再資源化とは?リサイクルとの違い・関連法案や企業における具体例も

再資源化という言葉は、統合報告書やサステナビリティ開示、調達方針の中で頻繁に用いられる一方、その定義や制度上の位置づけが曖昧なまま使われているケースも少なくありません。
本記事では、再資源化を法律・制度の文脈から正確に整理し、企業が説明責任を果たすための判断軸と実務への落とし込み方を解説します。

五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、回収・再資源化ルートの設計と、エビデンスに基づく開示支援を強固にサポートします。再資源化を企業戦略へと転換したい場合には、ぜひご相談ください。

目次

1.再資源化とは?リサイクルとの定義の違いを整理

再資源化は、環境用語としてだけでなく、企業の資源調達やリスク管理に直結する重要な概念です。
ここでは、リサイクルや再利用との違いや、経営戦略における再資源化の位置づけなどを解説します。

(1)再資源化の基本的な定義

再資源化(さいしげんか)とは、使用済み製品や廃棄物、副産物などを処理し、原材料や燃料などとして再び利用できる状態へ戻すことです。

資源を使って捨てる前提の線形経済から、回収・再生を組み込む循環型経済へ移るうえで中核となる概念でもあります。また、英語ではresource recoverymaterial recyclingなどと訳され、対象や工程により指す範囲が変わります

(2)再資源化とリサイクルの違い

リサイクルは、廃棄物を再生して利用する具体的な処理手法(プロセス)を指します。
一方、再資源化は、回収物を原材料やエネルギー源として再投入できる状態にすることを目的とする上位概念です。
再資源化には、マテリアルリサイクルケミカルリサイクルなど複数の手法が包含され、資源調達の安定化やコスト・供給リスク管理と直結します。

再資源化は、事業戦略や調達条件、情報開示で用いられるビジネス寄りの概念として位置づけられます。

(3)再資源化と再利用・回収の決定的な違い

回収で止めるか、再資源化まで設計するかにより、コスト構造や原料調達の安定性、そして企業の環境価値は劇的に変化します。以下では、それぞれの定義とビジネス上の性質を整理します。

定義経営上の主な論点
回収使用済みの製品や廃棄物を一箇所に集める行為物流コストの発生、管理リスク
再利用形状を変えず、そのまま、あるいは洗浄して再使用する摩耗・劣化による適用範囲の限界
再資源化原料やエネルギー源として再投入可能な状態へ処理する調達安定性、循環型モデルの構築

多くの企業が回収の段階で足踏みをしてしまいますが、再資源化によって自社で二次原料を確保することで、地政学リスクや価格高騰に左右されない安定した調達ルートを築き、レジリエンスを向上させられることにつながります。

リサイクル率の追求ではなく、回収物を高価値な資源に変える再資源化の質を設計することで、次世代の競争優位性を生み出します。

(4)再資源化が企業の経営戦略として注目される理由

再資源化が経営戦略として注目される背景には、従来のCSR(企業の社会的責任)としての環境配慮を超え、経済的合理性と直結する要素が増している点があります。
資源価格の高騰や供給不安、地政学リスクの拡大により、原材料を外部に依存する構造そのものが経営リスクとなっています。

再資源化は、環境対応であると同時に、資源調達の安定化やコスト予測性の向上を通じて、収益性とリスク管理を支える手段として、大企業のグローバル経営課題と直接結びついています。

2.再資源化に関する主な法律・取り決めの要点

再資源化は自主的な環境配慮ではなく、法制度によって段階的に義務化・高度化されています。
ここでは、国内外の主要な法律取り決めをもとに、企業が再資源化をどの前提条件として捉えるべきかについて解説します。

(1)資源有効利用促進法

資源有効利用促進法はリサイクルの実施を求める法律ではなく、製品の設計・製造から使用後の回収、再資源化までを含むライフサイクル全体で3Rを推進する枠組みです。
政令・省令により対象業種や品目が指定され、事業者には省資源設計分別しやすい表示、自主回収や再資源化体制の構築などが求められます。
再資源化はこの法律の一要素であり、製品設計段階から組み込むべき企業責務として位置づけられています。

