運送業の生産性向上を実現する手法|指標・原価構造と改善施策、事例

2024年4月の改正労働基準法施行により「走れる時間が有限になった」という経営環境の根本的な変化を迎えています。本記事では、生産性向上に直結するKPIの算出方法や原価管理の高度化手法について体系的にわかりやすく解説します。

五十鈴株式会社の「次世代運行管理システムAIR」は、生産性向上に必要な分析レポートを簡単に生成可能です。それらのデータから生産性分析レポートを簡単に生成し、改善ポイントを一目で把握できます。システム導入によって運送業の生産性向上を実現させたい場合には、ぜひご相談ください。

目次

1.運送業における生産性向上が最優先事項とされる理由

(1)選ばれる運送会社の変化

国土交通省の試算では、2030年には貨物輸送の需要に対してドライバーが大幅に不足する見通しが示されており、この状況は採用競争の激化という形で各社の経営に直撃しています。

これらを踏まえ採用競争で「選ばれる運送会社」になるための条件は、賃金水準、労働時間、業務負荷といった就業条件を総合的に整備することにあります。

わかりやすい例でいえば、月給25万円の会社と28万円の会社では、応募数や定着率に差が生じる可能性があり、その差を支える原資の確保が課題となります。燃料費・車両費・保険料が上昇する中で、コスト構造を維持したまま賃上げを実施した場合、財務への影響が生じるため、同一の経営資源で付加価値を高める仕組みとして、生産性の向上が前提となります。

生産性の向上により収益余力が確保されることで、賃金水準の引き上げや労働環境の改善が可能となり、採用・定着に寄与します。さらに、それらの取り組みが継続的な生産性向上につながる構造を形成することが求められます。

参考:https://wwwtb.mlit.go.jp/tohoku/it/yusou/it-yutr163.pdf

(2)拘束時間管理がもたらす収益への影響

引用:https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/pdf/ltxt-truck.pdf

2024年4月の法改正により、自動車運転業務における時間外労働の上限は年間960時間(月平均80時間)に制限されました。これにより、長時間労働を前提とした運行体制は制度上成立しない構造へ移行しています。

あわせて、厚生労働省の改善基準告示の改正により、1日の拘束時間は原則13時間(最大16時間)と定められ、管理要件が明確化されています。ここで重要となるのは、荷待ち時間や荷役時間、手待ち時間もすべて拘束時間に含まれる点です。

例えば、荷主先で2時間の荷待ちが発生した場合、その分だけ運行可能な時間が減少し、結果として輸送回数や売上機会が制約されます。仮に100台の車両が毎日平均1.5時間の荷待ちを行っている場合、年間では54,750時間の拘束時間が付加価値を生まない状態で消費されることになります。

国土交通省が2024年度に実施した実態調査(2,544運行対象)によれば、トラックドライバーの1運行あたりの荷待ち時間は平均1時間28分にのぼっており、2020年度の前回調査(1時間34分)からほぼ改善が見られていません。政府は2030年度までに5割の運行で荷待ち・荷役等時間を計2時間以内に削減する目標を掲げていますが、現状はその目標値に到達していない状況です。
参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001854525.pdf

このような拘束時間の損失を正確に把握し、発生要因を特定して改善につなげるには、継続的かつ即時性のあるデータ管理が前提となります。

参考:https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/pdf/ltxt-truck.pdf
参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk4_000022.html

(3)どんぶり勘定が招く経営リスク

運賃改定の交渉においては、数値に基づく客観的根拠の提示が前提となります。特に、当該ルートの原価現行運賃との差額を運行単位で明示できるかどうかが、交渉の成立可否に影響します。
一方で、車両別・ルート別・荷主別の収支が体系化されていない状況では、採算性の判断が不明確となり、不採算案件の放置や価格交渉の機会損失を招くリスクがあります。

