介護施設や病院で使用した介護ベッドは、事業活動に伴って排出される設備として産業廃棄物の扱いを受けるため、リサイクルにあたっては所有者を確認し、衛生面と安全面の準備を済ませたうえで、本体を売却・資源循環・廃棄のいずれかのルートへ引き渡す必要があります。介護ベッドは利用者の身体を支える福祉用具であり、安全基準を満たさない製品を再使用に回すと、次の利用者の事故につながるおそれがあります。所有区分と製品の安全性を確認したうえで、処理方法ごとの費用と経営上の効果を同じ前提で比較することが、適切な判断につながります。
五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、鉄を主原料とする製品・設備の廃棄や資源循環を起点に、サーキュラーエコノミーへの移行を支援するサービスです。廃棄物を国内製鉄所等へ還流させるクローズドループの構築など、カーボンニュートラルや循環型社会の実現に向けた取り組みを、コスト削減と両立する形で支援します。施設の改修や介護ベッドの一斉入れ替えに伴う資源循環を検討する場合にはぜひご相談ください。
1.介護ベッドのリサイクル前に確認する所有区分と法的区分

介護ベッドのリサイクルでは、ベッドの所有者が誰か、排出する物が法令上どう扱われるかによって、処理を決められる主体と依頼先が変わります。介護の現場ではレンタル品と施設の所有品が混在しており、病院では医療機器として製造販売されたベッドを使用している場合もあります。処理方法を検討する前に、ベッド単位で所有区分と法的区分を確定させることが実務の起点です。
(1)レンタル品と施設所有品の区分
介護保険の福祉用具貸与では、特殊寝台と特殊寝台付属品が貸与の対象種目に含まれており、在宅の利用者だけでなく、施設でもリース契約やレンタル契約で介護ベッドを導入している場合があります。レンタル品やリース品は所有権が福祉用具貸与事業者やリース会社にあるため、施設が売却やリサイクルを判断することはできず、契約の定めに従って返却します。
福祉用具貸与事業者は、指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準に基づき、回収した福祉用具を種類や材質に応じた適切な方法で速やかに消毒し、消毒済みの福祉用具と未消毒の福祉用具を区分して保管することが求められています。返却された介護ベッドは、この基準に沿って消毒・点検されたうえで、次の利用者への貸与や事業者側での処分に回されます。
実務では、固定資産台帳、レンタル契約書、リース契約書、ベッド本体に貼付された事業者の表示をもとに、ベッドごとの所有区分を確認します。レンタル品は返却の手続きと引取日を、施設所有品は取得時期と処理方法の候補を一覧に記載し、以降の手続きを分けて進めます。
参考:https://www.pref.kyoto.jp/reiki/reiki_honbun/a300RG00002062.html
介護保険における介護ベッド貸与の給付件数は、平成19年の612万7千件から平成30年の1,111万1千件へ増加しており、約1.8倍になっています。貸与品が広く利用されていることから、入れ替え時には施設所有品と同じ扱いで処分せず、契約書や本体表示から所有者を確認する必要があります。なお、数値は各年5月から翌年4月までの審査分を集計した給付件数であり、実利用者数や施設内の保有台数とは一致せず、制度利用の増減にも左右されます。
(2)産業廃棄物としての扱いと有価物の区分
施設で使用した介護ベッドを廃棄する場合、本体は廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)上の産業廃棄物として扱われます。介護ベッドは鋼材のフレーム、電動部品、樹脂製のボードやサイドレール、ウレタンなどのマットレスで構成され、金属くずや廃プラスチック類など複数の品目にまたがります。自治体の粗大ごみとして排出できるのは家庭から出るものに限られ、施設から出るベッドは許可業者に処理を委託します。
自治体は、無許可の回収業者による不適正な事案が発生した場合に、排出者が罪に問われたり、廃棄物の撤去費用を請求されたりする場合があると注意を呼びかけています。中古品や金属資源として有償で取引されるベッドは有価物として扱われますが、廃棄物か有価物かは物の性状や取引価値の有無などを総合的に勘案して判断され、排出事業者が負担する運搬費が売却代金を上回る場合は、収集運搬の段階で廃棄物処理法が適用されます。
