2026年4月の改正物流効率化法の全面施行とともに、荷主勧告制度に基づくトラック・物流Gメンの監視や、中小受託取引適正化法(取適法)による取引規制も強化されており、荷主責任への対応は企業の法対応上の課題となっています。
本記事では、荷主の定義と自社が該当するかの判断基準、法令上の義務内容、荷主勧告制度の仕組み、企業が取るべき実務対応を解説します。
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1.荷主責任とは|荷主の定義と自社が該当するかの判断基準

荷主責任を検討する前提として、自社が制度上の荷主に該当するかを確認する必要があります。まずは、荷主責任の基本的な意味と、荷主に当たるかどうかの判断基準、発荷主と着荷主の違いを整理します。
(1)荷主責任とは何か
荷主責任とは、貨物の運送を依頼する企業が、物流の発注者として運送条件や荷役条件に影響を及ぼす立場にあることから、法令上負う責任と義務の総称です。
納品期限、時間指定、荷役の分担といった荷主側の条件設定は、ドライバーの拘束時間や輸送の安全に直結するため、運送契約の当事者である運送事業者だけでなく、条件を設定する荷主側にも制度上の責任が定められています。
参考:https://www.mlit.go.jp/common/001204970.pdf
(2)自社が荷主に当たるかの判断基準
荷主に該当するかどうかは、自社でトラックを保有しているかではなく、貨物の運送を外部の運送事業者に委託または依頼する立場にあるかどうかで判断します。自社便を持たない企業であっても、運送を手配していれば荷主に該当します。
製造業における原材料の調達や工場からの出荷、卸売業や小売業における店舗への配送、EC事業者における顧客への納品など、業種を問わず外部に運送を依頼する場面があれば、その企業は荷主に該当し得ます。
そのため、委託形態だけで判断せず、条件決定の実態を確認することが必要です。
さらに、荷主行為は物流部門だけで発生するものではありません。調達部門の発注、営業部門の納期設定、受発注部門のリードタイム管理、受入部門の検収条件など、複数部署の業務が運送条件に影響します。
自社の該当性は、部門横断で運送への関与を洗い出したうえで確認します。
参考:https://www.meti.go.jp/policy/economy/distribution/sippers-judgment-criteria-book_ver.1.2.pdf
(3)発荷主と着荷主の違い
荷主は、物流のどの場面に関与するかによって発荷主と着荷主に区分されます。両者の違いは次のとおりです。
| 区分 | 立場 | 関与する条件 | 典型的な場面 |
|---|---|---|---|
| 発荷主 | 荷物を送り出す側 | 出荷条件、積込み体制、引渡し時刻 | 工場、倉庫、配送センターからの出荷 |
| 着荷主 | 荷物を受け取る側 | 納品日時、受入体制、荷卸し条件 | 店舗、工場、物流拠点での受入 |
重要な点は、改正物流効率化法の努力義務や荷主勧告制度が、発荷主と着荷主の双方を対象としていることです。自社は納品を受けるだけであり運送を手配していないという理由で対象外になるわけではありません。
発送側として運送を手配していない企業であっても、納品条件を設定する着荷主として物流に影響を及ぼしている以上、荷主責任の当事者となるため注意が必要です。
参考:https://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/content/000353656.pdf
2.荷主責任が法制度化された背景|2024年問題から2026年の義務化

荷主責任が法制度として整備された背景には、ドライバー不足と輸送力の逼迫があります。本章では、物流2024年問題を起点とした制度化の経緯と、荷主に関わる法制度の全体像、2026年以降の規制フェーズの変化を整理します。
(1)物流2024年問題と輸送力不足
荷主責任が制度化された直接の契機は、2024年4月からトラックドライバーに時間外労働の上限規制(年960時間)が適用されたことです。あわせて、拘束時間や休息期間を定める改善基準告示も改正され、ドライバー1人あたりの稼働時間には明確な上限が設けられました。
労働時間の規制自体は運送事業者側の課題ですが、ドライバーの拘束時間の相当部分は、荷待ちや附帯作業といった荷主側の運用に起因しています。長時間の荷待ち、契約にない荷役作業、短いリードタイムでの発注といった商慣行を荷主側が見直さない限り、労働時間の上限内で従来と同じ輸送量を維持することはできません。
政府の試算では、対策を講じない場合、2030年度には全国で約34%の輸送力が不足する可能性が示されています。
