サーキュラーエコノミーの技術と企業事例16選!課題と今後の展望も

サーキュラーエコノミーは、従来の直線型経済から脱却し、資源を循環させる仕組みとして国内外で重要性が高まっています。この記事では、サーキュラーエコノミーを支える主要技術と国内外の導入事例を整理し、企業が導入可否を判断する際に確認すべき基準や、取り組みを進めるうえでのポイントをわかりやすく解説します。

こうした多岐にわたる技術の選定から、現場への実装、そして資源の再価値化をトータルで支援するのが、五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」です。廃棄物データの可視化を起点に、最適な循環技術の組み合わせと、構造的な企業変革を一貫してプロデュースします。次世代の循環型経営を構築したい方は、ぜひお気軽にご相談ください。

目次

1.サーキュラーエコノミーの技術と事例

(1)素材技術

サーキュラーエコノミーにおける素材技術とは、再利用・再資源化・代替素材などを活用し、製品に使用する原材料そのものを循環型へ転換するための技術領域を指します。
再生素材やケミカルリサイクル素材、バイオ由来素材など、環境負荷を低減しながら持続的に利用できる原材料の開発・採用が中心となります。

①再生素材

再生素材とは、回収されたプラスチック・金属・ガラスなどを物理的に再生処理し、再び原材料として利用できる状態にした素材を指します。バージン素材の使用量を削減しながら品質を維持しやすい点が特徴で、多くの量産製品で実用化が進んでいます。

リサイクル素材から生まれた服
引用:https://www.uniqlo.com/jp/ja/contents/sustainability/planet/products/material/recycle/?srsltid=AfmBOooH_R3Hxq9qiP0s0EJSy0HoVeG4YL8s2AnQiLe1amoibJzbPVVB

ユニクロでは、使用済みプラスチックやナイロンを再生して製品に活用する「リサイクル素材から生まれた服」ラインを展開しており、リサイクルポリエステルやリサイクルナイロンを使用したアウターやバッグが挙げられ、2030年度までに使用素材の約50%をリサイクル素材に切り替える目標を掲げています。

【他事例】繊維製品における高度なリサイクル技術|帝人フロンティア
帝人フロンティアは、使用済みペットボトルや製造工程で発生するポリエステル屑、回収された使用済み衣料品などを原料とするリサイクルポリエステル繊維「ECOPET®(エコペット®)」の製造・販売を主力としています。これは単なる再生だけでなく、吸汗速乾性や保温性など、バージン素材に匹敵する多様な機能性や感性を持つ素材として展開されているのが特徴です。
同社は「繊維to繊維」の水平リサイクルシステム構築を重要な目標に掲げており、回収ネットワークの強化に力を入れています。具体的には、良品計画(無印良品)や佐川急便・ミズノなど異業種のパートナー企業と連携し、商品の設計段階からリサイクルしやすい構造を取り入れる「易リサイクル商品設計」の推進や、使用済みユニフォームの完全循環型リサイクルのトライアル運用などを実施しています。これにより、国内で大量に廃棄されている衣料品の再資源化を促進し、化石燃料由来の原料使用を削減することで、持続可能な社会の実現と廃棄物ゼロを目指す取り組みを積極的に展開しています。
参考:ECOPET®(エコペット®)|リサイクルポリエステル繊維|帝人フロンティア株式会社

②ケミカルリサイクル素材

ケミカルリサイクル素材とは、使用済みプラスチックなどを化学的に分解し、モノマーや油分などの基礎原料に戻したうえで再合成された素材を指します。元の素材と同等の品質を確保しやすく、食品容器や高機能材料など、従来のリサイクルでは対応が難しかった分野でも活用が広がっています。

引用:https://mwcc.jp/news/3826/

株式会社レゾナック・ホールディングスとマイクロ波化学株式会社は、混合プラスチックを高度選別せず熱分解し、エチレンやプロピレンなどのモノマー原料へ戻す技術を確立し、素材リサイクルの構造の技術革新とGHG(温室効果ガス)削減が期待されています。

参考:https://mwcc.jp/news/3826/

【他事例】PETボトル ケミカルリサイクルへの取り組み|アサヒグループホールディングス
アサヒグループホールディングスは、使用済みPETボトルを再びPETボトルとして生まれ変わらせる「ボトルtoボトル」の取り組みを推進しており、特にケミカルリサイクル技術の採用に力を入れています。同社は、PETボトルの原料であるエチレングリコールに着目し、使用済みPETボトルを化学的に分解し、エチレングリコールを製造・再利用する技術を協栄産業、サントリーホールディングスと共同で開発しました。
この技術により、不純物が含まれた使用済みPETボトルであっても、元の素材と同等レベルの高品質な原料に戻すことが可能となり、食品衛生法に適合する安全性の高いPETボトルを製造できます。この技術を活用したリサイクルPET樹脂は、「三ツ矢サイダー」や「ウィルキンソン」などの製品容器に順次導入されており、石油由来のバージン素材の使用量を大幅に削減することに貢献しています。アサヒグループは、2030年までに国内で使用するPETボトルのすべてをリサイクルまたは植物由来素材にすることを目指しています。
参考:持続可能なPETボトル利用を目指して|アサヒグループホールディングス
参考:業界を超えた連携でケミカルリサイクルの原料を非食品用途PETへ拡大国内初飲料用ペットボトル以外のPET樹脂から飲料用ペットボトルへ再生|アサヒグループホールディングス

③バイオ由来素材

バイオ由来素材とは、植物・微生物などの再生可能資源を原料として製造された素材を指します。化石由来原料の代替として活用でき、CO₂排出量の削減や資源枯渇リスクの低減につながる点が特徴です。バイオプラスチックやバイオ樹脂、セルロース系素材などが代表例です。

