環境負荷の低減や資源循環の実現に向けて、製品設計の段階から環境を考慮する「エコデザイン」が注目されています。さらに製品単体だけでなく事業モデルやサプライチェーン全体を循環型に転換するサーキュラーデザインも広がりを見せています。
本記事では、エコデザインとサーキュラーデザインの違いや関係性を整理したうえで、具体的な事例をわかりやすく紹介します。
1.エコデザインとは?サーキュラーデザインとの違い

まずはエコデザインの定義と、混同されやすいサーキュラーデザインとの違いを解説します。
(1)エコデザインとは?経済産業省の定義をもとに紹介
エコデザインとは、製品やサービスの設計段階から環境配慮を組み込み、ライフサイクル全体で環境負荷を低減することを目的とした設計アプローチです。
原材料の調達、製造、流通、使用、廃棄やリサイクルに至るまでを対象とし、省エネルギー、資源効率の向上、3R(削減・再使用・再資源化)、有害物質の削減といった要素を統合的に考慮します。
参考:https://www.meti.go.jp/press/2022/12/20221220001/20221220001-3.pdf
参考:電機業界における環境配慮設計(エコデザイン)の取組み|日本電機工業会
(2)サーキュラーデザインとの違い
サーキュラーデザインとは、製品やサービスを、使用後も資源として循環可能な形で設計し、資源効率と価値の最大化を同時に実現する設計思想です。エコデザインとサーキュラーデザインの違いは、以下のようにまとめられます。
| エコデザイン | サーキュラーデザイン | |
|---|---|---|
| 定義 | 製品やサービスの設計段階から環境負荷を低減することを目的とした設計手法 | 製品やサービスを資源循環の仕組みに組み込み、使用後も資源として循環可能に設計する手法 |
| 主な目的 | 環境負荷の低減(省エネ、廃棄物削減、有害物質の削除など) | 資源の循環利用と価値の最大化(再利用・再資源化・長寿命化など) |
| 対象範囲 | 製品・サービス単体のライフサイクル | サプライチェーン全体や事業モデルを含む広い循環システム |
| 設計の視点 | 環境影響を最小化する「配慮」 | 廃棄物を出さないことを前提に「循環システムを設計」 |
| 具体的アプローチ | 省エネ設計、リサイクル可能素材の活用、環境配慮型パッケージ | 分解・修理・アップグレード性、リースやシェアリング、回収・再資源化ループ |
| 国際規格との関係 | IEC 62430を基にJIS Q 62430として規格化 | EUのエコデザイン指令や循環経済政策と連動し、より広域的に展開 |
エコデザインが「環境負荷を減らすための配慮」であるのに対し、サーキュラーデザインは「資源循環を前提としたシステム設計」である点です。つまり、製品単体の改良にとどまらず、事業モデルやバリューチェーン全体をどう設計するかという発想が求められます。
参考:https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/resource_circulation/pdf/003_07_00.pdf
(3)エコデザインとサーキュラーデザインの関係性
エコデザインは「環境への配慮を組み込む設計の基礎」であり、サーキュラーデザインは「資源が循環する社会を実現するための拡張的な設計」と位置づけられます。両者を組み合わせることで、企業は製品レベルでの環境負荷削減だけでなく、事業全体での資源効率や価値創出を実現できます。
特に、エコデザインで培った省エネ・リサイクル配慮の知見を基盤に、サーキュラーデザインを導入することで、持続可能なビジネスモデルへの移行が加速します。
2.エコデザイン商品の事例10選

(1)味の素グループ|紙パッケージの採用

味の素グループの代表的な取り組みが「味の素®」や「うま味だし・ハイミー®」で採用された紙主体の新パッケージです。
これは、製品設計段階から環境配慮を組み込むエコデザインの考え方に基づいて行われました。開発にあたっては、湿気や輸送中の破れ、固まりやすさといった課題を解決するため、複合素材を組み合わせ、20回以上の試作と多様な性能試験を実施しています。結果として、素材の50%以上を紙に切り替えることで、石油由来プラスチックの使用量を約34%削減しました。
これらの取り組みは、素材の選定・機能・廃棄後のリサイクル性を同時に考えるエコデザインの知見を基盤としつつ、栽培プロセス全体で資源の循環利用(クローズドループ)を目指すサーキュラーデザインの要素を含んでいる好例です。製品単体の改良にとどまらず、バリューチェーン全体を循環システムとして設計する、両デザイン思想を統合した先進的な事例といえます。
(2)カゴメ株式会社|植物由来素材の採用等の多面的な取り組み

