リパーパスとは?電池分野で注目される理由と導入時のポイントも解説

リパーパスは、リユースやリサイクルと混同されやすい概念ですが、用途を転じて価値を生み直す点に特徴があります。この記事では、リパーパスの定義を中心に電池分野で注目される理由も解説します。

こうしたリパーパスの仕組みづくりや、資源の再価値化を実務面から支援するのが、五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」です。廃棄物削減や未利用資源のポテンシャル分析を起点に、循環を前提とした製品管理や構造的な企業変革を強固に支援します。リソースを「使い切り」にせず、別の用途で「新たな収益源」へと変え、次世代の循環型経営を構築したい方は、ぜひお気軽にご相談ください。

目次

1.リパーパスの定義とリユース等との違い

ここでは、リパーパスの基本的な意味と、リユース等との違いを解説します。

(1)リパーパスの基本的な意味と定義

リパーパスとは、役目を終えた製品や部材を別の用途で求められる性能・安全性・運用条件に合わせて設計や仕様を組み替え、価値を生み直して活用し直す考え方です。
素材に戻して再資源化するリサイクルとも異なり、製品・部材としての機能を前提に、用途を切り替えて使います。
必要に応じた改修や評価を伴う点が特徴で、企業では資源制約や廃棄コスト、脱炭素対応の観点から導入が進んでます。

参考:日本発の「電池リパーパス」に関する国際規格が発行されました ~電池の再利用による持続可能な社会を目指して(IEC 63330-1)~|経済産業省
参考:EV電池「リパーパス」で長生き オークネット、循環型経済へ「使い切る」発想|日経新聞

(2)リユース・リサイクル・アップサイクルとの違い

リユース・リサイクル・アップサイクル・リパーパスは、いずれも再活用の手法ですが、元の用途をどう扱うかに本質的な違いがあります。用途との関係で整理すると、リパーパスの特性が明確になります。

概念主な目的用途の扱い価値の生み方
リユース使用期間の延長同じ用途でそのまま使う再使用による価値維持
リサイクル資源の回収用途はいったん失われる資源として再生
アップサイクル付加価値の向上用途はほぼ同じまま改良再加工による価値向上
リパーパス新たな用途創出用途そのものを切り替える機能の再定義による価値創出

リパーパスは、元の用途に縛られず、製品や部材が持つ機能を別の用途に転用する考え方です。

2.電池分野でリパーパスが注目されている理由

電池分野でリパーパスが注目される背景には、EV普及による使用済み電池の増加や資源制約、脱炭素対応、政策動向といった複数の要因があります。
ここでは、リパーパスがなぜ電池分野で現実的な選択肢として注目されているのかを解説します。

(1)EV普及に伴う使用済み電池の増加

EVの普及が進むにつれ、車載用途を終えた使用済み電池の発生量は今後大きく増加すると見込まれています。EV用電池は、走行性能の要件を満たさなくなった後も、容量や出力が一定水準残る場合が多く、直ちに廃棄や資源回収に回すのは合理的とは言えません。
しかし、リサイクルのみを前提とすると、処理能力やコスト、環境負荷の面で課題が生じます。
こうした背景から、残存性能を活かして用途を転じるリパーパスは、使用済み電池を有効活用しながら増加に対応する現実的な手段として注目されています。

参考:https://www.env.go.jp/content/000307095.pdf

【事例】フォーアールエナジーによるEV電池の再利用事例
日産自動車と住友商事の合弁で設立されたフォーアールエナジーは、 EV「リーフ」の使用済み電池を回収し、再製品化する国内初の拠点を 福島県浪江町に展開しています。独自の高度な診断技術を用いて、 電池の残存性能に応じたランク分けを行い、定置型蓄電池や、 物流現場で使われる電動フォークリフトの電源へとリパーパスしています。 また、全国に広がる日産販売店を通じた効率的な回収体制を構築し、 再生可能エネルギーの調整力として電池を再活用することで、 脱炭素社会の実現と資源循環の両立を牽引する先進モデルとなっています。
参考:フォーアールエナジー 公式サイト

