運転日報や点呼記録簿、適性診断結果など、運行管理や整備管理に関わる書類は、それぞれ定められた期間、適切な方法で保管しなければなりません。本記事では、運送業における主要書類の保存期間を一覧表で整理するとともに、起算日の考え方、紙・電子保存のルール、監査時の注意点、そして実務で役立つ管理方法を詳しく解説します。
五十鈴株式会社の「次世代運行管理システムAIR」は、鋼材・重量物輸送の現場実績を持ち、自動配車・動態管理・自動日報・勤怠・請求のワンストップカバーにより、運行記録や日報などの帳票を一元管理し、書類の保存・管理業務の効率化を支援します。セミオーダー型カスタマイズで自社の中長期戦略に合わせた導入が可能ですので、まずはお気軽にご相談ください。
1.運送業の主要書類と保存期間一覧

運送業(一般貨物自動車運送事業)では、貨物自動車運送事業法や道路運送車両法、労働基準法など複数の法令に基づき、さまざまな書類の保存が義務付けられています。
運送業の主要書類と保存期間一覧
| 区分 | 書類名 | 保存期間 |
|---|---|---|
| 運行管理関係書類 | 運行指示書 | 1年間 |
| 運転日報(乗務記録) | 1年間 | |
| 点呼記録簿 | 1年間 | |
| 運行記録計(タコグラフ) | 1年間 | |
| アルコール検知器の点検記録 | 1年間 | |
| 事故記録 | 3年間 | |
| 運転者台帳 | 3年間 | |
| 整備管理関係書類 | 日常点検表 | 1年間 |
| 定期点検記録簿(3ヶ月) | 1年間 | |
| 定期点検記録簿(12ヶ月) | 1年間 | |
| 車両台帳 | 使用期間中 | |
| 労務・乗務員管理関係書類 | 適性診断結果 | 3年間 |
| 賃金台帳 | 3年間 | |
| 労働者名簿 | 3年間 | |
| 出勤簿・タイムカード | 3年間 | |
| 雇用契約書 | 3年間 | |
| 健康診断結果票 | 5年間 |
ここでは、運行管理関係・整備管理関係・乗務員管理関係の3つに分けて書類の保存期間を紹介します。
(1)運行管理関係書類の保存期間
運行管理に関する書類は、運転者の乗務状況や安全運行の管理状況を記録したもので、輸送安全規則に基づき保存義務が課せられています。
日常的に作成する記録類は1年間、事故や人(運転者)に関わる記録は3年間が基本となります。以下に主要な書類の保存期間と、カウントの基準となる起算日をまとめました。
| 書類名 | 保存期間 | 根拠法令 | 備考(保存期間の起算日) |
|---|---|---|---|
| 運行指示書 | 1年間 | 輸送安全規則 第9条の3 | 運行を終了した日の翌日 |
| 運転日報(乗務記録) | 1年間 | 輸送安全規則 第8条 | 記録を完了した日の翌日 |
| 点呼記録簿 | 1年間 | 輸送安全規則 第7条 | 記録を完了した日の翌日 |
| 運行記録計(タコグラフ) | 1年間 | 輸送安全規則 第8条の2 | 記録を完了した日の翌日 |
| 事故記録 | 3年間 | 輸送安全規則 第9条の2 | 事故が発生した日の翌日 |
| 運転者台帳 | 3年間 | 輸送安全規則 第9条の5 | 運転者が解雇・退職した日 |
| アルコール検知器の点検記録 | 1年間 | 輸送安全規則 第7条 | 記録を完了した日の翌日 |
※なお、これらの保存義務は国土交通省の省令である「貨物自動車運送事業輸送安全規則」に基づいています。条文は e-Gov法令検索で確認できます。保存期間の解釈に迷う場合は、管轄の運輸支局または地方運輸局へ問い合わせることを推奨します。
出典:https://www.naganota.or.jp/cms/wp-content/uploads/2021/06/26.pdf
万が一の事故の記録や、運転者一人ひとりの情報をまとめた運転者台帳は、他の書類より長い3年間の保存が義務付けられています。特に運転者台帳については、退職した日から3年間となるため、長期間の保管が必要になる点に注意しましょう。
また、上記の保存期間は、あくまで法令で定められた最低基準です。
例えば、労働基準法では、賃金台帳や出勤簿などの保存期間は「当分の間3年」とされていますが、賃金請求権の消滅時効が5年(当面は3年)に延長されたことに伴い、将来的には5年保存が必要となる見込みです。念のため、運行管理上の記録類についても、労務管理書類とあわせて5年分を保管する運送会社も増えています。
参考:https://www.mhlw.go.jp/content/000617974.pdf
