環境経営の成功事例12選|脱炭素での成果や費用対効果などを解説

環境経営は、多くの企業にとって必要性を感じながらも「何から始めるべきか」「本当に効果が出るのか」が不明確な領域です。この記事では、大企業から中小企業まで再現可能な環境経営の成功事例12選を紹介し、各社が行った施策と得られた成果を解説します。

こうした環境経営を、資源循環の仕組みによって実務面から成功へと導くのが、五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」です。廃棄物削減による直接的なコスト最適化を起点に、未利用資源の再価値化や、環境負荷を抑えたサプライチェーンの再構築を一貫して支援します。不透明な環境課題を確かな経営成果へと変換し、次世代の循環型経営を構築したい方は、ぜひお気軽にご相談ください。

目次

1.環境経営とは?企業がいま取り組むべき理由とメリット

環境経営は、環境配慮と企業成長を同時に実現する経営手法です。
ここでは、従来のCSRとの違い、取り組みが求められる背景、企業が得られる主なメリットを解説します。

(1)環境経営の定義と従来のCSRとの違い

環境経営は、環境配慮を社会貢献の一部ではなく、利益創出につなげる経営戦略として位置付ける考え方です。
従来のCSRと異なり、商品開発から物流・人事・広報まで企業活動全体を対象に環境負荷の最適化を図ります。
ESG投資や脱炭素の潮流により、持続的成長を支える枠組みとして重要性が高まっています。

従来のCSR環境経営
位置づけ社会貢献の一部経営戦略の中核
対象範囲単発施策中心事業全体(調達・生産・物流など)
目的社会的評価収益性・競争力・企業価値向上
関連領域ボランティア等ESG投資・脱炭素・サステナ戦略

環境対応はリスク管理にとどまらず、利益改善・ブランド向上・投資家評価など多面的な価値創出につながる点が企業に求められる理由です。

参考:第4章 環境経営システムガイドライン|環境省
参考:エコアクション21|環境省
参考:環境配慮経営ポータルサイト|環境省

(2)企業が環境経営に取り組む背景

企業が環境経営に踏み切る背景には、外部・内部双方の圧力と機会が存在します。
取引先・投資家・消費者による環境配慮の要請は近年急速に強まり、CO₂排出量開示義務化やサプライチェーン全体での環境管理など法規制の流れも加速しています。
また、環境配慮は採用力・従業員エンゲージメント・ブランド評価にも影響し、企業価値を左右する要素となっています。
競合の取り組みや環境対応製品・循環型ビジネスの市場機会、ESG投資を含む資金調達面での優位性も背景となり、対応しなければリスク、取り組めば成長機会という構造が形成されています。

参考:サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルに向けたカーボンフットプリントを巡る動向|経済産業省
参考:バリューチェーン全体の脱炭素化に向けたエンゲージメント実践ガイド 令和6年度改訂版|環境省

(3)企業価値・利益向上につながるメリット

企業が環境経営に取り組む背景には、外部要請と内部課題の双方が影響しています。
取引先・投資家・消費者の環境配慮ニーズは急速に高まり、CO₂排出量開示やサプライチェーン全体での環境管理など規制強化も進行します。対応が遅れる企業は調達・取引・資金調達で不利益を受ける可能性が高まっています。

背景区分具体内容
外部要請取引先の環境基準、投資家のESG評価、規制強化(排出量開示義務など)
内部課題採用力向上、エンゲージメント改善、ブランド強化
成長機会環境対応製品・循環型ビジネス、新規市場、ESG資金調達の優位性

一方で、環境対応は採用力や従業員エンゲージメント、ブランド評価を高める要素となり、新規市場や循環型ビジネスの機会創出にも結びつきます。

【事例】リクルートの環境経営事例:人材確保と企業価値の向上
リクルートは、環境経営における「内部課題の解決」と「企業価値向上」に焦点を当てた取り組みを進めています。
同社が特に力を入れているのは、環境や社会への貢献を明確に打ち出すことで、採用競争力の向上を図る点です。 これは、特に社会課題への意識が高い若年層や優秀な人材に対し、働く意義や共感できる価値観を提供し、優秀な人材の獲得・維持に有利に働いています。
また、事業を通じて社会のサステナビリティに貢献する姿勢は、従業員のエンゲージメント向上にも寄与し、生産性や企業への愛着を高める効果を生み出しています。 さらに、環境配慮は事業継続性の観点からも重要であり、事業で使用する電力の再エネ化やCO2排出量の削減目標設定などを通じて、長期的な企業価値を支える基盤を強化しています。 これらの活動は、投資家からのESG評価にも好影響を与え、資金調達面での優位性にもつながっています。
参考:サステナビリティ|リクルート