(2)資源制約と電池材料の供給リスク

EV需要の拡大に伴い、電池材料であるリチウムやコバルトの需給は世界的に逼迫しています。
これらの資源は特定地域への依存度が高く、地政学リスクや価格変動が企業の調達コストや中長期の事業計画に影響を与えます。
一方、新規採掘に依存し続ける方法は、供給の不安定さに加え、環境負荷の増大という課題も抱えます。
こうした状況を踏まえると、使用済み電池に残る材料価値や機能を活かして再活用するリパーパスは、資源制約と供給リスクの双方を抑える現実的な対応策として位置づけられています。

参考:https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/conference/battery_strategy2/shiryo03.pdf

【事例】ALTNA(オルタナ)によるバッテリー循環の取り組み
ホンダと三菱商事が設立したALTNA(オルタナ)は、EV普及の課題である 資源制約と供給リスクに対し、独自のリースモデルで解決を図っています。 車両からバッテリーの所有権を切り離して管理し、車載用としての寿命が 尽きた後は、回収した電池を電力系統用の蓄電池としてリパーパスします。 この仕組みにより、リチウムやコバルトといった希少資源を特定企業が 一貫して管理・循環させることが可能となり、国外流出を防いでいます。 資源を「使い捨て」にせず、ライフサイクル全体で価値を最大化させる ことで、材料調達の地政学リスクを抑えた安定的な基盤を構築しています。
参考:ALTNA株式会社 公式サイト
参考:Hondaと三菱商事、新会社「ALTNA株式会社」を設立

(3)環境負荷低減とカーボンニュートラル対応

電池の製造には、原材料の採掘から加工、製造に至るまで多くのエネルギーと資源が投入され、過程全体で相応のCO₂が排出されます。そのため、使用期間が短いほど、単位あたりの環境負荷は相対的に大きくなります。

リパーパスにより電池を別用途で継続活用すれば、製品ライフサイクルを延ばし、環境負荷を分散させることが可能です。企業にとっては、脱炭素や環境目標に実務として貢献できる手段であり、リパーパスはSDGsやカーボンニュートラルの考え方と整合する取り組みです。

参考:https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/conference/battery_strategy2/shiryo03.pdf

【事例】日本ガイシとリコーによるリユース電池の環境価値可視化
日本ガイシとリコーは、EVの使用済み電池を再利用した定置型蓄電池の 「環境貢献」をデジタル技術で証明する先進的な共同実証を行いました。 リコーのブロックチェーン技術を活用し、電池の製造からリユース、 そして再稼働に至るまでのライフサイクル全体のデータを記録することで、 リパーパスによるCO₂削減量を高い信頼性で可視化することに成功しています。
新品の電池を製造する際にかかる膨大なエネルギー消費を抑制できる リユース電池の利点を、客観的なデータとして数値化できるのが強みです。 この仕組みにより、導入企業は自社のカーボンニュートラルへの貢献度を 正確に把握し、ESG投資や環境報告書における実務的な根拠として 活用することが可能となります。電池を単なるハードウェアとしてでなく、 信頼性の高い「環境価値」を伴う資産へと進化させた重要な事例です。
参考:日本ガイシとリコー 再エネトラッキングの実証事業を開始へ ~蓄電池に充放電した再エネの環境価値を担保し、取引できる仕組み構築を目指す~

(4)政策・産業動向による後押し

国や自治体は、資源循環の強化や脱炭素の実現を目的に、使用済み電池の有効活用を重要な政策課題として位置づけています。
こうした政策動向を受け、産業界でもリパーパスを前提とした実証や事業検討が広がっています。
あわせて、用途転換時の安全性や性能を担保するための評価手法やガイドライン、制度整備も進められています。

参考:https://www.env.go.jp/content/000307095.pdf
参考:電池エコシステム構築に向けて|経済産業省

【事例】BASC(電池サプライチェーン協議会)による標準化と基盤整備
電池サプライチェーン協議会(BASC)は、日本の主要な自動車・電池 メーカーが結集し、官民連携で使用済み電池の循環利用に向けた 国際標準化やルール形成を強力に推進しています。
特に力を入れている のが、電池のライフサイクル全般のデータをデジタル上で追跡・管理する 「電池パスポート」の構築であり、欧州の厳しい電池規制への対応と 日本産業の競争力強化を同時に目指しています。この基盤が整備される ことで、使用済み電池の残存性能や材料情報が可視化されるため、 リパーパス市場における信頼性が飛躍的に向上し、中古電池の円滑な 取引や適切な再資源化が可能となります。
資源の国外流出を防ぎ、 国内で効率的に資源を循環させるエコシステムの構築を主導することで、 経済安全保障とカーボンニュートラルの両立を支える重要な役割を 担っています。政策動向を迅速に事業へ反映させるための架け橋として、 日本における電池産業の持続可能な成長に大きく貢献しています。
参考:電池サプライチェーン協議会(BASC)公式サイト