参考:https://www.mhlw.go.jp/content/000617980.pdf
(2)整備管理関係書類の保存期間
整備管理に関する書類は、車両の安全性を維持するための点検・整備状況を記録するものです。これらは道路運送車両法に基づき、点検の種類ごとに保存期間が定められています。
日常点検表や定期点検記録簿(3ヶ月・12ヶ月)はいずれも1年間の保存が必要です。車両そのものの情報を管理する車両台帳については、その車両を使用している全期間を通じて保管する義務があります。
| 書類名 | 保存期間 | 根拠法令 | 保存期間の起算日または備考 |
|---|---|---|---|
| 日常点検表 | 1年間 | 道路運送車両法 第47条の2 | 点検を実施した日の翌日 |
| 定期点検記録簿(3ヶ月) | 1年間 | 道路運送車両法 第49条 | 点検を実施した日の翌日 |
| 定期点検記録簿(12ヶ月) | 1年間 | 道路運送車両法 第49条 | 点検を実施した日の翌日 |
| 車両台帳 | 使用期間中 | 道路運送車両法 | 車両の使用を廃止するまで |
出典:https://www.naganota.or.jp/cms/wp-content/uploads/2021/06/26.pdf
3ヶ月点検および12ヶ月点検の記録簿は、法定点検が適切に行われたことを証明する唯一の書類です。巡回指導や監査では、実施日だけでなく、整備管理者の確認印や整備内容の不備がないかも詳細にチェックされます。
毎日発生する日常点検表は、最も紛失しやすい書類の一つです。1年間の保存が義務付けられているため、運転日報などとセットにして月ごとに整理・保管する習慣をつけましょう。
(3)労務・乗務員管理関係書類の保存期間
労務管理や乗務員の健康管理に関する書類は、労働基準法などに基づき、厳格な保存義務が課せられています。
多くの書類が3年間の保存を義務付けられていますが、健康診断結果票のように5年間の長期保存が必要なものもあります。これらは、適切な労務管理が行われているかを証明する重要な証跡となります。
| 書類名 | 保存期間 | 根拠法令 | 保存期間の起算日または備考 |
|---|---|---|---|
| 適性診断結果 | 3年間 | 輸送安全規則 第10条 | 受診した日の翌日 |
| 健康診断結果票 | 5年間 | 労働安全衛生法 第66条の3 | 実施した日の翌日 |
| 賃金台帳 | 3年間 | 労働基準法 第109条 | 最後に記入した日の翌日 |
| 労働者名簿 | 3年間 | 労働基準法 第109条 | 退職・解雇・死亡した日 |
| 出勤簿・タイムカード | 3年間 | 労働基準法 第109条 | 最後に記録した日の翌日 |
| 雇用契約書 | 3年間 | 労働基準法 第109条 | 退職・解雇した日 |
出典:https://www.naganota.or.jp/cms/wp-content/uploads/2021/06/26.pdf
一般健康診断の結果は、労働安全衛生法により5年間の保存が義務付けられています。運送業においては、夜勤(深夜業)従事者の特定健康診断も含まれるため、管理漏れがないよう特に注意しましょう。
現在、労働基準法における賃金台帳や出勤簿などの保存期間は、法改正により当分の間は3年間※ とされており、将来的には5年へ延長される見込みです。そのため、最低でも3年間は確実に保管できる体制を整えておく必要があります。
※出典:https://www.mhlw.go.jp/content/000617980.pdf
2.書類保存期間は起算日の数え方に関する注意点

書類の保存期間を正しく管理するためには「いつから数え始めるか(起算日)」を正確に把握することが重要です。ここでは起算日に関する注意点をまとめています。
(1)起算日の基本ルールは翌日から
運送業における書類の起算日は、原則としてその書類の作成や記録が完了した日の翌日から始まります。
保存期間は1月11日からカウントし、翌年の1月10日まで保存する必要があります。
(2)特殊な起算日のパターン
すべての書類が「作成日の翌日」とは限りません。特に間違いやすいのが以下の3点です。
| 書類名 | 起算日 | 注意点 |
|---|---|---|
| 運行指示書 | 運行が終了した日の翌日 | 最終日の翌日から1年間保存する |
| 運転者台帳 | 解雇・退職等の日 | 退職して初めて3年のカウントが始まるため、実質的な保存期間は非常に長くなる |
