プラスチックリサイクルのコスト比較|費用構造とリサイクル率・課題

プラスチックリサイクルは、環境対応の一環として多くの企業で検討が進められている一方で、処理コストの高さや採算性の問題から、最適な手法の判断が難しい領域となっています。
本記事では、プラスチックリサイクルのコスト構造と各手法のコスト比較、リサイクル率や課題との関係を体系的に整理します。

五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、現場の廃棄物排出パターンの精密な分析を起点に、最適なリサイクル手法の選定から、再生材の安定調達・活用を見据えた構造的な企業変革を強固に支援します。プラスチック対応で新たな競争優位を確立したい場合には、ぜひご相談ください。

目次

1.プラスチックリサイクルのコスト構造

プラスチックリサイクルのコスト構造は、収集・運搬、選別・洗浄、再資源化といった複数の工程で構成されており、これらのコストが積み上がることで全体の処理費用が決まります。そのため一般的に処理コストが上昇しやすい構造にあります。

プラスチックは軽量かつかさばる性質により運搬効率が低く、さらに異物混入や汚れによって選別・洗浄工程の負担が大きくなる物理的特性が、リサイクルを安定したビジネスとして成立させにくい要因となっています。

ここではプラスチックリサイクルのコスト構造について、工程別に詳しく解説します。

(1)収集・運搬が占めるコストの大きさ

プラスチックリサイクルの費用構造において、大きな比重を占めるのが収集・運搬コストです。この工程は「空気を運んでいるようなもの」と表現されるように、輸送効率の低さが課題となります。

例えば、同じ1トンであっても、鉄は密度が高くコンパクトに積載できるのに対し、廃プラスチックは軽量でかさばるため、必要な容積が大きくなります。その結果、輸送回数や車両数が増加し、コストが上昇します。
このように、プラスチックの物理的特性が収集・運搬の非効率を生み、全体のコスト構造に影響を与えています。

参考:プラスチック資源循環の推進|環境省

(2)選別・洗浄にかかる人件費

プラスチックを資源として再利用するには、選別と洗浄の工程が必要となります。油分や食品残渣などの汚れが付着している場合、再生樹脂の品質が低下し、リサイクル自体が困難になるケースもあります。

近年は、近赤外線を用いた光学選別機などの技術により、素材ごとの自動選別が進んでいます。しかし、複合素材やラベル・キャップの取り残し、微細な汚れなどは機械だけでは判別が難しく、最終的には人の手による確認と除去が必要となります。

このため、選別・洗浄工程では人件費の比重が高くなり、リサイクル全体のコストを押し上げる要因となります。特にマテリアルリサイクルでは高い純度が求められるため、この工程の負担が収益性に影響します。

参考:リサイクルの流れ|日本容器包装リサイクル協会

(3)再生原材料の販売価格と市場連動性

リサイクル樹脂の価格は、バージン材の市場価格と連動する傾向があり、原油価格の変動によって採算性が左右されます。特に、原油価格が下落した場合には、バージン材の製造コストが低下し、市場価格も下がります。

一方で、リサイクル材は回収・選別・再処理といった工程コストの影響を受けるため、同様に価格を引き下げることが難しい構造にあります。その結果、リサイクル材とバージン材の価格差が縮小または逆転し、品質が安定しているバージン材が選択されやすくなります。

このように、原油価格に連動した市場構造が、リサイクル材の需要や販売価格に影響を与え、リサイクル事業の収益性を不安定にする要因となります。

参考:プラスチックの基礎知識2025|プラスチック循環利用協会

2.【種類別】プラスチックリサイクルのコスト比較

プラスチックリサイクルは、マテリアル・ケミカル・サーマルの3つに大別され、それぞれ費用構造やコストのかかり方が異なります。初期投資の規模、運用コストの内訳、収益化の方法まで含めて整理することで、各手法の違いが明確になります。ここからは、それぞれの詳細なコスト傾向について解説します。

