プラスチック削減の企業事例集|日本と海外の先進事例、海洋プラ対策

企業におけるプラスチック削減は、環境配慮の一施策という位置づけを超え、事業継続ブランド評価規制対応を左右する経営課題へと移行しています。本記事では、日本企業および海外企業のプラスチック削減における先進事例を幅広く整理しながら、素材転換、回収、再生、業界連携といった観点から取り組みについても解説します。

五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、現場の廃棄物分析を起点に、物理的・化学的なリサイクル技術の導入や、構造的な企業変革を強固に支援します。プラスチック削減の導入にお悩みの場合には、ぜひご相談ください。

目次

1.日本企業におけるプラスチック削減の先進事例

日本におけるプラスチック対策は、従来のリサイクルを主軸とする廃棄物処理を主眼とした活動から、さらにその根幹的なアプローチであるサーキュラーエコノミーへの移行という大きな転換期を迎えています。以下の記事では、サーキュラーエコノミーについてわかりやすく解説しています。

設計段階から回収・再製品化までを見据えた包括的な循環モデルを構築する企業が増え始めています。

そのような日本企業の先進的な取り組み事例を紹介します。

(1)サントリーグループ|100%サステナブルPET実現に向けた循環戦略

引用:suntory.co.jp/sustainability/env_circular/

サントリーグループは、2030年までに全世界でペットボトルの100%サステナブル化(リサイクル素材・植物由来素材のみの使用)を掲げ、新規化石由来原料ゼロを目指しています。この戦略の核となるのが、独自の「2R+B」戦略です。

Reduce(削減)20年以上にわたる容器の徹底した軽量化・薄肉化
Recycle(再利用)国内初となる「ボトルtoボトル」水平リサイクル技術の確立
Bio(植物由来)植物由来素材の導入を進め、原料の多様化と低炭素化を両立

直接的な削減に留まらず、ロゴ展開を通じた消費者の意識変容も推進し、容器を循環し続ける資源へと再定義する循環型社会への移行を牽引しています。

以下の記事では、課題を含めた循環型社会の実現について解説しており、循環型社会に関する多面的な理解を深められます。

(2)花王|2040「ごみゼロ」実現に向けたプラスチック循環

リデュースイノベーションとリサイクルイノベーションで2030年までにプラスチック使用量の50%以上を再資源化する。それに向け、化石由来プラスチック使用量のピークアウト、再生プラスチックの使用拡大、ポジティブリサイクル材料を使用した製品の発売、花王が社会と共に回収し社会が使用できる製品の発売をする。2040年までに花王のプラスチック包装容器使用量と花王がプラスチック再資源化に関与した量が等しい「ごみゼロ」をめざす。それに向け、化石由来プラスチック使用の削減加速、植物由来プラスチック・再生プラスチック使用加速、ポジティブリサイクル材料を使用した製品の普及、花王が社会とともに回収し、社会が使用できるプラスチックの普及を実現していく。2050年までに花王のプラスチック包装容器使用量より花王がプラスチック再資源化に関与した量が多い「ごみネガティブ」をめざす。それに向け、化石由来プラスチック使用ゼロ、植物由来プラスチック・再生プラスチック使用加速、ポジティブリサイクル材料を使用した製品の浸透を行う。
引用:https://www.kao.com/jp/newsroom/news/release/2023/20230516-003/

花王は、2040年までに使用量と同等の再資源化を行う「ごみゼロ」、2050年には回収量が上回る「ごみネガティブ」という長期的な数値目標を掲げています。この実現に向け、「4R」(リデュース、リユース、リプレイス、リサイクル)を軸に多角的なアプローチを展開しています。

構造的削減(リデュース)・容器の薄肉化や濃縮製品の開発
・スティック型洗剤などの革新的な製品投入によりプラスチック使用量を抑制
素材転換とリサイクル・再生プラスチックや植物由来素材への切り替えを推進
・技術的に困難とされる「つめかえパック」の水平リサイクル(パックからパックへ)の実用化に注力

設計から回収、再資源化までを一貫してデザインすることで、循環設計への転換を加速させています。

(3)イオングループ|2030年目標達成に向けたプラスチック利用方針と資源循環モデルの構築

レジ袋削減の歩み 1991年から2023年10月の取り組みまでの年表
引用:https://www.aeon.info/sustainability/environment/mybag/

イオングループは、2030年までに使い捨てプラスチック使用量を2018年度比で50%削減する目標を掲げ、店舗を起点とする持続可能なプラスチック利用方針を推進しています。戦略の柱は、店舗・製品・消費者行動を連動させた循環モデルにあります。

