鉄筋のリサイクルとは|解体現場でのコンクリート分離と資源循環の仕組み

鉄筋コンクリート造の建築物を解体すると、コンクリートと一体になった大量の鉄筋が発生します。この鉄筋は、分離・選別と切断加工を経て、ヘビースクラップとして電炉の製鋼原料に戻る資源です。

ただし、同じ鉄筋でも扱われ方は一様ではありません。鉄スクラップの検収規格では寸法によって等級が分かれ、長尺のまま出せば一段下の評価になります。コンクリートの付着は規格上の不純物として扱われ、減額の対象です。つまり、解体現場での分離と加工の精度が、そのまま資源としての評価を左右します。

本記事では、鉄筋の検収規格上の位置づけ、建設リサイクル法における扱い、解体現場でのコンクリート分離の実務、価格を左右する要因、そして電炉での再生がもたらすCO2削減効果を整理します。

五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、鉄を主原料とする製品・設備の廃棄や資源循環を起点に、サーキュラーエコノミーへの移行を支援するサービスです。 廃棄物を国内製鉄所等へ還流させるクローズドループの構築など、カーボンニュートラルや循環型社会の実現に向けた取り組みを、コスト削減と両立する形で支援します。解体・建設現場から発生する鉄スクラップの回収・資源循環スキームを検討したい場合にはぜひご相談ください。

なお、鉄リサイクル全体の仕組みや市況、業者の選び方については「鉄リサイクルとは?仕組み・価格・リサイクル率から業者の選び方など」で解説しています。

目次

1.鉄筋リサイクルの基本的な仕組み

鉄筋は、鉄スクラップのなかでも建築系スクラップとして位置づけられる品種です。

(1)鉄筋はヘビースクラップに分類される

鉄スクラップは、日本鉄源協会が定める鉄スクラップ検収統一規格によって等級分けされます。鉄筋が該当するのは、このうちヘビースクラップと呼ばれる区分です。

ヘビースクラップは、ギロチンシャーやガス溶断で寸法を整えたスクラップを指し、HSおよびH1からH4までの等級があります。主な等級の基準は以下のとおりです。

等級厚さ寸法(幅×長さ)主な内容
HS6mm以上500mm以下×700mm以下良質な厚物
H16mm以上500mm以下×1,200mm以下H形鋼などの形鋼、太径の鉄筋
H23mm以上6mm未満500mm以下×1,200mm以下解体で発生する鉄骨・鉄筋。国内で最も流通量が多い

鉄筋は径によってH1相当にもH2相当にもなり得ますが、解体現場から発生する鉄筋は、鋼矢板などとともにH2に含まれるのが実務上一般的です。H2は国内で最も流通量の多い品種であり、鉄スクラップ価格の指標としても使われます。

ここで重要なのが、寸法の要件です。切断されていない長尺の鉄筋は、上記の等級には該当せず、「ギロチン材」として扱われます。ギロチン材は、H1やH2を生産するための母材という位置づけであり、加工前の状態として一段下の評価になります。厚さ6mm以上の長尺物がギロチン材A、3mm以上のものがギロチン材Bです。

金属くずとしての基本的な区分や買取時の考え方については、「産業廃棄物の鉄くずとは?マニフェストや買取時の注意点、リサイクル」で整理しています。

参考:https://www.jisri.or.jp/documents/recycle/kikaku2008.pdf

一般財団法人機械システム振興協会の表では、2022年の国内購入スクラップは2,279.4万トンで、このうちヘビースクラップは1,420.2万トン、構成比62.3%を占めます。H2だけでも313.6万トン、13.8%です。解体由来の鉄筋が実務上H2として扱われることが多い点を踏まえると、鉄筋は国内流通の中心的な鉄源の一部といえます。数値は2022年実績であり、発生量や品種構成は建設・製造活動、輸出入、電炉の稼働状況により変動します。

(2)鉄筋が発生する場面

鉄筋スクラップが発生するのは、主に以下の場面です。

  • 建築物の解体工事:鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造のビル、マンション、工場の解体
  • 土木構造物の撤去:橋梁、擁壁、水路、基礎構造物の撤去
  • 新築・改修工事の端材:現場での加工に伴って発生する切断端材
  • プレキャスト製品の廃棄:U字側溝、PC版などの二次製品

このうち、発生量が最も大きいのは建築物の解体工事です。鉄筋コンクリート造の建物には構造材として大量の鉄筋が組み込まれており、解体によってまとまった量が一度に発生します。

