環境ブランディングとは?企業事例と企業価値を高める実践方法も紹介

環境ブランディングとは、環境配慮の取り組みを企業価値やブランド価値の形成につなげる考え方です。
この記事では、環境ブランディングとは何かを整理したうえで、具体的な実践方法や企業事例、自社に適した戦略設計の考え方まで体系的に解説します。

五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、現場の廃棄物・資源データの可視化を起点に環境付加価値をブランドの強みへと転換する構造変革を強固に支援します。企業の環境ブランディングにお悩みの場合には、ぜひご相談ください。

目次

1.環境ブランディングとは

ここでは、定義目的サステナブルブランディングとの関係企業価値・ブランド価値との関係を解説します。

(1)環境ブランディングの定義

環境ブランディングとは、企業が環境配慮の姿勢や取り組みを、商品・サービス、事業活動、情報発信に反映し、ブランド価値の形成につなげる考え方です。

環境対策を実施するだけでなく、その方針や行動を企業の価値として一貫して示し、社外に伝える点が特徴です。
ESGサステナビリティ経営とも関連性があるものの、環境ブランディングはその中でも、環境面の取り組みを中長期的なブランド戦略として位置付けています。

参考:「環境ブランディング」 3つのパターン|長瀬産業

(2)企業が環境ブランディングに取り組む目的

企業が環境ブランディングに取り組み、環境配慮の方針や実績を示すことで、消費者・投資家・取引先などのステークホルダーとの信頼関係を構築します。
また、環境対応をブランドの特徴として位置付けることで認知向上につなげ、他社との差別化を図ります。

(3)サステナブルブランディングとの関係

サステナブルブランディングとは、環境・社会・経済の3側面(トリプルボトムライン)における持続可能性を追求し、企業価値を高める包括的な概念です。
その中で、環境ブランディングは特に環境分野に特化し、脱炭素資源循環といった取り組みをブランド独自の強みとして昇華させる役割を担います。

両者は包含関係にあり、環境ブランディングはサステナブルブランディングを構成する重要な一要素です。

また、ESG経営やCSR活動における環境(E)領域の成果を顧客や投資家に響くブランドストーリーとして整理・発信する戦略的意義も持っています。

参考:サステナブルブランディングとは?その目的と成功事例を紹介|キッズスター

(4)環境ブランディングと企業価値・ブランド価値の関係

環境ブランディングによって、環境への真摯な取り組みをブランドの核に据えることで、多方面から選ばれる理由を創出し、中長期的な企業価値の向上に直結します。具体的なステークホルダーごとの影響度と、ブランド価値への反映要素は以下の通りです。

環境ブランディングによって得られる信頼は、一朝一夕に築けるものではありません。
しかし、継続的な取り組みがブランド資産として蓄積されると、他社が容易に模倣できない競合優位性となり、最終的にプレミアム価格の設定リスク耐性の向上といった、具体的な企業価値を形成できるようになります。

【事例】スノーピークの「永久保証」による環境ブランディング
スノーピークは「人生に、野遊びを。」というスローガンのもと、製品に保証書をつけず、製造上の欠陥はもちろん使用中の損傷も含め、製品寿命を全うするまで責任を持って修理し続ける「永久保証」制度を、環境への誠実な姿勢として核に据えています。使い捨てを否定し、一脚のチェアや一張りの中型テントを世代を超えて使い続ける文化を提唱することで、顧客との間に強固なロイヤリティを築き、安価な消耗品とは一線を画す独自価値を確立しました。この循環型モデルは廃棄物削減に直結するだけでなく、修理を通じて製品への愛着を高めるという、情緒的なブランド資産の蓄積と中長期的な企業価値の向上を同時に成し遂げています。
参考:スノーピーク|サステナビリティ(循環への取り組み)

2.環境ブランディングの具体的な実践方法

環境ブランディングを実現するには、経営戦略サプライチェーン社内体制情報発信を一体で設計し、継続的に実行することが前提となります。ここでは、環境方針を企業活動に反映する具体的な実践方法を解説します。

(1)経営理念・企業戦略への環境方針の統合

環境方針を経営理念やミッションと統合することで、環境課題への対応を中長期的な競争優位の源泉と定義づけます。具体的には、以下の3つのプロセスを通じて、組織全体のベクトルを揃えます。

