近年は資源制約やESG投資の拡大を背景に、欧米を中心に再評価が進み、日本でも製造業や自動車部品を軸に「リマニュファクチャリング」の導入が広がりつつあります。この記事では、リマニュファクチャリングの基本概念について整理します。
1.リマニュファクチャリングとは何か?基本概念を解説

まずは、リマニュファクチャリングの定義などの基本について解説します。
(1)リマニュファクチュアリングの定義と特徴
リマニュファクチャリングは使用済み製品を分解し、摩耗部品の交換や再加工を行ったうえで、新品と同等の性能・保証水準を備えた製品として再度市場へ提供する「再製造」のプロセスを指します。
修理や中古再生とは異なり、製造時と同等の基準で検査・組立を行うことが必須で、工程の標準化や品質保証体制が確立されている点が特徴です。欧州や北米では、資源制約や環境配慮の観点から重要な生産方式として位置づけられ、産業機械、自動車部品、OA機器など幅広い分野で活用が進んでいます。
(2)英語での意味・国際的な位置づけ
リマニュファクチャリング(Remanufacturing)は、英語圏で「再製造」を意味し、国際的には新品同等の品質を備えた製品を再度市場に供給する正式な生産方式として認識されています。
欧州ではBS8887、米国ではRIC(Remanufacturing Industries Council)などが工程・品質・表示基準を定めており、修理(Repair)や中古整備品(Refurbished)とは明確に区別されています。
資源効率性の向上やライフサイクル全体のCO₂削減を重視した政策が後押しとなり、自動車部品、航空エンジン、産業機械など多様な分野で普及が進んでいます。

参考:リマニュファクチャリングの 概要と取り組み事例|産業技術総合研究所
(3)循環型ビジネスにおける位置づけ
一般的なリサイクルは素材レベルまで分解するため、品質劣化や価値損失が避けられませんが、リマニュファクチャリングは製品機能を保持したまま再製造するため、資源投入量・製造エネルギー・CO₂排出量を新品製造比で大幅に削減できることが最大の強みです。
欧州委員会(EU)は、サーキュラーエコノミー行動計画の中で「リユース・リペア・リマニュファクチャリング」を優先的な循環手法として明記し、製造業の競争力強化と資源外交の観点から戦略的に位置づけています
こうした国際潮流を受け、部品回収スキームやアフターサービスの高度化を通じた循環型ビジネスモデルの構築は、製品の長寿命化、保守契約の収益化、顧客との長期関係の確立にもつながります。
つまり、企業にとってリマニュファクチャリングは、製品ライフサイクル設計・部品調達・保守サービス・回収ネットワークなどを再構築する経営テーマとして、競争戦略上の重要度が高まりつつあります。
参考:https://www.asec.or.jp/images/works/seminar/R6kouen2.pdf
参考:EY Japan、エンジン車の50%リマニュファクチャリングによってEVのCO2排出量より優位になると試算
2.リマニュファクチュアリングとリビルド・リファービッシュとの違い

