鋳物スクラップは、同じ鉄系のスクラップでありながら、鋼くずとは性質も取引の扱いも異なります。炭素を多く含むため脆く、溶解時の挙動も違うことから、買取事業者の品目表では「鋳物」「鋳鉄」「鋳物ダライ粉」として鋼くずとは別に区分されています。
素材としては、ねずみ鋳鉄(FC材)と球状黒鉛鋳鉄(FCD材)という明確な違いがあります。ただし、スクラップの買取単価がこの鋼種で分かれているかというと、実務はやや異なります。実際に価格を動かしているのは、形状と異物の混入状況です。
本記事では、鋳物スクラップの定義と鋼くずとの違い、FC材・FCD材の特徴と買取実務での扱い、鋳物ダライ粉の取り扱い、発生源、価格を左右する要因、そして処理・売却時の注意点を整理します。
五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、鉄を主原料とする製品・設備の廃棄や資源循環を起点に、サーキュラーエコノミーへの移行を支援するサービスです。 廃棄物を国内製鉄所等へ還流させるクローズドループの構築など、カーボンニュートラルや循環型社会の実現に向けた取り組みを、コスト削減と両立する形で支援します。鋳物工場や機械メーカーで継続的に発生する金属スクラップの回収・再資源化スキームを検討したい場合にはぜひご相談ください。
1.鋳物スクラップとは|鋼くずとの違い

鋳物スクラップは、鉄系スクラップのなかでも鋼くずとは別枠で扱われる品種です。
(1)鋳物スクラップの定義
鋳物とは、溶かした金属を鋳型に流し込んで成形した製品を指します。鋳物スクラップは、その製造過程や使用後に発生する金属くずです。
金属くずの基本的な区分や有価物としての判断基準については、「産業廃棄物の金属くずとは?有価物の判断、スクラップごとの違い等」で整理しています。

(2)鋼くずとの性質・取引上の違い
鋳物が鋼くずと別枠で扱われる理由は、素材としての性質の違いにあります。
つまり、鋳物を鋼くずに混ぜて出すことは、双方にとって不利になります。受け入れ側は成分管理ができず、排出側は本来の単価で評価されません。鋳物工場や機械加工工場では、この分別が日常の運用として重要になります。
鉄スクラップ全体の分類や検収規格の考え方については、「産業廃棄物の鉄くずとは?マニフェストや買取時の注意点、リサイクル」で解説しています。

日本鉄リサイクル工業会の資料では、2008年の国内鉄スクラップ供給量は4,727.1万トン、国内消費量は4,592.7万トンです。消費先には「鋳物用他」として571.7万トンが明示され、電炉用や転炉用とは別の需要ルートが形成されています。これは、鋳物関連の原料が製鋼用スクラップと同一条件で扱われないことを補足するデータです。ただし、鉄スクラップ全体の2008年実績であり、鋳物スクラップ単体の流通量や現在の需給を示すものではありません。
(3)有価物として売却できる場合と産業廃棄物として処理する場合
鋳物スクラップも、取引の実態によって有価物と産業廃棄物のどちらにもなり得ます。
2.鋳物の種類と分類|価格差が生まれる理由