ビジョンの整合パーパスと環境貢献がどう結びつくのかを明文化し、トップが自らの言葉で発信する
経営目標(KPI)への落とし込み二酸化炭素排出削減量や再生可能エネルギー使用率など、具体的かつ測定可能な指標を中期経営計画に組み込む
バリューチェーン全体への波及策定した方針を、製品開発の設計基準、原材料の調達コード、販売現場での顧客コミュニケーションに至るまで、すべての企業活動の判断基準として浸透させる

このように経営レベルで仕組み化することで、一時的な流行に左右されない、一貫性と信頼性のあるブランドが構築されます。

【事例】大和ハウス工業:脱炭素を軸とした経営戦略の統合
大和ハウス工業は「将来世代も豊かに生きる」という理念のもと、 環境課題への対応を単なる社会的責任ではなく、中長期的な 競争優位の源泉と定義して経営戦略の最上位に配置しています。 国内建設業界でいち早くRE100等の国際イニシアチブに参画し、 自社施設のZEB化や再エネ100%達成を具体的な目標として掲げ、 その進捗を透明性の高いデータで公開し続けてきました。 この方針は製品開発の設計基準からサプライヤーへの調達コードに まで徹底され、バリューチェーン全体を巻き込んだ強固な 環境ブランドを構築し、ビジネスパートナーとしての圧倒的な 優位性と持続可能な企業価値の向上を同時に実現しています。
参考:大和ハウス工業|脱炭素への挑戦-カーボンニュートラル戦略-

(2)サプライチェーン全体での環境負荷低減の推進

環境ブランディングにおいて、原材料の調達から製造物流販売、さらには廃棄・リサイクルに至るまで、サプライチェーン全体の環境影響を把握し、最適化することが不可欠です。
具体的には、以下の3つのアプローチで攻めの低減活動を推進します。

上流への働きかけと連携サプライヤーに対して、グリーン調達ガイドライン等の環境配慮基準を提示し、低炭素素材への切り替えや梱包材の削減を共同で進める
工程の再設計再生可能エネルギーの導入や、製造時の水・資源の使用量を最小限に抑えるなどの革新的なプロセスを導入する
物流・流通のグリーン化配送ルートの効率化やモーダルシフト(輸送手段の転換)に加え、販売店での回収・リサイクル活動など、顧客の手元に届いた後の循環までを視野に入れる

このようにサプライチェーン全体で負荷低減を徹底することは、全工程で責任を果たしている強力なブランドの裏付けとなります。

【事例】日本通運:物流の「見える化」で繋ぐ環境価値
日本通運は、自社の排出削減のみならず顧客のサプライチェーン 全体の環境負荷を低減するパートナーとしての地位を確立しました。 CO2排出量を基準にフライトを選択できる新サービスなどの 「NX-GREEN」シリーズを展開し、物流の脱炭素化を可視化。 トラックから鉄道や船舶へ切り替えるモーダルシフトの推進や、 異業種間での共同配送による積載率向上を主導しています。 物流工程での削減実績をScope3のデータとして提供することで、 荷主企業の環境ブランディングを支え、持続可能な社会インフラ としての独自のブランド資産と企業価値を強固に築き上げています。
参考:NXグループ(日本通運)|気候変動への対応強化

(3)社員への環境方針の浸透と社内体制の整備

環境ブランディングを形にするためには、従業員それぞれが自らの業務と環境貢献の結びつきを理解し、主体的に行動できる土壌を整える必要があります。具体的には、以下の3つの柱でインナーブランディングを推進します。

自分事化を促す教育とコミュニケーション社内報やSNSを活用し、成功事例を積極的に共有する など
部門横断的な推進組織の設置サステナビリティ委員会のようなクロスファンクショナルなチームを組織し、全社的な施策をスピーディーに実行できる体制を構築
評価・インセンティブ制度との連動環境目標の達成度を部門や個人の業績評価に組み込む、あるいは社内表彰制度を設ける など

社員一人ひとりがブランドの伝道師となることで、外部への発信に真実味が宿り、揺るぎないブランド価値へと繋がります。

【事例】リコー:全社員が主役となるSDGsアクションの浸透
リコーは「事業成長と社会課題解決の同軸化」を掲げ、全社員が自らの業務と社会・環境への貢献を結びつけて行動できる土壌を整えました。毎年6月を「グローバル・SDGsアクション月間」と定め、全世界のグループ社員が環境保護をはじめとする社会課題解決に向けた活動に参加し、その取り組みや成果を社内SNSで共有し合うことで、自分事化と一体感を醸成しています。さらに、ESG目標(環境・社会・ガバナンス全般)の達成度を役員報酬や部門評価と連動させることで、一過性のイベントに終わらせない強固な推進体制を構築しました。社員一人ひとりがブランドの伝道師として活動することで、外部への発信に真実味が宿り、信頼される企業ブランドを確立しています。
参考:リコー|社員のSDGs意識醸成(グローバル・アクション月間)