3.電池リパーパスの企業事例・取り組み

ここでは、定置用蓄電池への転用や産業・インフラ分野での活用、流通プラットフォーム構築など、具体的な企業の取り組みを通じて、電池リパーパスがどのように実装されているのかを解説します。

(1)EV用使用済み電池の定置用蓄電池への活用

引用:https://www.kepco.co.jp/corporate/notice/notice_pdf/20240523_1.pdf

関西電力株式会社と東京センチュリー株式会社は、使用済みEV電池を定置用蓄電池として活用する実証試験を開始しました。
車載用途を終えた電池を再設計し、出力100kW・容量約300kWhの蓄電池システムとして運用し、安全性や保守性、運用ノウハウを検証しています。
東京センチュリーが電池調達を担い、関西電力が電力事業の知見を活かしてシステム構築と運用を担当します。
本実証は、EV電池を廃棄や材料回収に回す前に別用途で活かす電池リパーパスの代表的な取り組みです。

(2)産業・インフラ分野における電池リパーパス活用

引用:https://www.env.go.jp/content/000307095.pdf

環境省の資源循環体制構築に向けた実証事業では、車載用電池を定置用蓄電池として安全性評価や残寿命評価の基準策定を進め、産業用・系統用・家庭用など多様な用途ごとの性能要件を整理しています。
また、適切な評価マトリクスや認証ガイドラインの整備を通じて、二次利用市場の活性化を図る取り組みが進行中です。
本プロジェクトでは、国内でリパーパス電池を流通させることによるCO₂排出抑制効果の試算も行われており、新品蓄電池の代替による環境改善効果が期待されています。

(3)企業による電池リパーパスの取り組み事例

引用:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000024.000034036.html

MIRAI-LABO株式会社は、株式会社オークネットと業務提携し、使用済みEVバッテリーを対象としたリパーパス製品のBtoB流通プラットフォームを構築しています。
EVバッテリーは劣化状態のばらつきや品質保証の難しさが課題でしたが、同社は独自の劣化診断技術により性能を評価・グレーディングし、用途に応じたリパーパス製品として再設計します。
本取り組みは、電池リパーパスを一部の実証にとどめず、流通・事業化まで広げる先進的な事例です。

4.電池リパーパスを取り巻く制度・規格と業界動向

制度や規格の整備状況は、電池リパーパスを実務として検討できるかどうかを左右します。ここでは、国内外の制度・国際標準、業界連携の動きを整理し、それらが企業の導入判断にどのような影響を与えるのかを解説します。

(1)電池リパーパスに関する国内制度・政策の動き

国内では経済産業省を中心に、使用済み電池を廃棄・資源回収に回す前に、二次利用やリパーパスで価値を引き出す考え方が整理されています。
リパーパスは、一次利用を終えた電池を目的を転じて別製品に組み込み再活用する取り組みとして位置づけられ、安全性・性能を評価する枠組みの整備も進んでいます。
企業が導入を検討する際は、用途転換に伴う評価方法、必要な履歴情報の扱い、責任分界を制度的前提として押さえることが重要です。

参考:環境省:『太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第三版)』を公開|PVリサイクル

(2)国際規格・標準化の動向

電池リパーパスの分野では、IECをはじめとする国際機関で規格策定が進められています。背景には、使用済み電池を別用途で活用する際の安全性や性能、品質を共通の基準で評価する必要性があります。
国際規格では、用途転換を前提とした評価方法や管理の考え方が重視されており、企業が国や地域をまたいで事業を展開する際の指針です。
こうした標準は、国内外の取り組みをつなぐ共通基盤として機能し、電池リパーパス市場の信頼性と持続的な成長を支える役割を果たしています。