カゴメ株式会社は、飲料・生鮮農産物の分野で環境負荷を抑えるエコデザインを多面的に実践しています。紙パック飲料では、FSC®認証紙パックを採用し、森林の持続可能な管理を支援するほか、植物由来素材のキャップ・ストローへの切り替えを2020年4月から進め、ストローは植物由来素材を一部配合したものに順次置き換えられています。これは、原材料の調達から製品の使用・リサイクル性までを考慮したエコデザインの基盤となる取り組みです。
商品包装だけでなく、容器印刷にもグリーン電力を導入し、生鮮トマト栽培においては温室の熱源に環境配慮型のエネルギーを使い、CO₂の回収利用や太陽光発電の電力活用、雨水や培地の循環利用、栽培副産物の堆肥化なども実施しています。
これらの取り組みは、素材の選定・機能・廃棄後のリサイクル性を同時に考えるエコデザインの知見を基盤としつつ、栽培プロセス全体で資源の循環利用(クローズドループ)を目指すサーキュラーデザインの要素を含んでいる好例です。製品単体の改良にとどまらず、バリューチェーン全体を循環システムとして設計する、両デザイン思想を統合した先進的な事例といえます。
(3)日清食品株式会社

日清食品グループは、「環境に配慮した容器包装設計の基本指針」を策定し、包装資材や製造プロセス全体でサーキュラーエコノミーの視点を取り入れたエコデザインを実践しています。
プラスチック容器包装の軽量化・減容化・包材点数の削減を図るとともに、再使用可能な容器の提案や詰め替え商品の開発、そして「ECOカップ」や「バイオマスECOカップ」では石化由来プラスチック使用量を半減、CO₂排出量も低減しています。また、プラスチックフタ止めシールを廃止するなどの改善で年間数十トンのプラスチック使用を削減した実績があります。
工場内では、製造工程での製品ロス削減や食品残渣の肥料化を含む廃棄物管理を徹底し、国内工場での再資源化率99.5%以上を2030年度まで維持する目標を掲げています。
この事例は、製品の軽量化や素材改良といったエコデザインの知見を基盤とし、それを製造プロセス全体や廃棄物・副産物まで循環させるシステム設計へと拡張する、統合的なアプローチの好例です。素材・構造・事業モデル・製造プロセスの全体を見直すことで、持続可能なビジネスモデルへの移行を加速させています。
(4)日本水産株式会社|独自エコマークの設定とパッケージ改良

日本水産(ニッスイ)は、2021年3月からは、環境配慮の方針を消費者にわかりやすく示すために、ニッスイ独自のエコマーク「みらいの海へ」を、家庭用食品・常温食品・業務用食品・水産品の新商品およびリニューアル品(計49品)に表示開始し、既存商品の順次対応も進行中です。
このマークの表示には、「トレーのプラスチック使用量を従来比○%削減」などの具体的な数値情報を併記することがルール化されています。
パッケージ形状の改良により、重さを従来の21gから17gにまで軽減し、プラスチック使用量を約19%削減するなど具体的な成果を挙げています。
ニッスイのこの事例は、単に素材を置き換えるだけでなく、包装設計・機能・使い勝手を一体で見直すことで環境配慮設計(エコデザイン)と、パッケージを通じた資源循環や使用後のリサイクル可能性を意識したサーキュラーデザインの両要素を備えています。
これは、製品単体の環境性能改善(エコデザイン)を、消費者の行動や資源システム全体へ結びつける(サーキュラーデザイン)ための情報開示の仕組みと組み合わせた、先進的な取り組みと言えます。
(5)森永製菓株式会社|設計段階から素材の選定や使用量の見直し