Excelによる管理は、事業規模の拡大や取引の複雑化に伴い、集計の正確性と人的コストの面で限界を迎えるのが実情です。

全日本トラック協会の経営分析報告書(令和5年度決算版)によれば、貨物運送事業における営業損益率は0.6%にとどまっており、車両10台以下の小規模事業者では営業赤字が52%に達しています。燃料費・人件費・車両費等の運送原価上昇分の運賃転嫁が依然低調で、特に中小・零細事業者の業績回復は大幅に遅れている実態が示されています。自社の実態原価を正確に把握せずに現行運賃を受け入れ続けることは、事業継続そのものをリスクにさらす行為といえます。
参考:https://jta.or.jp/wp-content/themes/jta_theme/pdf/keiei/bunseki_r05gaiyo.pdf

国土交通省は2020年に「標準的な運賃」を告示し、2024年には実情に合わせて大幅な改正を行いました。
この制度は、適正な原価と利潤を反映した運賃水準を示すものであり、交渉の有力な公的指針となります。しかし、この指針を自社の利益に結びつけるためには、まず自社の実態原価を正確に把握していることが前提条件となります。

参考:https://jta.or.jp/member/kaisei_jigyoho/top/hyoujun_unchin.html
参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001346012.pdf
参考:https://jta.or.jp/member/keiei/keieibunseki_r05.html

2.運送業の生産性向上に向けた改善施策と事例

(1)デジタル配車による空車回送の極小化

引用:https://isz-air.site/case/

デジタル配車の導入により、全拠点の配車状況を一元的に可視化し、リアルタイムで共有することで、拠点間の連携不足を解消し、空車回送の発生を抑制できます。

実際に、空車回送の回避につながった事例では、帰り便の確保や配車の最適化が進み、結果として運行管理者の配車業務を約25%日報業務を約52%削減しています。
さらに、配車計画と動態データを連動させることで、積載率や回転数を踏まえた配車判断が可能となり、空車回送を構造的に削減できます。これにより、走行距離の最適化や積載効率の向上が実現し、燃料費や運行コストの抑制にもつながります。

(2)待機時間・荷役時間の自動可視化

引用:https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/truck/example

運行に付随する待機時間や荷役時間は拘束時間に含まれるため、その把握と管理は生産性に直結します。
運行時間を可視化するために独自の運行管理システムを開発した事例では、運転時間・拘束時間・休憩時間などをリアルタイムで把握できる環境を構築しています。運転者はスマートフォンで、運行管理者は社内PCで状況を確認できる仕組みとすることで、時間管理の精度を高めています。

さらに、これらの時間情報を荷主側にも共有することで、荷待ち時間の削減や荷役方法の見直しに関する協議が可能となり、長時間の待機や手作業負担の軽減に向けた調整が進んでいます。結果として、拘束時間の削減と運行効率の改善が同時に実現される構造が構築されています。

(3)動態管理によるルート最適化

引用:https://www.meti.go.jp/policy/economy/distribution/CLO_collection_of_cases.pdf

動態管理により、車両ごとの運行状況や滞在時間をデータとして把握することで、ルートや運行工程の見直しが可能となります。
店舗納品における事例では、実態データをもとにドライバーの滞在時間を分析した結果、商品の納品と書類回収のタイミングに不整合があることが判明し、車両を複数台で効率的に運用できる体制を構築して改善しています。

動態データを活用したこのようなルート・業務設計の最適化により、各運行における無駄な待機や滞在を削減し、限られた拘束時間内での運行回数や付加価値の最大化が実現されます。

(4)帰り便活用による実車率の底上げ

引用:https://jsite.mhlw.go.jp/yamagata-roudoukyoku/content/contents/000405116.pdf

帰り便を活用した共同輸送により、空車回送を削減し、実車率を向上させる取り組みが実施されています。朝日新聞社の配送車両を活用し、朝刊配送後の帰り便にパレット貨物や通い箱を積載することで、片道輸送から往復輸送への転換が図られました。

運行時間が一致しない場合には、トラックを2台用意し、あらかじめ荷積みした車両へ乗り換える運用を採用することで、時間的制約を吸収しながら輸送効率を確保しています。また、配送エリアマップや検討フローを整備し、社内展開を進めることで、共同輸送の対象を拡大し、複数の品目や拠点へ横展開されています。

