トラックの実車率は、運送業の経営効率を測る基本指標のひとつです。本記事では、実車率の定義・計算方法・業界平均から、混同されやすい指標との違い、国土交通省の政策文脈、そして具体的な改善手法まで体系的に解説します。
五十鈴株式会社の「次世代運行管理システムAIR」は、鋼材・重量物輸送の現場実績を持ち、自動配車・動態管理・自動日報作成・勤怠・請求のワンストップカバーにより、実車率の向上につながる効率的な配車・運行管理を支援します。セミオーダー型カスタマイズで自社の中長期戦略に合わせた導入が可能ですので、まずはお気軽にご相談ください。

1.実車率の定義と計算方法|基本概念から計算式・具体例まで

ここでは実車率の定義・計算式・具体例の順に確認し、正確な算出方法を解説します。
(1)実車率とは何か
実車率とは、トラックが走行した総距離のうち、実際に荷物を積んで走行した距離の割合を示す指標です。
言い換えれば「走った時間・距離のうち、どれだけ有効に稼働していたか」を距離ベースで測る数値です。荷物を積まずに走る「空車走行」が多いほど実車率は低くなり、輸送コストの無駄が大きいことを意味します。
(2)実車率の計算式
実車率の計算式は以下のとおりです。
実車率(%)= 実車走行距離 ÷ 総走行距離 × 100
| 実車走行距離 | 荷物を積載した状態で走行した距離 |
|---|---|
| 総走行距離 | 空車・実車を含むすべての走行距離 |
なお、総走行距離には実車走行距離と空車走行距離の両方が含まれるため、実車率と空車率を合計すると100%になります。
(3)実車率の計算例
具体的な数値で確認してみましょう。
| 総走行距離 | 300km |
|---|---|
| うち実車走行距離(荷物を積んで走行) | 210km |
| 空車走行距離(回送・帰り便など) | 90km |
実車率 = 210 ÷ 300 × 100 = 70%
この場合、走行距離の70%は有効に稼働していたことになります。残り30%は空車走行であり、この部分をいかに削減・活用するかが収益改善のポイントとなります。
複数台・複数日で集計する場合も考え方は同じで、期間内の全車両の実車走行距離合計を総走行距離合計で割れば、車隊全体の実車率を算出できます。
2.実車率の平均値と自社数値の評価方法

