温室効果ガスの排出量削減に向けた取り組みが世界的に加速するなか、企業にもカーボンニュートラルの実現が強く求められるようになってきました。
本記事では、カーボンニュートラル達成を目指す企業担当者に向けて、以下のような観点からわかりやすく解説します。
1.カーボンニュートラルシステムとは?まず押さえるべき基本

カーボンニュートラルシステムは、企業活動におけるCO2(二酸化炭素)をはじめとする温室効果ガスの排出量を算定・可視化し、削減計画の立案から実行、効果測定までを一元管理するためのITツールです。
ここでは、カーボンニュートラルシステムについてまず押さえるべき基本的な情報を解説します。
(1)カーボンニュートラルの定義と背景
カーボンニュートラルとは、温室効果ガス(主にCO₂)の排出量から、植林や技術的な吸収・除去量を差し引き、実質的な排出をゼロにすることを意味します。英語では「net zero(ネットゼロ)」とも表現され、地球温暖化対策における世界共通のゴールとされています。
この概念が国際的に明確に位置づけられたのは、2015年のパリ協定です。ここでは、産業革命以前からの気温上昇を1.5℃以内に抑えるという長期目標の達成手段として、今世紀後半までにカーボンニュートラルを実現する必要性が強調されました。以下の動画では3分ほどでパリ協定の概要をご確認いただけます。
さらに近年では、以下のような背景を受けて、国・自治体・企業などあらゆる主体で脱炭素の取り組みが急速に進んでいます。
- 世界各地で発生する異常気象や自然災害の激甚化
- ESG投資やSDGsといった、持続可能性を重視する潮流の拡大
- 政府による2050年カーボンニュートラル宣言や各種規制・インセンティブの導入
カーボンニュートラルは、もはや一部の先進企業や環境団体だけの課題ではありません。全ての事業者が対応すべき経営課題として、ますますその重要性を増しているのです。
出典:https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/r01/html/hj19010202.html
参考:カーボンニュートラルとは|脱炭素ポータル
参考:2050年カーボンニュートラルに向けた我が国の課題と取組|経済産業省 資源エネルギー庁
(2)なぜ今、CO2排出量の見える化と管理が求められるのか
カーボンニュートラルの実現に向けて、排出量の見える化(可視化)と戦略的な管理が重要視される理由は、企業の持続的成長や社会的信用の確保に直結する経営課題となっているためです。
とくに近年では、ESG評価や法規制、サプライチェーン管理など、外部からの圧力と内部の経営課題が複合的に絡み合うようになっており、CO₂排出量の定量的な把握と適切な対応が欠かせません。
具体的には、以下のような背景と理由が挙げられます。
| 企業を取り巻く背景 | 見える化・管理が求められる理由 |
|---|---|
| 削減目標の設定と進捗管理の基盤が必要 | 排出量を数値で可視化することで、現実的かつ効果的な目標設定が可能になり、PDCAサイクルの土台となる。 |
| ステークホルダーへの透明性が求められる | ESG投資や取引継続の条件として、CO₂排出量の開示が重視され、信頼性向上の要素となる。 |
| 法規制・開示義務への対応が不可欠に | 有価証券報告書やCDP、TCFDなどの開示要請が進む中で、制度対応への備えが求められる。 |
このように、CO₂排出量の見える化と管理は、単なる環境対策ではなく、経営の意思決定や企業価値向上に直結する重要な取り組みとして位置づけられています。
参考:2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略|経済産業省
参考:排出量算定に関するガイドライン|グリーン・バリューチェーン・プラットフォーム
2.企業におけるカーボンニュートラルの必要性と社会的背景

世界的な環境意識の高まりや、気候変動への危機感から、各国政府は脱炭素社会の実現に向けた目標設定や法整備を加速させています。ここでは、企業におけるカーボンニュートラルの必要性と社会的背景について解説します。
(1)脱炭素経営におけるCO₂管理の重要性
企業がCO₂管理に取り組むべき理由は、主に以下の3点に集約されます。
| リスクの早期回避と評判維持 | 規制強化や排出量開示の要請が進む中、対応の遅れは違反リスクや取引停止につながる。 |
|---|---|
| 成長機会の創出 | 省エネ・再エネ施策によりコスト削減と競争力強化、環境配慮型製品で新市場も獲得可能。 |
