サーキュラーエコノミーとSDGsとは?違いと取り組み事例、3原則

SDGs(持続可能な開発目標)と、資源を循環させる新たな経済モデルであるサーキュラーエコノミー(循環経済)は、地球規模の課題解決につながる手段として注目を集めています。

この記事では、サーキュラーエコノミーとSDGsの違いを明確に解説し、国内外の企業・自治体による先進的な取り組み事例なども解説します。

目次

1.サーキュラーエコノミーとSDGsの関係とは?

サーキュラーエコノミーは、SDGsの目標を実現するための実践的な経済モデルです。
SDGsが「社会全体で共有すべき持続可能な目標」であるのに対し、サーキュラーエコノミーは「その目標をビジネスや産業活動の中でどう実現するか」という仕組みを示しています。
両者は密接に結びついており、特に次の4つの目標と深い関係があります。

関連するSDGs目標内容
12:つくる責任 つかう責任資源効率化・廃棄物削減・リサイクル促進
13:気候変動に具体的な対策を脱炭素化・省エネルギー設計
14:海の豊かさを守ろうプラスチック削減・海洋汚染防止
15:陸の豊かさも守ろう森林資源の保全・生態系の再生

たとえば、製造業では再生素材を活用した製品開発、小売業では詰め替え容器やシェアリングサービスの導入など、循環型の仕組みを導入する企業が世界的に増加しています。

このように、サーキュラーエコノミーはSDGsの理念を“経済活動として具現化”するための重要なアプローチであり、企業が持続可能な成長を実現するうえで欠かせない基盤といえるでしょう。

2.サーキュラーエコノミーとSDGsの違い

サーキュラーエコノミーとSDGsは、どちらも持続可能な社会を目指す取り組みとして語られますが、両者の立ち位置は異なります。

ここでは、それらの違いをわかりやすく解説したうえで、それぞれの概要も紹介します。

(1)サーキュラーエコノミーとSDGsの違い

サーキュラーエコノミーは環境・資源・生産・消費に関わる領域にフォーカスし、廃棄を減らし、資源を再利用・再設計する仕組みを中心に据えています。
一方、SDGsは国連加盟国が共有するグローバルな行動指針であり、貧困・教育・ジェンダー・環境など多分野を含む17の目標から構成されています。

以下ではそれぞれの違いを表でわかりやすくご確認いただけます。

比較項目サーキュラーエコノミーSDGs
性質目標達成のための経済モデル世界共通の行動目標
範囲主に資源・生産・消費・環境分野社会・経済・環境など幅広い領域
主体企業・産業セクターが中心国・自治体・企業・市民
目的資源循環と環境負荷の最小化貧困の解消や持続可能な社会の実現
関連性これらの目標達成を支援する実践策目標12,13,14,15などに関係

このように、両者は「目的」と「手段」の関係であり、どちらか一方だけでは持続可能な社会の実現は進みません。
企業にとっては、SDGsの理念を理解したうえで、サーキュラーエコノミーを自社の生産・調達・物流・販売の仕組みに組み込むことが、長期的な競争力につながります。

(2)サーキュラーエコノミー(循環経済)とは?簡単に紹介

サーキュラーエコノミーとは、資源を何度も循環させる持続性を重視した経済モデルです。

製品や資源を可能な限り長く活用するために、再利用(リユース)・再生産(リマニュファクチャリング)・再資源化(リサイクル)を重視し、廃棄そのものを生まないよう、設計段階からリサイクルしやすい素材・構造を採用する仕組み・構造も求められます。