| 労働者名簿・雇用契約書 | 退職・解雇の日 | 離職したタイミングから3年間の保存義務が生じる |
特に運転者台帳や雇用契約書は「作成してから3年経ったから捨てる」というミスが起こりやすい項目です。
在籍している限りは破棄できない書類として、日常の運行記録(1年保存)とは別のファイルで管理することをおすすめします。
(3)起算日と保存期間を管理するポイント
実務上、1日単位で廃棄を判断するのは非効率です。多くの運送現場では、以下のような管理方法が実施されています。
| 月単位での管理 | 「〇年〇月分」としてひとまとめにし、起算日が最も遅い書類に合わせて破棄月を決める |
|---|---|
| 余裕を持った保存 | 巡回指導のサイクル(一般的に2〜3年に一度)を考慮して、2〜3年分をまとめて保管しておく |
| 廃棄前の確認フローの設定 | 担当者だけで判断せず、運行管理者や責任者の承認を経て廃棄する。 |
| 電子化移行前の紙書類の廃棄期限を別管理する | 電子化前の紙書類は、起算日に基づく廃棄期限を一覧で管理し、データと混在しないようにする。 |
社内独自の書類保存ルールを定めておくことが、健全な経営につながります。
3.紙・電子保存のルールと監査で求められる要件

書類の保存方法は「紙(原本)による保存」と「電子データによる保存」の2種類があります。それぞれ異なるルールが適用されるため、正しく理解しておくことが重要です。
(1)紙保存のルールと監査で求められる要件
紙媒体で帳票類を管理する場合、監査や巡回指導に耐えうる状態であることが求められます。以下の4つのポイントを徹底しましょう。
| 具体的なルール・要件 | 違反・未整備時のリスク | |
|---|---|---|
| 営業所ごとの保管 | 書類は「実際に運行を管理している営業所」に備え置く。本社等での一括管理は不可 | 監査時に書類が手元にない場合、営業所への備え置き義務違反とみなされる |
| 改ざん防止の徹底 | 黒または青のボールペンで記入。修正液は使用せず、二重線と訂正印で修正する | 修正液の使用や鉛筆書きは、監査において事実の隠蔽(改ざん)や虚偽記載を疑われる原因となる |
| 検索性の確保 | インデックスを付け、月別・車両別等ですぐに取り出せる状態(可視性)にする | 巡回指導時にすみやかに提示できない場合、安全管理体制の未整備として評価(ランク)が下がる |
| 安全な保管環境 | 運転者台帳や健康診断結果など、個人情報を含む書類は施錠可能な書庫で管理する | 誰でも閲覧できる状態での放置は、個人情報保護法および安全管理措置義務の違反にあたる |
国土交通省の行政処分基準(別表)では、書類の保存違反は実際に処分対象となる違反行為として明記されています。主な事例は以下の通りです。
| 違反項目 | 違反の程度 | 初違反(日車) | 再違反(日車) |
|---|---|---|---|
| 点呼記録簿の保存違反 | 全て保存なし | 30日車 | 60日車 |
| 一部保存なし | 警告 | 30日車 | |
| 運転日報(業務の記録) | 全て保存なし | 30日車 | 60日車 |
| 一部保存なし | 警告 | 30日車 | |
| 運行記録計(タコグラフ) | 全て保存なし | 30日車 | 60日車 |
| 一部保存なし | 警告 | 30日車 | |
| 運行指示書の保存違反 | 保存なし | 20日車 | 40日車 |
| 点検整備記録簿の保存違反 | 4枚以上保存なし | 3日車 × 車両数 | 6日車 × 車両数 |
| 3枚以下保存なし | 警告 | 3日車 × 車両数 | |
| 記録の改ざん・不実記載 | 点呼・日報・タコグラフ等 | 60日車 | 120日車 |
国土交通省の監査には、全事業者を対象に2〜3年に一度行われる「巡回指導」と、事故や法令違反の疑いを契機に実施される「抜き打ち監査」があります。重大事故後は即時監査となる場合もあるため、日頃から書類を整備しておく必要があります。
上記のとおり、書類の管理を怠り全て保存なしと判定されると、即座に30日車以上の厳しい車両停止処分が下されます。さらに注意すべきは「記録の改ざん・不実記載」です。
「紛失してしまったから、慌てて後から書き足した(あるいは修正液で書き換えた)」といった行為が発覚した場合、保存違反よりもはるかに重い「60日車」の処分が下されます。これは事業継続に大きな影響を与えるレベルの処分です。
参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03punishment/data/transmittal_k107.pdf
