2025年9月から、国土交通省の基準改正により、トラックへの自動ブレーキ(AEBS:衝突被害軽減ブレーキ)の装着が段階的に義務化されます。
本記事では、トラック自動ブレーキ義務化の対象・時期・例外条件を整理し、AEBSの仕組みや性能要件、荷崩れ・誤作動リスクへの対策、導入に向けた実務ステップを包括的に解説します。
五十鈴株式会社の「次世代運行管理システムAIR」は、鋼材・重量物輸送の現場実績を持ち、自動配車・動態管理・自動日報・勤怠・請求のワンストップカバーにより、AEBSなどの安全装置と連動した運行体制の構築を支援します。セミオーダー型カスタマイズで自社の中長期戦略に合わせた導入が可能ですので、まずはお気軽にご相談ください。
1.トラック追突防止装置義務化の概要|対象・開始時期・適用除外
まずは、義務化が決定した背景や目的を整理し、どの車両が対象となるのか、そしてマニュアル車や特殊車両など適用除外の範囲を解説します。
(1)トラック自動ブレーキ(AEBS)義務化の背景

大型トラックが関係する死亡事故は依然として高水準にあります。国土交通省の事業用自動車交通事故統計によると、令和4年のトラックによる事故件数は14,383件、死亡事故は196件発生しています。
特に注目すべきは、これらの事故のうち追突事故が5,944件と全体の約4割を占めており、ドライバーの操作ミスや前方不注意による追突を自動制御で防ぐ必要があります。

また、自動ブレーキの導入は国際的な安全基準との整合を図る動きの一環でもあります。
日本は、2013年に成立した国連規則UN-R131(大型車用AEBS)を踏まえ、メーカー各社が自発的に自動ブレーキの搭載を進めてきました。さらに、乗用車向けのUN-R152が新たに制定・改正され、高速走行時や歩行者検知にも対応できるよう性能要件が強化されています。
こうした基準の改正に合わせ、日本国内でも2025年以降の新型トラックにAEBS搭載を義務化する基準改正が行われました。これにより、技術水準の底上げとともに、交通事故のさらなる削減、安全装置の国際標準化が期待されています。
参考:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001579809.pdf
参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001709061.pdf
(2)対象区分と開始時期|大型・中型トラックは2025年9月から段階的に義務化
自動ブレーキ(AEBS)義務化の対象となるのは、車両総重量3.5トン超の貨物自動車です。これは国連規則UN-R131に準拠した基準で、大型トラックおよび中型トラックが該当します。
自動ブレーキ(AEBS)義務化は、新型車を対象にして2025年9月からスタートします。継続生産車(既存モデル)については、2028年9月から段階的に適用が拡大される予定です。対象となる車種区分は以下の通りです。
| 対象車両 | 適用時期 |
|---|---|
| 新型車 | 令和7年(2025年)9月~ |
| 継続生産車 | 令和10年(2028年)9月~ |
ただし、以下の車両については義務化の対象外となります。
- 最高速度が時速25km/h以下の車両
- 特殊用途自動車の一部(クレーン車、消防車など構造上装着が困難な車両)
- 車両総重量3.5トン以下の小型トラック
- 最高速度が時速25km/h以下の車両
出典:https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha08_hh_003618.html
このように、制度は段階的かつ拡張的な適用を前提としており、対応車両と時期を正確に把握することが重要です。
参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001843985.pdf
参考:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001579809.pdf
(3)適用除外と他安全装置との関係
トラックの自動ブレーキ(AEBS)義務化は、新型車および継続生産車を中心に段階的に適用される仕組みとなっており、既に登録済みの中古車や特装車などは適用除外または経過措置の対象となります。
また、今回のAEBS義務化は、同時期に進められている他の安全装置義務化制度と密接に関連しています。
| 区分 | 概要 | 適用・開始時期 |
|---|---|---|
| 車両後退通報装置(バックアラーム) | 後退時に警報音を発して周囲に注意を促す装置。車両総重量3.5t超のトラック・バスが対象 | 新型車:令和7年(2025年)1月~継続生産車:令和9年(2027年)1月~ |
| ESC(横滑り防止装置)/LDWS(車線逸脱警報装置) | 車両の安定走行と逸脱防止を支援する安全装置。AEBSと併用することで総合的な安全性を向上 | ESC:平成26年(2014年)10月~段階的義務化 LDWS:平成26年(2014年)10月~段階的義務化 ※車両総重量8トン超のトラックから順次適用 |
このように、AEBS義務化は単独の制度ではなく、他の安全装置義務化との連動により、トラックの事故削減を包括的に推進する施策として位置づけられています。
参考:https://www.mlit.go.jp/common/000131073.pdf
参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001874973.pdf
2.トラックの自動ブレーキ(AEBS)の概要

