グリーンサプライチェーンとは?排出量算定の範囲と削減、ガイドライン

グリーンサプライチェーンは、2026年時点でグローバル市場への参入資格そのものとなりつつあるとして注目を集めています。
この記事では、グリーンサプライチェーンに関する主要ガイドラインと要求水準や、Scope 3削減に向けた5つの実行プロセス、そして先行企業の成功事例を詳しく解説します。

五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、サプライチェーン全体の可視化と、実効性のある資源循環スキームの構築を強固に支援します。サプライチェーン管理を持続可能な競争優位の拠点へと転換したい場合には、ぜひご相談ください。

目次

1.グリーンサプライチェーンの定義と適用範囲

(1)グリーンサプライチェーンの定義

グリーンサプライチェーンとは、原材料の調達から製造、物流、販売、さらに製品の消費・廃棄に至るサプライチェーンの全工程において、温室効果ガス排出量や環境負荷を最小化することを目指す経営フレームワークです。
環境省の検討会資料においても、バリューチェーン全体の脱炭素化には以下の3点が不可欠であると指摘されています。

データの共有・連携自社単独ではなく、サプライヤーとの強固な信頼関係に基づく排出量データの連携
Scope 1・2・3の可視化上流から下流まで、漏れのない環境負荷の把握
仕組みの浸透脱炭素投資や調達基準の変更を、取引先選定の意思決定プロセスへ組み込むこと

これらは機関投資家からの評価や、欧州を中心としたグローバル市場における参入障壁を突破するための武器として位置付けられています。

参考:https://www.env.go.jp/content/000339458.pdf
参考:グリーン・バリューチェーンプラットフォーム|環境省

(2)従来のサプライチェーンマネジメントとの構造的な違い

従来のサプライチェーンマネジメントは、品質・コスト・納期の最適化を中心に、企業間の取引効率を高める仕組みとして発展してきました。
これに対し、グリーンサプライチェーンでは温室効果ガス排出量をはじめとする環境影響が管理の中核に位置付けられ、企業活動は環境価値の創出を同時に達成することが前提となります。

グリーンサプライチェーン従来のサプライチェーンマネジメント
主要KPI(評価指標)炭素効率、再エネ比率、資源循環率利益率、在庫回転率、納期遵守率
管理・責任範囲原材料調達から廃棄・リサイクルまで(Scope 3)自社から直接取引先(ティア1)まで
サプライヤーとの関係脱炭素に向けた共創と実測データ共有コスト削減を目的とした価格交渉
意思決定の優先順位環境価値と経済価値の同時最適化(QCDE)経済的効率性(品質・コスト・納期)

この変化により、排出削減への寄与度や情報開示への対応力が企業評価を左右する要素となりました。
さらに、従来は個社単位で完結していた最適化の考え方が、調達方針、物流設計、製品仕様の決定に至るまで、環境負荷の低減を織り込んだ意思決定が前提となり、経営戦略とサプライチェーン運営がより強く結びつく構造へと変化しています。

参考:サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルに向けた カーボンフットプリントを巡る動向|経済産業省

(3)企業が管理対象とすべき排出領域

グリーンサプライチェーンの議論において中心となるのは、取引関係を通じて発生する間接的な排出(Scope3)をどこまで管理対象に含めるかという点です。Scope3は自社が物理的に統制できない領域を含みますが、総排出量の大半を占めることが多く、企業価値評価や取引条件に直接影響します。

排出区分概要
Scope 1自社が所有・管理する設備(工場、社用車など)からの燃料燃焼
Scope 2自社が購入した電力、熱、蒸気の使用に伴う排出
Scope 3原材料調達、物流、製品の使用・廃棄など供給網全体

排出量の実態把握は、サプライヤー選定、製品設計、投資配分を左右する経営情報へと位置付けが変化しています。
管理対象の設定は、どのリスクを自社が引き受けるかを定義する行為でもあり、その範囲が限定的であるほど市場や投資家からの信頼確保は難しくなります。

