2024年における物資の流通の効率化に関する法律(以下、物流効率化法)の改正により、一定規模以上の荷主企業や連鎖化事業者には、物流の効率化に向けた中長期計画の作成・提出が義務付けられました。本記事では、物流効率化法における中長期計画制度の概要から、対象企業の判定基準、様式の記載内容、定期報告との関係、実務上の対応ポイントまでを体系的に解説します。
五十鈴株式会社の「次世代運行管理システムAIR」は、鋼材・重量物輸送の現場実績を持ち、自動配車・動態管理・自動日報・勤怠・請求のワンストップカバーにより、物流効率化法の中長期計画に必要な物流データの可視化や改善施策の実行管理を支援します。セミオーダー型カスタマイズで自社の中長期戦略に合わせた導入が可能ですので、まずはお気軽にご相談ください。
1.物流効率化法の中長期計画とは?制度概要

物流効率化法における中長期計画は、特定の荷主企業や連鎖化事業者が国に対して提出する、物流効率化に関する中期的な取組計画です。法律に基づく義務的な提出書類であるため、対象企業は正確な制度理解と計画的な対応が求められます。
(1)改正物流効率化法と中長期計画制度の概要
物流効率化法は、改正前は事業者の自主的な取組を促す仕組みが中心でしたが、改正後は一定規模以上の荷主企業・連鎖化事業者(特定事業者)に対して、物流効率化のための「判断基準」の遵守と「中長期計画」の作成・提出が義務化されています。
中長期計画は、国が定める判断基準に基づき、各企業が自社の物流実態を踏まえて策定するものです。計画期間は原則として3年〜5年とされており、取組の目標(KPI)と具体的な施策を明記する必要があります。
所管省庁は国土交通省・経済産業省・農林水産省であり、業種や事業内容によって報告先が異なる場合があります。
参考:https://www.mlit.go.jp/report/press/tokatsu01_hh_000747.html
参考:https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/information/details/post_18.html
(2)中長期計画の作成が求められる背景
中長期計画の義務化は、日本の物流業界が直面する構造的な課題に対応するための措置です。トラックドライバーの時間外労働規制強化(いわゆる「2024年問題」)の開始以降、輸送能力の需給ギャップの拡大が本格化しており、荷主側の取組なしに物流の持続可能性を確保することが困難な状況となっています。
積載率の低下、長時間の荷待ち・荷役作業、非効率な多重下請構造といった商習慣が根幹にある課題が物流コストの増大とドライバー不足を悪化させています。こうした状況を受け、運送事業者だけでなく荷主企業にも抜本的な対処を行うために能動的に物流効率化に取り組む姿勢を求めています。
(3)中長期計画に盛り込むべき3つのテーマと判断基準
中長期計画において、「積載効率の向上等」「荷待ち時間の短縮」「荷役等時間の短縮」という3つのテーマが主要な柱(記載項目)として掲げられています。これが特定荷主等が物流効率化に向けて取り組むべき事項について、国が省令として定めた遵守すべき基準です。
中長期計画は、これら3つのテーマに沿って自社の物流実態を分析し、課題を特定したうえで、具体的な改善施策と数値目標を記載する構成となっています。つまり、判断基準は「何をすべきか」の指針であり、中長期計画はそれに対して「どのように取り組むか」を示す実行計画という関係にあります。
なお、計画の妥当性は判断基準との整合性によって評価されるため、作成にあたっては3つのテーマを中心とした判断基準の内容を十分に理解しておくことが前提となります。
参考:https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001984872.pdf
(4)中長期計画の未提出・虚偽報告における法的リスク
特定事業者に指定された企業にとって、中長期計画の提出は法律上の義務であり、正当な理由なく提出を怠った場合や、内容に虚偽があった場合には行政上の措置や罰則の対象となります。計画の不提出や不適切な内容に対して、まず所管大臣による指導や助言、勧告が行われ、それらに従わない場合は是正命令が下されます。
中長期計画書を提出しなかった場合は50万円以下の罰金、是正命令に違反した場合は100万円以下の罰金が科されます。