なお、2024年度に懸念されていた約14%の輸送力不足については、荷主・運送事業者双方の取り組みが進んだことなどにより、大きな混乱には至らず概ね克服されたと政府は総括しています。ただし、2030年度に向けては約34%というより大きな不足リスクが残っており、対応の緊急性は変わっていません。
こうした経緯から荷主と運送事業者の双方が取り組む枠組みとして、荷主側への規制的措置を含む法整備が進められました。
参考:https://www.mlit.go.jp/report/press/tokatsu01_hh_000687.html
参考:https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/butsuryu03100.html
また、物流2024年問題によって荷主企業に求められる法的責任やCLO選任義務、荷主勧告制度、荷待ち・荷役時間の削減策については以下の記事で詳しく解説しています。

(2)荷主に関わる物流関連法制の全体像と施行スケジュール
荷主に関わる制度の中心は、2024年に成立した物流改正法(流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律)です。
同法により、流通業務総合効率化法は物資の流通の効率化に関する法律(改正物流効率化法)へ改められ、荷主への規制的措置が段階的に施行されています。あわせて、下請法の改正である取適法も荷主の取引実務に影響します。施行スケジュールは次のとおりです。
| 施行時期 | 制度 | 対象 | 主な内容 |
|---|---|---|---|
| 2025年4月 | 改正物流効率化法(一部施行) | 全ての荷主 | 荷待ち・荷役等時間の短縮、積載効率向上の努力義務、判断基準の適用 |
| 2025年4月 | 改正貨物自動車運送事業法 | 荷主・運送事業者 | 運送契約締結時の書面交付等 |
| 2026年1月 | 中小受託取引適正化法(取適法) | 委託取引を行う事業者 | 運送委託の対象取引への追加、一方的な代金決定の禁止等 |
| 2026年4月 | 改正物流効率化法(全面施行) | 一定規模以上の荷主 | 特定荷主の指定、中長期計画・定期報告、物流統括管理者(CLO)選任の義務化 |
2026年4月の改正物流効率化法の全面施行により、荷主への規制は努力義務の段階から、法的義務と監視を伴う段階へ移行しました。2025年度までは全荷主への努力義務が中心でしたが、現在は一定規模以上の荷主に対して、届出、計画提出、報告、CLO選任といった具体的な義務が課され、違反には罰則が定められています。
参考:https://www.meti.go.jp/policy/economy/distribution/specified-sippers_ver.1.0.pdf
参考:https://www.meti.go.jp/policy/economy/distribution/butsuryu-kouritsuka.html
3.改正物流効率化法で全ての荷主に課される努力義務

改正物流効率化法は、事業規模にかかわらず全ての荷主に物流効率化への取り組みを求めています。
ここでは、2025年4月から適用されている努力義務の内容、国が定める判断基準の目安、取り組みが不十分な場合の措置を解説します。
(1)努力義務の内容
2025年4月から、全ての荷主に対して、物流効率化のために取り組むべき措置の努力義務が課されています。努力義務の対象となる内容は、次のとおりです。
| 積載効率の向上 | 1回の運送でトラックに積載する貨物量を増やし、積載率を高めること |
|---|---|
| 荷待ち時間の短縮 | ドライバーの到着から荷役等の開始までの待機時間を減らすこと |
| 荷役等時間の短縮 | 荷積み・荷卸し等の開始から終了までの時間を減らすこと |
これらの判断基準は発荷主と着荷主のそれぞれについて定められており、自社の立場に応じて確認すべき項目が異なります。発荷主であれば出荷体制や引渡し条件、着荷主であれば受入体制や納品条件が主な対象となります。
参考:https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001760825.pdf
(2)荷待ち・荷役等時間の改善の目安
荷主が講ずべき荷待ち時間や荷役等時間の短縮に向けて見直すべき事項の目安は次のとおりです。
| 荷待ち・荷役等時間 | 1運行あたりの荷待ち時間・荷役等時間の合計を一定時間内に収めることが目安 |
|---|---|
| 受付・荷役の平準化 | トラック予約受付システムの導入などにより、受付や荷役が特定時間帯に集中しないよう調整 |