したがって企業には、自社単体の効率改善にとどまらず、サプライチェーン全体へどのように影響力を及ぼすかという観点から排出領域を再設計する視点が求められます。

参考:排出量削減目標の設定|環境省

2.サプライチェーン排出量の把握と削減に向けた5つの実行プロセス

サプライチェーン全体の排出量管理は、把握から削減、評価、改善までを一連のプロセスとして設計し、組織的に継続できる状態を構築することが前提となります。
ここでは、排出量を経営情報として扱い、投資判断や取引方針へ接続させるために必要となる主要な実行プロセスを整理します。

(1)境界設定とカテゴリーの優先順位付け

サプライチェーン排出量の算定において、まず取り組むべきは算定対象とする組織の境界を確定させ、全体像を鳥瞰することです。
環境省のガイドラインでは、自社が提供する製品・サービスに関連する温室効果ガス排出量をライフサイクル全体で捉え、その後、具体的なサプライチェーン区分(カテゴリ)を抽出するフローを推奨しています。

実務においては、排出規模の大きさ削減のポテンシャルデータ取得の難易度、さらには投資家や主要顧客といったステークホルダーからの要請を総合的に踏まえ、取り組むべき優先順位を設定することが戦略の要となります。
この優先順位付けこそが、限られたリソースを最も削減効果の高い領域へ集中させるための意思決定を支えます。

評価軸具体的な判断基準
排出規模の大きさScope3全体に対し大きな割合を占めているか
削減のポテンシャル技術革新や取引条件の変更により削減余地があるか
データ取得の容易性一次データや信頼できる活動量を把握できるか
ステークホルダーの関心投資家や顧客から強い開示・削減要請があるか

境界設定と優先順位付けは、企業がどの領域でサプライチェーンに対する影響力を行使し、どこから具体的な削減を加速させるかという、脱炭素経営における戦略的基盤を構築するプロセスそのものとなります。

参考:https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/estimate_04.html
参考:https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/tools/Supply-chain_A4_04_02.pdf

【事例】積水ハウス:居住時排出を核とした境界設定
積水ハウスは、住宅のライフサイクル全体で排出量を捉え、 特に「居住時のエネルギー消費」を最優先領域に設定しています。 同社のScope 3において、このカテゴリー11は全体の約8割を占め、 事業を通じた削減ポテンシャルが最も大きいと定義されています。
この境界設定に基づき、同社はZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス) の普及を経営の柱に据え、断熱性能の向上や太陽光発電の導入を推進。 単なる算定に留まらず、製品設計の段階から排出域を再設計することで、 顧客の生活における脱炭素と企業価値の向上を同時に実現しています。 また、サプライヤーに対してもSBT水準の目標設定を求めるなど、 上流から下流まで一貫した影響力を行使している点が大きな特徴です。 こうした優先順位付けの明確さが、投資家からの高い信頼に繋がっています。
参考:SEKISUI HOUSE ESG DATA BOOK 2025|積水ハウス

(2)二次データから一次データへの移行

一次データへの移行は段階的に進められ、主要なサプライヤーに対するデータ提供要請や、ITシステムを活用した収集体制の整備が実務上の出発点となります。

一次データとは、サプライヤーや自社拠点から直接取得した活動量やエネルギー使用量などの実測値を基に算出される排出量を指します。これに対し、二次データは統計値業界平均値などを用いた推計であり、迅速に算定を開始できる一方、実態との乖離が生じる可能性があります。

最終的には、この透明性がステークホルダーに対する説明責任を支え、2026年以降本格化する炭素関連規制への対応力を左右する基盤となります。

参考:https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/carbon_footprint/pdf/20230526_3.pdf

【事例】ユニリーバ:サプライヤーとの共創によるデータ精度向上
ユニリーバは、2039年までにバリューチェーン全体でのネットゼロ 達成を掲げ、一次データへの移行を戦略の核に据えています。 同社は「ユニリーバ・クライメート・プロミス」という枠組みを通じ、 主要なサプライヤーに対して、製品ごとの排出量実測データの共有と 削減目標の設定を公式に要請している点が大きな特徴です。

従来の業界平均値を用いた推計(二次データ)では、サプライヤーの 個別の削減努力が反映されないという課題を同社は重視しました。 そこで、ITツールや共通の算定プロトコルを導入することで、 数万点に及ぶ原材料の正確な排出量を直接把握する体制を整備。 この透明性の高いデータ収集プロセスにより、排出量の多い 「ホットスポット」を特定し、ピンポイントでの削減を実現しています。 単なる数値管理を超え、サプライヤーの脱炭素化を直接支援する パートナーシップの構築が、同社の競争力の源泉となっています。
参考:Unilever:Partnering with suppliers to deliver net-zero emissions(英語)