| ステークホルダー評価と企業価値向上 | CO₂管理と開示はESG評価や資金調達の条件となり、企業の信頼性向上に直結する。 |
このように、CO₂の定量的な管理とその成果の透明な開示は、将来のリスクを抑えつつ、企業価値と社会的信頼を高める起点となります。環境対応がコストではなく経営資産となる時代において、CO₂管理のあり方が企業の競争力を左右しています。
(2)CO₂排出量の自動算定・レポート作成による業務効率化
カーボンニュートラル対応の初期段階で、多くの企業が直面するのが排出量データの収集と算定作業の煩雑さです。部門ごとに散在するエネルギー使用量や購買データを手作業で集計し、排出係数に基づいてCO₂量を計算する作業は、膨大な時間と人的リソースを要するうえ、ヒューマンエラーのリスクも常につきまといます。カーボンニュートラルシステムを導入することで、こうした課題を根本から改善できます。
| 課題 | カーボンニュートラルシステムによる改善 |
|---|---|
| CO₂排出量の算定作業が煩雑 | 活動データを入力するだけで、最新の排出係数に基づき自動算定。手計算やマニュアル入力が不要に。 |
| レポート作成に時間がかかる | CDP・TCFD・有報などに対応した形式で自動出力が可能。提出用資料の整備も効率化。 |
| 担当者の作業負担が重い | 集計・算定業務を自動化することで、リソースを戦略業務に集中させやすくなる。 |
このように、カーボンニュートラルシステムは単なる環境対応ツールではなく、業務の生産性を高める経営支援インフラとしても有効です。
(3)経営・現場における環境意識の醸成と従業員の巻き込み
カーボンニュートラルシステムを活用することで、経営層から現場の従業員まで、自社の事業活動が環境に与えている影響を具体的な数値やグラフで可視化することが可能になります。
| メリット | 概要 |
|---|---|
| 経営層の判断に「実感」と「責任」を与える | ・全社のCO₂排出状況を数値やグラフで可視化することで、環境課題を経営リスクや戦略課題として捉えやすくなる ・設備投資や取引先選定などの意思決定に環境配慮が反映されやすくなる |
| 現場従業員の行動に「気づき」と「自発性」を生む | ・部署・業務単位で排出量を可視化することで、自らの行動と環境負荷の関係が明確に ・電力削減やペーパーレス化など、従業員発の改善行動が促される。 |
| 組織文化の変化と環境パフォーマンス向上 | ・一人ひとりの意識改革が全社的な削減効果を後押しする ・環境配慮を重視する企業姿勢は、採用活動や社外からの評価向上にもつながる。 |
このように、カーボンニュートラルシステムの導入は、技術的な排出管理だけでなく、社内の意識改革と一体となった脱炭素経営の文化づくりにも貢献します。
(4)排出量削減施策の立案と実行サポート
カーボンニュートラルシステムは、排出量データの「見える化」に加えて、実践的な施策立案と実行の支援機能も備えています。
| 支援機能 | 期待できる効果 |
|---|---|
| 排出量の多い拠点・工程・部門を特定 | エネルギー使用量や物流データをもとに、排出の多い「ホットスポット」を分析。優先的に対策すべき部門・工程を明確にできる。 |
| 削減アクションプランの策定 | 以下のような施策を検討・立案できる:高効率設備への更新(空調・照明・生産機器)再エネ電力への切り替え移動・配送手段の見直しサプライヤー選定基準の見直し |
| 削減ロードマップの作成 | 中長期の目標に対し、部門別に実行スケジュールを設定。工程表と進捗をシステム上で可視化し、管理を効率化。 |
| PDCAサイクルの定着支援 | Plan→Do→Check→Actionの各段階を自動記録・可視化。施策の有効性を定期的に評価・改善できる仕組みを提供。 |
このように、カーボンニュートラルシステムは、削減目標の絵に描いた餅化を防ぎ、具体的なアクションに落とし込むための実務支援ツールとして、企業の脱炭素化を支援します。
(5) スコープ3対応によるバリューチェーン連携の強化
国際的な情報開示基準やESG評価でも重視されているのが、スコープ3=サプライチェーン全体の間接排出量の把握と対応です。
スコープ3には、原材料調達、製品の使用・廃棄、物流、出張、投資など、自社以外の事業活動に関わる幅広い排出源が含まれます。これらを把握・管理することは、企業の責任としてだけでなく、競争力の源泉としての価値も持ち始めています。