参考:https://www.meti.go.jp/policy/recycle/main/admin_info/law/02/

(2)循環型社会形成推進基本法

循環型社会形成推進基本法は、個別のリサイクル手法や技術を定める法律ではなく、日本における資源循環政策の最上位に位置づけられる枠組みです。
発生抑制、再使用、再生利用、熱回収、適正処分という処理の優先順位を法定化し、事業者や行政の判断基準を示しています。

経営層にとって重要なのは、自社の事業活動や再資源化の取り組みが、この優先順位に沿った構造になっているかを問い直す点にあります。再資源化は、この基本法の原則を具体的な事業行為へ落とし込む位置づけにあります。

参考:https://www.meti.go.jp/policy/recycle/main/admin_info/law/01/index.html

(3)再資源化事業等高度化法

再資源化事業等高度化法は、廃棄物処理を再生材の質と量を安定的に確保するための成長基盤として再定義する法律です。
排出事業者には、再資源化の実施状況に関する報告が求められ、取り組みの可視化が経営課題となります。
また、国の認定制度により、広域的かつ高度な再資源化事業が促進され、従来の処理体制を超えた循環網の構築が進みます。
再資源化は、環境対応にとどまらず、調達・競争力・経済安全保障に直結する経営判断の対象へ移行しています。

参考:https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/youki/pra-tf/dai2tf/dai2tf-shiryo3-moe1.pdf

(4)再生材利用の義務化について

2026年4月施行予定の改正資源有効利用促進法では、特定の製品について再生材の利用を義務化する枠組みが導入されます。政令で「脱炭素化再生資源利用促進製品」など対象製品が指定される見込みで、該当製造事業者は再生材利用の計画を策定・提出し、その実施状況を定期的に報告する義務を負います。

義務化は環境配慮ではなく、自社製品の設計・資源調達・供給網戦略の見直しを迫るものであり、報告・目標設定は経営判断に直結します。義務の未達や不十分な実施は勧告・命令・公表の対象となる可能性があります。

参考:https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/resource_circulation/pdf/011_03_00.pdf

(5)特定品目別のリサイクル法

特定品目別のリサイクル法は、廃棄量が多い、または環境負荷が大きい製品について、再資源化を個別に義務づける法律群です。家電リサイクル法建設リサイクル法などが代表例で、製品特性や流通構造に応じて、回収方法や再資源化の水準が定められています。

これらの法律では、事業者が回収・再資源化の責任を負う点が明確であり、再資源化は法的義務として扱われます。
企業は自社製品がどの品目法の対象かを把握し、設計・調達・処理体制を制度前提で構築する必要があります。

①プラスチック資源循環促進法

プラスチック資源循環促進法は、プラスチックを廃棄物ではなく循環させるべき資源として捉え直した、日本初の包括的な資源循環法です。製品設計段階での使用抑制や再生材利用、使用後の回収・再資源化までを一体で求め、製造・販売事業者、排出事業者双方に役割を課しています。

この法律は、製品デザインの見直し、回収を前提とした顧客体験やサービス設計、産業廃棄物管理体制の再構築に直結し、環境対応を超えた経営判断の対象となっています。

参考:https://plastic-circulation.env.go.jp/

②建設リサイクル法

建設リサイクル法は、建設廃棄物が産業廃棄物全体の約2割、不法投棄では約6割を占めるという深刻な背景を踏まえ、分別解体と再資源化を法的義務として定めた法律です。対象となるコンクリートアスファルト木材を再び利用すべき資源として位置づけられています。

近年は、路盤材などの低付加価値利用にとどまらず、コンクリートの高品質再生など、高付加価値な再利用へ転換できるかが、企業の環境価値や競争力を左右する局面に入っています。

参考:https://www.env.go.jp/recycle/build/gaiyo.html

以下の動画では、廃コンクリートから高品質骨材を生産するシステムが紹介されています。

上記のような価値を維持・向上させて循環させている事例は、新品と同等の用途に使用でき、価値が循環するアップサイクルとも呼ばれます。

(6)国際規制について

欧州では、欧州グリーンディールおよびサーキュラーエコノミー・アクションプラン(CEAP)を起点に、製品設計から再生材利用、廃棄段階までを規制で管理する動きが加速しています。

これらはEU域内企業に限らず、EU市場に製品を供給する日本企業のサプライチェーンにも影響します。
再資源化の水準再生材利用率情報開示が取引条件となるケースも増えており、調達・販売・競争力を左右する前提条件になりつつあります。