このような循環型の仕組みを社会全体で広げていくことにより、資源の有効利用・廃棄物削減・CO₂排出の抑制が進み、SDGsの目標達成にも直接つながります。

参考:CE Circular Economy|経済産業省

【事例】設計段階から循環を組み込む:トヨタ自動車の「リサイクル率99%」達成戦略|トヨタ自動車

トヨタ自動車は、サーキュラーエコノミーを実現するため、製品の設計段階から「廃棄を生まない」仕組みを取り入れています。具体的には、使用済み車両を回収・解体する際に、部品を取り外しやすくするよう設計することで、高いリサイクル性を確保しています。この取り組みにより、車両一台あたりのリサイクル率を約99%という非常に高い水準で達成しており、資源の有効活用と廃棄物の削減を両立させています。また、ハイブリッド車に搭載される使用済みバッテリーの回収・再利用にも注力しており、資源循環と気候変動対策(SDGs目標13)への貢献を具体的な事業戦略として実行している好事例です。

参考:循環(じゅんかん)型社会・システム構築チャレンジ|トヨタ自動車

(3)SDGsとは?世界共通の目標

SDGs(エスディージーズ)とは、「持続可能な社会の実現」を目的に国連が定めた世界共通の行動目標です。
正式名称は “Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)” で、2015年に全ての国連加盟国が採択し、2030年までの達成を目指しています。

SDGsは、「貧困」「教育」「気候変動」「エネルギー」「平和」など17の目標と169のターゲットで構成されており、地球規模の課題に国・企業・市民が連携して取り組むことを求めています。

企業に関係が深いのは、「目標7:エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」「目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう」、「目標12:つくる責任 つかう責任」など、事業活動と地球環境の両立を求める分野です。

つまり、SDGsは「誰一人取り残さない(Leave No One Behind)」という理念のもと、社会全体で共有する目標のフレームワークと位置付けられています。

参考:SDGsとは?|外務省

参考:SDGs|経済産業省

【事例】TBMと新素材「LIMEX」による脱プラスチック戦略|TBM

株式会社TBMは、SDGsの目標12(つくる責任 つかう責任)に貢献するため、石灰石を主原料とする新素材「LIMEX(ライメックス)」を開発・製造しています。この素材は、紙やプラスチックの代替として利用可能で、製造時に水や森林資源の使用量を大幅に削減できるという特長を持ちます。地球上に豊富にある石灰石を原料とすることで資源枯渇リスクを低減し、さらに製品が高確率でリサイクル可能であるため、資源の有効活用と環境負荷の低減を両立させています。このように、TBMは革新的なマテリアル技術を駆使し、持続可能な生産と消費のモデルを具体的に推進する企業として注目されています。

参考:TBM公式サイト

3.サーキュラーエコノミーの3原則と具体的手法

サーキュラーエコノミーの3原則とは、イギリスのエレン・マッカーサー財団が提唱した3つの原則です。
ここでは、それぞれの原則について具体的な取り組みも踏まえて解説します。

なお以下の動画はエレン・マッカーサー財団が発信している内容であり、アニメでサーキュラーエコノミーの概要をわかりやすくご確認いただけます。

参考:https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/255331/01ceinput_.pdf

(1)廃棄物と汚染を出さない設計をする

サーキュラーエコノミーの第一の原則は、廃棄物や汚染を「出さないように設計する」ことです。
廃棄物と汚染を出さない設計によって、設計段階から廃棄を前提としない仕組みを構築します。

これには、ビジネスモデルの段階から「いかに廃棄を生まない仕組みを組み込むか」が重要です。
サーキュラーエコノミーの実践において、以下のようなビジネスモデルが注目を集めています。

ビジネスモデルの形態概要主な効果
サブスクリプション型(利用型)製品を販売せず、月額や期間制で貸し出すモデル。メーカーが所有権を持ち、使用後は回収・再整備して再利用する。廃棄物削減/製品寿命の延長/安定収益の確保
リース・シェアリング型複数のユーザーが製品や設備を共有して使用。利用効率を高め、製品点数そのものを減らす。資源消費の抑制/利用効率の向上/再流通の促進
リマニュファクチャリング型使用済み製品をメーカーが回収し、分解・再生・再販売するモデル。製造コストと資源使用量の削減/ブランドの信頼性向上
リユース・リファービッシュ型中古製品やパーツを整備して再販売する。ICT機器や家電などで普及。廃棄削減/再販価値の創出/環境配慮型ブランドの確立
回収・リサイクル連動型使用済み製品を回収して素材・部品を再利用する。回収インセンティブを設けるケースも。素材循環の確立/資源価格変動リスクの低減