| 取り組み内容 | 概要と期待できる効果 |
|---|---|
| 排出量の見える化による省エネ連携 | サプライヤーや物流業者と排出量を共有し、省エネ設備への更新や輸送効率化を共同推進。コスト削減と信頼関係構築を両立できる。 |
| 環境配慮型製品・サービスの共同開発 | ライフサイクル全体でCO₂排出を抑えた製品・サービスを設計・提供。新市場の開拓や企業イメージの向上に貢献。 |
| サステナブル調達・グリーン調達の実現 | 排出量データをもとに、取引先の選定基準や調達方針を見直し。脱炭素の取組が取引継続の判断基準として機能するようになる。 |
スコープ3対応機能を備えたカーボンニュートラルシステムは、バリューチェーン全体の煩雑な排出量データの収集・集計・可視化を効率化し、部門・企業を超えた協働体制を円滑に構築することができます。
サプライチェーン単位での脱炭素は、今後の企業評価に直結するテーマであり、競合との差別化・先進的イメージの確立にもつながります。
4.カーボンニュートラルシステムの種類と選び方

自社に最適なカーボンニュートラルシステムを選定するためには、まずその種類を理解し、自社のニーズに合った評価軸で比較検討することが不可欠です。ここでは、カーボンニュートラルシステムの種類と選び方を解説します。
(1)機能別に見る3タイプ
カーボンニュートラルシステムには、大きく分けて「総合型」「シンプル型」「伴走支援型」の3タイプがあります。以下の表ではそれぞれの特徴などを比較いただけます。
| タイプ | 総合型(カーボンオフセット対応) | シンプル型(CO₂算定特化) | 伴走支援型(専門家支援つき) |
|---|---|---|---|
| 対象企業 | 脱炭素経営を本格化させたい企業 | まずは現状把握から始めたい企業 | 精度・信頼性を重視する企業 |
| 主な機能 | ・スコープ1〜3自動算定・削減目標・施策管理 ・カーボンオフセット対応 ・KPI連動の戦略管理 | ・スコープ1・2の算定 ・基本レポート出力 ・シンプルなダッシュボード | ・算定ツール+コンサル支援・LCA支援 ・第三者認証対応・効果測定・施策実行の伴走 |
| メリット | ワンストップで脱炭素経営を推進できる | コストを抑えながら導入しやすい | 社内リソースが限られていても高度な対応が可能 |
| 想定シーン | ・中長期でカーボンニュートラル達成を目指す企業・開示義務対象企業 ・ESG投資対応が求められる企業 | ・小規模事業者・設立間もない企業・社内体制が未整備の段階 | ・信頼性が求められる排出量開示・官公庁・自治体対応・リーディング企業の先進事例 |
それぞれのタイプに一長一短があるため、「今、何に困っているか」「1年後、何を実現したいか」といった視点での比較検討が重要です。必要に応じて、段階的にステップアップしていく戦略的な導入も選択肢となります。
(2) 比較すべき評価軸とチェックポイント
最適なカーボンニュートラルシステムを選定するには、スペックだけでなく、将来の拡張性や運用のしやすさも加味する視点が重要です。複数の候補を以下の評価軸で比較検討することが不可欠です。
以下では、主な比較項目とチェックポイント一覧をご確認いただけます。
| 評価軸 | チェックポイント |
|---|---|
| 対応スコープと算定精度 | ・スコープ1・2・3への対応範囲は明示されているか ・排出量算定ロジックは最新の排出係数を反映しているか ・GHGプロトコルなど国際基準に準拠しているか |
| 社内システムとの連携性 | ・ERP、FEMS、エネルギー管理システムと連携できるか ・CSV・APIなど入出力形式が柔軟か |
| 操作性・ユーザーインターフェース(UI) | ・誰でも直感的に操作できる設計か ・操作画面のデモが用意されているか ・ITリテラシーに依存しすぎないか |
| サポート体制・導入支援 | ・初期設定、データ移行、社内研修の支援はあるか ・問い合わせ対応(チャット・電話・メール)の質とスピードは十分か |
| トータルコストとROI(投資対効果) | ・初期費用、月額/年額、保守費用などを含めて無理なく導入できるか ・業務効率・人件費削減・開示業務の省力化など、効果の試算が可能か |
現在の課題と将来の目標(例:スコープ3対応・ESG開示)を明確にしたうえで、評価軸を定めましょう。さらに各項目を表形式で比較することで、客観的でブレのない意思決定が可能になります。
5.主要なカーボンニュートラル対応システム