(4)環境取り組みに関する情報開示とブランドメッセージの発信

環境ブランディングの最終的な成果は、社外のステークホルダーからの信頼と共感によって決まります。
以下のような正確な事実に基づく情報開示と、企業の想いを乗せたブランドメッセージを両立させ、一貫性のあるコミュニケーションを展開します。

客観的なデータに基づく透明性の確保CO2排出量削減、資源再利用率などの数値を定量的に開示し、課題や未達成の項目も正直に公開する
ストーリー性のあるメッセージ発信数値データなどのアプローチに加え、WebサイトやSNS、広告を通じて、その取り組みの背景にある想いや開発秘話も伝える
グリーンウォッシュの徹底回避実態以上の誇張や、根拠のないエコという言葉の使用を避け、第三者認証の取得科学的根拠の提示を徹底する

報告を対話へと昇華させることで、企業への支持を確固たるものにできます。

【事例】伊藤園:茶殻が紡ぐ循環型ブランドの物語
伊藤園は「お茶のリーディングカンパニー」として、製造過程で 出る膨大な茶殻を廃棄物ではなく「独自の資源」と再定義しました。 茶殻の消臭・抗菌効果を活かし、畳や建材、身近な紙袋へと アップサイクルする「茶殻リサイクルシステム」を確立。 単なる数値の報告に留まらず、お茶の可能性を広げる想いを 製品パッケージやWebを通じてストーリーとして発信しています。 この「捨てない」誠実な姿勢が、消費者の共感と信頼を集め、 他社には容易に模倣できない循環型ブランドとしての地位と 持続可能な企業価値を確固たるものに築き上げています。
参考:伊藤園|茶殻リサイクルシステム(お茶を丸ごと活用)

3.環境ブランディングの企業事例

(1)製品の素材・製法のアップデート

製品の素材・製法のアップデートでは、再生素材持続可能な資源の活用製造時のエネルギー使用量削減などを通じて、従来の製品仕様を更新します。
また、使用後の再資源化や廃棄までを考慮した設計を行うことで、製品ライフサイクル全体での環境配慮を実現します。

①アディダス|再生素材の採用による製品開発の見直し

引用:https://www.jeef.or.jp/child/201809tokusyu03/

アディダスは、海洋プラスチックごみなどを再生した素材を製品に活用し、素材面から環境配慮を進めています。
従来の原材料を見直し、リサイクルポリエステルの使用拡大再資源化を意識した製品設計を進めることで、製品開発そのものに環境対応を組み込んでいます。

参考:https://kick.co.jp/works/detail_0155.html

②トヨタ自動車|製造工程の廃材を活用したアップサイクルの実践

引用:https://global.toyota/newbiz/toyotaupcycle/index.html

トヨタ自動車は、製造工程で発生する端材や廃材を新たな製品へ再生する「TOYOTA UPCYCLE」を展開しています。リユースやリサイクルが難しい素材も対象とし、バッグや日用品などへ再構築することで、新たな価値を付加しています。
この取り組みでは、素材・製造・販売の各段階で外部パートナーと連携し、廃棄物を前提としないものづくりを展開しています。

③良品計画|再資源化を前提とした商品設計の推進

引用:https://www.ryohin-keikaku.jp/sustainability/muji-sustainability/product-development-concept

良品計画は、素材選定・工程の見直し・包装の簡略化という基本方針のもと、環境配慮を前提とした商品開発を行っています。単一素材で構成することで分解工程を不要とし、使用後の再資源化を容易にする設計を採用しています。
また、製品のライフサイクル全体を考慮し、廃棄後の資源循環まで含めた設計を進めています。

(2)体験型ブランディング

体験型ブランディングでは、商品やサービスの提供に加え、利用者が環境配慮の取り組みを体感できる場や仕組みが必要です。
さらに生活シーン全体における持続可能な選択を提案し、企業の環境方針を体験として伝えることで、ブランド価値と位置付けています。

