板は木くず等) |
| 木製デスク・役員デスク | 木材+金属部品 | 事業系一般廃棄物(金属部品は金属くず) |
| 事務チェア | スチール・アルミ+樹脂+ファブリック+ウレタン | 金属くず+廃プラスチック類(ファブリックは繊維くず等) |
| ソファ・応接セット | 木製フレーム+ウレタン+革・ファブリック | 事業系一般廃棄物+廃プラスチック類 |
| キャビネット・書庫 | スチール(樹脂引き出し、ガラス扉の場合あり) | 金属くず(ガラス部はガラスくず等) |
| ロッカー | スチール(樹脂・木製もあり) | 金属くず |
| パーテーション | アルミ+ガラス・樹脂・スチール | 金属くず+ガラスくず等 |
| OAフロア | 樹脂製・スチール製・コンクリート製 | 材質により廃プラスチック類、金属くず、がれき類等 |
| ホワイトボード | スチール+アルミ枠 | 金属くず |
(3)複合素材はどう判断するか
オフィス家具の多くは、単一材質ではありません。ここが実務上いちばん判断に迷う部分です。
もうひとつは、分離が困難な場合の扱いです。この場合は主要な材質による判断や、混合廃棄物としての処理になりますが、判断は自治体や処理業者によって運用が異なります。とくにチェアのように4種類以上の材質が一体化している品目は、分離のコストが実益を上回ることが多く、混合廃棄物として処理されるのが現実的です。
なお、分離できるものを分離すれば、金属部分は有価物として評価される可能性が生まれます。区分の整理は法令遵守だけでなく、費用面でも意味を持ちます。
排出事業者責任の具体的な条文と罰則、マニフェストのA票からE票までの運用、保管期間、廃棄後の会計処理については、「スチール棚・オフィスラックの廃棄処分|産業廃棄物の要件、実務フロー」で詳しく解説しています。

2.品目別の処分方法と注意点

ここでは、品目ごとに押さえておくべき要点を整理します。詳細な解説がある品目については、個別記事もあわせてご確認ください。
(1)デスク・テーブル類
デスクは、天板の材質によって扱いが分かれる代表的な品目です。
(2)チェア・ソファ類
チェアは、オフィス家具のなかで最も材質構成が複雑な品目です。
事務チェアは、スチールまたはアルミの脚、樹脂製の背座シェルとキャスター、ファブリックの張地、ウレタンのクッション材で構成されます。ガスシリンダーを内蔵している製品も一般的です。
(3)キャビネット・書庫・スチール棚
キャビネットや書庫は、スチール製が主流で金属くずとして扱いやすい品目です。
スチール棚・オフィスラックの区分判断、逆有償の考え方、実務フローについては、「スチール棚・オフィスラックの廃棄処分|産業廃棄物の要件、実務フロー」で詳しく解説しています。

CJCの図表では、2020年度の産業廃棄物の再生利用率は、金属くず96%、木くず84%、廃プラスチック類62%、ガラス・コンクリート・陶磁器くず77%です。金属くずの再生利用率が主要素材の中でも高いことから、スチール製キャビネットや書庫を金属くずとして切り分ける意義を補強できます。ただし、全国の産業廃棄物全体の集計であり、オフィス家具だけの実績ではありません。樹脂引き出しやガラス扉の混在、分離可否により実際の処理ルートは変わります。
(4)ロッカー
ロッカーは金属くずとして処理できますが、他の什器にはない事前工程があります。
(5)パーテーション・OAフロア
内装に組み込まれた什器は、撤去工事を伴う点が他の品目と異なります。
パーテーションはアルミフレームにガラスや樹脂パネルを組み合わせた構造が一般的で、床・天井への固定を解除する工事が必要です。ガラスパネルは破損防止の養生を伴い、搬出にも手間がかかります。
3.オフィス家具の処分ルートの選択肢

オフィス家具の処分には、廃棄以外の選択肢があります。
| 選択肢 | 成立しやすい条件 | 留意事項 |
|---|---|---|
| 廃棄(産業廃棄物・事業系一般廃棄物) | 品目・状態を問わず対応できる | 材質により委託先の許可が異なる。処理費が発生 |
| 売却(中古買取) | 主要メーカー品で使用年数が浅く、同型が複数揃っている | 搬出費を差し引くと収支が出ないこともある |
| 資源循環(金属スクラップ) | スチール製部材を分離でき、数量がまとまる | 分別状態と市況による |
| 社内再利用・他拠点への移管 | 移管先に同等品の需要がある | 搬送費と処分費の比較が必要 |
(1)4つのルートの使い分け
確認の順序は、社内再利用、売却、資源循環、廃棄です。前の段階で処理できる分だけ、廃棄対象が減り総額が下がります。
環境省の2022年度フローでは、産業廃棄物3億7,407万トンのうち、2億269万トン(54.2%)が再生利用され、1億6,236万トン(43.4%)が減量化、902万トン(2.4%)が最終処分されています。排出後の行き先が一つではないことは、什器を再利用・売却・資源循環・廃棄に振り分ける本文の考え方と整合します。ただし、これは全産業・全品目の全国集計であり、オフィス家具の比率ではありません。家具の状態、材質、地域の受入条件によって各ルートの成立割合は変わります。
回収した鉄を再び鋼材の原料に戻す資源循環の仕組みについては、以下の「鉄のサーキュラーエコノミー|事例や鉄鋼製品一覧、リサイクル性も」の記事で解説しています。