また、国からの勧告や是正命令を受けた事実は企業名とともに公表されるため、取引先や消費者に対する重大なレピュテーションリスクにも直結します。手続きの遅れであっても経営上の重大なリスクになり得るため、提出期限の徹底した管理と、記載内容の正確性確保は必須課題と位置付ける必要があります。
参考:https://www.meti.go.jp/policy/economy/distribution/250917-18_material.pdf
2.中長期計画の提出対象となる特定荷主等の基準

対象企業の判定は、年間の貨物輸送量(トン数)を基準として行います。自社の年間出荷量(トン)を確認し、国が定める基準(しきい値)と照合することで、法的義務が発生する「特定荷主」または「特定連鎖化事業者」に該当するかどうかを判断します。
なお、輸送量の算定には、自らが委託して運ばせる貨物の総重量が含まれる点に注意が必要です。
参考:https://www.meti.go.jp/policy/economy/distribution/bukkoho_system_flyer.pdf
(1)特定荷主とは?対象企業の基準(第一種・第二種)

特定荷主とは、一定規模以上の貨物を取り扱う荷主企業のことを指し、貨物の関わり方(委託状況・受渡状況)に応じて第一種荷主と第二種荷主に区分されます。物流効率化法においては、それぞれの基準重量である年間9万トン以上となる企業が指定の対象です。
| 第一種荷主 | 貨物の運送を委託する委託状況において、年間の取扱貨物重量が9万トン以上の事業者 |
|---|---|
| 第二種荷主 | 貨物の受渡しを行う受渡状況において、年間の取扱貨物重量が9万トン以上の事業者 |
※どちらの区分でも9万トンを超えている場合は、両方にチェックをして届け出る必要があります。
両者の違いは「運送契約を締結するかどうか」にあります。第一種荷主はトラック事業者と運送契約を結ぶ立場(主に発荷主が該当)であり、第二種荷主は運送契約を結ばず、ドライバーと貨物の受け渡しのみを行う立場です。なお、引取物流(着荷主側が運送を手配するケース)では、着荷主が第一種荷主、発荷主が第二種荷主に該当する点に注意が必要です。
指定された特定荷主には、中長期計画の作成・提出に加え、定期報告の提出、および「物流統括管理者(CLO)」の選任が義務付けられます。
参考:https://www.meti.go.jp/policy/economy/distribution/bukkoho_system_flyer.pdf
(2)特定連鎖化事業者とは?対象企業の基準
特定連鎖化事業者とは、コンビニエンスストアや外食チェーン、ドラッグストアなど、フランチャイズチェーンをはじめとする連鎖化事業(加盟店方式のビジネス)を営む本部事業者の場合、加盟店等を含めたグループ全体での年間取扱貨物重量の合計が9万トン以上となる場合に特定連鎖化事業者に指定されます。特定連鎖化事業者も特定荷主と同様に中長期計画の作成・提出義務等が生じます。
店舗数が多く、個々の配送量は少なく見える場合でも、本部が主導するサプライチェーン全体の総重量が基準となるため、フランチャイズ本部を担う企業は自社グループ全体の物流規模を正確に把握しておく必要があります。
参考:https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001984872.pdf
3.【2026年版】物流効率化法の中長期計画様式|入手方法と提出スケジュール

中長期計画の実務対応において、様式の正確な入手と適切な提出スケジュールの把握が求められます。なお様式の記載内容や提出先は所管省庁によって細部が異なる場合があるため、最新の情報を公式ソースで確認することが重要です。
(1)自社が対象かを確認する貨物重量の計算方法
自社が特定荷主(第一種荷主・第二種荷主)に該当するかどうかは、年間の取扱貨物重量(トン)を算定して判定します。主要な商品だけでなく、すべての商品や事業に必要な資材、事務用品なども原則として算定対象に含まれます。
算定にあたっては、以下のステップと国が認める具体的な算定方法を活用します。
参考:https://www.qsr.mlit.go.jp/n-park/construction/juryou.pdf