(1)マテリアルリサイクルは選別・洗浄にコストが集中

マテリアルリサイクル(機械的再生)において、最大のコスト要因は選別と洗浄です。
日本のリサイクル現場は小規模分散型であり、製造業が求める高い品質基準を満たすためには、緻密な選別工程が欠かせません

特に自治体から回収される廃プラスチックは、容器包装や製品が混在しており、付着した汚れや異物を取り除く洗浄・乾燥工程には多大なエネルギーと人件費が費やされます。

製品の設計段階から単一素材化(モノマテリアル)や分解の容易化が進んでいればこれらのコストは削減できますが 、現状ではその多くがリサイクル現場の負担となっているのが実態です。

参考:https://3r-forum.jp/activity/seminar_symposium/2025/20250711_otsu/files/report_2.pdf
参考:マテリアルリサイクルとは|日本における普及の課題と解決策|DNP

(2)ケミカルリサイクルは初期投資・運用費が高額

ケミカルリサイクルは、マテリアルリサイクルでは困難な汚れや異物の混じったプラスチックも再資源化できる強みがありますが、その代償として膨大なコストが発生します。
建設には数百億円規模の初期投資を要するケースもあり、政府もGX推進対策費などで巨額の支援を行っているのが現状です。

また、運用面でも化学反応を維持するための莫大なエネルギー消費や触媒費用がかかるほか、広域から大量の廃プラを安定して集めるための物流網の維持もコストを押し上げます。

高品質な再生材を供給できる一方で、製造原価がバージン材(新品)を大きく上回りやすく、逆物流に関する課題が社会実装に向けた大きな壁となっています。

参考:https://www.env.go.jp/council/content/i_05/000105857.pdf
参考:ケミカルリサイクル普及のメリットと推進における課題を考察|DNP

(3)サーマルリサイクルは低コストでもリサイクル評価に課題

サーマルリサイクル(エネルギー回収)は、廃棄プラスチックを燃料として焼却し、その際に発生する熱エネルギーを発電や温熱利用に役立てる手法です。日本においては廃プラスチックの約7割がこの方法で処理されており、最も普及している手法といえます。

コスト面では、既存の清掃工場や産業廃棄物処理施設をそのまま活用できるため、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルに比べて初期投資や運用コストを大幅に抑えられるメリットがありますが、資源循環の文脈では、その評価において大きな課題を抱えています。

脱炭素社会との矛盾化石由来であるプラスチックを燃焼させることは温室効果ガス(GHG)の排出に直結する
国際的な評価基準国際的な基準においては、サーマルリサイクルはリサイクルとして認められないケースが多い
企業のブランドリスクサーマルリサイクルへの過度な依存は環境負荷の削減に消極的と見なされ、ブランド価値を下げる可能性がある

環境省の指針でも「3R+Renewable」の原則のもと、熱回収よりもリサイクルを優先させるマイルストーンが設定されており、低コストという理由だけでサーマルリサイクルを選び続けることは、将来的な規制強化や社会的評価の低下につながりかねません。

参考:https://3r-forum.jp/activity/seminar_symposium/2025/20250711_otsu/files/report_2.pdf
参考:「サーマルリサイクル」の現状と課題、そして「ひとつ先」の解決策とは?|三井化学

3.意味ないって本当?プラスチックリサイクルの課題

プラスチックリサイクルは環境対応の手段として広く導入されている一方で、コスト技術的制約制度面の課題から、その有効性に対する議論も存在します。
ここでは、プラスチックリサイクルが抱える主な課題を整理し、コスト構造やリサイクル率との関係を踏まえて、その実態を明確にします。

(1)品質の劣化(ダウンサイクル)

マテリアルリサイクルの再処理の過程で物性が変化し、品質が徐々に低下する特性があります。これは一般にダウンサイクルと呼ばれ、再生材の用途が限定される要因となります。

例えば、ペットボトルを再びペットボトルとして利用する「水平リサイクル」は、異物混入や劣化の影響を受けやすく、高い純度と品質管理が求められるため実現が難しいケースがあります。実際に、プラスチックは再利用を繰り返す中で、強度や透明性などの性能が低下するため、同一用途での循環には技術的な制約が存在します。

