サーキュラーエコノミーへの対応が企業に求められる中で、取り組みをどう評価し、どう説明すればよいのかと悩む担当者は少なくありません。この記事では、サーキュラーエコノミー指標の全体像を整理し、定量評価が難しい理由や、実務で無理なく活用するための考え方を解説します。
複雑な循環指標の策定と、それに基づく成果の創出を実務面から支援するのが、五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」です。廃棄物削減のデータ化や資源の再価値化を起点に、環境負荷を見える化し、企業の透明性と競争力を高める構造的な変革を強固に支援します。取り組みを客観的な企業価値へと昇華させたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。
1.サーキュラーエコノミーの評価・定量化が難しい理由

サーキュラーエコノミーは重要性が高まる一方で、評価や定量化が難しい分野でもあります。
ここでは、なぜサーキュラーエコノミーの評価が難しいのか、その構造的な理由を解説します。
(1)循環性を単一の数値で表せないため
サーキュラーエコノミーの循環性は、複数の要素が組み合わさって成立する概念であり、単一の数値で正確に表すことはできません。
循環性を構成する要素同士にはトレードオフが存在し、特定の指標だけを高めても、全体最適につながらない場合があります。
| 指標の種類 | 評価の視点 | 循環性のどの側面を担うか |
|---|---|---|
| 再生材含有率 | 資源投入段階 | 新規資源依存の抑制 |
| 回収率 | 使用後段階 | 循環ループへの戻りやすさ |
| 耐久性・使用期間 | 利用段階 | 資源使用の長期化 |
製品や事業の特性によって重視すべき観点も異なるため、単一のKPIに集約すると、改善の方向性や説明内容を誤るリスクがあります。そのため循環性は、役割の異なる複数指標を組み合わせて捉えることが前提となります。

(2)評価対象が多層化しているため
サーキュラーエコノミーは製品単体だけでなく、事業、サプライチェーン、企業全体といった複数の階層で評価する必要があります。階層ごとに評価軸が異なるため、全体最適を図るにはレイヤーを分けて判断する必要があります。
| 評価レベル | 主な評価軸 | 評価の観点 |
|---|---|---|
| 製品レベル | リサイクル率/再生材比率/回収率 | 製品設計や素材選定が循環性にどの程度寄与しているか |
| 事業レベル | 回収スキーム/再資源化プロセス/長寿命化施策 | 循環型ビジネスモデルが実際に機能しているか |
| サプライチェーンレベル | 資源フローの追跡/データ連携体制/回収・再資源化体制 | 関係者を含めた循環の仕組みが全体として成立しているか |
レイヤーが上がるほど求められるデータの粒度や評価項目が増えるため、定量化や統合の難易度が高まる課題があります。
(3)循環性の向上が環境負荷低減と必ずしも一致しないため
サーキュラーエコノミーにおける循環性と、ライフサイクルアセスメントで評価される環境負荷低減は、本来異なる軸の概念です。循環性指標と環境負荷指標の違いは以下のとおりです。
| 評価軸 | 主な目的 | 把握できる内容 |
|---|---|---|
| 循環性指標 | 資源の回り方を評価 | 再利用・再資源化の構造や循環の成立度 |
| 環境負荷指標 | 環境影響を評価 | エネルギー使用量、CO₂排出量などの負荷水準 |
このように両者は役割が異なるため、循環性を示す指標と環境影響を評価する指標を切り分けて併用することが不可欠 になります。
(4)データ取得・算定に実務的な制約があるため
サーキュラーエコノミー指標の算定には多様で詳細なデータが必要ですが、実務ではその取得そのものが大きなハードルになる場合があります。
評価対象がサプライチェーン全体に及ぶ場合が多く、自社の対応だけで完結せず、取引先との情報共有や管理体制のばらつきが制約になります。また、回収・再資源化の実態を継続的に追跡する仕組みが十分に整っていないケースも少なくありません。
さらに、国や地域によって制度要件やデータ精度の基準が異なるため、国際比較が難しいという課題もあります。
このような状況を踏まえると、完璧な算定を前提とするのではなく、把握可能な範囲を明確に定め、合理的に説明できるレベルで運用することが現実的な対応となります。
(5)サーキュラーエコノミーはゴールを単一化できないため
サーキュラーエコノミーは、資源効率の向上・環境負荷の低減・経済的価値の創出・社会的便益の確保といった複数の目的を同時に内包する概念です。
これらは本来異なる評価軸であり、どれを優先するかは企業の事業領域・バリューチェーンの特性・社会的役割によって大きく異なります。以下に目的別の観点と指標設計への影響をまとめています。
| 目的の分類 | 主に重視される観点 | 指標設計への影響 |
|---|---|---|
| 環境目的 | CO₂削減・環境負荷低減 | LCA併用や排出量指標が必要 |
| 資源目的 | 資源循環・安定調達 | 回収率・循環利用率が重視される |
| 経済目的 | コスト削減・収益性 | 効率性や事業持続性の指標が必要 |
| 社会目的 | 供給責任・地域連携 | 定性評価や体制面の指標が重要 |
上記のように目的が多様である以上、単一指標で企業間の優劣を比較すると、事業構造や戦略の違いを無視した誤った評価につながるリスクがあります。そのため、複数指標の併用や、目的別に評価枠組みを分けて設計することが不可欠です。
2.主要なサーキュラーエコノミー指標の種類と特徴