④イケア|体験設計による環境配慮型ライフスタイルの提案

引用:https://www.ikea.com/jp/ja/newsroom/corporate-news/20231214-home-lab-pub87892c50/

イケアは、デジタルツール「インテリアスタイルラボ」を通じて、生活空間を再現したルームセットを体験できる仕組みを提供しています。限られた住空間に適した家具配置や収納方法を提示し、日常生活における持続可能な暮らし方を具体的に体験できる点が特徴です。

製品単体ではなく生活全体のあり方を提案することで、環境配慮を体験として伝え、ブランド価値に結び付けています。

⑤スターバックス|店舗体験を通じたサステナビリティの可視化

引用:https://www.starbucks.co.jp/reserve/?srsltid=AfmBOoqwTpWflVd-ORg7Vb094WEceThRpZZ0eR3Po2eXJAQhjzsOp2dk

スターバックスは、環境配慮を店舗体験として提供する取り組みを進めています。「グリーナーストア」では、水使用量、廃棄物削減を前提とした設計を採用し、来店者が環境配慮の取り組みを体験できる空間を構築しています。
また、コーヒー豆かすのリサイクルやリユースカップの活用など、日常的な利用の中で環境対応を実感できる仕組みも導入しています。

⑥全日本空輸|ブランド体験とESGを統合した取り組み

引用:https://www.ana.co.jp/ja/kr/the-ana-experience/brand/

全日本空輸(ANA)は、「ANA Future Promise」を掲げ、環境・社会・ガバナンスに関する取り組みをブランド体験と関連付けています。環境面ではCO2排出削減や持続可能な航空燃料の導入などを進め、事業活動全体で環境負荷低減を図っています。
また、これらの取り組みをサービスや顧客体験と連動させ、企業活動を通じて社会価値と経済価値を同時に創出する方針が特徴です。

(3)企業の存在意義の再定義

企業の存在意義の再定義では、環境課題への対応を企業の目的や役割として位置付け、事業活動全体に統合します。環境保全や資源循環などのテーマを企業理念やミッションに組み込み、意思決定や事業戦略に反映します。
また、利益創出と環境価値の両立を前提とした方針を示し、企業の存在意義を環境視点で再構築することで、ブランド価値として明確化します。

⑦パタゴニア|企業所有構造を通じた環境使命の体現

引用:https://www.patagonia.jp/ownership/

パタゴニアは、企業の所有構造そのものを環境目的と関連付ける取り組みを行っています。創業者は全株式を信託と非営利団体に移管し、事業で得た利益のうち再投資分を除いたすべてを環境保護に充てる仕組みを構築しました。
企業の仕組み自体に環境方針を組み込むことで、ブランドの存在意義と環境対応を一体化させています。

⑧サントリー|企業理念と環境戦略を一体化したブランド構築

引用:https://www.suntory.co.jp/company/peopleculture/pdf/report202510.pdf

サントリーは、「人と自然と響きあい、豊かな生活文化を創造する」という理念のもと、環境への取り組みを企業活動全体に組み込んでいます。水や気候変動、容器包装などを重点領域とし、2030年に向けた具体的な環境目標を設定しています。
また、これらの方針を事業活動や製品開発、コミュニケーションに反映し、環境配慮を企業価値の一部として位置付けています。

⑨ユニリーバ|製品・消費行動を通じた循環型ブランドの構築

引用:https://www.unilever.co.jp/files/181d8562-ade8-4950-86a9-cb0a636f90df/japan-press-release-corporate-new-office-27052024.pdf

ユニリーバは、プラスチック使用量削減や再生素材の活用、回収・再資源化を含む循環型の取り組みを製品と連動させています。再生プラスチックの採用や詰め替え製品の拡充、使用済み容器の回収プログラムを展開し、消費者の行動も含めた仕組みを構築しています。
また、サステナビリティを日常の中で実現する方針のもと、製品開発から使用後までを一体的に設計し、ブランド価値と環境対応を関連付けています。

⑩ラッシュ|エシカル憲章に基づくブランド価値の構築

引用:https://weare.lush.com/jp/lush-life/our-impact/through-the-ethical-charter-fy2024/

ラッシュは、企業活動の指針として「エシカル憲章」を掲げ、環境・社会・倫理に関する価値観を商品開発や調達、販売に反映しています。動物実験を行わない方針や、倫理的な原材料調達、公正な取引関係の構築などを一貫して実施しています。また、これらの方針を製品や店舗体験、情報発信に組み込み、企業の価値観そのものをブランドとして提示しています。