引用:https://www.tohoku.meti.go.jp/s_monozukuri/topics/pdf/250717.pdf

青森エコサイクル産業協同組合が製造する「シェルホープ」は、ホタテ貝殻を原料としたバイオ由来のプラスチックフィラーです。年間5〜8万トン発生するホタテ貝殻を再資源化し、非塩素系凍結防止剤や建築資材、肥料、食品添加物など幅広い用途で活用されています。
天然由来原料を用いることで、石油由来材料の代替や廃棄物削減に貢献しています。

【他事例】バイオPE(ポリエチレン)容器採用による環境負荷低減|花王
花王株式会社は、持続可能な社会の実現に向けた取り組みの一環として、製品容器へのバイオ由来素材の積極的な導入を進めています。同社は、サトウキビの搾りかすなどから作られたバイオポリエチレン(バイオPE)を、一部の製品のプラスチック製容器に採用しています。このバイオPEは、原料の生育過程で大気中の二酸化炭素を吸収するため、化石由来のポリエチレンと比較してCO₂排出量を削減できるメリットがあります。
具体的には、「ビオレu 泡ハンドソープ」の一部容器や、ランドリー製品の容器の一部などへの採用が進められており、製品の機能性や品質を維持したまま、持続可能な資源への切り替えを実現しています。花王は、容器・包装のライフサイクル全体で環境負荷を低減する「Kirei Lifestyle Plan」に基づき、今後もバイオ由来素材の活用を拡大していく方針です。
参考:バイオ|花王ケミカル

④再生紙・再生繊維

再生紙・再生繊維とは、古紙や使用済み繊維製品を回収し、再生パルプや再生繊維として再加工した素材を指します。製造時のエネルギー負荷や資源使用量を抑えながら、紙製品・衣料品・梱包材など幅広い用途で循環利用できる点が特徴です。

引用:https://www.looplus-kurabo.com/

倉敷紡績のアップサイクルシステム「L∞PLUS」は、衣料製造過程で発生する裁断片や廃棄衣料を回収・紡績し、新たな糸・生地として再生する再生繊維素材の取り組みです。今治タオル産地との連携で原糸として供給を開始し、国内製造業の先進的な事例となっています。

参考:https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/seizo_sangyo/textile_industry/pdf/010_s01_00.pdf

【他事例】古紙高度利用と再生紙の製造|王子ホールディングス
王子ホールディングスは、紙製品製造における古紙利用の推進を環境戦略の重要な柱として位置づけています。同社は、新聞用紙から印刷・情報用紙、段ボール原紙、板紙に至るまで、幅広い製品で再生パルプを積極的に活用することで、資源の有効活用と森林資源の保全に貢献しています。
特に、古紙からインクや不純物を効率的に取り除く脱墨技術や異物除去技術の高度化に注力しており、これによりバージンパルプに劣らない高品質な再生紙の安定的な製造を可能にしています。古紙の品質を問わず再利用できる技術は、古紙回収率が既に高い日本において、リサイクル率のさらなる向上と低炭素社会の実現に不可欠です。王子グループ全体で古紙利用率の目標を設定し、国内外の工場で再生紙生産体制を強化することで、持続可能な紙サイクルを構築しています。
参考:資源循環(古紙)|王子ホールディングス

(2)回収・トレーサビリティ技術

回収・トレーサビリティ技術とは、使用済み製品や資源を効率的に回収し、素材・部品の流通経路や環境負荷をデータとして把握するための技術領域を指します。
IoT回収インフラ、RFID・QRによる個体識別、AI選別、ブロックチェーンによる履歴可視化など、循環サイクル全体を管理・追跡できる基盤を構築することが目的です。

⑤IoT回収ボックス・回収インフラのデジタル化

IoT回収ボックス・回収インフラのデジタル化とは、センサーや通信機能を備えた回収設備を用いて、廃棄物の投入量・種類・回収タイミングを自動で把握する仕組みを指します。収集効率の向上や分別精度の改善につながり、循環サイクルの最適化に欠かせない基盤技術です。

引用:https://www.city.kyoto.lg.jp/kankyo/cmsfiles/contents/0000343/343858/hodo.pdf

京都市では、太陽光発電と通信機能を備えたIoTスマートリサイクルボックスを街頭などに設置し、ゴミの溜まり具合をリアルタイムで把握できる仕組みを導入しています。このデジタル化によって不要な回収を削減し、回収業務の効率化および景観維持を両立しており、回収インフラの“見える化”が、資源循環の次の一歩として注目されています。

参考:https://www.city.kyoto.lg.jp/kankyo/cmsfiles/contents/0000343/343858/hodo.pdf

【事例】デジタルコード活用によるリサイクル・トレーサビリティ確保|TOPPANホールディングス

TOPPANホールディングスは、循環型社会の実現に向け、製品の包装材におけるリサイクル推進トレーサビリティの確保にデジタル技術を活用しています。同社の取り組みの核となるのは、包材そのものにデジタルコードやQRコードなどの識別情報を付与することです。

これにより、使用後の包材がいつ、どこで回収され、どのようにリサイクルされるかという一連のプロセスを追跡可能にする「資源循環の見える化」を目指しています。このデジタル識別情報によって、リサイクルプラントでの自動分別を高度化・効率化し、回収された包材が確実かつ高品質に再生利用されるための基盤を整備することができます。

TOPPANホールディングスは、包材の製造だけでなく、使用後の回収・選別・再生までを含むサプライチェーン全体の最適化を支援し、環境負荷低減と廃棄物削減に貢献しています。

参考:循環型社会形成|TOPPANホールディングス

⑥RFID・QRによる個体識別と回収管理

RFID・QRによる個体識別と回収管理とは、製品や容器に固有IDを付与し、使用履歴や流通経路をデジタルで追跡できるようにする仕組みを指します。どの製品がどこで回収されたかを正確に把握できるため、リユース容器の回収率向上や素材別の再資源化効率の最適化に役立ちます。

引用:https://www.dei.or.jp/aboutdei/staff_pdf/tashiro04.pdf

「電子タグ・RFIDを活用した製品個体識別と回収管理に関する実証研究」(公益財団法人 流通経済研究所)では、使用済み容器やパレット・カートラックにRFIDタグを貼付し、製造・物流・販売・回収までの流通履歴を追跡可能にしました。個品・ユニット単位でのデータ取得により、回収率の向上や再循環の設計前提になる可視化基盤の構築が進んでいます。