このようなビジネスモデルの転換は、企業の持続的収益モデルの再構築でもあります。
所有から利用への発想転換によって、廃棄物の発生そのものから抑制し、サーキュラーエコノミーの構築を目指すことが可能となります。

【事例】キャタピラーの資源再生産ビジネス|キャタピラー

キャタピラー(Caterpillar)は、建設機械やディーゼルエンジンなどの大手メーカーとして、サーキュラーエコノミーにおけるリマニュファクチャリング(再生産)ビジネスの世界的先駆者です。同社は、使用済みとなったエンジン、トランスミッション、油圧部品といった高付加価値な部品を顧客から回収する強固なシステムを構築しています。回収された部品は、単にリサイクルされるだけでなく、徹底的に分解、クリーニング、検査、最新の技術を用いた再生を経て、新品と同等の品質と性能を持つ製品として再販されます。この仕組みにより、製造に必要な資源やエネルギー消費を大幅に削減しつつ、顧客には新品より安価で信頼性の高い再生部品を提供しています。キャタピラーにとって、リマニュファクチャリングは環境負荷の低減と安定した収益源の確保を両立させる、戦略的なビジネスモデルとなっています。

参考:Caterpillarの循環型経済|キャタピラー

(2)製品や資源をできるだけ長く使う

サーキュラーエコノミーの第二の原則は、製品や資源を可能な限り長く使うことです。
資源の有限性や廃棄物処理コストの増大を踏まえると、資源の使い捨てをそのまま維持することは持続可能ではありません。

サーキュラーエコノミーでは、製品や素材の寿命を延ばし、再利用・再製造・再販などを通じて価値を何度も循環させることが求められます。製品や資源をできるだけ長く使うための主な取り組みは以下のとおりです。

取り組み内容概要
リース・サブスクリプション型製品を販売せず貸し出し、使用後に企業が回収・整備・再利用する
修理・アップデート対応設計修理や機能アップデートを前提とした設計にし、使い続けられる仕組みを整える
モジュラー構造(部品交換型)部品を簡単に交換できる構造を採用し、全体を廃棄せずに再利用可能に
再生・再販モデル(リマニュファクチャリング)回収した製品を分解・再生し、再び市場に投入する
リサイクル素材の活用廃棄製品から再生した素材を新製品に再利用する

上記のような設計・運用・再生の3段階における取り組みを複合的に行うことで、資源採掘やエネルギー使用の削減につながり、結果としてCO₂排出量の抑制やサプライチェーン全体の効率化にも寄与します。

以下の動画では、一例として使用済みペットボトルの再利用に関する取り組みを現場目線からご確認いただけます。

【事例】パタゴニアの「Worn Wear」|パタゴニア

アウトドアブランドのパタゴニアは、製品の寿命を最大限に延ばすことを目的とした「Worn Wear(ウォーン・ウェア)」プログラムをサーキュラーエコノミーの柱としています。このプログラムでは、顧客が製品を長く使い続けられるよう、修理サービスを積極的に提供し、製品を修理しやすいように設計段階から配慮しています。さらに、不要になった製品を回収し、徹底的に整備した上で中古品として再販売するリユースの仕組みも展開。これにより、消費者に「買わずに直して使う」という意識変革を促し、新たな資源採掘や廃棄物の発生を抑制しています。パタゴニアは、修理とリユースを事業として組み込むことで、環境負荷の低減とブランド価値の向上を同時に実現しています。