3.【事例付き】再資源化の対象となる主な品目

再資源化はあらゆる製品で一律に求められるものではなく、品目ごとに制度・技術・経営上の論点が異なります
ここでは、企業活動と関係の深い主要な品目を整理し、再資源化が経営判断にどう結びつくかを解説します。

(1)プラスチック

プラスチック資源循環促進法では、製造・販売事業者等が自ら使用済製品を回収し、再資源化まで担う「自主回収・再資源化」の認定制度が設けられています。
認定を受けることで、廃棄物処理法上の許可に依らず、主体的に資源循環を構築できる点が特徴です。
使用済み製品を自社の資産として管理し、原材料調達リスクを低減すると同時に、他社が模倣しにくい循環モデルを確立する手段となります。

参考:https://plastic-circulation.env.go.jp/about/pro/recycle

【事例】テラサイクルジャパン:複合プラスチックの広域回収モデル

テラサイクルジャパンは、従来のリサイクルでは困難だった製品の「自主回収・再資源化」において先駆的な役割を担っています。

プラスチック資源循環促進法の認定を受け、日用品の詰め替えパックなど、複数の素材が混ざった複合プラスチックの回収を推進しています。 メーカーや小売店と連携し、ドラッグストアなどの店頭に専用の回収拠点を設置することで、消費者にとって身近なリサイクルの場を提供しました。 認定制度を活用したことで、廃棄物処理法の複雑な許可を簡略化し、全国規模での円滑な物流ネットワークを構築しています。

回収された使用済み製品は、買い物かごや植木鉢といった新たなプラスチック製品へと生まれ変わります。 特定の企業だけでなく、P&Gなどの大手メーカーを巻き込み、業界の垣根を超えた循環型プラットフォームを確立した点が特徴です。

資源を「ごみ」としてではなく、再生可能な「資産」として管理し、原材料のトレーサビリティを確保することに成功しています。 この取り組みにより、消費者の環境意識を高めると同時に、埋め立てや焼却に頼らない持続可能な社会の実現に寄与しています。 他社が模倣しにくい高度なリサイクルスキームを構築することで、パートナー企業のブランド価値向上にも大きく貢献しました。

製造から回収、再製品化までを繋ぐこの仕組みは、プラスチック資源循環の理想的な社会実装モデルとして注目を集めています。
参考:無料のリサイクルプログラム|テラサイクルジャパン

以下の動画では、プラスチック使用製品設計指針とその認定製品について解説しています。

(2)建設廃棄物(コンクリート・アスファルト)

建設リサイクル法により、コンクリートアスファルトは分別解体と再資源化が法的に義務づけられており、現状では路盤材などへのダウンリサイクルが中心で、環境負荷低減や資源価値の面では限界があります。

近年注目されているのが、再生骨材を再び建設資材として利用する水平リサイクルです。
高品質な再生材を安定供給できれば、資源制約や排出量削減への対応にとどまらず、企業のESG評価や入札競争力を高める要素につながります。

参考:https://www.env.go.jp/recycle/build/gaiyo.html

【事例】前田建設工業:アスファルトとコンクリートの高度な循環利用

前田建設工業は、グループ会社の前田道路と連携し、アスファルトの水平リサイクルにおいて業界をリードしています。

道路の修繕などで発生したアスファルト殻を、自社グループのプラントで高度に処理し、再び高品質な再生合材として活用しています。 特に100%近い高い比率でリサイクル材を用いながらも、新品同様の耐久性と品質を維持する独自の配合技術を確立しました。 コンクリート分野においても、解体現場で発生した塊を破砕して再生骨材へと加工し、新たな構造物の資材として再投入しています。 従来は路盤材などの下層への利用が中心でしたが、構造体の一部として利用する「水平リサイクル」の実装を積極的に進めています。 インフロニア・ホールディングスの中核として、設計段階から解体後の再利用を考慮した「循環型建築」の実現に取り組んでいます。 ICTを活用した分別管理システムを導入し、現場での混入を防ぐことで、再資源化の効率と純度を飛躍的に向上させました。 こうした一連の活動は、単なる廃棄物削減に留まらず、二酸化炭素の排出抑制原材料の安定調達という戦略的な意味を持っています。

地域社会や自治体と連携したインフラ維持管理モデルを提唱し、資源を地産地消する循環型プラットフォームを構築しています。 技術力と物流網を組み合わせた独自の強みにより、環境負荷を低減しながら企業のESG競争力を高める好事例となっています。