①第一種・第二種ごとの年間輸送重量を整理する
自らの事業に関して、貨物自動車運送事業者等に運送を行わせた貨物(第一種)、または運転者と受渡しを行う貨物(第二種)のデータを集計します。なお、自社工場から自社物流センターを経由するなど、中継しながら輸送する場合は、貨物自動車を手配する(車を乗り換える)ごとに取扱重量として合算(計上)する必要があります。
②算定対象から除外できる貨物を差し引く
以下の貨物については、取扱重量の計算から考慮しない(除外する)ことができます。
- 郵便物および信書便物
- 特別宅配貨物(1個30kg以内、かつ同時に受け渡す合計が150kg未満の宅配便など)
- 軽量な資材や事務用品(全体の1%程度までであれば除外可能)
- 受渡日時の指示が一切できない第二種荷主分の貨物
③国が定める8つの方法から算定・推計する
すべての貨物を厳密に実測(計量)する必要はなく、事業特性に合わせて以下の①〜⑧の方法を使い分けたり、組み合わせたりして算定・推計することが認められています。
【国が定める8つの重量算定方法】
- 実測(実際の重量を計測)
- 単位数量当たりの重量 × 個数などの数量
- 容積を重量に換算(例:1立方メートルあたり280kgとして換算など)
- トラックの最大積載量(または平均積載量) × 台数
- 売上額(または仕入額) ÷ 単位重量当たりの額
- 入荷量と出荷量を同量として推計する方法(第一種と第二種の重量をニアリーイコールとする)
- 運送契約や物品売買契約で定められている重量
- その他、対象貨物の重量を的確に算定できると認められる方法
④9万トン以上であるかを確認する
最終的な年間算定結果が「9万トン以上」であるかを確認します。なお、国の届出様式(様式第1)はチェックボックス形式であり、具体的な数値の記載は任意とされているため、9万トン以上であることが確実な場合は、必要以上の精密な算定まで求められているわけではありません。
(2)中長期計画様式(様式第3)の入手方法
中長期計画書(様式第3)の手続きは、原則として政府の総合窓口である「e-Gov電子申請」システムを利用したオンライン申請で行います。申請にあたっては、e-Gov内で「大分類:国土交通 > 中分類:物流 > 小分類:物流効率化法」と検索し、画面上の入力フォームに必要事項を直接入力して提出します。
なお、事前の下書きや社内調整のためにフォーマットやマニュアルを確認したい場合は、国が提供する以下の公式ポータルサイトから最新の各種様式サンプルや操作マニュアルをダウンロードすることが可能です。業種(荷主事業)によって提出先の省庁は異なりますが、中長期計画書の様式(様式第3)自体は全業種共通となっています。
参考:https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/
(3)中長期計画提出までに必要な4つの手続
特定荷主に指定された事業者は、中長期計画・定期報告に至るまでに4つの手続きを順を追って行う必要があります。具体的には、以下の通りです。
- ①貨物の運送の委託及び受渡しの状況届出書(様式第1):基準重量超過の翌年度5月末までに提出
- ②物流統括管理者(CLO)選任・解任届出書(様式第4):指定後すみやかに提出
- ③中長期計画書(様式第3):本記事で解説
- ④定期報告書(様式第5):毎年度提出
①②の手続きを経たうえで、③中長期計画書、④定期報告書の提出へと進みます。次章以降では、③の中長期計画書(様式第3)について詳しく解説します。
(4)中長期計画の提出先と2026年の提出期限
中長期計画書の提出先は、各事業者が営む「主たる事業(業種)」を所管する大臣(省庁)となります。例えば、製造業や卸売・小売業であれば経済産業大臣、食品関連であれば農林水産大臣といったように企業の事業内容によって分かれますが、実際の申請手続きは「e-Gov電子申請」を通じてオンラインで行うため、システム上で該当する所管省庁を選択して提出します。
中長期計画書の提出期限は、原則として「特定荷主の指定を受けた年度の7月末まで」です。ただし2026年度に限り、10月末まで延長されています。
