廃棄物削減の企業事例10選|産業廃棄物対策の動向と抜本的対処も解説

廃棄物削減は、SDGs環境配慮の文脈で求められる一方、具体的に何から着手すべきか分からず、判断に迷う企業や自治体も少なくありません。本記事では、廃棄物削減が求められる背景から、産業廃棄物対策の動向企業の取り組み事例制度対応の要点までを詳しく解説します。

五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、廃棄物の削減に関して現状把握から再資源化の仕組みづくりの構築を強固にサポートします。複雑化する廃棄物管理を持続可能な資源管理へと昇華させたい場合には、ぜひご相談ください。

目次

1.企業に抜本的な廃棄物削減が求められる理由

企業にとって廃棄物削減は、環境配慮の取り組みにとどまらず、資源調達企業評価市場参入を左右する経営課題へと変化しています。ここでは、なぜ抜本的な対応が企業に求められているのか、構造的要因を解説します。

(1)資源枯渇リスクへの対応

線形経済を前提とした採掘・製造・廃棄の構造は、資源枯渇を加速させるだけでなく、国際情勢の変化輸出規制を通じて原材料の供給不安や価格高騰を引き起こします。さらに日本は資源自給率が低く、こうした外部要因の影響を受けやすい状況にあります。

そのため企業には、廃棄物や製造過程で発生する端材を回収・分別し、再利用や再生材として循環させる体制の構築が求められます。
資源投入量を抑えつつ代替調達手段を確保することは、将来の調達コスト上昇供給断絶リスクを低減し、事業継続性を高める有効な経営戦略となります。

参考:https://www.meti.go.jp/press/2022/03/20230331010/20230331010-1.pdf

【事例】三菱電機のプラスチック自己循環リサイクル

三菱電機は、使用済み家電製品から回収したプラスチックを、再び自社の新製品の部品として活用する「クローズドループ・リサイクル」を高度な次元で実現しています。

従来、家電から出るプラスチックは混合状態であるため再利用が困難とされてきましたが、独自の自動選別技術を開発したことで、高い純度での素材回収が可能となりました。 この技術により、ポリプロピレンやポリスチレンといった主要な樹脂を、新品と同等の品質を維持したまま大規模に循環させています。 資源自給率が低い日本において、廃棄されるはずのものを「都市鉱山」と捉え、自社内で資源を回し続ける仕組みは、まさに調達リスクを低減する画期的な戦略です。 また、リサイクル材の利用は新規プラスチックの製造を抑制するため、二酸化炭素の排出量削減にも大きく貢献しています。 設計段階からリサイクルしやすさを考慮したモノづくりを徹底しており、製品のライフサイクル全体で環境負荷を下げる取り組みを継続しています。 現在では、この循環システムは同社の冷蔵庫やエアコンといった身近な家電製品の内部部品として広く実装されています。 外部からの原材料供給に依存しすぎない体制を構築することは、国際情勢に左右されない強固な経営基盤の確立に繋がっています。

このように、技術力によって資源枯渇という課題を成長の機会へと転換させている点は、循環経済における日本の製造業の先進的なモデルといえます。 持続可能な社会の実現に向け、同社はさらなる選別精度の向上と対象素材の拡大を目指し、資源循環の輪を広げ続けています。

参考:プラスチックリサイクルのヒミツに迫る|三菱電機

(2)非財務情報の開示要求の厳格化

ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)をはじめとする国際的なサステナビリティ基準の整備により、廃棄物排出量資源循環率は、企業の環境対応力を示す重要な非財務情報として位置づけられています。
これらの指標は、投資家や金融機関によるESG評価取引先の調達判断に直接影響し、排出量が多い、または管理体制が不透明な企業は、将来的なコスト増や規制対応リスクを抱える存在として評価されやすくなります。
廃棄物削減は、企業価値や資金調達条件を左右する経営課題として、戦略的に取り組むことが求められています。

参考:https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/kigyoukaikei/pdf/csrreports30report.pdf
参考:サステナビリティ基準委員会
参考:Guidance for Disclosure and Engagement for Promoting Sustainable Finance toward a Circular Economy|環境省(英語)

