アップサイクルとは?定義と意味、企業の成功事例も詳しく紹介

アップサイクルは、廃材や不要品にクリエイティブなデザインやアイデアを掛け合わせ、元の製品よりも次元の高い価値を与えることで、「環境負荷の低減」と「経済的利益」を両立させるビジネス戦略です。
この記事では、アップサイクルの本質的な意味から、なぜ今多くの企業が「戦略」として取り入れているのか、その具体的な手法と成功事例を解説します。

こうした未利用資源の再価値化を、戦略立案から実務実装まで支援するのが、五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューションです。現場で発生する廃棄物の分析を起点に、それらを企業のブランド価値を高める商品や資源へと転換する、構造的な企業変革を強固に支援します。廃棄物をコストから新たな収益源へと変え、次世代の循環型経営を構築したい方は、ぜひお気軽にご相談ください。

目次

1.アップサイクルとは?類似用語との違いも紹介

アップサイクルは廃材に新たな価値を与える再利用手法で、リサイクルやリメイクと明確に異なります。
ここでは定義から類似概念との違い、活用領域までを解説します。

(1)アップサイクルの定義と意味

アップサイクル(Upcycling)は、1994年に提唱された概念であり、現代では持続可能な社会を実現するための「バリュー・アップ(価値向上)」の手法として定着しています。

デザインや加工、用途変更、機能の付加などによって、別の商品として生まれ変わらせる点が特徴です。
クリエイティブな発想やストーリー性を伴うことで市場性が高まり、環境配慮とビジネスの両立を実現しやすくなります。海外ではUpcyclingやCreative Reuseと呼ばれ、サーキュラーエコノミーを支える概念として広がりつつあります。

参考:アップサイクルとは?リサイクル・リメイクとの違いと取り組み事例|楽天

(2)リサイクル・リメイクとの違い

リサイクルは一度素材に戻して再利用するため、品質や価値が下がるケースが多い点が特徴です。
リメイクは元の形を一部残しながら用途変更する加工で、付加価値は限定的です。

手法価値の変化プロセス資源の寿命
リサイクル低下〜維持素材レベルへ戻して再資源化分解の過程で劣化しやすいペットボトル→繊維原料
リメイク維持〜微増元の形を残しつつ加工・修繕寿命を一定期間延ばす古着を別デザインへ
アップサイクル向上(UP)デザイン・機能を加えて再創造全く別の新しい命を与える廃材を新商品へ再構築

一方アップサイクルは、素材や形状を活かしつつデザイン・機能を加えて価値を高める再利用手法で、創造性や独自性を生む点に強みがあります。

参考:アップサイクルの定義・意味とは?リサイクルやリメイクとの違いと具体例を紹介|SMART ENERGY WEEK

(3)アップサイクルとダウンサイクルの違い

アップサイクルは、デザインや加工によって新しい用途や付加価値を生み出し、元の素材以上の価値へ引き上げる再利用方法です。独自性・創造性を伴うため、市場性の高い商品へ発展しやすい点が特徴です。
一方、ダウンサイクルは素材を再利用できるものの、品質・機能が低下し、価値が下がるプロセスを指します。

例えば、オフィスから出たコピー用紙をトイレットペーパーにするのは「ダウンサイクル」です。一方で、建築現場の足場板を高級家具に変えるのは「アップサイクル」です。「資源を最後まで使い切る」だけでなく「価値を最大化し続ける」ことが、循環型社会の目指すべき姿です。

手法特徴
アップサイクルデザインや加工で新しい価値を創出廃材を新しい雑貨・家具へ再構築
ダウンサイクル素材は再利用できるが品質・用途が縮小ペットボトル→繊維原料

参考:ダウンサイクルとアップサイクルとは?具体例やリサイクル・リメイクとの違いも解説|リダクションテクノ

(4)アップサイクルの代表的な活用領域

アップサイクルは活用できる領域が広く、素材特性や副産物の種類に応じて多様な商品化が可能です。
食品領域では規格外品や副産物の再商品化、アパレルでは古着や端材を用いた一点物の再構築が代表例です。
家具・建材では解体材や余剰資材を再設計し、雑貨領域では端材・梱包材・工場副資材を小ロットで商品化できます。
近年注目されているのは、BtoB(企業間取引)におけるアップサイクルです。工場の製造工程で発生する端材(鉄くず、端切れ、端材)を「副産物」ではなく「二次資源」と捉え、異業種と連携して新たな部材やプロダクトへ転換する動きが活発化しています。