実車率の改善に取り組む前に必要なのは、現状数値の正確な評価です。
業界平均と比較して高いのか低いのか、また高ければ必ずしも良いとも言い切れない点も含め、ここでは実車率の平均値と自社数値の評価方法を整理します。
(1)業界平均の実車率
日本自動車工業会の「2022年度 普通トラック市場動向調査」によると、運輸業における平均実車率は65%となっています 。車種別に見ると、10トンクラス(大型)で67%、4トンクラス(普通貨物)で63%となっており、16年度からほぼ同水準を維持しています。
また、全日本トラック協会の「経営分析報告書(令和5年度決算版)」の統計データ(1者平均)から算出される実車率も、約69.5%(実車キロ824,418km ÷ 走行キロ1,185,750km)と、概ね6割台後半で推移しています。
| 車種区分 | 実車率の業界平均値 | 効率性の評価指標 |
|---|---|---|
| 大型貨物(10tクラス) | 67% | 70%以上であれば、業界平均を上回る高効率な運行 |
| 普通貨物(4tクラス) | 63% | 65%前後が平均。地場配送等ではこの水準の維持が目安 |
| 自家用トラック | 57% | 運輸業用途と異なり帰り荷を前提としない運用が多いため、運輸業平均(65%)を下回る |
国土交通省「自動車輸送統計調査」は、トラック事業者を対象に輸送距離・積載量・稼働状況を継続的に把握する基幹統計であり、上記の業界平均値はこの調査をもとに算出されています。なお、自家用トラックの実車率※が運輸業平均を下回る背景には、製造業・建設業など本業を持つ事業者が自社の配送に特化して使用するケースが多く、帰り荷の確保を前提としない運行計画が一般的であることが挙げられます。
※自動車輸送統計調査では「実車率」という項目名は公表されておらず、輸送量・走行距離などの統計値から算出される指標です。
自社の実車率がこれらの平均値を下回っている場合、空車走行による燃料費・人件費のロスが収益を圧迫している可能性があります。ただし、実車率は荷主との契約条件(片道契約か往復契約か)や、帰り荷の確保状況によって大きく変動します。
参考:https://jta.or.jp/wp-content/themes/jta_theme/pdf/keiei/bunseki_r05gaiyo.pdf
参考:https://www.jama.or.jp/library/invest_analysis/pdf/2022Trucks.pdf
(2)自社の実車率が低い・高いときの判断基準
- 帰り荷の確保ができておらず、回送が多い
- 配車計画が非効率で、空走ルートが発生している
- 荷主・路線の偏りにより特定方面の空車が常態化している
実車率が低い場合は、原因が「配車計画」「営業(帰り荷獲得)」「ルート設計」のどこにあるかを切り分けることが改善の出発点となります。
また、実車率が極端に高い(例:90%以上)場合も無条件に良いとは言えません。
ドライバーの拘束時間が長くなっていたり、無理な積み付けによる事故リスクが高まっている可能性もあるため、現場の実態と照らし合わせた判断が必要です。
(3)実車率だけで評価しない|複合指標で見るべき理由
実車率は距離効率を示す指標であり、単独で運行効率のすべてを評価できるわけではありません。たとえば実車率が高くても積載量が少なければ、1回の輸送で生み出せる収益は小さくなります。
経営判断においては、後述する積載率・実働率などの指標と組み合わせて多角的に評価することが不可欠です。
(4)実車率の推移から見る業界トレンド
日本自動車工業会の調査によると、実車率は2016年度以降ほぼ横ばいで推移しており、構造的な改善が進みにくい状況が続いています。背景には、多頻度小口配送の常態化・荷主都合による待機時間の発生・ドライバー不足による配車の硬直化などが挙げられます。
一方、2024年4月の時間外労働上限規制の施行以降、限られた労働時間の中で輸送量を維持するために実車率・積載率の改善を経営課題として位置づける事業者が増えています。国土交通省も「物流の2024年問題」への対応策として輸送効率化を明示しており、今後は業界全体での実車率向上が加速することが見込まれます。
参考:https://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/content/000308343.pdf
3.実車率・空車率・積載率・実働率の違いを整理

実車率と混同されやすい指標として、空車率・積載率・実働率があります。
それぞれの定義と目的は異なり、「何を改善したいか」によって使うべき指標も変わります。この章では各指標の違いを整理し、実務での使い分け方を整理します。
(1)実車率と実働率の違い
実働率とは、保有するトラックのうち実際に稼働した車両の割合を示す指標で、車両稼働率とも呼ばれます。
実働率(%)= 稼働車両数 ÷ 保有車両数 × 100
実車率が走行中に荷物を積んでいた距離の割合(1台の中身)であるのに対し、実働率は保有車両のうち何台が動いていたか(車両全体の稼働状況)を示します。改善文脈での違いは以下のとおりです。
| 指標 | 何を測るか | 低い場合の対策 |
|---|---|---|
| 実車率 | 走行中の有効活用度 | 帰り荷獲得・配車最適化 |
| 実働率 | 車両の稼働状況 | 車両整備・ドライバー確保・受注拡大 |
実務上は、実車率と実働率を並べて確認することで、問題の所在を切り分けやすくなります。たとえば「実働率は高いが実車率が低い」場合は、車両は動いているものの空車走行が多い状態を示しており、帰り荷の獲得や配車計画の見直しが優先課題となります。
逆に「実働率が低い」場合は、そもそも稼働できていない車両があることを意味し、整備不良・ドライバー不足・受注不足など別の問題が疑われます。
(2)実車率と積載率の違い
積載率とは、トラックの最大積載量に対して実際にどれだけ積んでいたかを示す指標です。
積載率(%)= 実際の積載量 ÷ 最大積載量 × 100
実車率が距離に着目するのに対し、積載率は重量・容積に着目します。実車率が高くても積載率が低ければ、半空きのトラックを長距離走らせていることになり、収益効率は低くなります。
積載率を上げるには、混載・積み合わせ輸送の活用や、荷量に応じた車格選定が有効です。
(3)実車率と空車率の違い
空車率は実車率の裏側にある数値で、計算式は以下のとおりです。
空車率(%)= 空車走行距離 ÷ 総走行距離 × 100
実車率+空車率=100%となるため、どちらか一方を改善することはそのままもう一方の改善を意味します。
空車率という表現は、削減すべきコストとして語られる文脈で多く使われ、実車率は「向上させるべき効率」として使われることが多いです。同じ現象を異なる視点で表現しているにすぎませんが、改善施策を議論する際は「空車率を下げる」という言い回しの方が現場に伝わりやすい場合もあります。
4.国土交通省の輸送効率指標における実車率の位置づけ