(3)グローバル市場からの排除のリスク

2026年以降、欧州ではデジタル製品パスポート包装廃棄物規則の本格運用により、製品ごとの素材構成再利用性廃棄物削減への配慮が取引要件として明確に求められます。
再利用設計や発生抑制を前提としない製品は、環境性能を客観的に証明できず、欧州市場での販売制限や調達対象外となるリスクが高まります。

これらの動きは欧州向け製品に限らず、グローバル企業の調達基準や取引条件にも波及します。
廃棄物削減は環境対応ではなく、市場参入を左右する前提条件になりつつあります。

参考:https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/resource_circulation/pdf/001_05_00.pdf
参考:欧州の環境規制に準拠した デジタルプロダクトパスポート対応製品の展開|帝人
参考:CE実現に不可欠な情報連携体制、“使える”デジタル製品パスポートとは?|三菱総合研究所
参考:Ouranos Ecosystem|経済産業省

2.産業廃棄物対策の動向

産業廃棄物対策は、法令順守やコスト管理の範囲を超え、企業の競争力や取引条件に影響する経営課題へと位置づけが変わりつつあります。ここでは、制度・市場の変化を背景に、企業に求められる対応の方向性を解説します。

(1)製品ライフサイクル全体の管理

製品ライフサイクルの短縮が進む中、使用段階や廃棄段階まで含めて製品価値を管理する姿勢が求められています。
IoTデータ活用により、稼働状況や劣化傾向、利用実態を把握し、保守や改良、更新計画へ反映することで、製品寿命の延長資源投入量の抑制が可能になります。

さらに、回収や再資源化を前提とした設計や調達を行うことで、廃棄コストや環境負荷を低減できます。
製品ライフサイクル全体を最適化する取り組みは、コスト管理と競争力強化を同時に実現する経営戦略として重要性を増しています。

参考:https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2016/honbun_pdf/pdf/honbun01_03_02.pdf
参考:2025年版ものづくり白書(ものづくり基盤技術振興基本法第8条に基づく年次報告)|経済産業省

【事例】NECの循環型経済を支えるデジタル基盤

NECは、長年培ってきたIoTやAI技術を駆使して、製品の製造から廃棄に至るライフサイクル全体を可視化する「資源循環プラットフォーム」を構築しています。

製品に付与されたIDやセンサーを通じて、個体ごとの稼働状況や保守履歴をリアルタイムで把握し、最適なタイミングでのメンテナンスや部品交換を可能にしました。 このデータ活用により、製品の寿命を最大限に延ばすだけでなく、廃棄段階における効率的な回収と高精度な素材選別を実現しています。 単に自社製品を管理するに留まらず、サプライチェーン全体の企業をデジタルで繋ぐことで、資源の投入量から廃棄量までを透明性の高いデータとして提供しています。 こうした取り組みは、欧州のデジタル製品パスポート(DPP)をはじめとする国際的な情報開示規制への対応において、極めて有効な解決策となります。 また、資源の循環状況を定量的に示すことで、投資家や取引先からの環境対応力の評価を向上させ、企業の長期的な競争力を高めています。 同社は、ITインフラから生じる電子廃棄物の削減という課題に対し、独自の高度選別技術とデータ連携を組み合わせることで、循環型モデルの社会実装を急いでいます。 これまでの「売って終わり」のビジネスモデルから脱却し、製品の価値を長期間維持し続けるサービス型ビジネスへの転換を、デジタル技術で強力に支援しています。

持続可能な調達を目指す企業にとって、NECの提供するトレーサビリティ管理は、資源枯渇リスクや法規制を回避するための不可欠な社会インフラとなりつつあります。 未来を見据えたこのデジタル基盤は、資源自律経済の実現に向けた日本の技術力の象徴として、国内外で大きな期待を寄せられています。

参考:資源循環・サーキュラーエコノミー|NEC

(2)循環型経済へのパラダイムシフト

大量生産・大量消費・大量廃棄を前提とした経済モデルから転換し、資源を循環させ続ける循環型経済への移行が国内外で進んでいます。製品の長寿命化や修理・再利用、再生材の活用を前提とすることで、廃棄物は次の価値創出につながる資源として再投入されます。