参考:環境|前田建設工業

(3)金属・希少金属(レアメタル)

金属・希少金属の再資源化は、国内で資源を確保するための戦略的投資として位置づけられます。
リチウムやコバルト、ネオジムなどは、EVや風力発電といった脱炭素技術に不可欠である一方、海外依存度が高く供給網の脆弱性が指摘されています。
使用済み製品や製造工程から回収・再資源化する都市鉱山の活用は、資源調達リスクを低減し、クリティカルミネラル(重要鉱物)を自社で管理する体制構築にもつながります。

参考:https://www.env.go.jp/content/000333083.pdf

【事例】JX金属:車載用電池リサイクルのクローズド・ループ構築

JX金属は、電気自動車の普及に伴い需要が急増するリチウムイオン電池の再資源化に注力しています。
独自の湿式精錬技術を駆使し、使用済み電池からニッケルコバルトリチウムを高純度で回収する技術を確立しました。 これまでは困難だったリチウムの回収についても、電池材料として再利用可能なレベルでの抽出に成功しています。

茨城県日立市などに実証プラントを設置し、将来的な大量廃棄を見据えた社会実装に向けた検証を加速させています。 自動車メーカーとの連携を強化することで、車載用電池の「電池から電池へ」という水平リサイクルの実現を目指しています。

資源をリサイクルするだけでなく、国内で希少金属を循環させる「都市鉱山」の活用を戦略的に進めています。 精錬事業で培った高度な技術を基盤とし、資源の安定供給環境負荷の低減を同時に達成するモデルを提唱しました。 海外の資源依存度を下げることで、経済安全保障の観点からも極めて重要な役割を担う企業として評価されています。 製造工程から廃棄後の回収までを一貫して管理する体制を構築し、循環型社会のインフラ構築を主導しています。

高度な付加価値を持つ先端素材メーカーとして、持続可能なモビリティ社会を支える資源循環プラットフォームを追求しています。

参考:廃車載リチウムイオン電池に含まれるリチウムの高回収率リサイクルプロセスを開発|JX金属

なお、リチウムイオン電池の回収は自治体によって対応にバラつきがありましたが、日本国内において義務化される方針が示されています。

(4)紙・段ボール・繊維

紙や段ボールは長年にわたりリサイクルが確立された素材ですが、近年はプラスチック代替の進展により需要が増加し、原料となる古紙の回収量減少品質低下が新たな課題となっています。
一方、繊維は混紡製品構造の複雑さから再資源化率が低く、国際的にも改善が求められています。

これらの素材は調達・物流・廃棄までを含むスコープ3排出に直結しており、設計次第で環境負荷とブランド評価は大きく変わります。素材循環は、コスト管理ではなく企業価値を左右する経営判断として再定義すべき領域です。

参考:http://www.prpc.or.jp/wp-content/uploads/2023_waste_manager_Workshop_text1.pdf

【事例】レンゴー:段ボールの高度な水平リサイクルと資源管理

レンゴーは「ゼネラル・パッケージング・ソリューション」を掲げ、段ボールの水平リサイクルにおいて極めて高い水準を維持しています。
主原料となる古紙の利用率は98.6%に達しており、使用済み段ボールを再び新しい段ボールへと戻す循環の輪を自社グループ内で完結させています。 単に回収するだけでなく、独自の古紙利用技術を磨くことで、リサイクルを繰り返しても品質が劣化しにくい強靭な板紙の製造を可能にしました。
不足するわずかな新パルプについても、未利用の木質資源を活用することで、森林資源を損なわない持続可能な調達を徹底しています。

製品の軽量化(薄紙化)を同時に進めることで、資源の使用量そのものを減らしつつ、輸送時の二酸化炭素排出量の抑制にも貢献しています。
また、リサイクルを阻害するプラスチックなどの混入物を効率的に除去・再資源化する体制を整え、古紙の品質低下という課題にも対応しました。

製品ごとのカーボンフットプリントを可視化することで、顧客企業がスコープ3排出量を正確に把握・削減できるよう支援しています。 このような資源循環の仕組みは、原材料価格の高騰供給不安に対する強力な防波堤となり、企業の経営基盤を安定させる要因となっています。 廃棄物を資源に変えるだけでなく、デジタル技術を駆使した最適な包装設計を通じて、物流全体の環境負荷低減を牽引しています。

