建築業界は資源価格の高騰や廃棄物増加、環境規制の強化といった課題に直面しています。従来型の「つくって捨てる」モデルでは持続的な成長は難しく、サーキュラーエコノミーの導入が不可欠です。
この記事では、その基本概念から導入メリット、実践方法、国内外の成功事例までを解説し、企業の競争力向上と持続可能性を両立するための道筋を示します。
こうした建築・建設プロセスの変革を、資源の最適化という側面から支援するのが、五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」です。現場から出る廃棄物の削減や建材の再価値化を起点に、環境負荷を抑えたサステナブルな資材活用や構造的な企業変革を強固に支援します。規制対応を機に、コスト削減とブランド価値向上を両立する「次世代の循環型経営」を構築したい方は、ぜひお気軽にご相談ください。
1.建築のサーキュラーエコノミーとは?循環型建築・循環型社会との関係性も解説

サーキュラーエコノミーを建築分野で実現するとは、従来の「大量生産・大量消費・大量廃棄」という直線的な経済モデルから転換し、資源を循環させながら活用していくことを意味します。
建築業界では、建材の調達から設計、施工、運用、解体に至るまでのライフサイクル全体で資源効率を高めることにより、廃棄物を減らし、環境負荷を最小限に抑えることで、サーキュラーエコノミーの実践が可能となります。
ここでは、この考え方をより具体的に理解するために、建築業界におけるサーキュラーエコノミーや、循環型建築・循環型社会との関係性も解説します。
(1)建築におけるサーキュラーエコノミーの基本概念と循環型建築の考え方
サーキュラーエコノミーは、従来の「つくる→使う→捨てる」という線形経済モデルからの転換を目指すものです。建築分野では、建材の調達・施工・使用・解体までの全ライフサイクルにおいて資源を循環させ、廃棄物を最小限に抑える仕組みづくりが求められています。以下の表では、その視点と内容をご確認いただけます。
| 視点 | 内容 |
|---|---|
| 線形経済からの脱却 | リサイクルやリユースにとどまらず、設計段階から「解体しやすい構造」「長寿命の建材」を採用し、使用後も資源として再活用できる仕組みを整える。 |
| 建築における資源循環の全体像 | 資材の再利用、建物の用途転換(アダプティブリユース)、再生可能エネルギーの活用を組み合わせ、ライフサイクル全体で資源価値を最大化する。 |
つまり、建築業界におけるサーキュラーエコノミーは、単なる「廃棄物削減の運用改善」ではなく、設計思想そのものを循環型に変えることに本質があります。
参考:GX・サーキュラーエコノミー (くらし・まちづくり分野)について|住宅生産団体連合会
(2)建築特有の課題と転換の必要性
建築業界は、その構造上、資源消費と廃棄物の発生が極めて大きい分野です。持続可能な発展を実現するためには、従来の線形経済から循環型建築への転換が不可欠となっています。
| 課題 | 内容 |
|---|---|
| 建材の大量消費と廃棄 | 大規模プロジェクトでは鉄・木材・コンクリートが大量に消費され、解体や改修で同規模の廃棄物が発生。多くがリサイクルされず、埋め立てや焼却処分に回されている。 |
| 建物寿命の短さと再利用率の低さ | 日本の建物は欧米と比べて平均寿命が短く、スクラップ&ビルド型が一般的。資材再利用は限定的で、資源枯渇リスクや環境負荷を増大させている。 |
| 高エネルギー依存型の産業構造 | 建材調達や加工には膨大なエネルギーが必要で、温室効果ガス排出量削減の観点から改善が急務。 |
これらの状況を踏まえると、資源を循環させる仕組みを業界全体で導入することは「選択肢」ではなく「必須条件」であり、サーキュラーエコノミーへの転換は喫緊の課題です。
【事例】Reビル事業|三菱地所レジデンス
三菱地所レジデンスが推進するReビル事業は、老朽化した建物を解体・新築するのではなく、リノベーションによって再生し、建物の長寿命化と再利用を実現する事業です。
スクラップ&ビルドからの脱却: 短いサイクルで建物を建て替え続ける従来のビジネスモデルではなく、既存の建物を「長く、大切に使う」というサーキュラーエコノミーの考え方に基づいています。
- 用途転換による再利用: かつて社宅だった建物を共同住宅に、オフィスビルをシェアオフィスや商業施設に転換するなど、時代のニーズに合わせて建物の用途を柔軟に変更し、再利用を可能にしています。
- 街の景観維持と価値向上: 老朽化して放置されがちな建物を再生することで、街並みの景観を保ち、地域全体の価値を高める役割も果たしています。