(3)算定結果の可視化と重点領域の特定

算定によって得られた膨大な排出量データは、適切に可視化され、経営戦略上の重点領域が特定されて初めて価値を持ちます。特に大企業においては、パレート分析などを用いて、排出量の8割を占める上位2割の要因を特定することが定石です。

分析のステップ具体的な実施内容
全体俯瞰・グラフ化Scope 1〜3および全15カテゴリの排出寄与度を可視化
パレート分析の実施排出量の80%を占める上位20%の要因(品目・拠点)を特定
財務インパクト試算炭素価格(ICP)を用いた、将来的な炭素税支払額のシミュレーション
時系列比較と進捗管理基準年度からの削減推移をダッシュボードでモニタリング

例えば、多くの企業で大きな割合を占める Scope 3 の購入した製品・サービスや製品の使用などは、優先的に分析・対策検討が行われます。これらのプロセスは削減計画の効率化に資するだけでなく、TCFDISSBなどの開示基準に沿ったステークホルダーへの説明責任を果たすための強固な基盤となります。

参考:https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/guide/VC_guide.pdf

【事例】日立製作所における「排出量可視化と重点領域特定」の事例
日立製作所は、2050年のバリューチェーン全体でのカーボンニュートラル 達成を掲げ、高度な算定と分析を経営判断に直結させています。 まず同社は、Scope 1から3までの排出量を精緻に算定し、その約 9割が製品使用段階(カテゴリ11)に集中することを特定しました。 このパレート分析結果に基づき、省エネ性能の向上を最重点領域と 定めています。また、内部炭素価格(ICP)を1トンあたり 14,000円と高水準に設定し、設備投資の際に将来の炭素コストを 考慮する仕組みを構築しました。これにより財務インパクトを 可視化し、削減効果の高い投資を優先的に実行しています。 さらに、自社のIT基盤を活用したダッシュボードで進捗を管理し、 ステークホルダーへの透明性の高い情報開示を継続しています。
参考:注目集まる「インターナル・カーボンプライシング」 その仕組みと効果とは?|日立製作所

(4)サプライヤーとのグリーン契約への改定

環境省のガイドラインでは、排出量の算定基盤を整備すると同時に、サプライヤーとの間で環境情報の透明性を確保し、具体的な削減アクションにつながる契約条件を設けることが推奨されています。
グリーン契約とは、排出データの提供要請や、省エネルギー設備の導入再生可能エネルギーの利用拡大といった環境パフォーマンスに関する成果目標を契約条項に組み込んだ取引条件を指します。これにより、サプライヤーは、排出削減という共通の目標に沿った行動義務を担うことになります。

以下のように、排出量管理削減プロセスをサプライチェーン全体で機能させるための基盤整備として位置づけられます。

データ開示の義務化Scope 1・2・3の一次データ項目、報告頻度、共通フォーマットを定義し、契約条項に明記することで算定の信頼性を担保する
インセンティブ設計排出実績の大幅な改善に対する価格優遇や、長期的な優先取引権の付与など、サプライヤーが能動的に動く仕組みを構築する
共通基準の策定排出量データの整合性を確保するため、測定・算定方法を統一し、相互理解に基づいたコミュニケーションルールを確立する
是正措置の定義目標未達時の改善計画の提出や、必要に応じた技術支援体制をあらかじめ合意し、パートナーシップとしての実行力を高める