参考:https://www.dei.or.jp/aboutdei/staff_pdf/tashiro04.pdf

【事例】RFID技術|NISSHA

NISSHA株式会社は、三井住友フィナンシャルグループなどが展開するリユース容器循環プラットフォーム「Re&Go」に対し、基盤技術を提供しています。Re&Goは、テイクアウト容器などにQRコードやRFIDタグを付与し、利用から回収・洗浄・再利用に至るまでの容器の所在や利用履歴をデジタルで追跡・管理するシステムです。

NISSHAは、このプラットフォームにおいて、容器の個体識別に必要なRFIDタグを開発・供給しています。同社のフィルム加工技術を活かしたタグは、高温洗浄や薬品に耐える高い耐久性を持ち、容器が繰り返し利用されても情報が失われません。この信頼性の高いタグ技術により、Re&Goは回収率の向上と、リユースサイクルの効率的かつ衛生的な運用を実現し、使い捨てプラスチック削減に大きく貢献しています。

参考:Re&Go 捨てずに返す容器のシェアリングサービス|NISSHA

⑦AI画像認識・ロボティクスなどのAI選別技術

AI選別技術とは、カメラによる画像認識やロボットアームを用いて、廃棄物を素材別・品質別に自動仕分けする仕組みを指します。人手では難しい高速・高精度な判別が可能になり、再資源化工程の効率向上や歩留まり改善に大きく寄与します。

引用:https://www.mcpc-jp.org/award2022/pdf/2022_16.pdf

画像認識技術を用いた「廃電池AI仕分けシステム」では、複雑な形状・用途のリサイクル電池を 3 カメラ撮影+AI学習モデルで「種別」および「用途」まで分類。判別精度は95%以上を達成し、目視による判定負荷が大幅に削減されています。このように、AI・ロボティクスを活用した選別自動化は、素材回収から再資源化へのプロセス効率化を支えています。

参考:https://www.mcpc-jp.org/award2022/pdf/2022_16.pdf

【事例】リョーシンのAI選別ロボット「AI Benkei & AI Musashi」

リョーシン株式会社は、廃棄物処理分野の効率化と高度化を実現するため、AI画像認識技術とロボティクスを組み合わせた選別ロボットシステム「AI Benkei & AI Musashi」を提供しています。このシステムは、産業廃棄物や混合プラスチックなどの複雑な廃棄物処理ラインにおいて、従来の人手による選別比重選別では難しかった高速・高精度な仕分けを自動で行います。特に、AI画像認識が廃棄物の材質や形状、色などを瞬時に判別し、その情報に基づいてロボットアームが的確にピックアップすることで、選別作業のスピードと精度を大幅に向上させます。これにより、リサイクル素材の品質が安定し、再資源化の効率が改善されるだけでなく、過酷な選別作業における人手不足の解消作業負荷の軽減にも貢献しています。

参考:【AI選別ロボット】AI Benkei & AI Musashi //プロモーション映像|リョーシン

⑧ブロックチェーン・データ連携によるトレーサビリティ可視化

ブロックチェーン・データ連携によるトレーサビリティ可視化とは、素材の由来・製造工程・回収履歴などの情報を改ざん困難なデジタル台帳で一元管理する仕組みを指します。サプライチェーン全体の透明性を高め、環境負荷データの信頼性確保や循環スキームの最適化に活用されます。

引用:https://www.dentsusoken.com/system/files/2023-03/ISID_20200107_SMAGt.pdf

農産品の生産から流通・販売に至る履歴をブロックチェーン上で記録・可視化する「SMAGt」プラットフォームでは、自治体・地域商社が生産情報や取引履歴を消費者や輸出先に示すことが可能です。流通過程をデジタル化・改ざん不可な形で管理することで、信頼性を高めつつ循環型サプライチェーンの基盤づくりに貢献しています。

参考:https://www.dentsusoken.com/system/files/2023-03/ISID_20200107_SMAGt.pdf

【事例】旭化成が主導する資源循環議論の場「BLUE Plastics Salon」

旭化成は、資源循環社会の実現を加速するため、デジタルプラットフォームを活用した「BLUE Plastics Salon」を2021年10月に開設しました。このサロンは、廃プラスチックの資源循環に関わる多様なステークホルダー(生産者、販売者、消費者など)が一堂に会し、開かれた議論と情報共有を行うためのコミュニティです。

目的は、化石資源に依存しないサーキュラーエコノミー(循環経済)社会の実現を目指すことです。参画メンバーは、デジタル技術をどのように活用して課題を解決し、資源循環スキームを社会に実装していくかについて具体的に意見交換を行います。

旭化成が推進する「BLUE Plastics」プロジェクトの活動基盤の一つであり、ブロックチェーン技術を用いたトレーサビリティシステムの社会実装など、具体的な資源循環活動を推進するための重要な役割を担っています。

参考:資源循環プロジェクト「BLUE Plastics®」において産業系由来の再生プラスチック利用促進システム開発を開始|旭化成

(3)再資源化技術

再資源化技術とは、使用済み製品や廃棄物を素材として再利用できる状態へ戻すための処理工程全般を指します。マテリアルリサイクルやケミカルリサイクル、有機系リサイクル、サーマルリカバリーなど、廃棄物の性質に応じた再生・エネルギー回収プロセスを通じて循環利用を可能にする技術が中心となります。

⑨マテリアルリサイクル

マテリアルリサイクルとは、使用済みプラスチックや金属、ガラスなどを物理的に粉砕・洗浄・溶融し、再び素材として利用できる形へ戻す再生方法を指します。素材の特性を比較的維持しやすく、大量処理にも適していることから、多くの循環型製品の基盤となるリサイクル手法です。