参考:「Reビル 事業」を三菱地所グループ全体で拡充 三菱地所グループ ビルリノベーション事業を強化 ~拡大する「築古ビルマーケット」に対応~|三菱地所レジデンス
(3)建築業界における循環型アプローチとサーキュラーデザインの実践
サーキュラーエコノミーを建築業界で実現するには、単なる廃棄物処理の改善では不十分です。建材の調達から設計・施工・維持管理・解体に至るまで、建築物のライフサイクル全体を視野に入れた以下のような循環型アプローチが求められます。
| フェーズ | アプローチ内容 |
|---|---|
| 設計段階(サーキュラーデザイン) | 解体やリユースを想定したモジュール化や分解しやすい構造を採用し、資材の再利用を可能にする。 |
| 施工段階 | 建設現場での廃棄物発生を抑制し、分別や再資源化を徹底する。 |
| 維持管理段階 | 建物の長寿命化を図り、資源投入や廃棄の頻度を削減する。 |
| 解体段階 | 再利用・リサイクル可能な形で資材を回収し、循環サイクルに戻す。 |
このように、建築物のライフサイクル全体で循環を組み込むことが、資源利用効率の最大化と環境負荷の低減につながります。
【事例】設計段階での好事例|積水ハウス
積水ハウスが推進する「循環する家プロジェクト」は、住宅を未来の資源と捉え、建築から解体、再利用に至るまでのライフサイクル全体で資源を循環させることを目指す取り組みです。
このプロジェクトの中核をなすのが「House to House」という考え方です。「家がまた誰かの家に生まれ変わる」ことを目指し、解体された住宅から発生する部材を再利用し、新しい住宅に活用する循環システムを構築しようとしています。これは、従来の「つくる→使う→捨てる」という線形経済モデルから脱却し、リユース・リニューアブル(再生可能)・リサイクル部材だけで構成された家づくりを目指すものです。
- 資源循環センター: 全国に設置された21か所の「資源循環センター」で、建設現場から発生した廃棄物を回収し、最大80種類にまで細かく分別しています。
- サプライヤーとの連携: 住宅を構成する3万点以上の部材について、サプライヤーと協力して再利用可能な建材の開発を進めています。すでに、一部の建材では水平リサイクル(同じ製品の原材料として再利用すること)が実現しています。
- 長寿命化の追求: 「スムストック」のように、耐久性やメンテナンス性を高めることで、建物の寿命を延ばし、建て替え頻度を減らす取り組みも同時に進めています。
このプロジェクトは、住宅業界の構造的な課題に挑み、2050年の実現に向けて、業界全体でのサーキュラーエコノミーへの移行を牽引していくことを目指しています。
参考:家がまた誰かの家に生まれ変わる「循環する家(House to House)」
2050年までの実現へ向けた具体的なアクションを住宅業界ではじめて宣言
~住宅におけるサーキュラーエコノミー移行を目指す~|積水ハウス
(4)循環型建築・循環型社会との関係性
建築物のライフサイクル全体に循環を組み込むことは、単なる建設プロセスの効率化にとどまりません。循環型建築の実践は、社会全体を持続可能にする「循環型社会」の実現に直結しています。
| 視点 | 関係性 |
|---|---|
| 資源循環の拡張 | 建築で発生する膨大な資材・廃棄物を循環させることは、社会全体の資源利用効率を押し上げる。 |
| 環境負荷削減 | 建築業界はCO₂排出や廃棄物発生の大きな割合を占めるため、循環型建築が広がることで社会全体の環境目標達成に貢献できる。 |
| 都市と地域への波及効果 | 建築における再生素材の利用や再生可能エネルギーの導入は、地域循環型経済や地産地消の拡大につながる。 |
| 規制・政策との整合性 | 国が推進する循環型社会形成推進基本計画や脱炭素施策と連動し、建築業界は政策対応の先進事例を示せる。 |
つまり、建築分野でのサーキュラーエコノミーの導入は、「循環型社会」全体の実現に欠かせない基盤です。循環型建築が定着することで、都市の持続可能性が高まり、産業全体の競争力や環境対応力も強化されます。
【事例】資源循環の拡張の好事例|LIXIL
建材メーカーのLIXILは、自社の製品を起点として、建設業界全体の資源循環を促すプラットフォームを構築しています。
- 資源循環の拡張: 従来の建材製造・販売に加え、解体現場から発生する窓枠や外壁材などのプラスチック廃材を回収し、自社製品の原材料として再利用する循環システムを構築しています。この取り組みは、建設現場の廃棄物をリサイクル可能な資源へと変えることで、業界全体の資源利用効率を押し上げています。
- 規制・政策との整合性: 建築資材のサプライチェーン全体で資源を循環させるこの取り組みは、国が推進するプラスチック資源循環戦略とも整合しており、業界の先進事例となっています。