長年培ったリサイクルの知見をプラスチック代替素材の開発にも応用し、パッケージを通じた循環型社会の実現を全方位で推進しています。

参考:資源循環 -循環経済の拡大-|レンゴー

4.企業の再資源化に関する具体例

再資源化は概念や制度の理解にとどまらず、実装できるかどうかが企業価値を左右します。ここでは、建設・製造分野を中心に、再資源化を事業競争力や製品価値へ転換している具体例を解説します。

(1)低炭素・再資源化コンクリートの実装

宮松エスオーシー株式会社では、建設現場で発生する余剰生コンクリート(残コン)に着目し、低炭素・再資源化コンクリートの実装を進めています。
残コンは年間200万㎥以上が産業廃棄物として処理されてきましたが、同社はこれを団粒化技術により再生骨材化し、再び生コンクリートとして利用する仕組みを構築しました。

開発された再生コンクリートは、通常品と比べ最大52%のCO₂削減効果を示し、仮設工事などで実装実績も積み上げています。残コン対策をコスト削減に留めず、低炭素建材として価値転換した点は、再資源化を事業競争力へ結びつける実践例といえます。

(2)マテリアル・シフト(脱プラスチック)

株式会社コナカでは、従来使用してきたプラスチック素材を、紙や天然繊維など環境負荷の低い素材へ置き換えるマテリアル・シフト(脱プラスチック)を進めています。ワイシャツ包装に用いていたプラスチック資材を紙製へ切り替えるとともに、ポリエステルやナイロンを使用しない天然繊維100%のオーダースーツを開発・販売しています。

これらの施策は、ただの包装削減にとどまらず、製品設計や素材選定、顧客体験まで含めた構造的な脱プラスチック対応です。特に、洗濯時に発生するマイクロプラスチックの抑制は、スコープ3排出量削減ブランド価値向上に直結します。

(3)ケミカルリサイクル

川瀬産業株式会社では、使用済みプラスチックを化学的に分解し、原料レベルまで戻して再利用するケミカルリサイクルに取り組んでいます。リサイクルが困難とされてきた使用済みプラスチックを原料化し、木材代替製品「RePlagi(リプラギ)」として再生しています。

この取り組みは、資源を循環させながら新たな製品価値を創出する点に特徴があります。
特に、耐久性や再リサイクル性を備えた製品として市場に展開することで、資源制約や原材料価格変動へのリスク耐性を高めています。

(4)マテリアルリサイクル

株式会社コテックでは、使用済み製品や製造工程で発生する端材を回収し、破砕・洗浄・再加工を行うマテリアルリサイクルに取り組んでいます。特にポリカーボネートなどの樹脂分野においては、物性管理や配合技術を高度化することで、新材に近い性能を安定的に確保しています。

また、原料の品質ばらつきや供給不安定といった課題に対応するため、調達先との連携強化在庫管理の徹底用途別のグレード設計を実施しています。

(5)⽊材代替製品の開発

Bioworks株式会社では、ポリ乳酸を改質した素材「PlaX」を用いた木材代替製品の開発に取り組んでいます。
木材代替製品は、森林資源の保全と資源循環を両立させる手段として位置づけられ、バイオマス由来素材を原料とすることで、化石資源への依存を低減します。

耐久性や加工性を高めた素材設計により、従来は木材が用いられてきた用途への展開が可能となり、長期使用と再利用を前提とした循環設計が実現されます。

5.【事例付き】再資源化をコストから成長原動力へ転換する方法

再資源化を一過性のコスト対応で終わらせず、持続的な成長原動力へ転換するには、経営視点での設計が不可欠です。
ここでは、可視化・設計・共創・ビジネスモデル転換の観点から、再資源化をコストから成長原動力へ転換する方法を解説します。

(1)サプライチェーン全体の資源流動データの可視化

サプライチェーン全体の資源流動データを可視化することは、再資源化を実効性ある施策へ転換する基盤です。
IoTブロックチェーンなどのデジタル技術を活用し、自社製品がどこで使用され、廃棄され、どの程度再資源化されているかを追跡します。これにより、回収されずに失われている資源の漏れを特定できます。

