サスティナブルマーケティングとは?従来マーケティングとの違い・事例

サスティナブルマーケティングとは、環境・社会への配慮と企業活動を結び付けながら、中長期での企業価値やブランド形成につなげる考え方です。
この記事では、サスティナブルマーケティングとは何かを整理したうえで、従来マーケティングとの違い関連手法主な施策企業事例も解説します。

五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、既存事業で発生する廃棄物やコストを新たな資源・利益と捉え直し、サステナブルな商品開発から構造的な企業変革を強固に支援します。自社の経営を次世代の循環型モデルへと転換させたい場合には、ぜひご相談ください。

目次

1.サスティナブルマーケティングとは

環境問題や社会課題への注目が高まり、サスティナブルマーケティングが重要な企業戦略と位置付けられてます。
ここでは、サスティナブルマーケティングの基本的な概念と、企業が取り組む背景目的について解説します。

(1)サスティナブルマーケティングの概要

サスティナブルマーケティングとは、環境・社会・経済の持続可能性を踏まえて、市場活動と社会的価値の両立を図るマーケティングの考え方です。従来のように短期的な販売促進や売上拡大のみを重視するのではなく、企業活動が社会や環境に与える影響も含めて捉えます。

商品やサービスの訴求にとどまらず、調達・製造・販売を含む事業全体と関わる点が特徴です。
また、ESGやCSRとも強い関連性があり、中長期観点での企業価値向上やブランド形成にもつながるとしてサスティナブルマーケティングの導入を進める企業が増加しています。

参考:サステナビリティマーケティングとは?注目される背景や重要性を解説|日立ソリューションズ

(2)企業がサスティナブルマーケティングに取り組む目的

エシカル消費を志向する消費者のみならず、投資家や取引先を含むあらゆるステークホルダーにおいて、企業の環境・社会に対する姿勢を重視する傾向が強まっています。

ESG投資の拡大やサステナビリティ情報の開示要求といった外部環境の変化に対応するため、事業活動と社会的価値の創出を統合した取り組みが不可欠となっています。こうした対応は、ブランドの信頼性を揺るぎないものにすると同時に、中長期的な企業価値の向上と競争力の維持に直結します。

参考:サステナブル・マーケティング協会|Japan Marketing Academy

2.サスティナブルマーケティングに類似・関連するマーケティング手法

サスティナブルマーケティングは、従来から存在する複数のマーケティング手法とも関係します。社会課題への対応や企業の存在意義、経営戦略との統合など、類似する考え方を整理して理解することが重要です。
ここでは、サスティナブルマーケティングと関連する代表的なマーケティング手法を解説します。

(1)ソーシャルマーケティング

ソーシャルマーケティングとは、社会課題の解決や人々の行動変容を促すために、マーケティングの理論や手法を応用する考え方です。

従来、公共政策や社会問題への対策として、健康増進、環境保護、交通安全などの啓発活動に広く用いられてきました。近年では企業活動においても、ビジネスを通じた社会課題の解決を目指す際、その接点を整理・構築するための重要な概念として位置づけられています。

参考:ソーシャルマーケティングとは?メリットと注意点・対処法を解説!|CTC金融グループ

(2)コーズリレーテッドマーケティング

コーズリレーテッドマーケティングとは、製品・サービスの売上と特定の社会課題への支援を直接的に結びつける手法です。

代表的な例として、購入額の一部を寄付する仕組みを通じて、消費者の日常的な購買行動を社会貢献へと転換させます。企業がNPOやNGOなどの専門団体と連携して実施するケースも多く、企業の社会的責任(CSR)をマーケティング施策として戦略的に展開する点が特徴です。

参考:コーズ・リレーテッド・マーケティング|全国公益法人協会

(3)マネジリアル・マーケティング

マネジリアル・マーケティングとは、マーケティングを企業経営の中核をなす管理プロセスとして捉える考え方です。

市場分析に基づいた戦略立案から、経営資源(ヒト・モノ・カネ)の最適な配分まで、意思決定の全工程にマーケティング視点を導入します。現場のプロモーション活動に留まらず、企業の経営戦略とマーケティング活動を高度に統合し、組織全体で価値創造をコントロールする点が特徴です。