2026年(令和8年)の最初の提出期限については、各企業の決算月(事業年度)に関わらず、国のスケジュールによって一律で定められています。2026年4月の法全面施行に伴い、対象となる事業者には国から順次「特定事業者」の指定通知が届きます。指定を受けた企業は、2026年10月末までに最初の中長期計画書(様式第3)および物流統括管理者(CLO)の選任届出を提出しなければなりません。
参考:https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/
参考:https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001984872.pdf
(5)中長期計画提出までの一般的な流れ
中長期計画の提出までの一般的な流れは以下のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 推進体制の整備 | CLO(最高物流責任者)または担当役員を責任者として定め、物流部門・営業部門・調達部門が連携できる体制を構築する |
| 現状分析・課題抽出 | 自社の物流実態データを収集・整理し、国の判断基準に基づいて現状分析と課題抽出を行う |
| 施策・KPI設定 | 分析結果をもとに、3年以上の計画期間における取組施策とKPIを設定する |
| 計画書作成 | 様式第3に沿って中長期計画書を作成する |
| 社内確認 | 法務・コンプライアンス担当による確認を行う |
| 提出 | 所管省庁の窓口へ計画書を提出する |
4.中長期計画には何を記載する?様式ごとの記載内容

様式第3に定められた中長期計画の記載項目は、大きく「荷主の基本情報」「物流効率化に向けた目標(KPI)」「具体的な取組内容」などのブロックで構成されています。各項目の記載内容を正確に把握したうえで、自社の実態に即した具体的な内容を記入することが求められます。
参考:https://www.meti.go.jp/policy/economy/distribution/mid-to_long-term_plan_chained-judgment.pdf
(1)事業の概要(基本情報)に関する記載事項
基本情報の欄には、自社の概要と物流効率化を推進する体制について記載します。具体的には、企業名・所在地・主たる事業の名称・計画期間といった基本事項に加え、今回の法改正で選任が義務付けられた「物流統括管理者(CLO)」の氏名や役職、および実務責任者である「物流管理責任者」の情報を記入します。
また、自社が取り扱う主要な貨物の品目や、前年度の実績となる「年間取扱貨物重量(トン)」などの物流規模を示すデータを記入します。この欄は計画全体の前提情報となるため、データの正確性が極めて重要です。輸送量の集計値は、事前に自社が対象かどうかを判定した際の数値と完全に整合させる必要があります。
(2)国が求める3大テーマの現状分析・課題・取組内容
中長期計画書において最も重要な核となるのが、「積載効率の向上等」「荷待ち時間の短縮」「荷役等時間の短縮」という国が定める3大テーマに関する記載です。これら3つのテーマごとに、「現状」「目標(KPI)」「具体的な取組内容」を漏れなく記入する必要があります。
| 現状 | 社内データや輸送委託先(実運送事業者)から収集した直近の実績値を記載する例:積載率の現状(%)や、主要拠点におけるトラック1台あたりの平均的な荷待ち時間・荷役時間(分)など |
|---|---|
| 目標(KPI) | 計画期間内(3年〜5年)に達成を目指す具体的な数値を設定する例:国が示す「荷待ち・荷役時間を1回あたり2時間以内(努力目標として1時間以内)とする」などの指針を参考に、自社の目標値を明記する |
| 具体的な取組内容 | 「〇〇年度までに〇〇拠点においてバース予約システムを導入し、荷待ち時間を短縮する」「パレット化を推進して荷役時間を削減する」「混載便や共同配送を活用して積載効率を向上させる」といった形で、対象・時期・手段を明示することが計画の妥当性評価につながる |
参考:https://www.meti.go.jp/policy/economy/distribution/mid-to_long-term_plan_chained-judgment.pdf
(3)目標設定(KPI)の書き方と選定基準
中長期計画における目標(KPI)は、必ず定量的な数値目標(%や時間など)として設定する必要があります。具体的には、以下のような記載形式が基本となります。