①食品領域

食品領域のアップサイクルでは、規格外野菜や余剰食材、パン耳・コーヒーかすといった副産物を再活用し、食品から雑貨・肥料まで多用途に展開できる点が特徴です。
特にフードロス削減との親和性が高く、素材の背景や生産者の想いを伝えるストーリー性が購買行動を後押しします。

活用素材主な製品例事業上のポイント
規格外野菜・余剰食材菓子・スープ・調味料供給安定化・衛生基準対応
パン耳・コーヒーかす等の副産物アロマ・雑貨・飼料・肥料ストーリー性による価値訴求

事業化にあたっては、安定供給の仕組みづくりや食品衛生法・表示区分への対応が不可欠で、多くの企業がOEMを活用しています。

【事例】廃棄部位に光を当てる「Upcycle by Oisix」の挑戦|オイシックス・ラ・大地
食品宅配大手のオイシックス・ラ・大地が展開するこの事業は、 ブロッコリーの芯やナスのヘタといった、これまで加工現場で 避けられていた未利用部位を主役に据えたブランドです。
独自の乾燥・加工技術を駆使することで、素材本来の風味を 活かしたサクサク食感のスナック菓子などへ転換しています。 単なる「もったいない」という善意に頼るのではなく、 商品としての美味しさと洗練されたパッケージデザインを 追求することで、嗜好品としての市場価値を確立しました。 自社の製造工程から出る廃材を自社で製品化する仕組みは、 原料の透明性と鮮度を担保し、消費者が日常の買い物を通じて 無理なく環境貢献に参加できる循環モデルを実現しています。
参考:Upcycle by Oisix 公式サイト

②アパレル・ファッション領域

アパレル領域では、古着・返品商品・在庫過多品・繊維端材を再構築し、限定性の高い一点物やリメイクデザインとして商品化するアップサイクルモデルが拡大しています。
ブランドコンセプトと環境配慮を掛け合わせやすく、ストーリー性や唯一性がファンづくりに直結する点が強みです。
体験型イベントやEC・ポップアップ販売との相性も良く、新規顧客の獲得にもつながります。

活用素材主な商品化例成功ポイント
古着・デニム・端材一点物アパレル・リメイク品ストーリー性・デザイン性
返品品・在庫過多品再構築アパレル限定性・ファン育成

一方で、縫製・加工に手作業が多く大量生産が難しいという構造的課題が残りますが、その希少性自体が付加価値として評価されやすい領域です。

【事例】裁断くずから新たな息吹を生む「L∞PLUS」の循環|倉敷紡績
クラボウが展開する独自のアップサイクルシステムは、 縫製工場から出る「裁断くず」を廃棄せず、 専用の技術で一度綿状にほぐして再び糸にする取り組みです。
「循環(LOOP)」と「付加価値(PLUS)」を掲げるこの活動は、 異業種や地域社会を巻き込む共創ビジネスへと進化しました。 単なる素材の再利用にとどまらず、元の生地が持つ色味を そのまま活かした唯一無二の風合いを強みとしています。 大手アパレルブランドとの連携により、環境負荷を抑えた デニム製品や生活用品へと姿を変え、市場に届けられます。 大規模な産業ネットワークを通じた国内循環型社会の構築は、 日本の繊維業界における持続可能なモノづくりの手本です。
参考:クラボウ L∞PLUS(ループラス)特設ページ

③家具・インテリア領域

家具・インテリア領域では、解体材・廃材・古家具・建材の余剰品を再設計し、家具・什器・内装材として再生するアップサイクルが広がっています。経年変化や傷、色味の個性を素材の味として価値化しやすく、唯一性の高いデザインを生み出しやすい点が特徴です。