こうした循環の考え方は、環境負荷の低減にとどまらず、資源制約価格変動への耐性を高め、調達コストの抑制にも寄与します。廃棄物削減は、持続的な経済活動を支える基盤として位置づけられつつあります。

参考:https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/seisaku/torikumi/shien/tyousakihou/146.files/0002_20191118.pdf

【事例】象印マホービンの製品長寿命化と修理体制の維持

象印マホービンは、製品を「買い替える」のではなく「修理して長く使う」ことを支えることで、 資源の消費を抑える循環型経済のモデルを長年実践しています。
炊飯ジャーや魔法瓶などの主要製品において、補修用性能部品を長期間にわたって 保有し続ける体制を維持し、古い製品でも使い続けられる環境を整えています。 また、パッキンなどの消耗品をユーザーがオンラインで直接購入しやすい仕組みを構築し、 適切なメンテナンスを通じて製品寿命を延ばすことを積極的に推奨しています。 このように製品を長期間大切に使う文化を支える姿勢は、廃棄物の発生を直接的に抑制し、 資源効率を最大化させる持続可能な経営戦略としての役割を果たしています。 さらに、設計段階から分解のしやすさや修理の容易さを考慮することで、 単なる環境配慮を超えたブランドへの信頼性と顧客満足度の向上を同時に実現しています。

一つの製品を使い倒す喜びを提供し続ける同社の取り組みは、 大量消費社会からの脱却を目指す製造業のあり方を提示しています。

参考:サステナブルアクション|象印

(3)廃棄物の可視化とトレーサビリティの義務化

デジタル製品パスポートの導入により、産業廃棄物の排出から処理・再資源化に至るまでをデータで把握する可視化トレーサビリティは、企業にとって不可欠な管理要件となりつつあります。
これらの情報を示せない場合、法令対応の不備だけでなく、取引先や調達先からの信頼低下を招き、サプライチェーンから排除されるリスクも高まります。そのため、廃棄物管理の可視化は、事業継続の前提条件とも位置付けられます。

参考:https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/resource_circulation/pdf/002_04_00.pdf

【事例】丸紅の資源循環トレーサビリティ構築

丸紅は、サプライチェーン全体をデジタルで繋ぎ、再生プラスチックの「履歴」を可視化する先進的な取り組みを推進しています。
J-CEP等の枠組みを通じ、使用済みペットボトルキャップの回収から加工、再製品化に至る全工程を追跡可能な状態に整えました。 この仕組みにより、再生材が「いつ、どこで、どのように処理されたか」を客観的に証明し、リサイクル素材の信頼性を担保しています。 独自のデータ管理技術を活用することで、各企業の機密情報を守りつつ、環境価値に関する情報だけを正確に共有することを可能にしました。 こうしたトレーサビリティの確立は、国際的に厳格化する非財務情報の開示要求や欧州の製品規制に対応するための強力な武器となります。 また、資源の循環経路を透明化することで、従来の「使い捨て」を前提とした取引から、持続可能な調達モデルへの転換を先導しています。

商社としてのグローバルなネットワークとデジタル技術を融合させ、循環型経済における新たな市場価値の創出に大きく寄与しています。

参考:トレーサビリティ管理プラットフォームを活用した日本版DPPの対応を想定するシミュレーションの開始について|丸紅

3.廃棄物削減における企業の取り組み事例10選

(1)DXでマイボトル利用を定着させる行動変容施策|関電工

関電工は本社ビルで、専用アプリとRFIDを活用したマイボトル施策を実施しています。ボトル洗浄機でRFIDを読み取り利用回数を自動取得し、プラカップ削減数とCO₂削減量を個人・全体で可視化しています。
数値の増加に応じて森や動物が現れる演出や利用回数に応じたインセンティブで、楽しさ継続性を両立させました。