鋳物には素材としての明確な分類がありますが、スクラップ取引での扱いはやや異なります。
(1)FC材(ねずみ鋳鉄)とFCD材(ダクタイル鋳鉄)の違い
鋳鉄の代表的な区分が、ねずみ鋳鉄(FC材)と球状黒鉛鋳鉄(FCD材)です。両者の違いは、組織中に含まれる黒鉛(グラファイト)の形状にあります。
| FC材(ねずみ鋳鉄) | FCD材(球状黒鉛鋳鉄・ダクタイル鋳鉄) | |
|---|---|---|
| JIS規格 | JIS G5501「ねずみ鋳鉄品」 | JIS G5502「球状黒鉛鋳鉄品」 |
| 黒鉛の形状 | 片状 | 球状 |
| 鋼種 | FC100〜FC350の6鋼種 | 別鋳込み供試材で10鋼種ほか |
| 強度・靭性 | 脆く、延性に乏しい | FCの数倍の強度。靭性・延性に優れる |
| 主な用途 | 工作機械のベッド、シリンダー、設備部品 | 自動車部品、上下水道用ダクタイル鋳鉄管、マンホール蓋 |
このほか、急冷によって炭素がセメンタイトとして析出した白鋳鉄、ねずみ鋳鉄と白鋳鉄が混在するまだら鋳鉄、可鍛鋳鉄などの区分もあります。
日本機械学会の回転曲げ疲労試験では、疲労限度はFC材115MPa、FCD材260MPaで、FCD材はFC材の約2.3倍でした。引張強さもFC材301MPaに対してFCD材541MPaです。黒鉛を球状化したFCD材が、片状黒鉛のFC材より強度面で優れるという本節の説明を具体的に補足します。ただし、数値は特定の化学組成、試験片形状、回転速度50Hzで得られた結果です。すべてのFC・FCD材の一般値や、スクラップ買取時の価格差を示すデータではありません。
(2)スクラップ取引では鋼種で区分されないことが多い
ここで押さえておきたいのが、素材としての区分と、スクラップとしての取引区分は一致しないという点です。
理由は、スクラップの検収が化学成分ではなく、形状、重量、異物の混入状況といった外形的な基準で行われるためです。FC材とFCD材は外観からの判別が難しく、現場での検収に馴染みません。
したがって、排出側が意識すべきは鋼種の分別ではなく、形状別・材質別の分別になります。具体的には、鋳物と鋼くずを混ぜないこと、塊状のものとダライ粉を分けること、砂や他金属を混入させないことです。
(3)鋳物ダライ粉の特性と取り扱い
鋳物スクラップのなかでも、独自の扱いを受けるのが鋳物ダライ粉です。
取り扱い上の論点は3つあります。ひとつは切削油の付着です。加工時の油分が残ったままでは、受け入れ条件を満たさないか、減額の対象になります。ふたつめは保管方法です。粉状であるため飛散しやすく、湿気を含むと固結や発錆が進みます。屋内でのフレコンやドラムでの保管が基本になります。
3.鋳物スクラップの発生源・具体例

鋳物スクラップは、製造工程と使用後の双方から発生します。
(1)鋳物工場・鋳造メーカー
鋳造の工程そのものが、鋳物スクラップの主要な発生源です。
(2)工作機械・産業機械
鋳鉄は振動吸収性に優れるため、工作機械のベッドやフレームに広く使われています。
経済産業省「生産動態統計」に基づく図では、2021年8月の銑鉄鋳物生産量は、産業機械器具用が3万2,231トン、金属工作・加工機械用が7,441トンです。2011年上期平均はそれぞれ4万5,723トン、1万888トンで、長期的な変動を伴いながら一定規模の生産が続いています。この継続生産が、設備部品や加工工程から鋳物スクラップが発生する背景を補足します。ただし、生産量は廃棄量ではなく、設備更新時期や製品寿命によってスクラップ化する時期と数量は変わります。
(3)自動車部品
自動車には、エンジンブロック、ブレーキドラム、ブレーキディスク、各種ハウジングなど多くの鋳物部品が使われています。
経済産業省「生産動態統計」によると、2021年8月の自動車用銑鉄鋳物生産量は14万1,085トンで、前月比26.1%減、前年同月比9.3%増でした。2007年平均を100とした指数は63.5ですが、他用途と比べても大きな生産規模が確認できます。これは、エンジンやブレーキなど自動車部品が鋳物スクラップの主要な発生源になり得ることを補足します。ただし、生産統計であって、整備工場や使用済自動車から同じ月に発生するスクラップ量を示すものではありません。
(4)インフラ・建築設備
公共インフラや建物設備にも、鋳物は多く使われています。
4.鋳物スクラップの処理方法

鋳物スクラップは、再溶解によって繰り返し利用できる素材です。
(1)リサイクル処理(回収・再溶解)
鋳物スクラップの基本的な処理は、再溶解による原料化です。
環境省の令和5年度実績では、産業廃棄物の再生利用率は金属くずが95.4%と、産業廃棄物全体のなかでも高い水準にあります。鋳物スクラップも金属くずとして高い再資源化可能性を持ちますが、砂や切削油、他金属が混入した状態では、このルートに乗せられません。なお、この数値は全国の金属くず全体の実績であり、鋳物単体の再生率を示すものではありません。実際の受入可否は、形状、付着物、分別の程度、受入業者の条件によって変わります。
鋳物も鋼材も、再溶解を経て繰り返し製品に戻せる点は共通しています。鉄鋼製品ごとのリサイクル性や、素材を循環させる取り組みの事例については、「鉄のサーキュラーエコノミー|事例や鉄鋼製品一覧、リサイクル性も」で解説しています。