回収効率を高めることで、再生原料の確保が安定し、原材料調達コストや供給リスクの予測可能性を高めることが可能になります。

【事例】レコテック:都市の資源流動をデータで最適化するPOOL
レコテックは独自の資源循環プラットフォーム「POOL」を展開し、都市部から発生する廃棄物の可視化を推進しています。

これまで排出場所や量が不明確だった廃プラスチックなどの情報を、クラウド上でリアルタイムに管理する仕組みを構築しました。 排出企業が廃棄物の量や種類をスマートフォンから入力することで、都市の中に眠る資源の埋蔵量を正確に把握することが可能になります。 このデータを活用してリサイクル業者と排出企業を最適にマッチングし、効率的な回収ルートを設計することで物流コストを削減しています。

回収された資源は高い透明性を持って追跡され、トレーサビリティの確保された高品質な再生原料として再び製造業へと供給されます。 三菱地所やオフィス家具メーカーなどの大手企業と連携し、オフィスビルから出る廃棄物を再び製品に戻す循環モデルを数多く実現しました。

資源の流動データを蓄積することで、将来的な再生原料の供給予測が可能となり、企業の原材料調達におけるリスク低減に寄与しています。 プラスチック資源循環促進法への対応やESG経営を目指す企業にとって、客観的なデータに基づいた環境施策の実行を支える強力なツールとなっています。

都市そのものを一つの巨大な鉱山と捉え、テクノロジーによって資源の漏れを最小限に抑えるこの取り組みは、サーキュラーエコノミーの基盤を築いています。

参考:循環性設計ツール|レコテック

(2)設計段階でのサーキュラーデザインの導入

廃棄物の質と量は、製品ライフサイクルの上流にあたる設計段階で約8割が決まるとされています。
この事実を前提に、設計・R&D部門(研究開発)へ戦略的に投資し、分解しやすさ素材単一化を考慮したサーキュラーデザインを導入することが重要です。これにより、将来的に想定される再生材利用の義務化にも低コストで対応できます。

リサイクルしやすい設計そのものを競争優位とし、他社が模倣しにくい新たなブランド価値の構築につながります。

【事例】ゴールドウイン:設計から変えるアパレルの循環モデル

ゴールドウインは、製品の設計段階からリサイクルを前提としたサーキュラーデザインを徹底しており、「THE NORTH FACE」などのブランドにおいて、使用済みのダウン製品を回収し再び製品化する循環型プロジェクトを推進してきました。

羽毛を容易に抽出できるよう製品構造を工夫し、素材の純度を保ったまま再資源化できる仕組みを構築しています。 また石油由来の原料に依存しないよう、微生物由来の合成タンパク質素材などを設計に積極的に取り入れています。 リサイクルしやすい単一素材の採用を広げることで、将来的な廃棄物の削減資源の再利用を両立させています。

製品が寿命を迎えた後も修理して長く使い続けるためのリペアサービスを充実させ、設計に耐久性の視点を組み込みました。 服を単なる消耗品ではなく、何度も循環し続ける資産として捉え直すことで、ブランド独自の価値を創出しています。 開発部門がリサイクル効率を設計の重要な指標とすることで、他社が模倣しにくい高度なモノづくりを実現しました。

環境負荷の低い素材選定と解体のしやすさを追求する姿勢は、アパレル業界における持続可能なモデルの先駆けです。この上流工程からの変革により、顧客の共感を生み出しつつ、国際的な環境規制にも柔軟に対応できる強固な経営基盤を築いています。

参考:循環型社会の実現|ゴールドウィン

(3)外部パートナーとの共創による資源循環エコシステムの構築

資源循環を高度化するには、自社完結型のクローズドループには限界があることを前提に、外部パートナーとの共創が不可欠です。他社、自治体、ITベンダーなどと連携するオープンループ型のエコシステムを構築することで、回収網や技術投資を分担できます。

これにより、自社単独では実現できない投資対効果を確保しつつ、業界横断の仕組みを主導できます。結果として、自社の取り組みを業界標準へと昇華させることが可能になります。

【事例】セブン&アイ:店舗を起点としたペットボトルの完全循環

セブン&アイ・ホールディングスは、全国の店舗網を資源回収の拠点として活用する独自の循環モデルを構築しています。店頭に設置された自動回収機を通じて、消費者が排出した使用済みペットボトルを高い純度で効率的に収集しています。 回収されたボトルは、パートナー企業との連携により、再び飲料ボトルへと再生される「ボトル・トゥ・ボトル」を実現しました。