タイボーの資源循環設計

引用:https://www.taibo.co.jp/about/

岐阜・和歌山に工場を構える株式会社タイボーは、使用済みプラスチックの分別・回収から再生原料化、成形用材料化までを一貫して行うマテリアルリサイクル事業を展開しています。

再生プラスチックを「成形用材料」として供給することで、素材使用量の削減と資源循環を同時に実現しています。この取り組みは動静脈産業をつなぐ心臓産業として注目を集めています。

参考:https://www.kansai.meti.go.jp/1-9chushoresearch/jirei/210728jirei.pdf

【事例】難利用古紙および複合素材マテリアルリサイクル|日本製紙

日本製紙グループは、主力の古紙利用に加え、これまでリサイクルが難しいとされてきた難利用古紙や複合素材に対する独自のマテリアルリサイクル技術を推進しています。

その先進的な事例の一つが、日本航空(JAL)などと協働して実現した「紙コップから紙コップへ」水平リサイクルです。機内で使用された紙コップを回収し、それを原料の一部に含む再生紙を製造し、再び新しい紙コップとして再生利用することに国内で初めて成功しました。さらに、複合素材である飲料用紙パックについても、水中でパルプと、プラスチック・アルミの混合物(ポリアル)に分離。良質なパルプは再生紙へ、そして分離が難しいポリアルは、独自の技術で擬木や建築資材の原料としてマテリアルリサイクルしています(Pak-UpCycle®プロジェクト)。これにより、紙パックの構成素材を余すことなく全量資源循環するビジネスモデルを確立し、資源の有効利用とバージンパルプの使用量削減に大きく貢献しています。

参考:資源循環の推進|日本製紙

⑩ケミカルリサイクル

ケミカルリサイクルとは、使用済みプラスチックなどを化学的に分解し、モノマー・油分・ガスなどの基礎原料へ戻す再資源化プロセスを指します。元の素材と同等の品質を再現しやすく、食品容器や高機能素材など、従来の物理的リサイクルでは対応が難しい領域でも活用が進んでいます。

引用:https://www.kansai.meti.go.jp/3-3shinki/2024acbiode.pdf

廃プラスチックを水・化学触媒により低温・低圧で解重合し、再び化学品の原料(モノマー)として活用するAC Biodeの技術は、従来リサイクルが難しかった混合プラスチックのケミカルリサイクルを実現しています。PET樹脂のメタノール化など世界初の技術が含まれ、素材技術としてではなく「再資源化から素材に戻す工程」を革新する動きです。

参考:https://www.kansai.meti.go.jp/3-3shinki/2024acbiode.pdf

【事例】廃プラスチックを原料とするエチレン・プロピレン製造|三井化学

三井化学株式会社は、プラスチックの資源循環を促進するため、主に廃プラスチックのケミカルリサイクルに取り組んでいます。同社の事例は、使用済みプラスチックを熱分解油化し、それを石油化学プラントの基礎原料として利用する点に特徴があります。

具体的には、この熱分解油化で得られた油を、本来石油から作られるナフサの代替原料として、エチレンやプロピレンといった化学製品のモノマー製造に活用しています。これにより、最終的に生産されるポリエチレンやポリプロピレンなどのプラスチック製品を、再生材として市場に供給しています。この取り組みは、マスバランス方式も活用して、化石燃料由来の原料使用量を削減するとともに、元の素材と同等の高品質な再生プラスチックの安定供給を可能にし、持続可能な社会の実現に貢献しています。

参考:サーキュラーエコノミーに向けて|三井化学

⑪有機系リサイクル

有機系リサイクルとは、食品廃棄物やバイオマスなどの有機物を微生物分解や発酵によって処理し、バイオガスや堆肥として再利用する仕組みを指します。廃棄物量の削減と資源循環を同時に実現でき、自治体・食品産業・農業分野で導入が広がっています。

引用:https://www.mlit.go.jp/kokudokeikaku/iten/service/kankyo/pdf/nagaisi.pdf

山形県長井市では、家庭から排出された生ごみを専用バケツで分別・回収し、畜糞やもみ殻とともにコンポストセンターで発酵処理し、年間約500トンの堆肥を生産しています。地元農地に投入されたこの堆肥は土壌改良効果も報告されており、地域の循環型社会を推進する好例です。

参考:https://www.mlit.go.jp/kokudokeikaku/iten/service/kankyo/pdf/nagaisi.pdf

【事例】バイオガス化による資源循環|JFEエンジニアリング

JFEエンジニアリング株式会社は、食品廃棄物や下水汚泥などの有機系廃棄物を資源として活用するメタン発酵技術を用いたプラントの建設・運営を手掛けています。同社の取り組みは、廃棄物を単に処理するだけでなく、微生物の働きで分解・発酵させることにより、バイオガスを効率的に取り出すことを特徴としています。

このバイオガスは、再生可能エネルギーとしてプラント内で利用されるか、売電により地域へ供給されます。さらに、発酵後に残る残渣は、適切に処理され液肥や堆肥として農地に還元されるため、廃棄物のエネルギー化と資源化を同時に実現します。JFEエンジニアリングは、これらのプラントを自治体や食品関連企業と連携して提供することで、地域全体の食品ロス削減エネルギーの地産地消を支える重要な循環インフラ構築に貢献しています。

参考:食品バイオガス発電事業会社 福岡バイオフードリサイクル 発電プラント本格稼働開始|JFEエンジニアリング

⑫サーマルリカバリー

サーマルリカバリーとは、焼却などの工程で発生する熱エネルギーを回収し、発電や温水供給などに再利用する仕組みを指します。素材そのものには戻せないものの、廃棄物をエネルギー源として有効活用できるため、最終段階の循環手段として位置づけられています。

引用:https://ef-kasama.or.jp/ecofrontier/recycle/

茨城県笠間市に立地するEco Frontier 株式会社のリサイクル施設では、使用済みプラスチックや一般廃棄物をRDF(固形燃料化ごみ)として製造し、焼却プロセスで回収した熱を地域暖房や発電に再利用しています。廃棄物を素材としてではなく、エネルギー源として活用するサーマルリカバリーとして、長期的な資源循環にも貢献しています。