| 出荷・納品日時の設定 | 混雑時間帯を避けて出荷・納品日時を分散し、待機の発生を抑える |
| リードタイムの設定 | 実態に即したリードタイムを確保し、過度に短い納品条件による非効率な運行を避ける |
| 荷役方法の見直し | パレット等の活用により、荷積み・荷卸しにかかる時間を短縮する |
| 発注量・納入量の調整 | 発注量や納入量を平準化し、特定日時への作業集中を抑える |
まず自社の拠点で荷待ち時間や荷役等時間がどの程度発生しているかを把握し、どの拠点で、どの取引先との間で、どの時間帯に待機が発生しているかを整理したうえで、見直し対象となる項目を特定していく流れとなります。
(3)取組が不十分な場合の措置
改正物流効率化法には、国が荷主の取り組み状況を調査し、結果を公表する仕組みが設けられています。さらに、取り組みが著しく不十分と判断された荷主に対しては、国による指導や助言が行われ、それでも改善が見られない場合には勧告や命令に至る可能性があります。
勧告や公表の対象となった場合、法令上の措置そのものに加えて、取引先や求職者からの評価への影響が生じます。
4.特定荷主に課される義務|2026年4月施行の規制的措置

2026年4月の改正物流効率化法の全面施行により、一定規模以上の荷主は特定荷主として指定され、努力義務を超える法的義務を負うことになりました。
ここでは、特定荷主の指定基準、名称が類似する省エネ法上の特定荷主との違い、CLOの選任、中長期計画と定期報告、違反時の罰則を解説します。
(1)特定荷主の指定基準
特定荷主に指定されるのは、前年度の取扱貨物重量が9万トン以上の荷主です。国の試算では、対象となる企業は約3,200社規模とされています。指定は届出制であり、基準値を超えた荷主が自ら事業所管大臣に届け出ることで指定を受ける仕組みです。国が一方的に調査して指定するのではなく、自己申告が前提となっている点に注意が必要です。
具体的には、届出を行わなかった場合や虚偽の届出をした場合、50万円以下の罰金が科される定めとなっています。 該当可能性のある企業は、自社で該当判定を行う責任があると理解する必要があります。
取扱貨物重量は、発荷主としての出荷分と着荷主としての受入分のそれぞれの立場で算定します。自社出荷分だけを集計して基準未満と判断すると、受入分を含めた場合に基準を超えるケースを見落とす可能性があります。
なお小売業等の事業者向けには、取扱貨物重量を推計するための計算フォーマットが国から公開されており、該当判定の目安として活用できます。
参考:https://www.meti.go.jp/policy/economy/distribution/260427_bukkouho-explanation-part3.pdf
(2)【注意】省エネ法の特定荷主との違い
改正物流効率化法の特定荷主と、省エネ法(エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律)の特定荷主は、名称が同じでも根拠法、指定基準、義務内容が異なる別制度です。両者の違いは次のとおりです。
| 改正物流効率化法の特定荷主 | 省エネ法の特定荷主 | |
|---|---|---|
| 根拠法 | 物資の流通の効率化に関する法律 | エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律 |
| 指定基準 | 前年度の取扱貨物重量9万トン以上 | 年間の貨物輸送量3,000万トンキロ以上 |
| 義務の目的 | 荷待ち・荷役等時間の短縮、積載効率の向上 | 輸送に係るエネルギー使用の合理化 |
| 主な義務 | 物流統括管理者(CLO)の選任、中長期計画の提出、定期報告 | 計画の提出、エネルギー使用状況等の定期報告 |
基準の単位も異なり、改正物流効率化法は貨物の重量(トン)、省エネ法は重量と輸送距離を乗じたトンキロで判定します。このため、一方のみに該当する企業、双方に該当する企業のいずれもあり得ます。
すでに省エネ法の特定荷主として報告実務を行っている企業が、改正物流効率化法への対応も済んでいると誤認するケースが想定されます。両制度の該当判定と義務対応は、それぞれ切り分けて行う必要があります。
(3)物流統括管理者(CLO)の選任義務
特定荷主に指定された企業は、物流統括管理者(CLO)を選任し、届け出る義務を負います。選任を怠った場合は100万円以下の罰金の対象となります。
なお、選任済みで届出のみを怠った場合は20万円以下の過料が別途定められており、選任義務違反(100万円以下の罰金)とは罰則の種類・金額が異なります。