参考:マネジリアルマーケティングの意味|マーケトランク

(4)パーパスマーケティング

パーパスマーケティングとは、企業が社会において「何のために存在するのか」という根本的な意義(パーパス)を軸にブランド活動を展開する考え方です。

商品特性の訴求に留まらず、企業の志や価値観を製品開発からコミュニケーションまで一貫して反映させます。社会課題の解決と自社のアイデンティティを高度に融合させることで、ステークホルダーからの深い共感と信頼を獲得する点が特徴です。

参考:パーパスブランディングとは? マーケティングにおいての重要性を事例とともに解説|朝日新聞

(5)コーズマーケティング

コーズマーケティングとは、特定の社会課題の解決支援を企業のマーケティング活動に統合する手法です。

環境保護や教育支援など、自社の理念に合致する社会的テーマを掲げた製品開発やキャンペーンを展開し、事業活動を通じて社会貢献を実現します。これにより、企業の社会的責任を具体的な価値として市場に示し、ブランドへの共感や支持を獲得する戦略的活動として位置付けられます。

参考:コーズ・マーケティング|NTTドコモソリューションズ

3.サスティナブルマーケティングと従来マーケティングの違い

サスティナブルマーケティングは、売上や販促効果を中心に考える従来型のアプローチに対し、環境・社会への長期的な影響や企業価値の形成も含めて捉える点が特徴です。
ここでは、目的、評価指標、対象範囲、時間軸の観点から両者の違いを解説します。

(1)目的

従来は売上拡大など短期的成果を中心に設計されることが多いのに対し、サスティナブルマーケティングでは環境・社会への影響を含めて企業活動全体を捉える視点が重視されます。主な違いは次の通りです。

サスティナブルマーケティングは企業活動と社会課題を結び付け、中長期的な企業価値の形成を視野に入れたマーケティングの考え方として位置付けられます。

参考:楽しくなければ、サステナビリティは進まない!? ゲーミフィケーションで「未課題」をビジネスの「成長可能性」に変える!|電通

(2)評価指標

従来のマーケティングでは、売上高や市場シェア、顧客獲得数などの財務指標が主な評価基準として用いられてきました。一方、サスティナブルマーケティングでは、企業活動が環境や社会に与える影響も評価対象として扱われます。

サスティナブルマーケティングでは、売上などの財務成果だけでなく、環境・社会への影響を含めて企業活動を評価する枠組みが用いられます。

(3)対象範囲

従来のマーケティングは、主に顧客や市場を対象として商品やサービスの販売促進を行う活動として展開されてきました。一方、サスティナブルマーケティングでは、企業活動が社会全体に与える影響を踏まえ、より広い関係者を対象として捉える考え方が採られます。

サスティナブルマーケティングでは、顧客だけでなく多様なステークホルダーとの関係を考慮してマーケティングを設計する点が特徴です。

参考:博報堂SDGsプロジェクト、社会課題や環境問題に対する意識・行動で 生活者を分類した「社会行動クラスター」を開発|博報堂

(4)時間軸の違い(短期成果と中長期的な企業価値)

従来のマーケティングは、販促施策やキャンペーンなどを通じて短期的な売上や集客効果を得ることを主な目的として設計されることが多く、成果も短期間で評価される傾向があります。
一方、サスティナブルマーケティングでは、中長期的な企業価値やブランド形成を視野に入れて取り組まれます。

サスティナブルマーケティングでは、環境・社会への取り組みと企業活動を結び付けながら、長期的な価値形成を前提としたマーケティングが展開されます。

4.サスティナブルマーケティングの主な施策と企業事例

(1)環境配慮型の商品・サービスの開発

環境配慮型の商品・サービスの開発は、サスティナブルマーケティングの代表的な施策の一つです。企業は原材料の選定製造工程製品の使用・廃棄までを含めて環境負荷を考慮し、商品やサービスを設計します。
例えば、リサイクル素材の活用省エネルギー性能を高めた製品低排出技術を用いたサービスなどが該当します。

①パタゴニア|リサイクル素材を活用した製品開発

引用:https://www.patagonia.jp/our-footprint/

地球を唯一の株主と位置づけるパタゴニアにとって、透明性の高い情報公開持続可能な製造プロセスの追求は、事業活動の根幹をなす最も重要な使命となっています。
素材面では、リサイクル素材の積極的な活用や、農薬不使用のオーガニックコットン、さらに土壌を再生する「リジェネラティブ・オーガニック」への転換を進めており、2025年からは製品ライン全体で環境汚染の原因となるPFAS(有機フッ素化合物)を排除するなど、化学物質の管理も徹底しています。
また、社会的責任として「フェアトレード」を重視し、サプライチェーンで働く人々の労働条件改善と生活賃金の確保を支援しています。

