自動車産業のEV化によって薄鋼板需要の構造的な変化、それ に関連して変貌するグローバルなサプライチェーン、戦争や関税 問題などが折り重なって膨らむ地政学的リスク――。 こうした要因から鉄鋼流通業界はパラダイムシフトと呼ぶにふさ わしい激変のときを迎えています。 しかし、業界のリーディングカンパニーを自負する五十鈴グルー プは、この状況を好機と捉えて、みずからをしなやかに変革。自社 のみならず業界全体、もちろん取引先や株主を含めたステークホ ルダーを見据えた高い視座をもって、真にサステナブルな経営を 実現させる手立てを打ち続けています。 中でも事業の柱であるスチールサービス部門(五十鈴関東・ 五十鈴中央・五十鈴東海)は2022年~ 2024年の前中期、「総合 的な経営力を通じてビジネスパラダイムの変革を図り、収益力・競 争力・ステイタスを高める」をテーマに、邁進しました。 具体的な成果を、3つピックアップします。 1つは「流通一貫最適デザイン機能の進化」です。 かねてから、私たちはサプライヤーや顧客とのこれまでの枠組み を超えたサプライチェーンを最適化させる取り組みを進めてきまし た。同業者であるコイルセンターはもちろん、株主である鉄鋼メー カーや商社と連携。ムダ無くスピーディなサプライチェーンを築き 上げることで、コストダウンの実現と共にサービスクオリティの向上 を推進させてきたのです。この取り組みからクライアントであるティ ア1やその先の自動車メーカーとのリレーションは向上しました。 関係性を深める一方で、加工賃最適化の交渉も進めてきました。 サプライチェーンを再編する中で、各現場で生じるあらゆる付加価 値とコストを「見える化」。論理的かつ定量的に、各段階でかかる 最適な工賃を指し示せるようになり、フェアな交渉が実現できたこ とも功を奏しました。結果、収益基盤となる粗利改善に繋がってい ます。 強い気持ちで交渉にあたれた理由は、自社のみならず業界全体 の利益に直結するためです。僭越ながら、業界のステイタスとプレ ゼンスをあげることが、私たちのミッションのひとつ。多くの仲間と つながり、よりよき未来を目指す「協進」の精神は、私たちの大切な 価値観ですが、ここでも大きな原動力になりました。 鉄鋼流通業界の新たな販路づくりもリードする意気込みで積極 的にすすめています。 日本製鉄が開発したデザイン性の高い鋼板「FeLuce(フェルー チェ)」や「黒ZAM」などを「戦略商品サンプルバンク」として全社で 提案。全国8拠点の事務所オフィスの一部にこれを配して、積極 提案しています。自動車産業のみならず、家電、鋼製家具、建材な ど、多彩な可能性を見出すきっかけづくりも欠かさず尽力している ところです。 2つ目の成果は「サステナブルファクトリー機能の拡充」です。 CO2排出量が多い鉄を扱う責任から、リデュース・リユース・リサ イクルのしくみを早くから実装。鉄の循環スキームのみならず、プラ OUTPUT 1 視座高く、 業界のステイタスと環境を高め続ける。 パラダイムシフトに、協進で立ち向かう。 暑さ対策が離職率低下を後押し。 鉄鋼流通 価値向上 08
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