リデュースと素材転換・レジ袋有料化や包装の軽量化を徹底
・プライベートブランドで2030年までにペットボトルを100%再生
・植物由来素材へ切り替え
・全製品で環境配慮型素材の採用を推進
店舗回収プラットフォーム・全国規模の店舗網に回収ボックスを設置
・2025年からは花王、コーセーなどと連携し、化粧品容器の水平リサイクルにも拡大
参加型モデルポイント付与やリユース型販売の導入など、購買行動と循環を接続する施策を展開

自治体やメーカーと連携し、回収資源を再び製品化するリテール主導の資源循環ループの構築を進めています。

参考:https://www.aeon.info/sustainability/plastic/

(4)コーナン商事|物流資材の循環型リサイクルによる削減

廃プラスチックの循環型リサイクルイメージ
引用:https://www.hc-kohnan.com/corporate/sustainability/case3/

コーナン商事は、店舗・物流センターで発生するプラスチック資材を廃棄せず、独自のネットワークを活用した資源循環型オペレーションの構築を進めています。
通常は焼却・埋立処分される破損パレットや梱包資材を、全国の拠点を活用して効率的に回収・仕分けする独自の回収・集約システムを確立し、さらに回収したプラを、再び自社で使うパレットや保護材として再生しています。

複合材や厚物プラスチックなど、リサイクルが困難な素材も対象に広げ、新規プラスチック使用量を抑制しています。物流プロセス全体で資源を循環させることで、流通セクターにおける実装可能なリサイクルモデルの形成を進めています。

(5)Glicoグループ|環境ビジョン2050に基づく容器包装プラスチック削減と循環戦略

引用:https://www.glico.com/jp/csr/about/environment/vision/

Glicoグループは「環境ビジョン2050」を掲げ、使い捨て前提の設計から脱却し、容器包装のライフサイクル全体を通じた環境負荷低減を推進しています。戦略の核は、以下の三位一体のアプローチにあります。

素材の見直し・再生プラスチックやバイオマス原料を計画的に導入
・化石資源への依存を段階的に引き下げ、原材料段階での低炭素化を図る
設計改善分別しやすさや処理効率を開発プロセスに組み込み、消費後に資源として循環しやすい設計基盤を構築
長期ロードマップ2050年に向けた中長期視点で、容器包装を廃棄物から再利用可能な資源へと再定義

製品設計の初期段階から再資源化を前提とすることで、企業として求められる循環要件に対応し、持続可能な容器包装モデルへの転換を推進しています。

2.海外企業におけるプラスチック削減の先進事例

欧州を中心とした諸外国では、プラスチック削減を市場生き残りのための絶対条件と捉える動きが鮮明になっています。これは、リサイクル不可能な包装の禁止や、再生プラスチックの使用義務化といった厳格な法的拘束力に対して、ビジネスモデルそのものの転換を求められているためです。
ここからは、海外企業の先進的なプラスチック削減モデルを紹介します。

(1)ユニリーバ|Less/Better/No Plasticに基づく循環戦略

引用:https://www.unilever.co.jp/news/2023/r-and-d-5/

ユニリーバは、プラスチックを再利用・再生可能な資源と捉え「Less / Better / No Plastic」という3つの柱で循環型ビジネスモデルを推進しています。

Less Plastic(使用量の削減)・容器のデザイン刷新や軽量化
・不要な包装の撤廃により、製品ライフサイクル全体のプラスチック総量を抑制
Better Plastic(より良い素材)すべての包装を「再利用・リサイクル・堆肥化可能」にする目標を掲げ、再生PETやバイオ由来素材への転換を加速
No Plastic(不使用への挑戦)詰め替えスタンドの導入や代替素材の開発により、プラスチックそのものを使わない販売形態を模索

設計から消費後までを見据えた包括的な循環設計により、プラスチックの負荷低減循環価値の向上を推進しています。

参考:https://www.unilever.co.jp/sustainability/approach-to-plastic/

(2)レゴ|循環素材とリサイクル戦略によるプラスチック削減

リサイクル方法を示すボックスの識別コード
引用:https://www.lego.com/ja-jp/sustainability/recycle?locale=ja-jp

レゴグループは、ブランドの核であるプラスチックを循環可能な資源へと転換するため、素材選定から廃棄後の再資源化までを一貫して設計しています。

持続可能な素材への転換・2032年までに全製品をサステナブル素材へ移行することを目標に、植物由来素材や回収プラスチックの活用を拡大
・化石由来プラスチックへの依存低減を前提とした製品設計を推進
高度なリサイクル技術の開発・使用済みプラスチックを高品質な素材へ戻すアップサイクル技術の導入
・リサイクルを発展させた循環プロセスの実装を推進
サプライチェーン全体の最適化・パッケージの紙製化
・原材料調達から販売、消費後までの環境負荷を可視化し削減する体制を整備