参考:https://ef-kasama.or.jp/ecofrontier/recycle/

【事例】廃棄物発電による高効率なサーマルリカバリー|クボタ

株式会社クボタは、環境ソリューション事業の一環として、都市ごみ処理施設における高効率な廃棄物発電・熱回収プラントの設計・建設・運転管理を手掛けています。

同社の取り組みの核心は、ごみ焼却時に発生する熱エネルギーを最大限に活用することです。クボタは、高効率ボイラ高性能な蒸気タービンなどの技術を提供することで、従来の焼却炉よりも高い効率で熱エネルギーを回収し、安定した電力を生成することを可能にしています。

この電力は、プラント内の運転に利用されるだけでなく、地域電力会社へ売電することで収益を生み出し、施設の運営コスト低減に貢献しています。また、蒸気や温水として回収された熱は、周辺の温水プール地域冷暖房などの施設に供給されることもあり、廃棄物を貴重なエネルギー源として最大限に循環利用するサーマルリカバリーを実現しています。

参考:事業紹介|クボタ

(4)循環設計

循環設計とは、製品が使用後も再利用・修理・再製造・再資源化しやすいよう、あらかじめ構造や部品配置を工夫する設計思想を指します。分解容易性、修理性、再製造適性、モジュール化など、製品ライフサイクル全体で資源が循環し続けることを前提とした設計アプローチが中心となります。

⑬分解・分別しやすい設計

分解・分別しやすい設計とは、使用後の製品を工具や工程の負担なく解体でき、素材や部品ごとに確実に分別できるよう構造を最適化する設計思想を指します。接着剤の削減、単一素材化、部品の取り外しやすい配置などにより、再利用・修理・再資源化の効率を高めることが目的です。

引用:https://global.toyota/jp/sustainability/esg/challenge2050/challenge5/easy-to-dismantle/

トヨタでは車両を分解・分別しやすく設計し、配線ハーネスの一括除去や「分解容易マーク」の採用などを通じて解体・再資源化の効率化を進めています。例えば、2003年から採用された設計ではドアトリム・計器パネルが低負荷で取り外せる構造となっており、使用済み車の資源循環を前提にした構造設計の好例です。

参考:https://global.toyota/jp/sustainability/esg/challenge2050/challenge5/easy-to-dismantle/

【事例】製品リサイクルを考慮した設計|DELL

デル・テクノロジーズは、製品の寿命を終えた後のリサイクル効率を最大化するため、設計段階から分解・分別しやすい設計(DFR: Design for Recycling)を徹底しています。

具体的には、PCやディスプレイの筐体に再生プラスチックを積極的に採用するだけでなく、製品構造を簡素化し、ネジや接着剤の使用を極力抑えることで、異なる素材の部品を容易に分離できるようにしています。これにより、製品を解体し、素材ごとに選別する作業の時間と労力を大幅に削減し、リサイクル業者側の負担を軽減しています。

また、単一素材での設計を推進することで、回収されたプラスチックを高品質な再生原料として再利用できる割合を高めています。デルのこうした設計思想は、サーキュラーエコノミー実現に向けた、資源の完全な循環を目指す重要な基盤となっています。

参考:責任ある回収とリサイクルのためのサービス|DELL

⑭修理・アップグレード前提の設計

修理・アップグレード前提の設計とは、故障時の部品交換や性能向上のためのアップグレードを容易にする構造を採用し、製品の長寿命化を実現する設計思想を指します。消耗部品の独立化や交換可能なモジュール構造により、廃棄量の削減と製品価値の継続的な維持を可能にします。

引用:https://www.ihi.co.jp/technology/techinfo/contents_no/1198933_13491.html

IHIは民間航空機用エンジンの整備拠点を拡充し、部品修理・再製造を前提とした設計・整備体制を構築しています。特に、エンジンのファンケースやブレード等を高度に分解・検査・再組立てすることで、製品寿命を従来比で延長する設計思想を体現しています。こうした長期使用を前提とした設計と整備体制は、修理・アップグレード前提の設計の好例です。

参考:https://www.ihi.co.jp/technology/techinfo/contents_no/1198933_13491.html

【事例】パタゴニアの生涯保証と修理推進プログラム「Worn Wear」

パタゴニアは、「最高の製品を作り、環境に与える不必要な悪影響を最小限に抑える」というミッションに基づき、製品を長く愛用することを前提とした設計思想とサービスを展開しています。その象徴が、製品の耐久性を保証する「生涯保証」と、修理・再利用を推進する「Worn Wear(ウォーン・ウェア)」プログラムです。Worn Wearでは、顧客が製品を長く使い続けられるよう、積極的な修理サービスを提供しており、修理を通じて廃棄物の削減を目指しています。このサービスを可能にする前提として、パタゴニアの製品は、耐久性に優れ、かつ修理しやすい構造で設計されています。製品を修理して使い続けるという文化を根付かせることで、資源の消費を抑え、サーキュラーエコノミーに貢献しています。

参考:Worn Wear | パタゴニア

⑮再製造しやすい設計

再製造しやすい設計とは、使用済み製品を分解・洗浄・部品再生したうえで新品同等の製品として再製造(リマニュファクチャリング)しやすい構造を採用する設計思想を指します。摩耗しやすい部品の交換性や、再組立ての容易さを考慮することで、資源利用効率と製品寿命の大幅な向上につながります。

資源循環 商品をつくる 商品をつかう 資源にもどす

引用:https://holdings.panasonic/jp/corporate/sustainability/environment/resources/recycling_oriented_manufacturing.html

Panasonicでは、使用済み家電を部品・素材まで分解し、高純度リサイクル材を自社製品に再利用する「product-to-product」スキームを推進しています。冷蔵庫、エアコン、洗濯機などの廃家電から金属・プラスチック・電池素材を回収し、再構成・再製造可能な設計を積極的に展開しており、リサイクル材使用の拡大と併せて、製品設計段階で「長寿命化」「部品交換対応性」「再利用材使用前提構造」を導入し、再製造に適した製品群を構築しています。