2.建築業界におけるサーキュラーエコノミー導入のメリット(ゼネコン・不動産業界視点)

建築業界におけるサーキュラーエコノミーの導入は、環境対策の枠を超え、ゼネコンや不動産業界にとっての成長戦略そのものに直結します。ここからは、導入によって得られる具体的なメリットを解説します。
(1)資源価格高騰・枯渇リスクへの対応
建築業界では、木材・金属・セメントといった主要資材が、世界的な需給逼迫や地政学リスクの影響で価格高騰しています。さらに、資源の枯渇リスクも現実味を帯びており、従来の大量調達依存型モデルは持続性に欠けています。
この課題を解決するのが、サーキュラーエコノミーに基づく資源循環の仕組みです。
| 取り組み | 効果 |
|---|---|
| 再利用可能な建材の回収と活用 | 解体時の資材を再利用し、新規資材調達コストを抑制。 |
| 再生材や代替素材の積極導入 | リサイクル建材やバイオマス素材を活用し、供給リスクを軽減。 |
| 外部資源調達依存度の低減 | 調達コストの変動リスクを抑え、安定的な供給体制を確保。 |
これらの取り組みを進めることで、資材価格の変動リスクを抑制し、プロジェクト全体のコスト管理と実行可能性を高めることが可能です。
【事例】再利用可能な建材の回収と活用|大林組
大林組は、建設プロセス全体で資源を循環させる取り組みを推進しており、これにより外部からの新規資材調達コストと、それに伴う資源価格の変動リスクを抑制しています。
- 建設資材の再生・再利用: 建設現場で発生するコンクリート塊やアスファルト塊を、現場内や近隣の施設で破砕・選別し、再生骨材として再利用しています。これにより、新しい資材の購入量を大幅に削減しています。
- 建設発生土のリサイクル: 建設工事で発生する土砂を、セメント系固化材などと混合し、新たな埋め戻し材や路盤材として活用しています。この技術により、土砂の最終処分量を減らし、外部からの資材調達を不要にしています。
- 産業廃棄物の分別・資源化: 現場での徹底した分別管理を通じて、木くず、鉄くず、プラスチックなどを高いリサイクル率で資源化しています。特に、マテリアルリサイクル(新しい製品の原材料として再利用すること)に力を入れています。
参考:循環型社会|大林組
(2)建設コスト・運用コスト削減の効果
サーキュラーエコノミーの導入は、建築プロジェクトのコスト構造を抜本的に改善します。建設現場だけでなく、竣工後の運用段階までを含めて費用を最適化できる点が大きな特徴です。
| 廃棄物処理費の削減 | 建設現場で発生する副産物をリサイクルや再利用に回すことで、処分費用を抑制。 |
|---|---|
| 新規資材調達コストの抑制 | 再利用可能な部材や再生材の活用により、原材料価格の高騰リスクを軽減。 |
| 運用・維持コストの低減 | 長寿命設計やメンテナンス性の高い建材採用により、修繕・改修費を長期的に削減。 |
このように、建設段階から運用・維持管理まで含めたライフサイクル全体でのコスト削減が可能となり、経済的な持続可能性を高めることにつながります。
【事例】建設コスト・運用コスト削減の好事例|清水建設
清水建設は、建物のライフサイクル全体を通じて、資源を循環させる独自のサーキュラーエコノミーを構築しており、これによりコストの最適化を図っています。
- 廃棄物処理費の削減: 建設現場で発生する建設発生土を、そのまま資材として再利用するシステムを構築しています。これにより、従来、場外に搬出して埋め立て処分していた土砂の処理費用を大幅に削減しています。
- 新規資材調達コストの抑制: 建設発生土を、路盤材や埋め戻し材として現場内で再利用することで、外部から新規の資材を調達する必要がなくなります。資材価格の変動リスクを回避できるだけでなく、運搬費も削減し、建設全体のコストを抑制しています。
- 長寿命設計と維持管理: BIM(Building Information Modeling)を活用し、設計段階から建物の維持管理や将来的なリノベーションを想定しています。これにより、修繕や改修が必要な箇所を事前に把握し、計画的なメンテナンスを行うことで、突発的な大規模修繕費用を抑えることができます。
- 環境性能向上によるランニングコスト低減: 建物の長寿命化と同時に、高断熱・高気密化や省エネ設備の導入も積極的に行っています。これにより、建物の運用段階での光熱費などのエネルギーコストを長期的に低減し、経済的な持続性を高めています。
(3)脱炭素社会に貢献するサーキュラーエコノミー建築と企業評価の向上
建築業界では、気候変動対策や脱炭素への取り組みが企業評価に直結する時代となっています。環境対応はCSRの一環にとどまらず、投資家や顧客が企業を選ぶ際の重要な基準となりつつあります。