自動ブレーキ(AEBS:Advanced Emergency Braking System)は、前方の車両や歩行者を検知し、衝突の危険を自動的に回避・軽減する安全装置です。
ここでは、自動ブレーキ(AEBS)がどのように対象を検知し制動を行うかの仕組みと、その性能要件などについても解説します。
(1)検知~制動の流れ|レーダー・カメラ・制御システムの役割
AEBSは「レーダー」「カメラ」「制御ユニット(ECU)」の3要素で構成され、以下の流れで作動します。
| フェーズ | 主な構成要素 | 役割 |
|---|---|---|
| 1.検知フェーズ | ミリ波レーダー/カメラ | 前方車両・歩行者・障害物の位置・速度を検知し、相対距離や進行方向を測定 |
| 2.判断フェーズ | 電子制御ユニット(ECU) | 衝突リスクを演算し、危険度が高まると警報(音・表示)を発する |
| 3.制動フェーズ | ブレーキ制御システム | ドライバーが操作しない場合、自動的に制動し、必要に応じて段階的に制動力を強化する |
これらの機能は相互に連携し、検知 → 判断 → 制動という一連の流れを自動で実行します。
AEBSの性能は年々向上しており、システムによっては歩行者検知や高速走行時の対応なども可能になっています。
ただし、2025年9月からトラックに義務化されるAEBS(UN-R131準拠)は、主に前方車両の検知を目的としており、次に解説する性能要件を満たす必要があります。
参考:https://www.ntsel.go.jp/Portals/0/resources/kouenkai/r7/2506ntsel_Invited02.pdf
(2)性能要件
国土交通省は、国連規則 UN-R131(大型車用) および UN-R152(乗用車用) の改正内容を踏まえ、トラックの自動ブレーキ(AEBS)の性能要件を以下のように強化しました。
| 試験区分 | 主な性能要件 | 改正点・特徴 |
|---|---|---|
| 静止車両試験 | 前方の静止車両に対し、試験車両70km/hで走行中に衝突しないこと | 試験速度を従来の20km/hから70km/hへ引き上げ より高速域での性能を担保 |
| 走行車両試験 | 試験車両90km/h、先行車両20km/hの条件下で、衝突回避 また、60km/h以下で走行中は先行車両に対してまたは40km/h以上の減速または停止を達成すること | 減速度要件を強化し、実効性を重視 |
| 歩行者試験(新設) | 6歳児相当ダミー(高さ115cm)を用いた横断歩行者に対し、試験車両20km/h、歩行者5km/hの条件下で衝突しないこと | 大型車で初めて歩行者検知を義務化(2023年改正で追加) 作業範囲は少なくとも20~60km/h |
| 作動範囲 | 10km/h〜最高速度まで、空積載・満積載いずれの状態でも作動すること。 | 積載条件を問わず性能維持を求める |
| 警報要件 | 緊急制動の0.8秒前までに警報(視覚・聴覚)を発すること。 | 歩行者対象時は緊急制動開始前に警報を必須化 |
改正では、静止車両・走行車両・歩行者のそれぞれに対して明確な試験条件と作動基準が設定されています。
これにより、従来よりも広い速度域・多様な走行環境下で確実に作動することが求められます。
3.自動ブレーキによるトラックの荷崩れ・誤作動リスクと対策

自動ブレーキ(AEBS)は、追突事故の重大化を防ぐうえで重要な安全装置ですが、トラック特有の運行環境では荷崩れや誤作動といった新たなリスクも指摘されています。
ここでは、自動ブレーキ義務化に伴い現場で懸念される荷崩れ・誤作動の要因と対策を整理し、併せて自動ブレーキOFF操作や代替の追突防止策についても解説します。
(1)自動ブレーキ作動時の荷崩れリスクとは
自動ブレーキ(AEBS)が作動すると、システムが瞬時に強い減速度を発生させます。
トラックではこの急制動により、積荷の慣性力が前方に働くことで荷崩れや偏荷重が発生するリスクがあります。特に次のような荷崩れが発生しやすい状況が示されています。
| リスク要因 | 内容 |
|---|---|
| 急ブレーキによる前方荷崩れ | 自動ブレーキ作動時の衝撃により、積荷が前方へ滑動・転倒する可能性がある 減速度が大きいほど慣性力も増大し、固定が不十分な場合は荷崩れが発生しやすい |
| 長いS字カーブ・曲がり角走行時の遠心力 | 横方向への荷重移動により横滑り・横転が起こりやすい 特に重心が高い積載では転倒リスクが上昇 |
| 積荷の外装強度不足 | 梱包の弱い貨物や不均一な積付けでは型崩れが発生 段ボール箱の積み重ねや、緩衝材が不足している場合は特に注意が必要 |
| 重心の高い積載 | 背の高い貨物や積み上げ荷では、急制動や遠心力で転倒リスクが上昇 車両の重心が高いほど横転の危険性も高まる |
これらのリスクは、自動ブレーキ義務化の下でより高頻度に発生しうるため、固定方法・積付け位置・積載形状の見直しが不可欠とされています。以下の記事では積み付けについて詳しく解説しています。