参考:https://holdings.panasonic/jp/corporate/sustainability/environment/resources/recycling_oriented_manufacturing.html

【事例】コマツの長寿命化を実現するリマン部品と予知保全

コマツは、建設機械の分野において、製品を長く使い続けることを前提とした**「リマニュファクチャリング(リマン)事業」を核に、修理・アップグレード前提の設計とサービスを展開しています。この事業では、使用済み部品を回収し、分解、徹底的な検査と修理、そして消耗部品の交換を経て、新品と同等の性能と品質を持つリマン部品として再生・供給しています。

リマン部品は新品よりも低コストで提供されるため、ユーザーは機械の経済的な長寿命化を図ることができます。さらに、コマツ独自の稼働管理システム「KOMTRAX(コムトラックス)」を活用し、機械の稼働データや状態をリアルタイムで把握。故障の予兆を早期に察知する予知保全を行うことで、機械の突発的な故障を防ぎ、計画的な部品交換と修理を可能にしています。これらの設計とサービスにより、コマツは機械の廃棄量を削減し、資源の効率的な循環と製品価値の維持を実現しています。

参考:循環型社会形成への取り組み|コマツ

⑯モジュール化・リユース前提の設計

モジュール化・リユース前提の設計とは、製品を複数の独立したユニット(モジュール)で構成し、用途変更・再利用・再構築を容易にする設計思想を指します。必要な部分のみを交換・更新できるため、廃棄量の削減や保守性向上に加え、部品単位でのリユース・再製造を可能にします。

引用:https://www.denso.com/jp/ja/-/media/global/business/innovation/review/07-1/07-1-doc-dissertation19-i-ja.pdf

デンソーは自動車用部品製造において、モジュール化を設計段階から推進しており、製品群をサブアッセンブリ単位で統合し、物流・組立・保守・再利用の観点で効率化を図ることで、部品交換や再利用を前提とした設計を実現しています。
この体系設計は、部品の再構成・リユース可能性を高め、資源循環の観点からマテリアルおよびモジュールの長寿命化に貢献しています。

参考:https://www.denso.com/jp/ja/-/media/global/business/innovation/review/07-1/07-1-doc-dissertation19-i-ja.pdf

【事例】イトーキのオフィス家具モジュール化によるリユース推進

株式会社イトーキは、オフィス家具の設計において、モジュール化とリユースを前提とした製品開発を推進しています。同社のオフィス用間仕切りやデスクシステムは、すべて標準化された独立したユニット(モジュール)で構成されているのが特徴です。この設計思想により、顧客がオフィスレイアウトを変更する際や、企業が移転する際に、家具全体を廃棄することなく、必要な部品を交換したり、ユニットを別の用途に合わせて組み替えたりすることが極めて容易になります。これにより、製品の長寿命化を実現すると同時に、部品単位での再利用(リユース)を促進しています。イトーキは、家具を「使い捨て」ではなく「循環する資源」と捉えることで、廃棄物削減と環境負荷低減に貢献しています。

参考:環境配慮型製品 -ものづくり-|イトーキ

2.サーキュラーエコノミーの課題とは?技術導入が進まない理由

サーキュラーエコノミーの実現には多様な技術が必要ですが、特に、回収・再資源化・再利用を一気通貫で成立させる循環スキームの構築が多くの企業で課題となっており、技術だけでは完結しない運用面のハードルが浮き彫りになっています。

ここでは、企業で技術導入が進まない理由として、サーキュラーエコノミーの課題について解説します。

(1)コスト構造と回収体制の最適化が難しい

製品を回収・選別・再資源化する一連の工程に物流費や人件費が重くのしかかり、技術導入によってバージン材より高コストになりやすい構造的課題が課題となっています。

こうした要因は行政のスキームや地域インフラに依存しており、企業努力だけでは最適化しにくい側面があります。多品種少量生産のメーカーや、消費者からの回収が前提となるBtoC企業では影響が大きく、導入判断のハードルが高くなりがちです。

今後は回収網の共同化や、素材の標準化・データ連携によるコスト低減が解決策として注目されています。

(2)循環スキーム構築の担い手が不足している

サーキュラーエコノミーの実現には、回収・選別・再資源化・再製品化までを一気通貫でつなぐ循環スキームが必要です。
しかし、その各工程を担うプレイヤーが十分に揃わず、以下のような側面から仕組みづくりそのものが進みにくい構造にあるのが現状です。

課題の種類概要
回収・選別事業者の地域偏在回収・選別の担い手が地域によって大きく不足し、メーカー単独では回収網が構築できない
高度リサイクル事業者の不足ケミカルリサイクル・高精度分別の実施企業が限定的で、素材仕様が多様だと標準化が困難
再生材を利用する側の受け皿不足再生材の需要形成が弱く、循環材の販路が限定的なためスキームが成立しにくい
行政制度の差異と調整コスト自治体の制度・分別基準が異なり、スキーム構築の責任範囲が不明瞭で利害調整に時間がかかる
物流・消費者参加の不確実性回収に必要な物流網の維持や、消費者の参加率が担保できないため循環量が安定しない

今後は、自治体との共同回収、業界横断のプラットフォーム構築など、単独企業では構築できないスキームの整備が求められます。

(3)法規制・制度設計が技術革新に追いついていない

サーキュラーエコノミー関連技術が実用段階へと進む中、受け皿となる制度・法規制が依然として 直線型経済 (リニアエコノミー) を前提に設計されており、新素材・新技術の普及を阻む構造的なギャップが残っています。

実際に、資源循環経済小委員会の取りまとめでは、再生資源・循環資源の利活用促進に向け「ギア①:競争環境整備(規制・ルール)」「ギア②:CEツールキット(政策支援)」「ギア③:CEパートナーシップ(産官学連携)」の3つが必要とされており、制度整備が技術展開に追いついていないことが明記されています。

