2024年問題を契機として、荷主・物流事業者の双方が「自主行動計画」を策定し、その内容を公表する動きが急速に広まっています。自主行動計画は、政府が定めたガイドラインに基づき、各企業・業界団体が自らの取り組み目標や実施スケジュールを明文化することを目的とします。本記事では、自主行動計画の概要・策定背景から、ガイドラインに沿った5大柱の取り組み内容、荷主企業・物流事業者それぞれの具体的対応策、さらに計画を実務に落とし込むプロセスまで、体系的に解説します。
五十鈴株式会社の「次世代運行管理システムAIR」は、鋼材・重量物輸送の現場実績を持ち、自動配車・動態管理・自動日報・勤怠・請求のワンストップカバーにより、自主行動計画の実行に必要な荷待ち時間・運行実績・配送状況の可視化と改善体制の構築を支援します。セミオーダー型カスタマイズで自社の中長期戦略に合わせた導入が可能ですので、まずはお気軽にご相談ください。
1.自主行動計画と物流効率化法・物流関連ガイドラインとの関係

自主行動計画は、政府のガイドラインおよび改正物効法と密接に連動する取り組みです。まずは三者の関係性を整理し、計画策定の法的根拠と背景を確認します。
(1)物流における自主行動計画の概要
物流における自主行動計画とは、発荷主事業者・着荷主事業者・物流事業者、およびそれらの業界団体が、政府のガイドラインを踏まえて自社・自業界の具体的な行動目標を定め、対外的に公表する計画書です。
計画内では、「荷待ち・荷役作業時間を計2時間以内(将来的には1時間以内)とする目標」や「共同輸配送による積載率の向上」といった物流業務の効率化・合理化だけでなく、「運送契約の書面化」「運賃と料金の別建て」「燃料サーチャージの導入」といった運送契約の適正化、さらに異常気象時の運行中止判断などの安全確保に至るまで、具体的な施策と実施に向けた役割が盛り込まれます。
こうした計画の公表は、サプライチェーン全体での取引先や社会への説明責任を果たすとともに、荷主と物流事業者が連携・協働して、物流の持続可能性を高めるためのPDCAを回す起点となります。
参考:https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/buturyu_kakushin/jk7_pdf/01.pdf
(2)物流2024年問題と自主行動計画策定の背景
2024年4月、トラックドライバーの時間外労働に年間960時間の上限規制が適用されました。これにより、何も対策を講じなければ2024年度には約14%、さらに2030年度には約34%の輸送能力が不足する可能性が推計されています。
これがいわゆる「物流の2024年問題」です。この深刻な輸送力不足を招く要因のひとつが、荷主側に起因する非効率な商慣行や長時間の荷待ち・荷役作業です。
国土交通省の実態調査によれば、1運行あたりの平均荷待ち時間は1時間34分、荷役時間は1時間29分で、合計約3時間3分となっています。また、荷待ち時間がある運行とない運行を比較すると、拘束時間に約2時間の差が生じており、荷待ち時間の有無がドライバーの長時間労働に直結している実態が示されています。
深刻化するドライバー不足のなかで物流の持続可能性を維持するため、危機意識を「発荷主・着荷主・物流事業者」それぞれの具体的な行動へと転換する強力な枠組みとして、自主行動計画の策定が求められています。
参考:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/gyosyu/topics/01.html
(3)物流効率化法(改正物流効率化法)との関係
2024年5月に公布された「改正物流効率化法(流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律)」は、すべての荷主および物流事業者に対して物流効率化への取り組みを努力義務として課しています。さらに、一定規模以上の輸送量を持つ「特定事業者」に対しては、物流統括管理者(CLO)の選任や中長期計画の作成、定期報告が義務化されました。
特定事業者に指定された企業は、この判断基準を満たすための「中長期計画」を策定・提出しなければなりません。つまり、自主行動計画で定めた実務的なアプローチが、そのまま法的な義務体系である中長期計画の具体的な中身(実行策)の土台になるという密接な連動関係にあります。
自社が特定事業者に該当するかどうかを早期に見極めるとともに、業界の自主行動計画をリファレンス(参照)しながら、法令要件をクリアできる実効性の高い社内計画へと落とし込んでいくことが重要です。
(4)物流関連ガイドラインとの関係性