2.環境経営の成功事例12選

ここでは、製造・食品・建設・日用品など多様な業界で成果を上げた環境経営の具体事例を解説します。

(1)ユニクロ|服回収「RE.UNIQLO」と省エネ工場で循環型モデルを構築

引用:https://www.uniqlo.com/jp/ja/contents/sustainability/planet/clothes_recycling/re-uniqlo/?srsltid=AfmBOoqVAaXEuAHuvhUoyvpaXGf0raNerbhENRXcI-8SX184cHW9ZwU-

ユニクロは、店舗で回収した自社製品をリユース・リサイクルにつなげる「RE.UNIQLO」により、衣類廃棄を極小化しながら循環型モデルを構築しています。
回収された衣類は、状態に応じて仕分けし、難民支援・災害支援などの社会貢献に活用されるほか、ダウン素材の再利用による新商品の開発、衣料以外の断熱材・防音材への加工など、製品価値の最大化を実現しています。
また、省エネ工場の整備など生産面での環境対策も並行して進め、廃棄削減・資源活用・エネルギー最適化を同時に推進しています。

(2)トヨタ自動車|「トヨタ環境チャレンジ2050」でCO2排出量大幅削減

引用:https://global.toyota/jp/detail/9886860

トヨタ自動車は、2050年までに車両ライフサイクル全体の環境負荷を限りなくゼロに近づけることを掲げた「トヨタ環境チャレンジ2050」を推進しています。
走行時のCO₂排出量90%削減(2010年比)を目標に、ハイブリッド・プラグインハイブリッド・EV・燃料電池車の開発・普及を強化しています。
また、生産段階でも高効率化・設備改善・再生可能エネルギー活用により、工場のCO₂排出ゼロを目指しています。
解体性向上やリサイクル素材の活用により資源循環型モデルを構築し、水資源保全や自然環境保全活動も並行して展開しています。

(3)森永製菓|工場の都市ガス化と共同輸配送で燃料・物流コストを同時削減

引用:https://www.morinaga.co.jp/company/sustainability/environment/climate-change.html

森永製菓は、脱炭素社会の実現に向けて、工場のエネルギー源転換と物流の効率化を組み合わせ、CO₂排出とコストの双方を削減しています。
生産拠点では高効率設備の導入や熱損失低減、都市ガス化によりエネルギー使用量を抑制しています。
工場と物流の両面から無駄なエネルギーを削ることで、燃料費・輸送費の削減と温室効果ガス排出量の抑制を同時に達成している事例です。

(4)セブン&アイ|食品廃棄物リサイクルループでフードロスを資源循環に転換

引用:https://www.7andi.com/sustainability/theme/theme3/recycle.html

セブン&アイは、GREEN CHALLENGE 2050 のもと、食品廃棄物の発生抑制とリサイクルを組み合わせた循環型モデルを推進しています。
賞味期限表示の見直しや納品期限の緩和、「てまえどり」などにより店舗での食品ロスを削減しています。
発生した食品残さは、エコ物流で回収し飼料化・肥料化したうえで、セブンファームでの農業生産から店舗販売へ循環させています。

(5)味の素|製造工程の最適化で使用エネルギー削減と品質向上を両立

引用:https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/ir/library/databook/main/00/teaserItems1/06/linkList/02/link/SR2025jp_all.pdf

味の素は、製造工程の最適化によりエネルギー削減と品質向上を両立しています。
生産設備の高効率化や熱エネルギーの再利用、発酵・乾燥・冷却など高負荷工程の省エネ設計を進めることで、CO₂排出量を抑えつつ歩留まりと製品安定性を高めています。
さらに、工場ごとのエネルギーデータを分析し最適稼働を保つ運用改善を行うことで、削減効果を継続的に拡大しています。

(6)イオン|店舗の再エネ導入と省エネ設備で大型商業施設の脱炭素を推進

引用:https://www.aeon.info/sustainability/datsutanso/

イオンは、店舗の脱炭素化を最重要テーマに掲げ、再エネ導入と省エネ設備の改修を大型商業施設から段階的に進めています。
店舗屋上の太陽光発電やPPAモデル、卒FIT電力を組み合わせ、2025年までにイオンモール全施設の使用電力を100%再エネ化する方針です。また、空調・照明の最適制御や断熱強化により電力使用量を削減し、環境負荷とコストの両方を改善しています。