(2)中古買取が成立しやすい条件
売却を検討する際、買取事業者が評価する条件はある程度共通しています。
事業者が公表している基準を整理すると、次のような傾向があります。
- 国内の主要メーカー品であること
- 使用年数が浅いこと(おおむね5年以内)
- 色が白やベージュなど、現在の主流に合っていること
- 同じ品番のものが複数まとまっていること
- キャビネットや書庫では、鍵が揃っていること
注意したいのは、買取額から搬出・運搬費が差し引かれる点です。オフィス家具は大型で搬出に手間がかかるため、査定額が付いても実際の支払いには至らないケースがあります。それでも、廃棄費用を圧縮できるという点では意味があります。
査定を依頼する際は、メーカー名、品番、購入時期、数量、色、状態がわかる写真を整理して提示してください。
4.オフィス移転・退去に伴う大量処分の進め方

移転や退去では、期限のある工程管理が必要になります。
(1)原状回復期限から逆算してスケジュールを組む
賃貸オフィスの退去では、明渡し日までに原状回復を完了させる必要があります。什器の搬出は、その前提となる工程です。
計画上の要点は、什器の棚卸しと仕分けを早い段階で終えておくことです。移転作業と並行して仕分けを行うと、判断が現場任せになり、売却できる什器まで廃棄に回ります。移転先のレイアウト確定と同じタイミングで、持っていくもの・処分するものの線引きを済ませてください。
(2)品目・状態ごとに仕分ける
スケジュールが固まったら、什器の棚卸しと仕分けを行います。
仕分けの際は、判断に迷うものを廃棄側に寄せないことが要点です。多少の傷や汚れがあっても買取対象になることがあり、写真を添えて査定に含めてもらうほうが結果的に有利になります。
(3)搬出当日の体制を確保する
大量処分では、搬出当日の体制が工程を左右します。
5.オフィス家具の処分費用の内訳と相場

オフィス家具の処分費用は、主に以下の項目で構成されます。
| 費用項目 | 内容 |
|---|---|
| 収集運搬費 | 事業所から処理拠点までの運搬、車両手配 |
| 処分費 | 品目・区分ごとの処理 |
| 解体・搬出作業費 | 分解、階下への搬出、養生、人員手配 |
| 買い取り | 中古買取・金属スクラップ売却による相殺分 |
これらは事業者が公表している目安であり、品目、数量、搬出条件、地域によって変動します。
(1)費用に影響する要素
金額を左右するのは、品目と数量、材質、搬出条件、解体の要否です。
数量がまとまるほど1点あたりの単価は下がる傾向がありますが、材質が混在すると委託先が分かれ、車両手配も増えます。搬出条件では、設置階、エレベーターの有無と内寸、搬出経路の幅、作業可能時間帯が影響します。
日本鉄リサイクル工業会の価格表では、鋼スクラップ(H2品種)の関東・中部・関西3地区平均は、2026年1月の43,000~47,000円/トンから、6月には53,500~55,500円/トンへ動いています。同じ金属くずでも時期と地域で評価額が変わるため、スクラップ売却による相殺額は固定ではなく、処分費の総額を左右する要素です。なお、掲載値は電炉メーカーまたは輸出用岸壁への持込み渡しベースで、家具の引取価格そのものではありません。異物混入、分別状態、数量、運搬費でも実際の査定は変動します。
(2)見積もりの取り方
見積もりでは、内訳が項目ごとに分かれているかを確認します。
6.委託業者選定のポイント

オフィス家具の処分では、複数の区分にまたがる点が業者選定に影響します。
(1)許可の範囲と対応品目を確認する
委託先の選定では、許可の内容確認が前提になります。
環境省の集計では、新たに判明した産業廃棄物の不法投棄は、1998年度の1,197件・42.4万トンから長期的には減少したものの、2023年度も100件・4.2万トンが確認されています。件数がゼロではないことは、排出事業者が委託先の許可区域・許可品目・有効期限を事前確認する必要性を裏付けます。ただし、図の対象は原則1件10トン以上で、大規模事案を過年度分と区別して表示している年もあります。年ごとの投棄量は一部の大規模事案に左右されるため、単純な前年差だけで評価しない点に留意が必要です。
(2)買取・資源化・廃棄を切り分けて見積もれるか
オフィスから発生する什器は、状態も材質も混在しているのが通常です。
7.まとめ
オフィス家具の処分は、区分の整理から始まります。区分が一律に決まらないのは、産業廃棄物の品目に業種指定のあるものとないものがあるためです。スチールや樹脂は業種を問わず産業廃棄物になる一方、木材やファブリックは一般的なオフィスから排出される場合、事業系一般廃棄物として扱われます。委託先に必要な許可が変わるため、この判断は避けて通れません。
さらにオフィス家具は複合素材の製品です。分離できるものは分離し、困難なものは主要材質または混合廃棄物として扱いますが、運用は自治体や処理業者によって異なります。自己判断せず、品目と材質構成を一覧化したうえで確認してください。
移転や退去では、明渡し日から逆算した工程管理が必要です。什器の搬出が遅れれば原状回復工事に着手できません。移転先のレイアウト確定と同じタイミングで棚卸しと仕分けを終え、社内再利用、売却、資源循環、廃棄の順に振り分けることで、廃棄対象を減らせます。
五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、オフィス家具を含む鉄系什器の廃棄から、国内製鉄所等への還流によるクローズドループの構築までを支援します。移転や拠点統廃合に伴う什器の適正処分と、鉄をはじめとする素材の資源化をご検討の際は、ぜひご相談ください。