一方、新築工事の端材は、加工履歴が明確で異物の付着が少ないという特性があります。同じ鉄筋でも、発生源によって状態が大きく異なる点が、後述する価格差につながります。

(3)建設リサイクル法における鉄筋の位置づけ

解体工事に関わる法令として押さえておきたいのが、建設リサイクル法(建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律)です。

同法が再資源化を義務づけている特定建設資材は4品目で、①コンクリート、②コンクリート及び鉄から成る建設資材(プレキャスト鉄筋コンクリート版等)、③木材、④アスファルト・コンクリートです。

ここで注意したいのが、金属類そのものは特定建設資材に含まれていないという点です。鉄骨や鉄筋は、法令上の再資源化義務の対象品目ではありません。

では鉄筋コンクリートはどうかというと、「コンクリート」として特定建設資材に該当します。つまり、鉄筋コンクリート造の建物を解体する場合、コンクリート塊の再資源化が法的な義務となり、その工程で鉄筋が分離されるという構造になります。鉄筋の回収は、法令上の義務としてではなく、コンクリート再資源化の要請と、鉄が有価物であるという経済的な理由から生じているということです。

なお、行政の解釈でも、鉄は有価で引き取られた場合には廃棄物に該当せず、特定建設資材廃棄物にはあたらないと整理されています。この点が、鉄筋を廃棄物ではなく資源として扱う実務の根拠になります。

参考:https://www.pref.osaka.lg.jp/o130180/kenshi_shinsa/recycle_index/qa_qa1.html

2.解体現場における鉄筋とコンクリートの分離

鉄筋リサイクルの成否は、解体現場での分離工程でほぼ決まります。

(1)分別解体によるコンクリートとの分離

鉄筋コンクリート造の解体では、コンクリートを破砕して鉄筋を露出させ、分離する工程が中心になります。

一般的には、大型ブレーカーや圧砕機によってコンクリートを破砕し、鉄筋を引き出したうえで切断していきます。この工程は建設リサイクル法が求める分別解体そのものであり、コンクリート塊を再生骨材として再資源化するためにも、鉄筋の除去が前提になります。

コンクリートと鉄筋を混在させたまま搬出すると、双方の再資源化が成立しません。コンクリート側は再生骨材の品質基準を満たさず、鉄筋側は不純物混入として評価が下がります。

現場での作業内容や重機の選定は解体業者の領域ですが、発注者側としては、分別解体の方法と分離後の鉄筋の扱いを、発注仕様の段階で確認しておくことが実務的な関与になります。

素材別の分別解体が処理費用に与える影響については、「解体廃材はリサイクルできる?再資源化や買取活用で処分費用を削減」で解説しています。

国土交通省の2018年度調査では、コンクリート塊の再資源化率は2008年度97.3%、2012年度99.3%、2018年度99.3%で、同年度の目標「99%以上」を達成しています。高い再資源化率を維持するには、解体時にコンクリートから鉄筋などの異物を取り除き、再生砕石等の品質を確保する工程が前提です。ただし、この数値は全国の建設工事を対象とした調査結果で、個別現場の分離精度や処理条件を直接示すものではありません。

(2)切断加工による寸法調整

分離した鉄筋は、そのままでは製鋼原料として使えません。規格寸法への切断加工が必要になります。

前章のとおり、H1・H2に該当するには幅500mm以下・長さ1,200mm以下という寸法要件を満たす必要があります。解体現場から出る鉄筋は数メートル単位の長尺物であることが多く、そのままではギロチン材として扱われます。

加工には、ギロチンシャーによるせん断、ガス溶断などが用いられます。現場で一次切断を行い、スクラップ業者のヤードで規格寸法に整えるという分担が一般的です。

どこまでを現場で加工し、どこからを業者側で行うかは、費用と手取りの両面に影響します。現場加工には人員と機材が必要ですが、その分、引き渡し時の等級が上がります。逆に、長尺のまま引き渡せば現場負担は軽くなるものの、ギロチン材としての評価になります。数量と現場条件を踏まえて、事前に業者と取り決めておく項目です。

(3)分離精度が等級と価格を左右する

鉄筋スクラップの評価を決めるのは、寸法と付着物の状態です。

鉄スクラップ検収統一規格では、不純物として付着・混入が問題となるものが列挙されており、そのなかにコンクリートが明記されています。つまり、コンクリートの付着が減額や受け入れ拒否の理由になることは、規格上も裏付けられているということです。