森永製菓株式会社は、プラスチック容器・包装の軽減と循環利用を重点課題としており、設計段階から素材の選定や使用量の見直しを行うことでエコデザインを実践しています。
さらに、包装材の改良を含む環境配慮設計促進と並行して、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を通じて気候変動リスクや機会の分析も始めており、取締役会に報告されるサステナビリティ委員会を設けてガバナンス面での強化も図っています。
これらの施策は、単なる製品の環境配慮(エコデザイン)にとどまらず、素材調達、環境マネジメントシステム、情報開示、そして企業統治といった事業モデル全体に資源循環と環境負荷低減を戦略的に取り込むサーキュラーデザインの設計思想を反映しています。
具体的には、設計段階での素材見直し(エコデザイン)の成果を、TCFDによる情報開示とガバナンス(サーキュラーデザインを含む持続可能なシステム設計)によって支えるという、企業全体での統合的な取り組みの好例です。
引用:https://www.morinaga.co.jp/company/sustainability/environment/climate-change.html
(6)カルピス株式会社|素材選定・包装設計・物流設計・消費者行動促進を含む多面的なアプローチ

カルピスを含むアサヒ飲料グループは、三つの戦略骨子を掲げ、飲料包装や資源循環に関する具体的なエコデザイン・サーキュラーデザインの取組を実践しています。
例えば、PETボトルが再びペットボトルとして循環し続ける社会を目指す「ボトルtoボトル」プロジェクトや、ラベルレスやレーザーマーキングによる「完全ラベルレス」の実現によって、資源使用量を抑える工夫をしています。さらに、「シンプルecoラベル」の導入により、印刷面積や紙の使用を削減し、視認性を保ちながらも資源負荷を低くする工夫が見られます。
この事例は、単なる素材選定・包装設計(エコデザイン)だけでなく、物流設計、そしてリサイクルのしやすい製品を通じて消費者行動を促進するシステムを設計しています。このように、製品単体の改良に留まらず、バリューチェーン全体で「資源が循環するシステム」を設計するサーキュラーデザインへの拡張が見える、統合的な取り組みの好例です。
(7)東罐興業株式会社|環境配慮型製品の展開
東罐興業は、製品のライフサイクル全体を視野に入れた環境配慮設計を「環境配慮型製品」のラインナップで具体化しています。
原料には間伐材を使用した紙コップや、再生パルプを配合した紙コップなど未利用資源・再利用資源を活用する製品を展開するほか、食品用複合容器「2LPカップ」や「HBカップ」では、紙とプラスチックを接着剤なしで複合化し、使用後に紙とプラスチックを分別しやすく設計しています。
こうした幅広い製品設計の改善は、エコデザインの基本である「環境負荷の低減」を押さえるだけでなく、サーキュラーデザインの核となる要素である「使用後の再資源化・循環性・分別容易性」が意図的に組み込まれています。単なる環境配慮に留まらず、リサイクルの仕組みに製品を組み込むための構造設計を行っている点が、両デザイン思想を統合した好例と言えます。
(8)株式会社吉野家|プラスチック削減と資源循環の推進

株式会社吉野家ホールディングスは、エコデザインとサーキュラーデザインの両面からプラスチック削減と資源循環の推進を進めています。
同社は「特定プラスチック製品」の使用量を2020年度比で2030年度末までに原単位で50%削減する目標を掲げ、レジ袋やテイクアウト容器を中心に素材の切り替えを実施しています。これは、製品(容器)の設計段階で環境負荷を低減するエコデザインの基本を徹底し、それを定量的な削減目標で管理するアプローチです。
さらに、東京工場では太陽光発電設備を設置し、年間195トンのCO₂削減を達成するなど、製造段階でも環境負荷低減を徹底しています。こうした取り組みは、単なる素材の工夫(エコデザイン)にとどまらず、製造・物流までバリューチェーン全体に広げています。明確な削減目標を掲げ、進捗を数値で管理することで、資源の投入から排出までのプロセス全体を資源効率の良いシステムへと移行させる、サーキュラーデザインの戦略を統合的に推進している好例です。
参考:https://www.yoshinoya-holdings.com/csr/esg_environment/waste_reduction/
(9)積水化成品工業株式会社|環境との共生を目指すソリューション型事業の展開