見積もりの段階で、ベッドごとの買取額と撤去費・運搬費を分けて提示を受け、差引後の収支を確認します。損失が生じる場合は、許可を持つ収集運搬業者への委託と委託契約書の締結、マニフェストの交付を前提に手配を進めます。
参考:https://www.city.toyota.aichi.jp/kurashi/gomi/gomi/1059300.html
参考:https://www.pref.osaka.lg.jp/o120060/jigyoshoshido/report/faq_2.html
(3)医療機器として製造販売されたベッドの中古売却
病院で使用するベッドの中には、医療機器として製造販売されている製品があります。医療機器に該当するベッドを中古品として販売、授与、貸与する場合は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法)の施行規則第170条に基づき、医療機器の販売業者等があらかじめ当該医療機器の製造販売業者に通知する必要があります。
通知を受けた製造販売業者は、使用状況や修理履歴などをもとに、品質の確保その他販売に係る注意事項を販売業者に指示し、販売業者はその指示を遵守しなければなりません。メーカーの案内では、事前通知の項目として、一般的名称と販売名、型式と製造番号、使用者の名称、納入年月日、使用状況、過去の修理履歴などが挙げられています。
施設側の担当者は、ベッドの添付文書や銘板の表示で医療機器に該当するかを確認し、該当する場合は、医療機器の販売業の手続きを行っている事業者に売却を依頼します。事前通知に必要な情報を提供できるよう、納入時期や保守点検、修理の記録を整理しておくと、売却の手続きが円滑に進みます。
参考:https://www.hapi.or.jp/documentation/books/cyukokiki_hanbai_guidance.pdf
参考:https://www.forest-one.co.jp/used/
2.介護ベッドの撤去前に行う安全性と衛生面の確認

介護ベッドは、使用中の事故を防ぐための安全基準が改正されてきた製品であり、利用者の身体に直接触れる設備でもあります。再使用に回すか資源化に回すかの判断は、製品が現行の安全基準に適合しているかと、衛生面の状態によって大きく左右されます。安全性と衛生面の確認は、処理方法の選択より前に行う工程として位置付けます。
(1)JIS改正前の製品と挟み込み事故のリスク
在宅用電動介護用ベッドの日本産業規格であるJIS T 9254は2005年に制定されましたが、サイドレールやベッド用グリップの隙間に頭や首を挟み込んで死傷する重大製品事故が発生したことを受け、2009年に改正されました。経済産業省の介護ベッドの事故防止対策報告書によると、2009年の改正ではサイドレールの隙間やサイドレールとヘッドボード・フットボードの間の隙間などが以前より詳細に規定され、その後2015年にも改正が行われています。
消費者庁は、介護ベッドと柵や手すりとの間に首などを挟む死亡事故が毎年発生しているとして注意を呼びかけ、古いベッドを使用している場合は特に注意するよう求めています。2009年の改正で手すりどうしの隙間や手すりとヘッドボードとの隙間の基準が強化されたことから、消費者庁は、新しいJIS規格に適合しない手すりを使用する場合は、新しいJIS規格の製品に取り換えるなどの安全対策を講じるよう呼びかけています。
施設側の担当者は、撤去予定のベッドとサイドレール、ベッド用グリップについて、製造年とJIS規格への適合状況を銘板や取扱説明書、メーカーへの照会で確認します。2009年の改正前の規格で製造された製品は、中古品として再使用に回すと次の利用者に同じリスクが生じるため、資源化や廃棄のルートを基本とする判断基準を社内で定めておきます。
参考:https://www.meti.go.jp/product_safety/koureisya/kaigobed_houkokusyo.pdf
参考:https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_038/
参考:https://www.care-news.jp/news/38