サプライチェーン全体の循環性を高める仕組みを通じて、玩具業界における代表的な循環設計の事例として位置づけられています。

(3)Climate Pledge Friendlyによるサステナブル商品戦略

Sustainability_package
引用:https://www.aboutamazon.jp/news/sustainability/how-we-work-to-find-the-perfect-fit-for-your-products-packaging

Amazonは、2040年までのネットゼロ達成を目指す「The Climate Pledge」の一環として、環境配慮型商品を可視化するClimate Pledge Friendlyプログラムを展開しています。リサイクル素材エネルギー効率など、40以上の厳格な認証基準を満たす商品に葉っぱアイコンを表示し、日本国内でも16万点以上の商品が対象となっています。
これにより、消費者が意識せずともサステナブルな選択ができる導線を設計となっており、企業のマーケティング資産としても機能しています。

出品者に環境配慮型商品の開発インセンティブを与えるプラットフォーム戦略として、市場全体のサステナビリティ向上を促進しています。

参考:https://business.amazon.co.jp/ja/blog/climate-pledge-friendly

以下の記事では環境配慮型商品の事例について、網羅的に解説しています。

(4)Apple|再生素材活用とプラスチック削減

活動中のAppleのリサイクルロボット、Daisy。
引用:https://www.apple.com/jp/newsroom/2022/04/apple-expands-the-use-of-recycled-materials-across-its-products/

Appleは製品設計の中核にサステナビリティを据え、プラスチック撤廃を戦略的に推進しています。
iPhoneやMacの内部部品に再生プラスチックや再生アルミニウムを積極的に採用し、化石由来原料への依存を最小限に抑えています。

あわせてパッケージではプラスチックの段階的な廃止を掲げ、現在は大半をリサイクル繊維(紙・段ボール)へ移行しています。さらに再生素材の使用比率や削減の進捗を年次レポートとして公開し、環境負荷低減の成果を透明性高く示すことで、投資家・取引先・消費者との信頼関係を強化しています。
このように、設計・素材選定・回収後の循環までを製品ポートフォリオ全体で再構築しています。

(5)Google|ハードウェア製品におけるリサイクル素材活用とプラスチック削減

Google Pixel 9a Iris カラーと、その部品やリサイクル素材、梱包材
引用:https://store.google.com/intl/ja/ideas/articles/building-more-sustainable-hardware/

Googleは、ハードウェア製品の設計理念にリサイクル素材の活用製品寿命の延伸を据え、環境負荷の低減と循環性の向上を両立させています。

Pixelシリーズをはじめとする製品の筐体や内部部品に再生アルミニウムや再生プラスチックを導入し、原材料調達時の環境負荷を抑制し、ソフトウェアサポートの長期化や修理用部品の提供により、製品の耐久性を向上させる仕組みにより、廃棄物の発生自体を抑制しています。

素材転換とライフサイクル延伸を同時に進めることで、ハードウェア分野における循環設計の高度化を牽引しています。

3.独自性の高いプラスチック削減モデルを展開する企業事例

ここでは、技術革新やビジネスモデルの再設計によって資源循環を前進させている、独自性の高い企業事例を紹介します。

(1)Notpla|海藻由来素材によるプラスチック代替と包装革新

Ooho in hand
引用:https://www.notpla.com/ooho

英国発のスタートアップNotplaは、包装・容器の素材そのものを転換するアプローチによって、プラスチック依存からの脱却を推進しています。代表的な製品であるOohoの原料は海藻で、栽培に土地や肥料を必要とせず、成長過程でCO₂を吸収する持続可能性の高い素材として注目を集めています。

さらに有機物であるOohoは家庭用コンポストで数週間で分解され、海藻ベースのコーティングを施した食品容器やフィルム、紙素材など、幅広い用途で使い捨てプラスチックを代替できます。
自然へ還す生分解型の循環を前提に、包装のあり方そのものを再構築するモデルとして、次世代の資源循環を象徴する存在となっています。

参考:https://londonresearchinternational.com/wp-content/uploads/2023/04/LRIEC061222.pdf

(2)株式会社UPay|米由来素材ストローによるプラスチック代替

引用:https://www.fukunet.or.jp/wp-content/uploads/2022/10/NEWS202210-cc.pdf

株式会社UPayは、主原料に米粉(コメ由来デンプン)を採用した生分解性ストローを展開し、使い捨てプラスチックの代替を推進しています。これは石油系プラスチックとは異なり、使用後は自然環境下で微生物により分解・消失するため、廃棄時にマイクロプラスチックを残さない特性を備えています。