リマニュファクチャリングを理解するうえで欠かせないのが、「リビルド」や「リファービッシュ」との違いを正しく整理することです。ここでは、リビルド等とリマニュファクチャリングの違いについて明確にします。
(1)リマニュファクチャリングとリビルドの違い
リビルドは、使用済み製品の不具合部分や摩耗部品を交換し、機能を回復させる再生手法です。一方、リマニュファクチャリングは、製品を完全に分解し、基準に基づく検査・再加工・組立を経て新品と同等の品質と保証を持つ状態へ戻す「再製造」です。
両者は似た概念として扱われることがありますが、実際には求める品質や工程の深度、保証範囲が大きく異なります。以下は両者の主要な違いを整理した比較表です。
| リマニュファクチャリング | リビルド | |
|---|---|---|
| 目的 | 新品同等の性能・品質に再製造 | 機能の回復・延命措置 |
| 工程 | 完全分解 → 検査 → 再加工 → 再組立 | 部品交換中心・部分的な修理 |
| 品質基準 | 新品と同等の基準を適用 | 使用可能レベルまで回復 |
| 保証 | 新品並みの保証を付与 | 製品ごとに保証の有無・範囲が異なる |
| 市場用途 | 正規品として再流通、保守契約にも適用 | 主に中古市場・アフター整備用途 |
| 適用領域 | 自動車部品、産業機械、医療機器など | 小型機器・中古整備品全般 |
リビルドはコストを抑えて再利用できる利点がありますが、品質や保証が製品ごとにばらつきやすいのが難点です。一方リマニュファクチャリングは、メーカー基準のプロセスと保証体系を伴うため、安全性・信頼性が重視される産業で導入が進むという特徴があります。
企業がどちらを選択すべきかは、製品の重要度や品質要求水準によって大きく異なります。
参考:循環型社会への切り札~リビルトエンジンが拓く新時代|KPMG
(2)リファービッシュとリマニュファクチャリングの違い
リファービッシュは家電・小型電子機器の中古市場を中心に広く流通していますが、工程の標準化や品質保証は製品や事業者によってばらつきがあります。対してリマニュファクチャリングは、製造メーカー基準の工程と長期保証を伴うため、産業機械や自動車部品など安全性が重視される領域で採用されています。
以下に両者の違いを整理します。
| リマニュファクチャリング | リファービッシュ | |
|---|---|---|
| 目的 | 新品同等の品質・性能に再製造 | 再販売可能レベルへの再整備 |
| 工程 | 完全分解、検査、再加工、再組立 | 洗浄、外観補修、簡易部品交換 |
| 品質基準 | 新品基準と同等の性能・耐久性 | 最低限の動作保証レベル |
| 寿命 | 新品と同等の製品寿命を期待できる | 製品により寿命の差が大きい |
| 保証 | メーカー保証と同等の範囲 | 保証は短期・限定的な場合が多い |
| 主な用途 | 産業機器、自動車部品、医療機器等 | 家電・PC・スマホなどの中古市場 |
| 流通チャネル | メーカー・正規ルートで再流通 | 中古市場、EC、量販店など |
リファービッシュは価格メリットが大きく、家電・デジタル機器で普及が進んでいますが、品質保証の標準化が難しいという特性があります。
一方リマニュファクチャリングは、メーカー主導で工程管理と品質保証を行うため、企業の安全基準や長期保守契約と整合しやすい点が導入の決め手となります。
参考:【イベントレポート】サーキュラー・エコノミーで環境貢献と事業収益性を両立。そのポイントと課題|アビームコンサルティング
(3)リマニュファクチャリングとリファービッシュが混同される理由
リマニュファクチャリングとリファービッシュが混同される最大の理由は、どちらも「使用済み製品を再び市場に戻すプロセス」である点が共通しており、外観だけでは品質の違いが判別しにくいためです。
とくに家電・OA機器の領域では、クリーニングや軽度修繕を行っただけの製品が整備済み再生品として流通しており、消費者・企業担当者の双方が工程の深度や保証範囲を正確に把握しにくい状況にあります。
さらに、海外マーケットでは「Refurbished」の定義が事業者によって幅広く、クリーニングレベルの軽整備から、部品交換込みの準再製造まで幅があることも混乱要因となります
一方、リマニュファクチャリングは国際的に工程・基準が明確であるにもかかわらず、日本では普及が限定的で、言葉自体の認知度が低い点も誤解を助長しています。

3.リマニュファクチャリングの動向と日本の課題

リマニュファクチャリングは欧米を中心に制度整備や市場形成が進んでいますが、日本では導入事例が限定的であり、循環型ビジネスの主要な手法としてはまだ十分に浸透していません。
ここでは、リマニュファクチャリングの動向と日本の課題についてそれぞれの視点から整理します。
(1)リマニュファクチャリングは日本で広がっているのか?
日本では、リマニュファクチャリングが産業全体に広く普及しているとは言い難く、2026年時点では限定的な導入段階にあります。
たとえば環境省の資料「第3章 我が国における環境・経済・社会の諸課題の同時解決」では国内全体の普及率や市場規模、導入企業数といった統計は掲載されておらず、事例紹介が点在する形にとどまっています。
ただし、今後は脱炭素や資源制約への対応、ESG要請の強まりなど、企業側がリマニュファクチャリングを検討する動機が増える見込みです。
たとえば、リマニュファクチャリング推進コンソーシアム(RECO)が、産学官連携による情報共有・技術開発・標準化を通じて、リマニュファクチャリングの高度化と普及を推進すると明記しています。
つまり、これら制度・仕組みの整備が進む中、現状は限定的な普及段階にあるものの、成長のポテンシャルが高い領域であると位置づけられます。
参考:https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h29/pdf/1_3_02.pdf
参考:https://unit.aist.go.jp/cmt-ri/reco/about.html
参考:経済安全保障対策の要である「リマニュファクチャリング」が日本企業に与えるインパクトとは? サプライチェーンをめぐる経営戦略のこれからを考える|EY
参考:「省資源・長寿命化」にとどまらないCEコマースの効果|三菱総合研究所
(2)国内普及が遅れている背景
日本でリマニュファクチャリングの普及が限定的にとどまっている背景には、複数の構造的要因があり、まず多くの製品が再製造を前提とした設計(DfReman)になっていない点が挙げられます。
AISTの論文でも、再製造工程を効率化するには分解・組立性を考慮した設計が不可欠であると述べられており、日本の製品設計ではこうした観点が十分に組み込まれていないことが示唆されています。
さらに、日本では依然として新品志向が強く、中古・再生品に対する心理的ハードルが高いことも普及の遅れに影響しています。ライフサイクル設計に関する国内資料でも、中古部品の活用が欧米ほど一般化していない現状が指摘されており、消費者の価値観と市場文化が再製造品の受容を妨げている側面があります。