②ユニリーバ|サステナビリティ戦略「Sustainable Living Plan」に基づくブランド展開

引用:https://www.unilever.co.jp/news/press-releases/2020/unilever-celebrates-10-years-of-the-sustainable-living-plan/

ユニリーバは2010年に「Unilever Sustainable Living Plan」を策定し、事業成長と環境・社会への配慮を両立させる戦略を進めています。この計画では、健康と衛生の向上、製品の環境負荷削減、サプライチェーンにおける生活向上などを目標に掲げています。
ブランド活動でもサステナビリティを重視し、環境配慮や社会課題への取り組みを商品開発やマーケティングに反映しています。

③ナイキ|環境配慮素材を用いた製品開発(Move to Zero)

引用:https://nike.jp/nikebiz/news/2021/04/19/4575/

ナイキは、温室効果ガス排出量の削減と廃棄物削減を目標とする取り組み「Move to Zero」を進めています。この取り組みでは、リサイクルポリエステルなどの再生素材を用いた製品の開発や、製造工程で発生する廃棄物の再利用などが行われています。
また、再生素材を使用したシューズやアパレルを展開し、製品開発の段階から環境負荷低減を組み込む方針を示しています。

④トヨタ自動車|ハイブリッド車・電動車による低環境負荷商品の開発

引用:https://global.toyota/jp/sustainability/esg/climate-change/?padid=ag478_from_header_menu

トヨタ自動車は「幸せを量産する」というミッションのもと、2050年までのカーボンニュートラル(CN)実現を掲げ、多角的なアプローチで気候変動に立ち向かっています。
電気自動車だけでなく、ハイブリッド車、燃料電池車、さらには水素エンジン車など、多様な選択肢を提供することで、世界中のあらゆる地域で着実なCO2削減を目指しています。
また、生産現場ではグリーン工場を目指し、革新技術の導入や再生可能エネルギーの活用によって、2035年までに世界の自社工場でのCN達成を目標としています。

(2)サプライチェーン全体での環境・社会配慮

サプライチェーン全体での環境・社会配慮は、原材料調達から製造、物流、販売までの各工程で環境負荷や社会的影響を考慮する取り組みです。企業はサプライヤーの調達基準やトレーサビリティの確保、労働環境への配慮などを通じて、事業活動全体の持続可能性を管理します。
また、リサイクル素材の利用資源循環の仕組みを導入することで、製品のライフサイクル全体での環境負荷の低減を図るケースもあります。

①ネスレ|持続可能な原材料調達とトレーサビリティの取り組み

引用:https://www.nestle.co.jp/csv/impact/sustainable-sourcing

ネスレは、原材料の調達段階から環境・社会への配慮を行うため、持続可能な調達方針を策定しています。コーヒーやカカオなど主要原料については、生産地域や生産者の状況を把握するトレーサビリティの仕組みを整備し、農家支援や環境保全の取り組みと連動させています。
持続可能な農業の普及やサプライヤーとの協働を通じて、原材料調達から製品製造までのサプライチェーン全体で環境・社会への影響を管理する体制を構築しています。

②スターバックス|倫理的コーヒー調達基準「C.A.F.E. Practices」

引用:https://www.starbucks.co.jp/hellocoffee/know/ethicalsourcing-C.A.F.E.-practice.html?srsltid=AfmBOopBwnRwO3BkGqZOnKC91UlFZbu8IUydZ77Ao87qZ5E8MtwtVski

スターバックスは、コーヒー豆の調達において独自の基準「C.A.F.E. Practices(Coffee and Farmer Equity Practices)」を導入しています。この基準では、コーヒー品質に加え、環境保全、農家の労働環境、取引の透明性などを評価項目として設定しています。
スターバックスは第三者機関と連携しながらサプライヤーを評価し、基準を満たす農園からの調達を進めています。