(1)zeroboard(ゼロボード)
zeroboard(ゼロボード)は、スコープ3を含むGHG排出量の算定・可視化を簡単に行えるカーボンニュートラル支援ツールです。排出係数の統一や誤入力検知といった管理機能により、グループ全体のデータを正確に管理できます。サプライチェーン全体との連携や多言語対応により、海外拠点でも円滑に運用できます。専門家チームによる迅速な制度対応も強みです。
| 特徴 | ・わかりやすい管理機能と高精度なデータ運用 ・スコープ3を含むサプライチェーン全体の可視化 ・専門家による迅速な制度対応 |
|---|---|
| 料金 | お問い合わせからご確認ください |
| 公式サイト | https://www.zeroboard.jp/ |
(2)アスエネ
アスエネ(Asuene)は、CO₂排出量をはじめとするESG関連データを一元管理するカーボンニュートラル支援ツールです。
AI-OCRやERP連携によりデータ入力を効率化し、環境パフォーマンスの見える化をサポートします。さらに、Scope3までを含むサプライチェーン全体の脱炭素も、開示から削減・運用代行まで一貫して対応可能です。企業のネットゼロ実現を多角的に支えるワンストップ型ソリューションです。
| 特徴 | ・環境データの一元管理で工数を大幅削減 ・専門コンサルチームによるネットゼロ達成支援 ・サプライチェーン全体の脱炭素を一気通貫で支援 |
|---|---|
| 料金 | お問い合わせからご確認ください |
| 公式サイト | https://asuene.com/ |
(3)e-dash(イーダッシュ)
e-dash(イーダッシュ)は、CO₂排出量の見える化から報告書作成、削減支援までを一気通貫でサポートする脱炭素プラットフォームです。
請求書の画像データをアップロードするだけで排出量を自動算定でき、専門知識がなくても簡単に可視化が可能です。報告書の自動作成機能やSBT・CDP対応支援も充実しており、脱炭素経営に必要な実務を大幅に効率化できます。さらに、排出データに基づくオーダーメイドの削減プラン提案により、企業の成長に伴走します。
| 特徴 | ・簡単にCO₂排出量を可視化 ・報告書の自動作成で業務効率化 ・削減プランの提案と実行支援 |
|---|---|
| 料金 | お問い合わせからご確認ください |
| 公式サイト | https://e-dash.io/ |
6.カーボンニュートラルシステムの導入から運用までの流れと活用の全体像

カーボンニュートラルシステムの導入は、単なるツール導入に留まらず、企業全体のGX推進戦略の一環として位置づけることが重要です。ここでは、カーボンニュートラルシステムの導入から運用までの流れと活用の全体像について解説します。
(1) 現状把握から目標設定、改善までのプロセス
①排出量の「現状把握」
まずは、自社のGHG(温室効果ガス)排出量を正確に可視化することが出発点です。
エネルギー使用量や物流データをシステムに入力するほか、ERPやFEMS、購買システムと連携すれば、自動でデータを取得できます。
この段階では、スコープ1・2だけでなく、スコープ3も含めた全体像の把握が重要です。サプライチェーン全体での排出量算定は複雑ですが、システムを活用することで、取引先からのデータ収集や、間接的な排出量の推定が容易になります。これにより、自社だけでなく、バリューチェーン全体での実効性のある削減策を講じることが可能となります。
②科学的根拠に基づく「削減目標の設定」
可視化したデータをもとに、SBT(Science Based Targets)などに準拠した中長期目標を設定します。
また、部門や拠点ごとにKPIを設定することで、実行可能性の高い計画につなげることができます。さらに、これらの目標は、業界のベストプラクティスや競合他社の動向も考慮して設定することで、企業の競争力維持・強化にも貢献します。社内での合意形成を促進し、全社一丸となって削減目標達成を目指すための基盤となります。
③「削減施策」の立案と実行
目標達成に向けた具体的なアクションプランを策定します。
システムを活用することで、排出量の多い工程や拠点を特定でき、省エネ設備の導入や再エネ化、物流見直しなど、効果的な施策から優先的に着手できます。
例えば、エネルギー消費量が多い製造ラインの改善や、従業員の移動に伴う排出量の削減などが考えられます。これらの施策は、システム上で排出量削減効果をシミュレーションし、費用対効果を比較検討した上で、優先順位をつけて実行していくことが推奨されます。これにより、限られたリソースを最大限に活用し、効率的に脱炭素目標を達成することが可能になります。