| 積載効率の向上等 | 現在の平均積載率〇%を、計画最終年度までに〇%に向上させる」 |
|---|---|
| 荷待ち・荷役時間の短縮 | 「〇〇物流センターにおけるトラック1台あたりの荷待ち・荷役時間を、現状の平均〇分から、計画最終年度までに合計2時間以内(努力目標として1時間以内)に短縮する」 |
KPIの選定にあたっては、自社の事業実態に合わせて以下の3つのポイントを意識することが重要です。
- 継続的な測定(モニタリング)が可能か
- 国の判断基準と整合しているか
- 事業実態に照らして達成可能か
データの取得や集計が極めて困難な指標を設定してしまうと、その後の「定期報告」の際に実績が報告できなくなってしまいます。社内システムや運送事業者との連携により、無理なく継続してモニタリングできる指標を優先して選定することが重要です。
5.中長期計画と定期報告の違いと関係性

中長期計画と定期報告は、いずれも特定荷主等に義務付けられた報告書類ですが、目的・提出頻度・記載内容が異なります。両者の関係を正確に理解することが、効率的な実務対応の前提となります。
(1)中長期計画と定期報告の違い一覧
中長期計画は、3年〜5年の計画期間を対象とした「実行計画書」であり、指定時や計画期間の更新時に提出するものです。一方、定期報告は毎年度提出する「実績報告書」であり、前年度の取扱貨物重量の実績や、中長期計画に掲げた取組の進捗状況・数値目標(KPI)の達成度合いなどを報告するものです。
| 中長期計画 | 定期報告 | |
|---|---|---|
| 文書の性質 | 将来の取組計画を示す計画書 | 前年度の実績を報告する報告書 |
| 対象期間 | 原則3~5年間 | 前年度1年間 |
| 提出時期 | 指定時および計画更新時 | 毎年度 |
| 主な記載内容 | 現状分析、目標(KPI)、物流効率化に向けた取組施策 | KPIの進捗実績、取組状況、判断基準の遵守状況など |
提出頻度として、中長期計画は原則3年〜5年の計画期間ごとの提出(更新)であるのに対し、定期報告は毎年度(年1回)の提出が義務付けられています。記載内容の性質としても、中長期計画が「これからどのように取り組むか」を示す未来の文書であるのに対し、定期報告は「前年度にどのような結果が出たか」を示す過去の実績文書という位置づけの違いがあります。
参考:https://www.qsr.mlit.go.jp/n-park/construction/juryou.pdf
(2)定期報告で報告する主な内容
定期報告(様式第5)は、中長期計画で掲げた目標に対して「前年度にどのような実績を上げたか」を国に報告するための書類です。主な記載項目は以下の通りです。
| 前年度の取扱貨物重量(実績値) | 自社が前年度(1年間)に実際に手配・受渡した貨物の総重量(トン)を算定して記載する |
|---|---|
| 3大テーマのKPI達成状況(実績値) | 「積載効率の向上等」「荷待ち時間の短縮」「荷役等時間の短縮」のそれぞれについて、前年度の具体的な実績数値を記入し、中長期計画で設定した目標値の達成度合いを報告する |
| 物流効率化に向けた措置の実施状況 | 荷待ち時間の削減やパレット化の推進など、国が定める判断基準に照らして具体的にどのような取り組みを行ったか、その実施状況を詳しく記載する |
定期報告は、所管省庁が各企業の取組の進捗を継続的に確認するための重要なプロセスであるため、客観的なデータに基づいた正確な進捗報告が必須となります。
(3)中長期計画と定期報告を連動させるポイント
実務上、中長期計画と定期報告を別個の書類として管理すると、担当者の負担が増大し、記載内容の整合性も取りにくくなります。効率的な対応のためには、中長期計画を策定する段階から、以下のような毎年の定期報告を見据えた一貫性のある設計をしておくことが重要です。
| KPIの設定 | 毎年度収集・測定可能なデータに基づく指標で統一する |
|---|---|
| 管理台帳の整備 | 中長期計画と定期報告の項目を連動させた管理台帳(モニタリングシート)を作成する |
| 実績集計への活用 | 年度ごとのKPI実績や取組状況を継続的に記録・集計する |
| 報告業務への活用 | 国へのオンライン報告に必要な情報を効率的に整理・提出できるようにする |