また、品質や分別条件が適切に管理されない場合にも、素材の価値が低下する形での再利用、すなわちダウンサイクルに陥るリスクが高まるとされています。

参考:https://www.pwmi.or.jp/pdf/panf1.pdf

【企業事例】未来を創るフィルム循環の挑戦|花王
花王は「フィルムtoフィルム」という革新的な水平リサイクルの実現に 向けて、競合の枠を超えたライオンとの協働や自治体連携を推進しています。 多層構造で再生が難しい詰め替えパックを再び同じ容器へと戻すため、 設計段階からのモノマテリアル化や独自の高度な洗浄技術を開発しました。 この取り組みは、単なる廃棄物削減に留まらず、資源を国内で循環させる 新しい社会モデルの構築を目指しており、持続可能な未来への大きな一歩 となっています。
参考:水平リサイクルをめざして|花王

(2)再資源化の難易度

製品由来の廃プラスチックはサイズや形状がばらつき、複数素材が混在した状態で排出されるケースが一般的です。さらに廃プラスチックの構成が多種多様なことも影響し、従来の選別技術では高精度な分離が難しく、再資源化が困難となるケースが指摘されています。

また、こうした混合状態の廃プラスチックは、どのリサイクル手法に適しているかを判断すること自体が難しく、適切な処理工程へ振り分けるための高度な選別技術が必要とされています。

参考:https://www.nedo.go.jp/content/100963925.pdf

【事例】ごみを資源に変える究極の化学連携|積水化学工業・住友化学
積水化学工業と住友化学は、可燃ごみを一切分別せずガス化してエタノールへ 変換し、そこから再びプラスチック原料を生み出す画期的な協力体制を 築いています。積水化学工業が微生物の力を借りてごみをエタノールに変え、 住友化学がそのエタノールを高品質なポリオレフィンへ再生するという リレー形式の技術開発により、資源の完全循環を目指しています。 この試みは、埋め立てや焼却に頼っていた廃棄物を「都市油田」として 活用するものであり、化石資源への依存を減らしつつCO2削減にも大きく 貢献する、日本の化学業界が誇るべきサステナブルな挑戦です。
参考:積水化学と住友化学、サーキュラーエコノミーの取り組みで協力

(3)規制強化

プラスチックを取り巻く規制は世界的に強化されており、コストや評価基準に直接的な影響を与えています。

例えば欧州では、EUが各加盟国に対して非リサイクルのプラスチック包装廃棄物1トンあたり800ユーロ相当の分担金(EU予算への拠出金)を課す制度が2021年より導入されています。この分担金は加盟国政府に対して課されるものですが、各国がリサイクル推進施策やプラスチック税として企業・事業者に転嫁する仕組みを整備しており、結果としてリサイクルされないプラスチックの使用に対して経済的な負担が生じる構造となっています。
また、英国ではリサイクル材含有率が一定基準未満のプラスチック包装に対して課税が行われるなど、リサイクル材の利用を前提とした制度設計が進められています。

このような規制の強化は、コスト増加にとどまらず、企業評価にも影響を及ぼします。
投資家が重視するESG評価においては、資源循環性の観点が重視されるため、焼却によるエネルギー回収(サーマルリサイクル)は、資源の循環利用とはみなされにくく、評価上の制約となる可能性があります。

参考:https://www.pwc.com/jp/ja/services/globalization/news/assets/pdf/plastic-tax-developments202209.pdf