具体的な条項や合意プロセスの設計は、自社のサプライチェーン特性業界慣行に応じて最適化される必要があります。

特に2026年以降は、こうした契約が選ばれるサプライヤーと淘汰されるサプライヤーを分ける明確な基準となっていくでしょう。

参考:https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/guide/VC_guide.pdf

【事例】JALにおける「グリーン契約とサプライヤー協働」の事例
日本航空(JAL)は、持続可能な調達の実現に向け、サプライヤーとの 契約や行動規範に環境・人権条項を組み込む体制を強化しています。 まず「JALグループ サプライヤー行動規範」を策定し、取引先に対して GHG排出量の削減目標設定や、定期的なデータ開示を強く求めています。 特に2024年度以降は、主要サプライヤーへのモニタリングを徹底し、 外部評価機関を活用して環境パフォーマンスを客観的に数値化しています。 この評価結果は取引継続の判断基準の一つとして位置づけられており、 基準を下回る場合には是正計画の提出を求め、改善を促す仕組みです。 また、SAF(持続可能な航空燃料)の調達においては、燃料メーカーと 長期的な契約を締結し、供給網全体での排出削減を義務付けています。 こうした契約を通じた関与により、業界全体の透明性向上に努めています。
参考:責任ある調達活動の推進|JAL

(5)ライフサイクルアセスメントの実施

ライフサイクルアセスメントとは、原材料の採掘から製造、輸送、使用、そして廃棄・リサイクルに至る全工程における環境影響を評価する手法です。
これにより、製品単位のカーボンフットプリントを算出することが可能となり、競合他社との差別化や、環境価値の価格転嫁に向けた客観的な根拠となります。

ライフサイクルアセスメント実施の主要ステップ具体的なアクション
目的・調査範囲の設定評価対象とする製品と、算定範囲(境界)を定義する
インベントリ分析各プロセスでの資源投入量や排出データを収集・集計する
影響評価収集したデータを地球温暖化などの環境影響カテゴリーに換算
結果の解釈と改善提案評価結果を製品設計や調達方針の改善にフィードバックする

欧州市場で導入が進むデジタル製品パスポートへの対応においても、ライフサイクルアセスメントに基づく精緻なデータ管理はもはや必須の参入条件です。
経営層にとっては、ライフサイクルアセスメントを通じて製品設計段階からの低炭素化を推進することが、長期的な炭素コストの削減市場シェア拡大に直結する戦略的な意思決定となります。

【事例】カルビーにおける「LCAを通じた製品排出量の可視化」
カルビーグループは、製品の原材料調達から廃棄に至る全工程の 環境影響を評価するライフサイクルアセスメントを推進しています。 同社は主力製品であるポテトチップスにおいて、じゃがいもの栽培、 工場の加工、配送、包装材の廃棄という各段階の排出量を算定し、 原材料の調達段階が全体の約7割を占めていることを特定しました。 このインベントリ分析に基づき、農場での肥料使用の最適化や、 包装フィルムの薄肉化といった具体的な改善提案を実務に反映。
また、算定結果を「カーボンフットプリント」として客観的に可視化 することで、環境価値を付加した製品設計の根拠としています。 経営層はこのLCAデータを、将来の炭素コスト低減や、欧州等の 国際的な環境規制への対応を支える戦略的な基盤と位置づけて、 サステナブルなサプライチェーンの構築を加速させています。
参考:カーボンニュートラルの達成|カルビZ

3.グリーンサプライチェーンに関する主要ガイドラインと要求水準について

グリーンサプライチェーンに関連する国内外のガイドラインは、グローバル市場への参入資格へとその性質を劇的に変えています。ここでは、主要な5つの枠組みと、現在求められている要求水準を整理します。

(1)GHGプロトコル|世界標準の算定・報告ルール

GHGプロトコルは、温室効果ガス排出量の算定・報告における世界共通言語と位置付けられます。
ISSBなどの国際的な開示基準においても、本プロトコルとの整合が参照される場面が増えており、準拠状況が企業評価に影響する可能性があります。

主要な構成要素2026年時点の要求水準
コーポレート・スタンダード実測値に基づく管理(例:燃料燃焼や製造プロセスからの排出を誤差なく把握するなど)
スコープ2ガイダンス1時間単位での算定
(証書による相殺だけでなく、電力消費の実態に即した報告が推奨され始めている)
スコープ3基準全15カテゴリの俯瞰と、重要項目の特定
算定テクニカルガイダンス一次データへの移行戦略サプライヤー提供の実測値をどう取り込み、精度を高めるかのプロセス定義

近年の開示基準や規制対応においても、GHGプロトコル準拠が前提となるケースが増えており、これに則った正確なデータ整備国内外のステークホルダーに対する信頼性の基盤となります。