【事例】FDKによる電池リパーパスの国際標準化への貢献
電池メーカーであるFDKは、使用済み電池の二次利用を円滑にするため、 国際電気標準会議(IEC)における規格策定に深く関わっています。
同社は、リユース電池の安全性や性能を評価する際の指針となる、 国際ガイダンス規格「IEC 63338」の策定で中心的な役割を担いました。 この規格は、一次利用を終えた電池を別の用途へ転換するプロセスにおいて、 製造者とリユース事業者の責任分界を明確にすることを目的としています。 技術的な評価手法だけでなく、品質保証や管理の考え方を共通化することで、 企業が国境を越えて安心して事業を展開できる環境づくりを推進しています。
自社の技術知見を国際標準に反映させることで、市場の信頼性を高め、 持続可能な資源循環社会の実現に向けた基盤整備を主導している事例です。 こうした標準化の取り組みは、日本企業の競争力を維持しながら、 グローバルな電池リパーパス市場の健全な成長を支える柱となっています。
参考:電池に関する国際規格・基準の標準化推進に向けた当社の取り組みについて
~ 当社従業員が一般社団法人 電池工業会の活動表彰を受賞 ~

(3)業界団体・企業連携による取り組み

電池リパーパスの分野では、業界団体や企業間の連携による実証や共同検討が進んでいます。
使用済み電池は個体差が大きく、安全性や性能評価、流通の仕組みを単独企業で完結させることが難しいためです。
このため、複数企業が役割を分担し、技術検証と並行して評価基準や運用ルールの整備が進められています。
こうしたエコシステム型の取り組みにより、電池リパーパスは業界全体で共有すべきテーマとして位置づけられつつあります。

【事例】自再協による業界横断的な電池回収と循環の仕組み
一般社団法人自動車再資源化協力機構(自再協)は、国内の自動車 メーカー各社が共同で設立し、EVやハイブリッド車の使用済み電池を 適正かつ効率的に回収・処理するための業界共通基盤を運営しています。
メーカーの枠を超えた広域な回収ネットワークを構築することで、 1社では負担が大きい輸送コストや資源管理の効率化を実現しており、 解体業者から回収された電池を適切なリパーパスや再資源化ルートへ 繋げる重要な役割を担っています。個体差が大きく、取り扱いに専門的な 技術を要する車載電池に対し、業界全体で統一された回収フローを 整備することで、安全性の確保と不適切な廃棄の防止を徹底しています。
また、回収データの集約を通じて電池の流通実態を把握し、将来的な 発生量の増加に備えたインフラ整備や制度設計の基礎を支えています。 こうしたエコシステム型の取り組みは、資源循環を個別の企業競争から 切り離し、社会全体の持続可能な仕組みとして定着させる好事例です。
参考:自動車再資源化協力機構 公式サイト

(4)制度・規格が企業の導入判断に与える影響

制度や規格が整備されることで、企業は電池リパーパスにおける安全性や性能評価の考え方を共通の基準で把握でき、導入可否を判断しやすくなります。
一方で、評価方法や責任分界が未整理な領域では、事故時の対応や品質保証を巡るリスクが残ります。
そのため導入検討時には、適用される制度や規格の範囲、評価・管理の前提、未整備部分の影響を確認することが重要です。

参考:EVの電池循環を支援する価値顕在化・流通システムの構築|カウラ
参考:国内資源循環体制構築に向けた再エネ関連製品及びベース素材の全 体最適化実証事業(リチウムイオン蓄電池の資源循環を目的とし た、車載電池リパーパス時の安全性・性能ランク分類の実証事業) 委託業務 成果報告書|デンソー
参考:蓄電池市場は2050年に100兆円規模へ!成長予測と課題を解説|環境エネルギー情報局
参考:EV 電池サーキュラーエコノミー白書 ~“重要鉱物保護主義”時代の到来と“EV 鉱山”活用の重要性~|日本総合研究所