(7)ユーグレナ|バイオ燃料開発で事業そのものを環境価値創出へ転換

引用:https://www.euglena.jp/businessrd/energy/susteo/

ユーグレナは、微細藻類ユーグレナを原料とするバイオ燃料「サステオ」を開発し、陸・海・空のモビリティ向けに供給を進めています。
国内実証プラントで技術を確立したのち、PETRONASやEniliveと連携してマレーシアでの商用プラント建設にも着手しています。
燃料そのものを低炭素化することで、同社の事業を環境価値の提供へ転換し、航空・海運・陸運の脱炭素化に貢献している点が特徴です。

(8)IKEA(イケア)|3Dパーツ提供で「長く使う」仕組みを設計し廃棄削減

引用:https://www.ikea.com/jp/ja/newsroom/corporate-news/20220921-reduce-food-waste-pub597658a0/

IKEAは、家具を長く使うための仕組みづくりを軸に廃棄削減を進めています。
家具パーツの3Dデータ提供や補修サービスを強化し、消費者が必要な部品を入手・交換できる環境を整えることで、買い替えではなく修理を促し、家具の寿命延伸と廃棄量削減を実現しています。
量り売り食品の導入やAIによる食品廃棄物管理を進め、店舗運営でも循環型モデルを構築しています。

(9)大林組|ZEBビルの建設・運用で建設業におけるCO2排出抑制を実現

引用:https://www.obayashi.co.jp/solution_technology/environment/index023.html

大林組は、断熱性向上や日射遮蔽、自然採光・自然換気、高効率空調とBEMSを組み合わせたZEB設計により、建物の一次エネルギー消費を大きく削減しています。
技術研究所本館では年間エネルギー収支ゼロを継続して達成し、オフィスや物流施設にもZEB Readyを展開しています。
運用段階では光熱費とCO₂排出を抑えつつ、快適性と事業継続性も向上させ、建設業における脱炭素と資産価値向上を両立している事例です。

(10)西岡化建|ISO取得と廃棄物削減で「中小企業の環境経営モデル」として評価

引用:https://nishiokakaken.com/data/202502/bin67c0012caf008.pdf

西岡化建株式会社は、エコアクション21認証を起点に、廃棄物削減と環境負荷低減を多面的に進めてきた中小建設企業の事例です。水性材料への切り替えや溶剤削減、廃材の分別・再利用、水使用量の削減、省エネ工法の提案など、現場での改善を継続して実施しています。
さらに、社屋を木造で再建し、断熱性向上や太陽光発電導入により自社拠点でも省エネを実証しています。

(11)キリンホールディングス|工場設備の省エネ改善×物流最適化でCO2・コストを同時削減


引用:https://www.kirinholdings.com/jp/investors/files/pdf/environmental2021_2_05.pdf

キリングループは、工場の省エネ改善と物流最適化を組み合わせ、CO₂排出量とコストの同時削減を進めています。
工場では、蒸気や排水の排熱を再利用するヒートポンプの導入や再生可能エネルギー100%電力への切り替えを進め、2019年以降、全醸造所でGHG排出量を前年比約2%削減しています。
容器包装の合理化などにより環境負荷と資材コストを削減し、脱炭素と経営効率化を両立する好循環を実現している事例です。

(12)花王|調達〜製品〜回収までライフサイクル全体で環境負荷を最小化


引用:https://www.kao.com/jp/sustainability/

花王は、原材料調達から製造・物流・使用後の回収まで、製品のライフサイクル全体で環境負荷を最小化する取り組みを進めています。
調達では森林保全や生物多様性に配慮した原料の使用を拡大し、製造では省エネ設備や再生可能エネルギーにより工場のCO₂排出削減を加速しています。
使用後容器の回収・リサイクルを産官学で推進し、循環型資源利用モデルを構築しています。

3.スモールステップで実践できる環境経営の取り組み

ここでは、初期投資を抑えながら効果を得やすい省エネ・廃棄物削減・ペーパーレス・再エネ導入の具体策を解説します。

(1)省エネ

省エネは、短期間で効果が表れやすく初動施策として取り組みやすい領域です。
空調・照明・生産設備・PCやサーバーの電力を最適化するだけでも削減幅が大きく、業種を問わず再現性があります。
LED化や空調温度の適正化、機器稼働時間の調整、デマンド監視といった小規模投資から始めることで、投資対効果を把握しやすく稟議も通りやすくなります。
一般的に5〜15%の電力削減が期待でき、削減額を試算して示すことで社内理解と次の施策への予算確保につながります。

