1.日本政府における循環型社会の取り組み

(1)循環型社会形成推進基本法の制定
- 廃棄物の発生そのものを減らし、資源を効率的に利用する仕組みの構築
- 使用済み製品や廃棄物を資源として再生利用する取り組みの推進
- 廃棄物の適正処理を徹底し、不法投棄や環境汚染を防止個別のリサイクル関連法令(例:家電リサイクル法、食品リサイクル法など)を整備し、具体的な実施策を推進
(2)循環型経済パートナーシップ(J4CE)
- 各業界の課題に対応するための情報提供や支援を実施
- 日本が持つ技術力を国内外にアピールし、世界のグリーン成長に貢献する
- 国内外での循環経済関連プロジェクトを推進
(3)Re-Style
- 一般市民や企業に対し、3Rを実践するライフスタイルの必要性を伝える
- 環境保全と持続可能な社会の実現に向けた行動を促進
- 天然資源の有限性や、廃棄物削減の重要性をわかりやすく解説
- 日常生活でできる具体的なアクションを提案
参考:環境省 Re-Style
(4)3R推進月間
- 国民、事業者、行政が一堂に会し、それぞれの3Rに関する取り組みや知見を共有
- 各地で講演会やシンポジウム、ワークショップなどを開催し、3Rの意識を高める
- 企業が自社の3R取り組みを発信する機会を提供成功事例や実績データを公開し、3R活動をさらに拡大
(5)2Rの推進
- 家庭ゴミ削減キャンペーンやリユース品の譲渡会
- リデュース可能な素材の開発や製品寿命の延長を目的とした設計
- 地域コミュニティでの共有経済(シェアリングエコノミー)の活用
(6)地域循環共生圏の推進
- 農業廃棄物や食品廃棄物を堆肥やエネルギー源として再利用
- 地域で発生する廃棄物を分別・加工し、再資源化する施設を設置
- 地域住民間で物品やサービスを共有する仕組みを促進
- 地域内で資源循環が難しい場合、近隣市町村や都道府県、さらには国内全体での協力体制を構築
(7)その他の施策・法律
①プラスチック資源循環促進法

2022年4月1日に施行された「プラスチック資源循環促進法」(正式名称:プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律)は、プラスチック製品の設計から廃棄に至るライフサイクル全体を対象に、資源循環を促進する包括的な枠組みです。
3R(Reduce、Reuse、Recycle)に加え、再生可能資源への転換(Renewable)を推進する「3R+Renewable」を基本原則としています。製品ライフサイクルごとの主な施策内容は以下のとおりです。
| ライフサイクル段階 | 対応内容 |
|---|---|
| 設計・製造段階 | ・環境配慮設計指針を策定 (包装の簡素化・分解性の確保・ 代替素材の検討など) ・国の認定制度により支援措置あり |
| 販売・提供段階 | 使い捨てプラスチック(通称ワンウェイ製品)の12品目(例:フォーク、ストロー、歯ブラシ等)について使用の合理化(有料化やリユース促進)を義務化。 違反には勧告・公表・命令などの措置あり。 |
| 排出・回収・再資源化段階 | ・自治体による分別収集・再商品化の仕組みの整備 ・製造・販売側が自主回収・再資源化事業計画を国に申請・認定されれば、 地方ごとの許可なしで広域回収が可能に |
| 排出事業者への対応 | ・施設や工場でのプラスチック産業廃棄物の 排出抑制・再資源化努力を義務化 ・多量排出者には公表や命令など 行政措置も含めた対応が必要 |
サーキュラーエコノミーへの移行による環境保護はもちろん、資源循環を新たな成長分野として投資促進の土壌とし、少子高齢化や消費者の生活変化にも応える社会変革を図るものです。
参考:https://plastic-circulation.env.go.jp/
②食品リサイクル法
「食品リサイクル法」(正式名称:食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律)は、食品関連事業者による食品廃棄物の発生抑制・再生利用・資源循環の促進を目的とする法律です。農林水産省によって、食品業界の振興と生活環境の保全の両立を目指して制定されています。
法律では、食品廃棄物(製造・調理過程のくずや流通・消費段階の売れ残りや食べ残しなど)に対し、段階的な3R的アプローチを設定しています。
| 段階 | 内容 | 具体例 | 効果 |
|---|---|---|---|
| 発生抑制 | そもそもの食品廃棄物を減らす | 在庫管理の最適化、 調理・提供プロセスの見直し | 廃棄量そのものを削減、コスト低減 |
| 再生利用 | 廃棄物を資源として再利用 | 飼料や肥料などの「食品循環資源」への転換 | 資源の循環利用、農業・畜産の持続可能性強化 |
| 熱回収 | 再生利用が困難な廃棄物をエネルギー利用 | 焼却時の熱を回収し発電・温水利用 | 廃棄物の減容化、エネルギー効率の向上 |
食品リサイクル法は、食品ロス削減・資源循環推進・SDGsとの整合性を高める上で重要な役割を果たしています。国全体による数値目標の掲示や報告制度の整備により、食品ロスに対する産業界、行政界、消費者の役割が明確化されています。
参考:https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/161227_6.html
2.世界的な循環型社会への取り組み