④PDCAサイクルによる「継続的改善」
施策の効果や進捗はシステム内でリアルタイムにモニタリングされ、未達要因や改善点も可視化されます。このデータをもとに、次の施策へと反映させることで、継続的に脱炭素経営を進化させることができます。
このPDCAサイクルを回し続けることで、変化する外部環境や技術動向にも柔軟に対応し、自社の排出量削減能力を継続的に向上させていくことが可能になります。
(2)GX(グリーントランスフォーメーション)推進におけるITの役割
GX(グリーントランスフォーメーション)とは、企業が脱炭素を契機にビジネスモデルや経営体制を変革し、持続可能な成長を目指す取り組みです。このGXを実現するうえで、ITの果たす役割はインフラではなくエンジンに近い位置づけとなっています。脱炭素経営を高度化し、スピードと精度を両立させるために、以下のようなIT活用が求められます。
| IT活用内容 | 効果・概要 |
|---|---|
| IoTセンサーによるリアルタイム排出量把握 | 工場やオフィスのエネルギー使用量をリアルタイムに取得し、即座にCO₂排出量を可視化。手作業では難しい粒度・スピードでのデータ取得を実現。 |
| ERPやFEMSなどとのシステム連携 | 社内の基幹・エネルギー管理システムと連携することで、データの一貫性と業務効率を確保。全社的な排出管理体制の構築が可能に。 |
| AIによる削減施策の自動提案 | 過去のデータや施策実績をもとに、AIが削減効果の高いアクションをリコメンド。意思決定のスピードアップと属人化の防止に貢献。 |
| シミュレーション機能による戦略検証 | 施策別・拠点別に削減効果を数値で予測し、科学的根拠に基づいた経営判断を可能に。目標との整合性も検証できる。 |
| ブロックチェーンによる排出権取引の透明化 | J-クレジットやボランタリークレジットの取引履歴を改ざん不能な形で記録。第三者機関・金融機関への報告対応にも有効。 |
| 自動レポート生成による情報開示対応 | TCFD、CDP、有価証券報告書などのESG開示フォーマットに準拠したレポート出力が可能。正確性と業務効率を両立。 |
このように、ITの活用はGX推進のあらゆるフェーズで実務を支え、戦略実行の加速装置となります。
現場では実行力を高め、経営層には迅速かつ確かな意思決定を支援し、組織全体でのGXの定着と持続的改善を後押しします。
(3)導入後の運用ポイントと社内定着の工夫
カーボンニュートラルシステムは、導入後にいかに継続的に活用されるかが成否を分けます。
システムが単なる「データ置き場」に終わらないためには、定期的な運用管理と、社内全体を巻き込む仕組みづくりが不可欠です。
| 取り組みの一例 | 期待できる効果 |
|---|---|
| 月次・四半期ごとの更新をルール化し、入力ミスや欠損を防ぐ体制を整備 | 「見える化」の信頼性を維持し、分析・改善に活用しやすくする |
| 施策の進捗や排出量変化をシステムで可視化し、定例会議で共有 | 改善サイクルの定着と、全社的な脱炭素意識の醸成 |
| 排出量の多い部門や工程を可視化し、改善提案を吸い上げるフローを構築 | 部門横断で具体的な削減策を創出。現場の自発性も促進 |
| システム操作に加え、脱炭素の重要性を伝える教育を実施 | 初期段階での理解促進。新入社員・管理職への浸透にも有効 |
| 削減目標や達成状況を社内報・ポスター・イントラネットで発信 | 社内全体の関心を高め、行動変容を促進 |
| 優れた取り組みを紹介・表彰する仕組みを整備 | ポジティブな競争を生み、好事例の横展開を実現 |
導入後の運用を成功させるには、データの管理と人の行動を両輪で動かすことが重要です。
継続的な取り組みを通じて、脱炭素の考え方を組織文化として定着させることが、GX推進の土台となります。
7.まとめ
カーボンニュートラルシステムを導入すれば、排出量の把握・報告・削減までを一貫して支援でき、業務の効率化とESG対応の高度化を同時に実現することが可能です。
ただし、システムの選定にあたっては、自社の課題やリソース、将来的な目標に応じた機能やサポート内容を見極めることが重要です。導入後の継続運用や社内定着も、脱炭素経営の成否を左右する要素となります。
今後ますます高まる開示義務や取引先からの要請に備え、早期の検討・導入を通じて、環境対応と企業価値向上の両立を目指しましょう。