(2)入退室セキュリティシステムのアプリ化|NTT都市開発社

NTT都市開発は、新オフィスブランド「owns」において、入退室セキュリティをスマホアプリと顔認証で運用し、認証用プラスチックカードを不要としました。これにより、カード製造や更新に伴う廃棄物の発生を抑制しています。
さらに、館内に自動販売機を設置せず、来客用飲料を紙製容器へ切り替えることで、ペットボトル廃棄の削減も実現しました。

(3)オフィスにリユースカップの導入|武田薬品工業

武田薬品工業は、オフィス内にプラスチック製のリユースカップを導入し、使い捨て紙カップの使用を置き換えました。その結果、社員の利用習慣を大きく変えることなく、年間約6万個の紙カップ削減を実現しています。
回収・洗浄は社内カフェ運営と連携し、運用面での負担を最小限に抑えた事例です。

(4)ナッジ理論で分別行動を促進するボトルtoボトル|コカ・コーラ ボトラーズジャパン/三菱地所

コカ・コーラ ボトラーズジャパンと三菱地所は、オフィスビルでのペットボトル分別を促進するため、回収ボックス周辺に直接的な呼びかけナッジ理論を活用したメッセージを掲示しました。行動を強制せず、自然に正しい分別へ誘導する設計により、就業者の分別精度を向上させました。
回収されたPETボトルは粉砕・洗浄などの工程を経て再原料化され、飲料用ボトルとして再生されています。

(5)ワンウェイプラスチック削減と廃棄物の見える化|森ビル

森ビルは「森ビル ワンウェイプラスチック削減プラン2030」を策定し、直営カフェやホテル、テナントと連携して脱プラスチックを推進しました。ストローやカトラリーなどのワンウェイプラスチックを廃止し、紙・木製や再生素材へ代替することで、2023年末には不要なプラスチックの使用を解消しました。
あわせて、使用済みペットボトルの水平リサイクルや給水スポット設置によるマイボトル利用を促進しています。

(6)商品設計段階で脱プラを進めるアパレルの取り組み|コナカ

コナカは、商品設計の段階から脱プラスチックを進める取り組みを展開しています。ワイシャツ包装時に使用していた蝶キーパーやクリップなどの型崩れ防止資材を、プラスチック製から紙製へ切り替え、販売時点でのプラ使用量を削減しました。
また、オーダースーツブランド「DIFFERENCE」では、ポリエステルやナイロンを用いず、天然繊維100%にこだわった「サステナブルオーダースーツ」を開発・販売しています。

(7)カトラリー有料化と素材転換による店舗発の削減施策|ファミリーマート

ファミリーマートは、環境に関する中長期目標「ファミマecoビジョン2050」を掲げ、店舗を起点としたプラスチック削減を進めています。
プラスチック製スプーン・フォーク・ストローの有料化により、利用そのものを見直す行動変容を促進しました。
さらに、容器・包装の軽量化や、バイオマス由来・生分解性素材への切り替えを推進し、オリジナル商品のパッケージも段階的に改善しています。

(8)紙製ファイル・アメニティ削減を進めるオフィス・ホテル施策|大和ハウス工業

大和ハウス工業は、オフィスやグループ運営ホテルを中心に、使用段階でのプラスチック削減を進めています。
取引先への資料配布に用いていたプラスチック製クリアファイルを廃止し、紙製へ切り替えることで備品由来の廃棄物を削減しました。あわせて、ホテルでは客室内アメニティの設置を見直し、アメニティバーの導入や代替素材製品の採用を推進しています。

(9)海洋プラをアートに転換し行動変容を促すアップサイクル|十八親和銀行

十八親和銀行は、海岸に漂着したプラスチックごみをアート作品へ転換し、オフィスに展示する取り組みを行っています。行員による海岸清掃で回収した海洋プラを素材として活用し、地域や企業、就労支援事業所と連携して制作することで、廃棄物削減と社会的価値創出を両立しました。
日常的に目に入る空間に作品を設置することで、環境課題を自分事として捉える行動変容を促す点に特徴があります。