参考:Worn Wear | パタゴニア

(3)自然システムを再生する

サーキュラーエコノミーの第三の原則は、人間の経済活動によって損なわれた自然環境を回復し、再び循環できる状態へと再生することです。

たとえば、製造過程で発生する副産物を堆肥化して土壌へ戻す仕組みや再生可能エネルギーを活用した生産体制への転換などがその代表例です。

分野・テーマ主な取り組み内容期待される効果・成果
再生可能エネルギーの導入太陽光・風力・バイオマスなど、自然の循環を活かしたエネルギーを使用する化石燃料依存の低減、CO₂排出削減、エネルギー自給率の向上
副産物・廃棄物の有効活用食品残渣や製造副産物を堆肥化・飼料化・バイオ燃料化して自然に還元する廃棄物削減、資源の循環利用、土壌肥沃度の回復
再生可能資源の利用再生木材、再生繊維、バイオプラスチックなど、自然由来かつ再利用可能な素材を選定する天然資源の保全、サプライチェーンの持続性向上
森林・生態系の回復活動植林・間伐・生態系保全プロジェクトへの参画、サプライヤーと協働した森林再生生態系サービスの維持、炭素吸収源の確保、地域社会との共生
水資源の保全と再利用雨水・排水の再利用、節水型設備の導入、河川・地下水汚染の防止水資源の循環利用、地域環境への負荷軽減
地域循環・再生モデルの構築農業・製造・エネルギーを地域内で循環させる仕組みをつくる地域経済の活性化、環境負荷の最小化、地産地消の推進

企業にとって、自然システムを再生する取り組みは、サプライチェーン全体の安定性や資源調達リスクの軽減にもつながり、長期的には事業の持続性を高める戦略的要素となります。

【事例】官民連携による食品廃棄物の地域内循環|味の素、佐賀市

味の素株式会社は、サーキュラーエコノミーの第三の原則である「自然システムの再生」を実践するため、佐賀市との官民連携モデルを構築しています。この取り組みでは、佐賀市の下水処理場を「バイオマスステーション」として位置づけ、味の素九州事業所から出る工場排水を資源として受け入れています。排水処理の過程で、バイオガス発電の原料となるメタンガスを生成し、再生可能エネルギーとして利用。さらに、処理後の副産物も無駄にせず、肥料や漁業用水として地域内で再利用しています。この連携により、廃棄物を資源化し、エネルギーを生み出し、自然システムに還元する地域循環モデルを確立しています。

参考:佐賀市上下水道局が取り組む サーキュラーエコノミー|佐賀市

参考:味の素㈱、九州事業所で佐賀市清掃工場由来のグリーン電力を活用

4.SDGsに関連するサーキュラーエコノミーの企業・自治体の取り組み事例

(1)クボタグループ|水資源保全に向けた取り組み

引用:https://www.kubota.co.jp/sustainability/environment/water/index.html

クボタグループは、水資源の制約が深刻化する世界的な文脈を踏まえ、「水資源の保全」をマテリアリティ(重要課題)の一つに位置付けています。

膜分離技術を用いた排水処理システム(MBR方式など)を導入し、排水を敷地内で再利用したり生活用水への転用を可能にするなど、水の再利用を促進しています。

サーキュラーエコノミーの原則において「自然システムを再生する」と「製品や資源をできるだけ長く使う」観点で、水資源を最大限活用し続ける設計です。
SDGsとの関連では、目標6「安全な水とトイレを世界中に」、目標12「つくる責任 つかう責任」、目標14「海の豊かさを守ろう」 などに貢献する可能性を備えた取り組みです。

(2)マクドナルド日本|プラスチック対策による循環型素材の活用

引用:https://www.mcdonalds.co.jp/sustainability/environment/plastic/

マクドナルド日本は、提供する容器包装類や付属品(ストロー・カトラリーなど)を、環境負荷を軽減する素材へ順次切り替えるプラスチック削減施策を推進しています。
2022年10月から紙ストローと木製カトラリーの提供を開始し、2023年12月にはサイドサラダ用容器を紙製へ転換し、プラスチック使用量を大幅に削減しました。