この取り組みにより、距離あたりの実車率が向上するとともに、CO2排出量は年間67トン削減、輸送コストも23%削減されています。

(5)管理業務の自動化による間接部門の生産性向上

引用:https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001609016.pdf

受発注、配車指示、請求管理といった管理業務をデジタル化し、一連の業務をシステム上で完結させることで、力・転記・確認といった作業の削減が実現されています。

特に、運行計画の作成においては、改善基準告示に準拠した拘束時間や休憩条件を考慮したルート設計を自動で反映できるため、計画作成の精度向上とコンプライアンス対応の両立が可能となります。これにより、人的判断に依存していた業務の標準化が進み、ケアレスミスの抑制にもつながります。

また、受発注や見積・請求といった周辺業務も同一基盤上で処理することで、書類の重複管理や保管作業が削減され、ペーパーレス化が進展します。結果として、事務員の作業負担が軽減されるとともに、業務の属人化を防ぎ、管理業務全体の生産性向上が実現されます。

3.運送業の生産性における主要KPIと計算方法

運送業の生産性における主要KPIは、相互に連動して経営の全体像を構成します。
ここでは、各KPIの計算式と同時に「その数字が具体的にどの経営判断を可能にするか」を詳しく解説します。

(1)不採算車両を即座に特定する指標と計算方法

限界利益とは、売上高から変動費のみを差し引いた利益であり、固定費の回収に貢献できる「稼ぐ力」の純粋な指標です。車両1台あたりの限界利益をKPIとして設定する場合、以下の計算式で不採算車両を即座に特定する指標を求められます。

計算式
限界利益 = 売上高(運賃収入) – 変動費
変動費 = 燃料費 + 高速道路料金 + 外注費(傭車費) + その他直接費用

▼ 計算例
月間売上:900,000円
燃料費:130,000円  高速代:40,000円  外注費:0円
限界利益 = 900,000 – 130,000 – 40,000 = 730,000円

車両ごとの限界利益を継続的に把握することで、収益性の低い車両やルートを特定できます。

限界利益が低い、またはマイナスの運行は、変動費の回収が困難な状態であり、改善施策や運行継続の妥当性を再検討する必要があります。

この指標に基づき、運賃改定の交渉対象ルートの見直し車両の再配置といった判断が可能となり、増車・減車の意思決定においても限界利益の水準を基準とすることで、固定費の増減が収益に与える影響を事前に把握できます。

(2)走れない時間の損失を可視化する指標と計算方法

走れない時間の損失を可視化する場合、拘束1時間あたりの付加価値額をKPIとします。
この付加価値額は、売上高から外部への支払い(燃料費・外注費・修繕費・高速代等)を差し引いたものであり、企業内部で生み出された価値を示す指標です。これを総拘束時間で割ることで、1時間あたりの価値創出水準を定量的に把握できます。

計算式
付加価値額 = 売上高 – 外部購入費用(燃料費+外注費+修繕費+高速代等)
拘束1時間あたりの付加価値額 = 月間付加価値額 ÷ 月間総拘束時間

計算例
月間売上:900,000円  外部購入費:200,000円
付加価値額:700,000円
月間拘束時間:230時間(約9.2時間/日×25日)
拘束1時間あたりの付加価値額 = 700,000 ÷ 230 ≒ 3,043円/時間

拘束1時間あたりの付加価値額を用いることで、荷待ちや手待ちといった「付加価値を生まない時間」を金額換算できます。
例えば、1回あたり2時間の荷待ちが発生する場合、約6,000円相当の機会損失として把握できます。これにより、運行ごとの損失規模を月次・年次で積み上げて評価することが可能となります。

この指標に基づき、附帯料金の設定や運賃改定の根拠を数値として提示できるほか、付加価値の低いルート荷主の優先順位を見直す判断にも活用できます。特に、拘束時間の上限が定められている環境下では、限られた時間をどの運行に配分するかを判断する基準として機能します。

なお、荷待ち・附帯作業に対する料金設定については、国土交通省が公表する「標準的な運賃」において附帯料金の目安が示されており、交渉の公的根拠として活用できます。また、2025年4月施行の改正物流効率化法により、すべての荷主に対して荷待ち時間の短縮をはじめとする物流効率化への取り組みが努力義務として法定化されました。データを示した上での交渉環境は、制度面からも以前より整いつつあります。
参考:https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/
参考:https://jta.or.jp/member/kaisei_jigyoho/top/hyoujun_unchin.html