活用素材主な用途成功ポイント
解体材・廃材・古家具家具・什器・内装材経年変化の価値化・唯一性
余剰建材店舗・ホテル内装デザイン性・職人技との融合

BtoC向けの家具販売だけでなく、店舗・ホテル・オフィスなどの内装案件にも採用が進み、商空間のブランディング要素としても機能します。

【事例】古材に新たな命を吹き込む「レスキュー」の循環|ReBuilding Center JAPAN
長野県諏訪市を拠点とするリビルディングセンタージャパンは、 解体される建物から古材や古道具を「レスキュー」し、 新たな価値を与えて次世代へとつなぐ活動を続けています。 単に古いものを売るのではなく、その素材が刻んできた 歴史や物語を丁寧に引き出し、現代の暮らしに馴染む 洗練されたデザインの家具や内装材へと昇華させています。 彼らの活動は個別の製品販売にとどまらず、地域の空き家を アップサイクル素材で再生する店舗づくりへと広がり、 街全体の風景やコミュニティを豊かに変え始めました。 「もったいない」という感情を、誰もが参加したくなる ワクワクするような創造的体験へと転換した先駆的なモデルです。
参考:ReBuilding Center JAPAN(リビセン)公式サイト

④雑貨・生活用品領域

雑貨・生活用品領域は、端材・梱包材・工場副資材・皮革・紙素材など、多様な資源を小ロットで転用しやすいことが特徴です。
試作や商品テストが行いやすいため、新規事業やブランドのサブラインとして参入しやすく、OEM委託・クラフト製造・地場産業との協働によって展開の幅が広がっています。

活用素材主な用途強み
端材・梱包材・副資材・皮革・紙素材文具・雑貨・ノベルティ・ギフト小ロット対応・PR効果・世界観構築

企業向けにはノベルティや周年記念品としての需要が増加しており、ストーリー性を付与することで、PR効果や世界観訴求に優れたアイテムとして機能します。

【事例】捨てられた傘に新たな個性を宿す「PLASTICITY」
日本国内で年間数千万本も廃棄されるビニール傘を素材とし、 独自の加工技術によって洗練されたバッグや小物へと 生まれ変わらせるブランドが「PLASTICITY」です。
粉砕して原料に戻すリサイクルではなく、傘の防水性や 汚れにくさをそのまま活かし、何層にもプレスして 頑丈なシート状に加工する手法に大きな特徴があります。 使い古された傘の傷や模様を「雨の記憶」としてデザインに 昇華させ、世界に一つだけの表情を持つ製品へと転換しました。 「ゴミ」というネガティブな認識を、高いデザイン性と 実用性を兼ね備えたクリエイティブなプロダクトへと変え、 消費者が楽しみながら環境問題の解決に寄与できる、 新しいファッションのあり方を提示し続けています。
参考:PLASTICITY 公式サイト

⑤建築・産業領域

建築・産業領域では、工場廃材・工業副産物・解体資材・余剰パーツを再設計し、部材・資材・什器・工具ケースなどBtoB向けの高付加価値製品として展開するモデルが拡大しています。
産廃処理費の削減や資材価格高騰への対策として企業側の合理性が高く、環境配慮とコスト最適化を同時に実現できる点が注目されています。

活用素材主な用途企業側のメリット
工場廃材・副産物・解体資材・余剰パーツ部材・資材・什器・工具ケース処理費削減・資材高騰対策・高付加価値化

一方、製品化には開発・設計・製造・調達の連携が不可欠で、安定した素材調達と加工パートナーの確保が成功を左右します。

【事例】廃棄物を「素材」へと再定義するナカダイの挑戦
総合リサイクル業を営むナカダイが運営するモノ・ファクトリーは、 工場から出る端材や部品を「ゴミ」ではなく魅力的な 「素材」として再定義し、新たな循環を生む拠点です。
解体や選別の技術を駆使して取り出された金属や樹脂は、 クリエイターの手に渡り、洗練されたオフィス什器や 店舗ディスプレイといった高付加価値製品へ生まれ変わります。 単なる産廃処理にとどまらず、企業の廃棄物から その企業専用の家具を作る「循環型コンサルティング」は、 環境負荷の低減と自社ブランディングを同時に叶えます。 素材の魅力を引き出す独自の審美眼とマッチング能力により、 産業廃棄物を都市の共有資産へと昇華させる画期的なモデルです。
参考:株式会社ナカダイ / モノ・ファクトリー 公式サイト