また、紙ストローで課題となりやすい耐水性や使用感を改善しており、消費者にとって違和感の少ない代替手段を提供しています。農産物を基盤とする素材転換によって、原料調達から廃棄までを含む循環モデルの再設計を進める取り組みとして注目されています。

(3)P&G|「HolyGrail 2.0」によるデジタル分別と高度循環

HolyGrail scanners
引用:https://us.pg.com/blogs/HolyGrail/

P&Gは、業界横断型プロジェクトHolyGrail 2.0を主導し、デジタル技術を活用した高精度なプラスチック分別基盤の構築を推進しています。容器包装に目に見えないデジタル水印を施し、リサイクル施設のセンサーで瞬時に識別することで、従来の機械選別では困難だった素材の細分化や高度な分類を可能にしています。

これにより素材の混在を防ぎ、リサイクル原料の純度を大幅に向上させ、再びパッケージとして利用可能な高品質資源への再生を支えています。社会インフラとしての分別の仕組みそのものを再設計する取り組みとして、プラスチック循環を次の段階へ進められることが期待されています。

(4)川瀬産業|100%マテリアルリサイクル

引用:https://replagi.com/

川瀬産業は、廃プラスチックを100%原料とした再生製品ブランドReplagi®を展開し、産業廃棄物を高付加価値な資材へ転換するマテリアルリサイクルを実装しています。使用済みのポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などを再資源化し、木材代替材や建材、工業用部材として市場へ供給することで、新規の化石資源投入を抑制しています。

回収から再製品化までを自社で一貫して担う体制により、廃棄されていた資源に安定した需要と用途を生み出し、循環の出口を具体化するモデルとして注目されています。

(5)株式会社カヤック|独自性のあるプラスチック削減プロジェクトと社内運用

引用:https://www.kayac.com/company/sdgs

株式会社カヤックは、プラスチック削減を創造性と体験設計によって消費者の行動変容へ結びつけるプロジェクトとして展開しています。参加型コンテンツやキャンペーンを通じてプラスチックの課題をエンターテインメントとして提示し、消費者が自発的に選択を変える導線を構築しています。

また、自社オフィス内でのプラスチック使用状況を可視化し、社員一人ひとりが自分事として取り組む企業文化を形成しています。社内での実践を基盤とすることで、外部への発信や協働に対する信頼性を高めるモデルとして機能しています。

4.海洋プラスチック問題への企業対応

海洋プラスチック問題は、人間の健康や漁業資源、海洋生物多様性にも長期的・重大なリスクをもたらす世界共通課題です。2026年1月に提示された資料※ では、海洋表層の微細プラスチック濃度は世界平均約0.3個/m³である一方、日本周辺海域では約3.7個/m³と、汚染が地域ごとに大きな差異を持つことが示されています。

実測データによれば、水辺で最も多く確認されるのは食品容器包装であり、性質や使用形態から見ても社会生活の至る場面で発生源が分布しています。こうした背景から、陸域からの流出を根本から断つ仕組みの設計と、マイクロプラスチックとして長期に存在する汚染物質を資源として再定義する循環設計が、企業の戦略として不可欠です。

ここでは、海洋プラスチック問題の解決に向けて実装が進む代表的な4つのアプローチを整理します。

出典https://www.spf.org/opri/global-data/opri/nl/601(1-8).pdf

(1)流出を未然に防ぐ製品設計・素材転換

海洋プラスチック問題の根本解決には、陸域からの流出を源流で断つ上流対策が不可欠です。いわゆるデザイン・フォー・サステナビリティの考え方は、理念の段階を越え、企業の実装戦略へと移行しています。現在、設計転換は主に3つの方向で進んでいます。

設計転換の方向取り組み内容
流出しにくい構造への変更・テザードキャップの採用など、使用後に部材が分離・飛散しない形状へ転換
使い捨て製品の提供方法を見直し、廃棄されにくい流通・配布モデルへ変更
マイクロプラスチックの発生抑制・摩耗しにくい素材開発により使用中の粒子発生を抑制
・洗濯機などに捕集フィルターを実装し、排水経路からの流出を防止
環境中での分解機能の導入・流出リスクが避けられない用途において、自然条件下で分解が進む素材へ転換