参考:https://www.mhlw.go.jp/content/001492702.pdf

(3)空車回送のコスト増を抑制する指標と計算方法

実車率と損益分岐点の相関を把握する場合、空車回送のコスト増を抑制する指標をKPIとします。
実車率は、総走行距離のうち貨物を積載して走行した割合を示す指標です。これに加えて、自社の固定費を回収できる水準としての損益分岐点実車率を把握することで、運行の採算性を評価できます。

計算式
実車率(%) = 実車走行距離 ÷ 総走行距離 × 100
損益分岐点実車率(概算)= 車両1台あたり月間固定費 ÷ 1km当たり粗利益 ÷ 月間総走行距離 × 100

計算例(簡易版)
車両月間固定費:300,000円(リース+保険+人件費固定部分)
1km当たり粗利益(運賃-変動費):150円
月間総走行距離:5,000km
損益分岐点実車率 = 300,000 ÷ 150 ÷ 5,000 × 100 = 40%

損益分岐点実車率実績値を比較することで、空車回送が収益に与える影響を把握できます。
例えば、実車率70%と80%では、1台あたり月間で75,000円の差が生じます。これを複数台で集計することで、空車回送の削減が収益に与える影響を定量的に評価できます。

この指標は、配車計画やルート設計、帰り便の確保といった運行設計の見直しに活用できます。
また、ルート別・荷主別に実車率を分解することで、特定の取引が実車率の低下要因となっているかを把握でき、運賃条件や取引内容の見直しに向けた根拠として用いることが可能です。

さらに、実車率の改善による収益増加と、配車・動態管理の仕組み導入に伴うコストを比較することで、投資判断の材料としても活用できます。

(4)荷主交渉をロジカルに進めるための主な指標と計算方法

荷主交渉をロジカルに進めるには、1運行あたりの営業利益(フルコスト原価)を主要なKPIとします。
フルコスト原価は、変動費に加えて車両の固定費、人件費の固定部分、本社共通経費までを配賦した原価であり、運行単位での採算性を評価する指標です。
この指標により、表面的な黒字・赤字ではなく、実態に基づく収益性を把握できます。

計算式
フルコスト原価 = 変動費 + 固定費配賦額
固定費配賦額 = (車両固定費 + 人件費固定部分 + 本社共通経費) ÷ 月間運行本数
1運行あたり営業利益 = 運賃収入 – フルコスト原価

計算例
運賃収入:40,000円/運行
変動費:8,000円(燃料2,000+高速4,000+その他2,000)
車両固定費配賦:12,000円
人件費固定配賦:15,000円
本社共通経費按分:3,000円
フルコスト原価 = 8,000 + 12,000 + 15,000 + 3,000 = 38,000円
1運行あたり営業利益 = 40,000 – 38,000 = 2,000円

上記の例では1運行あたり2,000円の利益しか残りません。
燃料費が1割上昇し変動費が800円増えただけで、利益は1,200円に圧縮されます。人件費が月1万円上昇すれば、固定費配賦の増加によって1運行あたり数百円の減益が全車両に波及します。この「余裕のなさ」を経営者が数値として把握していなければ、値上げ交渉のタイミングを逸し続けることになります。

利益幅が小さい運行は、コスト変動の影響を受けやすく、燃料費や人件費の変動によって収益性が変化するため、条件の見直しが必要となります。

また、変動費ベースでは黒字に見える運行であっても、本社経費や間接コストを含めると採算が取れていないケースもこれで把握できます。この比較結果をもとに、運賃改定や附帯条件の見直しについて、根拠を伴った交渉を行うことが可能となります。

(5)賃上げと会社利益のバランスを図る指標と計算方法

労働分配率人件費生産性は、賃上げと収益性の関係を数値で把握するための指標です。
人件費が付加価値に対してどの程度の割合を占めているか、また従業員1人あたりがどれだけの付加価値を生み出しているかを可視化できます。

