ライフサイクルアセスメント(LCA)は、脱炭素経営やScope3対応を加速させるうえで、今や不可欠な「製品の健康診断」といえる手法です。本記事では、LCAを戦略的に活用している先進事例5選を厳選し、具体的な活用例と改善効果を詳しく解説します。
こうしたLCAによる「見える化」を、単なる数値算出で終わらせず、具体的な資源循環の仕組みへと実装するのが、五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」です。製品ライフサイクル全体の環境負荷を分析し、廃棄物削減や素材の再価値化(アップサイクル)を軸とした、構造的な企業変革を強固に支援します。データを「納得感のある企業価値」へと変換し、次世代の循環型経営を構築したい方は、ぜひお気軽にご相談ください。
1.ライフサイクルアセスメントとは?

ここでは、ライフサイクルアセスメントの基本的な定義、評価範囲の考え方、企業での活用例を解説します。
(1)ライフサイクルアセスメントの定義を簡単に解説
ライフサイクルアセスメントは、製品・サービスの原材料調達から製造、輸送、使用、廃棄・リサイクルまでの全工程で、CO₂排出量や資源・水の使用量、廃棄物量などの環境負荷を数値で評価する手法です。
総量と工程別の寄与を可視化し、負荷が集中する工程(ホットスポット)を特定して改善策につなげます。
工程間の負荷移転を避けつつ、素材変更や軽量化、再エネ活用、物流最適化などの判断根拠として使われます。
参考:ライフサイクルアセスメントとは?ゼロから学ぶ!ビジネスに活かすLCA|三井化学
参考:LCA(ライフサイクルアセスメント)とは?メリットや事例をご紹介|三井物産
(2)評価対象となるライフサイクルの範囲
ライフサイクルアセスメントでは、どこまでを評価対象に含めるかという「ライフサイクル範囲の設定」が算定結果を大きく左右します。
範囲は目的に応じて選ぶ必要があり、主に以下の3区分が用いられます。
| 区分 | 評価範囲 | 主な活用目的 |
|---|---|---|
| Cradle to Gate | 原材料調達〜製造 | 製品設計・材料選定 |
| Cradle to Grave | 原材料調達〜廃棄 | 環境報告・比較評価 |
| Cradle to Cradle | 原材料調達〜再資源化 | 循環型設計・資源循環 |
含める工程が異なると、CO₂排出量や改善ポイントの解釈も変わります。
参考:サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルに向けたカーボンフットプリントの算定・検証等に関する検討会 報告書
(3)ライフサイクルアセスメントの取り組み例
ライフサイクルアセスメントに取り組むことで、CO₂排出量や資源消費が大きい工程を把握でき、環境負荷削減に向けた施策を具体化しやすくなります。
調達・生産・物流・使用・包装・廃棄までを通じて見直すことで、コスト削減や資源使用量の最適化も可能です。また、低炭素製品やサステナブル素材の採用は、製品価値や企業イメージの向上に寄与します。
ESG投資や取引先からの情報開示要請への対応基盤となり、脱炭素経営を中長期で推進する土台として機能します。
2.【業界別】ライフサイクルアセスメント事例
(1)自動車業界|マツダによる車種・駆動方式別CO₂排出量比較と改善効果

マツダは、車両の製造から使用、廃棄・リサイクルまでを対象にライフサイクルアセスメントを実施し、車種や駆動方式ごとのCO₂排出量を比較しています。内燃機関車と電気自動車について、地域ごとの電力構成や走行条件を踏まえて評価した結果、ライフサイクル全体での環境優位性は使用環境によって変化することが明らかになりました。
これらの分析を通じて、特定技術に偏らず、燃費改善や電動化などを組み合わせたマルチソリューション開発を進めています。ライフサイクルアセスメントを技術選択と長期的な環境戦略の判断基盤として活用している点が特徴です。

(2)食品業界|日本ハムのCFP表示にみる原材料・製造・包装・物流工程の環境負荷算定例

日本ハムは、原材料調達から製造、流通、使用、廃棄・リサイクルまでの全工程を対象にライフサイクルアセスメントを実施し、食品のライフサイクル全体での環境負荷を算定しました。その結果、CO₂排出量は製造工程よりも原材料調達段階の影響が大きいことが判明しました。
そこで同社は、排出規模と管理可能性の両面を踏まえ、包装材や段ボールの見直しを優先施策として推進しています。さらに「森の薫り」シリーズではCFP表示を行い、環境配慮を消費者に可視化する取り組みを進めています。
(3)建築業界|鹿島建設のライフサイクルアセスメント評価システムによる建材選定・施工方式・廃棄までのライフサイクル評価