参考:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe/89/7/89_555/_pdf
参考:https://jabee.org/doc/20250207.pdf
4.リマニュファクチャリング推進コンソーシアムと国内制度

日本でリマニュファクチャリングを本格的に普及させるには、企業単独の取り組みだけでなく、制度整備・標準化・産学官の連携が不可欠です。リマニュファクチャリング推進コンソーシアム(RECO)では、技術情報の共有、品質基準の整備、研究開発支援などを通じ、国内での再製造ビジネスの基盤づくりを進めています。
ここでは、リマニュファクチャリングの国内普及を後押しする各取り組みについて解説します。
(1)リマニュファクチャリング推進コンソーシアムの役割
リマニュファクチャリング推進コンソーシアム(RECO)は、サーキュラーエコノミー時代の競争力を担保するために、リマニュファクチャリングの高度化と普及を目的に産学官が連携して設立されました。
その役割は多岐にわたり、主に次の3つに集約されます。
| 役割 | 内容 |
|---|---|
| ① 情報共有とビジョン形成のプラットフォーム構築 | 産業界・学術界・行政が連携し、製品回収・再製造・再流通など関連技術・政策をつなぐ |
| ② 国内外の規制・政策・技術動向の調査・発信 | 国内外の規制、法制度、政策の最新動向を収集・発信 |
| ③ 技術ワークショップ・標準化・政策提言を通じた実践支援 | 技術ワークショップの実施を通じてリマン技術の普及を推進 |
つまりリマニュファクチャリング推進コンソーシアムは、制度・技術・情報の軸をカバーするプラットフォームとして、国内でリマニュファクチャリングを推進するための基盤整備の役割を担っており、導入を検討する企業には重要な参照先となります。
(2)経済産業省の取り組み
経済産業省は、資源法(資源有効利用促進法)の見直しを含む「成長志向型の資源自律経済戦略」を打ち出し、製品の長寿命化・回収体制の構築・再資源化の高度化といった一連の循環工程を強化する方針を示しています。これにより、リマニュファクチャリングの前提となる“回収しやすい設計”や“再生部品の利用促進”が制度的に後押しされる環境が整いつつあります。
参考:https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/resource_circulation/pdf/011_03_00.pdf
参考:「成長志向型の資源自律経済戦略」を策定しました|経済産業省
5.リマニュファクチャリングに関する事例
(1)いすゞ自動車|リマニユニット車の製造・販売

いすゞ自動車では、再製造部品を活用した「リマニユニット車」のラインアップを展開しており、2025年には中型トラック「FORWARD type-Re」を追加し、使用済み車両から回収した部品を再生・再評価して車両に組み込むリマニュファクチャリング相当のモデルとして提供しています。
新車製造時に比べて約28tのCO₂を削減でき、資源投入量削減と整備性向上を両立しており、再生部品での品質保証を行いながら販売する仕組みにより、企業の持続可能な車両更新モデルとしても注目されています。
今後は他車種への展開や、商用車分野での循環型サプライチェーン構築にも発展が期待されています。
参考:https://www.isuzu.co.jp/newsroom/details/20250328_2.html
(2)リコーグループ|複写機のリマニュファクチャリング