積水化成品工業は、自社を「プラスチックス・ソリューション・カンパニー」と位置づけ、発泡技術や重合技術のノウハウを活かしながら、環境との共生を目指すソリューション型事業を展開しています。
「サステナブル・スタープロダクト(環境貢献製品)の創出と事業拡大」「気候変動対応」「環境負荷低減」を、企業のマテリアリティ(経営上重要な課題)として明確に定義しており、SKG-5R(Reduce/Reuse/Recycle/Replace/Re-design)という原則を掲げ、製品の素材軽量化・再生素材利用などを進めているほか、汚染防止・資源循環に関する取り組みを環境方針の一環として位置づけています。この5R原則は、製品ライフサイクル全体での環境負荷低減(エコデザイン)を体系的に推進する強力な基盤です。
これらの取り組みは、素材選定・設計段階での環境貢献を意図的に織り込むという点で、単なるエコデザインを超えて、使用後の循環性や資源の有効利用も視野に入れたサーキュラーデザインに近いアプローチが見られる好例です。「Re-design(再設計)」を原則に加えることで、製品単体の改良に留まらず、資源循環を実現するためのソリューション型事業として、より広範なシステム設計を目指している点が特徴的です。
(10)住友ベークライト株式会社|資源循環・廃棄物削減・汚染防止に関する多面的な取り組み

住友ベークライトは、環境方針の中で資源循環・廃棄物削減・汚染防止を重視し、マテリアルロスの低減やリサイクルなどの取り組みを具体的に進めています。
製造過程で発生する原材料や副産物の無駄を把握し、削減する活動を行っていることに加え、廃棄物については国内事業所合同で廃掃法に基づいた処理業者の現地確認、マニフェスト発行による発生量の管理と集計を継続し、再利用・再資源化可能なものの回収・活用を推進しています。これは、製造プロセスというライフサイクルの初期段階から環境負荷を最小化するエコデザインの考え方を徹底し、厳格な管理体制を構築している成果です。
海洋プラスチック問題にも対応しており、サプライチェーンを超えた連携組織(CLOMA:クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス)に参画することで、プラスチック製品の設計段階からリサイクルや3R(リデュース・リユース・リサイクル)を意識した素材選定を含めた管理を強化しています。
この事例は、自社の製造プロセスにおける環境負荷低減(エコデザイン)を基盤としつつ、業界団体との連携を通じて、製品が市場に出た後の循環システム全体(サーキュラーデザイン)を設計しようとする、統合的なアプローチの好例です。
3.サーキュラーデザインの事例3選

従来のエコデザインが省エネや廃棄物削減といった環境負荷の低減を主眼にしていたのに対し、サーキュラーデザインは「使い終わった後も資源として再利用できる構造や仕組み」を組み込む点に特徴があります。
ここでは、企業が実際に取り組んでいるサーキュラーデザインの具体的な事例を紹介します。
(1)アミアズ株式会社|アパレル商品の循環利用

アミアズの“Withal”プロジェクトは、不要になった衣服を可能な限りムダなく再利用・再資源化することを目的に、繊維の循環設計を徹底して取り入れたモデルです。
回収された衣服は、単一素材ならば綿・ウール・リネン・ポリエステル・レーヨン・シルク・カシミヤなどに仕分けられ、ボタンやファスナーなどの付属は除去され、反毛や粉砕を経て繊維原料に加工され、アパレル商品以外にも、家具や内装材、ディスプレイ什器、リサイクルボードにも生まれ変わっています。
このモデルでは再生素材利用や付属品の除去、混率に依存しない回収システムなど、サーキュラーデザインの要素が設計段階から組み込まれていることが特徴です。
(2)株式会社エフテック|設計段階のアプローチやCO₂排出量の削減

株式会社エフテックは、2023年にサステナビリティ推進部を設置し、2050年カーボン・ニュートラルの実現に向けたロードマップを策定、社内外の各部門が協働して具体的なCO₂排出量削減目標を設定し始めています。
設計段階の改善として、強度・耐衝撃性・剛性といった性能を維持しながら部品の軽量化を徹底し、製造設備の省エネ化や再生可能エネルギーの利用拡大にも注力することで、CO₂排出量を抑える工場運営の強化がなされています。
これらの取り組みは、性能・コスト・耐久性を犠牲にせずに資源使用を抑え、設計・製造・調達・運営にわたって環境負荷低減を追求する点で、サーキュラーデザインの実践的なモデルと言えます。
(3)ケイワート・サイエンス株式会社

ケイワート・サイエンスの「もみ殻活用プロジェクト」では、日本国内で年間約200万トン発生し、処分コストもかかる未利用資源・もみ殻を対象に、人・動物・植物・地球環境という複数の視点から循環を意識した活用を試みています。
このプロジェクトの強みは、不要資源とされがちな農業副産物を原料とし、素材分離・機能化・用途多様化のプロセスを設計段階から組み込んでいる点にあります。
製品としての用途が限定されず、植物用ミネラル、水耕栽培、動物飼料、化学原料などの用途に展開できるため、使用後に廃棄されることが前提とされた設計ではなく、「始めから価値が循環する」構造を持っていることがサーキュラーデザインの本質に合致します。
4.エコデザインから発展したサーキュラーデザイン戦略とは