| 取り組み | 効果 |
|---|---|
| CO₂排出量削減への貢献 | サーキュラーエコノミー導入により、資材再利用や廃棄削減を通じて建設プロセス全体の排出量を抑制。 |
| 環境配慮型企業としての信頼獲得 | 脱炭素や資源循環への取り組みは、顧客や取引先からの信頼を高め、ブランド価値を強化。 |
| ESG投資対象としての優位性 | 環境への明確な取り組みは、ESG投資の評価項目に直結し、資金調達や長期的な事業安定につながる。 |
このように、サーキュラーエコノミーの推進は、CO₂削減と企業価値の向上を同時に実現する効果的なアプローチです。
(4)法規制強化とESG投資に備えるサーキュラーエコノミー建築の重要性
世界的に環境規制は年々強化されており、建設業界もその影響を避けることはできません。建設廃棄物の削減目標、リサイクル率の向上、CO₂排出削減に関する新たな規制は、今後さらに厳格化する可能性があります。
サーキュラーエコノミーを導入することは、規制対応とESG投資への適応を同時に進められる有効な手段です。
| 視点 | 内容・効果 |
|---|---|
| 環境規制への先行対応 | 建設廃棄物削減やリサイクル率向上、CO₂削減規制に事前対応し、法的リスクを低減。 |
| 企業の信頼性向上 | 規制順守にとどまらず、持続可能な建築を推進する姿勢が社会的評価を高める。 |
| ESG投資への適合 | 環境・社会・ガバナンスを重視する投資家から高評価を得て、資金調達の幅を拡大。 |
| 長期的な事業安定性の確保 | 投資家や金融機関の信頼を獲得し、事業継続性と競争力を強化。 |
このように、サーキュラーエコノミー建築の推進は、規制対応と投資家からの評価向上を同時に実現し、長期的な事業安定につながります。
【事例】規制強化とESG投資への備え|大和ハウス工業
大和ハウス工業のサーキュラーエコノミーへの取り組みは、規制強化とESG投資への備えを示す好事例です。
- プレハブ工法による資源効率の最大化: 大和ハウス工業は、工場で住宅の部材を生産するプレハブ工法を強みとしています。この工法は、建設現場での端材や廃棄物の発生を最小限に抑え、リサイクルを前提とした製造プロセスを可能にします。これは、今後さらに厳格化されるであろう建設廃棄物の削減規制への先行的な対応であり、環境配慮型企業としての信頼性を高めています。
- 住宅の長寿命化: 長期にわたり高い性能を維持できる住宅を提供することで、建て替えサイクルを伸ばし、資材の消費や廃棄物の発生を抑制しています。同社の住宅が持つ高い耐久性は、長期優良住宅の基準を上回るものであり、法的規制への適合と同時に、顧客からの評価も高めています。
- 「脱炭素経営」と「資源循環」の統合: 大和ハウス工業は、事業活動におけるCO₂排出量削減目標を掲げ、再生可能エネルギーの導入や高効率設備の活用を推進しています。これに加えて、住宅のライフサイクル全体での資源循環を強化することで、脱炭素(E)と資源循環(E)の両面でESG投資家の期待に応えています。
- 主要なESG指数への選定: 同社の持続可能な事業運営は、国内外の主要なESG指数に選定されています。例えば、ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・ワールド・インデックス(DJSI World)やS&P/JPXカーボン・エフィシェント指数などへの継続的な選定は、同社の環境への取り組みがグローバルな基準で高く評価されていることの証明であり、長期的な事業安定性への信頼につながっています。
参考:Daiwa House Group Sustainability Report 2025|大和ハウス工業
(5)ゼネコンにおける競争力強化と差別化要因
サーキュラーエコノミーを先行して導入することは、単なる環境対応にとどまらず、顧客・投資家・行政の三方向から高く評価されることで、事業機会の拡大につながります。
| 観点 | 競争力・差別化への効果 |
|---|---|
| 入札・受注の優位性 | 公共工事や大規模開発では環境配慮が評価項目に組み込まれており、循環型建築の実績は入札競争での優位性につながる。 |
| 顧客からの信頼獲得 | 不動産デベロッパーや自治体など発注者は「環境配慮型の建設パートナー」を選好する傾向が強まり、差別化要因となる。 |
| 投資家・金融機関からの評価 | ESG投資やサステナブルファイナンスに適合するゼネコンは、資金調達コストの低減や投資機会拡大の恩恵を受けやすい。 |
| 長期的なブランド価値向上 | 環境規制対応だけでなく、持続可能な都市開発の担い手として社会的評価を確立し、企業ブランドを強化できる。 |