リコーでは使用済み複写機を全国で回収し、再使用可能な部品を再評価・再生するプロセスを整備したことで、1997年には再使用率60%超の「Spirio5000RM」を発売しています。さらに2000年度には複写機のリユース・リサイクル率96.3%を達成し、CO₂削減・資源投入量削減の点で高い成果を上げています。
今後は、高度分解設計(DfR)や部品トレーサビリティ強化により、より効率的なリマニュファクチャリング体制の確立が期待されています。
(3)オーキス・ジャパン株式会社|自動車用A/Tのリマニュファクチャリング

アイシン(オーキス・ジャパン株式会社)は、1970年代からA/T(オートマチックトランスミッション)のリマニュファクチャリングを開始し、早期から循環型ビジネスを構築してきました。日本・北米・欧州の3拠点で使用済みA/Tを回収し、分解・再生・品質保証を行う体制を整備し、2015年時点で累計150万台以上をリマン化しています。
HV向けリマンにも展開を進め、次世代パワートレインでも循環型モデルを拡大しようとしています。
6.リマニュファクチャリングが企業の競争力を高める理由

リマニュファクチャリングは、新品製造に比べたコスト最適化、原材料高騰リスクの低減、ESG・CSRDといったサステナ基準への適合、そして既存顧客の維持率向上まで、複数の経営課題を一度に解決できる点が大きな強みです。
ここでは、企業がリマニュファクチャリングの導入によって得られる主要なメリットを、競争力の観点から整理します。
(1)製造コストと環境負荷を同時に下げる
リマニュファクチャリングは、既存製品から再使用可能な部品を取り出し、再加工・再組立を行うため、原材料調達コストや製造エネルギーを大きく抑えられます。
原材料価格の高騰や供給不安が続く中で、調達コストを安定化できることは企業の利益率改善にも直結します。さらに、使用済み部品の再生はCO₂排出量や資源消費量の削減につながり、環境評価の向上にも寄与します。
(2)新品依存から脱却する
リマニュファクチャリングの導入によって、企業が新品製造に依存する構造から脱却し、より強靭な事業運営を実現します。原材料価格の高騰や地政学リスクによる供給不安が続く中、新品の部材調達に依存したままではコスト変動や納期遅延の影響を受けやすくなります。
さらに、新しい原料の投入量を抑制できることで、製造キャパシティの最適化にもつながり、需要変動に対する柔軟性も向上します。新品依存から脱却することで、企業はコスト・調達・生産の各面で安定性を高め、持続的な競争力を確保できます。

(3)ESG・CSRD・調達要件対応で選ばれる企業に
リマニュファクチャリングは、ESG投資の拡大やCSRD(サステナビリティ報告義務)の本格化により、より選ばれる企業になるためにも重要な要件となりつつあります。
特に欧州では、再生部品の活用や製品ライフサイクル全体でのCO₂削減が調達基準の一部として明確に求められており、日本企業も輸出・海外取引の場面で対応が不可欠です。
また、国内でも大手企業を中心に、サプライヤーへ環境データ開示や資源循環の取り組みを要求する動きが広がっています。こうした取り組みは、入札要件のクリア、顧客からの信頼獲得、取引継続の確保にも直結し、企業が長期的に選ばれ続けるための競争力となります。
(4)既存顧客の維持率を高められる
リマニュファクチャリングによって、新品よりも低コストで品質が保証された再生製品や再生部品を提供できるため、顧客は修理・更新のたびに自社製品を選びやすくなり、競合製品への乗り換えリスクを減らせます。
さらに、環境配慮型の製品・サービスとして顧客の評価が高まり、企業の信頼性向上にもつながります。
結果として、顧客維持率の向上と継続収益の確保が可能になり、リマニュファクチャリングは単発の製品販売に依存しない強固なビジネスモデルを支える基盤となります。
7.まとめ
リマニュファクチャリングは、リビルドやリファービッシュとは異なり、新品同等の品質を再現できる点で事業価値が高く、欧米を中心に制度整備と市場拡大が進んでいます。日本でもリコーなどの先行企業が成果を示しています。
さらに、コスト最適化、サプライチェーン強靭化、ESG・CSRD対応、顧客維持率の向上といった経営面のメリットも大きく、企業競争力を高める実践的な選択肢となるでしょう。
こうした高度な再製造ビジネスの立ち上げや、資源循環の仕組みづくりを実務面からトータルで支援するのが、五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」です。現状の製品管理プロセスの分析から、高品質な循環を可能にする構造的な企業変革を一貫してプロデュースします。製造業としての責任を「稼ぐ力」へと転換し、次世代の循環型経営を実現したい方は、ぜひお気軽にご相談ください。