サーキュラーデザインは、エコデザインの延長線上にありながら、その適用範囲を大きく広げた戦略的アプローチとしても注目されています。
ここでは、サーキュラーデザインを推進するうえで特に重要となる4つの視点を解説します。
これらの視点は、企業の競争力やブランド価値を高める戦略へと発展させる鍵となります。
(1)プロダクト単位から事業モデル全体への拡張
従来のエコデザインは「製品の省エネ化」や「リサイクル可能素材の採用」といった個別施策が中心でしたが、サーキュラーデザインでは、使用後の回収や再資源化の仕組みを自社のビジネスモデルに組み込み、設計から販売、利用、廃棄、再利用までを一体的に設計することが求められます。
製品の「つくる・売る」だけではなく「循環させる」までをビジネスに組み込むことで、環境負荷の低減と新たな収益機会の創出を同時に実現できる点が、事業モデル全体への拡張の意義といえるでしょう。
【事例】サーキュラーエコノミーリース|芙蓉総合リース
芙蓉総合リース株式会社が提供する「サーキュラーエコノミーリース(CEリース)」は、残価設定とリース満了時の物件返却条項を活用し、サーキュラーエコノミーを推進するリースモデルです。
使用価値を維持した状態で返却された製品を、芙蓉リースが確実にリユース・リサイクルを行い、製品寿命の長期化と資源再生の向上を図ります。
顧客はCEリースを利用することでサーキュラ―エコノミーの製品ライフサイクルに参加し、その推進に貢献できます。
現在、集荷対象物件は自動車や医療機器が中心ですが、ノウハウ集結により取り扱い品目の拡大に努めています。
これは、ファイナンスモデルを通じて資源循環を組み込み、「循環型社会への貢献」と「収益機会の拡大」の同時実現を目指す、先進的な事例です。
参考:芙蓉リースが提供するサーキュラ―エコノミーリース(CEリース)|循環経済パートナーシップ
(2)リース・シェアリング・リユースの活用
サーキュラーデザインの実現で代表的な手段がリース・シェアリング・リユースの活用です。
これらの仕組みは、単なる環境対策ではなく、定額課金やサービス契約を通じた新たな収益モデルを構築できる点でも企業にメリットがあり、サーキュラーデザイン戦略の中核を成す要素といえます。
| 項目 | 内容 | 効果 |
|---|---|---|
| リース | 企業が製品の所有権を持ち、利用者に貸し出す。使用後は回収・メンテナンス・部品交換が可能。 | 製品寿命の延長、資源の再資源化が容易に |
| シェアリング | 複数の利用者が1つの製品を共有する仕組み。自動車・家電・オフィス什器などで活用。 | 稼働率向上、製品点数の削減、資源効率の改善 |
| リユース | 製品を廃棄せず、中古市場や回収プログラムで再利用。 | 資源投入の最小化、新たな付加価値の創出 |
たとえば、自動車メーカーがカーリースやカーシェアリングを積極的に導入して利用効率を高めたり、アパレル企業が古着の回収と再販を組み合わせてリユースを促進したりする事例は、こうした仕組みが単なる環境対策にとどまらず、新たなビジネスモデルの創出につながることを示しています。
【事例】ファッションシェアリングサービス|エアークローゼット
「airCloset」は、顧客が服を購入せずレンタルで楽しむ定額制のサブスクリプションサービスを提供しています。
これは、製品の「所有」から「サービス利用」へ転換させる、サーキュラーデザインの中核となるPaaS(Product as a Service)モデルです。
お客様から返却された洋服は、個品ごとに検品・クリーニング・メンテナンスを徹底的に行い、商品価値を維持します。
その後、次のコーディネートとして別の顧客へと循環させています。
これにより、衣類が廃棄されるサイクルを断ち切り、製品寿命を最大限に延長させることが可能です。
このシステムは、リユースの仕組みをビジネスモデルの根幹に組み込むことで、衣服廃棄の削減と新たな収益創出を両立させている好事例です。
参考:脱炭素と衣服廃棄削減を実現する普段着のファッションシェアリングサービス|循環経済パートナーシップ
(3)サプライチェーン全体での循環設計