5.企業がリパーパス導入を検討する際のポイント

ここでは、企業がリパーパス導入を検討する際のポイントを解説します。

(1)リパーパスの目的と事業上の位置づけを明確にする

リパーパス導入の目的が曖昧なまま進められると、品質基準やコスト水準、社内の評価軸が定まらず、実証段階で止まってしまうリスクが高まります。環境配慮やESG対応の一環として位置づけるのか、あるいは収益化や新規事業創出までを視野に入れるのかによって、設計すべきスキームや投資判断は大きく異なります

つまりリパーパスを事業ポートフォリオの中でどの役割として位置づけるのかを明確にすることで、継続性と実行力を備えた取り組みにつながります。

【事例】オリックスによる系統用蓄電池事業と資源循環の統合
オリックスは、EVの使用済み電池を含む蓄電池資産を、単なる 「再利用品」ではなく、電力市場で収益を生む「戦略的な エネルギー資産」として位置づけています。
同社は関西電力など と提携し、国内最大級の「紀の川蓄電所」などの系統用蓄電所を 全国で展開しており、再生可能エネルギーの出力調整や需給の 安定化に寄与する分散型エネルギーリソースとして活用しています。 リース業で培った「資産のライフサイクル管理」の知見を活かし、 車載用としての役割を終えた電池を電力系統に接続することで、 製品寿命を延ばしつつ投資回収効率を高めるモデルを構築しました。
この事業は、脱炭素社会の実現に向けた「系統の安定化」という 社会課題の解決と、自社の「資源循環ビジネス」の拡大を両立する ポートフォリオの柱となっており、環境価値を収益化する実務的な 好事例です。単体での販売に留まらず、電力取引や保守運用まで 含めたバリューチェーン全体でリパーパスの価値を最大化しています。
参考:関西電力とオリックスが仕込んだ脱炭素への次の一手、いま注目される蓄電所事業とは|オリックス

(2)対象製品・部材がリパーパスに適しているかを見極める

使用済み製品は個体差や劣化状態にばらつきが生じやすく、すべてを同一条件で再活用できるとは限りません。残存性能や耐久性、安全性をどの程度まで担保できるかを把握せずに進めると、品質リスクや想定外のコスト増につながります。

また、構造が複雑で部材ごとの状態確認に手間がかかる製品は、再製品化の工程負荷が高くなり、リパーパスのメリットを損なう可能性があります。あわせて、用途変更後の需要や使用環境を想定し、求められる性能水準を満たせるかを検討することが必要です。

【事例】オークネットによるEVバッテリーの迅速な診断と流通基盤
中古車オークション大手のオークネットは、個体差が大きく評価が 困難であった使用済みEVバッテリーに対し、独自の自動劣化診断 システムを導入することで、効率的な流通モデルを確立しました。
これまでは充放電に丸一日を要していた残存性能の測定を、わずか 数分という短時間で完了させる技術を構築し、リパーパスに適した 良質な個体を即座に選別できる体制を整えています。この診断データを 「バッテリー状態報告書」として可視化し、オークションという透明性の 高い市場で流通させることで、買い手となる蓄電池メーカーや再生 事業者が、品質リスクを最小限に抑えて導入判断を下せるよう支援 しています。単なる仲介に留まらず、診断から格付け、そして物流までを 一気通貫で提供するプラットフォームは、構造が複雑で評価の手間が かかるというリパーパス特有の課題を解決する先進的な取り組みです。
データの信頼性を担保することで、二次利用市場の健全な拡大を支え、 電池の資産価値を最大化する循環型ビジネスの先駆けとなっています。
参考:オークネット 中古EVバッテリーの「自動劣化診断ライン」を始動 ~ 24時間の診断時間をわずか5分以内へ短縮。需要増加へ向けて対策を完了~|PRタイムス

(3)回収・再製品化・販売までの体制を構築できるか

リパーパスを継続的な取り組みとして成立させるには、安定した数量と品質を確保できる運用設計が求められます。
再製品化においては、分解・選別・再加工・検査といった工程を自社で担うのか、外部パートナーと連携するのかによって、必要な体制や管理項目は大きく異なります。
さらに既存の販売網を活用するのか、用途や顧客を限定した形で展開するのかによって、在庫管理や責任範囲の考え方も変わります。