物流統括管理者(CLO)を中心に、この計画の進捗モニタリングを社内の定例会議や経営報告の仕組みに組み込んでおくことで、年に1回の報告時点における情報収集コストを下げ、持続可能な物流効率化のPDCAサイクルを回すことができます。
6.中長期計画の作成・運用で押さえたい実務ポイント

中長期計画は提出して終わりではなく、実際の物流改善活動と連動させて運用することに意義があります。実務担当者が特に注意すべき3つのポイントを解説します。
(1)社内物流データの可視化
積載率・荷待ち時間・輸送距離・CO2排出量といったデータが社内で一元管理されていない場合、計画の作成自体が困難になるだけでなく、実績報告の信頼性も低下します。まず取り組むべきは、現在使用している輸送管理システム(TMS)・倉庫管理システム(WMS)・ERPからのデータ抽出範囲の確認と、収集できていないデータ項目の特定です。
データが不足している場合は、輸送委託先に対してデータ提供を依頼する契約上の根拠を整備することも必要になります。
また、物流データの可視化は、中長期計画の作成だけでなく、2024年問題への対応や、運行管理・配車業務の見直しにもつながります。関連する対応策を確認したい場合は、「トラックの自動配車システム17選を比較!AI機能等の無料比較表も」もあわせてご覧ください。

(2)CLOを筆頭とした関係部署(営業・調達)との社内連携体制
積載率の向上には営業部門の受注単位・納品頻度の見直しが必要であり、荷待ち時間の削減には調達部門の発注パターンや納品条件の変更が伴うなど、物流効率化は物流部門単独で完結できるテーマではありません。
実務的には、CLO直轄の物流改善プロジェクトチームを設置し、各部門から担当者を任命する体制が有効です。また、計画の進捗管理を特定部門だけでなく経営会議・取締役会レベルで共有することで、組織全体のコミットメントを確保することが重要です。
(3)営業部門・調達部門を巻き込む際によくあるハードル
実務では、物流部門が中長期計画の旗振り役になっても、受注ロットや発注タイミングを決める営業・調達部門の協力が得られず、計画が形骸化してしまうケースが少なくありません。CLOが各部門のKPIに「物流効率化への貢献度」を組み込む、あるいは経営会議で定期的に進捗を取り上げるなど、物流部門単独の課題にしない仕組みづくりが定着のカギになります。
(4)下請法・物流特殊指定を意識した実効性のある計画策定
物流効率化の取組を進めるにあたっては、下請法および公正取引委員会が定める「物流特殊指定(特定荷主が物品の運送または保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法)」の遵守を徹底する必要があります。
例えば、中長期計画に掲げた「荷待ち時間の短縮」や「荷役等時間の短縮」を実現するために、荷主側の一方的な都合で運行スケジュールを変更したり、適切な対価を支払わずに付帯作業を強制・据え置いたりすると、下請法違反や物流特殊指定が禁止する「買いたたき」「不当な経済上の利益の受領」などの違法行為とみなされるリスクがあります。
そのため、中長期計画に記載する具体的な取組施策は、輸送委託先(実運送事業者等)との対等な協議に基づく合意形成を前提として策定することが不可欠です。計画を確定させる前には、必ず法務・コンプライアンス部門とも連携し、実施予定の施策が下請法や物流特殊指定に抵触していないか、適法性を事前に確認しましょう。
参考:https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/tokuteiunsou.html
7.まとめ
物流効率化法の中長期計画は、特定荷主および特定連鎖化事業者に課された法律上の義務であり、未提出・虚偽報告は行政措置の対象となります。計画の実効性を高めるためには、社内物流データの可視化、CLOを中心とした全社連携体制の構築、そして下請法・物流特殊指定に照らした適正な計画策定が重要な実務ポイントとなります。
五十鈴株式会社の「次世代運行管理システムAIR」は、自動配車・動態管理・日報・勤怠・請求を一元化し、中長期計画の策定や定期報告に必要な物流データの可視化・集計を支援します。物流効率化法への対応や物流管理体制の見直しをご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。