設計段階での素材選択や形状の判断が、そのまま将来の環境リスクと拡大生産者責任(EPR)の重さを左右する時代に入っています。

【事例】伊藤園:キャップの分離を防ぐ「流出しにくい構造」への設計転換

飲料メーカー大手の伊藤園は、容器の一部がゴミとして散乱し 海洋へ流出することを防ぐため、画期的な製品設計を導入しました。 この取り組みでは、開栓後もキャップが容器本体から離れない 「テザードキャップ(つなぎ止めキャップ)」を、グローバル展開を 見据えた一部の紙容器製品で先行して採用しています。従来、 小型のキャップは屋外での飲用時などに不注意で脱落したり、 ポイ捨てされたりしやすく、回収が困難な海洋汚染源となって いました。しかし、伊藤園が導入したこの「流出しにくい構造」 により、容器とキャップを一体の資源として確実に回収・処理 することが可能となりました。これは陸域からの流出を源流で断つ 具体的な設計転換の好事例であり、欧州の厳しいプラスチック 規制にも対応した、同社の高い環境戦略を象徴する取り組みです。

参考:日欧同時発売「お~いお茶」の新製品にテトラパックのキャップ付き紙容器が採用|伊藤園

【事例】アダストリア:洗濯排水からのマイクロプラスチック発生を抑制

アパレル大手のアダストリアは、衣類の洗濯プロセスに着目し、 目に見えないマイクロプラスチックの発生抑制に挑んでいます。 海洋プラスチックごみの約35%は、洗濯時に衣服から抜け落ちる 合成繊維のクズであると言われています。同社はこの課題に対し、 独自の洗濯ネット「FIBER HOLD BAG」を開発・販売しました。 この製品は、一般的なネットよりも遥かに細かい0.05mmという 高密度なメッシュ生地を採用し、二重構造の設計を施しています。 同社の試験によれば、これを使用することで微細な繊維クズの 海洋流出を平均で約80%も抑制できることが証明されました。 衣服を「作る」段階だけでなく、消費者が「使う」日常の場面に おいて、家庭の排水経路から汚染が広がるのを未然に防ぐという、 ファッション業界における新しい発生源対策の旗振り役です。 アパレル製品のライフサイクル全体を見据えたこの取り組みは、 企業の「使う責任」を具現化した極めて意義深い事例と言えます。

参考:「作る責任、使う責任」海洋汚染を防止する洗濯ネットを開発。|アダストリア
参考:マイクロプラスチックによる海洋汚染を防ぐ!アダストリアが洗濯時に繊維くずの流出を抑制し、海洋汚染を防ぐ洗濯ネットを開発、発売|エスアンドティ

【事例】ミズノとカネカ:人工芝の海洋流出を防ぐ革新的連携

ポーツメーカーのミズノと化学メーカーのカネカは、人工芝から 発生するマイクロプラスチック問題の解決に向けた共同開発を実現 しました。この取り組みでは、カネカが開発した100%植物由来の 海洋生分解性バイオポリマー「Green Planet®」を、ミズノが 人工芝の葉材や充填材として採用しています。スポーツ施設から 雨水と共に流出する微細なプラスチック片は、従来、分解されずに 海へ蓄積されることが大きな課題でした。しかし両社の連携により、 もし環境中へ流出したとしても、海水中で水と二酸化炭素に分解 されるという画期的な「素材の自己消滅機能」の実装に成功した のです。このミズノカネカによる先進的な試みは、バンテリン ドーム ナゴヤ等での導入を通じて、陸域からの汚染を源流で断つ 具体的な解決策として、世界中から高い注目を集めています。

参考:カネカ生分解性バイオポリマー Green Planet®を使用したミズノの人工芝がバンテリンドーム ナゴヤに初採用

(2)河川・沿岸域での回収と流出防止インフラ

海に到達する前の段階で回収を行う中流対策は、被害拡大を食い止める現実的な手段として各国で整備が進んでおり、特に河川は陸域から海洋へごみが移動する主要経路として、都市部・港湾・排水網を含めたインフラとしての管理が重要視されています。主な対策として、流出ポイントの特定物理的に捕捉する仕組みづくりが挙げられます。

対策領域取り組み内容
河川での流出抑止・河口や橋脚付近にフェンスやバリアを設置し、海へ出る前に回収
・水量や天候に応じて効率的に捕捉できる自動回収装置を導入
都市排水からの流出防止・雨水吐き口や下水施設にスクリーンを設置
・洪水時の流出量増大に備えた捕集能力の強化
港湾・沿岸域の回収漂流ごみの定期回収
・漁業者や自治体と連携した回収ネットワークの構築

実際の現場では、漁業関係者や地域主体が回収活動を担うケースも多く、以下の報道ではその様子が確認できます。

ただし、これらの取り組みが目的化させないことが重要です。
どこから・どの程度・どの種類のプラスチックが流出しているのかというデータを蓄積し、製品設計や使用方法の見直しといった上流の改善へ接続する基盤として機能しています。