【事例】キヤノン:グローバルな「環境効率向上活動」によるコスト削減
キヤノンは、生産活動における環境負荷と経済性を両立させるため、「環境効率向上活動」をグローバルに展開しています。
この活動は、単なる省エネ機器の導入に留まらず、製造プロセスの徹底的な見直しを中核としています。具体的には、製品の歩留まり向上や、製造過程における水・空気の循環利用、そして生産設備の高効率化を推進しています。
この包括的な取り組みの結果、製造段階でのCO2排出量を削減すると同時に、年間数十億円規模の省エネコスト削減という具体的な経済的メリットを実現しています。
省エネによるコスト削減額を明確にすることで、さらなる環境投資への予算確保や、従業員の環境意識向上にも繋がっています。キヤノンの事例は、環境経営が利益と直結することを示す代表的な好事例です。
参考:気候変動の取り組み 省エネルギー製品設計|キヤノン

(2)廃棄物の削減

廃棄物削減は、保管スペースや作業工数の圧縮につながり、現場負担とコストの双方を改善できる取り組みです。
仕入れ・生産・梱包・オフィスと幅広い領域で実施でき、業種を問わず再現性が高い点も強みです。
具体的には、リサイクル素材への切り替え、リユース箱や什器の活用、食品や資材ロスの抑制などが挙げられます。
さらに、物流・調達部門と連携して発注量や梱包仕様、納品条件を見直すことで削減効果を高め、継続的なコスト改善へとつなげることができます。

【事例】コカ・コーラ:容器の軽量化と副産物の有価物化
コカ・コーラ ボトラーズジャパンは、廃棄物削減をコスト低減と資源循環の観点から推進しています。
具体的な取り組みとして、飲料ボトルを可能な限り軽量化し、リサイクルしやすい「ラベルレス」製品の導入を進めています。容器の軽量化は、原材料費の削減に加え、物流効率の向上にもつながり、輸送コストの低減に貢献します。
さらに、生産過程で発生する副産物、特に廃水処理後の汚泥などを廃棄物として処分するのではなく、有価物として再利用・売却する取り組みを徹底しています。
これにより、廃棄物処理にかかる費用を大幅に削減し、むしろ新たな収益源を確保しています。これは、環境経営における「廃棄物削減がコスト削減利益創出に直結する」典型的な成功事例です。
参考:容器&リサイクル(循環型社会)|コカ・コーラ ボトラーズジャパン

(3)ペーパーレス推進

ペーパーレス化は、紙・印刷・郵送などの直接費を削減するとともに、保管場所や検索作業、承認フローを効率化できる取り組みです。
会議資料の電子化、クラウドストレージの活用、電子契約・電子稟議、オンライン請求書など段階的に導入できる手段が多く、初期コストを抑えながら効果を得られます。また、バックオフィス部門から始めることで現場への負担が少なく、成功体験をつくりやすい点も企業にとって大きなメリットです。

【事例】トヨクモ:オフィス「紙ゼロ」を実現しビジネス化
トヨクモは、クラウドサービスを提供する企業として、自社のペーパーレス化を徹底的に推進している事例です。
最大の特長は、社内のバックオフィス業務を全面的にデジタル化することで、物理的なオフィス環境を「紙ゼロ」で運営している点にあります。会議資料はもちろん、稟議書や請求書、契約書などの重要文書もすべて電子化・クラウド管理されています。
これにより、紙や印刷にかかる直接費を完全に削減するとともに、書類の保管スペースや検索作業が不要となり、大幅な業務効率の向上を達成しています。
さらに、自社で培ったこの徹底したペーパーレスのノウハウは、同社が提供するクラウドサービス(kintone連携サービスなど)の具体的な成功事例となり、顧客のDX推進を支援する新たなビジネス機会に繋がっています。
参考:トヨクモ、従業員1,000名以上の企業での導入成功事例を2024年に続々公開!