CLOの選任要件は、事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者と定められており、役員や執行役員などの経営幹部からの選任が必要です。物流効率化の実行には物流部門単独では動かせない意思決定が伴うため、こうした部門横断の調整を主導する権限が求められます。
特定荷主の指定を受けた後は速やかな選任と届出が求められるため、該当判定と並行して社内の選任プロセスを進める必要があります。
参考:https://www.meti.go.jp/policy/economy/distribution/bukkoho_system_flyer.pdf
参考:https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/clo/
(4)中長期計画の作成・提出と定期報告
特定荷主には、CLOの選任に加えて、中長期計画の作成・提出と定期報告の2つの義務が課されています。
| 中長期計画の作成・提出 | 荷待ち・荷役等時間の短縮や積載効率向上に向けた施策・目標・実施時期を記載して提出する |
|---|---|
| 定期報告 | 判断基準への対応状況や荷待ち・荷役等時間の実測値を毎年度報告する |
拠点ごとに時間を記録・集計できる体制がなければ、報告のたびに個別調査が必要となるため、計画の作成段階から把握方法もあわせて設計しておく必要があります。
参考:https://www.maff.go.jp/j/shokusan/ryutu/attach/pdf/buturyu-696.pdf
(5)取適法(旧下請法)改正による運賃・取引条件の規制強化
2026年1月には、下請法を改正した中小受託取引適正化法が施行され、運送委託も対象取引に追加されました。物流効率化法とは別に、荷主と運送事業者の取引条件そのものも見直し対象となっています。
主なポイントは次のとおりです。
| 対象取引 | 運送委託が取適法の対象に追加された |
|---|---|
| 規制の中心 | 協議を行わずに一方的に代金額を決定する行為の禁止 |
| 荷主側で問題になりやすい行為 | 値上げ協議に応じない、待機時間や附帯作業の負担を代金に反映しない、不当な減額を行う |
| 実務上求められる対応 | 値上げに応じない場合でも、合理的な理由を示して協議に応じること |
| 執行体制 | トラック・物流Gメンによる指導・助言や、荷主勧告制度との連携が進められている |
慣行として長く続けてきた取引条件であっても、協議のプロセスを欠いたまま維持していれば違反となり得ます。運送委託の代金決定や条件変更の際に協議の記録を残しているか、社内の発注ルールが取適法の禁止行為に抵触していないかを点検する必要があります。
参考:https://www.jftc.go.jp/file/toriteki_leaflet.pdf
5.荷主勧告制度とは|対象行為・トラック・物流Gメンによる監視

荷主勧告制度は、運送事業者の法令違反に荷主が関与した場合に、国が荷主に是正を求める制度です。
ここでは、制度の法的根拠と対象行為、現場で問題になりやすい具体例、トラック・物流Gメンによる監視体制、働きかけから勧告に至る流れを解説します。
(1)荷主勧告制度の概要と法的根拠
荷主勧告制度は、貨物自動車運送事業法第64条に基づく制度です。運送事業者による過労運転の防止措置義務違反、過積載運行、最高速度違反などの法令違反について、荷主の行為がその原因となっていると認められる場合に、国土交通大臣が当該荷主に対して違反行為の再発防止を図るための措置を執るよう勧告できます。
勧告の直接の効果は再発防止措置の要求ですが、社名公表による取引先や社会からの評価への影響が実質的なリスクとなります。
特定荷主に該当しない規模の企業であっても、荷主勧告制度の対象にはなり得るため、事業規模を問わず対象行為の把握が必要です。
実務上は、勧告に至る前段階の「働きかけ」「要請」の件数が圧倒的に多く、勧告・公表まで至った事例は稀です。荷主企業にとっては、働きかけの段階で改善に応じることが最も現実的なリスク回避策となります。
参考:https://www.mlit.go.jp/common/001024705.pdf
(2)対象となる荷主の行為と現場で問題になりやすい具体例
勧告や是正指導の対象となり得る荷主の行為は、長時間の荷待ちの恒常的な発生、契約にない附帯業務の要求、無理な運送依頼、運賃・料金の不当な据置き、過積載運送の指示や容認、異常気象時の運送依頼などの類型に整理されます。
現場で問題になりやすい具体例の詳細は次のとおりです。
①長時間荷待ち
バースの不足、予約管理の不備、受入準備の遅れなど、荷主側の運用に起因して車両の待機が常態化しているにもかかわらず、運送事業者からの改善要請に対応していない場合が該当します。