「安全性担保・不安全な事象が発生した場合の責任の明確化、消費者保護を含めた制度整備に際し ては、CE コマース促進の観点から、CE コマースを行う事業者が過度な責任を負うものとならない ようにすることが望まれる。」
引用元:https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/resource_circulation/pdf/010_03_00.pdf

また、自治体別の分別基準・許認可手続・処理フローが地域ごとに異なり、全国展開をする企業ほど制度差の影響を受けやすく、同一の循環スキームを構築・運用することが困難です。
特に、自動車・建築・アパレルなど素材構成が多様な業界では、制度側が追いつかずリサイクル工程の標準化が進まないという悪循環が生じています。

3.【2025年版】サーキュラーエコノミーに関する環境省の取り組み

ここでは、環境省が2025年時点で重点的に推進する政策や支援策の全体像を整理します。

(1)環境省の方針・ロードマップ

①循環経済への移行方針

サーキュラーエコノミーへの転換は、世界的潮流となっており、環境省はこの潮流の中で、循環経済を「企業の新たな競争力の源泉」、さらに「世界で約500兆円規模とも言われる成長市場」の獲得機会と位置付けています。

2021年1月の循環経済パートナーシップ設立や、プラスチック資源循環戦略の立案・法案提出などを通じて、制度・技術・事業モデルの三軸で移行を促進しています。

結果として、企業は資源の効率的利用・製品ライフサイクル延伸・廃棄削減といった観点を自社戦略に組み込むことが求められ、ポストコロナ時代における持続可能な成長モデルとしての位置付けが明確になっています。

参考:https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/r03/html/hj21010202.html

参考:「プラスチック資源循環戦略」について|環境省

参考:循環経済パートナーシップ

②重点分野別のロードマップ

環境省資料は、2030年度までに循環資源の活用や再生材の供給体制を抜本的に強化するため、2030年〜2035年に向けて以下の「重点分野別ロードマップ」を明示しています。

重点分野2030〜2035年に向けた目標・方向性
プラスチック容器包装2035年度までに「100%リユース・リサイクル」を実現
建設廃材の循環利用地域内でのリサイクル・再資源化を拡大し、地域循環モデルを構築
農山漁村バイオマス木質バイオマス・農業残渣などを地域資源として活用し、地域経済と循環を一体的に推進
下水汚泥・有機性廃棄物エネルギー化・肥料化を進め、地域の循環資源として最大活用
再生材市場2030年までに市場規模を「80兆円規模」へ拡大する産業構造転換を国家戦略として位置付け
地域循環共生圏地域ごとの未利用資源を活かし、循環システムと地方創生を同時に実現する政策を強化

上記のロードマップは、技術導入を検討する企業にとっては「どの分野でいつから制度が動くのか」を読み取る貴重なロードマップになっています。

参考:https://www.env.go.jp/content/000342207.pdf

【事例】カナデビアの下水汚泥資源化とエネルギー回収

株式会社カナデビア(旧:日立造船)は、下水汚泥などの有機性廃棄物を地域の循環資源として最大限活用するため、高度な汚泥固形燃料化・発電システムを提供しています。このシステムでは、下水処理の過程で発生する汚泥を乾燥・固形燃料化し、これを焼却する際に発生する熱エネルギーを効率的に回収して発電を行います。

これにより、最終処分場へ運ばれる汚泥の量を大幅に削減すると同時に、再生可能エネルギーを生み出すことが可能です。カナデビアは、自治体との連携を通じて、この技術を全国の処理場に提供しており、廃棄物削減、エネルギー創出、そして地域における資源循環の推進という、環境と経済の両面に貢献する重要なインフラを構築しています。

参考:鹿児島市の下水処理場で下水汚泥ガス化に関するフィールド試験実施を決定 ~ 下水処理における消費電力削減とグリーン化に貢献 ~|カナデビア

(2)自治体・企業の連携モデル

自治体と企業がそれぞれの役割を明確に分担し、協働して循環スキームを構築することは、地域内で発生する資源を無駄なく循環させるための基盤となります。とくに、環境省が推進する「地域循環共生圏」では、以下の役割分担を前提とした連携モデルが重視されています。

担い手役割
自治体住民からの分別・回収ルールの整備、地域で発生する資源量の把握、回収インフラの提供、産官学の調整役
企業回収資源の再生材加工、製品化、流通への展開など、技術・事業化の主体

この協働モデルでは、自治体が回収体制の整備や資源量の把握を行い、企業が技術開発や再資源化ビジネスを担うことで、地域全体での循環性が高まります。自治体にとっては、廃棄物処理コストの削減や地域経済の活性化につながり、企業側は安定的な資源供給や規制との整合性を保ちながら、実証・事業化の環境を得られる点が大きなメリットです。

こうした連携は、地域ごとに分散した資源を有効活用し、自立分散型の循環経済を実現するうえで、最も現実的かつ持続性の高いアプローチです。

参考:https://chiikijunkan.env.go.jp/

【事例】日揮HD、神戸市でIoT活用による無人衣類回収の実証開始

日揮ホールディングス株式会社は、ITサービス事業会社であるJGC Digital株式会社を通じて、神戸市IoT機能付きの回収ボックスを活用した無人での衣類回収の実証実験を2024年1月から開始しました。

この実証は、神戸市の地域課題解決を目指す「CO+CREATION KOBE Project」の一環として行われています。背景には、廃棄率が高い衣類の回収を促進するため、無人対応システムとインセンティブの提供を通じて市民の行動変容を促すという目的があります。

衣類回収サービスは「するーぷ」と名付けられ、モバイルアプリケーションと連携しています。回収ボックスはIoTにより残容量や重量を測定可能で、利用者は衣類を投函するだけで完了し、重量に応じたポイントが付与されます。貯まったポイントはクーポンや寄付に交換可能であり、回収されたポリエステル由来の衣類は、将来的には合弁会社RePEaTのケミカルリサイクル技術で再資源化される計画です。この取り組みは、ITを駆使して「服を捨てない」循環型社会の実現を目指すものです