2.なぜ今、企業が戦略的に取り組むべきなのか

① 原材料リスクの低減と「資源の資産化」

世界的な原材料高騰や供給不安定(地政学リスク)に対し、自社から出る廃棄物や市場の不要品を資源に変えるアップサイクルは、サプライチェーンの強靭化(レジリエンス)に寄与します。

【事例】都市鉱山を「自立した資源」に変えるDOWAの循環戦略
DOWAホールディングスは、世界最大級の選別・製錬技術を 駆使して、廃棄された家電や電子機器から金や銅などの 多様な貴金属を高い精度で回収する仕組みを構築しています。
地政学的リスクによる鉱石供給の不安定化や、世界的な 資源価格の高騰が経営の脅威となる中で、国内に眠る 廃棄物を「都市鉱山」という確固たる資源資産に変えました。 素材を原料へと戻すプロセスに、独自の化学技術を 掛け合わせることで、新品よりも純度の高い金属を 抽出するなど、アップサイクルに近い付加価値を生んでいます。 廃棄物処理と資源供給を一つのサイクルで完結させる このモデルは、外部依存を脱却し、サプライチェーンの 強靭化を支える持続可能な資源戦略の理想的な姿です。
参考:DOWAホールディングス 資源リサイクル事業の紹介

② 「情緒的価値」による高付加価値化

機能や価格での差別化が困難なコモディティ化市場において、「廃棄されるはずだったものが、ここまで美しくなった」というストーリーは、消費者の共感を呼び、ブランドへのロイヤリティを高める強力なフックとなります。

【事例】大空の記憶を暮らしに添えるANAのアップサイクル
ANAグループが手掛けるアップサイクルプロジェクトは、 役目を終えた飛行機のシートカバーや整備作業着を、 バッグやクッションといった日常品へ再生する取り組みです。
単なる資源の再利用にとどまらず、数千時間を超える フライトを支えてきたという「物語」を付加価値に変えました。 かつて多くの旅人を運んだ機体の一部というロマンが、 航空ファンの心を強く揺さぶり、抽選倍率が数十倍に 達するほどの熱狂的な支持を集める人気商品となりました。 機能性だけでなく、空への憧れという情緒的価値を 製品に宿すことで、ブランドと顧客の絆をより深く結び、 サステナビリティと愛着を両立させた先進的なモデルです。
参考:ANA アップサイクルプロジェクト第1弾 オンワード商事(株)とのコラボ!「ANA特製ルームシューズ」販売開始

3.企業がアップサイクルに取り組むメリット

アップサイクルは、環境配慮だけでなく企業のブランド力・選ばれやすさ・コスト面にも効果をもたらします。
ここからは、企業が取り組む具体的なメリットを3つの観点から解説します。

(1)ブランド価値・企業イメージの向上

アップサイクルへの取り組みは、大量生産・大量廃棄からの脱却という企業姿勢を明確に示す手段となり、ブランド価値や企業イメージの向上に直結します。廃棄物に対する創造的な解決策を示すことで、イノベーティブな企業文化を対外的にアピールできます。
環境配慮を意識する消費者や取引先企業が増えるなか、サステナブルな商品づくりは重要な評価軸となっており、商品そのものが社会課題の解決に寄与する点も強みです。
広告に依存しないブランド形成が可能で、ESGレポートや統合報告書、CSR活動との整合性も高く、ステークホルダーからの信頼獲得にも貢献します。

【事例】店舗の記憶を循環させるデニーズの資源再生
ファミリーレストラン「デニーズ」を展開するセブン&アイ・ フードシステムズは、使用済みのメニュー表を廃棄せず、 店内で使用するドリンクトレーへと再生させています。
素材には石灰石を主原料とした「LIMEX」を採用しており、 店舗で役割を終えたメニューを回収して再び店舗備品として 戻すことで、目に見える形での資源循環を実現しました。 この取り組みは、単なる産廃削減にとどまらず、顧客が 実際に手に取る備品を通じて企業の環境姿勢を直接伝える 強力なブランディングツールとしての役割を担っています。 自社のサプライチェーン内で完結するクローズドループの 構築は、外食産業におけるサステナビリティの模範であり、 ステークホルダーからの高い信頼獲得に直結しています。
参考:セブン&アイ・フードシステムズと TBM が連携し、 デニーズ全店で使用・回収された LIMEX 製メニュー表をリサイクルトレーに再製品化