(4)再エネ・省エネ設備の段階的導入

太陽光発電や高効率空調、断熱・遮熱設備などの再エネ・省エネ設備は、業務効率化とコスト削減、企業ブランディング向上を同時に実現できる施策です。
初期費用は大きく見えますが、既存設備の更新時期に合わせて段階的に導入することで負担を抑え、投資回収期間も把握しやすくなります。
また、電力使用量の見える化や削減インセンティブの仕組みを整えることで、社員の省エネ行動が定着しやすくなり、導入効果が中長期的なコスト最適化につながります。

【事例】パナソニック:EMS活用による段階的設備更新と運用改善
パナソニックは、工場や事業所のエネルギー効率を高めるため、再エネ・省エネ設備の段階的な導入と、それを支えるエネルギーマネジメントシステム(EMS)の活用を重視しています。
同社は、生産設備のインバーター技術活用などによる高効率化を進めつつ、既存の空調や照明などの設備について、更新サイクルに合わせて高効率な機器へ順次切り替えています。これにより、初期投資の負担を平準化しながら、継続的な省エネ効果を獲得しています。
特に重要なのが、EMSによる電力使用量の「見える化」です。このシステムを通じて、現場の従業員が電力消費状況をリアルタイムで把握できるようにすることで、自律的な省エネ行動を促し、設備投資効果を最大限に引き出しています。
この運用改善と段階的な設備更新の組み合わせが、中長期的なコスト最適化環境負荷低減に繋がっています。
参考:工場環境|パナソニック プロダクションエンジニアリング

4.環境経営で失敗しないための優先順位

ここでは、費用対効果・再現性・社内負担の観点から、優先すべき施策の選び方を解説します。

(1)既存コストを削減できる施策から着手する

環境経営を確実に軌道に乗せるには、初動で既存コストを下げられる領域から着手することが効果的です。
省エネ・廃棄物削減・物流効率化・ペーパーレス化は、投資回収期間が短く、設備投資を伴わずに始められる施策が多いため、稟議が通りやすく現場負担も小さく抑えられます。

領域主な削減対象特徴
省エネ電力・空調費即効性が高く投資不要の施策が多い
廃棄物削減処分費・作業工数現場負担とコストを同時に改善
物流効率化配送コストルート最適化で削減幅が大きい
ペーパーレス印刷・保管費社内の定着がしやすい

こうした削減データを可視化して共有することで、次の再エネ設備導入や循環型ビジネスへの議論が進み、環境経営を継続的に進める基盤が形成されます。

【事例】ヤマト運輸:運用改善とエコドライブによる物流コスト削減
ヤマト運輸は、物流という事業の中核において、環境負荷低減とコスト効率化を両立させる取り組みを全国で展開しています。
特に、システムの活用に加え、積載率の向上を徹底しており、輸送車両の稼働効率を高めることで、輸送回数そのものの削減を図っています。これにより、間接的に燃料費とCO2排出量を大幅に抑制しています。
また、エコドライブ教育を全ドライバーに義務付け、車両のアイドリングストップや、急加速・急ブレーキを控える運行を徹底しています。これは大きな設備投資を伴わないにも関わらず、燃料費の削減という直接的なコストメリットを生み出しています。
これらの運用改善と社員への行動変容の促しにより、環境配慮が現場レベルでのコスト削減と企業競争力の強化に繋がっています。
参考:ヤマトグループが取り組む サステナブル経営・環境戦略について|ヤマト運輸

(2)効果測定がしやすい領域を優先する

環境経営を着実に進めるには、成果を数値で示せる領域から着手することが有効です。
電力・燃料・廃棄量・配送距離・ペーパーレス率は定量化が容易で、投資対効果を明確に示せるため、経営層の合意形成が進みやすく社内展開もしやすい領域です。

指標例内容活用例
電力・燃料使用量使用量の実測値削減幅を可視化し投資判断に活用
廃棄量産廃・資材ロス改善施策の効果が把握しやすい
配送距離配送効率物流最適化の成果が即時反映
ペーパーレス率紙使用量バックオフィス中心に導入容易

削減データはグラフ化して共有し、人事評価や部門KPI(主要評価指標)と連動させることで改善が継続します。一方、ブランド向上や採用力強化など定性的な領域は、短期成果を示した後に着手することで理解と予算を得やすくなります。