参考:https://www.env.go.jp/council/06earth/y061-11/ref04.pdf
参考:GHGプロトコルの改訂に係る論点の概要|経済産業省(みずほリサーチ&テクノロジーズ)

(2)ISO 20400|持続可能な調達に関する国際規格

ISO 20400は、組織が調達プロセスを通じて持続可能性を統合し、社会的責任を果たすための国際的なガイドラインです。従来の品質・コスト・納期に加え、環境・社会・経済的課題を調達方針に織り込むことで、会社業績とサステナビリティの両立を図ることがこの規格の核心です。
欧州のCSDDDなどの法規制に対応するための実務的フレームワークへと、その活用の広がりが見られます。

  • 調達部門のKPIに排出削減や人権遵守を組み込み、経営戦略と完全に同期させているか
  • バリューチェーン全体の潜在的な環境・社会リスクを特定し、その「是正プロセス」が機能しているか
  • 廃棄に至るまでの全コストと環境負荷を評価しているか
  • サプライヤーの能力構築(キャパシティ・ビルディング)を支援しているか

ISO 20400を活用することで、企業はサプライチェーンにおけるコンプライアンス対応を超え、持続可能な調達を実現し、新たな競争力の向上につながる可能性があります。

参考:https://www.juse-iso.jp/kikaku/iso20400/

【事例】すかいらーくホールディングスにおける「ISO 20400」
すかいらーくは、2023年に日本の外食業界で初めて「ISO 20400」 (持続可能な調達)の認証を取得し、高度な調達体制を築いています。 同社は、約4,600品目の食材と300社の取引先に対し、環境や人権、 アニマルウェルフェア等のリスクを統合的に管理する仕組みを導入。 単なる品質やコストだけでなく、持続可能性を調達の核心に据えました。 具体的には「CSRチェック」を通じ、バイヤーが産地を直接確認する など、現場に踏み込んだリスク是正プロセスを機能させています。 また、購買部門の全担当者に対して専門研修を実施し、法規制や 社会的課題への対応力を高める「能力構築」を組織全体で徹底。 2026年以降のグローバルな規制強化を見据え、サプライヤーとの 対話を通じて、透明性の高い持続可能な食の供給網を追求しています。
参考:外食業界初 持続可能な調達「ISO20400」を取得|すかいらーく
参考:持続可能な調達の国際規格「ISO20400」を取得|すかいらーく

(3)グリーン価値チェーンプラットフォーム|環境省による国内基準

グリーン価値チェーンプラットフォームは、GHGプロトコル等の国際基準と整合しつつ、日本国内のビジネス慣行法制度に即した具体的な算定手法排出原単位データベース取組事例などを提供しています。
温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)の改正GX推進法の本格稼働に伴い、法的な排出量報告製品単位の排出量管理を支える国内実務を支える基盤として活用が進んでいます。2026年時点の重点要求事項は、以下のとおりです。

  • 改正された「サプライチェーン排出量算定基本ガイド」に基づき、最新の排出係数を用いて算定しているか
  • 製品単位の排出量(カーボンフットプリント)を、国の統一ルールに則って算定・開示しているか
  • 国内最大の公共データベースを活用し、算定の透明性と正確性を確保しているか
  • プラットフォーム提供の診断ツールを用い、自社の取組が国内他社と比較してどの水準にあるか把握しているか

グリーン価値チェーンプラットフォームを活用することで、企業は複雑化する国内外の要求水準を効率的にクリアし、算定したデータを経営戦略や製品開発へと迅速にフィードバックすることが可能になります。

参考:https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/

【事例】ダイキン工業における「国内基準(GVC)に準拠した算定」
ダイキン工業は、環境省の「グリーン・バリューチェーンプラット フォーム」のガイドラインを早期から採用し、算定の透明性を 極めて高く維持しています。同社は空調機のライフサイクル全体を 精緻に分析し、排出量の約9割が製品使用段階(カテゴリ11)に あることを特定。この算定には、環境省のデータベースに基づいた 排出係数と、自社で研究を進める「実態に即した使用シナリオ」を 組み合わせています。2026年に向けた最新の動きとして、 アスエネ社等と提携し、サプライチェーンの一次データを迅速に 集約するクラウド基盤を強化。これにより、国内の統一基準に則った 製品単位のカーボンフットプリント(CFP)を算出し、他社との 比較優位を明確化しています。法的な排出報告制度とも整合させ、 経営層がリアルタイムで削減進捗を把握できる体制を整えています。
参考:環境|ダイキン工業