4.自社に適した環境ブランディング戦略の設計

環境ブランディングにおいて最も避けるべきは、他社の成功事例をそのまま模倣し、自社の本業と乖離してしまうことです。自社の事業特性や強みに立脚し、環境課題との「独自の接点」を見出すことで、競合他社には真似できない唯一無二のブランド価値が生まれます。
ここでは、自社に適した戦略を構築するための設計の進め方を解説します。

(1)自社の強みと環境課題の接点を特定する

自社のビジネスモデルが、どの環境課題と最も深く関わっているかを整理します。環境活動を本業の進化形として捉え直すことが、ブランドの一貫性を保つ鍵となります。

この整理を通じて、環境対応を企業の独自性を際立たせるブランド戦略へと昇華させることができます。

【事例】TOTO:水まわりの技術で描く「節水」のブランド戦略
TOTOは「水まわり」という自社の事業領域が、家庭で最も水を 消費する場所であることに向き合い、環境課題との独自の接点を 特定しました。わずかな水で汚れを落とす独自の洗浄技術や、 水から除菌成分を作る「きれい除菌水」などの資産を棚卸しし、 製品を使うこと自体が自然と節水や清潔に直結する仕組みを構築。 単なる性能競争ではなく、世界の水資源保全に貢献するという 必然性のある物語を経営の核に据え、世界中の生活者から選ばれる 唯一無二のブランド価値を形成しています。この一貫した姿勢が、 持続可能な社会への貢献と中長期的な企業価値向上を両立させ、 他社が容易に模倣できない競合優位性を確固たるものにしました。
参考:TOTO 環境への取り組み(きれいと快適・健康の両立)

(2)顧客・ステークホルダーの価値観と整合させる

環境ブランディングを成功させるには、自社の独りよがりにならず、ステークホルダーが何を重視しているかを深く理解し、それに応える形でブランドを設計する必要があります。
対象ごとに期待される役割を整理し、自社の方針と合致させることで、信頼性の高いブランドイメージを構築できます。

観点重視されるテーマ期待されるアクション
顧客・消費者エシカル消費、製品の安全性環境配慮型商品の提供、透明性のあるラベル表示
投資家・金融機関脱炭素(カーボンニュートラル)、ESG評価科学的根拠に基づいた中長期目標と進捗のデータ開示
取引先・パートナーサプライチェーン排出量、廃棄物削減グリーン調達基準の遵守、共同でのリサイクル体制構築
従業員・求職者社会貢献度、働きがいの創出環境教育の実施、現場のアイデアを採用する仕組み

整理した期待内容と自社の方針に差異がある場合は、まずそのギャップを埋めるための具体的なアクションを定義しましょう。ステークホルダーの期待に応えるだけでなく、自社ならではの意志を加えて付加価値を出すことが環境ブランドへの昇華に直結します。

【事例】セブン&アイ:日常の買い物から変える環境循環
セブン&アイ・ホールディングスは「GREEN CHALLENGE 2050」を掲げ、 消費者が日々の暮らしの中で自然にエシカルな選択ができる 仕組みを構築することで、顧客との信頼関係を深めています。 店頭でのペットボトル回収から再製品化までを行う完全循環型のリサイクルや、 食品ロス削減を目指したポイント付与制度など、顧客の価値観に 応える具体的なアクションを全国の店舗網を通じて展開。 これらの取り組みを透明性の高いラベル表示や報告書で開示し、 生活者に最も身近な環境ブランドとしての地位を確立しました。 ステークホルダーの期待を事業モデルへ誠実に統合することで、 利便性と持続可能性を両立させた強固な企業価値を築いています。
参考:セブン&アイ|環境宣言「GREEN CHALLENGE 2050」

(3)環境対応をブランド戦略へ統合する

環境対応をブランド戦略へ統合するには、環境方針を製品やサービス、企業メッセージに一貫して反映することが重要です。方針とブランドコンセプトの関係を整理し、施策を個別対応ではなくブランド全体として設計します。