【事例】旭化成:エネルギー原単位と部門KPIの連動
旭化成グループは、エネルギー多消費型の事業構造を持つため、環境経営の中核として「エネルギー原単位(生産量あたりのエネルギー使用量)の削減」を徹底しています。
全社的な目標を設定するだけでなく、各事業所や製造部門に対し、このエネルギー原単位の削減目標を部門KPI(主要評価指標)に具体的に組み込んでいます。これにより、現場の従業員や管理層が日常業務の中で省エネを意識し、自律的な改善活動を継続的に行う仕組みを構築しています。
さらに、高効率ボイラーやヒートポンプなどへの設備投資の際には、厳密な投資対効果(削減効果)を数値で示し、迅速な経営判断と予算確保を実現しています。このデータ駆動型のアプローチが、継続的なコスト削減と環境負荷低減を両立させる基盤となっています。
参考:旭化成グループ サステナリビティレポート2025 気候変動

(3)社内巻き込みコストが低い施策から進める

環境経営を社内に定着させるには、負担の大きい施策から着手しないことが重要です。
業務フローの変更が少なく、協力を得やすい領域を初動に選ぶことで、反発や形骸化を防ぎつつ成功体験を積み上げられます。

施策例内容社内で取り組みやすい理由
照明・空調設定の最適化温度設定・稼働時間調整即効性が高く負担が少ない
クラウド署名の導入書類への押印・紙処理削減既存業務の延長で導入可能
配送ルート見直し距離短縮・積載改善業務効率化とコスト削減を両立
ゴミ分別強化分別ルールの明確化現場オペレーションに影響が小さい

社員が効果を実感しやすいため、取り組めば成果が出るという手応えが生まれ、次の施策への参加意欲が自然と高まります。

【事例】コクヨ:電力「見える化」と参加型省エネの推進
オフィス用品メーカーであるコクヨは、自社のオフィスにおいて、従業員の負担を最小限に抑えつつ省エネを推進しています。
同社は、電力使用量に関するデータを「光のバッジ」などのツールを活用して視覚化し、目標達成状況を従業員がリアルタイムで把握できるようにしました。これにより、省エネをゲーム感覚で楽しめる環境を整え、従業員の参加意欲を高めています。
また、昼休み時間には一斉消灯をルーティン化するなど、業務フローの変更が少なく、即効性のある施策から着手しました。
こうした取り組みは、短期間で電気代の削減というコストメリットを生み出すとともに、「自分たちの行動が成果に繋がる」という成功体験を社員に提供し、次のより大きな環境経営施策への前向きな文化を醸成する基盤となっています。
参考:気候変動/取り組み|コクヨ

(4)補助金・助成金の活用で初期費用負担を抑える

再エネ設備や高効率空調、断熱・省エネ設備は効果が大きいものの、初期費用の高さから導入が停滞しやすい領域です。補助金・助成金を活用すれば投資回収期間を短縮でき、導入メリットを明確に示せます。

補助対象の例効果導入ハードルが下がる理由
太陽光発電・蓄電池電力削減・BCP強化補助率により初期費用を圧縮
高効率空調消費電力の大幅低減更新タイミングと相性が良い
断熱・省エネ設備空調負荷の削減省エネ効果が定量化しやすい
環境配慮型車両燃料費削減・CO₂削減事業再構築等で支援制度が多い

申請業務は煩雑に感じられますが、自治体窓口・商工会・支援事業者を活用すれば負担を抑えられます。

参考:クール・ネット東京

5.まとめ

環境経営は、環境対応をコストではなく成長機会として捉え、利益改善・ブランド向上・採用力強化を同時に実現できる経営手法です。
この記事では、成果につながった具体事例と、短期で始められる施策、優先順位の考え方を解説しました。
自社のロードマップ設計や社内稟議、取引先への説明資料としてご活用ください。

こうした環境経営への移行を、資源循環の専門知識と現場力で支援するのが、五十鈴株式会社の「icサーキュラーソリューション」です。廃棄物コストの劇的な適正化(守りの環境経営)から、未利用資源を利益に変えるアップサイクルや商品開発まで、構造的な企業変革を強固にサポートします。不確実な時代に選ばれる企業としての強固な基盤を築きたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。

監修

早稲田大学法学部卒業後、金融機関での法人営業を経て、中小企業向け専門紙の編集記者として神奈川県内の企業・大学・研究機関を取材。
2013年から2020年にかけては、企業のサステナビリティレポートの企画・編集・ライティングを担当。2025年4月よりフリーランスとして独立。
企業活動と社会課題の接点に関する実務経験が豊富で、サステナビリティ分野での実践的な視点に基づく発信を強みとしている。