(10)使い捨てプラスチック全廃を見据えた製品・包装設計|イケア

イケアは、店舗やレストランで使用される使い捨てプラスチック製品の全廃を見据え、事業全体で段階的な削減を進めています。ストローやマドラー、食品容器などを再利用可能な素材や代替素材へ切り替え、運営段階での廃棄物発生を抑制しました。
また、物流では店舗で使用したダンボールを配送用梱包材として再利用し、プラスチック製梱包材の削減を実現しています。

4.企業の廃棄物削減におけるよくある失敗と対処法

廃棄物削減に取り組んでいても、現場運用や設計思想、制度対応のズレによって成果につながらないケースは少なくありません。ここでは、企業で頻発する失敗パターンと実務で有効な対処法を解説します。

(1)分別ルールの形骸化

企業の廃棄物削減が進まない背景には、制度やルールを整備しただけで運用が定着していないケースが多く見られます。

特に分別ルールは、現場での理解不足や判断基準の曖昧さから形骸化しやすく、結果として資源化可能な廃棄物が混入しコスト増や管理負担を招きます。重要なのは、個人の意識に依存せず、仕組みとして正しい行動を促すことです。
DX表示ルールの工夫を通じて、誰が担当しても同じ水準で分別できる環境を構築することが、実効性のある廃棄物削減につながります。

(2)廃棄物を出さない工夫を怠ってしまう

再資源化率が上がっても、廃棄物の発生量が減らなければ、処理コスト管理負担は残り続けます。
本質的な改善には、そもそも廃棄物を出さない設計・調達への転換が不可欠です。

よくある失敗有効な対処法
リサイクル率のみをKPIにしている発生量削減を評価指標に組み込む
設計・梱包工程に手を付けていない端材・緩衝材を最小化する設計へ見直す
納品形態が従来のまま通い箱やバルク納品に切り替える

製品設計や梱包仕様、納品形態を見直し、発生抑制を前提とした仕組みを構築することで、削減効果は継続的なものになります。

(3)処理業者とのコミュニケーション不足

廃棄物処理を委託業者に任せきりにすると、処理実態が把握できず、法令違反や不適切処理のリスクを見逃しやすくなります。契約更新だけで関係を維持している状態では、環境対応やESG開示に耐える管理体制とは言えません。

重要なのは、処理業者を外注先ではなく、再資源化を共に進めるパートナーとして位置づけることです。
処理工程やデータを共有し、可視化・説明可能な体制を整えることで、リスク低減資源循環の高度化を同時に実現できます。

(4)2026年法改正への対応漏れ

2026年の法改正に対応できていない企業では、従来の運用を続けていること自体がリスクになります。
制度は廃棄物管理の高度化と情報連携を前提としており、個別対応や属人化した管理では、監査対応や取引条件で不利になりかねません。

よくある失敗有効な対処法
紙・旧式マニフェストを継続クラウド型管理で制度変更に自動対応
再生材利用目標を未設定計画策定と進捗管理を仕組み化
法改正対応が属人的業務フローに組み込み標準化

法改正を一度きりの対応にせず、継続的に更新できる仕組みを整えることが重要です。

5.日本における廃棄物削減の方針・制度の要点

日本では、廃棄物削減を後押しする制度規制が段階的に強化されています。
対応を誤ると法令違反や取引リスクにつながる一方、適切に捉えれば競争力強化にもなります。ここでは、押さえておくべき主要制度の要点を解説します。

(1)改正資源有効利用促進法の要点

改正資源有効利用促進法は、脱炭素化サーキュラーエコノミーの実現を目的に、2025年5月の成立、2026年4月の施行が予定されています。

改正の要点は、再生材利用の計画・報告を求める制度の強化環境配慮設計(DfE)を評価する認定制度の創設製品メーカー主体での回収・再資源化の促進、そしてリユースやシェアリングを含むサーキュラーエコノミーコマースの育成です。

制度の柱内容の要点
再生資源の利用促進再生材の利用が特に必要な製品を指定し、
対象事業者に再生材利用計画の策定
利用状況の定期報告を求める
環境配慮設計(DfE)の認定解体・分別のしやすさや長寿命化など、
ライフサイクル全体で環境負荷を低減する設計
国が認定
原材料の再資源化促進メーカー等による自主回収を後押しし、
高い回収目標を掲げた場合は規制特例を適用
CEコマースの促進リユースやシェアリングなど、
資源を有効活用する循環型ビジネスの健全な育成を支援