政府が策定した「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」は、物流の適正化と物流の生産性向上の2つの柱で構成されており、発荷主事業者・着荷主事業者・物流事業者の3者それぞれが取り組むべき事項を具体的に定めています。
適正化の観点から「荷待ち・荷役時間を計2時間以内(将来的には1時間以内)とする目標」の導入や、書面による契約締結、運賃と料金の別建て支給などが強く求められています。その他にも、多頻度小口配送の見直しや共同輸配送による積載率の向上、デジタル化(DX)の推進などが盛り込まれています。
業界団体や企業が作成する自主行動計画は、このガイドラインに示された基本構造をベースに、「自社・自業界の現状に照らし合わせ、どの項目で、いつまでに、どのような数値目標を達成するか」を明確に宣言する役割を持ちます。
参考:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001612798.pdf
2.物流の自主行動計画の5大柱とは?ガイドラインに沿った主な取り組み
ガイドラインは、荷主・物流事業者が取り組むべき事項を5つの柱に整理しています。それぞれの柱が目指す目標と、具体的な施策の方向性を解説します。
(1)荷待ち・荷役時間の削減
ガイドラインでは、1運行あたりの荷待ち・荷役等時間を2時間以内とすることを目標とし、これを達成した場合や既に2時間以内の場合には1時間以内を目指すよう定めています。また1回の受け渡しごとの荷待ち・荷役等時間については、原則として1時間以内を目標としつつ、2時間を超えないよう努めることが求められます。
主な取り組みとしては、トラック予約受付システム(バース予約システム)の導入による車両到着時間の平準化、入出荷時間帯の分散、荷役作業の標準化・機械化などが挙げられます。急な入出庫依頼の抑制や、着荷主側における受け入れ体制の整備も、荷待ち時間の削減に直結します。
(2)積載率向上と共同輸配送の推進
改正物効法では、令和10年度(2028年度)までに全トラック輸送の5割の車両で積載率50%を実現し、全体平均で44%へ引き上げることを目標として掲げています。現状の積載率は全国平均で40%を下回る水準にあり、大幅な改善余地があります。
積載率向上のための取り組みとして、パレット化・荷姿の標準化による積み付け効率の改善、同業他社や取引先との共同輸配送の推進、輸送ロット・配送頻度の見直しなどが有効です。特に共同輸配送は、単独では積載率が低くなりがちな中小規模の荷主にとって、コスト削減と環境負荷低減を同時に実現できる手段として注目されています。
参考:https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/truck/shipper
(3)商慣行(発注・納品条件)の適正化
物流を圧迫してきた商慣行として代表的なものが、食品業界における「3分の1ルール」(製造日から賞味期限までの3分の1以内に納品を求める慣行)や、日販品での翌日納品要求です。こうした慣行は、夜間運転・倉庫の夜間作業を生じさせ、ドライバーの長時間労働の一因となってきました。
ガイドラインでは、リードタイムの延長・納品期限の緩和・発注ロットの適正化・付帯作業の契約明確化など、商慣行の見直しを荷主に求めています。発荷主・着荷主の双方が取引条件の適正化に向けて合意形成を進めることが、サプライチェーン全体の物流効率化につながります。
(4)デジタル化による物流効率化
電話・FAX・紙帳票などのアナログな商習慣が根強く残る物流現場では、情報連携の遅れが荷待ち時間や積載率の低下を招いています。デジタル化は、こうした非効率を解消するための重要な手段です。
具体的な取り組みとして、受発注・納品指示のEDI化、運送状・検収書の電子化、輸配送状況の可視化(トラッキングシステムの導入)、在庫データのリアルタイム連携などが挙げられます。荷主・物流事業者間でデータを共有することで、積み付け計画の最適化や積載率向上にも寄与します。
(5)物流生産性向上に向けた継続的な改善
自主行動計画は一度策定して終わりではなく、KPIの測定・評価・改善を繰り返すPDCAサイクルとして運用することが重要です。荷待ち時間・積載率・再配達率などのデータを定期的に収集・分析し、計画の達成状況を社内外に報告する体制を整えます。
特定荷主に義務づけられた定期報告書では、平均荷待ち時間・荷役時間の達成率や積載率の改善状況など、具体的な数値による進捗の開示が求められます。この報告サイクルを自社のPDCAと連動させることで、法令対応と実務改善を同時に推進できます。