消費者庁の事故情報データバンクには、平成27年1月から令和2年7月末までに、介護ベッドの手すり等に関する事故が36件寄せられました。このうち死亡事故は21件、治療期間1か月以上の事故は11件で、各年おおむね5件の死亡・重傷事故が確認されています。重大事故が継続しているため、撤去前の製造年とJIS適合状況の確認は、再使用か資源化かを分ける重要な判断材料です。令和2年は7月末までの途中集計で、事実関係等が未確認の事例も含まれます。
(2)清拭・消毒と付属品の区分
介護ベッドは利用者の身体に直接触れる設備であるため、どの処理ルートを選ぶ場合でも、引渡しの前に清拭と消毒を行い、衛生面の状態を整えておく必要があります。福祉用具貸与事業者に求められている、回収した福祉用具を種類や材質に応じた方法で速やかに消毒し、未消毒のものと区分して保管するという基準は、施設が自らベッドを排出する場合の衛生管理の目安としても参考になります。
マットレスは身体に接する面積が大きく、汚れや臭いが残りやすい付属品です。中古品として売却する場合でも、マットレスは衛生面の理由から買取の対象外となる場合があるため、本体とは別に処理ルートを確認します。資源化や廃棄に回す場合も、ウレタンなどのマットレスは金属のフレームと処理工程が異なるため、本体と分けて引き渡します。
実務では、ベッド本体、サイドレール、ベッド用グリップ、マットレス、手元スイッチなどの付属品をベッド単位で一覧化し、清拭・消毒の実施日と方法を記録します。付属品が複数のメーカーの製品で組み合わされている場合は、その組合せも記録しておくと売却時の査定や安全性の確認に活用できます。
参考:https://www.pref.kyoto.jp/reiki/reiki_honbun/a300RG00002062.html
(3)電動部品と搬出時の安全確認
電動の介護ベッドは、背上げや膝上げ、高さ調節のためのモーター、制御ボックス、手元スイッチ、電源コードなどの電動部品を備えています。機種によっては、停電時に操作するための電池を内蔵している場合があるため、取扱説明書で電池の有無を確認し、内蔵している場合は取り外しの方法と引渡し先への伝達を事前に決めておきます。
撤去の際は、ベッドを最も低い位置で平らな状態にしてから電源プラグを抜き、手元スイッチの誤操作によって可動部が動かないようにします。電源を入れた状態で搬出の準備を進めると、ボードやフレームの間に手や指を挟むおそれがあるため、作業手順として電源の切断を最初に行うことを定めておきます。
見積もりの段階では、電動部品の取り外しを誰が行うか、分解して搬出するか、組み立てた状態で搬出するかを明記します。居室の扉や廊下の幅、エレベーターの寸法によっては分解が必要になるため、搬出経路の条件もあわせて伝えておくと、撤去当日の作業が滞りません。
3.介護ベッドのリサイクル方法の比較|売却・資源循環・廃棄

介護ベッドの処理方法は、製造年や動作状態だけでなく、現行のJIS規格への適合状況、医療機器に該当するかどうか、衛生面の状態、入れ替えの台数によって適否が変わります。費用は清拭や分解、搬出を含めた総額で評価する必要があり、買取額や処分費だけを比べても判断はできません。利用者の安全と経営上の効果もあわせて比較することで、自社に合った処理方法を判断できます。
| 比較項目 | 売却(中古品) | 資源循環(金属資源) | 廃棄(産業廃棄物) |
|---|---|---|---|
| 対象となるベッド | 現行のJIS規格に適合し動作に問題のない施設所有品 | 再使用に適さないが金属の回収が見込める施設所有品 | 再使用・資源化が難しいベッドや付属品 |
| 撤去前の準備 | 清拭・消毒、付属品の組合せ確認、医療機器該当性の確認 | 清拭・消毒、マットレスの分別、電池の確認 | 清拭・消毒、マットレスの分別、電池の確認 |
| 主な書類 | 売買契約書、取引記録(医療機器は製造販売業者への事前通知) | 売買記録(逆有償時は委託契約書・マニフェスト) | 委託契約書、マニフェスト |
| 費用構造 | 買取額から分解費・撤去費・運搬費を差し引いた収支 | 資源価値と分解費・撤去費・運搬費・付属品の処理費の相殺 | 分解費・撤去費・運搬費・処分費の合計 |
| 経営上の効果 | 処理費の抑制、ベッドの再使用 | 処理費の抑制、国内資源循環・CO2削減の説明材料 | 許可業者による適正処理の記録 |
(1)中古介護ベッドとして売却する
現行のJIS規格に適合し、動作に問題のない施設所有の介護ベッドは、中古の介護用品や医療機器を扱う買取業者に売却する選択肢があります。中古品として有償で取引され、取引に経済的合理性がある場合は有価物として扱われ、産業廃棄物の委託契約やマニフェストの手続きは発生しません。