参考:漁業者と自治体の協力による海洋ごみ回収マニュアル|環境省

【事例】コカ・コーラ:河川での自動回収による海洋流出の徹底阻止

飲料大手のコカ・コーラは、海洋プラスチックごみの 主要な流入経路である「河川」に着目し、野心的な回収事業を 展開しています。同社は、環境NPO「The Ocean Cleanup」と 戦略的パートナーシップを結び、太陽光発電で稼働する 自動ごみ回収船「インターセプター」を世界各地の河川へ 導入しました。この装置は、川の流れを利用して漂流する プラスチックを自動的にコンベアで吸い上げ、海に到達する 前に遮断する画期的なインフラです。ベトナムのメコン川や タイのチャオプラヤ川など、汚染が深刻な河川を対象に 実装を進め、回収した資源を再び飲料ボトルへリサイクルする 循環モデルの構築も目指しています。自社製品を含む容器が 環境負荷となる現実を直視し、インフラ投資を通じて 「中流」での流出を食い止める、同社のグローバルな 実装力が際立つ重要事例です。

参考:日本財団と日本コカ・コーラ、プラスチック資源の循環利用促進に向けた国内初の大規模調査「陸域から河川への廃棄物流出メカニズムの共同調査」を開始

【事例】多摩市:都市排水へのフィルター設置でマイクロプラスチックを遮断

東京都多摩市は、都市部の盲点となっている「人工芝」からの マイクロプラスチック流出を防ぐ、先進的な自治体モデルを 提示しています。スポーツ施設等の人工芝は、経年劣化や摩擦で 微細なプラスチック片(マイクロプラスチック)へと変化し、 雨水と共に排水溝を通じて河川へ流れ出る大きな要因となります。 多摩市はこの課題に対し、市内のテニスコート等の排水桝に 特殊なスクリーンフィルターを設置する実証実験を開始しました。 これにより、都市インフラの排水経路そのものを、流出を食い止める 最後の防波堤として機能させています。回収されたプラスチックの 量や性質をデータ化し、流出の実態を可視化することで、 効果的な対策を導き出す「科学的根拠に基づいた行政対応」が 特徴です。市民が利用する身近な施設を起点に、都市排水から 海への汚染を物理的に遮断するこの試みは、多くの自治体が 参照すべき地域インフラ管理の好事例と言えるでしょう。

参考:テニスコート人工芝におけるマイクロプラスチック流出抑制対策について

【事例】スズキ:船外機による「航行しながらの海洋クリーンアップ」

大手輸送機器メーカーのスズキは、船のエンジンである船外機を 「回収装置」へと変える独創的なインフラ技術を開発しました。 この「マイクロプラスチック回収装置」は、エンジンが冷却のために 汲み上げる膨大な海水に着目し、その排水経路にフィルターを 設置することで、航行するだけで海中のプラスチックごみを 回収できる仕組みです。港湾や沿岸域を日常的に走行する船舶が 清掃の主体となるため、特別な回収専用船を出す必要がなく、 環境負荷を抑えながら広範囲の汚染物質を取り除くことが可能です。 フィルターの清掃もメンテナンス時に容易に行えるよう設計されており、 漁業者やレジャーボート利用者が普段通り海を利用するだけで 「海の再生」に貢献できるという、インフラ一体型の革新的な アプローチです。既存の製品に環境保護という付加価値を統合し、 沿岸域の生態系を守る同社の姿勢は、製造業による新しい 海洋保全の形として国内外で高く評価されています。

参考:スズキ、世界初の船外機用マイクロプラスチック回収装置を開発

(3)回収資源を再投入する循環利用モデル

回収されたプラスチックが真に循環するかどうかは、その後に再び製品や原材料として市場へ戻せる仕組みが構築されているかにかかっているため、品質確保・用途開発・需要側との接続までを含めた統合設計が不可欠です。
現在、企業や自治体、リサイクラーが連携しながら、次のような流れで循環モデルの高度化が進んでいます。

フェーズ実装されている取り組み
回収河川・港湾・店舗などで使用済みプラスチックを分別回収し、素材単位で集約
高度選別デジタル識別や光学選別により、再利用可能な品質へ分類
再資源化マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルにより、原料レベルへ再生
再投入新たな容器包装、建材、工業部材などへ利用し、市場へ供給
需要創出再生材の採用基準を明確化し、企業の調達方針や認証制度と連動