(1)アジア太平洋3R推進フォーラム
(2)使い捨てプラスチック製品の流通禁止
- ナイフ・フォーク・スプーン・箸のカトラリー製品
- サラダボックス
- 生鮮食品や加工食品の容器、飲料容器
- プラスチック製の飲料容器のキャップ・フタ食品・飲料容器の包装
参考:日本貿易振興機構(ジェトロ)
(3)EUの循環型経済政策・国連SDGsとの関係
EU(欧州連合)は、早くから「循環型経済(サーキュラーエコノミー)」を成長戦略の柱に位置づけています。以下では、EUの循環型経済政策と国連SDGsとの関係について解説します。
①EUの循環型経済政策
EUは2015年に「循環型経済行動計画(Circular Economy Action Plan)」を発表し、製品設計から廃棄に至るライフサイクル全体を対象に資源効率を高める政策を推進してきました。2020年には「新循環型経済行動計画」が策定され、特に以下の分野が重点化されています。
- 持続可能な製品設計(長寿命化・修理可能性の確保)
- プラスチック対策(使い捨て削減・リサイクル材利用の義務化)
- 電池・電子機器のリユース・リサイクル強化
- 食品廃棄物の削減目標設定
EUはこれらを通じて、2050年カーボンニュートラル達成の基盤を築こうとしています。
②国連SDGsとの関係
国連の持続可能な開発目標(SDGs)でも、循環型社会は次のように直接的・間接的に位置づけられています。
- 目標12「つくる責任・つかう責任」廃棄物削減や持続可能な生産消費の確立
- 目標13「気候変動に具体的な対策を」資源効率向上による温室効果ガス削減
- 目標15「陸の豊かさも守ろう」資源採掘圧力を軽減し、生態系保全に寄与
3.企業における循環型社会の取り組み事例