最低賃金の上昇と採用競争が続く中、この2つの指標を経営の羅針盤とすることが欠かせません。

計算式
労働分配率(%) = 人件費 ÷ 付加価値額 × 100
人件費生産性(円) = 付加価値額 ÷ 従業員数

計算例(100台規模、従業員120人の想定)
月間付加価値額:120,000,000円(1人あたり100万円)
月間人件費:72,000,000円(1人あたり平均60万円)
労働分配率 = 72,000,000 ÷ 120,000,000 × 100 = 60%
人件費生産性 = 120,000,000 ÷ 120人 = 1,000,000円/人

賃上げを実施した場合、付加価値額が変わらなければ労働分配率は上昇し、利益や投資余力に影響します。
一方で、人件費生産性を用いることで、従業員1人あたりの付加価値創出水準を把握でき、賃上げを実施するために必要な付加価値額の増加目標を設定できます。

例えば、人件費の増加分を吸収するためには、同額以上の付加価値額を創出する必要があり、そのための具体的な改善施策をKPIとして落とし込むことが可能となります。

この2つの指標を組み合わせることで、賃上げと収益性の両立に向けた意思決定を数値に基づいて行うことができます。

4.運送業における原価管理を高度化する方法

先述したKPI計算を定期的・正確に実施するためには、原価データの収集・分類・集計の仕組みが整っていることが前提となります。
ここでは、手作業管理からシステム管理への移行に向けた原価管理高度化の3ステップを解説します。

(1)車両別・ルート別・荷主別で原価を分解する

運送業では、車両台数、取引荷主数、運行ルート数が組み合わさることで、管理対象となるデータは多岐にわたります。このため、手作業による集計では、網羅的かつ継続的に精度を維持することが難しく、分析の遅延や精度低下につながります。

原価管理の出発点は、損益を車両・ルート・荷主といった単位で分解し、収益構造を可視化することにあります。

各運行の燃料費・高速代・ドライバーコストを自動的に車両・ルート・荷主に紐付けるためには、システム化が現実的な選択肢となります。
これにより「荷主A向けの往路B号線ルートの限界利益は、荷主C向けの往路D号線ルートの3分の1しかない」という事実が即座に抽出できるようになります。

(2)変動費を運賃へ反映する仕組みを整備する

燃料費の変動は、運送業における原価構造に直接影響を与えます。
例えば、軽油価格が上昇した場合、走行距離や燃費に応じて車両単位・全社単位でコスト増が発生します。これらの変動費を個社で吸収し続けることは、収益性の低下につながります。

このため、燃料費の変動を運賃へ反映する仕組みとして、基準価格を設定し、一定幅を超えた変動分を自動的に加算する条件を事前に合意する方法が用いられます。これにより、都度の交渉を行うことなく、原価変動を継続的に反映することが可能となります。

高速道路料金についても、包括的な運賃設定ではなく、実際の利用実績に応じた精算方式とすることで、実費ベースでの原価回収が可能となります。これらの対応により、変動費の増減を運賃に連動させる構造を整備し、収益への影響を抑制できます。

(3)システム導入により予実管理の精度を高める

予算と実績の差異を迅速に把握し、当月内に是正できる体制を構築することで、運行単位での収益・原価データを継続的に更新し続けられます。

運行データを一元管理するシステムを導入することで、各運行終了後に原価・収益情報を随時蓄積し、予実差異を短期間で把握できる体制が構築されます。これにより、当月内に運賃条件や配車計画の見直しなどの是正対応を行うことが可能となり、収益管理の精度向上につながります。

システム導入については、機能性や操作性能を比較し、自社にあったシステムを導入することが重要です。

五十鈴株式会社の「次世代運行管理システムAIR」は、ドライバーの労働時間管理や荷待ち時間のデータ化、日報の自動作成に対応しており、さらに日々の分析レポートを生成します。資料作成・分析をお手伝いするサービスも利用できるため、現場の課題にあわせた分析が可能です。