同様に、塗装、タール、プラスチック、ガラス、繊維などの付着物も不純物として扱われます。解体現場から出る鉄筋は、これらが付着しやすい環境にあります。

分離精度を上げることは、そのまま資源としての価値を上げることにつながります。同じ重量の鉄筋でも、コンクリートが付着したまま搬出するのと、清浄な状態で規格寸法に加工して引き渡すのとでは、等級が変わり単価が変わります。解体工事の計画段階で分別の基準を明確にしておくことが、費用面での効果を生みます。

3.鉄筋スクラップの価格を左右する要因

鉄筋スクラップの価格は、品質と市況の両面で決まります。

(1)等級・寸法・付着物

排出側でコントロールできるのが、等級を決める要素です。

具体的には、規格寸法への加工が済んでいるか、コンクリートや塗装の付着がないか、他の金属や異物が混入していないか、数量がまとまっているかといった点です。前章のとおり、長尺のままか切断済みかで区分が変わり、付着物の程度で減額の有無が変わります。

現場から出る鉄筋には、太径のものと細径のものが混在します。径によって該当する等級が分かれるため、可能な範囲で分けて排出できれば条件が整いやすくなります。

(2)鉄スクラップ市況

一方、排出側でコントロールできないのが市況です。

鉄スクラップ価格は国際市況、為替、国内電炉の稼働状況、輸出動向によって変動し、短期間でも水準が動きます。売却のタイミングによって手取りが変わるため、まとまった量が発生する解体工事では、搬出時期の相場も判断材料になります。

鉄スクラップの相場動向、価格の変動要因、買取業者の種類と選び方については、130の記事で詳しく解説しています。

スクラップ発生量は1990~2020年に一定ではなく、2000年代半ばまで増加した後、2009年に大きく減少し、その後も年ごとに変動しています。内訳も、製鉄所内部発生、加工スクラップ、老廃スクラップ、輸出で動きが異なります。こうした供給量の変化は、鉄スクラップ価格を左右する需給要因の一つであり、解体工事の搬出時点で相場確認が必要となる背景です。図は2020年までの推移で、価格そのものは示さず、為替・海外相場・電炉稼働など他の要因も別途考慮が必要です。

4.鉄筋リサイクルの工程|回収から製鋼原料まで

分離・加工された鉄筋は、次の工程で製鋼原料に戻ります。

(1)スクラップ業者による回収・選別・加工

現場から搬出された鉄筋は、スクラップ業者のヤードで検収・選別・加工を受けます。

搬入時に計量と検収が行われ、寸法と付着物の状態から等級が判定されます。ここで長尺物はギロチンシャーで規格寸法に切断され、混入した異物は取り除かれます。磁力選別により、非鉄金属や不純物との分離も行われます。

検収の結果が単価に直結するため、搬入前の状態が重要になります。複数の解体現場から発生する鉄筋を一定期間まとめて搬出することで、ロット効率を高める方法もあります。

(2)電炉での溶解と再生

選別・加工された鉄筋スクラップは、電気炉(電炉)で溶解されて新たな鋼材になります。

電炉は鉄スクラップを主原料とする製鋼方式で、鉄鉱石と石炭から鉄をつくる高炉法とは異なります。溶解された鋼は成分調整を経て、鋼片(ビレット)に鋳造され、圧延によって製品になります。

電炉で生産される代表的な製品が、異形棒鋼(鉄筋)です。つまり、解体現場から回収された鉄筋は、再び鉄筋として市場に戻る可能性があります。品質を大きく落とさずに同じ用途へ戻せることは、鉄という素材の特性を示しています。

普通鋼電炉工業会の2024暦年データでは、普通鋼電炉会社による小形棒鋼の生産量が6,000千トンを超え、掲載9品種の中で突出しています。H形鋼でも普通鋼電炉会社の生産が大きな部分を占めています。鉄筋スクラップが電炉で溶解・圧延され、再び棒鋼などの建設用鋼材へ戻る循環ルートを裏付ける図です。ただし、図は品種別の国内生産構成であり、回収した特定ロットが必ず同じ製品へ水平リサイクルされることを示すものではありません。