サーキュラーエコノミーの評価には、目的や評価レベルに応じて複数の指標が用いられます。
ここでは、主要なサーキュラーエコノミー指標の種類と特徴を解説します。
(1)ISO59020は循環性を測る国際標準指標
ISO59020は、ISOが策定するサーキュラーエコノミー関連規格(ISO59000シリーズ)の中で、循環性の測定と評価に特化した国際標準です。
循環性を評価する際の基本的な考え方として、評価範囲の設定から指標選定、必要データの把握、算定、結果の評価・報告までの一連のプロセスをまとめています。
指標には、循環性を把握するためのコア循環性指標と、目的に応じて補足的に用いる指標群があり、柔軟に選択できます。また、組織全体だけでなく、製品単位や複数組織、地域レベルなど、さまざまな評価対象に適用できる点も特徴です。
参考:https://webdesk.jsa.or.jp/pdf/dev/md_6720.pdf
参考:循環経済や脱炭素に係る 制度、指標についての概要|環境省
参考:資源循環経済政策を巡る動向と そのあり方について|経済産業省
参考:サーキュラーエコノミー移行を通じた企業のビジネスモデル変革 ~ISO 59000シリーズ、GCPへの対応~|三菱UFJリサーチ&コンサルティング
(2)WBCSD CTIはサーキュラーエコノミー移行度を示すフレームワーク
WBCSD CTIは、WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)が策定した、企業のサーキュラーエコノミーへの移行度を評価するフレームワークです。
循環性の数値を測定するだけでなく、循環型経済にどの程度近づいているかという移行プロセスを可視化する点が特徴です。
原材料調達から製造、使用、回収、再利用まで、バリューチェーン全体を経営判断と結びつけて整理でき、循環型ビジネスへの課題や改善点を把握しやすくなります。製品や事業単位に加え、企業全体やサプライチェーンにも適用でき、業種を問わず国際比較に活用できる点も評価されています。
参考:https://www.env.go.jp/content/000267104.pdf
参考:サーキュラーエコノミーを加速させる指標活用|三菱総合研究所
(3)製品・素材レベルで使われる主要な指標
製品・素材レベルで用いられるサーキュラーエコノミー指標は、個々の製品や材料がどの程度循環型設計になっているかを把握するための指標です。
再生材の利用状況や回収・再利用のしやすさなど、製品設計や素材選定と直接結びつく点が特徴です。
改善内容が現場レベルで理解しやすく、設計変更や調達方針の見直しにも活用できます。以下で製品・素材レベルで使われる主要な指標をそれぞれ解説します。
①循環物質の利用率
循環物質の利用率は、製品や素材に使用される原材料のうち、再生材や再利用材などの循環物質がどの程度を占めているかを示す指標です。
新規資源の投入をどれだけ抑えられているかを把握できるため、資源循環の進展度をわかりやすく示せます。
製品設計や調達方針の改善状況を定量的に評価しやすく、社内外への説明指標としても活用されています。
参考:https://www.eic.or.jp/ecoterm//?act=view&ecoword=%BD%DB%B4%C4%CD%F8%CD%D1%CE%A8
参考:循環利用率|日本電機工業会

②リサイクル率
リサイクル率は、回収された廃棄物や使用済み製品のうち、再資源化された量の割合を示す指標です。
廃棄物処理や回収体制の機能度を把握しやすく、資源循環の進捗を定量的に示す際に広く用いられています。
製品や素材レベルでの比較や、施策導入前後の変化を確認する指標として有効です。
参考:https://www.env.go.jp/recycle/kosei_press/h000404a/gomi.pdf