鹿島建設は、建物の新築・リニューアル・解体までのライフサイクルで発生する資材投入や廃棄物などの環境負荷を、独自開発のライフサイクルアセスメント評価システムで予測しています。
設計段階で使用材料や構工法を比較し、廃棄物の発生量や最終処分量が少なくなる案を選択することで、リサイクル率の向上と環境影響の低減を図ります。
あわせて、メーカーリサイクル(広域認定制度)の活用など、水平リサイクルにつながる処理方法も取り入れ、建材の再資源化を促進しています。
(4)包装・日用品業界|TOPPAN・生出などによる素材変更・軽量化・リサイクル設計が与える効果

TOPPANは、軟包装・紙器・プラスチック成形品を対象にライフサイクルアセスメントでパッケージのライフサイクル全体のCO₂排出量を算定し、素材変更や設計変更の効果を根拠付きで提案しています。
再生PETの活用、アルミ代替のバリアフィルムによるモノマテリアル化、紙素材への置換、容器の薄肉化などにより、製造時のCO₂を約18〜28%、事例によっては約40%低減した例も示されています。ライフサイクルアセスメントを設計判断に組み込み、脱炭素と資源使用量削減を両立させる点が特徴です。
(5)サービス・IT業界|富士通グループなどによるクラウド利用・運用効率化のライフサイクルアセスメント評価と排出削減効果

富士通グループは製品・サービスのライフサイクル全体で環境負荷を評価するライフサイクルアセスメントを、製品設計やサービス展開に活用しています。
特にクラウドやサービス化(servicizing)へのライフサイクルアセスメント適用では、オンプレミス環境とクラウド環境でのCO₂排出量や資源消費を比較し、クラウド利用によって運用効率が高まり、消費電力や資源廃棄量の削減効果がある点を把握する点が特徴です。
また、富士通はESG Management Platformを通じて、サプライヤーとも連携し製品カーボンフットプリント(PCF)データの共有・可視化を進めることで、バリューチェーン全体の排出削減につなげています。
3.ライフサイクルアセスメントの算定プロセス

ライフサイクルアセスメントは、目的設定からデータ収集、算定、改善提案までを段階的に進めるプロセスです。
ここでは、実務で押さえるべき算定の流れをまとめ、各工程での考え方と注意点を解説します。
(1)目的・製品範囲・環境影響の明確化
ライフサイクルアセスメントは、最初に「何のために実施するのか」を明確にすることが重要です。
目的によって求められる精度や評価範囲が異なるため、事前整理が欠かせません。
| 項目 | 主な選択肢 | 設定のポイント |
|---|---|---|
| 実施目的 | 製品改善・環境報告・ESG対応 | 利用シーンを明確化 |
| 評価範囲 | 調達〜製造・使用・廃棄 | 目的に応じて選択 |
| 評価指標 | CO₂・エネルギー・水・廃棄物 | 重要指標に絞る |
目的・範囲・指標を揃えて設計することで、後工程のデータ収集や再計算の手戻りを防ぎ、効率的なライフサイクルアセスメント運用につながります。
(2)活動量データ・排出係数の収集
ライフサイクルアセスメントでは、各工程の活動量データに排出係数を掛け合わせて環境負荷を算定します。
活動量データは自社で把握できるものだけでなく、外部データも組み合わせて収集します。
| データ区分 | 具体例 | 主な入手先 |
|---|---|---|
| エネルギー | 電力・燃料使用量 | 自社管理データ |
| 物流 | 輸送距離・輸送量 | 物流部門・委託先 |
| 材料 | 材料重量・使用量 | 調達部門・サプライヤー |
| 係数 | 排出係数 | 公的DB・業界平均 |
欠損データは近似値や過去実績、業界平均係数で補完します。
工数が集中しやすいため、排出影響が大きい項目から優先的に収集することが重要です。

(3)CO₂・資源消費・廃棄物・環境影響項目の算定
インベントリ分析で算出した排出量をもとに、ライフサイクルアセスメントでは環境影響を指標別に評価します。
重要なのは数値を合算するだけでなく、どの工程がどの指標に強く影響しているかを把握することです。
| 評価指標 | 主な内容 | 着目ポイント |
|---|---|---|
| CO₂排出量 | 温室効果ガス排出 | 脱炭素対策の優先工程 |
| エネルギー消費 | 電力・燃料使用 | 省エネ余地の有無 |
| 水使用量 | 取水・排水 | 地域リスクへの影響 |
| 廃棄物 | 発生量・処理方法 | 再資源化の可能性 |
工程ごとの寄与度を整理し、環境負荷が集中するホットスポットを特定することで、業界や製品特性に応じた優先改善項目を判断できます。
(4)ホットスポット分析と改善案の導出
算定結果をもとに、環境負荷が集中する工程や要因を特定する作業をホットスポット分析といいます。
数値の大小だけでなく、改善余地と実行可能性を踏まえて施策を選定することが重要です。
| 対象領域 | 主な改善策 | 期待される効果 |
|---|---|---|
| 材料・設計 | 素材変更・軽量化 | 資源使用量・CO₂削減 |
| 物流 | 輸送距離短縮・積載効率化 | 燃料使用量削減 |
| エネルギー | 再生可能エネルギー活用 | 排出量の大幅削減 |
| 廃棄 | 再資源化設計 | 最終処分量削減 |
改善後の排出量を試算することで、社内提案や投資判断の根拠として活用できます。
4.ライフサイクルアセスメント導入のポイント