サーキュラーエコノミーの導入は、ゼネコンが市場で選ばれる理由そのものとなる可能性があります。
大手不動産会社や自治体からは「循環型建築のノウハウを持つゼネコン」として優先的に発注を受けやすくなり、公共工事の入札では環境配慮型の施工計画や廃棄物削減の取り組みが加点対象となるケースがあるでしょう。さらに、環境対応を進めるゼネコンは投資家からの評価も高まり、資金調達や長期的な事業安定性の確保にもつながります。
3.建築におけるサーキュラーエコノミーの成功事例

サーキュラーエコノミーはすでに建築分野で具体的に実践されており、国内の企業が先進的な取り組みを進めています。ここでは、代表的な企業やプロジェクトの事例を順に紹介していきます。
(1)大成建設|サーキュラーエコノミー型ゼロ・エミッション

大成建設は単なる廃棄物処理の効率化にとどまらず、設計から調達、施工、解体までを包括的に管理し、循環を前提とした仕組みづくりを推進しています。
- 発生材を現場内で再資源化し、新たな資材へ転換することで処分量を削減
- 工事で発生したコンクリート塊を破砕し、路盤材として再利用することで資源を循環
- ICTを活用して資材の在庫・使用状況をリアルタイムで可視化し、過剰発注や廃棄を防止
- サプライヤーと連携し、サプライチェーン全体で資源循環を徹底
これらの取り組みは、コスト削減や工期短縮といった直接的な経営効果に加え、CO₂排出量の削減やゼロ・エミッション建設現場の実現など、脱炭素社会に向けた企業責任の果たし方としても注目されています。その結果、環境配慮型企業としてのブランド価値向上にも直結しています。
参考:https://www.taisei-sx.jp/environment/tgt/decarbonization/
(2)竹中工務店|サーキュラーデザインビルド®による建築プロジェクト

竹中工務店は、建物を循環可能な資産として位置づけるために「サーキュラーデザインビルド®」という設計思想を提唱しています。建築のライフサイクル全体を通じて資源を循環させることを目的に、設計から解体までを一貫して循環前提で組み立てる点に特徴があります。
- 設計段階から解体や再利用を想定し、建材の選定や構造設計に工夫を取り入れる
- 構造材を分解・再組立しやすい仕様とし、将来的なリユースやリサイクルを容易にする
- 可変性の高い空間設計を導入し、用途転換や長寿命化に柔軟に対応する
このアプローチにより、資源利用の効率化や廃棄物削減を実現するだけでなく、都市の建築ストックの価値向上にも直結しています。また、国内外で高まる環境規制やESG評価にも適合しやすく、企業としての競争力強化にもつながる取り組みです。
参考:https://www.takenaka.co.jp/news/2023/12/03/
(3)鹿島建設|資源循環システムの導入
鹿島建設は、建設副産物のリサイクル率向上を目指し、独自の資源循環システムを全社的に構築しています。建設現場ごとの部分的な改善にとどまらず、グループ全体での資源循環を実現する仕組みを確立している点が特徴です。
- コンクリート塊を破砕し、再生砕石として道路や基礎材に活用
- アスファルト廃材を再生加熱アスファルトに加工し、新たな舗装材として利用
- 発生材を社内データベースで一元管理し、トレーサビリティを確保
- 現場と本社をオンラインで連携し、資源循環の最適化を推進
これらの取り組みにより、現場レベルでの廃棄物削減に加え、サプライチェーン全体を巻き込んだ高度な資源循環を実現。結果として、環境負荷の低減、コスト削減、そして持続可能な建設モデルの確立に大きく貢献しています。
参考:https://www.kajima.co.jp/sustainability/environment/waste/index-j.html
(4)日建設計|サーキュラーを取り入れた都市・建築デザイン

日建設計は、建設業界における資源枯渇・廃棄物処理問題への対応として、「循環型建築(Circular Architecture)」の実現を目指す活動「Circular Design Collective(サーキュラーデザインコレクティブ)」を発足させました。
この活動の第一弾として開発が進められているのが、「Circular Idea Catalog(サーキュラーアイディアカタログ)」です。建築・土木に関わるすべての人が「循環型建築」に取り組める環境を整えるため、アイデアやデザイン手法、パートナーとなる専門家の情報を集約・体系化しています。
| コンセプト | 概要 |
|---|---|
| Vernacular(すべての部材は地球に還る) | 使用する構成要素が地球に自然に還ることを意識したデザイン。 |