【事例】ネスレの包装規制への適応戦略
世界最大の食品メーカーであるネスレは、欧州のプラスチック税等の規制強化を見据え、 2025年までに包装の95%以上をリサイクル可能にするという野心的な目標を掲げています。 彼らは単に既存のプラスチックを使い続けるのではなく、紙素材への大規模な転換や、 リサイクルしやすい単一素材(モノマテリアル)への設計変更を加速させています。 さらに、年間3000億円規模の予算を投じて再生プラスチックの市場価格を支えることで、 安定したリサイクル材の調達ルートを確保し、非リサイクル材への課税コストを回避しています。 この戦略により、環境負荷の低減と同時に、将来的な法規制リスクを競争優位性に変えています。 同社は、廃棄物のない未来を目指し、官民連携のインフラ整備にも積極的に関与しています。
参考:Nestlé: Packing and circularity

(4)リサイクル率の低さによる悪循環

プラスチックリサイクルは、回収・選別・再資源化といった複数の工程を経る必要があり、その過程でコストが発生する構造となっています。一方で、リサイクルの普及が進まない場合、処理量が増えずスケールメリットが働かないため、コスト低減が進みにくいという悪循環に陥りやすい構造的な課題があります。

実際に、世界全体で見ても国内におけるプラスチックのリサイクル率は限定的な水準にとどまっており、再生プラスチック市場は一次プラスチック市場と比較して小規模であることが指摘されています。

引用:https://www.env.go.jp/council/03recycle/y0312-01/y031201-s1.pdf

【事例】資源循環の常識を塗り替えるテラサイクルの挑戦
テラサイクルは「リサイクル不能」とされてきた複雑なプラスチック廃棄物を、 独自の回収・選別ネットワークによって価値ある資源へと生まれ変わらせています。 従来はコスト面で見合わなかったタバコの吸殻や海洋プラスチックまでも対象とし、 世界中の企業や消費者を巻き込むことで、規模の経済によるコスト課題を克服しました。 さらに、容器回収・洗浄・再利用を行う革新的なプラットフォーム「Loop」を展開し、 使い捨てを前提としない循環型ショッピングという新たな市場を世界規模で創出しています。 この取り組みは、単なる廃棄物処理を超えて、消費者の意識と企業の製造責任を繋ぎ、 リサイクル率の低さという悪循環を、官民が連携する持続可能な好循環へと変えています。
参考:私たちの取り組み|テラサイクルジャパン

4.企業におけるプラスチック処理方法の選定ポイント

プラスチックの処理方法はコスト比較だけでなく、素材特性や排出状況、環境対応、制度要件など複数の観点を踏まえて選定する必要があります。ここでは、企業がプラスチック処理方法を選定する際に整理すべき主要な判断軸を明確にします。

(1)種類と汚れからリサイクル手法の限界を見極める

処理方法を選ぶ際にまず確認すべきは、廃プラスチックの素材構成と汚れの程度です。この2点が、どのリサイクル手法を現実的に適用できるかを左右します。以下に、素材構成と汚れの状態に応じた処理方法の整理を示します。

判定項目条件適した処理方法
素材構成・汚れが少ない場合単一素材(モノマテリアル)かつ汚れが少ないマテリアルリサイクル
素材分離が困難・汚れが多い場合複合素材・多層構造、または油分・異物などの汚れが多いケミカル/サーマルリサイクル
選定時の留意点排出される廃プラスチックの素材構成・汚れの実態を事前に把握手法選定の前提条件

単一素材で構成され、かつ汚れが少ない場合は、選別・再生が比較的容易なマテリアルリサイクルが適用しやすくなります。一方で、複合素材や汚れの影響が大きい場合には、マテリアルリサイクルの適用が難しく、ケミカルまたはサーマルリサイクルの検討が必要となります。

【事例】資源循環の限界を突破するケミカルリサイクル|三菱ケミカル
三菱ケミカルグループは、従来マテリアルリサイクルが困難であった 汚れの付着したプラスチックや複合素材を再資源化する革新的な挑戦を続けています。 ENEOSと共同で国内最大級の「プラスチック油化設備」を商業稼働させ、 廃プラスチックを化学的に分解して石油化学原料である「油」へと戻すことに成功しました。 この技術により、これまでは焼却処分するしかなかった雑多なプラスチックを、 新品同様の品質を持つプラスチックへと再生させる「水平リサイクル」が可能となりました。 素材の特性を見極め、物理的なリサイクルの限界を化学の力で補完することで、 排出状況に左右されない強固な資源循環モデルの構築をグループ全体で推進しています。
参考:ケミカルリサイクル(油化)|三菱ケミカルグループ