ライフサイクルアセスメントを実務に落とし込むには、算定方法だけでなく、データ収集や体制構築、進め方の設計が重要です。ここでは、ライフサイクルアセスメントの導入時のポイントを解説します。
(1)必要となるデータと収集範囲の整理
ライフサイクルアセスメント導入では、まず取得すべきデータを工程別に整理し、収集範囲を現実的に定めることが重要です。全工程を一度に網羅しようとすると工数が過大になるため、排出影響が大きい工程や取得しやすい項目から段階的に拡張します。
| 工程区分 | 主な取得データ例 | 優先度判断 |
|---|---|---|
| 原材料 | 使用量・調達先 | 排出量の大きさ |
| 製造 | 電力・燃料使用量 | データ取得の容易さ |
| 物流 | 輸送距離・手段 | 影響度と改善余地 |
| 使用 | 消費電力量 | 利用実態の把握 |
| 廃棄 | 処理方法・量 | 再資源化可否 |
サプライヤーへの依頼時は項目・粒度・期間を明示し、テンプレート化すると回収効率が高まります。
データは可視化し、版管理と更新履歴を残すことで継続運用が可能です。
(2)社内体制と役割分担の設計
ライフサイクルアセスメントは複数部署が関与するため、事前に役割分担を明確にしないと進行が停滞しかねません。
環境部門を軸に関係部署が責任範囲を共有し、三層構造で体制を設計すると安定します。
| 役割区分 | 主な担当内容 | 関与部署例 |
|---|---|---|
| 責任者 | 方針決定・最終承認 | 経営層・経営企画 |
| プロジェクトリーダー | 全体設計・進行管理 | 環境部門 |
| 実務担当 | データ収集・分析 | 製造、調達、物流、品質 |
あわせて、ライフサイクルアセスメントの目的や評価範囲、データ粒度を事前に共有し、スケジュールを明確化します。
定例会や依頼テンプレート、進捗管理表を活用することで、部署間の行き違いや情報不足を防ぎ継続的な運用につなげられます。
(3)内製・外部委託・ツール導入の選択基準
ライフサイクルアセスメントの進め方は、内製・外部委託・ツール導入のいずれが自社に適するかを見極めることが重要です。評価対象の規模や目的、求める精度によって最適解は異なります。
| 方式 | 適しているケース | 特徴 |
|---|---|---|
| 内製 | 製品数が少ない、範囲が限定的 | コストを抑えやすいが専門知識が必要 |
| 外部委託 | 多品種、海外拠点、第三者検証 | 高精度・説明力が高い |
| ツール導入 | 継続算定、複数製品評価 | 効率化・再現性に優れる |
費用、初期工数、算定精度、継続性、報告用途を軸に判断し、まず外部支援で立ち上げ、段階的に内製やツール活用へ移行する柔軟な設計が現実的です。
(4)導入時に起こりやすい失敗と回避策
ライフサイクルアセスメント導入では、進め方を誤ると途中で停滞しやすくなります。
代表的な失敗と回避策を整理すると、実務でのつまずきを防ぐことが可能です。
| よくある失敗 | 起こりやすい原因 | 回避策 |
|---|---|---|
| 範囲を広げすぎる | 理想を優先し過剰に網羅 | 影響の大きい工程から段階導入 |
| 担当者任せ | 社内合意・関与不足 | 経営層と目的を共有 |
| 算定で終了 | 改善設計が不十分 | 改善提案まで一連で実施 |
| 選定基準が曖昧 | 要件整理不足 | 期待成果を事前に明確化 |
成功企業は、小規模に検証し、改善を重ねながら対象を拡大するステップ型で導入しています。
5.まとめ
ライフサイクルアセスメントは、製品・サービスの全工程を数値化し、環境負荷の大きい工程を特定して改善につなげる手法です。小規模に始めて拡張することで、脱炭素やESG対応を実務に落とし込めます。
目的と評価範囲を明確にし、段階的に算定・改善を進めることが重要です。
こうしたLCAによる現状分析を、具体的な「資源循環の仕組み」へと昇華させるのが、五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」です。数値化された課題に対し、廃棄物削減や素材の再価値化、サプライチェーンの再設計といった実効性の高いソリューションを提供し、構造的な企業変革を強固に支援します。データを「確かな競争優位性」へと変換し、次世代の循環型経営を実現したい方は、ぜひお気軽にご相談ください。