| Design for Disassembly(解体時の循環を見据えた設計) | 解体後の部材を再利用しやすいよう、分解容易な構造を組み込む設計手法。 |
| Upcycling(廃棄物に命を吹き込む) | 廃材をそのまま活用するのではなく、新たな価値を付加したアップサイクル素材として再利用(nikken.co.jp)。 |
こうした活動により、「サーキュラーエコノミー」に資する設計思想を社会実装し、廃棄物を“負の資産”から“正の資産”へ転換する枠組みを提案しています。
参考:https://www.nikken.co.jp/ja/news/press_release/2024_10_18.html
(5)東急不動産|再生建材の積極活用

東急不動産は、リノベーション事業や新規開発プロジェクトにおいて、循環型の都市開発を実現するために再生建材の活用を積極的に進めています。単なる廃棄物削減にとどまらず、都市開発における資源循環モデルを確立することを目指しています。
- 解体工事で発生したコンクリートを再資源化し、新たな建築材料として再利用
- 廃プラスチックを建材に転換する技術開発に投資し、循環可能な建材の選択肢を拡大
- 再生材の採用により、新規資材調達に伴う環境負荷やCO₂排出を削減
こうした取り組みによって、廃棄物削減と資源循環を同時に実現し、持続可能な都市開発のモデルケースとして業界内外から注目を集めています。環境配慮型の開発姿勢は、社会的評価やESG投資の観点からも企業価値向上に直結しています。
参考:https://www.tokyu-land.co.jp/news/2023/000823.html
4.建築におけるサーキュラーエコノミーの具体的な実践方法

サーキュラーエコノミーを建築分野で実現するためには、部分的な改善ではなく、建物の計画から解体・再生までを視野に入れた全体的な取り組みが必要です。ここでは、その実現に向けた代表的なアプローチを解説します。
(1)設計段階:循環を前提とした「サーキュラーデザイン」
サーキュラーデザインとは、建物のライフサイクル全体を見据え、資源消費を最小限に抑え、廃棄物の発生を抑制する設計思想です。従来の「建てて終わり」の発想から脱却し、将来の解体・再利用まで考慮する点が特徴です。
| アプローチ | 内容・効果 |
|---|---|
| モジュール化・部材の標準化 | 解体や組み替えを容易にし、再利用可能性を高める。 |
| 長寿命化を意識した建材選択 | 交換や廃棄の頻度を減らし、ライフサイクルコストを抑制。 |
| 用途変更に対応できる柔軟な設計 | 建物を再利用しやすくし、スクラップ&ビルドを回避。 |
これにより、建物を単なる消費財ではなく「循環可能な資産」として位置づけることが可能になり、持続可能な建築ストックの形成につながります。
【事例】サーキュラーデザインの例|大林組
大林組は、建設プロセス全体で資源循環を考慮した「デザイン・ビルド・ストックマネジメント」という概念に基づき、サーキュラーデザインを実践しています。
- 取り組み: 建設現場で発生するコンクリート塊やアスファルト塊を、現場内や近隣の施設で破砕・選別し、再生骨材として再利用しています。
- 効果: 新たな資材調達を抑制し、運搬に伴うCO₂排出量を削減するだけでなく、廃棄物の最終処分場への運搬も不要になります。
- 取り組み: 設計段階からBIM (Building Information Modeling)を活用し、建物の構造や使用される建材の情報をデジタルで管理しています。
- 効果: これにより、建物の維持管理や将来の解体時に、どの資材がどこに使われているかを正確に把握でき、資材の再利用・再資源化を前提とした計画を立てることができます。建物を解体しやすい構造にすることも可能となり、資源の循環をよりスムーズにします。
参考:BIM|大林組
(2)施工段階:廃棄物を出さない建設
建設現場での廃棄物削減は、循環型建築を実現するうえで欠かせない要素です。従来の「つくって捨てる」プロセスを見直し、資源循環を前提とした施工方法を取り入れることが求められます。
| アプローチ | 内容・効果 |
|---|---|
| プレハブ化・ユニット化部材の活用 | 工場で事前に製造した部材を活用し、端材や残材の発生を抑制。 |
| 分別徹底と端材再利用 | 廃棄物を徹底分別しリサイクル率を向上、現場内で端材を再利用。 |
| ICTによる資材管理の最適化 | デジタル管理により余剰在庫や資材ロスを削減し、効率的な調達を実現。 |
| 施工精度の向上 | 手戻りや不良品の発生を防止し、資源投入を最小化。 |
これらの取り組みを組み合わせることで、ゼロ・エミッション建設現場や再資源化システムの実現が可能になります。結果として、施工工程からの廃棄物を極力ゼロに近づけ、持続可能な建設モデルへ移行することができます。