これらの取り組みは「廃棄物と汚染を出さない設計をする」および「製品や資源をできるだけ長く使う」というサーキュラーエコノミーの原則に即しており、プラスチック使用量の抑制・再利用可能素材への転換・構造の簡素化(リッド(フタ)なし構造)でSDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」にもつながる取り組みです。

(3)株式会社デンソー|モジュール化による付加価値統合と効率化

引用:https://www.denso.com/jp/ja/-/media/global/business/innovation/review/07-1/07-1-doc-dissertation19-i-ja.pdf

株式会社デンソーは、従来多数の部品を個別に構成していた製品を、より大規模なモジュール化(機能統合化)へと進化させる取り組みを進めています。
この取り組みは、従来の製品設計で多数の部品を個別に使用していた構造を見直し、機能的に統合・最適化されたモジュールとして構成することで、「廃棄物と汚染を出さない設計をする」および「製品や資源をできるだけ長く使う」というサーキュラーエコノミーの原則に即しています。具体的には、部品点数が大幅に削減されることで、材料使用量の低減、製造・物流工程における無駄の抑制、さらには部品交換の容易化による製品寿命の延長といった多岐にわたる効果が期待されます。このように、設計段階で冗長性や余計な中間部品を排除するデンソーの戦略は、SDGsの目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」と目標12「つくる責任 つかう責任」の達成に貢献する、産業界における技術革新の好事例です。

(4)共栄電機工業|アフターフォロー体制による製品寿命延長・循環促進

after_follow_04
引用:https://www.kyoeidenki.com/aftercare/

共栄電機工業は、制御盤設計・製造や電気配線を手掛けており、製品納入後にも修理・保証・定期点検・アップデートなどをワンストップで対応しています。加えて、製品の状態を継続的に確認し、必要に応じて機能のアップデートやアップグレードを提供している点も特徴です。

このようなアフターフォロー体制で製品の寿命延長と顧客の安心を両立させています。
サーキュラーエコノミーの原則のうち「製品や資源をできるだけ長く使う」に強く結びつき、修理・保守・アップデートによって、買い替え頻度や廃棄量を抑制できるためです。
さらに、SDGsでいう「つくる責任・つかう責任(目標12)」にも資する取り組みといえるでしょう。

(5)東京センチュリー|サブスクリプション型プラットフォーム

引用:https://www.tokyocentury.co.jp/jp/business/service/subscription/tc-subsc-marketplace.html

東京センチュリーは、法人向けサブスクリプション(定額利用)サービスを複数プロダクトで展開できる 「TC Subsc Marketplace」 を運営しています。
このプラットフォームでは、ハードウェア・ソフトウェア・通信等を組み合わせたソリューションを、初期投資を抑えて定額で利用できる仕組みを提供しています。

従来、機器を販売して終わり、という流れであったところを、利用形態に変えることで、「廃棄物と汚染を出さない設計をする」というサーキュラーエコノミーの原則を実現します。

SDGsの目標12(つくる責任 つかう責任)や目標9(産業と技術革新の基盤をつくろう)に関わる取り組みであり、多数の企業が同じハードウェア・ソリューションを共有・流用することが可能となり、無駄な機器調達や廃棄の抑制につながる可能性を持つリース業界発の戦略的な取り組みです。

(6)リコーグループ|資源循環への取り組み

引用:https://jp.ricoh.com/sustainability/environment/circular_economy/initiative_recycle

リコーグループは、製品の設計から回収・再利用に至るまでを一貫して循環型に設計する「コメットサークル™」の考え方を採用し、脱炭素・資源循環・自然共生を柱とする環境経営を推進しています。

省資源設計やプラスチック使用削減、使用済み製品の回収・再資源化など、サプライチェーン全体でサーキュラーエコノミーの実現を目指しています。具体的には、製品の省資源設計の徹底やプラスチック使用量の削減に取り組んでいます。また、使用済み製品については、グローバルでの回収ネットワークを構築し、高効率な再資源化を積極的に進めています。
複数のSDGs目標と密接に関わっており、とくに目標12「つくる責任 つかう責任」 と目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」 の観点から、環境配慮型設計技術を通じて製造業の新しいモデルを示しています。