5.運送業の生産性向上を阻む3つの壁と対処法

運送業の生産性向上を阻む壁とは、外部要因やアナログな商習慣などの構造的課題を指します。これらを理解し、適切な対策を対策を講じることが利益率の向上に直結します。

(1)現場のデジタルアレルギーをどう解消するか

経営者が高度なシステムを導入しても、現場で運用されなければその投資は埋没費用(サンクコスト)と化します。このため、デジタルアレルギーの解消は、収益構造に直結する経営課題として位置づける必要があります。

そのうえで、抵抗を生む要因を分解すると「操作負荷」「業務変化への不安」「運用定着までの負担」に整理できます。これらは、以下のように導入設計そのものを見直すことが有効です。

操作の極限的な簡略化「ボタン3回で日報が完結する」レベルまで機能を削ぎ落としたインターフェースを選定する
段階的な機能拡張最初は「GPSをONにするだけ」の動態管理から始め、習慣化に合わせて日報、配車最適化へと順次機能を広げる
管理側による伴走型導入初期段階は管理者が入力を代行し、システムの利便性を管理側が先に体感した上で、慣れたドライバーから順次移行させる

これらの対応により、システムは既存業務を支える仕組みとして定着しやすくなります。結果として、データの蓄積と活用が可能となり、生産性向上施策の実行精度が高まります。

(2)荷主との力関係と不当な付帯作業への対策

令和5年度の経営分析報告書で平均営業損益率が0.6%と示される通り、多くの運送事業者が極めて厳しい状況にあります。原価上昇分を運賃に転嫁し、不当なコスト負担を解消するためには荷主交渉が避けて通れない場合があります。

もし荷主企業から不当な金額・対応を受けている場合には、以下のアクションが有効です。

制度的背景の理解国土交通省の「トラック・物流Gメン」による監視体制や、改正物流効率化法で荷主に課された努力義務を理解し、交渉の根拠とする。
客観的データの蓄積荷待ち時間、荷役等の附帯作業の工数、走行距離に対する実車率などの運行実態をデジタルデータで記録する
原価管理の徹底燃料油脂費比率や人件費比率を把握し、荷主別・路線別の損益を明確化する

公益社団法人全日本トラック協会の指針においても、デジタコ等の活用による「運行の見える化」は、荷主との適切なパートナーシップを再構築するための戦略的投資と位置づけられています。

参考:https://jta.or.jp/wp-content/themes/jta_theme/pdf/rodo/hatarakikata/actionplan_kaisetsu.pdf
参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk4_000116.html

参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk4_000116.html

(3)ROI(投資対効果)の考え方を整理する

運行管理システムの導入検討においてコストが不透明という懸念は、定量的な試算を経て経営判断へと昇華させる必要があります。代表的なコスト削減・収益向上効果を試算すると次のような構図が浮かびます。

前提コスト(月)改善施策改善率改善額(月)
燃料費1,500万円実車率向上・ルート最適化5%75万円
残業代500万円拘束時間の適正化10%50万円
事務コスト(配車・請求等)200万円自動化20%40万円
合計165万円

加えて、フルコスト原価を根拠にした荷主交渉が1件でも成功し、月5万円の運賃改善が10社で実現すれば月50万円の収益改善が加わります。システムの月額費用が50〜100万円規模であれば、ROIは十分に正当化できる水準です。

6.まとめ

2024年の時間外労働規制は、運送業の経営モデルをデータドリブンへと転換させる最大の外圧です。走れる時間が制限された今、「どの時間に、どの車両で、どの荷主のどの運行を行うか」という配車の意思決定の質が、そのまま収益の差となって現れます。

この「収益を最大化する配車判断」の強力な武器となるのが、五十鈴株式会社の「次世代運行管理システムAIR」です。日々蓄積されるデータから、車両ごとの稼働効率や荷主別の利益率を可視化する分析レポートを簡単に生成し、どの運行が本当に利益を生んでいるのかを瞬時に見極められます。
データ経営への転換を確実なものにして、運送業の生産性向上を実現させたい場合にはぜひご相談ください。

監修者

10年にわたる物流会社での事務経験を持ち、現場実務に精通。2024年に貨物運行管理者資格を取得し、法令遵守と実務の両面から運行管理を支援しています。

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