(2)環境配慮による顧客・取引先からの選ばれやすさ

ESG評価やグリーン調達が重視される中、具体的な「循環モデル」を持つことはビジネスにおける優位性となります。
環境配慮を前提に商品やサービスを選ぶ消費者は確実に増えており、BtoC市場ではアップサイクル品が選ばれる理由が明確になりつつあります。
BtoBにおいても、調達基準にサステナブル要件を設ける企業が増加しており、環境配慮型の製品は商談段階から評価されやすい傾向があります。
同一カテゴリの商品でも、廃材活用やストーリー性といった付加価値を提示することで差別化が可能です。

【事例】グリーン調達の波を捉えるサンゲツの循環型資材
インテリア内装材のトップメーカーであるサンゲツは、 製造工程で生じる端材を再利用した循環型のタイルカーペットを 展開し、BtoB市場における強固な優位性を築いています。
脱炭素経営を推進する企業にとって、オフィスや商業施設の 内装資材選びは環境目標の達成を左右する重要な要素です。 サンゲツのアップサイクル製品は、具体的な環境負荷の 低減データを提示することで、設計者や施工主が優先的に 採用したくなる「選ばれる理由」を明確に提示しています。 単なる素材の提供にとどまらず、顧客のサステナビリティ 推進を支えるパートナーとしての地位を確立したことで、 競合他社との差別化を図り、市場での存在感を高めています。
参考:環境配慮型 床材カーペットタイル「NT double eco」を11/4に新発売 CO₂排出量を最⼤約61%削減!漁網やカーペット廃材などをリサイクルした100%リサイクル⽷を採⽤

(3)資源活用による経済メリット

アップサイクルは、産廃処理費を削減し、それを「原材料費」に充てることで、トータルコストの最適化を図れます。廃材や規格外品、余剰品を再活用することで、廃棄処理費や輸送費の削減につながり、資源活用を通じて経済メリットを生み出します。
原材料の高騰リスクを軽減し、調達コストを最適化できる点も企業にとって大きな利点です。
本来は廃棄されるはずだった素材が商品価値を持つことで新たな収益源となり、在庫品やサンプル品をアップサイクルして新しい商品ラインを展開する事例も増えています。

【事例】廃棄コストを収益に変えるリンテックの循環モデル
シールの製造工程で大量に発生し、従来は多額の費用をかけて 焼却処分されていた剥離紙を、リンテックは独自の回収 システムを通じて高品質な封筒や名刺へと再生させています。
この取り組みは、単なる産廃処理費の削減にとどまらず、 廃棄物を「自社で管理可能な二次資源」へと転換することで、 不安定な外部のパルプ市場に依存しない原材料の確保を実現しました。 本来は「負のコスト」であった不要物が、アップサイクルを 通じて新たな市場価値を持つ製品へと昇華し、企業に 持続的な収益をもたらす「正の資産」へと姿を変えています。 資源の最適活用が直接的な経済メリットを生み出すことを 証明した、サーキュラーエコノミーの理想的な実装事例です。
参考:剥離紙の有効活用・リサイクル促進に向けラベル循環協会に参画

4.アップサイクル事業化を成功させる「3つの要諦」

  1. 「デザイン」を先行させる: 「余ったから作る」というプロダクトアウトではなく、まず「市場が求める魅力的な製品」を定義し、そこに廃材をどう適合させるかというマーケットインの視点が不可欠です。
  2. パートナーシップ(共創): 素材を持つ企業、デザインするクリエイター、販売するチャネル。これらを「つなぐ」エコシステムを構築することが、小ロット・高単価の壁を越える鍵となります。
  3. トレーサビリティの確保: 「何が元になっているか」という透明性が、アップサイクル製品の信頼と価値を担保します。