企業に求められているのは、回収後の出口を設計する視点であり、どの品質で、どの用途へ、どの価格帯で戻すのかまでを描けて初めて、循環モデルは実装段階に入ります。

【事例】出光興産と宗像市:海洋プラを「油」に変えて地域へ還元する循環モデル

エネルギー大手の出光興産と福岡県宗像市は、海岸で回収 した海洋プラスチックを、再びエネルギー資源へと変える画期的な 地域共創モデルを確立しました。この取り組みでは、市内の離島・ 大島などで市民や社員が参加するビーチクリーン活動を通じて 海洋ごみを回収し、その中からプラスチックを精度高く分別します。 集められたプラスチックは、出光興産の高度な「油化ケミカル リサイクル」技術によって、燃料やプラスチック原料として利用 可能な再生油へと再生されます。特筆すべきは、単なる処分に 留まらず、生成された油を再び宗像市へ寄贈し、地元の観光船や 施設での活用を模索するなど、地域内でのエネルギー循環を 実現している点です。2026年2月には、環境省主催の「プラスマ・ アワード2026」にて、回収から資源化、地域還元までを一貫して 行う実装力が評価され、最高賞の金賞を受賞しました。企業と 自治体が手を取り、汚染物質を価値ある資源へと書き換える このモデルは、分散型資源循環の理想的な形を示しています。

参考:環境省「プラスマ・アワード 2026」の「拾う」部門において金賞を受賞 福岡県宗像市と連携した海洋プラスチックの回収と資源化・再生利用が評価

【事例】三菱ケミカルとキユーピー:食品容器を繋ぐ「プラリレープロジェクト」

化学メーカーの三菱ケミカルと食品大手のキユーピーは、 茨城県鹿嶋市等と連携し、プラスチック容器の完全循環を目指す 「プラリレープロジェクト」を推進しています。マヨネーズ等の 食品容器は、汚れの付着や多層構造の複雑さから、従来は高度な リサイクルが困難でした。この取り組みでは、キユーピーが 製造・販売したドレッシング等の容器キャップを地域で回収し、 三菱ケミカルが国内最大級のケミカルリサイクルプラントで 原料へと再生します。さらに、その再生原料を用いて再び 容器を製造し、キユーピーの製品として市場へ戻すという、 まさに「リレー」のような循環モデルを構築しました。 消費者の手元から回収し、最新の化学技術で再び製品へと 生まれ変わらせるこの挑戦は、食品業界における資源循環の 実効性を証明する、極めて先進的なパートナーシップです。

参考:三菱ケミカル:ケミカルリサイクルで挑む食品容器の新たなリサイクル(プラリレープロジェクト)

5.企業事例からみたプラスチック削減の成功要因とは

やはり成果を上げている企業の多くは、設計・調達・回収・再生利用までを含めた一連の仕組みとして実装しています。
ここでは、これまで紹介した先進企業の取り組みを横断的に整理し、プラスチック削減を事業成長へ結びつけている共通パターンを抽出します。

(1)長期目標と数値コミットメントの明確化

グローバルな潮流を先導する企業に共通する最大の特徴は、プラスチック資源循環を中長期的な経営リスクと成長機会の双方として捉え、測定可能な数値目標(KPI)を経営戦略の中核に据えている点にあります。
確固たる数値的裏付けを持つコミットメントには、経営上以下の3つの戦略的意義があります。

  • 意思決定の指針
  • 非財務情報の価値化
  • 市場優位性の構築

先進企業は、ゴールを具体的な数値で描くことにより、持続可能な競争優位を確立するためのコア戦略へと昇華させています。

【事例】積水化学:ゴミを資源に変える「都市油田」構想と技術実装
積水化学工業は、プラスチック廃棄物を単なる汚染物質ではなく 「都市に眠る資源(都市油田)」と再定義し、革新的な長期目標を 掲げています。同社は、可燃ゴミとして処理されるプラスチックを 分別せずに丸ごとガス化し、微生物の力を借りてエタノールへと 変換する「BR(バイオリファイナリー)法」を開発しました。 この技術により、ゴミから生成されたエタノールを再び新たな プラスチックの原料として利用する、完全な資源循環モデルの 社会実装を2030年度までに完了させることをコミットしています。 数値目標を経営戦略の柱に据えることで、自治体や他メーカーとの 広範なパートナーシップを加速させ、従来の焼却処理に頼らない 持続可能な循環型社会のインフラ構築をリードしています。 高度な技術目標が企業の市場優位性を生み出し、環境貢献を 直接的な成長機会へと昇華させた、日本を代表する好事例です。
参考:“ごみ”を“エタノール”に変換する技術の事業化を目的に合弁会社を設立|積水化学工業

(2)製品設計段階からの削減・代替素材への転換

先進企業に見られる第二の特徴は、プラスチック資源循環の責任を製品設計(最上流)の時点で環境負荷をビルトイン(組み込み)する発想への転換です。これは製品アーキテクチャそのものを再定義する経営判断であり、戦略的価値を創出します。