サーキュラーデザインを実効性あるものとするためには、製品やサービス単体の工夫にとどまらず、調達から生産、流通、使用、回収に至るまでサプライチェーン全体を見据えた以下のような設計が不可欠です。
| サプライチェーン段階 | 循環設計の取り組み | 効果 |
|---|---|---|
| 原材料調達 | 再生可能資源やリサイクル素材を積極的に採用 | 資源枯渇リスクの低減、持続可能な調達の確保 |
| 製造 | エネルギー効率の改善、廃棄物発生の最小化 | 環境負荷の削減、コスト効率の向上 |
| 流通 | 包装材の見直し、低炭素型の輸送手段を採用 | CO₂排出量の削減、物流効率の改善 |
| 利用後(回収・再資源化) | 回収ルートやリサイクルネットワークを構築 | 使用済み資源の再投入、循環型経済の実現 |
こうしたアプローチには、異業種間の協業が欠かせません。
静脈産業と動脈産業が一体となり、資源の循環を前提とした設計や回収の仕組みを共有することで、初めてサプライチェーン全体の最適化が可能になります。企業単独では限界のある領域を超え、業界横断的な連携を通じて持続可能な循環型社会の実現につなげていくことが重要です。
【事例】競合連携による水平リサイクルの推進|ユニリーバ・ジャパン、花王、P&Gジャパン、ライオン
日用品メーカーであるユニリーバ・ジャパン、花王、P&Gジャパン、ライオンなどが、競合の枠を超えて協働でプラスチック資源循環に取り組んでいます。
この取り組みは、自治体や小売店(イトーヨーカドー、ウエルシアなど)と連携し、使用済みのプラスチックボトルや詰め替えパックの店頭回収システムを共同で構築・運営するものです。
回収された容器は、ボトルからボトルへと再利用する水平リサイクルの技術検証とシステム構築に活用されます。
これは、製品を作る動脈産業が小売・回収インフラと連携することで、資源の利用後まで責任を持ち、サプライチェーン全体を循環型に設計し直す試みです。
この協業により、単独企業では困難だったリサイクル率の向上と低コストな回収ルートの確立を目指しています。
参考:みんなでボトルリサイクルプロジェクト-ボトル容器からボトル容器のリサイクルに向けて|循環経済パートナーズ
(4)ESG・脱炭素と統合する経営アプローチ
製品設計や素材選定の工夫を単発の環境対策にとどめず、ガバナンスや投資判断、リスクマネジメントに組み込むことで、企業価値の向上と持続的成長につながります。
たとえば、TCFDやSBTといった国際的な枠組みに基づき、温室効果ガス削減目標を明確にし、それを製品開発やサプライチェーン戦略に反映させることは、サーキュラーデザインの成果を定量的に示す手段となります。
ESGと統合した経営アプローチをとることで、環境対応を「コスト」ではなく「新たな価値創出」として捉え直すことが可能となり、投資家や顧客を含むステークホルダーからの信頼強化にも直結します。
【事例】SBTに整合した製品ライフサイクルでのCO₂削減|コニカミノルタ
コニカミノルタは、サステナビリティを経営の中核に据え、「2030年までに製品ライフサイクルにおけるCO₂排出量を2005年度比で60%削減」というSBT(1.5℃水準)に整合した目標を掲げています。
この脱炭素目標を達成するため、製品の回収・リユース・リサイクルを徹底し、資源循環を推進しています。
これは、長期的な環境目標からのバックキャスティングにより、サーキュラーデザインを単なる環境対策ではなく、GHG排出量削減に不可欠な事業戦略として位置づけていることを示します。
具体的には、製品の長寿命化と再生素材の利用拡大により、資源効率と環境負荷低減を両立させています。
このように、環境課題の解決を経済合理性のある事業を通して実行することで、企業の持続的な成長に繋げています。
5.まとめ
エコデザインから発展したサーキュラーデザイン戦略は、個別の製品改善にとどまらず、事業モデル全体、サプライチェーン、さらにはESGや脱炭素といった経営戦略全体へと統合されることで、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を両立させる強力な推進力となります。
これらの戦略を効果的に実行することで、企業は環境負荷の低減と経済的利益の創出という二重の目標達成を目指すことが可能となるでしょう。