(2)産業廃棄物として処理が必要なケース
有価売却が成立しない場合は、産業廃棄物として処理します。
5.鋳物スクラップの買取・価格相場

鋳物スクラップの価格は、形状と混入状況、そして市況で決まります。
(1)価格相場の目安
鋳物スクラップの単価は、鉄系スクラップのなかでも低めの水準に設定されるのが一般的です。
参考として、2026年7月時点である買取事業者が公表していた価格を並べると、水準の関係が確認できます。
| 品目 | 単価の目安 |
|---|---|
| 敷鉄板 | 59.5円/kg |
| ギロチン材C | 51.5円/kg |
| ガス切材 | 47円/kg |
| 鉄ダライ粉 | 25.5円/kg |
| 鋳物ダライ粉 | 21.5円/kg |
図では、鉄スクラップ価格が2008年に1トン7万円を超える水準まで上昇した後、同年後半には1万円前後まで急落し、その後再び上昇しています。短期間でも数万円単位で変動し得ることから、鋳物スクラップの有価売却と逆有償の境界が市況によって変わるという本節の説明を補強します。ただし、対象は2005~2010年の一般的な鉄スクラップ価格であり、鋳物・鋳物ダライ粉の単価や現在価格を直接示すものではありません。地域、品位、数量、運搬条件も実際の査定額に影響します。
(2)価格を左右する要因
鋳物スクラップの価格は、以下の要素で決まります。
- 形状:塊状かダライ粉か。ダライ粉は嵩張るため単価が下がる
- 異物の混入:鋼くず、非鉄金属、樹脂、ゴムの混入
- 付着物:鋳型の砂、切削油、塗装、土砂、コンクリート
- 数量:まとまるほど運搬効率が上がり条件が整う
- 市況:鉄スクラップ相場の変動
(3)買取不可・減額となるケース
以下に該当する場合、買取が難しくなるか、大幅な減額の対象となります。
- 鋳物以外の金属が混入しているもの
- 鋳型の砂が大量に付着したままのもの
- 切削油が多量に残留しているダライ粉
- 樹脂やゴム、ベアリングなどと一体化しているもの
- 土砂やコンクリートが固着したもの
6.鋳物スクラップの処理・売却時の注意点

継続的に発生する事業所ほど、運用の設計が条件を左右します。
(1)委託先の許可確認とマニフェスト
産業廃棄物として処理を委託する場合は、委託先の許可確認が前提になります。
(2)分別精度が価格と環境面の双方に効く
鋳物スクラップにおいて、分別精度は売却額に直結する管理項目です。
前章までのとおり、鋳物は鋼くずと混ざれば双方の評価が下がり、砂や油が付着すれば減額されます。単価水準が低い品目であるだけに、減額の影響が相対的に大きくなります。
7.まとめ
鋳物スクラップは、炭素を多く含む鋳鉄から発生する金属くずであり、鋼くずとは性質も取引区分も異なります。買取事業者の品目表でも「鋳物」「鋳鉄」「鋳物ダライ粉」として鋼系とは別に設定されており、混ぜて排出すると双方の評価が下がります。
素材としては、片状黒鉛のFC材(ねずみ鋳鉄)と球状黒鉛のFCD材(球状黒鉛鋳鉄)に大別され、強度・用途とも大きく異なります。ただし、スクラップの買取実務では鋼種別に単価が設定されることは一般的ではありません。検収が化学成分ではなく形状や異物の混入状況で行われるためです。排出側が意識すべきは鋼種の分別ではなく、形状別・材質別の分別になります。
価格水準は鉄系スクラップのなかでも低めに設定される傾向があり、鋳物ダライ粉は鉄のダライ粉を下回ります。単価が低い分、混入や付着物による減額の影響が相対的に大きく、逆有償の境界も近くなります。回収容器を材質ごとに分け、切削油や砂の管理を工程に組み込むことが、そのまま条件の維持につながります。
サーキュラーエコノミーへの移行を進める上では、自社の資源循環の実態を把握し、具体的なスキームを設計することが重要です。鋳物をはじめとする鉄を主原料とする製品・設備の廃棄や資源循環にお困りの場合は、五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」にご相談ください。