実態調査では、違反原因行為に該当する行為のうち長時間の荷待ちが最も高い割合(約34%)を占めており、リフトマンの不足により到着後も荷役が開始されないといった声も報告されています。
②契約外の附帯作業
検品、仕分け、棚入れ、ラベル貼付など、運送契約に含まれない作業を現場慣行として運転者に依頼している場合が該当します。2025年4月からは運送契約締結時の書面交付が求められており、附帯作業の有無と対価を書面で明確にしないまま作業を依頼する運用は、見直しの対象となります。
実態調査でも契約にない附帯業務は約24%を占め、なかでも仕分け作業を運転者に行わせているケースが最も多く報告されています。
③無理な運送依頼
当日出荷・当日納品の要請や過密な時間指定など、荷主側の営業都合や生産計画の変更が運送側に転嫁され、ドライバーの拘束時間の超過や改善基準告示違反の原因となっている場合が該当します。
実態調査では無理な運送依頼が違反原因行為の約6%を占めており、荷待ちや附帯業務ほど件数は多くないものの、改善基準告示違反に直結しやすい類型として位置付けられています。
④運賃・条件の据置き
待機時間や附帯作業の負担が生じているにもかかわらず、運賃・料金に反映せず、協議もないまま従来条件で取引を続けている場合が該当します。
実態調査でも運賃・料金の不当な据置きは約24%と、契約にない附帯業務と並んで高い割合を占めており、値上げ交渉を申し出ても荷主側が協議に応じず、一方的に従来価格を維持されたという声も確認されています。
参考:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001859406.pdf
(3)トラック・物流Gメンによる監視体制
荷主勧告制度の執行を担う実働部隊として、国土交通省はトラック・物流Gメンを設置しています。2023年7月に162名体制のトラックGメンとして創設され、2024年11月には倉庫業を含む物流全体へ対象を広げたトラック・物流Gメンへ改組されました。各都道府県のトラック協会が設けるGメン調査員を加え、総勢約360名規模の体制に拡充されています。
運送事業者や倉庫事業者からの情報収集、悪質な荷主等に関する通報窓口(目安箱)の運用、荷主への電話調査、物流施設への現地調査など多岐にわたります。運送事業者側が取引への影響を懸念して申告をためらう場合でも、Gメンが能動的に情報を収集する仕組みが整えられつつあります。
指導の透明性を確保するとともに、荷主側に対しては、指針に記載された内容を踏まえた自主的な商慣行の見直しを促すものです。監視体制の拡充と運用基準の明確化により、荷主への執行は本格化しています。荷主企業にとっては、指針の内容を自社運用の点検基準として活用できる段階にあります。
参考:https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/content/000341598.pdf
(4)働きかけ・要請・勧告の流れと実績
荷主への是正措置は、働きかけ、要請、勧告・公表の順に段階的に実施されます。違反原因行為の疑いがある荷主にはまず働きかけが行われ、改善が見られない場合や事案が重い場合には要請へ進み、それでもなお改善されない場合に勧告と社名公表に至る流れです。
これらの措置は実際に発動されています。国土交通省の公表資料では、働きかけと要請の累計実施件数は全国で相当数にのぼり、勧告と社名公表に至った事例も出ています。集中監視月間には是正指導が集中的に実施されており、制度が形式にとどまっていないことを示しています。
具体的な件数は国土交通省の最新の公表資料で確認できます。
6.荷主責任に対応するために企業が見直すべき実務フロー

荷主責任への対応は、自社の該当範囲の整理から社内体制の整備までを一連の流れとして進める必要があります。最後に、企業が取り組むべき実務を4つのステップに分けて解説します。
(1)自社の荷主該当範囲と区分を整理する
最初に行うべきは、自社のどの業務が荷主行為に当たるかを洗い出し、制度上どの区分に該当するかを確認することです。対応すべき義務の範囲は、この整理によって決まります。確認すべきポイントは次のとおりです。
| 荷主行為に当たる業務 | 出荷、調達、店舗納品、受入、物流委託管理など、運送依頼や納品条件の設定に関与する業務を部門横断で洗い出す |
|---|---|
| 荷主区分 | 各業務場面で、自社が発荷主と着荷主のどちらに当たるかを整理する |
| 改正物流効率化法の特定荷主該当性 | 前年度の取扱貨物重量をもとに、9万トン以上に該当するかを確認する |
| 省エネ法の特定荷主該当性 | 年間輸送量をもとに、3,000万トンキロ以上に該当するかを確認する |
| 該当後の対応 | 特定荷主に該当する場合は、届出、CLO選任、中長期計画作成のスケジュールを整理する |