参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03safety/resourse/data/truck_honpen2.pdf
(2)誤作動・誤検知が起こる主な要因
自動ブレーキ(AEBS)のセンサーや制御装置は、周囲環境や整備状態によって誤作動・誤検知が発生することがあります。
| 要因区分 | 主な内容 | 発生例 |
|---|---|---|
| 環境要因 | 雨滴・霧・雪・逆光・トンネル出入口での急な照度変化などにより、カメラやレーダーが誤検知する | ・前方車両がないのにブレーキ作動 ・停止線やガードレールを障害物と誤認 |
| ハードウェア要因 | カメラ・レーダーの取付位置ずれ、車体振動による偏心、ヒーターや配線の断線 | ・前方監視カメラの偏心やヒーター断線により誤作動 ・制御停止が発生 |
| ソフトウェア要因 | 制御アルゴリズムの感度過剰設定や、他の電子制御装置(例:回生ブレーキ、横滑り防止装置)との干渉 | ・一時的な制御不整合で誤ブレーキが作動 ・誤検知警告が点灯 |
| 整備・経年要因 | レンズの汚れや整備不良、経年劣化によるセンサー出力低下 | ・長期使用車両でセンサー感度低下 ・誤作動警告灯(AEBS警告灯)の点灯 |
国土交通省が公表している「電子制御装置の不具合事例」では、実際に以下のような事例が報告されています。
実例:ACC(自動車間距離制限機能)の突然停止による急減速
- 車種:乗用自動車(走行距離:約1,300km)
- 状況:ACCを使用し、前方車両との車間を保ちながら高速道路を走行中、突然機能が停止し、同時に強い回生ブレーキが作動して急減速する不具合が頻発
- 原因:ディーラーでの調査により、「前方監視用カメラが偏心」「カメラ周辺のヒーターが断線」
このような予期しない急制動はトラックの場合、積荷の荷崩れや後続車による追突事故のリスクを高めます。
特に、前方カメラやミリ波レーダーの取付角度は数度のずれでも認識精度に大きく影響するため、車検・点検時の調整が重要です。異常検知時の即時点検と整備が、義務化後の安全運用における基本対応とされています。

(3)自動ブレーキOFF操作への実務対応
トラックへの自動ブレーキ(AEBS)義務化が進む一方で、現場ではドライバーが意図的にスイッチを「オフ」にしている実態があるとされています。
その背景には、誤作動や急ブレーキによる荷崩れ、荷主からのクレームなど、運行現場特有の課題が存在します。
そのため、義務化の対象拡大とともに、今後は以下のような「常時作動を前提とした保安基準の整備」や「ドライバー教育の強化」が求められることが予想されます。
- 荷崩れや誤作動を防ぐ積載方法・走行管理の見直し
- OFF操作を前提としない安全運行マニュアルの整備
- 作動履歴や警告灯(AEBS警告灯)の点検体制の強化
なお、2025年時点では、AEBS(衝突被害軽減ブレーキ)をドライバーが意図的にOFFにしても、道路運送車両法上の「保安基準違反」にはあたりません。ただし、事故発生時には 以下の責任が問われる可能性があります。
- 安全運行義務違反(道路交通法第70条)
- 事業者責任(安全管理義務違反)
このため、常時作動を前提とした安全管理体制(マニュアル整備・ドライバー教育・誤作動対策)を社内で構築することが求められます。
参考:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001579809.pdf

4.トラックの自動ブレーキ(AEBS)義務化に向けた導入・対応ステップ

ここでは、トラックの自動ブレーキ(AEBS)義務化に向けた導入・対応ステップを解説します。
(1)自動ブレーキ義務化への準備項目の整理
以下は、国土交通省の基準改正内容および自動車メーカー各社の対応方針を踏まえた、実務的な準備項目の整理です。
| 1.車両管理面 | 新車購入・更新スケジュールの策定 |
|---|---|
| 2.運行管理面 | 自動ブレーキ作動条件の周知・荷崩れ対策の見直し |
| 3.整備・点検体制 | AEBS関連部品の点検基準整備・警告灯(AEBS警告灯)の確認手順 |
| 4.教育・マニュアル整備 | ドライバー教育の実施・社内マニュアルの改訂 |
国土交通省「事業用自動車総合安全プラン2025」では、先進安全技術の導入促進とともに、適切な運用管理体制の構築が事業者に求められています。特に、以下の3点が重視されています。
- 機能の正しい理解:ドライバーがAEBSの作動条件・限界を理解すること
- 定期的な点検:センサー・カメラの清掃、異常警告への即時対応
- 荷崩れ対策の徹底:急制動を想定した積載管理の見直し
また、車両管理システムを導入することで、法改正に対応した車両の一元管理や、点検・教育スケジュールの自動アラート化が可能になり、法令順守(コンプライアンス)と業務効率化を同時に実現できます。