これにより企業には、設計・調達・販売後までを含めた資源循環への関与が求められるため、廃棄物削減は現場対応ではなく経営戦略として位置づける必要があります。

参考:https://www.env.go.jp/content/000342215.pdf

(2)廃棄物処理法の施行規則改正の要点

廃棄物処理法施行規則の改正は、環境基本法に基づく水質汚濁に係る環境基準の見直しを受け、廃棄物処理施設や最終処分場の管理基準を整合させるものです。主な変更点は、六価クロムに関する基準値の強化と、汚染指標を大腸菌群数から大腸菌数へ変更する点です。

これにより、排水や地下水の管理水準が一段と厳格化され、処理施設の運転管理モニタリング体制の見直しが求められます。

基準値の詳細
  • 最終処分場の放流水・保有水:0.5mg/L → 0.2mg/L
  • 処分場周縁地下水・安定型処分場浸透水:0.05mg/L → 0.02mg/L
  • 放流水の汚染指標:大腸菌群数3,000個/cm³ → 大腸菌数800CFU/mL
改正項目内容の要点
六価クロム基準の強化人の健康保護を目的に、
最終処分場の排水・地下水に関する
六価クロムの基準値を引き下げ
汚染指標の変更ふん便汚染をより正確に把握するため、
評価指標を大腸菌群数から大腸菌数へ変更

廃棄物削減や適正処理は、環境配慮だけでなく、法令順守の観点からも重要性が高まっています。

(3)排出量取引制度に関する要点

排出量取引制度は、政府が進める成長志向型カーボンプライシング構想の中核として、脱炭素への取り組みを経済的な仕組みで促進する制度です。2026年時点では主に大規模排出事業者が対象となりますが、廃棄物の焼却に伴う温室効果ガス排出も算定対象に含まれます。そのため企業にとっては、廃棄物を減らすことが排出枠の購入負担を抑える手段となり、場合によっては余剰枠の活用につながる可能性があります。

こうした制度からも、廃棄物削減はコスト管理や収益機会とも結び付く経営上の判断要素として位置付けられつつあります。

参考:排出量取引制度の概要|経済産業省

6.企業が廃棄物削減に取り組む際の鉄則

廃棄物削減を成果につなげるには、制度対応や個別施策の積み重ねだけでは不十分です。
発想の置き換えデータの使い方設計段階での判断など、取り組み全体を貫く原則を押さえることが重要になります。ここでは、企業が実践すべき基本的な考え方を解説します。

(1)廃棄物削減を資源価値の最大化へ言い換える

廃棄物削減は、資源価値を最大化する経営判断として捉える必要があります。
廃棄物や端材をコストとして処理するのではなく、再利用・再生材として回収し、調達資源の一部に組み込むことで、原材料コストや供給リスクを抑えられます。
この視点に立つことで、削減目標は義務対応ではなく、資源効率と競争力を高める指標へと変わります。

【事例】旭化成の「ロイカ」を通じた資源価値の最大化
旭化成は、ストレッチ繊維「ロイカ」の製造工程で発生する端材を廃棄せず、 高品質な再生原料として自社内で循環させる高度な仕組みを構築しています。

従来は処分対象だった製造過程の不要分を100%回収し、独自の技術を用いて 再び原糸へと再生することで、新規資源への依存を大幅に低減することに成功しました。 この取り組みにより、廃棄コストの削減と原材料の安定調達を同時に達成し、 さらに環境配慮型ブランドとしての高い付加価値を製品に付与しています。 「捨てれば損失、活かせば利益」という経営判断を徹底することで、 削減目標を単なる義務から、企業の競争力を高める指標へと転換させています。

世界初の環境リサイクル認証を取得したこの活動は、グローバルなアパレル市場で 強く支持されており、持続可能なモノづくりの先進的なモデルとなっています。 資源を捨てずに価値を最大化し続ける姿勢は、同社の成長を支える重要な戦略です。