買取の可否と金額は、メーカー、機種、製造年、JIS規格への適合状況、電動機能の動作状態、フレームやボードの傷み、付属品の有無、台数、搬出条件によって変動します。買取額が付く場合でも、分解や搬出の費用が別途計上されると収支がマイナスになる場合があるため、各費用を分けて提示を受け、差引後の金額で比較します。
売却先の選定では、中古品の買取を業として行う事業者が古物営業法に基づく古物商の許可を受けているかを確認します。医療機器に該当するベッドは、医療機器の販売業の手続きを行い、製造販売業者への事前通知に対応できる事業者を選びます。あわせて、売却後の点検整備の方法と、次の利用者に提供する際の安全確認の体制を確認しておきます。
(2)金属資源として資源循環ルートに回す
JIS改正前の製品や動作に不具合がある介護ベッドでも、フレームや昇降機構に使われる鋼材、モーターや配線に使われる銅などは、金属資源として再資源化できる可能性があります。介護ベッドは利用者の体重を支え、背上げや昇降の動作に耐えるため、フレームに鋼材が使われており、解体・選別によって鉄スクラップとして回収できます。
費用面では、金属の資源価値が分解費や撤去費、運搬費と相殺される構造になります。資源価値は金属の種類と重量、市況によって変わり、マットレスや樹脂製のボードなど資源化の工程が異なる付属品の処理費も発生するため、処分費の単価だけでは比較できません。見積もり依頼時は、台数、機種、概算重量、付属品の範囲をそろえて提示し、資源化分と処理分の内訳を確認します。
運搬費が売却代金を上回る場合は、収集運搬の段階で廃棄物処理法が適用されるため、許可を持つ収集運搬業者への委託とマニフェストの交付が必要です。資源化の引渡し先を選ぶ際は、回収した金属がどの工程を経て再利用されるかを確認しておくと、後述する環境報告や取引先への説明に活用できます。
(3)産業廃棄物として処理を委託する
損傷が大きいベッドや、資源化ルートで受け入れられないマットレスなどの付属品は、産業廃棄物として許可業者に処理を委託します。排出事業者は収集運搬業者・処分業者とそれぞれ書面で委託契約を締結し、産業廃棄物管理票(マニフェスト)を交付します。委託契約書は契約終了日から5年間、処分業者から返送されたマニフェストの写しは5年間保存します。
費用は、分解費、撤去費、収集運搬費、処分費で構成され、台数、ベッドの大きさと重量、設置階、エレベーターの有無、搬出経路、作業時間帯、地域によって変動するため、一律の相場で判断することはできません。見積もりを比較する際は、各費目の含有範囲と、マットレスや付属品を回収対象に含むかをそろえて確認します。
廃棄を選ぶ場合でも、ベッド全体を一括で処分するのではなく、金属のフレームを資源化ルートへ分けることで処分量と費用を抑えられる場合があります。施設の改修で全居室のベッドを一斉に入れ替える案件では、廃棄一括の見積もりと、売却や資源化を組み合わせた見積もりを並行して取得し、総額で比較することで判断の精度が高まります。
参考:https://www.env.go.jp/content/900479496.pdf
令和5年度の産業廃棄物総排出量3億6,725万トンのうち、再生利用量は2億78万8千トンで54.7%、減量化量は1億5,771万5千トンで42.9%、最終処分量は874万6千トンで2.4%でした。産業廃棄物の処理では再生利用が大きな割合を占めるため、介護ベッドも金属フレームとマットレス等を分け、資源化可能部分を見積もる意義があります。ただし、これは全産業・全品目の集計であり、介護ベッド単独の再生利用率や費用を示すものではありません。
参考:https://www.env.go.jp/content/000301060.pdf#page=7
4.介護ベッドのリサイクルを進める実務手順

介護ベッドの入れ替えは、入居者や入院患者が生活している環境の中で行われるため、撤去と新しいベッドの設置を利用者の生活に支障のない順序で進める必要があります。レンタル品の返却、施設所有品の処理、新しいベッドの納品が同時に動くため、撤去日から逆算した段取りを施設内と各事業者で共有しておくことが重要です。
(1)対象ベッドと付属品の一覧化
最初に行うのは、処理対象となる介護ベッドと付属品をベッド単位で一覧化する作業です。一覧には、設置場所、メーカー、機種、製造番号、製造年、所有区分、レンタル事業者やリース会社、JIS規格への適合状況、医療機器への該当性、電動機能の動作状態、付属品の構成、電池の有無を記載します。