この取り組みには、商社や飲料メーカー、リサイクル業者が参画し、業界の垣根を超えたオープンなプラットフォームとなっています。
店舗という顧客との接点を活かすことで、資源を「ごみ」にせず、再び自社の棚に並ぶ製品へと戻す一貫した流れを作りました。 自動回収機の導入により、素材の選別や洗浄の質が向上し、高品質な再生ペット樹脂の安定的な確保が可能になっています。

単独の企業活動に留まらず、地域住民や自治体を巻き込んだ社会インフラとして、資源循環の重要性を広く発信しています。 この大規模なエコシステムは、プラスチックの使用量削減だけでなく、サプライチェーン全体の脱炭素化にも大きく寄与しています。グループ全体で収集・再生・販売のサイクルを完結させることで、原材料の調達リスクを抑え、経営の持続可能性を高めました。

消費者にとって身近なリサイクルの場を提供し続けることで、持続可能な社会の実現に向けた新しい流通の在り方を提示しています。

参考:お客様が店頭に持参されたペットボトルを100%使用した世界初の「完全循環型ペットボトル」(ボトルtoボトル)を実現|セブン&アイホールディングス

(4)製品のサービス化(PaaS)による新収益モデルへの転換

製品を売って終わりとする従来モデルを見直し、製品のサービス化(PaaS)へ転換することで、究極の資源循環モデルを実現できます。
製品の所有権を企業側に残すことで、使用後の確実な回収と再資源化が可能となり、原材料価格高騰のリスクを実質的に排除できます。あわせて、顧客との長期的な関係を構築し、継続課金による安定したリカーリング収益を確保できます。

【事例】ダイキン工業:空調機の「冷媒循環」サービスモデル

ダイキン工業は、空調機そのものや内部の「冷媒」をサービスとして管理するPaaSモデルを推進しています。

法人向けの「エアネットサービスシステム」では、IoTを活用して空調機の稼働状況を24時間遠隔で監視しています。 所有権を実質的に管理下に置くことで、故障の予兆を捉えて適切なメンテナンスを行い、製品の長寿命化を徹底しています。

特に注目すべきは、温室効果の高い「冷媒」を自社で確実に回収し、再生して再利用するエコシステムの構築です。 機器を売って終わりにするのではなく、ライフサイクル全体を管理することで、冷媒の外部漏洩を防ぎ環境負荷を低減しています。 回収された冷媒は高度な精製技術によって新品同等の品質に戻され、再び新しい空調機や保守用に投入されます。 この仕組みにより、原材料価格の高騰や供給不足といった外部リスクの影響を受けにくい安定した事業基盤を築きました。
顧客にとっては、初期費用の抑制に加え、最新の省エネ機器を常に最適な状態で利用できるという大きなメリットがあります。 継続的なサービス提供を通じて得られる稼働データは、次世代機のサーキュラーデザインや開発効率の向上に活かされています。

資源を自社の資産として循環させ続けるこのモデルは、脱炭素と収益拡大を両立させる先進的なビジネスの在り方です。

参考:サーキュラーエコノミー時代へ~冷媒に対する向き合い方~ |ダイキン工業

6.まとめ

再資源化は、環境配慮や制度、調達、経営判断といった多面的な意味をもつ概念です。
リサイクルや再利用との違いを整理し、関連法令や品目別の位置づけを正しく理解することで、統合報告書や調達条件において一貫した説明が可能になります。
自社の取り組みを制度文脈に照らして言語化し、投資家や取引先、監査に耐える判断軸を持つことが、再資源化を実効性ある経営戦略へ昇華させる大前提となります。

五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、法的要件のクリアから透明性の高い再資源化スキームの構築までを一貫して支援します。再資源化を確かな企業価値へと変換したい場合には、ぜひご相談ください。

監修

早稲田大学法学部卒業後、金融機関での法人営業を経て、中小企業向け専門紙の編集記者として神奈川県内の企業・大学・研究機関を取材。
2013年から2020年にかけては、企業のサステナビリティレポートの企画・編集・ライティングを担当。2025年4月よりフリーランスとして独立。
企業活動と社会課題の接点に関する実務経験が豊富で、サステナビリティ分野での実践的な視点に基づく発信を強みとしている。