③バイオ資源の占める比率
バイオ資源の占める比率は、製品や素材に使用される原材料のうち、植物由来などの再生可能なバイオマス資源がどの程度を占めているかを示す指標です。化石資源への依存度を把握でき、資源調達の持続可能性を示す際に活用できます。
バイオ資源の利用拡大は、循環型社会への移行を示す要素の一つとされていますが、この比率が高いことだけで循環性や環境負荷低減が達成されるわけではありません。
原料調達方法や土地利用、加工工程の影響も踏まえ、他の循環性指標や環境指標と組み合わせて評価することが重要です。
参考:https://www.maff.go.jp/j/shokusan/biomass/b_kihonho/local/attach/pdf/keikaku_sakutei-121.pdf
④再生材料含有率
再生材料含有率は、製品や部材に使用される原材料のうち、使用済み製品や廃棄物から再生された材料がどの程度含まれているかを示す指標です。
新規資源の投入削減や資源循環の進展度をわかりやすく示せるため、製品設計や調達方針の評価に用いられます。
材料品質や用途制約の影響も受けるため、再生材料含有率は循環性の一側面として捉え、回収率やリサイクル率など他の指標と併せて評価することが重要です。
(4)ESG・非財務開示で用いられるサーキュラー関連指標
ESGや非財務情報開示の分野では、欧州を中心とした制度整備や国内外での統合報告の広がりを背景に、資源循環やサーキュラーエコノミーへの取り組みが開示対象として重視される傾向が強まっています。
具体的には、廃棄物削減量や最終処分量、リサイクル率といった指標が、循環施策の成果を示す数値として用いられています。また、売上などのアウトプットに対する資源投入量を評価する資源効率(Resource Productivity)も代表的な指標です。
回収スキームの導入状況や再利用・リファービッシュの取り組みなど、サプライチェーン全体の循環性を示す定性・定量情報も、説明力を高める要素として活用されています。
3.ISO59020とWBCSD CTIの違い

ISO59020は、製品・サービス・組織・地域など複数の階層を対象に、再利用や再生材利用、回収率といった循環性を標準的に測定・評価するための国際規格です。
一方、WBCSD CTIは、企業全体の資源インプットとアウトプットに着目し、マテリアルフロー分析を通じて循環型経済への移行度を把握するフレームワークです。
以下では、それぞれの位置づけや測定対象等をご確認いただけます。
| ISO59020 | WBCSD CTI | |
|---|---|---|
| 位置づけ | サーキュラーエコノミーの 循環性を測定するための国際規格(ISO) | 企業の サーキュラーエコノミー移行度(トランジション)を評価するフレームワーク(WBCSD) |
| 測定対象 | 製品・サービス・組織・地域など幅広い単位に対応 | 企業全体の資源フロー(インプット/アウトプット) |
| 評価の軸 | 材料循環性(再利用・再生材利用・回収率など)、循環指標群(コア+補助) | サーキュラー・インプット率、サーキュラー・アウトプット率、マテリアルフロー分析(MFA) |
実務では、CTIで自社の課題や移行状況を内部分析し、その結果をISO59020に基づく指標で整理・説明することで、社外への説明力と比較可能性を高めやすくなります。
4.企業におけるサーキュラーエコノミー指標の活用方法