【事例】廃棄物削減の取り組み|大和ハウス工業
大和ハウス工業は、工場で住宅の部材を製造するプレハブ工法を強みとし、建設現場での廃棄物削減に大きく貢献しています。
- プレハブ化・ユニット化: 建築資材の多くを工場で生産するため、現場での加工や組立作業が減り、それに伴う端材や残材の発生が抑制されます。
- 資源の効率管理: 工場内での一元管理により、資材の余剰在庫やロスを最小限に抑え、必要な量だけを効率的に生産・調達できます。これにより、施工プロセス全体の資源利用効率が向上します。
参考:Daiwa House Group Sustainability Report 2025|大和ハウス工業
(3)維持管理段階:長寿命化とリユースの推進
建物のライフサイクル全体で価値を最大化するためには、維持管理段階の工夫が欠かせません。
日常的なメンテナンスや設計段階での配慮により、建物や建材の寿命を延ばし、廃棄や交換の頻度を抑えることが可能になります。
| アプローチ | 効果 |
|---|---|
| 長寿命化 | 劣化しにくい建材やメンテナンス性の高い部材を採用し、交換や廃棄を最小限に抑制。 |
| アダプティブリユース(用途転換) | 建物用途を変更できる柔軟な設計や構造を取り入れ、スクラップ&ビルドを回避。 |
| 水平リサイクル | 回収した建材を同等品質に再生して再利用し、資源価値を維持。 |
維持管理やリユースの視点を取り入れることで、建物の寿命延伸だけでなく、資源循環の質そのものを高めることができます。
【事例】水平リサイクル|竹中工務店、明治安田生命、三協立山など
竹中工務店、明治安田生命、三協立山などが連携して進めているのは、アルミ建材の水平リサイクル実証事業です。このプロジェクトは、解体された建物から出るアルミを、再び同じ品質のアルミ建材として再利用することを目的としています。
- 連携体制: 建設会社(竹中工務店)、デベロッパー・オーナー(明治安田生命)、建材メーカー(三協立山)など、建物のライフサイクルに関わる複数の企業が協力しています。
- 回収・管理: 建物解体時に発生するアルミ建材を、他の廃棄物と厳密に分別して回収します。
- 品質維持: 回収されたアルミは、独自の管理方法で品質を保ちながら選別され、建材メーカーに送られます。
- 再利用: 建材メーカーは、回収したアルミを溶かして、新しいアルミ建材として再生します。
- この取り組みは、単なるリサイクルを超えた「水平リサイクル」を実現することで、資源の価値を損なうことなく循環させることを目指しています。これにより、アルミニウムの新規生産に必要なエネルギー消費を大幅に削減し、資源枯渇リスクや資源価格の変動リスクにも対応できます。また、業界全体で資源循環を推進するモデルケースとなることが期待されています。
参考:解体建物からアルミ建材を回収し水平リサイクルを実現するための実証事業を開始|三協立山
(4)新素材・新技術の活用
建築分野では、資源効率を高めながら環境負荷を抑える新素材や技術の導入が進んでいます。これらはサーキュラーエコノミーを支える重要な要素として注目され、循環型社会の形成に直結します。
| 素材・技術 | 特徴 |
|---|---|
| CLT(Cross Laminated Timber) | 持続可能な森林資源から作られる木質材料。炭素を固定しながら高強度を実現し、コンクリートや鋼材の代替材として期待。 |
| 3Dプリント建築 | 必要箇所に必要量だけ材料を積層するため、端材や余剰材を削減。複雑な構造も効率的に製造可能。 |
| 廃プラスチック建材 | 使用済みプラスチックを再資源化し、断熱材や外装材として再利用。廃棄物削減と資源循環の両立に寄与。 |
| バイオ資材 | 食品廃棄物や農業副産物を活用した建材。環境負荷を抑えつつ、循環型社会の実現に向けた新しいアプローチ。 |
これらの新素材・新技術を取り入れることで、建築物のライフサイクル全体におけるCO₂排出削減と、持続可能な建設モデルの実現に大きく近づくことができます。
【事例】CLT|大林組
大林組の「ポートプラス」は、木材を活用したサーキュラーエコノミーの最先端事例です。このプロジェクトは、木造建築の可能性を大きく広げ、脱炭素社会と地域経済の活性化に貢献しています。
ポートプラスは、大林組の研修施設として建てられた11階建て純木造耐火建築物です。主な構造材として、CLT(直交集成板)とLVL(単板積層材)が採用されています。通常、この規模の建物は鉄骨やコンクリートで建設されますが、木材を主要構造体に用いることで、木造高層建築の技術的課題を克服しました。