(7)小田原市|官民連携で推進する地域脱炭素・循環共生モデル

引用:https://www.env.go.jp/content/000314928.pdf

小田原市は、脱炭素と循環型社会の実現に向けて、官民連携型のエネルギーシステム構築や自然保全など多様な施策を展開しています。主な取り組みは以下のとおりです。

取り組みのテーマ概要
地域内電源の導入と分散化2030年度までに再生可能エネルギー導入量を5倍に拡大。住宅・事業所・公共施設・農地などに太陽光発電を展開し、地域発電化を推進。
エネルギーマネジメントと地産地消プラットフォーム自治体と電力企業が協働し、市域全体の電力需給を最適化するプラットフォームを構築。市民・事業者が“市民発電所”として参加。
公共施設の先導的導入市役所・給食センター・クリーンセンターなどに太陽光発電を導入。病院のZEB-Ready化やEVカーシェア導入を推進。
地域脱炭素拡張型のまちづくり商店街や観光エリアのゼロカーボン化、EV宿場町構想、自然共生サイトの整備、生物多様性保全活動などを実施。

小田原市の取り組みは、再エネ導入や地域内循環の強化を通じて、サーキュラーエコノミーの実践にも通じる好例です。地域資源の活用と官民連携により、「エネルギーの地産地消」と「まちの持続可能性」を両立しています。

5.環境省と経済産業省が推進するサーキュラーエコノミー政策

日本では、環境省を中心に、企業や自治体、消費者を巻き込んだ包括的な制度設計が進められており、サーキュラーエコノミーの導入は経済成長と産業構造転換の柱としても注目されています。

ここでは、環境省が推進するサーキュラーエコノミー政策について解説します。

(1)環境省の基本方針「循環経済ビジョン2024」

環境省は、従来の「3R(リデュース・リユース・リサイクル)」の枠組みを超えて、より包括的に経済構造を変革する「循環経済(サーキュラーエコノミー)」への転換を国家戦略と位置づけています。2022年9月に策定された「循環経済工程表」をベースに、これを新たな「循環型社会形成推進基本計画(第五次循環基本計画)」へと昇格・拡張し、2030年・2050年に向けた方向性を示す政策の枠組みとして整備されています。主な方針と内容は以下のとおりです。

施策の柱具体的な内容
資源投入と廃棄を抑制し、価値を循環させるシステムへの転換製品や素材を設計段階から長寿命化・再利用・再資源化を前提に設計(DfE:Design for Environment)を推進。
ライフサイクル全体での事業者間連携と素材/製品別戦略プラスチック・金属・建材などの素材ごとにリサイクル目標を設定。企業間・業界間での回収・再利用体制を整備。
地域循環システムと地方創生の統合各地域の資源(バイオマス・再エネ・廃棄物)を活用した地域循環圏を形成。
基盤強化・技術開発・制度整備情報プラットフォーム整備、技術革新支援、人材育成、国際資源循環のルール整合などを推進。
指標・数値目標の設定循環利用率・資源生産性・最終処分量などのKPIを設定し、2030年までの進捗を定量評価。

参考:https://www.env.go.jp/content/000215498.pdf

このように、「循環経済ビジョン2024」は、国がリーダーシップを取りながら、産業構造、地域社会、企業活動を包括的かつ構造的に循環型へと転換する道筋を描いたものです。

【事例】企業と連携したプラスチック容器の水平リサイクル|神戸市

神戸市は、使用済みプラスチック容器の廃棄物・汚染抑制を目指し、日用品メーカーや小売事業者、リサイクラーなど複数の企業と連携した先進的な地域循環モデルを構築しています。この官民連携プロジェクトの焦点は、従来リサイクルが困難だったつめかえ用プラスチックパック(パウチ)やボトルの回収と再生です。市民が分別回収した容器を対象に、ケミカルリサイクル技術などを活用し、再生されたプラスチックを再び同じ用途の容器として利用する「水平リサイクル」の実現を目指しています。これにより、化石由来の新規プラスチック使用量を削減し、都市部におけるプラスチック資源のクローズドループ(閉じた循環)を社会実装する、全国でも先駆的な取り組みです。