(1)小林製薬株式会社「水使用量削減」

(2)東急株式会社「節水機器導入」

(3)日本チェーンストア協会「包装容器のリサイクル推進」

4.個人ができる循環型社会の取り組み|具体例も紹介

(1)日常生活での選択|マイボトル・リフィル活用・シェアリング
循環型社会の実現には、企業や政府の施策に加えて、個人の日常的な選択が大きな役割を果たします。ここでは代表的な取り組みを紹介します。
| 取り組み | 内容 | 効果・ポイント |
|---|---|---|
| マイボトルの活用 | ペットボトル飲料の購入を減らし、マイボトルを持ち歩く | 使い捨てプラスチック削減/給水スポット活用でコスト削減にもつながる |
| リフィル商品の利用 | 洗剤・化粧品などで詰め替え用を選択 | 容器廃棄量の大幅削減/市場のリフィル化を後押し |
| シェアリングサービスの利用 | 自動車・自転車のシェア、洋服・家具レンタルなどを利用 | 「所有」から「利用」への転換/資源効率化と循環型社会の基盤形成 |
このように、日常生活での小さな選択を積み重ねることが、企業活動や政府施策と連動し、循環型社会の実現を後押しします。
(2)買い物・消費行動で意識できること
消費者が意識的に循環型社会を意識した商品やサービスを選ぶことで、資源の効率的な利用や廃棄物削減を促進でき、結果として市場全体の変化につながります。代表的な取り組みは以下の通りです。
| 取り組み | 内容 | 効果・ポイント |
|---|---|---|
| 過剰包装を避ける商品選択 | プラスチックや紙を使いすぎた包装を避け、簡易包装やエコパッケージの商品を選ぶ | 廃棄物削減に直結/企業側の環境配慮型パッケージ導入を後押し |
| 中古品やリユース商品の活用 | 家具・衣類・家電を中古市場やリユースショップで購入/サブスクやフリマアプリを活用 | 新規資源採掘・製造に伴う環境負荷を低減/循環型社会を支える仕組み |
| 環境認証商品を選ぶ | エコマーク・FSC認証など環境ラベル付き商品を選択 | 持続可能な生産体制を取る企業を支援/資源循環への貢献 |
このような消費行動の積み重ねは、単に個人の環境意識に留まらず、企業の製品開発や流通戦略にも直接的な影響を与えます。消費者の選択が市場を動かす力になることを意識することが、循環型社会を前進させます。
以下の動画ではエコマークの認定・審査のおおよその流れをご確認いただけます。
(3)地域活動やボランティアを通じた参加
地域活動やボランティアに参加することは、社会全体の循環意識を高めると同時に、企業と市民の協働による新たな価値創出にもつながります。
| 取り組み | 内容 | 効果・ポイント |
|---|---|---|
| ごみ拾いや清掃活動への参加 | 公園・河川敷などで行われる 地域清掃に参加 | 廃棄物の適正処理・美化促進/ 地域住民の意識向上 |
| リサイクルイベントや回収活動 | 衣類・家電・小型家電などの 回収イベントに参加 | 資源の適正循環を実現/ 自治体・企業連携で回収率向上 |
| 地域でのリユース・シェアの推進 | フリーマーケットやリユース拠点の活用 /子ども用品や家具のシェア | モノの寿命延長・廃棄物削減/ 地域コミュニティの活性化 |
このような地域単位での取り組みは、個人の努力を越えて社会全体の仕組みを変える力を持っています。企業にとっても、地域と連携した資源循環活動に参画することは、CSRやESG経営の観点から重要性が高まっています。
5.循環型社会とはどんな社会?環境省の定義、3Rも紹介

(1)環境省が定める循環型社会の定義
循環型社会とは、廃棄物等の発生抑制、循環資源の循環的な利用及び適正な処分が確保されることによって、天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低減される社会。
- プラスチック類特定家庭用機器(エアコン・テレビ・冷蔵庫・冷凍庫・洗濯機・衣類乾燥機)
- 建設廃棄物(コンクリート・アスファルト・鉄・木材)
- 食品廃棄物自動車部品(鉄・電子部品・フロン・エアバッグなど)
- タイヤパソコンおよび周辺機器、小型電子機器、電池
- 下水汚泥
(2)循環型社会が注目される背景|天然資源の枯渇・気候変動・環境破壊

(3)循環型社会とは?個人でできる取り組みも紹介
循環型社会を実現するためには、国や企業の施策だけでなく、一人ひとりの行動が大きな意味を持ちます。たとえば、以下のような取り組みはすぐに実践可能です。
| 取り組み | 内容 | 効果 |
|---|---|---|
| 使い捨てを減らす(Refuse・Reduce) | ・コンビニや飲食店で不要なプラスチック製品を受け取らない ・詰め替え用商品を選ぶ | 廃棄物の削減、資源消費の抑制 |
| 繰り返し使う・修理する(Reuse・Repair) | ・衣類や家具をすぐに捨てない ・修理・リユースを心がける | 製品寿命の延長、資源消費の抑制 |
| 分別・リサイクルに協力する(Recycle) | ・自治体の分別ルールに従う ・リサイクルボックスを活用する | 資源を再び社会に戻し循環を促進 |
| 省エネ行動を心がける | ・節電や節水を日常的に意識する | CO₂排出削減、環境負荷の低減 |
こうした身近な取り組みを積み重ねることで、循環型社会の基盤は大きく強化されます。