(2)脱炭素・LCAからみたトータルコストで投資対効果を測る

処理方法の選定では、委託費用などの単年度コストだけでなく、ライフサイクル全体でのコスト把握が前提となります。回収から再資源化、最終処理に至るまでの工程を通じて発生する環境負荷と費用を一体で捉える必要があります。

特に、炭素コストの影響は無視できません。
サーマルリサイクルは処理費用が比較的低く抑えられる一方で、燃焼工程に伴うCO2排出が前提となるため、カーボンプライシングの導入や強化により、将来的なコスト負担が変動する可能性があります。欧州では非リサイクルのプラスチック包装廃棄物に対する賦課制度が導入されており、制度によって処理コストの評価軸が変化する事例が示されています。

このため、LCA(ライフサイクルアセスメント)の視点からCO2排出量を定量的に把握し、将来の制度影響を含めたコスト評価を行うことが求められます。中長期での制度動向を踏まえた投資対効果の検討が必要となります。

【事例】未来の炭素リスクを可視化する旭化成の経営戦略
旭化成は、単なる処理費用の比較を超え、ライフサイクル全体での環境負荷を 経営判断の軸に据える「インターナル・カーボンプライシング」を導入しました。 この仕組みにより、将来的な炭素税や規制強化に伴う潜在的なコストを数値化し、 目先の安価な焼却処理ではなく、中長期的に有利な資源循環への投資を促進しています。 特にプラスチック事業では、LCAの観点からCO2排出量を精緻に算出し、 リサイクル材の採用やバイオ原料への転換がもたらす投資対効果を厳格に評価しています。 この先見性のあるアプローチは、欧州の賦課金制度などのグローバルな規制リスクを 回避するだけでなく、ESG投資家からの高い信頼と企業の持続可能性を担保しています。 同社は、制度変化を先取りすることで、環境対応をコストから競争力へと昇華させています。
参考:気候変動|旭化成

(3)リサイクル優先順位に基づきブランド毀損のリスクを回避する

処理方法の選定は、コストだけでなく、企業の環境方針や対外的な評価にも影響します。
ESGやSDGsへの対応が調達・投資判断に組み込まれる中で、資源循環の取り組み状況は企業評価の要素となります。

さらに、サーマルリサイクルは評価基準によってはリサイクルとして扱われない場合があり、開示内容との整合性が問われる場面も想定されます。このような前提を踏まえ、リサイクル優先順位に沿った処理構成を検討することが、中長期的なコストと評価の両面における判断軸となります。

【事例】循環型ビューティーを牽引するロレアルの戦略
世界最大の化粧品メーカーであるロレアルは、環境方針の核心に 「リサイクル優先順位」の厳格な遵守を掲げ、ブランド価値を高めています。 2030年までにパッケージに使用するプラスチックの100%を、 再生またはバイオベース素材に転換するという野心的な目標を推進中です。 彼らは単なるエネルギー回収(サーマルリサイクル)を循環とは見なさず、 設計段階からの素材見直しや、容器の詰め替えモデルを優先して導入しています。 この徹底した姿勢により、国際的なESG評価における信頼を確固たるものにし、 「使い捨て」批判というブランド毀損リスクを競争優位性へと変えています。 同社は、科学的根拠に基づく資源循環を通じて、美容業界の変革を主導しています。
参考:Drive Circularity|ロレアル

5.プラスチックリサイクルにおける今後の展望

これまで見てきたように、プラスチックリサイクルはコスト構造の複雑さや手法ごとの課題を抱えながらも、国内外の規制強化やESG評価の高まりを背景に、企業にとって避けては通れない経営課題となっています。