参考:神戸市でIoTを活用した無人衣類回収の実証実験を開始|日揮ホールディングス

4.海外事例からみたサーキュラーエコノミーに関する今後の展望

サーキュラーエコノミーの実現に向けた取り組みは海外で先行しており、日本企業にとって今後の制度動向や投資判断を左右する重要な示唆を含んでいます。
ここでは、こうした海外の取り組みを踏まえ、サーキュラーエコノミーに関する今後の展望を整理します。

(1)EU

EUでは、サーキュラーエコノミー・アクションプラン(CEAP)を基盤に、2024年6月施行の「持続可能な製品のためのエコデザイン規則(ESPR:EU 2024/1781)」が導入され、部品・中間製品を含めた“設計段階からの持続可能性確保”が義務化されつつあります。
とくに、耐久性・再利用性・修理容易性・再生材含有率などが設計要件として明確化され、2027年以降は繊維・家具・タイヤ・マットレスなどが優先製品群として適用対象になる見込みです。

さらに、デジタルプロダクトパスポート(DPP)の導入や、包装・電池・自動車・電気電子製品を対象としたリサイクル義務の強化も進められており、EU全体として“循環型を前提とした製品基準”への移行が加速しています。

EU市場に製品を供給する際は、設計・素材選定・トレーサビリティへの対応が必須となるため、従来の製品開発プロセスを再構築し、再生材活用や循環性を踏まえた素材戦略を早期に検討することが求められます。

参考:https://webdesk.jsa.or.jp/pdf/dev/md_6718.pdf

(2)オランダ

オランダは「2050年までに循環経済100%」を掲げた世界的な先進国であり、2030年には一次資源使用量を50%削減する中間目標を明確化しています。建設・製造・消費財・プラスチック・バイオマスの5分野を国家重点領域として設定し、業界横断で再資源化・再設計・サービス化(モジュール化・リユース)を推進する政策体系が整備されています。

さらに、製品の「修理可能性」「材料の再使用」「再生材含有率」を設計段階で求める要件も導入されており、政府は法規制、財政支援、事業インセンティブを一体で運用する仕組みを構築しています。これにより、循環型製品とビジネスモデルが市場に定着しやすい環境が整いつつあります。

オランダの取り組みはEU全体の動向とも連動しており、日本企業にとっても、今後の国際基準を先取りするベンチマークとなります。素材選定、製品設計、サービスモデルを含む循環戦略の早期対応が競争力につながると考えられます。

参考:https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n2502re1.pdf

(3)アメリカ

米国では、2021年に公表された「国家リサイクル戦略」により、2030年までに都市ごみリサイクル率を50%へ引き上げる国家目標が設定されています。本戦略は「汚染廃棄物の削減」「リサイクル処理の効率化」「再生材市場の拡大」という3つの柱で構成され、技術開発・インフラ整備・市場形成を一体で進める方針が明確化されています。

また、容器・包装分野を対象とした「持続可能な物質管理(SMM)プログラム」では、製品のライフサイクル全体を見据えた設計・回収・再資源化の仕組みづくりが進行中で、官民パートナーシップによる再生材需給の透明性向上や新素材開発も推進されています。

米国市場の特徴として、連邦・州・自治体レベルで規制が異なる点が挙げられ、製品カテゴリによっては州ごとに循環基準への個別対応が必要になります。

つまり日本企業にとっても、包装材や電子機器分野を中心に再生材利用や回収義務が到来する可能性が高く、米国展開を視野に入れた設計・素材構成の早期見直しが競争力維持につながると考えられます。

(4)韓国

韓国は資源循環を国家戦略として掲げ、「資源の節約及びリサイクル促進法」を中心に、廃棄物発生抑制から回収・再資源化・処理までを一体で進める政策枠組みを整備しています。
廃棄物管理を「生産→消費→処分→リサイクル」の4段階で整理し、2027年までにGDP当たりの廃棄物量を20%削減、循環率を70%台から80%以上へ引き上げるなど、明確な数値目標を示している点が特徴です。

さらに、使い捨てプラスチック製品の段階的禁止、マイクロプラスチック対策、代替素材の導入支援など、素材・設計・流通・消費を横断する取り組みが進んでいます。これらの政策は、自治体による回収体制強化、企業の再生材活用や新素材開発、消費者の参加促進を組み合わせた“産官民一体の循環モデル”として機能しています。

日本企業にとっても、韓国のように 回収・処理・再利用のインフラを強化した上でデータと民間参加を組み合わせるモデル は、アジア市場で競争力を高める重要な示唆となります。素材選定・製品設計・回収スキームを早期に再構築することが、今後の国際展開において大きな鍵となるでしょう。

参考:https://www.env.go.jp/content/000050480.pdf

5.まとめ

サーキュラーエコノミーの実現には、素材技術、トレーサビリティ、再資源化、循環型設計(エコデザイン)といった多層的な技術の統合が不可欠です。

今、企業に求められているのは、環境省の最新施策や自治体との連携モデルを味方につけ、技術をバリューチェーン全体の中に最適に配置する全体設計の視点です。制度設計や外部パートナーとの共創を前提に、技術を戦略的に組み込むことで、初めて持続可能かつ高収益な循環型モデルが完成します。

多岐にわたる技術選定から、制度活用、そして実務への実装を強固に支援するのが、五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」です。現場の廃棄物分析に基づき、捨てない仕組みへの構造変革を強固に支援します。技術を単なる環境対策で終わらせず、企業の次なる成長エンジンへと転換したい方は、ぜひお気軽にご相談ください。

監修

早稲田大学法学部卒業後、金融機関での法人営業を経て、中小企業向け専門紙の編集記者として神奈川県内の企業・大学・研究機関を取材。
2013年から2020年にかけては、企業のサステナビリティレポートの企画・編集・ライティングを担当。2025年4月よりフリーランスとして独立。
企業活動と社会課題の接点に関する実務経験が豊富で、サステナビリティ分野での実践的な視点に基づく発信を強みとしている。