サーキュラーエコノミー指標は、導入するだけでは十分な効果を発揮しません。
ここでは、企業が指標を実務で活かすための考え方と活用のポイントを解説します。
(1)目的に応じた指標を選択する
企業がサーキュラーエコノミー指標を活用する目的は、意思決定、改善、社内外への説明など多岐にわたるため、目的を起点に指標を選択することが重要です。以下では目的ごとの適した指標例をご確認いただけます。
| 目的 | 適した指標例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 製品レベルの改善 | ・リサイクル率・再生材比率・循環物質利用率 | 製品の素材構成や設計改善に直結する「素材・構造に紐づく指標」が有効。改善点が明確になりやすく、現場と連携しやすい。 |
| 組織レベルの循環性把握 | ・ISO59020(国際標準) | 組織全体の循環性を評価する体系的なプロセスが定義されており、整合性・再現性・説明可能性を確保できる。 |
| サーキュラー移行度の把握 | ・WBCSD CTI(Circular Transition Indicators) | 現状→改善余地を示す「移行度(Transition)」を可視化でき、戦略策定や改善ロードマップに活用しやすい。 |
| ESG・非財務開示での報告 | ・ISO59020/外部評価と連動する指標 | 比較可能性・第三者検証性が求められるため、国際標準や外部評価と整合する指標が適している。取引先・投資家への説明力が高い。 |
またESGや非財務開示では、国際標準や外部評価と整合する指標を用いることで説明力が高まります。これらを補完的に組み合わせることで、経営判断の精度を高められます。
(2)事業・製品の特性に合わせて評価レベルを揃える
企業がサーキュラーエコノミー指標を活用する際は、組織・事業・製品・素材などの評価レベルを明確に揃えて設計することが重要です。
製品ごとにライフサイクルの長さ、回収可能性、使用形態が異なるため、 同じ指標でも 耐久財と消耗品を単純に比較することはできません。また、企業全体の指標と個別製品の指標が混在すると「どのレイヤーの循環性を評価しているのか」という意図が曖昧になります。
そのため企業は、まず評価レベルを明確に区分し、レベルごとに目的や指標の意味を整理したうえで、同一レベル内で比較・モニタリングできる状態を整えることが求められます。
(3)ISO59020・CTIを起点に指標体系を構築する
ISO59020は循環性の測定方法を体系化し、CTIは資源循環プロセスを可視化する役割を担います。
両者を併用することで、評価項目の抜け漏れや恣意的な指標設計を防げます。
企業は、自社の事業モデルや製品特性に応じて、ISO59020のコア指標や補足指標から必要な項目を選び、自社版の指標体系を設計できます。この指標体系をESGや統合報告などの非財務開示に活用することで、評価の正当性や比較可能性が高まり、投資家や取引先への説明力向上にもつながります。
(4)改善サイクルに組み込み、継続して評価する
サーキュラーエコノミー指標は、数値そのものよりも、改善・維持・悪化といった変化の方向性を継続的に把握することが重要です。定量評価を定期的に行うことで、素材選定や製品設計、回収フローなど、事業プロセスにおける改善余地を特定できます。
ISO59020やCTIはいずれも、計測・評価・改善を繰り返す循環的な運用を前提としており、PDCAに近い考え方が求められます。評価結果を製品開発や調達、物流、回収施策へ確実に反映することで、指標と実行が結びつき、循環型経営の成熟度を高められます。
5.サーキュラーエコノミー指標を活用する際の課題

サーキュラーエコノミー指標は有効な判断軸である一方、実務で活用するにはいくつかの課題があります。
ここでは、指標活用時に直面しやすい代表的な課題を解説します。
(1)データの取得・整備に大きな負荷がかかる
サーキュラーエコノミー指標を活用する際の大きな課題は、データの取得と整備に高い負荷がかかる点です。
多くの場合、評価にはサプライチェーン全体にわたるデータが必要となり、自社だけで完結しないため取得が困難です。
また、製品構造や素材構成、リサイクル率など、従来は管理していなかった情報を新たに整理する必要があります。
ISO59020やCTIに沿った評価を行うには、データの粒度や整合性も求められるため、部門横断での管理体制や情報収集の仕組みを整備することが不可欠となります。
(2)指標間の整合性を保つことが難しい
ISO59020やCTIに加え、既存の社内KPIを併用すると、評価軸や算定前提が異なり、数値の意味がずれやすくなります。
加えて、循環性を示す指標と、LCAなどの環境負荷指標が必ずしも同じ結果を示さない場合もあります。
指標の優先順位や役割を整理せずに運用すると、評価や意思決定に一貫性がなくなり、施策の方向性を誤るリスクが高まります。
(3)指標導入が目的化するリスク
サーキュラーエコノミー指標は、導入そのものが目的化してしまうリスクがあります。
本来、指標は施策の改善や経営判断につなげるための手段ですが、「測ること」に注力しすぎると、評価結果が活用されなくなります。
実際には、PDCAの評価サイクルが回らず、単年度の報告資料にとどまるケースも少なくありません。
また、指標がKPIとして施策と紐づいていない場合、現場では改善行動に反映されず、形骸化してしまいます。
6.まとめ
サーキュラーエコノミー指標は、循環性を正確に数値化するための万能な尺度ではなく、企業の取り組みを合理的に整理し、説明し、改善につなげるための判断軸です。
ISO59020は循環性を測定・報告するための共通言語となり、CTIは自社の移行状況や課題を可視化する役割を担います。
評価レベルや目的を明確にしたうえで複数指標を使い分け、LCAなども併用しながら、実務で説明可能な形に落とし込むことが重要です。
こうした複雑な指標の選定から、それに基づく成果の創出までを実務面から支援するのが、五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」です。廃棄物削減のデータ化や資源の再価値化を起点に、環境負荷を見える化し、企業の透明性と競争力を高める構造的な変革を強固に支援します。取り組みを客観的な企業価値へと昇華させたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。