③アディダス|海洋プラスチック再利用素材「Parley Ocean Plastic」を用いた製品開発

引用:https://www.adidas.jp/go/campaign/impact/planet

アディダスの環境保護への取り組み「PLANET」は、「美しい地球がなければ、素晴らしいスポーツも存在しない」という信念に基づき、製品のライフサイクル全体で地球への負荷を減らすことを目指しています。
2024年以降、可能な限りバージンポリエステルの代わりにリサイクルポリエステルを使用することを掲げています。また、海洋プラスチック汚染に対抗するため、「パーレイ・オーシャン・プラスチック」を製品に採用したり、キノコの菌糸体を活用した「Mylo」のような自然由来の代替素材を開発したりと、脱プラスチックと循環型モノづくりを推進しています。

④ユニクロ|衣料品回収・再利用の取り組み「RE.UNIQLO」

引用:https://www.uniqlo.com/jp/ja/special-feature/sustainability/re-uniqlo?srsltid=AfmBOooJhzFxOptzi053M1gqJFLlP3xM6i7bFRFcGZv5h25VsgSy9dtJ


ユニクロは、着用後の衣料品を回収して再利用する取り組み「RE.UNIQLO」を実施しています。店舗で回収した衣料品は、難民支援などの寄贈に活用されるほか、リサイクル素材として再利用される場合もあります。この仕組みにより、製品販売後の衣料品も含めて資源循環を促進しています。

(3)社会課題と連動したブランドコミュニケーション

社会課題と連動したブランドコミュニケーションとは、環境問題や社会課題への取り組みをブランド活動やマーケティングメッセージと結び付けて発信する方法です。企業は自社の理念やサステナビリティ方針に基づき、環境保護や社会課題への対応をテーマにしたキャンペーンやブランド発信を行います。
これにより、企業の価値観や取り組みを市場に示すとともに、事業活動と社会的価値の関係を顧客やステークホルダーに伝える役割を持ちます。

①P&G|ジェンダー固定観念に着目したブランドキャンペーン「Like a Girl」

引用:https://jp.pg.com/environmental-sustainability/

P&Gの生理用品ブランドAlwaysは、2014年に「#LikeAGirl」キャンペーンを開始しました。このキャンペーンでは、日常で使われる表現「like a girl(女の子みたいに)」が否定的に使われる社会的認識に着目し、動画やSNSを通じてその意味を前向きに再定義する試みが行われました。広告では、異なる年齢層の男女に「女の子のように走る」などの行動を実演させ、固定観念の存在を可視化しています。

②ザ・ボディショップ|動物実験反対キャンペーンと倫理的調達の取り組み

引用:https://www.the-body-shop.co.jp/shop/e/ec-animal/?srsltid=AfmBOorcO8qPO69WPoBSBvP3I8YcjWfnDSiyXluj3ZXRFRqw-XFtk6W0

ザ・ボディショップは、創業当初から動物実験に反対する姿勢を掲げ、製品開発やブランド活動に反映しています。「Forever Against Animal Testing」などのキャンペーンを通じて、化粧品分野における動物実験の廃止を訴えてきました。
また、原材料調達ではコミュニティフェアトレードの仕組みを導入し、生産者との公正な取引や地域社会への配慮を進めています。

③IKEA|循環型社会をテーマにしたブランドコミュニケーション

引用:https://www.ikea.com/jp/ja/this-is-ikea/climate-environment/

イケアの環境への取り組みは、「ピープル・アンド・プラネット・ポジティブ」という戦略のもと、2030年までに事業全体で排出する温室効果ガスを、実質的な排出量以上に削減する気候変動ポジティブの実現を掲げています。製品設計の段階から、リサイクルや再販、修理を前提としたデザインを徹底し、原材料にはリサイクル素材や再生可能素材のみを使用することを目指しています。

④花王|ESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」に基づくブランド発信

引用:https://www.kao.com/content/dam/sites/kao/www-kao-com/jp/ja/corporate/sustainability/pdf/klp-pr-2021-07.pdf

花王は2019年にESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」を策定し、持続可能な暮らしの実現をテーマとした取り組みを進めています。この戦略では、環境・社会・ガバナンスの視点を企業活動に組み込み、製品開発やブランド発信と連動させる方針が示されています。
具体的には、環境負荷低減や資源循環、人権尊重などのテーマを掲げ、生活者の持続可能なライフスタイルを支援する活動を展開しています。