特定荷主に該当しない場合でも、努力義務や荷主勧告制度の対象にはなるため、該当性の確認後は判断基準への対応やデータ把握体制の整備に進む必要があります。
(2)荷待ち・荷役時間の実態をデータで把握する
荷主責任への対応は、荷待ち時間や荷役等時間の実態把握から始まります。判断基準への対応や特定荷主の定期報告では、拠点で実際に発生している時間を把握していることが前提になるためです。把握の対象と方法は、次のように整理できます。
| 把握すべき時間 | 車両の到着・受付から荷役開始までの荷待ち時間、荷役開始から終了までの荷役等時間 |
|---|---|
| 分析の切り口 | 拠点別、取引先別、時間帯別に整理し、どこで負荷が発生しているかを確認する |
| 手作業での把握の課題 | 紙の記録や個別ヒアリングでは、継続的な実測や集計に手間がかかり、精度も安定しにくい |
| 継続的な把握手段 | 車両の動態データ、トラック予約受付システム、運行管理システムなどを用いて、待機時間や荷役時間を記録・集計する |
着荷主の立場では、発荷主と異なり「自社の受入体制」が荷待ち発生の主因になりやすいため、まず自社拠点の受付・検収フローを可視化することが実態把握の出発点になります。
どの拠点のどの工程で負荷が生じているかが分からなければ、改善の優先順位を決められません。定期報告のたびに手作業で調査を繰り返す運用では負荷が大きいため、日常業務の中で時間データを継続的に取得できる仕組みを整えておく必要があります。
(3)運送契約・依頼条件・役割分担を見直す
実態把握と並行して、運送事業者との契約条件や依頼方法も見直す必要があります。2025年4月からは運送契約締結時の書面交付が求められており、口頭や慣行に依存した運用を続けている場合は、契約実務の整理が前提になります。確認すべき主な論点は次のとおりです。
| 契約書面の記載内容 | 運送の範囲、附帯作業の有無と対価、待機時間の扱い、時間指定の条件が書面に明記されているかを確認する |
|---|---|
| 契約と実態のずれ | 書面上の契約内容と、現場で運転者に依頼している作業内容に乖離がないかを確認する |
| 条件変更時の協議手順 | 燃料費の変動や作業範囲の変更があった際に、誰がどの手順で協議し、記録を残すかを整理する |
| 見直し対象となる取引条件 | 運賃だけでなく、作業範囲、納品条件、追加対応の扱いまで含めて点検する |
書面上は運送のみの契約であるにもかかわらず、現場では検品や仕分けを運転者に依頼しているような場合は、契約と実態のずれが生じています。こうした乖離を放置すると、荷主勧告制度や取適法上の問題につながるため、契約書面と実際の運用を突き合わせて見直すことが必要です。
(4)社内体制と運用ルールを整備する
荷主責任への対応を継続的に進めるには、担当体制と運用ルールを整備する必要があります。制度対応は物流部門だけで完結せず、営業、購買、受発注、法務など複数部門にまたがるためです。
整備すべき主な内容は次のとおりです。
| 推進体制の整備 | ・特定荷主はCLOを中心に体制を構築する ・計画作成、実測データ集計、定期報告を担う部署を明確にする ・特定荷主でない場合も物流責任者を定め、関係部門が連携できる体制を整える |
|---|---|
| 関係部門の役割整理 | ・営業、購買、受発注、法務などの関係部門を整理する ・納期設定、発注条件、契約点検を誰が担うか明確にする |
| 運用ルールの整備 | ・荷待ちや契約外の附帯作業が発生した場合の報告手順を定める ・契約条件見直し時の協議手順を定める ・Gメン対応や改善要請を受けた際の報告ルートを定める |
| 制度改正への対応 | ・判断基準の改定や行政運用の変更を確認する担当を定める ・影響範囲を評価し、社内運用へ反映する流れを整える |
納期設定や発注条件は営業部門や購買部門が関与し、契約条件の確認には法務部門の関与も必要になります。そのため、物流部門だけで対応を抱え込まず、どの部門が何を担うのかをあらかじめ整理し、制度対応と日常運用を結び付けた体制を整えることが必要です。
7.まとめ
荷主責任は、努力義務の段階を過ぎ、実効性を伴う制度対応の段階に入っています。対応の起点は、自社の該当区分の整理と、荷待ち・荷役等時間の実態把握です。特に時間の実測は、判断基準への対応、特定荷主の定期報告、現場改善の優先順位付けのいずれにも共通する基盤となります。
五十鈴株式会社の「次世代運行管理システムAIR」は、車両の動態や運行記録、日報などを一元管理し、荷待ち時間や運行状況の把握、物流データの収集・管理を支援します。荷主責任への対応に向けた実態把握や運行管理業務の効率化をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。