回収から販売までの流れを通して整理し、継続運用が可能な体制を構築できるかどうかが、リパーパス導入の成否を左右します。

【事例】伊藤忠商事によるパートナーシップ型リユース電池事業
伊藤忠商事は、自社で大規模な製造設備を抱えるのではなく、 技術力を持つ外部パートナーとの連携を核とした柔軟な事業体制を グローバルに構築しています。
中国の蓄電池スタートアップである PAND社などへ出資し、車載用としての役割を終えた電池を効率的に 回収・診断し、通信基地局用などの定置型蓄電池へと再製品化する 一連のバリューチェーンを確立しました。商社ならではの広範な ネットワークを活かし、電池の調達から製品の販売までを一貫して プロデュースすることで、安定的かつ継続的な数量確保を実現しています。
特に、自社ブランド「Bluestorage」として展開する リユース蓄電システムは、新品よりもコストパフォーマンスに優れ、 工場の非常用電源や再生可能エネルギーの貯蔵用途として、国内外の 幅広い顧客へ提供されています。このように、診断・加工技術と 商流・金融機能を掛け合わせることで、資源循環と経済性を両立した エコシステム型のビジネスモデルを牽引している好事例といえます。
参考:伊藤忠商事の 電力・環境ソリューション事業戦略と、 EVリユース電池を活用した蓄電システム “Bluestorage”について

(4)環境価値・ESG文脈として説明できる根拠があるか

たとえば、廃棄物削減量や資源使用量の抑制、CO₂排出量削減への寄与など、どの観点で環境負荷低減につながっているのかを明確にする必要があります。また、その効果をどの範囲まで把握・管理できているのかを整理し、説明可能な水準で示すことが求められます。

環境価値を定量・定性の両面から示せる状態を整えることで、対外的な情報開示や社内合意を進めやすくなり、リパーパスを継続的な施策として位置づけることが可能になります。

【事例】パナソニックによるリユース電池を活用した脱炭素工場の実現
パナソニックグループは、自社の製造拠点においてEVの使用済み 電池を再利用した大型蓄電システムを導入し、環境経営を象徴する 「CO₂実質ゼロ工場」の実現に向けた中核技術として活用しています。
徳島工場などの拠点では、太陽光発電とリユース電池を組み合わせ 再生可能エネルギーの自家消費率を極限まで高めることで、工場の 稼働に伴う排出量を大幅に削減する実証を成功させました。
単なる 資源の延命に留まらず、廃棄物削減と脱炭素を同時に達成するこの 取り組みは、ESG投資家が重視するサーキュラーエコノミーへの 具体的な貢献策として、高い透明性をもって情報開示されています。 電池の製造からリユースまでを一貫して手がける総合力を活かして、 ライフサイクル全体での環境負荷低減を数値化し、持続可能な製造 業の新たなモデルを提示しています。自社導入で得た運用データは 外部へのソリューション提供にも反映され、産業界全体のグリーン トランスフォーメーションを牽引する強力な推進力となっています。
参考:脱炭素化の実現|パナソニックエナジー

6.まとめ

リパーパスは、使用済みの製品や部材を同じ用途で使い続けるのではなく、別の用途に適した形へ組み替え、再び価値を持たせる考え方です。
電池分野では、EV普及による使用済み電池の増加や資源制約、脱炭素対応を背景に注目が高まっています。
制度整備や企業事例も進み、リパーパスはSDGsやサーキュラーエコノミーと整合する、企業の実務判断に組み込みやすい選択肢として位置づけられつつあります。

こうしたリパーパスの仕組み構築や、資源の多角的な再価値化を実務面から支援するのが、五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」です。現場の廃棄物・未利用資源の分析から、新たな用途開拓(商品開発)や構造的な企業変革を強固に支援します。リソースを「使い切り」の運命から解き放ち、持続可能な収益源へと転換したい方は、ぜひお気軽にご相談ください。

監修

早稲田大学法学部卒業後、金融機関での法人営業を経て、中小企業向け専門紙の編集記者として神奈川県内の企業・大学・研究機関を取材。
2013年から2020年にかけては、企業のサステナビリティレポートの企画・編集・ライティングを担当。2025年4月よりフリーランスとして独立。
企業活動と社会課題の接点に関する実務経験が豊富で、サステナビリティ分野での実践的な視点に基づく発信を強みとしている。