一方で、政策・技術・産業構造の3つの面で変化の兆しが出始めており、今後のリサイクルを取り巻くコストと収益性の構造は、中長期的に大きく変わっていく可能性があります。ここでは、今後の展望として注目すべき3つの方向性を整理します。

(1)高度リサイクル設備の社会実装加速

政府は循環経済への移行を国家戦略として位置づけており、プラスチックリサイクル分野への財政支援を本格化させています。

環境省と経済産業省が連携するGX推進対策費では、廃プラスチックの高度な分離回収設備や再資源化設備の実証・導入に対して補助が行われており、令和7年度予算案では関連事業に総額数百億円規模の予算が措置されています。

こうした支援の対象には、これまでリサイクルが困難とされてきた複合素材プラスチックのリサイクルプロセス構築や、バイオマス由来素材への転換なども含まれており、技術的ボトルネックの解消に向けた取組みが加速しています。

また、令和7年度より新設された「プラスチック資源循環社会実装支援事業」では、リサイクルコストの低減や回収量の拡大を目的としたモデル事業が支援対象とされており、先進技術の現場への普及を後押しする仕組みが整いつつあります。高度なリサイクル設備の社会実装が進めば、現在コスト高の主因となっている選別・再処理工程の効率化が期待でき、ケミカルリサイクルを含む各手法の採算性が改善される可能性があります。

参考:https://www.env.go.jp/content/000306903.pdf

【事例】化粧品容器の未来を創る資生堂の「BeauRing」
資生堂は、化粧品容器のリサイクルという困難な課題に対し、 新プロジェクト「BeauRing」を通じて革新的な社会実装を推進しています。 環境省の先進的モデル事業に採択されたこの取り組みは、 店頭回収した多種多様な使用済み容器を、素材ごとに分けることなく ケミカルリサイクル技術によって再びプラスチック原料へと再生します。 これにより、従来は焼却されていた複合素材や汚れの残る容器についても、 「ボトル・トゥ・ボトル」の資源循環を実現する道が拓かれました。 政府の財政支援を賢く活用しながら、技術的なボトルネックを解消し、 持続可能なビューティー業界のあり方を、官民連携の力で具現化しています。
参考:循環型社会の実現に向けたプラスチック容器回収・再資源化の取り組み資生堂

(2)動脈と静脈の連携によるリサイクル原価の低減

プラスチックリサイクルのコスト構造が高止まりしてきた背景の一つに、製品を製造・販売する動脈産業と廃棄物を回収・処理する静脈産業の間の分断があります。
環境省の資料でも指摘されているように、日本のリサイクル業は小規模分散型であり、製造業が求める品質・量の再生材を安定供給できる体制が整っていないことが、需給ギャップとなってリサイクル原料の焼却・埋立につながってきました。

この課題に対し、排出事業者とリサイクル事業者、再生プラスチック利用事業者が一体となった再資源化スキームの構築が、制度面からも後押しされています。プラスチック資源循環法に基づく再資源化事業計画の認定制度では、複数の排出事業者とリサイクル事業者が連携した取組みが許可手続きの簡素化を受けられるほか、令和7年度の新規支援事業でも、リサイクルから再生プラスチック利用に至るまでのマッチング促進が対象に明記されています。

日本プラスチック工業連盟も2025〜2028年度の4ヵ年計画において、再生材利用推進を最重点項目に位置づけ、業界内のWG体制を強化する方針を打ち出しています。動脈と静脈の連携が深まることで、安定した廃プラスチックの供給と高品質な再生材の需要が一致し、スケールメリットが働くことでリサイクル原価の低減につながることが期待されます。