【事例】海洋ゴミを次世代の資産へと変えるECOALFの信念
「地球を救うために誕生した」という強い使命を掲げる スペイン発のECOALFは、海洋プラスチックゴミや 使用済みのタイヤなどを、高品質なファッションへと アップサイクルする世界的な先駆者として知られています。
彼らの最大の特徴は、独自のサプライチェーンを通じて 素材の出所から製造工程までを完璧に可視化する、 圧倒的なトレーサビリティを確立している点にあります。 ゴミを単に再利用するだけでなく、最先端の技術を用いて バージン材と同等の機能性を持つ生地を自社開発することで、 「サステナブル=妥協」という従来の常識を覆しました。 「何が元になっているか」という透明性が顧客の信頼を生み、 環境意識の高い層から熱狂的な支持を得ることに成功しています。 単なる衣服の販売を超え、透明性を価値の源泉とした ビジネスモデルは、これからの産業が進むべき道を示しています。
参考:ECOALF(エコアルフ)日本公式サイト コンセプト

5.企業の取り組み・商品化に学ぶアップサイクル成功事例

ここでは食品・アパレル・雑貨など、企業事例から学べる価値創出のポイントを解説します。

(1)食品領域の成功事例|upvegeに見る未利用野菜のアップサイクルによる商品開発

引用:https://upvege.com/

upvegeは、規格外や未利用野菜を粉末化し、汎用性の高い野菜パウダーとして再商品化する食品アップサイクルの代表的事例です。
サイズ不揃いや小さな傷で出荷されない野菜を、パン・菓子・ドレッシング・パスタなど多様な商品に展開できる点が特徴で、OEM製造からパッケージ提案まで一貫対応しています。
食品ロス削減と栄養価の維持を両立しつつ、BtoBの共同開発を通じて市場性を高めたフードテック型モデルといえます。

(2)アパレル領域の成功事例|MALION vintage・LOVST TOKYOによる廃材・古着再構築の高付加価値モデル

引用:https://www.mistore.jp/shopping/feature/shops_f2/st_denimdemirai5_sp.html

MALION vintageとLOVST TOKYOは、古着や廃棄予定デニムを解体して再構築し、デザイン性と希少性で価値を高めるアパレルのアップサイクル事例です。
伊勢丹新宿店主導のデニム de ミライでは、リーバイス501のユーズドストックを活用し、色落ちの濃淡や傷といった経年変化を個性として商品に落とし込みました。
個体差があるため量産は難しい一方、手仕事の一点物が支持され、ポップアップ等を通じてファンを広げています。

(3)雑貨・グッズ領域の成功事例|楽天のスポーツ施設廃材を活用した応援グッズアップサイクル

引用:https://www.rakuteneagles.jp/news/detail/202300374781.html

楽天は、スタジアムで使用された看板を回収し、応援用のハリセン型シートクッションへ再生するアップサイクル企画を実施しました。
2022シーズンの看板という象徴的な廃材を活用することで、ファンの記憶やストーリーを持つ応援グッズとして再価値化した点が特徴です。
SNS投稿を条件とした配布施策を組み合わせ、参加型のサステナブル体験として成立させています。

6.まとめ

アップサイクルは、社会課題をクリエイティビティで解決し、新たなビジネスチャンスを生み出す強力なツールです。これまでの「大量生産・大量廃棄」という線形モデルから、「リソースを循環させながら価値を高め続ける」循環型モデルへの転換が求められています。自社の足元に眠る「未活用リソース」に光を当て、デザインという魔法をかけることで、持続可能な未来と事業成長を同時に実現しましょう。

こうした「未利用資源の再価値化」を、現場の廃棄物分析から新商品開発のプロデュースまで一貫して支援するのが、五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」です。廃棄物を処理すべき負債ではなく、企業の独自性を生む貴重な原材料へと変える構造的な企業変革を強固にサポートします。自社に眠る可能性を掘り起こし、次世代の循環型経営を実現したい方は、ぜひお気軽にご相談ください。

監修

早稲田大学法学部卒業後、金融機関での法人営業を経て、中小企業向け専門紙の編集記者として神奈川県内の企業・大学・研究機関を取材。
2013年から2020年にかけては、企業のサステナビリティレポートの企画・編集・ライティングを担当。2025年4月よりフリーランスとして独立。
企業活動と社会課題の接点に関する実務経験が豊富で、サステナビリティ分野での実践的な視点に基づく発信を強みとしている。