政府による定期的なフォローアップ調査の結果も参照しながら、好事例の水平展開や業界内でのベンチマーキングを通じて、継続的な底上げを図ることが期待されています。
3.荷主企業が自主行動計画を具現化する4つの対応策

自主行動計画の実効性は、荷主企業が自社の業務プロセスにどう落とし込むかにかかっています。拠点運用・商慣行・社内体制の3つの切り口から、優先度の高い対応策を整理します。
(1)自社拠点における長時間の荷待ちを解消する運用整備
荷待ち時間の削減は、荷主企業の自社拠点における運用改善から始まります。まず着手すべきは、バース(荷さばき場)の利用状況の可視化と、車両到着時間の予約制導入です。
トラック予約受付システムを活用することで、特定の時間帯への集中を緩和し、ドライバーの待機時間を大幅に短縮できます。
あわせて、倉庫・物流センター内の作業計画を早めに立案し、急な入出庫依頼を抑制する社内ルールの整備が必要です。フォークリフト・AGVなどの荷役機器の導入や、標準パレットの活用による荷役作業の効率化も、荷役時間の短縮に直結します。
これらの取り組みは、荷主企業にとっても物流コストの削減につながる投資として捉えることができます。
(2)営業・購買部門を巻き込んだ取引条件(商慣行)の見直し
商慣行の是正は、物流部門単独では実現できません。リードタイムの延長・納品期限の緩和・発注ロットの適正化といった取引条件の見直しは、営業・購買・調達部門との合意形成が不可欠です。
社内横断的なプロジェクトチームを立ち上げ、現行の取引条件が物流に与えている負荷をデータで定量化したうえで、取引先との協議を進める進め方が効果的です。付帯作業(仕分け・検品・ラベル貼り等)の範囲と対価を運送契約に明記することも、物流事業者との関係適正化に向けた重要な一歩です。
(3)法改正に対応した社内推進体制(CLO選任)の構築
改正物効法では、一定規模以上の特定荷主に対して、物流統括管理者(CLO:Chief Logistics Officer)の選任が2026年4月から義務化されています。CLOは、事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある役員等から選任することが求められており、調達から販売までのプロセスを横断的に管理し、データを活用しながら物流改善施策を主導する役割を担います。
また、特定荷主の指定基準は「年間取扱貨物重量9万トン以上」(発荷主にあたる第一種荷主・着荷主にあたる第二種荷主のいずれか、または両方)です。
重量の算定が困難な場合は、車両台数×積載量や売上高からの換算など、複数の代替算定方法が認められています。
指定は年度ごとの実績に基づき毎年見直されるため、基準値に近い事業者は継続的なモニタリングが推奨されます。
CLOを中心に、物流部門・営業部門・購買部門・情報システム部門が連携する社内推進体制を構築することで、自主行動計画の実行力が高まります。CLO選任の義務対象に該当するかどうかを早期に確認し、対象外の企業であっても経営トップが物流改革に関与する体制を整えることが、持続的な改善につながります。
4.物流事業者が荷主と共存するための4つの対応策

物流事業者には、荷主との関係を維持しながら運行効率と収益性を高めることが求められます。運行計画の最適化から適正運賃の収受まで、実務的な対応策を解説します。
(1)運行計画の最適化
物流事業者にとって、ドライバーの拘束時間短縮と輸送効率の向上を両立するうえで、運行計画の最適化は最優先の取り組みです。荷待ち・荷役時間を含めた実態データを収集・分析し、非効率なルートや時間帯を特定することが出発点となります。
AIを活用した配車最適化システムや動態管理ツールを導入することで、実走行データに基づくルート設計が可能になります。荷主と連携して積み合わせ便や帰り便の活用を推進することも、車両稼働率と積載率の向上に寄与します。
配車計画の自動化やAIを活用したルート最適化については、「トラックの自動配車システム17選を比較!AI機能等の無料比較表も」の記事で詳しく解説しています。運行計画の見直しとあわせて、自社に合う配車システムを検討する際の参考にしてください。

(2)輸送効率化の推進
輸送効率化の主要手段として、モーダルシフト(トラックから鉄道・内航海運への輸送手段転換)と共同輸配送の推進が挙げられます。長距離輸送においては、鉄道・船舶の活用によってドライバーの負担軽減とCO2排出量削減を同時に実現できます。
共同輸配送については、同業他社との連携だけでなく、荷主企業同士をマッチングするプラットフォームを活用することで、積載率向上のチャンスが広がります。帰り荷の確保や中継輸送の仕組みを整備することも、車両・ドライバーリソースの有効活用につながります。