一覧をもとに、ベッドごとに売却・資源循環・廃棄のいずれを第一候補とするかを仮決定します。現行のJIS規格に適合し動作に問題のないベッドは売却、2009年の改正前の規格で製造されたベッドや不具合のあるベッドは資源循環、損傷が大きいベッドは廃棄というように判断基準を社内で定めておくと、フロアや拠点ごとの判断のばらつきを防げます。
レンタル品は、返却の申出期限と引取りの方法を事業者に確認し、新しいベッドの納品日と調整します。施設所有品は、清拭・消毒の実施計画と、処理ルートごとの引取日を一覧に記載し、関係する部署と共有します。
(2)利用者の生活に配慮した入れ替えの段取り
入れ替えの段取りは、利用者がベッドを使用できない時間を最小限にすることを前提に組み立てます。居室ごとに、既存のベッドの撤去、清掃、新しいベッドの設置を一連の作業として行い、作業の時間帯は入浴や食事、リハビリの予定と重ならないように調整します。
撤去したベッドは、居室から直接搬出するのではなく、施設内の一時保管場所に集めてから処理ルートごとに引き渡すと居室での作業時間を短縮できます。一時保管場所では、清拭・消毒前のベッドと消毒済みのベッドを区分して置き、処理ルートごとの表示をつけて取り違えを防ぎます。
見積もりの前に、設置階、エレベーターの有無と寸法、廊下や居室の扉の幅、車両の駐車位置、作業可能な時間帯を整理し、分解の要否とあわせて見積もり依頼書に記載します。複数の事業者が同じ日に作業する場合は、搬出と搬入の動線が交差しないよう作業の順序を決めておきます。
(3)区分引渡しと記録の保存
引渡し当日は、一覧の製造番号と実際に搬出するベッドを照合し、清拭・消毒の完了と電源の切断を確認したうえで、レンタル返却分、売却分、資源循環分、廃棄分に区分して引き渡します。マットレスなどの付属品は、本体と処理ルートが異なる場合があるため、ルートごとに分けて引き渡します。
書類は、レンタル事業者への返却記録、売買契約書と取引記録、医療機器の場合の事前通知に関する記録、委託契約書、マニフェストの写しなど、ルートごとに種類が異なります。これらをベッド単位で一覧と紐づけて保管しておくと、監査や問い合わせの際に処理経緯を説明できます。
撤去完了後は、ルート別の台数と重量、売却額と費用を集計し、JIS規格への適合状況の確認結果とあわせて記録します。集計結果を次回の設備更新の計画に反映させることで、安全性の確保と処理ルートの見直しを継続的に行えるようになります。
5.介護ベッドを資源循環に回す経営上のメリット

介護ベッドの資源循環は、処理費用を抑える手段にとどまらず、脱炭素や情報開示への対応を進める材料になります。介護ベッドは安全基準の改正や施設の改修に合わせて一斉に入れ替えが発生する設備であり、単発の処理ではなく継続的な仕組みとして設計することで、経営上の効果を積み上げられます。
(1)ベッドフレームの鉄スクラップとしての資源価値
介護ベッドのフレームや昇降機構には鋼材が使われており、再使用に適さないベッドも、解体・選別を経て鉄スクラップとして回収できます。回収された鉄スクラップは電炉製鋼の原料として再び鋼材に生まれ変わるため、安全上の理由で再使用できないベッドを、国内の資源循環につなげられます。
鉄スクラップは国内で調達できる製鋼原料であり、輸入に頼る鉄鉱石や石炭の使用を抑える点で、資源安全保障の観点からも意味を持ちます。施設の改修では、介護ベッドとあわせて、スチール製の収納家具や車いす、配膳車など鉄を含む設備が撤去される場合があるため、撤去物全体を資源循環の対象として設計することで、施設単位での資源化の効果が大きくなります。
なかでも鉄は、カーボンニュートラルの潮流のなかで電炉化が加速し、質の高い鉄スクラップの国内循環が戦略資源として注目されています。鉄のサーキュラーエコノミーへの具体的な取り組みについては、以下の記事で解説しています。

参考:https://www.tokyo-np.co.jp/article/399662
2024年度の国内老廃スクラップ購入量は1,660万トン、国内加工スクラップ購入量と輸出量はいずれも680万トンです。国内で発生した使用済み鉄製品が製鋼原料として継続的に購入されていることは、再使用できない介護ベッドの鋼製フレームを資源循環へ回す意義を裏付けます。なお、老廃スクラップには建物解体、廃車、缶など幅広い発生源が含まれ、介護ベッド単独の量ではありません。2004・2008・2014年度には調査見直しがあり、時系列は一部不連続です。