参考:https://www.jpif.gr.jp/about/membership/doc/4year-plan_2025-2028.pdf

【事例】動静脈の壁を壊し再生材市場を創る「SusPla」の挑戦
SusPla(サスプラ)は、再生プラスチックの市場拡大を目指し、 製造を行う「動脈」と回収を担う「静脈」の産業が一体となった組織です。 従来、日本のリサイクルは小規模分散型で品質が安定しない課題がありましたが、 彼らは独自の第三者認証制度「SPC認証」を導入することでこの壁を打破しました。 ブランドオーナーとリサイクラーが同じ土俵で品質基準や供給量を議論することで、 需要側が安心して再生材を採用できる、透明性の高い市場インフラを構築しています。 この連携により、これまで焼却されていた廃プラが安定的な資源へと生まれ変わり、 スケールメリットによるコスト低減とカーボンニュートラルの両立を実現しています。 2025年には一般社団法人化を果たし、官民連携のハブとして社会実装を加速させています。
参考:一般社団法人SusPla(サスプラ):公式ホームページ

(3)サーキュラーエコノミーへの転換

中長期的な視点では、リサイクルコストの問題は個別の処理手法の最適化にとどまらず、経済システム全体の設計を見直すサーキュラーエコノミー(循環経済)への移行という文脈で捉える必要があります。

EUでは自動車・容器包装・家電など品目ごとに再生プラスチックの使用義務化が段階的に導入されており、非リサイクルのプラスチック包装廃棄物に対する賦課金制度もすでに運用されています。こうした規制は日本企業のサプライチェーンにも直接影響を及ぼすものであり、対応の遅れは市場アクセスそのものに関わるリスクとなりえます。

消費者意識の面では、日本プラスチック工業連盟の調査において「分別収集してリサイクルする必要性」を認知している消費者が95%を超える一方、バイオプラスチック製品に対して価格上昇を許容する傾向も確認されています。こうした意識の変化は、再生材や環境配慮素材に対する市場の受容性が高まっていることを示しており、企業にとってはコスト面での懸念だけでなく、付加価値としての訴求機会としても捉えられる動きといえます。

リサイクルコストの問題は、今後の産業競争力や企業評価に直結するテーマです。その意味で、サーキュラーエコノミーへの転換は、コスト削減の延長線上にある課題ではなく、事業戦略の根幹に据えるべき視点となっています。

参考:https://www.jpif.gr.jp/visitor/consumer/survey/doc/image-survey_2024.pdf

【事例】森の資源で脱プラスチックを加速させる王子グループ
王子ホールディングスは、欧州の厳しい包装規制を大きな商機と捉え、 「森の資源」を活用したサーキュラーエコノミーへの転換を牽引しています。 プラスチック賦課金や使用禁止規制に直面するグローバル企業に対し、 高いバリア性とリサイクル性を両立した紙製パッケージへの代替案を提供中です。 2023年度にはプラスチック使用量を約3,000トン削減し、さらに欧州の 加工メーカー買収を通じて、現地規制に即応できる供給体制を強化しました。 単なる素材の置き換えに留まらず、使用済み紙製品の高度な回収・循環 システムを構築することで、化石資源に依存しない産業構造を目指しています。 同社は、環境規制を追い風に、紙の可能性を広げ新たな市場を創出しています。
参考:欧州 包装材に関する環境規制対応事例(仏ブランド菓子製品):リサイクル可能な紙パッケージソリューション|王子ホールディングス

6.まとめ

プラスチックリサイクルは、収集・運搬、選別・洗浄、再資源化といった工程ごとにコストが発生し、その構造が処理手法の選定や採算性に影響します。また、マテリアル・ケミカル・サーマルそれぞれで費用のかかり方や適用条件が異なり、単純なコスト比較では最適解を導くことはできません。

五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、規制動向と現場のリアルな排出データに基づき、コストを最小化しつつ環境価値を最大化する資源フローの再設計を強固に支援します。プラスチックリサイクルのコストにお悩みの場合には、ぜひご相談ください。

監修

早稲田大学法学部卒業後、金融機関での法人営業を経て、中小企業向け専門紙の編集記者として神奈川県内の企業・大学・研究機関を取材。
2013年から2020年にかけては、企業のサステナビリティレポートの企画・編集・ライティングを担当。2025年4月よりフリーランスとして独立。
企業活動と社会課題の接点に関する実務経験が豊富で、サステナビリティ分野での実践的な視点に基づく発信を強みとしている。