(4)欧州規制(CBAM・CSDDD)|グローバル市場での参入障壁と義務

2026年1月からは、CBAMの証書購入義務が開始され、算定精度が将来的な財務負担や取引条件に影響する可能性があります。主要な欧州規制と2026年時点で重視されているポイントは、以下のとおりです。

規制名称2026年時点の要求水準・義務内容
CBAM(炭素国境調整措置)鉄鋼、アルミ、電力等の対象品目の輸入時に、排出量に応じた「CBAM証書」の購入が義務化
CSDDD(企業サステナビリティDD指令)サプライチェーン全体における深刻な環境破壊や人権侵害の特定・予防・反映が法的義務に
CSRD(企業サステナビリティ報告指令)2025年度の実績分から、第三者保証(監査)を伴う詳細な情報公開を開始
デジタル製品パスポート(DPP)バッテリー等の特定品目を皮切りに、LCAデータやリサイクル情報をデジタル上で追跡・開示

日本企業にとっては、サプライヤーから高精度な一次データを早期に回収し、規制当局が求める厳格な形式で証明できる体制を構築することが、欧州ビジネスを継続するための重要な経営課題として位置付けられます。

参考:https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/cbam/cbam.html
参考:https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/12/1873de464ec37cfb.html

【事例】三菱電機における「欧州CSDDDを見据えたDD体制」
三菱電機は、欧州の企業サステナビリティ・デューデリジェンス指令 (CSDDD)等、厳格化するグローバル規制を経営リスクと捉え、 サプライチェーン全体での人権・環境管理を高度化しています。 同社は、国内外の全サプライヤー約1,100社に対し、業界標準の 共通設問を用いた詳細なリスク評価を実施し、その回答率や内容を デジタルプラットフォームで一元管理しています。2026年時点では、 深刻なリスクが特定された際の是正プロセスを法的義務に耐えうる レベルにまで明文化し、現地監査による実態把握を徹底しています。 また、欧州で先行するデジタル製品パスポート(DPP)への対応 として、製品の原材料から廃棄までの環境データを追跡・証明する IT基盤を整備。こうした取り組みにより、欧州市場での取引資格を 維持するだけでなく、透明性の高い供給網を競争力の源泉として 位置づけ、グローバルな社会的責任と事業継続の両立を図っています。
参考:サプライチェーンマネジメント(調達)|三菱電機

(5)GX推進法|国内における排出量取引の本格稼働と義務化

GX推進法(脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律)は、日本の産業競争力強化と脱炭素の両立を目指す国家戦略の法的根拠です。これにより、一定規模以上の企業に対して、制度的な対応が求められる枠組みが整備されています。2026年時点で重視されているポイントは、以下のとおりです。

  • 排出量取引(GX-ETS)の義務化
  • 排出削減目標の策定・公表
  • 第三者検証の厳格化
  • 化石燃料賦課金への準備

特にGX-ETSの義務化対象となる企業にとっては、排出削減の成否が排出量管理が財務影響に結び付く構造が明確になりつつあります。

参考:https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/index.html

【事例】NTTにおける「GX推進法と排出量取引」への取り組み事例
NTTグループは、国内の電力使用量の約1%を占める多消費企業 として、GX推進法に基づく排出量取引への対応を強化しています。 同社は、2040年度までのネットゼロ達成を掲げ、GX-ETSでの 義務化対象となる大規模排出源の管理をデジタル化しました。 具体的には、独自のIT基盤を活用して、グループ各拠点の排出量を 第三者検証可能な形式で集計し、報告の信頼性を担保しています。 排出枠の過不足を経営リスクと捉え、内部炭素価格を導入して 省エネ投資を加速させるとともに、次世代通信基盤IOWNによる 劇的な電力消費削減を、排出量取引上の強力な武器としています。 また、GXダッシュボード上での進捗開示を徹底し、投資家への 説明責任を果たすことで、企業の市場価値向上に繋げています。
参考:脱炭素|NTT