5.サスティナブルマーケティングとESG・CSR等との関係性

サスティナブルマーケティングは、ESGやCSRといった企業の持続可能性に関する枠組みとも密接に関係します。企業は環境・社会への取り組みを経営戦略や事業活動に組み込み、その内容を市場やステークホルダーに伝える必要があります。
ここでは、ESGやCSRとの関係、企業戦略との統合、マーケティングの役割について解説します。

(1)ESGとサスティナブルマーケティングの関係

ESGとは、環境(Environment)社会(Social)ガバナンス(Governance)の3つの観点から企業を評価する指標です。投資判断や経営評価においてESG要素が不可欠となった現在、企業は環境負荷の低減や社会的責任の遂行、透明性の高い統治体制の構築を強く要請されています。
これらESGに基づく実態は、商品やブランドを介して企業の姿勢を可視化するマーケティング活動の根拠となります。

つまり、ESGが企業の価値を測る基準であるのに対し、サステナブルマーケティングはその価値を市場に実装・浸透させる手段としての役割を担っています。

【事例】富士フイルム:技術の転換によるESGの実装
富士フイルムは長期CSR計画「Sustainable Value Plan 2030」を掲げ、 写真フィルムで培った高度な化学技術を医療や環境分野へ大胆に転換しました。 この戦略は単なる社会貢献に留まらず、ESGの「社会」や「環境」の課題解決を 新たな事業成長のエンジン(実装手段)としてマーケティングに統合しています。 具体的には、再生医療や水処理フィルター等の高付加価値な製品群を通じて、 企業の誠実な姿勢を具体的なブランド価値として市場へ浸透させることに成功しました。 ESGという評価基準を、持続可能な新市場の開拓へと繋げた先進的な事例です。
参考:サステナビリティ|富士フイルムホールディングス

(2)CSRとサスティナブルマーケティングの関係

CSR(企業の社会的責任)とは、企業が社会の一員として、環境保護や社会貢献、地域活動などを通じて果たすべき責任を指します。企業は事業活動が社会に与える影響を真摯に受け止め、持続可能な社会を形成するための一翼を担うことが求められています。こうしたCSR活動は、企業の誠実な姿勢や価値観を社会に示す信頼の土台となります。

サステナブルマーケティングにおいては、このCSRによって培われた企業の信頼性を基盤としながら、社会貢献を単なる外部活動に留めず、事業活動そのものを通じて社会的価値と経済的価値を同時に創出することを目指します。

【事例】ヤクルト本社:本業を通じた地域見守り
ヤクルトは1972年から、ヤクルトレディが商品をお届けしながら 独り暮らしの高齢者の安否を確認する「愛の訪問活動」を継続しています。 この純粋な社会貢献(CSR)で培われた「地域からの深い信頼」を土台に、 現在は自治体や警察と連携した防犯・見守りネットワークを全国で構築しました。 単なる飲料販売に留まらず、地域の安全を守るインフラとしての役割を果たすことで、 ブランドの唯一無二のアイデンティティと顧客との強固な絆を確立しています。 本業のプロセスそのものを社会的価値の創出へと昇華させた、日本を代表する事例です。
参考:ヤクルトレディが一人暮らしの高齢者にお花をプレゼント ~ 敬老の日のお祝いとして「カーネーション」をお届け ~

(3)企業のサステナビリティ戦略とマーケティングの統合

現代の企業経営において、マーケティング戦略はもはや独立したものではなく、このサステナビリティ戦略と不可分な関係にあります。環境配慮を前提とした製品開発(エコデザイン)から、サプライチェーンの透明性確保、そしてそれらをブランド価値として昇華させるコミュニケーションまで、一貫した連動が求められているためです。

企業は自らの取り組みを情報発信などで伝えるだけでなく、事業活動そのものを通じて社会価値を創出し、そのプロセスを市場や顧客と共有することで、中長期的な競争優位性を構築していく必要があります。

【事例】LIXIL:エコデザインと居住価値の高度な統合
LIXILは製品開発の初期段階から環境負荷を低減する「エコデザイン」を徹底し、 節水シャワーや高断熱窓といった製品を通じて社会価値の創出に挑んでいます。 この戦略は単なる環境配慮に留まらず、顧客の光熱費削減という経済的メリットと、 CO2排出削減という環境的インパクトを同時に提供するマーケティングの核です。 またサプライチェーンの透明性を高め、原材料調達から廃棄に至る全プロセスを 開示することで、持続可能な住まいを実現するブランドとしての信頼を確立。 事業活動そのものが社会課題の解決に直結し、市場での強固な競争優位性を築いています。
参考:LIXIL’s Impact