(2)電子保存のルールと監査で求められる要件
国土交通省の通達に基づき、一定の要件を満たせば電子データによる書類の保存が認められています。電子保存を行う場合は、以下の要件をすべて満たさなければなりません。
- 記録内容が明瞭に確認できる状態で保存されていること
- データの改ざんが防止できる仕組みが整っていること(アクセス権限の設定等)
- 監査・指導時に画面表示または印刷して提示できること
- バックアップ体制が整備されており、データ消失リスクに対応していること
- 電子署名や記録日時の管理が適切に行われていること
また、書類の電子保存を検討する際には、電子帳簿保存法への対応も合わせて確認が必要です。2024年1月より、電子的に授受した取引情報(請求書・契約書等)は電子データのままでの保存が義務化※されており、紙への出力保存は税務上認められなくなっています。
運送業においても、荷主との間で電子的にやり取りする書類が対象となるため、自社の取引形態を確認した上で適切な対応が求められます。
電子保存を行う場合、国土交通省の通達では「真正性(改ざん防止)」「見読性(画面・印刷で確認可能)」「保存性(バックアップ等)」の3要件を満たす必要があります。システム導入時は、これらの要件に対応しているかを必ず確認しましょう。
国土交通省が公表している「中小物流事業者のための物流業務のデジタル化の手引き」によれば、点呼・車両点検・運転日報・労務管理といった運行管理に関わる書類は、クラウド型のシステムによる一元管理が実務上も有効とされており、実際にIT点呼システムや動態管理システムを導入して業務効率化と記録管理の両立を実現している事業者の事例が報告されています。
※出典:https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021005-038.pdf
参考:https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001608991.pdf
4.運送業の書類における効率的な管理方法

書類の保存期間を正しく守り続けるためには、適切な仕組みを整えることが不可欠です。
ここでは、管理負担を軽減しミスを防ぐための具体的な手法を紹介します。
(1)電子化・システム導入
デジタコ(デジタル式運行記録計)や点呼システムのデータをそのまま活用したり、紙書類をスキャンして電子保存したりすることで、管理の効率は劇的に向上します。
| メリット | 注意点 |
|---|---|
| ・保管スペースの削減・検索性の向上・保存期間の自動管理・拠点間共有 | ・法的要件のクリア・バックアップの徹底・運用ルールの策定 |
システム等で書類を管理する場合、改ざん防止(真正性)や即座の表示(見読性)といった、国土交通省の通達(電磁的記録による保存要件)を満たすものを選定する必要があります。
近年は、運行記録・点呼・整備管理を一括でデジタル化できるクラウド型システムが主流です。これらを導入することで、保存期間のカウントミスや書類の紛失といったヒューマンエラーを物理的に排除できるようになります。

(2)書類を徹底的に整理整頓する
電子化が進む一方で、依然として紙での保存が必要な書類も少なくありません。以下のポイントを実践することで、急な監査や巡回指導でも慌てずに、かつ正確に対応できる体制を整えられます。
- 専用バインダーとラベルによる識別
- 保存期間と破棄予定日の「見える化」
- 書類管理台帳の作成
- 定期的な「棚卸し」と一括廃棄の実施
- 管理手順の標準化(マニュアル化)
運転者台帳、健康診断結果、事故記録などには、極めて重要な個人情報や機密情報が含まれています。これらを無造作に一般ゴミとして出すことは、情報漏洩のリスクを招き、企業の社会的信用を失墜させかねません。
廃棄にあたっては、シュレッダー処理を徹底するか、あるいは専門の機密情報処理業者へ委託(溶解処理など)することを推奨します。
5.まとめ
書類の適切な保存は、運送事業者としての法令遵守の基本であり、万一の監査・指導においても事業継続を守る重要な備えです。本記事を参考に、自社の書類管理体制を改めて見直してみてください。
五十鈴株式会社の「次世代運行管理システムAIR」は、運行記録や日報などの帳票を一元管理し、書類の保存・管理業務の効率化を支援します。書類管理の見直しや運行管理業務の効率化をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。