- CO₂の固定と排出量削減: 木材は成長過程でCO₂を吸収・固定するため、建材として利用することで、大気中の炭素を長期間貯蔵できます。また、木材の製造プロセスは、コンクリートや鉄鋼の製造に比べてCO₂排出量が大幅に少ないため、建築物のライフサイクル全体での環境負荷を低減します。
- 地域の林業活性化: CLTの活用は、地域の森林資源の需要を高め、地産地消の循環モデルを促進します。これは、林業の活性化につながり、持続可能な森林管理に貢献します。
- 施工効率の向上: 工場でプレカットされたCLTパネルを使用することで、建設現場での作業が簡素化され、工期を短縮できます。これにより、建設コストの削減や現場での廃棄物発生抑制にもつながります。
ポートプラスは、建築における木材利用の可能性を示し、公共施設や集合住宅などでのCLT活用の普及を加速させる重要な実証事例となっています。
(5)地域資源を活用した循環型建築
地域に眠る未利用資源を活用することは、輸送に伴うCO₂排出量の削減と同時に、地域経済の活性化にもつながります。建材の調達を地元で完結させることで、資源循環を地域内に閉じ込め、持続可能な建築モデルを構築できます。
| アプローチ | 概要 |
|---|---|
| 森林資源の再生サイクル | 地域で伐採した木材を建材として利用し、再植林を行うことで、森林資源を循環的に維持。 |
| 地域循環型住宅モデル | 地元の木材・石材・農業副産物を活用し、輸送コストや環境負荷を削減。地域社会と連携して持続可能な住宅開発を推進。 |
こうした取り組みは、地産地消の仕組みを生み出すだけでなく、地域社会との結びつきを強め、建築業界全体のサーキュラーエコノミー実現を後押しします。
【事例】地域循環型住宅モデル|清水建設
清水建設が推進する「シミズめぐりの森」プロジェクトは、群馬県川場村の森林資源を活用し、木材の植林から伐採、建材利用までを一貫して行うことで、資源の循環サイクルを確立しています。
このプロジェクトでは、以下の取り組みを通じて、地域の経済と環境に貢献しています。
- 森林資源の再生サイクル:
- 同社が「有林社」として最大50年間、森林の植林から管理・伐採までを担い、持続可能な森林経営を実現しています。
- 川場村の「ウッドビレジ事業」にも参画し、間伐材を木材製品やバイオマス発電の原料として活用することで、資源の無駄をなくし、地域内での循環を促進しています。
- 地域循環型住宅モデル:
- 石川県金沢市の北陸支店新社屋では、地元産の能登ヒバを構造主材や内装、家具に活用する地産地消のモデルを実践。これにより、輸送コストとCO₂排出量を削減しています。
- 「オアセ芝浦」などのプロジェクトでは、地域社会や住民と連携し、コミュニティ全体で資源循環に取り組むスマートコミュニティ開発を推進しています。
- その他の地域資源活用・連携:
- イノベーション拠点「温故創新の森 NOVARE」では、未利用木材や建設副産物、地域の廃材を再活用し、廃棄物ゼロを目指す取り組みを行っています。
- 雨水利用や地域生態系との共生など、建築を通じて地域の自然資源と環境価値を創造する**「ABINC ADVANCE認証」**の取得にも取り組んでいます。
これらの活動は、森林資源の循環、地域経済の活性化、CO₂排出量削減を同時に実現し、持続可能なサーキュラーエコノミー建築のモデルを確立しています。
参考:群馬県川場村で森林資源を活用したコンビナート事業に参画~「ウッドビレジ川場」に出資、地産地消型の事業を推進~
参考:循環型の木材活用に向け、群馬県川場村で植林・育林活動を開始~使った分は植えて育てる、「シミズめぐりの森」プロジェクト~
参考:テクノアイ 清水建設の技術
5.まとめ
建築業界におけるサーキュラーエコノミーの導入は、単なる環境対策を超え、競争力強化と持続可能な成長を実現するための戦略的投資です。資源の有効活用によるコスト削減、ブランド価値の向上、そして強化される環境規制への対応など、多角的なメリットを享受するためには、設計・施工から維持管理、解体に至るライフサイクル全体での循環モデルの構築が不可欠です。先進事例に学び、実効性のある取り組みを早期に開始することが、企業価値の向上と社会貢献を両立に直結します。
こうした建築プロセスの各フェーズにおいて、資源の無駄を利益に変える仕組みを構築するのが、五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」です。現場廃棄物の再資源化や、環境負荷の低い資材活用を起点に、サステナブルな商品開発や構造的な企業変革を一貫して支援します。法規制をクリアし、次世代のスタンダードとなる「循環型建築経営」を実現したい方は、ぜひお気軽にご相談ください。