参考:「神戸プラスチックネクスト~みんなでつなげよう。つめかえパックリサイクル~」プロジェクト概要

(2)GX(グリーントランスフォーメーション)

日本政府は、化石燃料中心の経済社会構造から、クリーンエネルギー中心の経済構造へと転換することを目指し、「GX(グリーントランスフォーメーション)」を国家戦略の一つに掲げています。

その政策基盤として、2023年に成立した「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行推進法(GX推進法)」や、2025年に閣議決定された「GX2040ビジョン」に基づき、政府は以下の主要施策を進めています。

政策項目概要
GX経済移行債による投資促進国が発行する「GX経済移行債」を通じ、脱炭素・循環型社会への設備投資を支援。2030年までに20兆円規模を想定。
成長志向型カーボンプライシングの導入排出量取引制度や化石燃料への課金を段階的に導入。早期取組企業にインセンティブを付与。
トランジション・ファイナンスの拡充脱炭素・循環型移行を支援する金融スキーム。グリーンイノベーション基金なども活用。
分野別GX投資戦略の策定鉄鋼・化学・自動車など産業ごとに投資方針を整理し、技術転換を後押し。
GX推進法・GX2040ビジョンGX推進の法的枠組みを整備。経済成長と脱炭素化の両立を長期的に目指す国家戦略。

このように、GXはサーキュラーエコノミー政策と密接に連携しています。企業は、資源循環・設計最適化・製品寿命延長といったサーキュラーアプローチをGX戦略の一環として位置づけることで、政策との整合性を取りつつ、環境配慮型の競争力を高めることが可能です。

【事例】成長志向型カーボンプライシングの導入|三菱重工

三菱重工業は、日本政府のGX(グリーントランスフォーメーション)戦略と整合し、脱炭素社会の実現に不可欠な革新技術への戦略的投資を加速させています。その中心となるのが、CO₂回収・貯留・利用(CCUS)技術と水素・アンモニア燃焼技術です。同社は、CCUSにおいて世界トップクラスの実績を持ち、この技術をさらに進化させることで、多排出産業の脱炭素化を支援しています。また、次世代クリーンエネルギーである水素関連技術の開発・製造にも大規模な資金を投入。これらの取り組みは、トランジション・ファイナンスなどの政府支援を活用することで加速されており、将来的なカーボンプライシング導入を見据えた、グローバル市場での競争優位性確保を目指す取り組みです。

参考:トランジションファイナンス|事例⑪:三菱重工業株式会社、国土交通省

参考:CCUS(CO₂の回収・利用・貯留)|三菱重工業

6.まとめ

サーキュラーエコノミー(循環経済)は、SDGs達成のための実践的アプローチとして位置づけられています。SDGsが「目標」を示すものであるのに対し、サーキュラーエコノミーはその実現に向けて、資源の使い方やビジネスモデルを変革する「手段」です。

今後、企業が取り組むべきは「環境配慮=コスト」ではなく、「循環設計=成長戦略」と捉える視点です。サーキュラーエコノミーの実践を通じて、SDGsの実現に貢献しながら、持続可能な価値創造を目指すことが求められています。

監修

早稲田大学法学部卒業後、金融機関での法人営業を経て、中小企業向け専門紙の編集記者として神奈川県内の企業・大学・研究機関を取材。
2013年から2020年にかけては、企業のサステナビリティレポートの企画・編集・ライティングを担当。2025年4月よりフリーランスとして独立。
企業活動と社会課題の接点に関する実務経験が豊富で、サステナビリティ分野での実践的な視点に基づく発信を強みとしている。