参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/news/data/anzenplan2025/2025.pdf
(2)既存車両の対応方針|新型・継続生産車・中古車の扱い
自動ブレーキ(AEBS)の義務化は「新型車」→「継続生産車」→「既販車(中古車)」の順に段階的に適用されます。以下では、車両区分ごとの実務的な対応方針をご確認いただけます。
| 区分 | 対応方針 | 補足・留意点 |
|---|---|---|
| 新型車(2025年9月以降に型式指定される車両) | 義務化の第一段階。メーカー出荷時点で新基準(UN-R131改正後)に適合したAEBSを搭載 | ・静止車両・歩行者検知に対応 ・OFF操作後も再始動時に自動的にONへ戻る設計が主流化 |
| 継続生産車(2028年9月までに型式維持生産される既存モデル) | 義務化の第二段階。新基準対応車種への切替または生産終了の判断が必要 | ・一部メーカーは改良型AEBSを追加装備で対応 ・技術的制約により、義務化猶予や生産終了も想定 |
| 既販車(登録済・中古車) | 現時点では義務化の対象外。既存車両は継続使用可 | ・ただし安全装置未搭載車での事故発生時は、運行管理・教育面での安全配慮義務違反が問われる可能性あり ・今後の補助金制度や自治体の更新支援策を活用し、段階的更新を推奨。 |
また、2028年以降は「自動ブレーキ非搭載車」の新規登録制限が進む可能性があり、運送事業者は中長期的な車両更新計画を策定することが重要です。
国土交通省は、事業用自動車への先進安全技術の導入を支援するため、補助金制度を設けています。詳細は以下の資料を参照してください。
参考資料
- 国土交通省「最近の自動車安全基準の動向~国際基準調和と自動運転~」
- 国土交通省「先進安全自動車 – ASV推進計画~最新の取組み」
(3)導入コストの確認
自動ブレーキ(AEBS)は、2025年9月以降の新型車からすべての搭載が義務化されます。
すでに多くの車両メーカーが標準装備化を進めていますが、車両更新時期の集中や、新基準対応に伴う一部車種での価格調整の可能性があります。
そのため、運送事業者は単に購入時期を後ろ倒しにするのではなく、中長期的な更新計画を前提にコスト対策を講じることが重要です。
| 対応項目 | 概要 | 目的・効果 |
|---|---|---|
| 1.更新計画の前倒し | 義務化スケジュール(新型車:2025年9月~/継続生産車:2028年9月~)を踏まえ、車齢10年以上の車両を優先的に更新する | 老朽車の安全リスクを低減し、義務化対応を計画的に進める |
| 2.リース・ファイナンスの活用 | 初期導入費用を抑えるため、リース契約や分割払いによる車両更新を検討する | 多額の一括投資を避け、キャッシュフローを平準化できる |
| 3.補助金制度の活用 | 国交省・自治体が実施する「安全装置導入促進補助金」「グリーン物流推進事業」などを確認・申請する | AEBS搭載車への更新費用を軽減し、導入コストを抑制する |
| 4.費用対効果の算定 | AEBS導入後の事故削減・修理費削減・保険料低下などを試算し、経営指標に反映する | 安全投資としての費用回収を中長期で見通すことができる |
5.まとめ
2025年9月から始まるトラックの自動ブレーキ(AEBS)義務化は、単なる装備追加ではなく、運送業界全体の安全基準を底上げする転換点といえます。これまでの「ドライバーの技能と経験に依存する安全管理」から、今後はテクノロジーと制度に支えられた安全運行体制へとシフトが求められます。
車両への安全装置の装着が義務化される一方で、安全運行を実現するためには運行管理体制そのものの強化も欠かせません。
五十鈴株式会社の「次世代運行管理システムAIR」は、ワーレックス社(重量物運送・200台超)での実証実績を持ち、蓄積した運行データを継続的に分析することで、ドライバーの運転傾向や労務状況を可視化し、安全運行体制の強化を支援します。AEBSなどの安全装置と、データに基づく運行管理を両輪で整えることが、今後の安全投資の基盤となります。