実車率は自社内の管理指標にとどまらず、国土交通省が輸送効率の把握・政策立案に用いる公的な指標でもあります。業界全体の平均値や政策の方向性を把握することで、自社の取り組みを客観的な文脈に位置づけることができます。
(1)国交省が注目する輸送効率の指標群
国土交通省は「自動車輸送統計調査」などを通じて、トラック輸送の効率性を継続的に把握・公表しています。主に参照される指標は以下のとおりです。
| 実車率 | 走行距離ベースの積載有無割合 |
|---|---|
| 積載率 | 重量・容積ベースの積載効率 |
| 車両稼働率(実働率) | 保有車両の稼働状況 |
これらは、日本全体の物流効率がどのくらいかを測るための複合的な指標群として位置づけられています。国交省のデータは自社の実車率を業界平均と比較する際の基準値としても活用できます。
参考:https://www.mlit.go.jp/k-toukei/jidousya.html
(2)2024年問題・物流政策と実車率改善の関係
2024年4月に施行されたトラックドライバーの時間外労働の上限規制(いわゆる「2024年問題:年間960時間の時間外労働上限」)により、運送業界では輸送能力の制約が一層厳しくなっています。限られたドライバーの労働時間・走行距離で同等以上の輸送量を確保するためには、1回1回の輸送の効率を高めることが不可欠です。
その文脈で、実車率・積載率の向上は「少ない走行で多くの荷物を運ぶ」ための中心的な課題として国交省や業界団体から強く推奨されています。
そのため規制対応・コンプライアンスの観点からも、自社の実車率を定期的に把握・記録する体制を整えることが、今後の経営において重要度を増しています。
国土交通省が公表している「物流革新緊急パッケージ」(2023年10月)※では、トラック輸送の生産性向上策として、積載率・実車率の改善を含む輸送効率化が重点施策のひとつに位置づけられています。また、同パッケージでは荷主企業に対しても荷待ち時間の削減・附帯作業の見直しを求めており、実車率改善は運送事業者だけでなく荷主側の協力も不可欠な取り組みです。
※このパッケージは内閣官房が中心となって取りまとめた政策であり、国土交通省も連携して輸送効率化を推進しています。
参考:https://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/content/000308343.pdf