5.鉄筋リサイクルの環境的・経営的な意義

鉄筋のリサイクルは、コスト面だけでなく環境面でも意味を持ちます。

(1)電炉法によるCO2排出量の削減効果

鉄筋リサイクルの環境面での意義は、電炉法によるCO2削減効果にあります。

資源エネルギー庁は、鉄スクラップを電炉で再利用する方法は、鉄鉱石から高炉で製造する場合に比べてCO2排出を大きく抑えられると説明しています。同庁が掲載するIEAの2050年ネットゼロシナリオでは、世界の鉄投入量に占める鉄スクラップ由来分が段階的に増加し、2050年には全体の約半分を占める見通しが示されています。解体現場から回収された鉄筋を電炉の原料へ戻すことが、鉄鋼分野の脱炭素に寄与する根拠となります。なお、これは世界全体の将来シナリオであり、個別案件の削減量は電力構成、スクラップ品質、輸送距離などによって変動します。

鉄鋼業は国内でも排出量の大きい産業であり、電炉比率の拡大は各国で政策的に推進されています。質の高い鉄スクラップの安定確保は、国内の脱炭素と資源自給の双方に関わるテーマになりつつあります。

鉄が繰り返し循環できる仕組みや、鉄鋼製品ごとのリサイクル性については、以下の「鉄のサーキュラーエコノミー|事例や鉄鋼製品一覧、リサイクル性も」の記事で解説しています。

(2)建設業におけるScope3対応・ESG評価

もう一つの側面が、発注者・元請としての排出量管理です。

建設業では、資材調達から施工、廃棄物処理までがサプライチェーン全体の排出量(Scope3)に含まれます。解体工事で発生した鉄筋を廃棄物として処理するのか、資源として循環させるのかは、この排出量の算定に影響します。

実務としては、解体工事ごとに鉄筋の発生量と再資源化量を記録しておくことが基本になります。処理実績を数量ベースで把握しておけば、環境報告や発注者への説明資料として使えるほか、次回以降の計画精度も上がります。

近年は、大手発注者や金融機関が取引先の環境対応を評価項目に含めるケースが増えています。分別解体と資源循環の実績は、コスト削減と対外的な説明材料の両方を兼ねるものとして位置づけられます。

環境省はScope3を15カテゴリに区分し、カテゴリ5「事業から出る廃棄物」を、廃棄物(有価物を除く)の社外での輸送・処理と整理しています。したがって、解体鉄筋を廃棄物として委託する場合と、有価物として売却する場合では、Scope3カテゴリ5の算定対象が異なります。発生量、売却・処理区分、運搬先、再資源化量を案件単位で記録することが、算定根拠の明確化につながります。輸送は任意算定であり、リサイクル時の算定境界も採用する基準・方法により確認が必要です。

6.まとめ

鉄筋のリサイクルは、解体現場でのコンクリート分離から始まります。鉄筋コンクリート造の解体では、コンクリートが特定建設資材として再資源化の対象になり、その工程で鉄筋が分離されます。金属類そのものは特定建設資材ではありませんが、有価物として引き取られることで資源循環のルートに乗ります。

回収された鉄筋は、鉄スクラップ検収統一規格に基づいて等級が判定されます。H1・H2に該当するには幅500mm以下・長さ1,200mm以下という寸法要件があり、長尺のままではギロチン材として一段下の評価になります。同規格は不純物としてコンクリートを明記しており、付着の程度が減額に直結します。分離と加工の精度が、そのまま資源としての価値を決めるということです。

分離・加工された鉄筋は電炉で溶解され、再び鉄筋をはじめとする鋼材に生まれ変わります。電炉法は高炉法と比べてCO2排出を大きく抑えられるため、鉄筋リサイクルはカーボンニュートラルの観点でも意義を持ちます。解体工事の計画段階で分別基準を定め、発生量と再資源化量を記録しておくことが、コストと環境対応の両面で有効です。

サーキュラーエコノミーへの移行を進める上では、自社の資源循環の実態を把握し、具体的なスキームを設計することが重要です。解体・建設現場から発生する鉄筋をはじめ、鉄を主原料とする製品・設備の廃棄や資源循環にお困りの場合は、五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」にご相談ください。

監修

早稲田大学法学部卒業後、金融機関での法人営業を経て、中小企業向け専門紙の編集記者として神奈川県内の企業・大学・研究機関を取材。
2013年から2020年にかけては、企業のサステナビリティレポートの企画・編集・ライティングを担当。2025年4月よりフリーランスとして独立。
企業活動と社会課題の接点に関する実務経験が豊富で、サステナビリティ分野での実践的な視点に基づく発信を強みとしている。