参考:https://www.cjc.or.jp/data/pdf/book2026.pdf#page=67
(2)カーボンニュートラルとScope3への対応
鉄スクラップを原料とする電炉法は、鉄鉱石を還元する工程を経ないため、高炉法と比べて鋼材製造時のCO2排出を大きく抑えられます。みずほ銀行産業調査部の分析では、直近の排出原単位について、高炉メーカーが粗鋼1トンあたり約2トンのCO2を排出するのに対し、電炉メーカーは約0.3トンに抑えられていると整理されています。
自社の排出量算定においても、処理方法の記録は重要な意味を持ちます。サプライチェーン排出量のうち、事業から出る廃棄物の処理に伴う排出はScope3のカテゴリ5に区分されます。介護ベッドなどの設備の排出量を処理方法ごとに把握しておくことで算定の根拠を示しやすくなり、再使用や資源化への切り替えによる取り組みを社内外に説明できます。
実務では、入れ替えの案件ごとに売却分、資源化分、廃棄分の台数と重量を記録し、年度単位で集計できる形にしておきます。施設の改修や設備更新の計画段階から資源循環ルートを組み込んでおくと、カーボンニュートラルに向けた中期目標の進捗管理にも活用できます。
参考:https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/industry/sangyou/pdf/mif_246.pdf
環境省資料では、Scope3を15カテゴリに分類し、カテゴリ5を「事業から出る廃棄物」としています。対象は、有価物を除く廃棄物について、自社以外が行う輸送と処理に伴う排出です。この区分に沿って介護ベッドの資源化分・廃棄分の重量と処理方法を記録すると、Scope3算定の根拠を整理できます。一方、売却した有価物はカテゴリ5から除かれ、販売した製品の廃棄はカテゴリ12に当たるため、売却・資源化・廃棄を同一の区分で集計しない点に留意が必要です。
参考:https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/SC_syousai_all_20230301.pdf#page=8
(3)利用者の安全と資源循環を両立した情報開示
介護ベッドの入れ替えでは、JIS改正前の製品を再使用に回さず資源化するという判断が、利用者の安全確保と資源循環の取り組みを同時に示す材料になります。安全基準への適合状況の確認記録と、資源化の実績をベッド単位で一体的に管理しておくと、事故防止の取り組みと環境負荷低減の取り組みを同じ根拠で説明できます。
介護事業者や医療法人においても、統合報告書やサステナビリティレポート、自治体や取引先への報告で、廃棄物の削減や再資源化の状況を示す場面があります。ベッド単位の処理記録と重量データは、こうした開示や報告の根拠になります。
サーキュラーエコノミーの観点では、製品を使用後に廃棄するのではなく、再使用や再資源化によって資源を経済活動の中で循環させることが求められます。複数の施設を運営する法人では、介護ベッドの処理について、安全基準への適合状況を組み込んだ判断基準と記録の様式を法人内の規程として統一しておくことが、循環型の設備管理へ移行する実務上の要点です。
6.まとめ
介護ベッドのリサイクルでは、レンタル品やリース品と施設所有品を最初に区分し、レンタル品は福祉用具貸与事業者への返却、施設所有品は売却・資源循環・廃棄のいずれかで処理します。施設から出るベッドは産業廃棄物として許可業者に委託する必要があり、医療機器に該当するベッドを中古で売却する場合は、製造販売業者への事前通知の手続きが関係します。
撤去前には、JIS規格への適合状況、清拭・消毒、付属品と電動部品の扱いを確認します。2009年の改正前の規格で製造された製品は再使用に回さず資源化を基本とし、処理方法を総額で比較するとともに、安全性の確認記録と資源化の実績をベッド単位で一体管理することで、利用者の安全確保とカーボンニュートラルやESGへの対応を両立させる判断が可能になります。
サーキュラーエコノミーへの移行を進める上では、自社の資源循環の実態を把握し、具体的なスキームを設計することが重要です。特に鉄を主原料とする製品・設備の廃棄や資源循環にお困りの場合は、五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」にご相談ください。