(3)適正な運賃・料金の交渉
物流事業者は、荷待ち時間・荷役作業・燃料費上昇などのコスト要因を可視化し、根拠のある数字をもとに荷主との運賃交渉に臨むことが重要です。実務上は、高速道路料金やフェリー料金、荷待ち・荷役の対価などを運賃と別建てで収受することが前提とされています。また附帯業務(倉庫内荷役・ピッキング・仕分け・検品等)についても、契約外であれば本来は有償対応の対象であり、事前の協議・書面化が求められます。
国土交通省による「標準的な運賃」の公示制度を活用するとともに、運送契約において付帯作業の範囲・単価・荷待ち時間に対する対価を明確に定めることで、持続可能な事業運営の基盤を構築できます。荷主との良好なパートナーシップを維持しながら、双方が納得できる取引条件を整備していくことが、長期的な共存共栄につながります。
参考:https://jsite.mhlw.go.jp/niigata-roudoukyoku/content/contents/001642182.pdf
5.物流の自主行動計画を成功に導く実務プロセス

計画の策定から継続的な改善まで、実務で機能させるには段階的なプロセスの設計が重要です。現状把握・KPI設定・パートナーシップ構築・法改正対応の4ステップで解説します。
(1)荷待ち・積載率などの現状データを測定する
荷待ち時間・荷役時間・積載率・再配達率・リードタイムなど、計画の対象となるKPIについて、現場の実態データを収集・整理します。データ収集の方法としては、ドライバーの点呼記録・動態管理システムのログ・入荷検品システムの履歴などが活用できます。
現状を定量化することで、改善余地の大きい課題を優先的に特定でき、目標値の設定にも説得力が生まれます。「計れないものは改善できない」という原則のもと、測定体制の整備を計画策定と並行して進めることを推奨します。
(2)具体的なKPIを設定し、計画を策定・公表する
現状データをもとに、達成可能かつ法令要件を満たした具体的なKPIを設定します。たとえば「2026年度末までに荷待ち・荷役等時間を1運行あたり2時間以内に削減」「2028年度までに積載率を44%以上に引き上げ」といった形で、数値・期限・対象範囲を明確にします。
策定した計画は、対外的に公表することが求められます。自社ウェブサイトや業界団体への提出を通じて公表することで、取引先・投資家・社会への説明責任を果たすとともに、社内における取り組みの優先度を高める効果もあります。
(3)荷主・物流事業者が連携してパートナーシップを構築する
自主行動計画の目標達成には、荷主と物流事業者が情報を共有し、互いの課題を理解したうえで連携して取り組むことが不可欠です。定期的な協議の場を設け、荷待ち時間のデータ共有・積載率改善策の共同立案・取引条件の見直し交渉などを進める「パートナーシップ構築宣言」の活用も有効です。
一方的な要求やコスト転嫁ではなく、双方のメリットを明確にしたうえで合意形成を図ることが、持続的な改善サイクルの源泉となります。現場担当者レベルから経営層まで、複数の接点で連携できる体制を構築することが理想的です。
(4)法改正動向のキャッチアップと計画のブラッシュアップ
物流に関する法制度は現在も整備が続いており、特定事業者の指定基準・CLOの選任要件・判断基準の詳細など、実務に直結する規則が順次公表されています。改正物効法の施行に伴う政省令・基本方針の改定動向を継続的にウォッチし、自主行動計画の内容を法令要件に適合させていくことが必要です。
業界団体の動向や政府のフォローアップ調査結果も参照しながら、計画の妥当性を定期的に検証します。目標未達の項目については原因を分析し、対策の見直しを行います。法改正のたびに計画をゼロから作り直すのではなく、初期から更新しやすい構造で計画書を設計しておくことが実務負荷の軽減にもつながります。
6.まとめ
特定事業者に該当する企業は、CLO選任・中長期計画の作成・定期報告という法的義務への対応を優先しつつ、自主行動計画をその実行基盤として位置づけることが重要です。対象外の企業であっても、法改正の動向を踏まえ、早期に体制を整備しておくことが競争優位につながります。
五十鈴株式会社の「次世代運行管理システムAIR」は、配車・動態管理・自動日報・勤怠・請求を一元化し、自主行動計画の実行に必要な運行実績や荷待ち状況の可視化、改善施策の運用を支援します。自主行動計画の策定・運用や物流改善体制の整備をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。