参考:ロイカ®のサステナビリティ|旭化成

(2)データの透明性を営業武器にする

廃棄物管理に関するデータの透明性は、コンプライアンス対応にとどまらず、営業上の強みとして活用できます。
排出量再資源化率処理プロセスを定量的に示せる企業は、取引先から管理体制の整った事業者として評価されやすくなります。

特に環境配慮を重視する顧客に対しては、具体的な数値改善実績が差別化要因になります。
つまり、廃棄物データを経営・営業に連動させることで、信頼獲得と受注機会の拡大につなげられます。

【事例】大和ハウス工業のデータ活用による営業差別化

大和ハウス工業は、建設現場で発生する廃棄物の発生量やリサイクル状況を デジタルで精緻に管理し、その透明性を営業活動における強みとしています。

独自のシステムを通じて、現場ごとの資源循環データを定量的に可視化しており、 施主に対して建設プロセス全体の環境性能を客観的に証明できる体制を整えました。 このデータの透明性は、環境配慮を重視する自治体やグローバル企業からの 信頼獲得に直結しており、受注に向けた大きな差別化要因となっています。 単なる法令遵守に留まらず、廃棄物管理を「管理能力の高さ」として提示することで、 競合他社にはない付加価値を顧客に提供している点が大きな特徴です。

数値を武器にした提案型営業により、事業の継続性と市場シェアの拡大を両立させ、 循環型経営を成長のエンジンへと転換させている好事例といえます。

参考:環境への取り組み|大和ハウス工業

(3)失敗しない設計(DfE)への移行

廃棄物削減を確実に進めるには、製造後の対処ではなく、設計段階から環境配慮を組み込む発想が不可欠です。
素材の単純化分解しやすい構造再生材の活用修理や再利用を前提とした設計は、廃棄量と処理コストを根本から抑えます。

設計時に廃棄段階まで見据えることで、後工程での追加対応や規制対応の失敗を予防できます。失敗しない設計への移行は、持続的な事業運営を支える基盤です。

【事例】富士フイルムの循環系設計と資源循環の推進

富士フイルムは、製品の設計段階から将来の再利用を前提とした「循環系設計」を導入し、 部品レベルでの徹底した資源管理を実践しています。

回収した使用済み複合機を単なる廃棄物とせず、劣化状況をデータで精密に診断した上で、 新品同様の品質基準を満たす部品を再び新製品へと搭載する仕組みを確立しました。 摩耗しやすい箇所をあらかじめユニット化し、交換や分解を容易にする構造設計によって、 再資源化にかかるコストと後工程での作業負荷を根本から低減させています。 この取り組みにより、新規資源の投入量を大幅に抑制しながら、環境性能とコスト競争力を 同時に高めるという「失敗しない設計」のビジネスモデルを具現化しました。 グローバルな規制強化が進む中で、こうした設計段階からの環境配慮は、 欧州市場などでの参入障壁をクリアし、事業の継続性を支える強力な武器となっています。

資源を循環させ続ける同社の姿勢は、製造業における持続可能なモノづくりの手本です。

参考:資源循環の促進|富士フイルムビジネスイノベーション

7.まとめ

廃棄物削減は、環境配慮やSDGs対応にとどまらず、資源調達リスク、企業評価、市場参入に直結する重要な経営課題です。
重要なのは、発生抑制・可視化・設計段階からの対応を軸に、自社の立場で実行可能な施策を選択することです。
廃棄物削減を自分ごととして捉え、次の行動につなげることが求められています。

五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、設計段階からの資源投入最適化や再資源化スキームの構築を現場にあわせて支援します。持続可能な競争力を生む循環型モデルへの転換を検討している場合には、ぜひご相談ください。

監修

早稲田大学法学部卒業後、金融機関での法人営業を経て、中小企業向け専門紙の編集記者として神奈川県内の企業・大学・研究機関を取材。
2013年から2020年にかけては、企業のサステナビリティレポートの企画・編集・ライティングを担当。2025年4月よりフリーランスとして独立。
企業活動と社会課題の接点に関する実務経験が豊富で、サステナビリティ分野での実践的な視点に基づく発信を強みとしている。