(4)ESG・CSRの取り組みを企業価値として伝える役割

企業がESGやCSRを実践する際、その活動実態をステークホルダーへ正確かつ効果的に伝達することは、市場からの信頼を獲得する上で不可欠なプロセスです。

具体的には、統合報告書サステナビリティレポートを通じた客観的な情報開示に加え、日々のブランドコミュニケーションにおいて、企業の志を情緒的に共有することが求められます。こうした活動は、事実の公表に留まらず、企業の誠実さをブランド価値として定着させ、中長期的な企業評価を向上させる極めて戦略的な役割を担っています。

【事例】サントリー:水と生きる「約束」と「実証」の対話
サントリーは「水と生きる」というパーパスを経営の核に据え、 徹底した「環境報告書」で水源涵養の科学的データを詳細に開示しています。 この客観的な事実(ESGの実態)を土台としつつ、広告やSNSでは、 豊かな森を育む人々の情熱や自然への敬意を情緒的な映像で発信しました。 こうした「数値による証明」と「物語による共感」を高度に組み合わせることで、 企業の社会的姿勢を単なる義務ではなく、ブランドへの深い信頼へ変換。 消費者の選択が自然保護に繋がる実感を届け、中長期的な企業価値を高めています。
参考:サイト情報ダウンロード|サントリー

(5)ESG経営の中でのサスティナブルマーケティングの位置付け

ESG経営とは、環境・社会・ガバナンスを経営の重要基盤と捉え、長期的な持続可能性を追求する経営モデルです。この枠組みにおいて、マーケティングは企業の具体的な取り組みと市場における評価を繋ぎ、その価値を最大化させるエンジンとしての役割を担います。

企業が事業戦略に組み込んだ環境負荷の低減や社会課題への解決策は、商品やブランドという形を通じて初めて顧客に届きます。

サステナブルマーケティングは、ESG経営の実態をブランドへの信頼と共感へと転換し、選ばれ続ける企業となるための市場との対話を先導するポジションに位置づけられます。

【事例】積水ハウス:住まいを通じてESGを価値化するエンジン
積水ハウスは「ESG経営のリーディングカンパニー」を目指し、 環境・社会への姿勢を住宅という具体的な形に落とし込んでいます。 特に「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の普及(E)や、 庭造りによる生物多様性の保全「5本の樹」計画(S)は、 経営戦略上の数値を「快適な暮らし」というブランド価値に転換しました。 これにより、顧客は住まいを選ぶことで自然と社会課題の解決に参画。 ESG経営の実態が、マーケティング活動を通じて「選ばれる理由」となり、 高単価・高付加価値なブランドとしての信頼を不動のものにしています。
参考:ESG経営|積水ハウス

6.まとめ

サスティナブルマーケティングは、環境・社会への配慮と企業活動を結び付けながら、企業価値やブランド形成を中長期的に高めるマーケティングの考え方です。従来のマーケティングとの違いは、評価指標や対象範囲、時間軸、企業活動との関係などに表れます。
企業は商品開発やサプライチェーン、ブランドコミュニケーションなどを通じて取り組みを実践し、ESGやCSRと連動させながら社会価値と経済価値の両立を図ることが求められます。

五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、既存事業で発生する廃棄物やコストを新たな資源・利益と捉え直し、サステナブルな商品開発や構造的な企業変革を強固に支援します。不確実な時代を勝ち抜くために、自社のビジネスモデルを次世代の循環型経営へとシフトしたい場合には、ぜひお気軽にご相談ください。

監修

早稲田大学法学部卒業後、金融機関での法人営業を経て、中小企業向け専門紙の編集記者として神奈川県内の企業・大学・研究機関を取材。
2013年から2020年にかけては、企業のサステナビリティレポートの企画・編集・ライティングを担当。2025年4月よりフリーランスとして独立。
企業活動と社会課題の接点に関する実務経験が豊富で、サステナビリティ分野での実践的な視点に基づく発信を強みとしている。