観点整理内容期待できる効果
1. コンセプト整理環境方針とブランドの核となる価値を再定義する「なぜこの企業がやるのか」という必然性が生まれる
2. ストーリー化削減データではなく、解決への挑戦と変化を語る顧客が自分事として捉えられる情緒的価値(共感)を創出
3. 全接点での体現製品・パッケージ・店舗・Web・カスタマー対応まで一貫させるどこで触れても環境に誠実なブランドという一貫性を担保
4. 施策の連動マーケティングや販促キャンペーンを環境文脈と同期させる広告が宣伝ではなく、社会を良くするメッセージに変わる
5. 継続的な発信単発の発表で終わらせず、目標への進捗を定期的に共有する透明性が高まり、長期的な信頼(ブランド資産)が蓄積される

環境対応をブランド戦略へ統合する際、最も重要なのは言行一致です。広報が発信するメッセージ(外側)と、実際のサプライチェーンや製品(実態)が完全に一致したときに、ブランドは顧客にとって信頼に値する選択肢となります。

【事例】マツダ:走る歓びと環境性能の美しき統合
マツダは「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言」を経営の柱に据え、 自動車本来の「走る歓び」を環境対応と矛盾させずに統合しています。 内燃機関の効率を極限まで高めた独自技術やバイオ素材の開発を、 単なるデータ削減ではなく「未来の車を愛する人のための挑戦」 という物語として全接点で体現。マツダらしい美しさと誠実な 環境対応を一貫して発信することで、ファンの情緒的な共感を呼び、 他社には真似できない独自のブランド価値を確立しています。 この「言行一致」の追求が、製品への高い信頼と中長期的な 企業価値の向上を同時に成し遂げ、強固なブランド資産を築いています。
参考:運転を愛すること、地球を愛すること|マツダ

(4)段階的に展開する実行ロードマップを設計する

段階的な実行ロードマップでは、環境目標を時間軸で整理し、実行可能な範囲から順に取り組みを展開します。そのため、短期・中期・長期の時間軸で目標を分解し、着実なステップを踏む実行ロードマップの策定が不可欠です。

期間主な目標具体的なアクション例
短期(〜1年)基盤構築とクイックウィン現状の負荷把握、環境パーパスの策定、社内教育、梱包材の簡素化 など
中期(1〜3年)事業モデルへの反映素材の切り替え、サプライヤー連携の強化、主要製品の環境認証取得 など
長期(3〜5年〜)循環型モデルの確立資源回収システムの運用、カーボンニュートラルの達成、新市場の開拓 など

ロードマップは作成して終わりではなく、定期的な進捗把握と評価(PDCA)が必要です。責任範囲の明確化や定量的評価、柔軟な軌道修正などを踏まえて運用する必要があります。

【事例】石坂産業:産廃から「資源循環」の未来を創るロードマップ
石坂産業は、産業廃棄物処理という「負」のイメージを、 段階的な改革によって「地域の誇り」へと劇的に転換しました。 まずは徹底した分別技術により、業界最高水準の再資源化率 98%を達成するという、強固な実務基盤を短期で構築。 中期では、不法投棄で荒廃した周辺の山々を「三富今昔村」 として再生し、体験型環境教育の場へと事業モデルを広げました。 現在は「Zero Waste Design」を掲げ、廃棄物を資源として 循環させる100%の達成と新市場創出を長期目標に据えています。 この着実なステップが「見せる経営」を通じた信頼獲得に繋がり、 世界中から視察が絶えない唯一無二のブランド価値を築きました。
参考:石坂産業|サステナビリティ(資源循環と里山再生)

5.まとめ

環境ブランディングは、環境への配慮を企業の競争優位性やブランド価値へと昇華させる戦略的な考え方です。その実践には、経営戦略への統合からサプライチェーンの最適化、インナーブランディング、そして誠実な情報開示まで、一貫した取り組みが求められます。
先行する企業事例からも分かる通り、そのアプローチは製品素材のアップデートや消費者の体験設計、パーパスの再定義など、自社の強みに合わせて多様な形で展開することが可能です。

五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、現状の資源データの精密な分析に基づき、ブランディングの確かな根拠となる強固な循環スキームの構築を強固に支援します。環境ブランディングにお悩みの場合には、ぜひご相談ください。

監修

早稲田大学法学部卒業後、金融機関での法人営業を経て、中小企業向け専門紙の編集記者として神奈川県内の企業・大学・研究機関を取材。
2013年から2020年にかけては、企業のサステナビリティレポートの企画・編集・ライティングを担当。2025年4月よりフリーランスとして独立。
企業活動と社会課題の接点に関する実務経験が豊富で、サステナビリティ分野での実践的な視点に基づく発信を強みとしている。