5.実車率による配車・営業・運行効率の最適化

実車率の定義・計算・評価を把握したうえで、次に必要なのは具体的な改善行動です。この章では、実車率を押し下げている主な要因ごとに、配車・営業・運行管理の各側面から取り得る施策を整理します。
(1)帰り荷・共同輸送で空車走行を減らす
実車率を高める最も直接的なアプローチは、空車で走っている距離を有効活用することです。主な手段として以下が挙げられます。
①帰り荷の獲得
往路で荷物を届けた後、復路も荷物を積んで戻るための荷主・路線を営業で確保します。帰り荷の単価は往路より低くなることも多いですが、空車走行と比較すれば収支改善に直結します。荷主とのリレーションシップ構築が有効です。
②共同輸送・混載輸送
単独では積載率・実車率が取れない荷量でも、他社との共同輸送や混載を活用することで効率を高められます。特に地場の小口輸送や特定方面への偏った荷量では有効な選択肢となります。
(2)配車最適化による実車率改善
配車計画の精度が低いと、無駄な回送や遠回りルートが発生し実車率を押し下げます。改善のポイントは以下の3点です。
| 施策 | 内容 | 具体的な対応 |
|---|---|---|
| 荷主・ルートの見直し | 実車率を車両・路線・ドライバー別に集計・分析 | 低実車率の路線特定、契約見直し、ルート統合 |
| 需要予測に基づく配車 | 出荷パターンに応じた車両配置 | 季節・曜日・荷主別の需要分析、最適配車 |
| 動的配車の導入 | リアルタイムでの配車最適化 | キャンセル・追加依頼への即時対応 |
車両・路線・ドライバー別に実車率を集計することで、空車走行が多い箇所を特定できます。特定の路線で実車率が低い状態が続く場合は、荷主との契約見直しやルート統合により改善を図ります。
また、季節や曜日、荷主ごとの出荷パターンを踏まえた配車計画により、余剰稼働を抑えながら実車率の向上が可能です。さらに、当日のキャンセルや追加依頼に対応する動的配車を導入することで、実車率の変動を抑制できます。

(3)運行管理システムで実車率を可視化・継続改善する
実車率の改善を一過性で終わらせないためには、データを継続的に収集・分析・フィードバックする仕組みが必要です。
運行管理システムを導入することで、以下が実現できます。
- 各車両の走行距離・実車距離の自動集計による実車率の定期的な把握
- 路線・ドライバー・時期別の実車率推移の可視化
- 低実車率の原因分析と配車計画へのフィードバック
- 積載率・実働率との複合分析による経営判断の高度化
実車率改善は「計測→分析→対策→再計測」のPDCAサイクルを回すことで成果が積み上がります。運行管理システムはこのサイクルを低コストかつ高精度で回すための基盤となります。
手作業による集計では見えにくかった非効率が、システムによるデータ化で初めて可視化されます。特に車両数・路線数が多い大規模運送事業者ほど、システムによる管理の優位性は高まります。

(4)実車率改善における荷主との連携
実車率の改善は、運送事業者の配車工夫だけでは限界があります。荷主企業との関係性・契約条件が実車率に直接影響するため、以下のような荷主連携のアプローチも重要です。
①運送契約の見直し(片道契約から往復契約へ)
片道のみの契約では、復路が必然的に空車になります。帰り荷を含めた往復契約への切り替えを荷主と交渉することで、構造的に実車率を改善できます。
②荷待ち時間・附帯作業の削減
国土交通省の調査では、トラックドライバーの荷待ち時間が実働時間を圧迫していることが指摘されています。荷主側での荷積み準備・バース管理の改善により、1台あたりの実走行時間を増やすことが間接的に実車率向上につながります。
③定期的なデータ共有
実車率・積載率のデータを荷主と定期的に共有することで、荷主側にも輸送効率の意識を持ってもらいやすくなります。数値を見える化することで、契約改善・協力体制の構築がスムーズになります。
参考:https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/
参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk4_000107.html
6.まとめ
実車率をはじめとする輸送効率指標を自動集計・分析・改善へとつなげる体制を構築することが、競争力強化と持続的な収益改善の基盤となります。
五十鈴株式会社の「次世代運行管理システムAIR」は、実車率向上につながる配車・運行管理の効率化を支援します。輸送効率の改善をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。