例えば、素材の単一化(モノマテリアル化)部品のモジュール化により、廃棄物処理コストの低減のみならず、製造・物流工程のエネルギー効率向上を連鎖的に引き起こします。
その他にも、再生材や代替素材を前提とした設計への刷新により、化石由来原料への依存を脱却し、地政学リスクや供給不安定に伴う調達リスクを低減させます。

設計という最もレバレッジの効く経営資源を通じてコントロールする体制へと移行しています。

【事例】TOPPANとエスビー食品:レトルトの常識を覆すモノマテリアル設計

包装大手のTOPPANと食品大手のエスビー食品は、リサイクルが 極めて困難だったレトルトパウチの設計を根底から刷新しました。 従来のパウチは、保存性を高めるためにプラスチックとアルミ箔を 重ねた多層構造でしたが、両社はポリプロピレンのみで構成される 「モノマテリアル設計」の実装に成功しました。TOPPAN独自の 透明バリアフィルム技術を駆使することで、アルミなしでも高い 長期保存性能を維持しつつ、素材の単一化を実現しています。 この新設計のパウチは、エスビー食品のカレー製品等に国内で 初めて採用され、使用後は高品質な再生プラスチック資源として 回収・再利用することが可能になりました。設計段階でリサイクルの 「壁」を取り除いたこの取り組みは、食品容器の資源循環を加速 させる、バリューチェーン連携による極めて高度な解決策です。

参考:TOPPAN、レトルト食品向けでALL-PPモノマテリアルパウチが国内初採用

(3)サプライチェーン・業界横断での連携体制構築

第三の共通点は、単一企業の自助努力のみの資源循環の完結は不可能であるという前提に立ち、川上から川下までの全プレイヤーを巻き込む協働プラットフォームを構築している点にあります。
先進企業は、この分断を解消するために、自治体、リサイクラー、さらには競合他社とも手を組み、以下の3つの戦略的意義を追求しています。

規模の経済によるコスト最適化単独では高コストになりがちな資源循環プロセスの投資効率を最大化
業界標準の主導市場のルール形成に関与し、自社の先行優位性を維持できる構造を創出
資源の安定確保将来的な原料価格の高騰や供給不安に対するレジリエンス(回復力)を高める

このように、競争領域と協調領域を戦略的に使い分けることで、持続可能な循環型市場そのものを自ら形成する立場へと移行しています。

【事例】アールプラスジャパン:業界の垣根を越えた廃プラ再資源化の連合体

アールプラスジャパンは、サントリーやセブン&アイなど、 プラスチックを多用する多業種の企業が共同出資して設立した 革新的な事業体です。この組織の最大の強みは、競合関係にある 企業も含めた30社以上のプレイヤーが「資源の安定確保」という 共通目標のもとに結集している点にあります。彼らは、従来の リサイクルでは困難だった多様な廃プラスチックを、直接的に エチレンなどの化学原料へ戻す「ケミカルリサイクル」技術の 商用化を推進しています。単一企業の枠を超えて投資を行うことで、 巨額な研究開発コストを最適化しつつ、将来的な化石原料の 高騰や調達リスクに対するレジリエンスを強化しています。 バリューチェーンの川上から川下までが一体となり、持続可能な 循環型市場を自ら形成しようとする、世界でも稀な規模を誇る 業界横断プラットフォームの好事例と言えるでしょう。

参考:事業内容と参画企業|株式会社アールプラスジャパン

6.まとめ

日本と海外の先進企業におけるプラスチック削減の取り組み事例は、経営戦略の中核としてプラスチック資源循環を位置づけることで、新たな成長機会を創出する可能性を示唆しています。
企業は、明確な数値目標の設定、製品設計段階からの革新、そしてサプライチェーン全体での連携を通じて、持続可能な循環型経済の実現に貢献していくことが求められます。

五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、プラスチック削減に関わる現場の廃棄物分析から、代替素材の選定、実効性のある回収ルートの確保まで、構造的な企業変革を強固に支援します。
次世代の循環型経営を実現したい場合には、ぜひご相談ください。

監修

早稲田大学法学部卒業後、金融機関での法人営業を経て、中小企業向け専門紙の編集記者として神奈川県内の企業・大学・研究機関を取材。
2013年から2020年にかけては、企業のサステナビリティレポートの企画・編集・ライティングを担当。2025年4月よりフリーランスとして独立。
企業活動と社会課題の接点に関する実務経験が豊富で、サステナビリティ分野での実践的な視点に基づく発信を強みとしている。