4.グリーンサプライチェーンの実践事例

(1)Apple|排出量の可視化とデジタル化

引用:https://www.apple.com/jp/environment/

Appleの環境ウェブページでは、2015年基準から全体の温室効果ガス排出量を60%以上削減したことや、2030年のカーボンニュートラル実現に向けた具体的なロードマップが公開されています。さらに、排出に影響する要素をデータとして分解し、投資家・規制当局・取引先が参照できる状態にしている点も特徴です。

  • 素材調達、電力構成、輸送、梱包など排出源を構造化して開示
  • 半導体やディスプレイ工程におけるF-GHG削減の進捗をサプライヤーと共有
  • Scope1〜3の算定結果を年次レポートで継続的に公開し、一次データに基づく実績管理へ移行

このように、サプライヤー管理、技術転換、外部説明に接続する運用基盤として機能させている点に特徴があります。

(2)ソニーグループ|世界初の再生プラスチック・サプライチェーン・アライアンス

引用:https://www.sony.co.jp/news-release/202602/26-0206/

ソニー株式会社は、2026年2月6日に三菱商事、三井化学、出光興産、東レなど計14社と共同で、高機能製品向けのリニューアブルプラスチック(バイオマス由来プラスチック)を対象としたグローバルサプライチェーンを構築したと発表しました。これは原料から製品仕上げまでを一元的に可視化し、量産規模で再生可能原料を供給できる体制を整えた世界初の取り組みです。このアライアンスでは、以下のような特徴があります。

  • 原材料段階から再生可能原料を活用
  • マスバランス方式による品質確保と環境価値の繋ぎ込み
  • サプライチェーン全体の可視化による排出量把握の強化

この取り組みは、サプライチェーンを横断したデータ連携・可視化の仕組みづくりにも踏み込んでいます。

(3)ファーストリテイリング|RE.UNIQLO

引用:https://www.uniqlo.com/jp/ja/special-feature/sustainability/re-uniqlo?srsltid=AfmBOop51gjzRP3Dk4rnsdu_4TsAC02CFhUF6R16hVuhCZcRdUnBZDzo

RE.UNIQLO(リユニクロ)は、サプライチェーン全体で製品ライフサイクルに着目し、リユース・リサイクルを促進する取り組みです。製品をできるだけ長く循環させることを主軸としており、店舗回収から始まり、顧客にとって利便性の高い形での循環の仕組み化と、そこで得られるデータの蓄積・可視化を行っています。

店舗回収とリユース促進不要になった衣料を回収し、再販売・リサイクル原料化のルートへつなげる仕組みを整備
循環データによる可視化回収・再販売・リサイクルに至るプロセスごとにデータを収集
循環型材料の活用回収衣料を原料とした素材を新製品へ再投入する

製品クラスを横断した実運用データの収集・可視化を通じて、サプライチェーン全体の環境負荷を評価可能にしている点が特徴です。その結果、再利用・再投入に伴う削減効果が具体的な数値として把握され、排出削減戦略の策定に反映されています。

5.まとめ

グリーンサプライチェーンの構築は、単に環境負荷を低減するだけでなく、企業価値向上に不可欠な戦略となりつつあります。本稿で紹介した定義、算定プロセス、主要ガイドライン、そして先進的な実践事例は、企業が持続可能なサプライチェーンへと転換するための羅針盤となるでしょう。排出量算定の範囲を正確に把握し、サプライヤーとの連携を強化することで、グローバルな競争環境において優位性を確立することが可能となります。

五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」は、現状の資源流・排出データの精密な分析に基づき、サプライヤーを巻き込んだ資源回収・再資源化の構造変革を強固に支援します。サプライチェーンを次世代の循環型経営の核へと進化させたい場合には、ぜひご相談ください。

監修

早稲田大学法学部卒業後、金融機関での法人営業を経て、中小企業向け専門紙の編集記者として神奈川県内の企業・大学・研究機関を取材。
2013年から2020年にかけては、企業のサステナビリティレポートの企画・編集・ライティングを担当。2025年4月よりフリーランスとして独立。
企業活動と社会課題の接点に関する実務経験が豊富で、サステナビリティ分野での実践的な視点に基づく発信を強みとしている。